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縫糸用加工糸および縫製品
説明

縫糸用加工糸および縫製品

【課題】充填物を内包した衣料用または寝具用などに用いられる、縫目からの充填物吹出し抑制と運動追従性、外観品位に優れた縫糸用加工糸、およびそれを用いた縫製品を提供する。
【解決手段】ポリエステル系繊維またはナイロン系繊維をS方向に撚り合わせてなる下糸2と、少なくとも2本の該下糸をZ方向に撚り合わせてなる上糸3とからなり、該上糸の総繊度が160〜360dtexの範囲内にあり、前記上糸の撚り数および前記下糸の撚り数が共に200〜480T/mの範囲内にあり、前記上糸に帯電防止加工が施されている縫糸用加工糸0。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填物を内包した衣料用または寝具用などに用いられる、縫目からの充填物吹出し抑制と運動追従性、外観品位に優れた縫糸用加工糸、およびそれを用いた縫製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冬季に、または寒冷地で使用されるダウンジャケットやふとんなどの縫製品としては、防寒性を高めるために羽毛や中綿などの充填物を充填したものが市販されている。その構造は元々、少なくとも2枚の生地を重ねて袋状に構成し、その中に充填物を内包させたものであった。
【0003】
これら充填物を有した縫製品では、優れた保温性を有するものの、使用中に外力により充填物が偏り、部分的に保温性が失われる問題があった。
【0004】
そこで、充填物の移動を防ぐために、前記2枚の生地を複数の区画に区切るようミシン縫製し、2枚の生地間を縫糸が貫通し連続した柵状とすることにより、充填物の移動を縫製区画内に制御する、キルティング技術が用いられるようになった。
【0005】
キルティング部の構成方法としては、ミシン縫製以外に超音波溶着機による充填部と生地の溶着や、テーピングマシンによる充填部と生地のテープ接着など各種方法があるが、中でも縫糸を用いたミシン縫製が、引張りなど実着用に耐えうる強度を有し、かつ生産が容易で加工コストも安価であるため好適に使用されている。
【0006】
キルティング部を構成するミシン縫製用の縫糸には、縫目の外観品位に優れ、かつ充填物が縫目から吹き出しにくい特性が要求される。
【0007】
特許文献1〜3において、複屈折率の異なるポリエステルフィラメントとで構成されている糸条にスピンドル回転数3000〜6000rpmで下撚りを施した後、さらに該糸条を2本以上合糸しスピンドル回転数3000〜5000rpmで上撚りを施すことで糸強度と外観品位を確保したもの(特許文献1参照)、糸加工条件のヤング率を400〜800kg/mm、伸度を30〜60%、上撚の撚係数を7,000〜15,000、トルクを10T/M以下とすることで縫目強力を確保したもの(特許文献2参照)、下糸の芯素材に熱で溶融または軟化する繊維を用い、外周の鞘側に普通繊維を配すことで、縫製後に芯素材を溶融させて縫目の穴を塞ぎ、充填物の縫目からの吹出しを抑制したもの(特許文献3参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−46211号公報
【特許文献2】特開平9−228179号公報
【特許文献3】特開平6−33330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1、2の高撚回転で撚りを施した縫糸は、高い撚り数により糸表面の畝が多いため、縫製時に生地や充填物との間に摩擦が発生して充填物を引き出しやすく、かつ糸が硬く締まっているので、縫糸の生地貫通孔、すなわち縫目と縫糸との間に隙間が生まれ、隙間から充填物が吹き出しやすいという問題があった。
【0010】
また、特許文献3の熱溶着糸を芯素材に用いた縫糸は、縫製後に縫目をアイロンがけ等により熱加工処理する工程が必要になるうえ、溶着糸の浸みだしや白火等の外観欠点が発生しやすく、生産効率と外観品質に劣るという問題があった。
【0011】
このように従来の縫糸用加工糸は、いずれも縫目強度が高く縫製作業が容易であるものの、縫目からの充填物吹き出し抑制と外観品位において十分な性能を満足しうるものではなかった。
【0012】
そこで、本発明の目的はかかる従来技術の欠点を改良し、生産工程を増やすことなく従来の縫糸と同様に扱うことができ、かつ、今まで以上に充填物吹出し抑制に優れ、運動追従性、外観品位を向上させた縫糸用加工糸及びそれを用いた縫製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するため、本発明の縫糸用加工糸及びそれを用いた縫製品は下記の構成から成る。
【0014】
すなわち、本発明の縫糸用加工糸の一態様は、ポリエステル系繊維あるいはナイロン系繊維をS方向に撚り合わせた下糸と、該下糸を少なくとも2本Z方向に撚り合わせた上糸とからなり、該上糸の総繊度が160〜360dtexの範囲にあり、かつ上撚り数および下撚り数が共に200〜480T/mの範囲にあり、かつ該上糸が帯電防止加工されていることを特徴とするものである。
【0015】
この縫糸用加工糸においては、好ましくは下糸が繊度80〜180dtexのマルチフィラメントであり、かつフィラメントカウント数が40〜100本の範囲にあることを特徴とするものである。
【0016】
さらに好ましくは、該下糸に対する上糸の撚り数比が50〜80%の範囲にあることを特徴とするものである。
【0017】
さらに好ましくは、該下糸の切断伸度が28〜60%の範囲にあることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の縫糸用加工糸を用いた縫製品の一態様は、衣服または寝具のいずれかに用いられる縫製品であって、該縫製品が少なくとも2枚よりなる生地と充填物とキルティング部とにより構成され、該生地同士の間に充填物が内包し、前記縫糸用加工糸を用いて、充填部と生地の少なくとも2枚を貫通させてキルティング部を構成してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の縫糸用加工糸及びそれを用いた縫製品により、生産工程を増やすことなく従来の縫糸と同様に扱うことができ、かつ、今まで以上に充填物吹出し抑制に優れ、縫製性、外観品位を向上させた縫糸用加工糸及びそれを用いた縫製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の縫糸用加工糸の一態様を示す正面図である。
【図2】図1に示した縫糸用加工糸の断面図である。
【図3】本発明の縫製品の一態様を示す斜視図である。
【図4】図3に示した縫製品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に示す態様を用いて、本発明の縫糸用加工糸及びそれを用いた縫製品を詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の縫糸用加工糸の一態様を示す正面図である。
【0023】
図2は、図1に示した縫糸用加工糸の断面図である。
【0024】
図3は、本発明の縫製品の一態様を示す斜視図である。
【0025】
図4は、図3に示した縫製品の断面図である。
【0026】
本発明の縫糸用加工糸0を構成する要素として、少なくとも繊維素材1と下糸2と上糸3がある。繊維素材1を撚り合わせて下糸2を構成し、さらに該下糸2を複数本撚り合わせて上糸3を構成するものである。
【0027】
本発明の縫糸用加工糸0を用いた縫製品4としては、内部に羽毛や中綿などの充填物6を内包し、キルティング加工などのミシン縫製を施す製品、例えばダウンジャケットや中綿パンツ、布団等、上衣、下衣、寝具のいずれであってもよい。
【0028】
かかる縫糸の製造において、繊維素材1はポリエステル系繊維あるいはナイロン系繊維を用いることが、生産性や強度等の点で好ましい。綿や絹などの天然繊維の場合、高コストとなるうえ、経時変化による物性や堅牢度の影響を受けやすい。より好適にはポリエステル系繊維を用いる。
【0029】
該繊維素材1を用いた下糸2の撚り方向はS方向であり、上糸3の撚り方向はZ方向であることが可縫性の面で好ましい。下糸2と上糸3の撚り方向を同一方向とした場合、糸の撚り戻りが起きる方向も同一であるため、撚り戻りの力が強まり、縫製時に糸ほつれやばらつきが起き易くなる。また、下糸2の撚り方向をZ方向、上糸3の撚り方向をS方向とした場合、ミシン縫製時に縫糸を すくう回転釜の回転方向が、上糸3の撚り畝と一致するため、回転釜と上糸3の畝が擦過する際、摩擦力が上糸3の撚り戻り方向に働き、縫製時に糸ほつれやばらつきが起き易くなる。
【0030】
上糸3を構成する下糸2の撚り合わせ本数は、少なくとも2本以上であることが、糸強度の点で好ましい。下糸2の撚り合わせ本数が1本である場合、上糸3はすなわち撚り合わせ無しの下糸2であり、縫製時にかかる張力が全て該1本に集中するため、容易に破断しやすい。より好ましくは、2本〜3本の範囲である。
【0031】
上糸3の総繊度としては、160〜360dtexの範囲であることが、縫製時の充填物6の吹き出し抑制に優れ、好ましい。上糸3の総繊度が160dtex未満である場合、縫製時にミシン針が生地5を貫通することによって生じる生地5上の針穴の大きさを上糸3が下回り、針穴と上糸3との隙間から充填物6が吹き出しやすい。逆に360dtexを超えると、針穴の大きさを上糸3が超過し、縫製時に上糸3と生地5上の針穴との間で貫通摩擦が生じ、該摩擦により充填物6を引き上げやすく、すなわち充填物6が吹き出しやすい。より好適には200〜300dtexの範囲である。
【0032】
下糸2および上糸3の撚り数としては、200〜480T/mの範囲であることが、縫製に耐えうる強度を有し、かつ糸表面の凹凸による摩擦が少なく、かつある程度の撚り戻りによって生じるふくらみが縫製時のミシン針穴を塞ぎやすく好適である。撚り数が200T/m未満であると、結束力が弱く縫製時に容易に糸切れしやすい。逆に480T/mを超えると、撚りによる糸表面の凹凸が増加し、縫製時に該表面凹凸が充填物6を引っ掛けて、生地5表面に引き出す、すなわち充填物6の吹き出しが起きやすい。より好適には300〜450T/mの範囲である。
【0033】
なお、ここでいう撚り数とは、次の数式により算出されるものである。
t=k×N−2
t:撚数
k:撚係数
N:単糸番手(共通式)
【0034】
また、本発明の縫糸用加工糸0においては、縫製時に上糸3と生地5および充填物6との摩擦によって発生する静電気が、上糸3と充填物6を引き寄せ易くする、すなわち充填物6が引き出されやすくなることを低減するために、上糸3が帯電防止加工されていることが好ましい。
【0035】
帯電防止加工の種類としては、陽イオン界面活性剤や親水性加工剤の付与、金属蒸着、導電性樹脂コーティングなどいずれでも良いが、より好適には上糸3へ陽イオン界面活性剤を付与してなることが好ましい。
【0036】
帯電防止剤を付与する際、好ましい付与率としては1〜5%の範囲である。帯電防止剤の付与率が1%未満の場合、帯電抑止力に乏しく、充填物6の吹き出し低減が得られにくい。逆に5%を超えると、帯電防止剤の糸表面への染み出し量が多く、洗濯堅牢度の問題が生じる。より好適には2〜4%の範囲である。
【0037】
加工工程としては、染色後または仕上げ巻き時のどちらか1段階で付与する、または両工程の2段階で付与するなど、いずれでも良いが、好ましくは、染色後と仕上げ巻き時で2段階に分けて付与する。具体的には、染色後、染浴中にて帯電防止剤を染め上がり量目の1〜2%量を投入し処理し、製品巻き時に帯電防止剤を糸量に対し1〜2%付与するものである。
【0038】
また、本発明において下糸2はフィラメント糸であることが、縫製時に下糸2が生地5を貫通することによる摩擦抵抗が少なく、また表面が平滑であることから充填物6を引っ掛けにくく、充填物6の吹き出しが少なく好適である。下糸2がスパン糸の場合、糸表面に毛羽が生じることから縫製時に該毛羽が充填物6を引っ掛けやすく、充填物6が容易に吹き出しやすい。
【0039】
より好適な下糸2の繊度としては、上糸3の総繊度を下糸2の本数で割った値、すなわち下糸2の撚り合わせ本数を2本とした場合、80〜180dtexの範囲であることが好ましい。下糸2の繊度が上記範囲を逸脱した場合、前述の上糸3の好適な総繊度範囲を満たすことができなくなる。より好適には100〜150dtexの範囲である。
【0040】
また、下糸2のフィラメントカウント数としては、40〜100本の範囲にあることが、縫製時に 下糸2の単糸がばらけやすく、下糸2のばらけにより上糸3がふくらむため、ふくらみ分がキルティング部7の縫目を塞ぐ作用を果たすことができ好ましい。
【0041】
下糸2のフィラメントカウント数が40未満である場合、単糸のばらけが少なく、所望の上糸3のふくらみ感が得られない。逆に100を超えると、単糸同士の干渉による糸表面の凹凸が増し、摩擦抵抗が増える。より好適には60〜80本の範囲である。
【0042】
さらに、本発明においては、該下糸2に対する上糸3の撚り数比が50〜80%の範囲にあることが、上糸3の糸強度を保持しつつ縫製時に撚り戻りによるふくらみが起きやすく好ましい。
【0043】
撚り数比が50%未満の場合、下糸2が撚りによる緊張状態を保持したまま上糸3が撚り戻りにより解撚されるため、下糸2と上糸3間での隙間が大きく、充填物6の吹き出し抑制効果が得られにくい。逆に80%を超えると、下糸2と上糸3の解撚トルクが近似するため、トルクが互いに相殺しあい所望のふくらみ感が得られにくい。より好適には60〜70%の範囲である。
【0044】
なお、ここでいう撚り数比とは、次の数式により算出するものである。
撚り数比(%)=上糸撚り数÷下糸撚り数×100
【0045】
また、本発明においては、下糸2の切断伸度が28〜60%の範囲にあることが、縫製品4の生地5伸びや着用時の人体の皮膚伸びに追従しやすく好ましい。一般的に、成人男性の皮膚伸び量は、後肘部の垂直方向で約38%、腋部の垂直方向で約70%程度であることが知られている。ダウンジャケットなどの衣服では、人体寸法に約10%程度のゆとり量を加えて設計されている。すなわち前記皮膚伸びを補うために必要な下糸2の切断伸度は皮膚伸び量からゆとり量を差し引いた量、すなわち28〜60%の範囲にあることが好ましい。下糸2の切断伸度が28%未満であると、本縫糸用加工糸0をダウンジャケットなどの衣服へ用いた場合、運動時に後肘部および腋部に抵抗が生じる、あるいは破断する可能性がある。逆に60%を超えると、伸長歪みによるたわみや外観変化が生じやすい。より好適には30〜45%の範囲である。
【0046】
本発明においては、糸構造を表面凹凸が少なく、かつ縫製時の羽毛と縫糸との摩擦帯電を低減しつつ、縫製後に撚り戻りによりふくらみやすい構造とすることにより、縫製時の充填物6の引き出しを少なくし、かつキルティング部7の縫目の針穴を塞ぎ充填物6の吹き出しを軽減させることが可能となる。
【0047】
本発明の縫糸用加工糸0は、図5に示すように、衣服または寝具のいずれかの縫製品4に好適に用いられる。該縫製品4の構造としては、少なくとも2枚よりなる生地5と充填物6とキルティング部7の縫目とにより構成され、該生地5同士の間に充填物6が内包されているものである。
【0048】
該縫製品4のキルティング部7の縫目には本発明の縫糸用加工糸0が用いられ、充填部と生地5の少なくとも2枚を貫通させてキルティング部7が構成される。
【0049】
ここで、本発明の縫糸用加工糸0を用いたキルティング部7の縫目は、上糸側と下糸側の2面があるが、少なくとも一方に本発明の縫糸用加工糸0を用いる必要があり、例えば、上糸に本発明の縫糸用加工糸0を使用し、下糸にウーリー糸を用いるなど、組み合わせて使用することは何ら差し支えない。より好ましくは、上糸と下糸の2面いずれも本発明の縫糸用加工糸0を用いることである。
【0050】
また、ミシン縫製によりキルティング部73を構成する際、構成方法は本縫いや環縫い、千鳥縫いなどいずれでも良いが、より好ましくは本縫いまたは千鳥縫いのいずれかが、縫い代からの充填物6の吹き出しが少なく、かつキルティング部73の縫目からの充填物6の吹出しが少なく好適である。
【0051】
なお、キルティング部73以外の縫製箇所、例えば縫い代を有する地縫い箇所などで、オーバーロック縫い、あるいはインターロック縫い、あるいはパイピング縫いなどを行い、縫い端をかがり処理することが、縫い代からの充填物6の吹き出しが少なく、かつ縫い代端の糸がほつれにくいため好適である。
【0052】
本発明の縫糸用加工糸0を用いて前記縫製品4を縫製する際、ミシン等の縫製条件も充填物6の吹き出しに影響するため、本発明の縫糸用加工糸0に合わせた縫製条件を設定することが好ましい。
【0053】
ミシン針は、ミシン縫製時の針貫通抵抗が少なく、生地51を切断せずかつ針穴が小さいものであることが好ましい。針形状は針幹が細くかつ先端がボールポイント形状のものが好適に使用される。好ましい針番手としては#8〜#10の範囲にあり、先端形状としてはボールポイント形状であることが好ましい。キルティング部73の縫目の単位長さ当たり針目数としては、10〜15針/3cmの範囲にあることが、充填物6の偏り抑制と針目数低減の両方のバランスが取れる点で好ましい。キルティング部73の縫目のミシン縫製速度としては、2000spm以下の速度で縫製することが縫製中の糸切れが少なく好ましい。
【0054】
生地5の素材には、綿などの天然繊維やウールなどの動物性繊維、ポリエステルやナイロンなどの合成繊維が用いられる。充填物6には、羽毛や合繊繊維中綿、またウールや綿などを単独もしくは混合したものが用いられる。
【0055】
キルティング部73のキルト形状は、一定方向に一定間隔で形成されることが好ましい。生地5のキルト線同士の間隔は、5cm〜15cmの範囲が充填物6の片寄りが少なく、ふくらみ感とハリ感に優れ好ましい。当該間隔が5cm未満であると、キルト線が多数見え、キルト線に囲まれた面の面積が小さいため、ふくらみ感、ハリ感がなく、外観品位が悪い。また、当該間隔が15cmを超えると、充填物62の片寄りが生じやすくなり、洗濯耐久性が悪い。より好適には9〜12cmの範囲である。
【0056】
本発明においては、充填物6を内包した衣服または寝具などのキルティング縫製品4に前記縫糸用加工糸0を用いることにより、キルティング部73からの充填物6の吹き出し抑制に優れた縫製品4を得ることが可能となる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明について実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
なお、実施例中の評価方法、測定方法は以下の方法を用いた。また、測定結果は、表1の通りである。
【0059】
【表1】

【0060】
(評価方法、測定方法)
[伸長率]
JIS L1013「化学繊維フィラメント糸試験方法」に準じ、定速伸長形の試験機を使用し、本発明の縫糸用加工糸0をつかみ間隔20cm、引張速度20cm/minで伸長させた時の切断伸度について測定した。
【0061】
[充填物吹き出し]
タテ50cm、ヨコ40cmの生地5に、充填物6として羽毛を60g/mの目付量で充填した座布団を作成し、ミシン縫製によりタテ方向に3本縫目を入れてキルティング部7とする。これをタンブル乾燥機にゴム管(JISL1076 ICIピリング試験用に規定)10本と一緒に入れ、1時間運転後、座布団のキルティング部7表面に付着した羽毛の個数を計測した。
【0062】
なお、本発明の縫糸用加工糸0は、合計羽毛個数が0以上15以下を良好とした。
【0063】
試験用生地5の構成としては、タテ糸1a、ヨコ糸1bともに33dtex10フィラメントのナイロンフィラメントを使用し、タテ糸の密度149本/inch、ヨコ糸の密度115本/inchに仕上げたタフタ織物を使用した。
【0064】
当該生地5には、予めポリエチレンテレフタレートタフタにシリコーン系撥水剤を用いて撥水処理を施し、カレンダーロールを用いて160℃にて圧力をかけシレー加工を行った。
【0065】
得られた生地5の伸長率はタテ方向3.0%、ヨコ方向4.0%、厚さは0.34mm、目付は63.7g/m、通気度は0.60cc/cm/secであった。
【0066】
充填物6の羽毛の構成としては、ポーランド産ホワイトグースダウンをダウン混用率90%となるよう、洗浄乾燥後、精製加工したものを使用した。
【0067】
キルティング部7の縫製条件としては、ジューキ製本縫いミシン(DDL−555)を用い、ミシン針DB×1#9KN、針目数12針/3cm、縫製速度2000spmで行った。
【0068】
[縫製後の糸直径(かさ高性)]
前記充填物6の吹き出し試験用に作製した座布団の、キルティング部7の縫目表面を光学顕微鏡にて拡大撮影し、縫糸用加工糸0の糸直径をスケールにより測定し、0.01mm単位まで求めた。
【0069】
なお、本発明の縫糸用加工糸0は、縫製後の糸直径が0.17mm以上を良好とした。
【0070】
[外観品位]
本発明の縫糸用加工糸0を用いてダウンジャケット縫製品4を作製したときのキルティング部7の外観品位について、◎、○、△、×、××の5段階で評価した。本発明の縫糸用加工糸0を用いた縫製品4は、◎、○以上を良好とした。表2に評価基準を示す。
【0071】
【表2】

【0072】
なお、ダウンジャケット縫製品4を作製するにあたり、使用した生地5、充填物6、縫製条件は、充填物6の吹き出し試験のものと同一とした。
【0073】
[運動追従性]
本発明の縫糸用加工糸0を用いて作製したダウンジャケット縫製品4を着用し、上肢下垂前屈動作を行った時の運動追従性について、◎、○、△、×、××の5段階で評価した。本発明の縫糸用加工糸0を用いた縫製品4は、◎、○以上を良好とした。表2に評価基準を示す。
【0074】
なお、ダウンジャケット縫製品4を作製するにあたり、使用した生地5、充填物6、縫製条件は、充填物6の吹き出し試験のものと同一とした。
【0075】
[実施例1]
図1、2に示した縫糸用加工糸0および図3、4に示した縫製品4、すなわち極限粘度が0.52のポリエチレンテレフタレートを溶融し、紡糸温度260℃で72孔の複合紡糸口金よりポリエチレンテレフタレートを吐出し、紡糸速度1400m/分で引き取り、繊度130dtex、フィラメントカウント72本の未延伸糸の繊維素材1を得た。得られたポリエステル繊維素材1をS方向に410T/mで施撚し、下糸2を得た。
【0076】
次に、下糸2を2本引き揃え、通常の合撚機を使用してZ方向に320T/mの上ヨリを施し、撚り数比78%の2子の糸条を得た。
【0077】
次に、この糸条を190℃での乾熱処理を施した後、通常のパッケージ染色機を用いて染色処理を行い、染浴中にて陽イオン界面活性剤を染め上がり量目の2%投入した。次いで、湯煎、水洗い、脱水、乾燥し、通常のミシン糸用のボビンに巻き返す際、再度陽イオン界面活性剤を糸量に対して2%付与し、繊度210dtexの上糸3を得てこれを縫糸用加工糸0とした。
【0078】
次に、得られた縫糸用加工糸0を用いて、充填物6の吹き出し評価方法に示す条件にてダウンジャケット縫製品4を作製した。
【0079】
得られた縫糸用加工糸0の切断伸度、充填物6の吹き出し、縫製後の糸直径および縫製品4の外観品位を表1に示す。
【0080】
[実施例2]
実施例1の繊維素材1に繊度180dtex、フィラメントカウント48本のナイロン長繊維を使用し、これをS方向に480T/mで施撚し、下糸2を得た。
【0081】
次に、下糸2を2本引き揃え、通常の合撚機を使用してZ方向に240T/mの上ヨリを施し、撚り数比50%の2子の糸条を得た。
【0082】
次に、この糸条を190℃での乾熱処理を施した後、通常のパッケージ染色機を用いて染色処理を行い、染浴中にて陽イオン界面活性剤を染め上がり量目の2%投入した。次いで、湯煎、水洗い、脱水、乾燥し、通常のミシン糸用のボビンに巻き返す際、陽イオン界面活性剤を糸量に対して3%付与し、繊度360dtexの上糸3を得てこれを縫糸用加工糸0とした。
【0083】
なお、その他の構成は実施例1と同様にした。得られた縫糸用加工糸0の切断伸度、充填物6の吹き出し、縫製後の糸直径および縫製品4の外観品位を表1に示す。
【0084】
[比較例1]
実施例1の縫糸用加工糸0において、帯電防止加工を行わないとする以外は実施例1と同様にして縫糸用加工糸0を得た。
【0085】
得られた縫糸用加工糸0の、切断伸度、充填物6の吹き出し、縫製後の糸直径および縫製品4の外観品位を表1に示す。
【0086】
[比較例2]
実施例1の繊維素材1に繊度110dtex、フィラメントカウント24本のナイロン長繊維を使用し、これをS方向に900T/mで施撚し、下糸2を得た。
【0087】
次に、下糸2を2本引き揃え、通常の合撚機を使用してZ方向に600T/mの上ヨリを施し、撚り数比66%の2子の糸条を得た。その他の構成は実施例1と同様にし、繊度245dtexの上糸3を得てこれを縫糸用加工糸0とした。
【0088】
得られた縫糸用加工糸0の切断伸度、充填物6の吹き出し、縫製後の糸直径および縫製品4の外観品位を表1に示す。
【0089】
[比較例3]
実施例1の繊維素材1に繊度90dtex相当のポリエステル短繊維を使用し、これをZ方向に1190T/mで施撚し、下糸2を得た。
【0090】
次に、下糸2を3本引き揃え、通常の合撚機を使用してZ方向に920T/mの上ヨリを施し、撚り数比77%の3子の糸条を得た。その他の構成は実施例1と同様にし、繊度295dtex相当の上糸3を得てこれを縫糸用加工糸0とした。
【0091】
得られた縫糸用加工糸0の切断伸度、充填物6の吹き出し、縫製後の糸直径および縫製品4の外観品位を表1に示す。
【0092】
[比較例4]
実施例1の繊維素材1に繊度1350dtex相当の綿繊維を使用し、これをZ方向に1350T/mで施撚し、下糸2を得た。
【0093】
次に、下糸2を2本引き揃え、通常の合撚機を使用してS方向に1100T/mの上ヨリを施し、撚り数比81%の2子の糸条を得た。その他の構成は実施例1と同様にし、繊度155dtex相当の上糸3を得てこれを縫糸用加工糸0とした。
【0094】
得られた縫糸用加工糸0の切断伸度、充填物6の吹き出し、縫製後の糸直径および縫製品4の外観品位を表1に示す。
【0095】
表1から明らかなように、本発明の縫糸用加工糸及びそれを用いた縫製品は、繊維素材1にポリエステルあるいはナイロン系繊維を使用し、かつこれをS方向に撚り合わせて下糸2とし、かつこれを少なくとも2本Z方向に撚り合わせ、かつ上糸3の総繊度を160〜360dtexの範囲、かつ上撚り数および下撚り数が共に200〜480T/m、かつ上糸が帯電防止加工されることによって、充填物の吹出し抑制と外観品位に優れた縫糸用加工糸及び縫製品となった。
【0096】
また、該下糸の切断伸度が28〜60%の範囲において、運動追従性に優れた縫糸用加工糸及び縫製品4となった。
【0097】
また、下糸2が繊度80〜180dtexの範囲のマルチフィラメントとし、フィラメントカウント数が40〜100本の範囲とし、該下糸に対する上糸の撚り数比が50〜80%の範囲において、より充填物の吹出し抑制と外観品位に優れた縫糸用加工糸及び縫製品となった。
【0098】
すなわち、本発明の縫糸用加工糸及び縫製品は、発明の要素を多く満たす程、評価は高いものとなった。以上の結果を表1に示す。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、充填物を内包した衣料用または寝具用などの縫糸用加工糸、及びそれを用いたダウンジャケットや布団等の縫製品として利用することができる。
【符号の説明】
【0100】
0:縫糸用加工糸
1:繊維素材
2:下糸
3:上糸
4:縫製品
5:生地
6:充填物
7:キルティング部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系繊維またはナイロン系繊維をS方向に撚り合わせてなる下糸と、少なくとも2本の該下糸をZ方向に撚り合わせてなる上糸とからなり、該上糸の総繊度が160〜360dtexの範囲内にあり、前記上糸の撚り数および前記下糸の撚り数が共に200〜480T/mの範囲内にあり、前記上糸に帯電防止加工が施されていることを特徴とする縫糸用加工糸。
【請求項2】
前記下糸が80〜180dtexの繊度を有するマルチフィラメントであり、該マルチフィラメントのフィラメントカウント数が40〜100本の範囲内にある、請求項1に記載の縫糸用加工糸。
【請求項3】
前記下糸の撚り数に対する前記上糸の撚り数の比が50〜80%の範囲にある、請求項1または2に記載の縫糸用加工糸。
【請求項4】
前記下糸の切断伸度が28〜60%の範囲内にある、請求項1〜3のいずれかに記載の縫糸用加工糸。
【請求項5】
衣服または寝具に用いられ、少なくとも2枚の生地、ならびに充填物およびキルティング部により構成され、少なくとも2枚の前記生地同士の間に前記充填物が内包される縫製品であって、
ポリエステル系繊維またはナイロン系繊維をS方向に撚り合わせてなる下糸と、少なくとも2本の該下糸をZ方向に撚り合わせてなる上糸とからなり、該上糸の総繊度が160〜360dtexの範囲内にあり、前記上糸の撚り数および前記下糸の撚り数が共に200〜480T/mの範囲内にある縫糸用加工糸からなる縫糸を、前記充填物と少なくとも2枚の前記生地に貫通させることにより、前記キルティング部が構成されていることを特徴とする縫製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−201998(P2012−201998A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67374(P2011−67374)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【出願人】(591030020)株式会社フジックス (5)
【Fターム(参考)】