説明

縮合架橋性シリコーン材料

【課題】迅速な架橋が可能であるとともにたとえば、黄変、表面粘着、緩慢な加硫速度、貯蔵の際の安定性の問題又はアミノシランベースの通常の結合剤との不相溶性の欠点を示すものではなく、さらにその使用は健康面における懸念を生じない、縮合架橋性のシリコーン組成物を提供することである。
【解決手段】(A)少なくとも2個の縮合性基を有する少なくとも1種のオルガノケイ素化合物、(B)少なくとも1種の架橋剤、(C)少なくとも1種の充填剤、(E)触媒量の少なくとも1種の触媒を含有する縮合架橋性シリコーン組成物であって、この場合、この触媒は、金属Li、Na、K、Mg、Ca又はSrの金属化合物の群から選択されることを特徴とする前記組成物により解決された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ケイ素化合物をベースとする、室温で縮合によって架橋可能な材料に関し、この場合、この材料は、長期弾性の材料に硬化するものである。
【背景技術】
【0002】
水の排除下で貯蔵性であり、水を添加した際にたとえばアルコールを分解しながら室温でエラストマーに架橋する一成分系シーラント、これはRTV−1−シーラントとも呼称されるものは公知である。これらの生成物は、たとえば大量に建築工業において使用されている。
【0003】
このRTV−1−シーラントのベースは、シリル基を有するポリマーであり、この場合、これは、反応性の置換基、例えばOH−基又は加水分解可能なアルコキシ基を有する。さらにこのシーラントとは異なる充填剤、可塑剤、結合剤、触媒及びいわゆる架橋剤又は他の添加剤、例えば着色顔料、レオロジー添加剤又は殺菌剤を含有することができる。
【0004】
技術水準において、すでに種々のRTV−1材料が知られている。WO01/49774A2及びEP1254192B1は、例えば種々のチタンエステル、乳酸エステル及びチタンキレートを含有する材料が記載されている。しかしながら、これはTiの公知欠点、例えば黄変、表面粘着、緩慢な加硫速度及び貯蔵の際の安定性の問題を示す。他の欠点は、多くのチタン化合物とアミノシランベースの通常の結合剤との不相溶性である。
【0005】
これらの問題を解決するための種々の手段が提供された。黄変の問題に関しては、たとえば添加剤としてのオルガノメルカプトンの添加による解決法が、US4906719中で開示されている。EP0747443A2及びDE4212873A1では、減少した黄変を示す、酸素供与体とのチタン錯体が記載されている。
【0006】
表面粘着又は緩慢な加硫の問題を解決するために、EP0853101A1では、アルコキシシランを含有し、かつ、それぞれのエダクト中で定められたモル比を充足しなければならない混合物が記載されている。
【0007】
低い貯蔵安定性の問題を解決するために、DE4427528A1では、シリコーン組成物中の第4副族の金属のジオレートをベースとする環式置換基を有する錯体の使用が記載されている。
【0008】
多くのチタン化合物とアミノシランベースの通常の結合剤との不相溶性を回避するために、たとえばDE2228645A1及びEP1209201A1中に記載されているような方法が開発され、この場合、これはさらにコンパウンディングの際の強固性(Verstraummung)を回避する。しかしながら、この方法は、消費的な連続的2段階のコンパウンディング工程を必要とするといった欠点を有する。
【0009】
技術水準において、例えばDE10319303A1及びDE102006060357A1のように、RTV−1−材料は、触媒としてさらにジブチル錫化合物又はジオクチル錫化合物を含有することが知られており、ここで、これは、黄変、低い貯蔵安定性及び特にアミノシラン−不相溶性等の欠点を示すものではない。しかしながらそうこうする間にオルガノ錫化合物の使用について議論がおこなわれており、それというのもジブチル錫化合物及びジオクチル錫化合物の使用は、EU基準76/769/EWG(2009.5.28)の変更によって制限されるためである。
【0010】
EP1230298A1において錫不含の系の場合には、亜鉛、鉄、バリウム、ジルコニウム及び鉛−の塩の使用が、第1主族及び第2主族からの金属塩−カルボキシレート並びに金属オクトエートよりも好ましいことが記載されている。しかしながらこれらすべてに共通して、遅発型触媒であるといった欠点を有する。さらに、ここで記載された化合物は、部分的に健康面において憂慮される。錫化合物に対して上記に挙げられた態様の他には、例えばドイツ危険物質処方表示義務(deutschen Gefahrstoff Verordnung kennzeichnunspflichtig)によるクラスR20/22の危険物質としてのBa−カルボキシレートがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO01/49774A2
【特許文献2】EP1254192B1
【特許文献3】US4906719
【特許文献4】EP0747443A2
【特許文献5】DE4212873A1
【特許文献6】EP0853101A1
【特許文献7】DE2228645A1
【特許文献8】EP1209201A
【特許文献9】DE10319303A1
【特許文献10】DE102006060357A1
【特許文献11】EP1230298A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、縮合架橋性のシリコーン組成物を提供することであり、この場合、この組成物は、迅速な架橋を可能にし、かつ同時にたとえば、黄変、表面粘着、緩慢な加硫速度、貯蔵の際の安定性の問題又はアミノシランベースの通常の結合剤との不相溶性の欠点を示すものではなく、かつさらにその使用は健康面における懸念を生じるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の課題は、以下のようにして解決された。
【0014】
本発明の範囲において「縮合反応」の用語は、さらに場合によっては先行する加水分解工程を包含するものであってもよい。
【0015】
本発明の範囲内における用語「縮合性基」とは、場合によっては先行する加水分解工程中で縮合性の基から生じる基であると理解されてよい。
【0016】
したがって本発明の対象は、
(A)少なくとも2個の縮合性基を有する少なくとも1種のオルガノケイ素化合物、
(B)少なくとも1種の架橋剤、
(C)少なくとも1種の充填剤、
(E)触媒量の少なくとも1種の触媒、
を含有する縮合架橋性シリコーン組成物であって、この場合、この触媒が、金属Li、Na、K、Mg、Ca又はSrの金属化合物の群から選択されることを特徴とする。
【0017】
他の実施態様において、本発明による縮合架橋性シリコーン組成物は、他の構成成分として少なくとも1種の結合剤(D)を含有する。
【0018】
使用される架橋反応に関与するオルガノケイ素化合物(A)が有する縮合性基とは、任意の基、たとえばヒドロキシ基、オキシマト基、アミノ基、アシルオキシ基及びオルガニルオキシ基であってもよい。
【0019】
本発明により使用されるオルガノケイ素化合物(A)は、さらに、従来、縮合反応によって架橋可能な材料中で使用される、少なくとも2種の縮合性基を有するすべてのオルガノケイ素化合物であってもよい。したがって、これは、純粋なシロキサン

(式中、R’’は二価の、場合によっては置換されたか、あるいは、ヘテロ原子で中断された炭化水素基である)、あるいは、任意のオルガノケイ素基を有するポリマー及びコポリマーであってもよい。
【0020】
特に好ましくは、本発明により使用されたオルガノケイ素化合物(A)は、式(II)
【化1】

[式中、Rは互いに独立して同じかまたは異なって、置換又は非置換の炭化水素基であり、この場合、これは酸素原子によって中断されているか、あるいは、中断されていないものであり、
Yは互いに独立して同じかまたは異なって、ヒドロキシル基又は加水分解可能な基であり、
eは30〜3000であり、かつ、
fは0、1又は2である]の化合物である。
【0021】
好ましくは、Yが−OHである場合にはfは2であり、かつYが−OHでない場合には1又は0である。
【0022】
好ましくは、基Rは1〜18個の炭素原子を有する一価の炭化水素基であり、この場合、これは、場合によってはハロゲン原子、アミノ基、エーテル基、エステル基、エポキシ基、メルカプト基、シアノ基又は(ポリ)グリコールエステル基、その際、(ポリ)グリコールエステル基は、オキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位から構成されている、で置換されていてもよく、特に好ましくは1〜12個の炭素原子を有するアルキル基であり、特にメチル基である。しかしながら基Rはさらに二価の基であってもよく、この場合、これは、例えば2個のシリル基と互いに結合する。
【0023】
基Rに対する例はアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、1−n−ブチル基、2−n−ブチル基、iso−ブチル基、tert.−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、tert.−ペンチル基であり;ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基であり;ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基であり;オクチル基、例えばn−オクチル基及びiso−オクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基であり;ノニル基、例えばn−ノニル基であり、デシル基、例えばn−デシル基であり、ドデシル基、例えばn−ドデシル基であり;オクタデシル基、例えばn−オクタデシル基であり;シクロアルキル基、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基であり;アルケニル基、例えばビニル基、1−プロペニル基及び2−プロペニル基であり、;アリール基、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基及びフェニルアントリル基であり;、アルカリール基、例えばo−、m−、p−トリル基であり;キシリル基及びエチルフェニル基であり;かつアルアルキル基、例えばベンジル基、α−フェニルエチル基及びβ−フェニルエチル基である。
【0024】
置換された基Rに関する例は、メトキシエチル基、エトキシエチル基及びエトキシエトキシエチル基である。
【0025】
二価の基Rに関する例は、ポリイソブチレンジイル基及びプロパンジイル末端ポリプロピレングリコール基である。
【0026】
基Yに関する例は、ヒドロキシル基並びにすべての従来公知の加水分解可能な基、例えば酸素原子又は窒素原子を介してケイ素原子に対して結合され、場合によっては置換された炭化水素基である。
【0027】
好ましくは、基Yはヒドロキシル基、基−ORであり、その際、Rは置換又は非置換の炭化水素基であり、この場合、これは、酸素原子によって中断されていてもよい、を意味する。Yに関する例はメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、tert−ブトキシ基及び2−メトキシエトキシ基、アミノ基、例えばメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基及びシクロヘキシルアミノ基、アミド基、例えばN−メチルアセタミド基及びベンズアミド基、アミノキシ基、例えばジエチルアミノキシ基、オキシモ基、例えばジメチルケトキシモ基、メチルエチルケトキシモ基及びメチルイソブチルケトキシモ基、及びエトキシ基、例えば2−プロペンオキシ基並びにアシルオキシ基、例えばアセチル基である。
【0028】
基Rに関する例は、Rに関して挙げられた一価の、場合によっては置換された炭化水素基である。
【0029】
好ましくは、基Rは、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基又はアシル基、特に好ましくは1〜3個の炭素原子を有するアルキル基又はアシル基である。
【0030】
特に好ましくは、基Yは、ヒドロキシル基及び基−ORであり、その際、Rは前記意味を有し、特に好ましくはRに関して、メチル基及びエチル基、並びにアセチル基である。
【0031】
オルガノケイ素化合物(A)に関する例は、

であり、その際、Meはメチル基、Etはエチル基、Viはビニル基及びAcはアセチル基を意味する。
【0032】
本発明により使用されたオルガノケイ素化合物(A)は、それぞれ25℃で好ましくは100〜10mPas、特に好ましくは10〜350000mPasの粘度を有する。
【0033】
オルガノケイ素化合物(A)は市販の製品であるか、あるいは、ケイ素化学において通常の方法にしたがって製造することができる。
【0034】
本発明によるシリコーン組成物中で使用された架橋剤(B)は、少なくとも3個の縮合性基を有する任意の従来公知の架橋剤であってもよく、例えば、少なくとも3個のオルガニルオキシ基を有するシラン又はシロキサンである。
【0035】
本発明によるシリコーン組成物中で使用された架橋剤(B)は、好ましくは一般式(III)
【化2】

[式中、Rは同じかまたは異なっていてもよく、かつ一価の、場合によっては置換された炭化水素基であり、この場合、これは酸素原子によって中断されていてもよい、を意味し、
Zは同じかまたは異なっていてもよく、かつ上記Yについて挙げられた意味を除くヒドロキシル基であり、かつ、
cは3又は4である]のオルガノケイ素化合物又はその部分加水分解物である。
【0036】
これに関して、部分加水分解物は、部分ホモ加水分解物、すなわち、一般式(III)のオルガノケイ素化合物の1種の部分加水分解物と同様に、部分共加水分解物、すなわち、一般式(III)のオルガノケイ素化合物の少なくとも2種の異なる種類の部分加水分解物であってもよい。
【0037】
式(III)では示されていないが、本発明によって使用されたオルガノケイ素化合物は、ヒドロキシル基の少ない割合、好ましくはすべてのSi−結合基の最大5%までのヒドロキシル基の少ない割合の製造条件を有するものであってもよい。
【0038】
本発明による材料中で使用された架橋剤(B)は、式(III)のオルガノケイ素化合物の部分加水分解物であり、したがって10個までのケイ素原子を有するこのようなものであることが好ましい。
【0039】
基Rに関する例は、基Rに関して前記に挙げられた一価の例であり、その際、1〜12個の炭素原子を有する炭化水素基が好ましく、かつメチル基及びビニル基が特に好ましい。
【0040】
Zに関する例は、Yに関して挙げられた例を除いたヒドロキシル基である。
【0041】
好ましくは、本発明による材料中で使用された架橋剤(B)は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−シアノプロピルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、3−(グリシドキシ)プロピルトリエトキシシラン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、メチルトリス(メチルエチルケトキシモ)−シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシモ)シラン及びテトラキス(メチルエチルケトキシモ)シラン並びに前記オルガノケイ素化合物の部分加水分解物、例えばヘキサエトキシジシロキサン並びにアシルオキシシラン、例えばビニルトリスアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン又はエチルトリスアセトキシシラン及びその部分加水分解物及び混合加水分解物である。
【0042】
特に好ましくは、本発明による材料中で使用される架橋剤(B)は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシタン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、メチルトリス(メチルエチルケトキシモ)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシモ)シラン並びにその部分加水分解物、特にメチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシモ)シラン及びビニルトリス(メチルエチルケトキシモ)シラン並びにその部分加水分解物及びビニルトリアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン又はエチルトリアセトキシシラン及びその部分加水分解物及び混合加水分解物である。
【0043】
本発明による材料中で使用された架橋剤(B)は市販の製品であるか、あるいは、ケイ素化学中で公知の方法によって製造することができる。
【0044】
本発明による架橋剤(B)は、それぞれ100質量部の架橋可能な材料に対して、好ましくは1〜10質量部、特に好ましくは2〜8質量部、殊に3〜5質量部で使用する。
【0045】
本発明による充填剤(C)として、RTV−1−材料の製造のために従来使用されているすべての充填剤を使用することができる。充填剤(C)に関する例は、非補強充填剤、すなわち、50m/gまでのBET表面を有する充填剤、例えば石英、珪藻、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ゼオライト、金属酸化物粉末、例えば酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄又は酸化亜鉛又はその混合酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素、ガラス粉末及びプラスチック粉末、例えばポリアクリルニトリル粉末並びに補強充填剤、すなわち、50m/gを上廻るBET表面を有する充填剤、例えば熱分解法シリカ、沈降シリカ、沈降チョーク、カーボンブラック、ファーネスブラック及びアセチレンブラック及びより大きいBET表面のケイ素−アルミニウム−混合酸化物、並びに繊維状充填剤、例えばアスベスト並びにプラスチック繊維である。前記充填剤は疎水化されていてもよく、例えば、オルガノシラン又はオルガノシロキサンを用いて処理されるか、あるいは、ステアリン酸によって処理されるか、あるいは、ヒドロキシル基のアルコキシ基へのエーテル化によって疎水化される。
【0046】
充填剤(C)は、好ましくは熱分解法シリカ、被覆又は非被覆の炭酸カルシウム、金属シリケート、石英又はカーボンブラックである。
【0047】
充填剤(C)は、それぞれ100質量部の架橋可能な材料に対して好ましくは5〜50質量部、特に好ましくは7〜35質量部の量で使用する。
【0048】
本発明による材料中で使用される結合剤(D)に関する例は、官能基を有するシラン及びオルガノシロキサンであり、これは例えばグリシドキシ基、アミノ基又はメタクリルオキシ基を有するものである。さらに結合剤(D)として、加水分解可能な基及びSiC結合されたビニル基、アクリルオキシ基、メタクリルオキシ基、エポキシ基、酸無水物基、酸基、エステル基又はエーテル基を有するシラン、並びにその部分加水分解物及び混合加水分解物を使用することができる。好ましい結合剤として、加水分解化合な基を有するアミノ官能性、アクリル官能性及びエポキシ官能性シラン及びその部分加水分解物である。
【0049】
本発明によるシリコーン組成物は、結合剤(D)を、それぞれ100質量部のオルガノケイ素化合物(A)に対して好ましくは0〜50質量部、特に好ましくは0.1〜20質量部、殊に0.5〜10質量部の量で含有する。
【0050】
本発明よる触媒(E)として、原則として、第I主族及び第II主族の金属化合物が適している。しかしながら、好ましくはLi−、Na−、K−、Mg−、Ca−、Sr−化合物を使用し、それというのも、これは迅速な架橋な可能であり、さらに例えばその使用は、いかなる健康上の懸念を招くものでもないためである。特に好ましくは、Li化合物及びSr化合物である。
【0051】
好ましくは触媒(E)として、前記6種の金属の金属塩であり、特に好ましくは金属カルボキシレートである。特に好ましくはLiカルボキシレート及びSrカルボキシレートである。
【0052】
本発明によるシリコーン組成物は、触媒(E)を、100質量部の架橋可能な材料に対して、好ましくは0.1〜1.0質量部の量で含有する。
【0053】
前記成分(A)〜(E)に加えて本発明によるシリコーン組成物はさらに、技術水準において公知の、縮合反応によって架橋可能な材料中で使用されている他のすべての構成成分を含有することができる。本発明による組成物で使用することができる、他の構成成分に関する例は可塑剤、硬化促進剤(前記成分とは異なるもの)、可溶性染料、無機及び有機顔料、溶剤、殺菌剤、フレーバー、分散助剤、レオロジー添加剤、腐蝕防止剤、酸化抑制剤、光保護剤、熱安定化剤、難燃剤(flammabweisend machende Mittel)、電気的特性に作用する薬剤を使用することができる。
【0054】
本発明によるシリコーン組成物は、このような他の構成成分を、100部の架橋可能な材料に対して60質量部までの量で含有することができる。
【0055】
本発明による組成物を製造するための方法の際に、すべての構成成分は通常の、したがって技術水準に相当する順序で互いに混合することができる。この混合は、室温及び周囲雰囲気の圧力で、すなわち約900〜1100hPaの圧力で実施することができる。しかしながら好ましい場合にはこの混合を、さらに高い温度で、例えば35〜135℃の温度で実施することができる。さらに、一時的に又は常に、減圧下で、例えば30〜500hPaの絶対圧下で、揮発性化合物又は空気を除去するために混合することも可能である。
【0056】
本発明による組成物の個々の構成成分は、その都度、このような構成成分の1種であると同様にこのような構成成分の少なくとも2種の異なる種類からなる混合物であってもよい。
【0057】
本発明による材料を使用するために、空気の通常の含水量で足りる。本発明による材料の架橋は、好ましくは室温で実施する。好ましい場合には、これをさらに室温より高いかまたは低い温度で、例えば−5℃〜15℃又は30℃〜50℃で、及び/又は空気の通常の含水量を上廻る水の濃度を用いて実施することができる。
【0058】
好ましくは、100〜1100hPaの圧力、特に周囲雰囲気の圧力、すなわち約900〜1100hPaで架橋を実施する。
【0059】
本発明によるシリコーン組成物は、接着剤、シーラント、被覆剤として、及び構成成分の封止に適している。
【0060】
触媒(E)を含有する本発明によるシリコーン組成物の利点は、例えば亜鉛−オクトエート触媒混合物と比較した場合の迅速な加硫経過である(短い皮膜形成時間及び改善された深部加硫)。得られる皮膜形成時間は、通常の接合封止材料の範囲である。このようにして得られた材料は添加剤相溶性であり、固有の黄変を示すことなく、かつ熱の影響下で着色することはない。さらに本発明で使用される触媒は、取り扱いにおいて、並びに、直ぐに使用可能な最終製品中で、危険物質に関する法制の点においてオルガノ錫化合物又はさらにバリウム又は鉛のような重い主族の元素化合物と比較して危険ではない。
【0061】
したがって、本発明によって製造された組成物は、例えば、垂直に走る継ぎ目を含む継ぎ目のためのパッキング材料として、例えば、建造物、陸上用車両、船舶及び航空機における例えば10〜40mmの内法寸法の空隙等、あるいは、接着剤又はシーラントとして、例えば窓構造物中であるいは水槽又はショーケースの製造の際に、並びに、淡水又は海水の常時の影響下にさらされた表面のためのものを含む保護コーティングの製造の際のために、あるいは、滑り止めコーティング、あるいは、弾性ゴム成形体における、並びに、電気又は電子装置の絶縁のために適している。同様にこのような材料は、容器、制御装置、構成(Anlage)部分及びモーター部分のパッキング材料のような技術分野で、構成材料の封止に、あるいは保護コーティングとして使用することができる。
【実施例】
【0062】
以下の実施例において、すべての粘度表記は、別記しない限りにおいて25℃の温度に対するものである。別記しない限りにおいて、以下の例は、周囲雰囲気の圧力で、すなわち約1000hPaで、かつ室温、すなわち約23℃でか、あるいは室温で反応体を一緒にする際に付加的な加熱又は冷却なしで設定される温度で、並びに約50%の相対空気湿度で実施する。さらに、部及び%に関するすべての表記は、別記しない限りにおいて質量に対する。
【0063】
アルオキシ−RTV−1
1)ポリマーベース混合物:
ビニルトリメトキシシラン及び触媒としてのLiOHを用いてのポリジメチルシロキサンの前記官能化の代わりに、予めビニルトリメトキシシラン及び亜鉛アセチルアセトネートで末端ブロックされたポリマーを使用した。これに関して、80.000mPasの粘度を有する600gのα,ω−OH−末端ポリジメチルシロキサン、100mPasの粘度を有する120gのトリメチルシリル−末端ポリジメチルシロキサン及び30gのビニルトリメトキシシラン及び0.3gの亜鉛アセチルアセトネートを混合した。24時間後に、末端ブロック化を終了した。
【0064】
比較混合物1)EP1230298B1の例Fによる:
これに関して、300gのポリマーベース混合物中に、19.5gのWacker HDK V15を添加し、かつよく攪拌した。さらに2.5gの3−アミノプロピルトリメトキシシランを結合剤として添加し、引き続いて0.1gのジブチル錫ラウレート(=DBTL)で触媒した。
【0065】
比較混合物2)EP1230298B1によるOctasoligem Zinkを用いるもの:
これに関して、300gのポリマーベース混合物中に、19.5gのWacker HDK V15を添加し、かつよく攪拌した。さらに2.5gの3−アミノプロピルトリメトキシシランを結合剤として添加し、引き続いて2.5gのOctasoligem Zink 18(Zn(オクト)2)(Borchers)で触媒した。
【0066】
例1
これに関して、300gのポリマーベース混合物中で、19.5gのWacker HDK V15を添加し、かつよく攪拌した。さらに2.5gの3−アミノプロピルトリメトキシシランを結合剤として添加し、引き続いて3gのOctasoligem Lithum 2((Li(オクト))(Borchers))で触媒した。
【0067】
アセトキシ−RTV−1−例:
ベース混合物の製造:
20.000mPasの粘度を有するα,ω−OH−末端ポリジメチルシロキサン 45部及び80.000mPasの粘度を有するα,ω−OH末端ポリジメチルシロキサン 35部中に、疎水性熱分解法シリカ22部を添加し、かつ均一に混練した。
【0068】
例2
ポリマーベース混合物100部中に、6.000mPasの粘度を有するα,ω−OH−末端ポリジメチルシロキサン38部及びメチルトリスアセトキシシラン6.8部を添加した。この混合物をホモジナイズし、その後にOctasoligem Strontium 10(Borchers)(Sr(オクト)2)1.1部を触媒として混合した。
【0069】
例3
例2)と同様におこなったが、しかしながら触媒としてOctasoligen Lithum 2を1.1部使用した。
【0070】
オキシム−RTV−1−例:
例4:80.000mPasの粘度を有するα,ω−OH−末端ポリジメチルシロキサン200部、α,ω−トリメチルシリル−末端ポリジメチルシロキサン125部及びメチルトリス(メチルエチルケトキシモ)シラン18部を、アミノ官能性結合剤(Wacker AMS70)10部と一緒に、プラネタリディゾルバー中でホモジナイズした。その後に、高分散性シリカ(Wacker V15)30部を均一に添加した。この混合物を、4部のOctasoligen Strontium 10で触媒した。
【0071】
例5:例4と同様におこなったが、しかしながら触媒としてOctasoligen Lithum 2を4部混合した。
【0072】
第1表は、皮膜形成時間(=HBT)の結果を分(=min)で示す。これは以下のようにして測定した:カートリッジからRTV−1材料を取り出した後に、皮膜の形成を、その表面を硬さHBの鉛筆と接触させることにより評価した。材料と鉛筆先端との間にもはや糸通せなくなるまでの時間を皮膜形成時間とした。
【0073】
さらに、加硫評価を第1表にまとめた。これは以下のようにして測定した:カートリッジからRTV−1材料を取り出した後に、その表面粘着性をPE−フィルムの押しあて及び引きはがしにより評価した。2倍の膜形成時間後に非粘着性である場合には肯定的評価である。他の工程において完全硬化の経過は、固定材料の場合には10mmロープで、流動性材料の場合にはアルミニウムコップ(Alubecher)(28mm直径、20mm高)中で評価した。非粘着性の完全硬化物の場合に、肯定的評価であった。
【0074】
視覚的試験は、通常の環境下での14日の加硫時間後に試験体をマニュアル(manuelle)評価することにより実施した。
【0075】
完全硬化は以下のようにして測定した。
【0076】
アルミニウムカプセル(28mm直径、20mm高)を、その縁まで架橋可能な混合物で装填し、過剰分を簡単に取り除いた。このカプセルを、通常の環境下に置き、かつ24時間後に垂直に切断した。加硫化されたエラストマー層はクロスで、加硫化されていない材料から取り除いた。加硫化皮膜の測定は、市販の層厚測定装置を用いて実施した。
【0077】
【表1】

【0078】
ジブチル錫−触媒はよく知られているように極めて反応的であり、処方に応じて大抵10〜40分の膜形成時間を示す。EP1230298中で請求されたOctasoligen Zinkは記載されたように比較例2によれば十分な結果は得られなかった。
【0079】
この表からみてとれるように、反応不活性のアルコキシ−RTV−1の場合におけるOctasoligen Lithiumの使用は、Octasoligen Zink触媒よりも顕著に適している。アセトキシ−及びオキシモ−RTV−1−中では、完全に通常の範囲、つまり、技術水準に相当る触媒系の範囲になる皮膜形成時間を達成することができる。すべての場合において、安定し、かつ荷重可能な皮膜が形成され、完全加硫は良好であった。
【0080】
比較混合物は、良好な貯蔵安定性(一定の皮膜形成時間の場合)を示し、かつチタン触媒と比較して極めて良好な結合剤相溶性を示した。加硫物及び混合物はさらに、熱貯蔵後(180℃、14日間)に、黄変又は着色を示すことはなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも2個の縮合性基を有する少なくとも1種のオルガノケイ素化合物、
(B)少なくとも1種の架橋剤、
(C)少なくとも1種の充填剤、
(E)触媒量の少なくとも1種の触媒
を含有する縮合架橋性シリコーン組成物において、触媒が金属Li、Na、K、Mg、Ca又はSrの金属化合物の群から選択される、前記組成物。
【請求項2】
他の構成成分として少なくとも1種の結合剤(D)を含有する、請求項1に記載のシリコーン組成物。
【請求項3】
触媒(E)としてLi化合物及びSr化合物を使用する、請求項1又は2に記載のシリコーン組成物。
【請求項4】
すべての構成成分を互いに混合させる、請求項1から3までのいずれか1項に記載のシリコーン組成物を製造する方法。
【請求項5】
接着剤、シーラント、被覆剤として、構成材料封止のための、請求項1から3までのいずれか1項に記載のシリコーン組成物の使用。

【公開番号】特開2011−32473(P2011−32473A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173518(P2010−173518)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】