説明

縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤及びその組成物

【課題】易重合性化合物の重合を効率的に抑制することができ、窒素、硫黄、リンや金属などの原子を含まない炭素、水素、酸素のみで構成された環境にやさしく、保存中に着色等の生じない安定な重合禁止剤を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表される縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤。


(nは1から4の整数を表し、Rはアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、グリシジル基、ヒドロキシアルキル基又はアリールオキシアルキル基を表し、OR基が複数ある場合のRは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。X、Y及びZは、各々、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、このうち、XとYは互いに結合して飽和又は不飽和の6員環を形成してもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重合禁止剤に関し、特に、分子内に重合性二重結合を有する易重合性化合物に適用可能な縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤およびその組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分子内に重合性二重結合を有する易重合性化合物は、合成樹脂の原料として工業的に広範に利用されている有機化合物であり、このような易重合性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸(以下、アクリル酸、メタクリル酸をまとめて「(メタ)アクリル酸」と記載する。)、及びそれらのエステル、スチレン系化合物、アクリロニトリル等の多種の化合物が知られている。例えば(メタ)アクリル酸及びそのエステルは、高吸収性樹脂、透明性樹脂、塗料用樹脂、接着剤等の原料モノマーとして有用である。
【0003】
これら易重合性化合物は、光や熱によって重合し易いことから、その製造、輸送あるいは保存中の重合を防止するために種々の重合禁止剤が添加されている。
【0004】
これら易重合性化合物に添加される代表的な重合禁止剤としては、ハイドロキノン、4−メトキシフェノール等のフェノール系重合禁止剤(特許文献1及び2参照。)、o−フェニレンジアミン、ジアリル−p−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミンの誘導体等のアミン系重合禁止剤(特許文献3から7参照。)、ジブチルジチオカルバミン酸銅等の銅塩、酢酸マンガン等のマンガン塩等の金属錯塩系重合禁止剤(特許文献8及び9参照。)、ニトロソ化合物(特許文献10から13参照。)、フェノチアジン化合物(特許文献14)、チオ尿素系化合物等のイオウ系重合禁止剤(特許文献15及び16
参照。)、ホスファイト系重合禁止剤(特許文献17)等が知られている。近年は、安定な遊離基を持つ重合禁止剤も提案されている。たとえば、N−オキシル系化合物(特許文献18参照。)やガルビノキシル系化合物(特許文献19参照。)である。
【0005】
また、これらの重合禁止剤を複数併用して用いる方法等もいろいろ提案されている。多成分系の重合禁止剤の例としては、例えばアクリル酸の蒸留における安定化法として、4−メトキシフェノール、ベンゾキノン及び酸素を併用して用いる方法(特許文献20参照。)が、又、ジフェニルアミンとベンゾキノンあるいは4−メトキシフェノール及び酸素を用いる方法(特許文献21参照。)等がそれぞれ提案されている。
【0006】
また、縮合多環芳香族骨格であるナフタレン骨格やアントラセン骨格を有する重合禁止剤もいくつか提案されている。ナフタレン骨格を有するものとしては、置換もしくは無置換のアルコキシナフトールを初めとするナフトール誘導体を有効成分とする重合禁止剤(特許文献22から24参照。)、4,4’−ジアルコキシ−2,2−ビ−1−ナフトール及びこのものを用いたビニルモノマーの重合防止方法(特許文献25参照。)、ナフトヒドロキノンスルホナートオニウム塩を用いる方法(特許文献26参照。)等が知られている。アントラセン骨格を有するものはあまりないが、トリヒドロキシアントラセンを重合禁止剤に用いた例が知られている(特許文献27、28参照。)。これら縮合多環芳香族骨格であるナフタレン骨格やアントラセン骨格を有する重合禁止剤において従来より知られている化合物は、フェノール性のOH基を有しており、そのOH基が重合禁止効果をもたらしている。
【0007】
これらの縮合多環芳香族骨格を有する化合物において、すべてのフェノール性のOH基をアルコキシ基などで置換し、もはやフェノール性OH基を有していない化合物には禁止効果を持つものは知られていない。事実、重合禁止剤としてよく用いられるハイドロキノンや4−メトキシフェノールにおいても、後述の比較例3からも明らかなように、その骨格のフェノール性のOH基をすべてアルコキシ基で置換したジアルコキシベンゼンは、重合禁止効果を有していない。即ち、これらの化合物が重合禁止効果を発現するにはフェノール性OH基の存在が不可欠で、それらOH基を完全エーテル化した化合物で重合禁止効果を有する化合物は、単環においても縮合多環においても知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭54−14904号公報
【特許文献2】特開平5−320095号公報
【特許文献3】特開昭52−23017号公報
【特許文献4】特開昭52−62219号公報
【特許文献5】特開昭54−14903号公報
【特許文献6】特開平1−230543号公報
【特許文献7】特開平2−248402号公報
【特許文献8】WO96/7631号公報
【特許文献9】特開平7−228548号公報
【特許文献10】特公昭45−1054号公報
【特許文献11】特開昭52−5709号公報
【特許文献12】特公昭58−46496号公報
【特許文献13】特開昭61−126050号公報
【特許文献14】特公昭59−18378号公報
【特許文献15】特開昭60−89447号公報
【特許文献16】特開平8−40979号公報
【特許文献17】特開平8−157795号公報
【特許文献18】特公平4−26639号公報
【特許文献19】特開2003−128611号公報
【特許文献20】特公昭50−6449号公報
【特許文献21】特公昭50−6450号公報
【特許文献22】特開2005−336082号公報
【特許文献23】平9−316022号公報
【特許文献24】特表2010−510316号公報
【特許文献25】特開2006−199893号公報
【特許文献26】特開2008−239599号公報
【特許文献27】特開2003−96013号公報
【特許文献28】特開2003−96014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の重合禁止剤においては、その多くの化合物が、高い毒性を持っていたり、重合禁止効果を生じさせるために酸素を必要であったりするなど不利益が存在していた。また、フェノール性のOH基やアミノ基、遊離基等が存在することにより、重合禁止剤そのものが不安定であり、易重合性化合物の保存中に着色する等の原因となったり、不快なにおいを発したりする原因となっている。また、対象とするモノマーや組成物にフェノール性のOH基やアミン基、遊離基等と反応する基、例えばグリシジル基、酸ハライド、酸無水物、イソシアネート基を含んでいる場合は重合禁止剤が消失していくという不都合が生じている。また、窒素、硫黄、リンや金属を含む化合物は、燃焼等の処理において有害なガスを発生する等、廃棄物処理において特別な注意を必要とする。そのため、これらの原子を含まない炭素、水素、酸素のみで構成された環境にやさしく、酸素不存在下でも重合禁止効果を有し、保存中に着色等の生じない安定な重合禁止剤が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明者らは、前記課題を解決するため、易重合性化合物の重合禁止剤及び重合禁止方法につき鋭意検討した結果、本願発明の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤が、フェノールのようなフェノール性のOH基、又はNH基、あるいはニトロソ基や遊離基のような、従来の重合禁止剤に含まれている、ラジカルと非常に反応しやすい基、あるいは金属錯塩、硫黄やリンのような活性な不対電子を有していないにもかかわらず、優れた重合防止効果を有することを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明における第一の発明は、下記一般式(1)で表される縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤に存する。
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、nは1から4の整数を表し、Rはアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、グリシジル基、ヒドロキシアルキル基又はアリールオキシアルキル基を表し、OR基が複数ある場合のRは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。X、Y及びZは、同一であっても、異なっていてもよく、各々、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、このうち、XとYは互いに結合して飽和又は不飽和の6員環を形成してもよい。)
【0014】
第二の発明は、下記一般式(2)で表されることを特徴とする第一発明に記載の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤に存する。
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、Rはアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、グリシジル基、ヒドロキシアルキル基又はアリールオキシアルキル基を表し、複数あるOR基のRは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。X、Y及びZは、同一であっても、異なっていてもよく、各々、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、このうち、XとYは互いに結合して飽和又は不飽和の6員環を形成してもよい。)
【0017】
第三の発明は、第一又は第二の発明において、X、Y及びZが水素原子であり、Rがメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−ヒドロキシエチル基又は2−ヒドロキシプロピル基であることを特徴とする縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤に存する。
【0018】
第四の発明は、下記一般式(3)で表される縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤に存する。
【0019】
【化3】

【0020】
(式中、R、Rは、同一であっても異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、グリシジル基、ヒドロキシアルキル基又はアリールオキシアルキル基を表し、X、Y及びZは、同一であっても、異なっていてもよく、各々、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、このうち、XとYは互いに結合して飽和又は不飽和の6員環を形成してもよい。)
【0021】
第五の発明は、第四の発明においてX、Y及びZが水素原子であり、R、Rがメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−ヒドロキシエチル基又は2−ヒドロキシプロピル基であることを特徴とする縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤に存する。
【0022】
第六の発明は、下記一般式(4)で表されることを特徴とする縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤に存する。
【0023】
【化4】

【0024】
(式中、R、Rは、同一であっても異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、グリシジル基、ヒドロキシアルキル基又はアリールオキシアルキル基を表し、Zは、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。)
【0025】
第七の発明は、下記一般式(5)で表されることを特徴とする縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤に存する。
【0026】
【化5】

【0027】
(式中、R3は、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、グリシジル基、ヒドロキシアルキル基又はアリールオキシアルキル基を表し、Zは、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。)
【0028】
第八の発明は、易重合性化合物を含有する組成物に配合される重合禁止剤の組成物であって、第一発明から第七発明のいずれかひとつに記載する縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤を含有することを特徴とする重合禁止剤の組成物に存する。
【0029】
第九の発明は、第八の発明に記載の易重合性化合物が、α、β−不飽和カルボン酸化合物、α、β−不飽和カルボン酸エステル化合物、芳香族ビニル化合物、ビニルエステル化合物又はアクリル化合物であることを特徴とする重合禁止剤の組成物に存する。
【0030】
第十の発明は、第八の発明に記載の易重合性化合物が、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、低級脂肪酸ビニルエステル又はアクリルアミドであることを特徴とする重合禁止剤の組成物に存する。
【0031】
第十一の発明は、第八の発明に記載の易重合性化合物が、(メタ)アクリル酸、又は(メタ)アクリル酸のエステルであることを特徴とする重合禁止剤の組成物に存する。
【0032】
第十二の発明は、第一発明から第七発明のいずれかひとつに記載する縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤と、易重合性化合物とを含有する易重合性化合物の組成物に存する。
【0033】
第十三の発明は、第十二の発明に記載の易重合性化合物が、α、β−不飽和カルボン酸化合物、α、β−不飽和カルボン酸エステル化合物、芳香族ビニル化合物、ビニルエステル化合物又はアクリル化合物であることを特徴とする易重合性化合物の組成物に存する。
【0034】
第十四の発明は、第十二の発明に記載の易重合性化合物が、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、低級脂肪酸ビニルエステル又はアクリルアミドであることを特徴とする易重合性化合物の組成物に存する。
【0035】
第十五の発明は、第十二の発明に記載の易重合性化合物が、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルであることを特徴とする易重合性化合物の組成物に存する。
【0036】
第十六の発明は、第一発明から第七発明のいずれかひとつに記載する縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤の存在下で、易重合性化合物を含有する組成物を蒸留塔で蒸留する工程を含み、前記蒸留する工程で得られる成分から易重合性化合物を製造することを特徴とする易重合性化合物の製造方法に存する。
【0037】
第十七の発明は、第十六の発明に記載の易重合性化合物が、α、β−不飽和カルボン酸化合物、α、β−不飽和カルボン酸エステル化合物、芳香族ビニル化合物、ビニルエステル化合物又はアクリル化合物であることを特徴とする易重合性化合物の製造方法に存する。
【0038】
第十八の発明は、第十六の発明に記載の易重合性化合物が、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、低級脂肪酸ビニルエステル又はアクリルアミドであることを特徴とする易重合性化合物の製造方法に存する。
【0039】
第十九の発明は、第十六の発明に記載の易重合性化合物が(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルであることを特徴とする易重合性化合物の製造方法に存する。
【0040】
本発明の記述において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを表す。また、低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。
【発明の効果】
【0041】
本発明の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤を易重合性化合物に用いることにより、モノマーの製造時、精製時、変性時、保存時、輸送時等に意図しない重合を防止することができ、安定に取り扱うことが可能となる。また、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤は、その保存時や使用時において安定に存在するため、対象物の着色を引き起こすことなく効果的に重合を防止することができる。さらに、易重合性化合物の意図しない重合が起こり始めた時、本発明の重合禁止剤を投与することにより、暴走反応を未然に防いだり、緩和したりすることができる。さらにまた、ラジカル反応が関与する他の劣化反応を防止、抑制する薬剤として用いることもできる。例えば、酸化防止剤、光安定剤、防腐剤等である。あるいはラジカル反応を制御する薬剤として用いることもできる。例えば、連鎖移動剤、分子量調整剤等である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
<重合禁止剤>
本発明の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤は、一般式(1)乃至一般式(5)で表される。まず、一般式(1)の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤を下記に示す。
【0043】
【化6】

【0044】
式中、nは1から4の整数を表し、Rはアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、グリシジル基、ヒドロキシアルキル基又はアリールオキシアルキル基を表し、OR基が複数ある場合のRは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。X、Y及びZは、同一であっても、異なっていてもよく、各々、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、このうち、XとYは互いに結合して飽和又は不飽和の6員環を形成してもよい。
【0045】
上記一般式(1)において、n=2の場合は、下記一般式(2)で表わされる化合物である。
【0046】
【化7】

【0047】
式中、Rはアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、グリシジル基、ヒドロキシアルキル基又はアリールオキシアルキル基を表し、複数あるOR基のRは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。X、Y及びZは、同一であっても、異なっていてもよく、各々、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、このうち、XとYは互いに結合して飽和又は不飽和の6員環を形成してもよい。
【0048】
また、上記一般式(2)において、2個のOR基の置換位置がナフタレン骨格の1,4位であるときは、一般式(3)で表わされる化合物となる。一般式(3)において、XとYが互いに結合して飽和又は不飽和の6員環を形成している場合は、当該骨格はアントラセン骨格とも解釈できるので、その場合2個のOR基の置換位置はアントラセン骨格の9,10位ということになる。
【0049】
【化8】

【0050】
一般式(3)において、R、Rは、同一であっても異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、グリシジル基、ヒドロキシアルキル基又はアリールオキシアルキル基を表し、X、Y及びZは、同一であっても、異なっていてもよく、各々、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、このうち、XとYは互いに結合して飽和又は不飽和の6員環を形成してもよい。
【0051】
また、上記一般式(3)において、XとYが互いに結合して不飽和の6員環を形成している場合、当該不飽和の6員環は芳香族性であっても非芳香族性であってもよいが、当該6員環が芳香族性である場合は、一般式(4)で表される化合物となる。
【0052】
【化9】

【0053】
(式中、R、Rは、同一であっても異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、グリシジル基、ヒドロキシアルキル基又はアリールオキシアルキル基を表し、Zは、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。)
【0054】
また、上記一般式(1)において、n=1の場合であって、且つXとYが互いに結合して6員環を形成している場合であって、当該6員環が芳香族性である場合で、OR基がアントラセン環の9位である場合は、一般式(5)で表される化合物となる。
【0055】
【化10】

【0056】
(式中、R3は、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、グリシジル基、ヒドロキシアルキル基又はアリールオキシアルキル基を表し、Zは、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。)
【0057】
一般式(1)又は(2)において、Rで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、p-トリル基、o-トリル基、ナフチル基等が挙げられ、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられ、アルコキシアルキル基としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基等が挙げられる。グリシジル基としては、グリシジル基、2−メチルグリシジル基等が挙げられる。ヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基等が挙げられる。アリールオキシアルキル基としては、フェノキシエチル、トリロキシエチル等が挙げられる。
【0058】
また、一般式(3)及び一般式(4)における、R、Rで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、p-トリル基、o-トリル基、ナフチル基等が挙げられ、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられ、アルコキシアルキル基としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基等が挙げられる。グリシジル基としては、グリシジル基、2−メチルグリシジル基等が挙げられる。ヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基等が挙げられる。アリールオキシアルキル基としては、フェノキシエチル、トリロキシエチル等が挙げられる。
【0059】
また、一般式(5)における、Rで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、p-トリル基、o-トリル基、ナフチル基等が挙げられ、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられ、アルコキシアルキル基としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基等が挙げられる。グリシジル基としては、グリシジル基、2−メチルグリシジル基等が挙げられる。ヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基等が挙げられる。アリールオキシアルキル基としては、フェノキシエチル、トリロキシエチル等が挙げられる。
【0060】
一般式(1)乃至(3)における、X、Y及びZで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、アミル基、2−エチルヘキシル基、4−メチルペンチル、4−メチル−3−ペンテニル基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、p-トリル基、o-トリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0061】
一般式(1)乃至(3)における、XとYが互いに結合している例としては、X及びYがCHCH基であり、XとYが一重結合で結合しているもの、X及びYがCHCH基であり、XとYが二重結合で結合しているもの、X及びYがCH=CH基であり、XとYが二重結合で結合しており芳香環を形成しているものなどが挙げられる。XとYによって形成される6員環はさらにアルキル基又はアリール基が置換していてもよい。さらに置換されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、p-トリル基、o-トリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0062】
一般式(4)及び一般式(5)における、Zで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、アミル基、2−エチルヘキシル基、4−メチルペンチル、4−メチル−3−ペンテニル基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、p-トリル基、o-トリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0063】
次に、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤の具体例を示す。まず、一般式(3)で表される化合物としては、例えば次の化合物が挙げられる。すなわち、一般式(3)において、XとYが互いに結合していない場合は、例えば1,4−ジメトキシナフタレン、1,4−ジエトキシナフタレン、1,4−ジ−n−プロポキシナフタレン、1,4−ジイソプロポキシナフタレン、1,4−ジ−n−ブトキシナフタレン、1,4−ジヘキシルオキシナフタレン、1,4−ビス(2−エチルヘキシルオキシ)ナフタレン、1,4−ビス(2−メトキシエトキシ)ナフタレン、1,4−ビス(2−フェノキシエトキシ)ナフタレン、1,4−ジグリシジルオキシナフタレン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、1,4−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)ナフタレン、1−メトキシ−4−エトキシナフタレン、1−メトキシ−4−ブトキシナフタレン、2−メチル−1,4−ジエトキシナフタレン、2−エチル−1,4−ジエトキシナフタレン等が挙げられる。
【0064】
一般式(3)において、XとYが互いに結合して飽和の6員環を形成している場合の具体例としては、9,10−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9,10−ジエトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9,10−ジ−n−プロポキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9,10−ジイソプロポキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9,10−ジ−n−ブトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9,10−ビス(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9,10−ビス(2−メトキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9,10−ビス(2−フェノキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9−メトキシ−10−エトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9−メトキシ−10−ブトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、2−メチル−9,10−ジエトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン等が挙げられる。
【0065】
一般式(3)において、XとYが互いに結合して不飽和の6員環を形成している場合で当該6員環が非芳香族性の場合の具体例としては、9,10−ジメトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、9,10−ジエトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、9,10−ジ−n−プロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、9,10−ジイソプロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、9,10−ジ−n−ブトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、9,10−ビス(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−ジヒドロアントラセン、9,10−ビス(2−メトキシエトキシ)−1,4−ジヒドロアントラセン、9,10−ビス(2−フェノキシエトキシ)−1,4−ジヒドロアントラセン、9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,4−ジヒドロアントラセン、9−メトキシ−10−エトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、9−メトキシ−10−ブトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、2−メチル−9,10−ジエトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン等が挙げられる。
【0066】
一般式(3)において、XとYが互いに結合して不飽和の6員環を形成している場合で当該6員環が芳香族性の場合は、一般式(4)の化合物となるが、その具体例としては、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジ−n−プロポキシアントラセン、9,10−ジイソプロポキシアントラセン、9,10−ジ−n−ブトキシアントラセン、9,10−ビス(2−エチルヘキシルオキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−メトキシエトキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−フェノキシエトキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、9−メトキシ−10−エトキシアントラセン、9−メトキシ−10−ブトキシアントラセン、2−メチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセン等が挙げられる。
【0067】
一般式(3)で表される化合物以外の一般式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば次の化合物が挙げられる。すなわち、一般式(2)において、XとYが互いに結合していない場合の具体例としては、1,5−ジメトキシナフタレン、1,6−ジメトキシナフタレン、1,7−ジメトキシナフタレン、2,6−ジメトキシナフタレン、2,7−ジメトキシナフタレン、1,5−ジエトキシナフタレン、1,6−ジエトキシナフタレン、1,7−ジエトキシナフタレン、2,6−ジエトキシナフタレン、2,7−ジエトキシナフタレン、1,5−ジ−n−プロポキシナフタレン、1,5−ジイソプロポキシナフタレン、1,6−ジ−n−プロポキシナフタレン、1,6−ジイソプロポキシナフタレン、1,7−ジ−n−プロポキシナフタレン、1,7−ジイソプロポキシナフタレン、2,6−ジ−n−プロポキシナフタレン、2,6−ジイソプロポキシナフタレン、2,7−ジ−n−プロポキシナフタレン、2,7−ジイソプロポキシナフタレン、1,5−ジ−n−ブトキシナフタレン、1,6−ジ−n−ブトキシナフタレン、1,7−ジ−n−ブトキシナフタレン、2,6−ジ−n−ブトキシナフタレン、2,7−ジ−n−ブトキシナフタレン、1,5−ビス(2−エチルへキシルオキシ)ナフタレン、1,6−ビス(2−エチルへキシルオキシ)ナフタレン、1,7−ビス(2−エチルへキシルオキシ)ナフタレン、2,6−ビス(2−エチルへキシルオキシ)ナフタレン、2,7−ビス(2−エチルへキシルオキシ)ナフタレン、1,5−ビス(2−メトキシエトキシ)ナフタレン、1,6−ビス(2−メトキシエトキシ)ナフタレン、1,7−ビス(2−メトキシエトキシ)ナフタレン、2,6−ビス(2−メトキシエトキシ)ナフタレン、2,7−ビス(2−メトキシエトキシ)ナフタレン、1,5−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、1,6−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、1,7−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、2,6−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、2,7−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、1,5−ビス(2−フェノキシエトキシ)ナフタレン、1,6−ビス(2−フェノキシエトキシ)ナフタレン、1,7−ビス(2−フェノキシエトキシ)ナフタレン、2,6−ビス(2−フェノキシエトキシ)ナフタレン、2,7−ビス(2−フェノキシエトキシ)ナフタレン、1−メトキシ−5−エトキシナフタレン、1−メトキシ−6−エトキシナフタレン、1−メトキシ−7−エトキシナフタレン、2−メトキシ−6−エトキシナフタレン、2−メトキシ−7−エトキシナフタレン、1−メトキシ−5−n−ブトキシナフタレン、1−メトキシ−6−n−ブトキシナフタレン、1−メトキシ−7−ブトキシナフタレン、2−メトキシ−6−n−ブトキシナフタレン、2−メトキシ−7−n−ブトキシナフタレン、2−メチル−1,5−ジメトキシナフタレン、2−メチル−1,6−ジメトキシナフタレン、2−メチル−1,7−ジメトキシナフタレン、2−エチル−1,5−ジエトキシナフタレン、2−エチル−1,6−ジエトキシナフタレン、2−エチル−1,7−ジエトキシナフタレン等が挙げられる。
【0068】
一般式(2)において、XとYが互いに結合して飽和の6員環を形成している場合の具体例としては、8,9−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、7,9−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6,9−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5,9−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、8,9−ジエトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、7,9−ジエトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6,9−ジエトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5,9−ジエトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、8,9−ジ−n−プロポキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、8,9−ジイソプロポキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、7,9−ジ−n−プロポキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、7,9−ジイソプロポキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6,9−ジ−n−プロポキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6,9−ジイソプロポキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5,9−ジ−n−プロポキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5,9−ジイソプロポキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、8,9−ジ−n−ブトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、7,9−ジ−n−ブトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6,9−ジ−n−ブトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5,9−ジ−n−ブトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、8,9−ビス(2−エチルへキシルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、7,9−ビス(2−エチルへキシルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6,9−ビス(2−エチルへキシルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5,9−ビス(2−エチルへキシルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、8,9−ビス(2−メトキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、7,9−ビス(2−メトキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6,9−ビス(2−メトキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5,9−ビス(2−メトキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、8,9−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、7,9−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6,9−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5,9−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、8,9−ビス(2−フェノキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、7,9−ビス(2−フェノキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6,9−ビス(2−フェノキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5,9−ビス(2−フェノキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、8−エトキシ−9−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、7−エトキシ−9−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−エトキシ−9−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5−エトキシ−9−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、8−メトキシ−9−エトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、7−メトキシ−9−エトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−メトキシ−9−エトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5−メトキシ−9−エトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、8−ブトキシ−9−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、7−ブトキシ−9−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−n−ブトキシ−9−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5−n−ブトキシ−9−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、7−メチル−5,9−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、7−メチル−6,9−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、8−メチル−7,9−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、7−エチル−5,9−ジエトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、7−エチル−6,9−ジエトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、8−エチル−7,9−ジエトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン等が挙げられる。
【0069】
一般式(2)において、XとYが互いに結合して不飽和の6員環を形成している場合で当該6員環が非芳香族性の場合の具体例としては、8,9−ジメトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、7,9−ジメトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、6,9−ジメトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,9−ジメトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、8,9−ジエトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、7,9−ジエトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、6,9−ジエトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,9−ジエトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、8,9−ジ−n−プロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、8,9−ジイソプロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、7,9−ジ−n−プロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、7,9−ジイソプロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、6,9−ジ−n−プロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、6,9−ジイソプロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,9−ジ−n−プロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,9−ジイソプロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、8,9−ジ−n−ブトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、7,9−ジ−n−ブトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、6,9−ジ−n−ブトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,9−ジ−n−ブトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、8,9−ビス(2−エチルへキシルオキシ)−1,4−ジヒドロアントラセン、7,9−ビス(2−エチルへキシルオキシ)−1,4−ジヒドロアントラセン、6,9−ビス(2−エチルへキシルオキシ)−1,4−ジヒドロアントラセン、5,9−ビス(2−エチルへキシルオキシ)−1,4−ジヒドロアントラセン、8,9−ビス(2−メトキシエトキシ)−1,4−ジヒドロアントラセン、7,9−ビス(2−メトキシエトキシ)−1,4−ジヒドロアントラセン、6,9−ビス(2−メトキシエトキシ)−1,4−ジヒドロアントラセン、5,9−ビス(2−メトキシエトキシ)−1,4−ジヒドロアントラセン、8,9−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,4−ジヒドロアントラセン、7,9−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,4−ジヒドロアントラセン、6,9−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,4−ジヒドロアントラセン、5,9−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,4−ジヒドロアントラセン、8,9−ビス(2−フェノキシエトキシ)−1,4−ジヒドロアントラセン、7,9−ビス(2−フェノキシエトキシ)−1,4−ジヒドロアントラセン、6,9−ビス(2−フェノキシエトキシ)−1,4−ジヒドロアントラセン、5,9−ビス(2−フェノキシエトキシ)−1,4−ジヒドロアントラセン、8−エトキシ−9−メトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、7−エトキシ−9−メトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、6−エトキシ−9−メトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5−エトキシ−9−メトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、8−メトキシ−9−エトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、7−メトキシ−9−エトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、6−メトキシ−9−エトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5−メトキシ−9−エトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、8−ブトキシ−9−メトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、7−ブトキシ−9−メトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、6−ブトキシ−9−メトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5−ブトキシ−9−メトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、7−メチル−5,9−ジメトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、7−メチル−6,9−ジメトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、8−メチル−7,9−ジメトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、7−エチル−5,9−ジエトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、7−エチル−6,9−ジエトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、8−エチル−7,9−ジエトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン等が挙げられる。
【0070】
一般式(2)において、XとYが互いに結合して不飽和の6員環を形成している場合で当該6員環が芳香族性の場合の具体例としては、1,10−ジメトキシアントラセン、2,10−ジメトキシアントラセン、3,10−ジメトキシアントラセン、2,6−ジメトキシアントラセン、2,7−ジメトキシアントラセン、1,10−ジエトキシアントラセン、2,10−ジエトキシアントラセン、3,10−ジエトキシアントラセン、1,10−ジ−n−プロポキシアントラセン、1,10−ジイソプロポキシアントラセン、2,10−ジ−n−プロポキシアントラセン、2,10−ジイソプロポキシアントラセン、3,10−ジ−n−プロポキシアントラセン、3,10−ジイソプロポキシアントラセン、1,10−ジ−n−ブトキシアントラセン、2,10−ジ−n−ブトキシアントラセン、3,10−ジ−n−ブトキシアントラセン、1,10−ビス(2−エチルへキシルオキシ)アントラセン、2,10−ビス(2−エチルへキシルオキシ)アントラセン、3,10−ビス(2−エチルへキシルオキシ)アントラセン、1,10−ビス(2−メトキシエトキシ)アントラセン、2,10−ビス(2−メトキシエトキシ)アントラセン、3,10−ビス(2−メトキシエトキシ)アントラセン、1,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、2,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、3,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、1,10−ビス(2−フェノキシエトキシ)アントラセン、2,10−ビス(2−フェノキシエトキシ)アントラセン、3,10−ビス(2−フェノキシエトキシ)アントラセン、1−エトキシ−10−メトキシアントラセン、2−エトキシ−10−メトキシアントラセン、3−エトキシ−10−メトキシアントラセン、2−メトキシ−10−エトキシアントラセン、3−メトキシ−10−エトキシアントラセン、1−n−ブトキシ−10−メトキシアントラセン、2−n−ブトキシ−10−メトキシアントラセン、3−n−ブトキシ−10−メトキシアントラセン、2−メチル−5,9−ジメトキシアントラセン、2−メチル−6,9−ジメトキシアントラセン、2−メチル−7,9−ジメトキシアントラセン、2−エチル−5,9−ジエトキシアントラセン、2−エチル−6,9−ジエトキシアントラセン、2−エチル−7,9−ジエトキシアントラセン等が挙げられる。
【0071】
さらに、一般式(2)又は一般式(3)で表される化合物以外の一般式(1)で表される化合物であり、n=1である化合物の具体例としては、例えば次の化合物が挙げられる。まず、XとYが互いに結合していない場合の具体例としては、1−メトキシナフタレン、1−エトキシナフタレン、1−n−プロポキシナフタレン、1−イソプロポキシナフタレン、1−n−ブトキシナフタレン、1−(2−エチルヘキシルオキシ)ナフタレン、2−メトキシナフタレン、2−エトキシナフタレン、2−n−プロポキシナフタレン、2−イソプロポキシナフタレン、2−n−ブトキシナフタレン、2−(2−エチルヘキシルオキシ)ナフタレン等が挙げられる。
【0072】
一般式(1)において、n=1であり、XとYが互いに結合して飽和の6員環を形成している場合の具体例としては、9−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9−エトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9−n−プロポキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン9−イソプロポキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9−n−ブトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−エトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−n−プロポキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−イソプロポキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−n−ブトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン等が挙げられる。
【0073】
一般式(1)において、n=1であり、XとYが互いに結合して不飽和の6員環を形成している場合で当該6員環が非芳香族性の場合の具体例としては、9−メトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、9−エトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、9−n−プロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、9−イソプロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、9−n−ブトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、9−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−ジヒドロアントラセン、6−メトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、6−エトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、6−n−プロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、6−イソプロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、6−n−ブトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、6−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−ジヒドロアントラセン等が挙げられる。
【0074】
一般式(1)において、n=1であり、XとYが互いに結合して不飽和の6員環を形成している場合で当該6員環が芳香族性の場合の具体例としては、9−メトキシアントラセン、9−エトキシアントラセン、9−n−プロポキシアントラセン、9−イソプロポキシアントラセン、9−n−ブトキシアントラセン、9−(2−エチルヘキシルオキシ)アントラセン、2−メトキシアントラセン、2−エトキシアントラセン、2−n−プロポキシアントラセン、2−イソプロポキシアントラセン、2−n−ブトキシアントラセン、2−(2−エチルヘキシルオキシ)アントラセン等が挙げられる。これらの化合物のうち、9−メトキシアントラセン、9−エトキシアントラセン、9−n−プロポキシアントラセン、9−イソプロポキシアントラセン、9−n−ブトキシアントラセン、9−(2−エチルヘキシルオキシ)アントラセンは、一般式(5)の化合物の具体例となる。
【0075】
さらに、一般式(2)又は一般式(3)で表される化合物以外の一般式(1)で表される化合物であり、nが3以上である化合物の具体例としては、例えば次の化合物が挙げられる。まず、XとYが互いに結合していない場合の具体例としては、1,2,4−トリメトキシナフタレン、1,2,4−トリエトキシナフタレン、1,2,4−トリプロポキシナフタレン、1,2,4−トリブトキシナフタレン、1,4,5−トリメトキシナフタレン、1,4,5−トリエトキシナフタレン、1,4,5−トリ−n−プロポキシナフタレン、1,4,5−トリイソプロポキシナフタレン、1,4,5−トリ−n−ブトキシナフタレン、1,4,6−トリメトキシナフタレン、1,4,6−トリエトキシナフタレン、1,4,6−トリ−n−プロポキシナフタレン、1,4,6−トリイソプロポキシナフタレン、1,4,6−トリ−n−ブトキシナフタレン、1,4,5,8−テトラメトキシナフタレン、1,4,5,8−テトラエトキシナフタレン、1,4,5,8−テトラ−n−プロポキシナフタレン、1,4,5,8−テトライソプロポキシナフタレン、1,4,5,8−テトラ−n−ブトキシナフタレン等が挙げられる。
【0076】
一般式(1)において、nが3以上であり、XとYが互いに結合して飽和の6員環を形成している場合の具体例としては、5,7,9−トリメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5,7,9−トリエトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5,7,9−トリ−n−プロポキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5,7,9−トリイソプロポキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5,7,9−トリ−n−ブトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5,6,9−トリメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5,6,9−トリエトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5,6,9−トリ−n−プロポキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5,6,9−トリイソプロポキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5,6,9−トリ−n−ブトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5,6,8,9−テトラメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5,6,8,9−テトラエトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5,6,8,9−テトラ−n−プロポキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5,6,8,9−テトライソプロポキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5,6,8,9−テトラ−n−ブトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン等が挙げられる。
【0077】
一般式(1)において、nが3以上であり、XとYが互いに結合して不飽和の6員環を形成している場合で、当該6員環が非芳香族性の場合の具体例としては、5,9,10−トリメトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,9,10−トリエトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,9,10−トリ−n−プロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,9,10−トリイソプロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,9,10−トリ−n−ブトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,6,9−トリメトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,6,9−トリエトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,6,9−トリ−n−プロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,6,9−トリイソプロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,6,9−トリ−n−ブトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,7,9−トリメトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,7,9−トリエトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,7,9−トリ−n−プロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,7,9−トリイソプロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,7,9−トリ−n−ブトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,8,9−トリメトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,8,9−トリエトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,8,9−トリ−n−プロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,8,9−トリイソプロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,8,9−トリ−n−ブトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,6,9,10−テトラメトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,6,9,10−テトラエトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,6,9,10−テトラ−n−プロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,6,9,10−テトライソプロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,6,9,10−テトラ−n−ブトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,8,9,10−テトラメトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,8,9,10−テトラエトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,8,9,10−テトラ−n−プロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,8,9,10−テトライソプロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,8,9,10−テトラ−n−ブトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,6,7,9−テトラメトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,6,7,9−テトラエトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,6,7,9−テトラ−n−プロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,6,7,9−テトライソプロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,6,7,9−テトラ−n−ブトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,6,7,10−テトラメトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,6,7,10−テトラエトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,6,7,10−テトラ−n−プロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,6,7,10−テトライソプロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,6,7,10−テトラ−n−ブトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,6,8,9−テトラメトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,6,8,9−テトラエトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,6,8,9−テトラ−n−プロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,6,8,9−テトライソプロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,6,8,9−テトラ−n−ブトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,6,8,10−テトラメトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,6,8,10−テトラエトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,6,8,10−テトラ−n−プロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,6,8,10−テトライソプロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、5,6,8,10−テトラ−n−ブトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン等が挙げられる。
【0078】
一般式(1)において、nが3以上であり、XとYが互いに結合して不飽和の6員環を形成している場合で、当該6員環が芳香族性の場合の具体例としては、2,4,9−トリメトキシアントラセン、2,4,9−トリエトキシアントラセン、2,4,9−トリプロポキシアントラセン、2,4,9−トリブトキシアントラセン、5,6,8,9−テトラメトキシアントラセン、5,6,8,9−テトラエトキシアントラセン、5,6,8,9−テトラ−n−プロポキシアントラセン、5,6,8,9−テトライソプロポキシアントラセン、5,6,8,9−テトラ−n−ブトキシアントラセン等が挙げられる。
【0079】
一般式(1)及び(2)におけるR、並びに一般式(3)及び一般式(4)におけるR、R、並びに一般式(5)におけるRで示されるアルキル基としては、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。プロピル基としてはn−プロピル基、i−プロピル基、ブチル基としては、n−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基といった異性体が含まれる。これらのアルキル基のうち、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基である事が特に好ましい。
【0080】
一般式(1)及び(2)におけるR、並びに一般式(3)及び一般式(4)におけるR、R、並びに一般式(5)におけるRで示されるヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基が好ましく、特に、2−ヒドロキシエトキシ基、2−ヒドロキシプロピル基が好ましい。
【0081】
また、一般式(1)におけるORで表される置換基の置換位置としては、nが1の場合はナフタレン骨格の1位又は、一般式(5)となるアントラセン骨格の9位が好ましく、nが2の場合は、一般式(2)となるが、ナフタレン骨格の1,4位、1,6位、2,7位、2,6位又はアントラセン骨格の9,10位、8,9位、7,9位、6,9位が好ましく、nが3の場合は、ナフタレン骨格の1,2,4位、1,4,5位、1,4,6位又はアントラセン骨格の5,9,10位、6,9,10位が好ましく、nが4の場合は、ナフタレン骨格の1,4,5,8位又はアントラセン骨格の6,7,9,10位が好ましい。特に、一般式(3)で表されるナフタレン骨格の1,4位にOR基が置換した化合物が重合禁止能の高さから特に好ましい。アントラセン骨格を有する化合物の場合は、一般式(4)で表される9,10位にOR基が置換した化合物が特に好ましい。ナフタレン骨格の1,4位にOR基が置換した化合物又はアントラセン骨格の9,10位にOR基が置換した化合物で、X及びYが水素原子である化合物は、重合禁止能が高いこととともに製造が容易であることから、さらに好ましい。
【0082】
本発明の縮合多環芳香族骨格を有する化合物は、対応するヒドロキシナフタレン化合物又はヒドロキシアントラセン化合物を、ジアルキル硫酸等のアルキル化剤によるアルキル化、ブロモベンゼン等のアリール化剤によるアリール化、エピクロルヒドリンなどによるグリシジル化、酸化エチレン等のアルキレンオキサイドによるヒドロキシアルキル化をすることにより容易に合成できる。
【0083】
<重合禁止剤の組成物>
本発明の重合禁止剤の組成物は、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤を含有する組成物であり、易重合性化合物に重合禁止剤として配合される組成物である。例えば、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤と他の重合禁止剤の混合物や重合禁止剤の溶液等が挙げられる。
【0084】
本発明における易重合性化合物は、分子内に重合性二重結合を有する化合物であれば特に限定されない。このような易重合性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸等のα、β−不飽和カルボン酸化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(α−ヒドロキシメチル)アクリレート、エチル(α−ヒドロキシメチル)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシメタクリレート、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート等のα、β−不飽和カルボン酸エステル化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル化合物;アクリロニトリル、アクリルアミドのようなアクリル化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデンのような置換エチレン化合物;ブタジエン、イソプレンのようなジエン化合物などが挙げられる。
【0085】
また、これらの易重合性化合物は、1種で、又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0086】
前記易重合性化合物の中でも、α、β−不飽和カルボン酸化合物、α、β−不飽和カルボン酸エステル化合物、芳香族ビニル化合物、ビニルエステル化合物、アクリル化合物が好ましい。
【0087】
これらの化合物の中でも、α、β−不飽和カルボン酸化合物である(メタ)アクリル酸、α、β−不飽和カルボン酸エステルである(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物であるスチレン、ビニルエステル化合物である酢酸ビニル等の低級脂肪酸ビニルエステル、アクリル化合物であるアクリルアミドが好ましい。特に、本発明の重合禁止剤の効果が顕著であるという点から、α、β−不飽和カルボン酸化合物である(メタ)アクリル酸、α、β−不飽和カルボン酸エステルである(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
【0088】
前記易重合性化合物は、前記易重合性化合物を含有する組成物であれば、その形態や易重合性化合物の含有量は特に限定されない。例えば易重合性化合物そのものや易重合性化合物の溶液等が挙げられる。
【0089】
前記重合禁止剤の組成物は、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤の複数種を混合して用いてもよく、また、本発明の効果を損なわない範囲において、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤以外の他の重合禁止剤等の成分を含有していてもよい。このような他の成分としては、特に限定されないが、重合禁止剤として公知の化合物等が挙げられる。
【0090】
例えば、フェノール系重合禁止剤、チオエーテル系重合禁止剤、アミン系重合禁止剤、ニトロソ系重合禁止剤、N−オキシル系化合物、分子状酸素から選ばれる化合物の少なくとも一種を含有してもよい。
【0091】
フェノール系重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、4−メトキシフェノール、クレゾール、tert−ブチルカテコール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、1−メトキシ−4−ナフトール等が挙げられる。
【0092】
チオエーテル系重合禁止剤としては、例えばフェノチアジン、ジステアリルチオジプロピオネート等が挙げられる。
【0093】
アミン系重合禁止剤としては、例えばp−フェニレンジアミン、4−アミノジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−i−プロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、ジフェニルアミン、N−フェニル−β−ナフチルアミン、4,4’−ジクミルジフェニルアミン、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン等が挙げられる。
【0094】
ニトロソ系重合禁止剤としては、例えばN−ニトロソジフェニルアミン、N−ニトロソフェニルナフチルアミン、N−ニトロソジナフチルアミン、p−ニトロソフェノール、ニトロソベンゼン、p−ニトロソジフェニルアミン、α−ニトロソ−β−ナフトール等が挙げられる。
【0095】
N−オキシル系化合物としては、例えばピペリジン−1−オキシル、ピロリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−オキソピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等のニトロキシドが挙げられる。
【0096】
分子状酸素としては、酸素ガスそのものでもよいし、窒素等の不活性ガスに希釈したものを用いてもよいが、経済的には空気を用いる方法が好ましい。
【0097】
また、前記重合禁止剤の組成物は、銅塩化合物及び/又はマンガン塩化合物をさらに含有していてもよい。このような化合物としては、例えばジアルキルジチオカルバミン酸銅、酢酸銅、サリチル酸銅、チオシアン酸銅、硝酸銅、塩化銅、炭酸銅、水酸化銅、アクリル酸銅等の銅塩;ジアルキルジチオカルバミン酸マンガン、ジフェニルジチオカルバミン酸マンガン、蟻酸マンガン、酢酸マンガン、オクタン酸マンガン、ナフテン酸マンガン、過マンガン酸マンガン、エチレンジアミン四酢酸のマンガン塩等が挙げられる。
【0098】
これらの前記他の成分は、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤に対して単独で、あるいは同時に二種類以上で用いることができる。これらの他の成分は、適用対象の易重合性化合物の種類や用途等に応じて適宜選択することができる。
【0099】
<易重合性化合物の組成物>
本発明の易重合性化合物の組成物は、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤又は本発明の重合禁止剤の組成物と、前述した易重合性化合物とを含有する。また、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を含有していてもよい。
【0100】
本発明の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤又は重合禁止剤の組成物を易重合性化合物に添加する方法は、通常公知の方法で実施すればよく、特に限定されないが、例えば(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステルを製造する場合に関して説明すれば、重合禁止剤を固体又は粉体のまま直接(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステルに添加する方法や、重合禁止剤又は重合禁止剤の組成物を適当な有機溶剤に溶解して添加してもよい。
【0101】
前記易重合性化合物の組成物中における本発明の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤の含有量は、易重合性化合物の種類、用途、状態、周辺環境等に応じて適宜決定できる。例えば易重合性化合物が(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステルである場合では、易重合性化合物の保管や製造時の蒸留における高温での処理等、様々な場合によって異なるが、本発明の重合禁止剤の配合量は、十分な重合防止効果と経済性との観点から、通常、易重合性化合物に対して10〜5,000質量ppm、好ましくは、50〜1,000質量ppmの範囲より選ばれる。
【0102】
<用途>
本発明の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤は、酸素不存在下でも、その重合禁止効果を有するため、易重合性化合物の保存中のような酸素と接触する機会の無い系や、易重合性化合物の製造時、特に蒸留精製時において、酸素を混入したくない系などに有効に用いることができる。例えば、例えば、「高分子添加剤ハンドブック」((株)シーエムシー出版、2010年11月)、「高分子添加剤と環境対策」((株)シーエムシー出版、2003年5月)等に記載されている薬剤(具体的には、酸化防止剤、光安定剤、防腐剤等、ラジカル反応が関与する他の劣化反応を防止、抑制する薬剤)として用いることもできる。
【0103】
本発明の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤は、上記の通り重合禁止剤として使用される他、使用する場面ごとに、重合防止剤、重合抑制剤、重合遅延剤、連鎖移動剤、分子量調整剤、スケール防止剤、汚れ防止剤などとも呼ばれ、これら用途ごとの名称に拘わらず、ラジカルを捕捉したり、特にモノマーの重合を禁止したり、抑止したり、遅延したり、生成ポリマーの分子量を制御する等、ラジカル反応、特に重合を抑制的に制御する薬剤と定義することができる。
【0104】
本発明の重合禁止剤が使用される用途に関しては、具体的には、モノマーの合成、変成、精製、蒸留、貯蔵、保管、移送、噴霧、塗布、重合、廃棄などのモノマーの製造、取り扱いに関わるすべてのプロセスに使用することができる。また、何らかの原因で暴走的に発生した異常重合など、緊急時の暴走反応防止のための薬剤いわゆるショートストッパーやクエンチャーとして使用することもできる。
【0105】
更に、モノマーの製造、取り扱いに関わる全てのプロセスにて生じる、装置への付着物、析出物、所謂スケールを防止するために本発明の重合禁止剤を単独または、他の薬剤と混合、あるいは変性したものを装置へ塗布することにより供することも可能である。斯かる用途に関する詳細は、例えば、「水溶性高分子の新展開」((株)シーエムシー出版、2004年5月)を参照することができる。
【0106】
また、本発明の重合禁止剤をポリマーにグラフトさせ、ポリマー自体を重合禁止剤に変性させ、塗布したり、成型加工したりして、利用することも可能である。斯かる用途に関する詳細は、例えば、「P.Yang,Journal of Polymer Science PartA,42.4047(2004)」を参照することができる。
【0107】
また、上記のラジカルを消去したり、安定化する作用機構を利用することにより、重合に際し、重合開始剤、光開始剤、増感剤、連鎖移動剤と共に利用でき、これらの薬剤と組み合わせることにより、合成するポリマーの分子量を制御したり、共重合の際のシークエンスを制御したり、ブロックポリマー、グラフトポリマー、デンドリマーを合成することもできる。
【0108】
その際の重合態様としては、塊状、溶液、乳化(コロイド、エマルション、ラテックスとも呼ばれる)、分散、懸濁、気相、固相の状態の何れであってもよい。特に、接着剤、粘着剤、塗料、コーティング材などの用途では、様態として、一液型だけでなく多液型で硬化や重合して使用される態様もあり、それらの液に添加して使用することもできる。重合に際し、熱分解型、光分解型などの開始剤を添加するか又は添加せずに、熱、紫外線、電子線、マイクロ波などの電離線照射、機械的エネルギーを与えて重合させることが一般的である。これらの重合様態において重合用の重合性モノマー組成物の保存安定性を改良する目的で本発明の重合禁止剤を使用することもできる。
【0109】
本発明の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤は、上記のすべての使用態様において以下に挙げる対象物に使用することができる。すなわち、モノマー組成物として、接着剤、粘着剤、レジスト、封止材、塗料、コーティング、歯科材料、医用材料などに使用されるモノマー組成物が挙げられる。ポリマー組成物として、ポリマー同士やポリマーとオリゴマーとのポリマーアロイ、ポリマーブレンド、ポリマーとモノマーのシラップ、ポリマーを水、有機溶媒などに溶解、分散させたポリマー溶液、ポリマー分散液、ポリマー乳化液などが挙げられる。複合体(コンポジット)として、ポリマーと無機物質(セラミックス、ガラス等)、金属、あるいは有機物質との複合体が挙げられる。更に、他の物質と反応させて、それら化合物にラジカル捕捉能を付与することが出来る。対象物質として、金属、ポリマー、オリゴマー、モノマー等有機物質、セラミックス、紙、布、毛皮などの天然物などが挙げられる。
【0110】
更に、本発明の重合禁止剤は、上記のラジカルを消去し、安定化する作用機構を利用することにより、制御できる重合以外の各種反応、すなわち、酸化、老化、腐敗、燃焼、生体反応など、ラジカルの関与する全ての反応にも使用することができる。例えば、ポリマーや他の化学薬剤などの酸化防止剤、保存安定剤、老化防止剤、増粘防止剤として使用することもできる他、燃焼反応の抑制、防止、生体内で発生する有害ラジカルの捕捉、消去(例えば特開平5−213764公報)、ラジカルに起因する癌、梗塞などの疾病や老化(例えば”Oxidative Stress in Dermatology”、論文“Skin Diseases
Associated with Oxidative Irjury”(Marcel Decker Inc.、ニューヨーク、バーゼル、香港、発行者:Juergen Fuchs、フランクフルトおよびLester Packer、バークレー/カリフォルニア州))の予防効果も期待できる。
【0111】
<易重合性化合物の製造方法>
本発明の易重合性化合物の製造方法は、前述した本発明の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤の存在下で、前述した易重合性化合物を含有する組成物を蒸留塔で蒸留する工程を含み、この工程で得られる成分から易重合性化合物を製造する方法である。また、蒸留する工程以外においても、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤の存在下で行う、易重合性化合物を液状で取り扱う工程や、易重合性化合物が加熱されて重合しやすくなっている工程も含む。
【0112】
本発明の製造方法において、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤は、そのまま、又は前述した重合禁止剤の組成物として、又は前述した易重合性化合物の組成物として使用することができる。
【0113】
本発明の易重合性化合物の製造方法の対象となる化合物としては、前述した易重合性化合物の組成物に対応する化合物が挙げられる。
【0114】
本発明の易重合性化合物の製造方法は、本発明の重合禁止剤又はその組成物を易重合性化合物に添加したり、担持させたりすることにより行う。本発明の重合禁止剤又はその組成物を易重合性化合物に添加する方法としては、通常公知の方法で実施すればよく、特に限定されないが、例えば(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステルを製造する場合に関して説明すれば、重合禁止剤を固体又は粉体のまま直接(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステルに添加する方法や、重合禁止剤又は重合禁止剤の組成物を適当な有機溶剤に溶解して添加してもよい。
【0115】
また、易重合性化合物との接触面に本発明の重合禁止剤又はその組成物を何らかの手法で担持させることにより易重合性化合物を製造することもでき、これにより、重合防止やスケール防止することが可能となる。担持方法としては重合禁止剤又は重合禁止剤の組成物を直接接触面に反応させたり、樹脂と反応させたり、樹脂に練りこんで接触面に塗布硬化させたりすることが可能である。
【0116】
本発明の易重合性化合物の組成物及び易重合性化合物の製造方法では、実質的に酸素不存在下で行うことも可能であるが、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤に分子状酸素を併用することもできる。分子状酸素としては、酸素ガスそのものでもよいし、窒素等の不活性ガスに希釈したものを用いてもよいが、経済的には空気を用いる方法が好ましい。
【0117】
本発明では、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤を易重合性化合物に使用することにより、α、β−不飽和カルボン酸化合物、α、β−不飽和カルボン酸エステル化合物、芳香族ビニル化合物、ビニルエステル化合物、アクリル化合物等の易重合性化合物の重合が効果的に防止することができる。これらの化合物の中でも、α、β−不飽和カルボン酸化合物である(メタ)アクリル酸、α、β−不飽和カルボン酸エステルである(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物であるスチレン、ビニルエステル化合物である酢酸ビニル等の低級脂肪酸ビニルエステル、アクリル化合物であるアクリルアミドが好ましく、特に(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステルの減圧蒸留精製工程に有効に適用することができる。
【実施例】
【0118】
(実施例1)
市販のアクリル酸(和光特級)を再結晶させ、重合禁止剤を除いた20gのアクリル酸を試験管に入れ、この試験管に10gの蒸留水を加えてアクリル酸水溶液とした。次に、このアクリル酸水溶液中のアクリル酸に対して重合禁止剤として200質量ppmの1,4−ジエトキシナフタレンを添加した。この重合禁止剤を添加したアクリル酸水溶液の入った試験管にセプタムで蓋をして、窒素を20分間、15mL/分の速度でアクリル酸水溶液中に通気した。そして、窒素を通気したまま次いで、加熱したオイルバスに試験管を浸し、試験管内の溶液温度が90℃になるように保持した。オイルバス中に保持した試験管から、所定時間毎に3gの前記アクリル酸水溶液をサンプリングした。サンプリングしたアクリル酸水溶液を氷水で急冷した後、25℃にて振動式粘度計(ビスコメイトVM−10A(CBC株式会社製))にて粘度を測定し、加熱前の粘度と加熱後の粘度を比較することにより、重合禁止剤の重合禁止能を評価した。所定時間経過後の粘度を表1に示した。
【0119】
(実施例2〜6、11〜16、23、24)
重合禁止剤として1,4−ジエトキシナフタレンのかわりに、表1に示した重合禁止剤を用いた他は実施例1と同様の操作を行い、所定時間経過後の粘度を表1に示した。
【0120】
(実施例7)
重合禁止剤として200質量ppmの1,4−ジエトキシナフタレンのかわりに、50質量ppmの1,4−ジエトキシナフタレンを用いた他は実施例1と同様の操作を行い、所定時間経過後の粘度を表1に示した。
【0121】
(実施例8)
市販のアクリル酸(和光特級)を再結晶させ、重合禁止剤を除いた20gのアクリル酸を試験管に入れ、この試験管に10gの蒸留水を加えてアクリル酸水溶液とした。次に、このアクリル酸水溶液中のアクリル酸に対して重合禁止剤として200質量ppmの1,4−ジエトキシナフタレンを添加した。この重合禁止剤を添加したアクリル酸水溶液の入った試験管に小穴のあいたセプタムで蓋をして、気相が空気雰囲気になるよう、加熱したオイルバスに試験管を浸し、試験管内の溶液温度が90℃になるように保持した。オイルバス中に保持した試験管から、所定時間毎に3gの前記アクリル酸水溶液をサンプリングした。サンプリングしたアクリル酸水溶液を氷水で急冷した後、25℃にて振動式粘度計(ビスコメイトVM−10A(CBC株式会社製))にて粘度を測定し、加熱前の粘度と加熱後の粘度を比較することにより、重合禁止剤の重合禁止能を評価した。所定時間経過後の粘度を表1に示した。
【0122】
(比較例1)
重合禁止剤として1,4−ジエトキシナフタレンを用いなかった他は実施例1と同様の操作を行い、所定時間経過後の粘度を表1に示した。
【0123】
(比較例2)
重合禁止剤として1,4−ジエトキシナフタレンのかわりに、市販の重合禁止剤である4−メトキシフェノール(MQ)を用いた他は実施例1と同様の操作を行い、所定時間経過後の粘度を表1に示した。
【0124】
(比較例3)
重合禁止剤として1,4−ジエトキシナフタレンのかわりに、1,4−ジエトキシベンゼンを用いた他は実施例1と同様の操作を行い、所定時間経過後の粘度を表1に示した。
【0125】
【表1】

【0126】
(実施例9)
市販のスチレン(和光特級)をアルカリ水で洗浄し、ゼオライト(和光純薬工業株式会社製モレキュラーシーブス4A,1/8)にて乾燥することによりあらかじめ添加されていた重合禁止剤を除いた。このように調製したスチレン30gを試験管に入れ、次に、このスチレンに対して重合禁止剤として200質量ppmの1,4−ジエトキシナフタレンを添加した。この重合禁止剤を添加したスチレン溶液の入った試験管にセプタムで蓋をして、窒素を20分間、15mL/分の速度でスチレン溶液中に通気した。そして、窒素を通気したまま次いで、加熱したオイルバスに試験管を浸し、試験管内の溶液温度が97℃になるように保持した。オイルバス中に保持した試験管から、所定時間毎に3gの前記スチレン溶液をサンプリングした。サンプリングしたスチレン溶液を氷水で急冷した後、25℃にて振動式粘度計(ビスコメイトVM−10A(CBC株式会社製))にて粘度を測定し、加熱前の粘度と加熱後の粘度を比較することにより、重合禁止剤の重合禁止能を評価した。所定時間経過後の粘度を表2に示した。
【0127】
(実施例10)
重合禁止剤として200質量ppmの1,4−ジエトキシナフタレンのかわりに、50質量ppmの1,4−ジエトキシナフタレンを用いた他は実施例9と同様の操作を行い、所定時間経過後の粘度を表2に示した。
【0128】
(実施例17、18)
重合禁止剤として1,4−ジエトキシナフタレンのかわりに、表2に示した重合禁止剤を用いた他は実施例9と同様の操作を行い、所定時間経過後の粘度を表2に示した。
【0129】
(比較例4)
重合禁止剤として1,4−ジエトキシナフタレンを用いなかった他は実施例9と同様の操作を行い、所定時間経過後の粘度を表2に示した。
【0130】
【表2】

【0131】
(実施例19)
アクリル酸エステルとして市販のトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)(大阪有機化学工業株式会社製V#295)をアルカリ水で洗浄し、ゼオライト(和光純薬工業株式会社製モレキュラーシーブス4A,1/8)にて乾燥することによりあらかじめ添加されていた重合禁止剤を除いた。このように調製したTMPTA30gを試験管に入れ、次に、このTMPTAに対して重合禁止剤として200質量ppmの1,4−ジエトキシナフタレンを添加した。この重合禁止剤を添加したTMPTA溶液の入った試験管にセプタムで蓋をして、窒素を20分間、15mL/分の速度でTMPTA溶液中に通気した。そして、窒素を通気したまま次いで、加熱したオイルバスに試験管を浸し、試験管内の溶液温度が140℃になるように保持した。オイルバス中に保持した試験管から、所定時間毎に3gの前記TMPTA溶液をサンプリングした。サンプリングしたTMPTA溶液を氷水で急冷した後、25℃にて振動式粘度計(ビスコメイトVM−10A(CBC株式会社製))にて粘度を測定し、加熱前の粘度と加熱後の粘度を比較することにより、重合禁止剤の重合禁止能を評価した。所定時間経過後の粘度を表3に示した。
【0132】
(比較例5)
重合禁止剤として1,4−ジエトキシナフタレンを用いなかった他は実施例19と同様の操作を行い、所定時間経過後の粘度を表3に示した。
【0133】
【表3】

【0134】
(実施例20)
市販のメタクリル酸(和光特級)を再結晶することにより、あらかじめ添加されていた重合禁止剤を除いたメタクリル酸を調製し、そのメタクリル酸20gを試験管に入れ、この試験管に10gのオルトキシレンを加えてメタクリル酸溶液とした。次に、このメタクリル酸溶液中のメタクリル酸に対して重合禁止剤として200質量ppmの1,4−ジエトキシナフタレンを添加した。この重合禁止剤を添加したメタクリル酸水溶液の入った試験管にセプタムで蓋をして、窒素を20分間、15mL/分の速度でメタクリル酸水溶液中に通気した。そして、窒素を通気したまま次いで、加熱したオイルバスに試験管を浸し、試験管内の溶液温度が90℃になるように保持した。重合が進行すると液が白濁するので、目視で試験管内の溶液が白濁するまでの時間を測定し、白濁に要する時間とした。その結果を表4に示した。
【0135】
(比較例6)
重合禁止剤として1,4−ジエトキシナフタレンを用いなかった他は実施例20と同様の操作を行い、試験管内の溶液が白濁するまでの時間を測定し、白濁に要する時間を比較することにより、重合禁止剤の重合禁止能を評価した。その結果を表4に示した。
【0136】
【表4】

【0137】
(実施例21)
ビニルエステル化合物として市販のカプロン酸ビニル(日本酢ビ・ポバール株式会社製)をアルカリ水で洗浄し、ゼオライト(和光純薬工業株式会社製モレキュラーシーブス4A,1/8)にて乾燥することによりあらかじめ添加されていた重合禁止剤を除いた。このように調製したカプロン酸ビニル30gを試験管に入れ、次に、このカプロン酸ビニルに対して重合禁止剤として200質量ppmの1,4−ジエトキシナフタレンを添加した。この重合禁止剤を添加したカプロン酸ビニル溶液の入った試験管にセプタムで蓋をして、窒素を20分間、15mL/分の速度でカプロン酸ビニル溶液中に通気した。そして、窒素を通気したまま次いで、加熱したオイルバスに試験管を浸し、試験管内の溶液温度が140℃になるように保持した。オイルバス中に保持した試験管から、所定時間毎に3gの前記カプロン酸ビニル溶液をサンプリングした。サンプリングしたカプロン酸ビニル溶液を氷水で急冷した後、25℃にて振動式粘度計(ビスコメイトVM−10A(CBC株式会社製))にて粘度を測定し、加熱前の粘度と加熱後の粘度を比較することにより、重合禁止剤の重合禁止能を評価した。所定時間経過後の粘度を表5に示した。
【0138】
(比較例7)
重合禁止剤として1,4−ジエトキシナフタレンを用いなかった他は実施例21と同様の操作を行い、所定時間経過後の粘度を表5に示した。
【0139】
【表5】

【0140】
(実施例22)
アクリルアミド(和光純薬電気泳動用、重合禁止剤無添加)15gを試験管に入れ、この試験管に10gの蒸留水を加えてアクリルアミド水溶液とした。次に、このアクリルアミド水溶液中のアクリルアミドに対して重合禁止剤として200質量ppmの1,4−ジエトキシナフタレンを添加した。この重合禁止剤を添加したアクリルアミド水溶液の入った試験管にセプタムで蓋をして、窒素を20分間、15mL/分の速度でアクリルアミド水溶液中に通気した。そして、窒素を通気したまま次いで、加熱したオイルバスに試験管を浸し、試験管内の溶液温度が85℃になるように保持した。オイルバス中に保持した試験管から、所定時間毎に3gの前記アクリルアミド水溶液をサンプリングした。サンプリングしたアクリルアミド水溶液を氷水で急冷した後、25℃にて振動式粘度計(ビスコメイトVM−10A(CBC株式会社製))にて粘度を測定し、加熱前の粘度と加熱後の粘度を比較することにより、重合禁止剤の重合禁止能を評価した。所定時間経過後の粘度を表6に示した。
【0141】
(比較例8)
重合禁止剤として1,4−ジエトキシナフタレンを用いなかった他は実施例22と同様の操作を行い、所定時間経過後の粘度を表6に示した。
【0142】
【表6】

【0143】
実施例1〜8、11〜16、23及び24と比較例1及び2との比較により、フェノール系重合禁止剤としてアクリル酸に対して一般に用いられている4−メトキシフェノールより、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤はすぐれた重合禁止能をもつことが分かる。特に、1,4−ジエトキシナフタレン等の1,4−ジアルキルオキシナフタレン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン等の1,4−ジヒドロキシアルキルオキシナフタレン、1,4−ジグリシジルオキシナフタレンは、120分経過後も粘度の変化がほとんど見られず、少量の添加でも優れた重合禁止効果を示すこと、酸素の有無を問わずその効果を発現することが分かる。
【0144】
また、比較例3において、重合禁止剤としてよく用いられるハイドロキノンのフェノール性のOH基をエチル化し、本願発明の化合物の一つである1,4−ジエトキシナフタレンと類似構造を持つ単環の化合物(1,4−ジエトキシベンゼン)を合成し、その重合禁止能を同様に調べたところ、重合禁止能はほとんど観測されなかった。
【0145】
また、実施例9、10、17及び18と比較例4との比較により、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤は、アクリル酸だけでなく、スチレンにおいても優れた重合禁止効果を示すことが分かる。
【0146】
また、実施例19と比較例5との比較により、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤は、アクリル酸だけでなく、アクリル酸エステルにおいても優れた重合禁止効果を示すことが分かる。
【0147】
実施例20と比較例6との比較により、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤は、アクリル酸だけでなく、メタクリル酸においても優れた重合禁止効果を示すことが分かる。
【0148】
実施例21と比較例7との比較により、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤は、アクリル酸だけでなく、ビニルエステルにおいても優れた重合禁止効果を示すことが分かる。
【0149】
実施例22及び比較例8との比較により、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤は、アクリル酸だけでなく、アクリルアミドにおいても優れた重合禁止効果を示すことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤。
【化1】


(式中、nは1から4の整数を表し、Rはアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、グリシジル基、ヒドロキシアルキル基又はアリールオキシアルキル基を表し、OR基が複数ある場合のRは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。X、Y及びZは、同一であっても、異なっていてもよく、各々、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、このうち、XとYは互いに結合して飽和又は不飽和の6員環を形成してもよい。)
【請求項2】
下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1記載の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤。
【化2】


(式中、Rはアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、グリシジル基、ヒドロキシアルキル基又はアリールオキシアルキル基を表し、複数あるOR基のRは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。X、Y及びZは、同一であっても、異なっていてもよく、各々、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、このうち、XとYは互いに結合して飽和又は不飽和の6員環を形成してもよい。)
【請求項3】
X、Y及びZが水素原子であり、Rがメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−ヒドロキシエチル基又は2−ヒドロキシプロピル基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤。
【請求項4】
下記一般式(3)で表されることを特徴とする縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤。
【化3】


(式中、R、Rは、同一であっても異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、グリシジル基、ヒドロキシアルキル基又はアリールオキシアルキル基を表し、X、Y及びZは、同一であっても、異なっていてもよく、各々、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、このうち、XとYは互いに結合して飽和又は不飽和の6員環を形成してもよい。)
【請求項5】
X、Y及びZが水素原子であり、R、Rがメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−ヒドロキシエチル基又は2−ヒドロキシプロピル基であることを特徴とする請求項4に記載の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤。
【請求項6】
下記一般式(4)で表されることを特徴とする縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤。
【化4】


(式中、R、Rは、同一であっても異なってもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、グリシジル基、ヒドロキシアルキル基又はアリールオキシアルキル基を表し、Zは、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。)
【請求項7】
下記一般式(5)で表されることを特徴とする縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤。
【化5】


(式中、R3は、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、グリシジル基、ヒドロキシアルキル基又はアリールオキシアルキル基を表し、Zは、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。)
【請求項8】
易重合性化合物を含有する組成物に配合される重合禁止剤の組成物であって、請求項1から7のいずれか一項に記載の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤を含有することを特徴とする重合禁止剤の組成物。
【請求項9】
前記易重合性化合物が、α、β−不飽和カルボン酸化合物、α、β−不飽和カルボン酸エステル化合物、芳香族ビニル化合物、ビニルエステル化合物又はアクリル化合物であることを特徴とする請求項8に記載の重合禁止剤の組成物。
【請求項10】
前記易重合性化合物が、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、低級脂肪酸ビニルエステル又はアクリルアミドであることを特徴とする請求項8に記載の重合禁止剤の組成物。
【請求項11】
前記易重合性化合物が、(メタ)アクリル酸、又は(メタ)アクリル酸のエステルであることを特徴とする請求項8に記載の重合禁止剤の組成物。
【請求項12】
請求項1から7のいずれか一項に記載の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤と、易重合性化合物とを含有する易重合性化合物の組成物。
【請求項13】
前記易重合性化合物が、α、β−不飽和カルボン酸化合物、α、β−不飽和カルボン酸エステル化合物、芳香族ビニル化合物、ビニルエステル化合物又はアクリル化合物であることを特徴とする請求項12に記載の易重合性化合物の組成物。
【請求項14】
前記易重合性化合物が、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、低級脂肪酸ビニルエステル又はアクリルアミドであることを特徴とする請求項12に記載の易重合性化合物の組成物。
【請求項15】
前記易重合性化合物が、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルであることを特徴とする請求項12に記載の易重合性化合物の組成物。
【請求項16】
請求項1から7のいずれか一項に記載の縮合多環芳香族骨格を有する重合禁止剤の存在下で、易重合性化合物を含有する組成物を蒸留塔で蒸留する工程を含み、前記蒸留する工程で得られる成分から易重合性化合物を製造することを特徴とする易重合性化合物の製造方法。
【請求項17】
前記易重合性化合物が、α、β−不飽和カルボン酸化合物、α、β−不飽和カルボン酸エステル化合物、芳香族ビニル化合物、ビニルエステル化合物又はアクリル化合物であることを特徴とする請求項16に記載の易重合性化合物の製造方法。
【請求項18】
前記易重合性化合物が、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、低級脂肪酸ビニルエステル又はアクリルアミドであることを特徴とする請求項16に記載の易重合性化合物の製造方法。
【請求項19】
前記易重合性化合物が、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルであることを特徴とする請求項16に記載の易重合性化合物の製造方法。

【公開番号】特開2012−111741(P2012−111741A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46144(P2011−46144)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000199795)川崎化成工業株式会社 (133)
【Fターム(参考)】