説明

縮合芳香族化合物、有機半導体材料及び有機トランジスタ

【課題】再配向エネルギーが十分に小さい有機化合物の提供。
【解決手段】式


[式中、A環、B環及びC環は、各々独立して、芳香環を表す。X、X、X、X、X、X及びXは、各々独立して、炭素原子又は窒素原子を表す。]で表される縮合芳香族化合物、又は式(2)で表される縮合芳香族化合物から水素原子を2個除いた2価の基を繰り返し単位として有する高分子化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体材料として用いるのに有用な縮合芳香族化合物及び該縮合芳香族化合物を有機半導体材料として用いた有機トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子、有機トランジスタ、太陽電池、光センサ等の種々の有機薄膜素子が近年盛んに研究されている。有機薄膜素子の性能は使用される有機半導体材料の特性に依存し、有機薄膜素子の特性を向上するために、有機半導体材料の電荷移動度を高くすることが望まれている。
【0003】
非特許文献1には、有機半導体材料における電荷の移動度を決定する特性の一つは再配向エネルギーであり、再配向エネルギーが低い有機半導体材料ほど電荷の移動度が高いことが記載されている。
【0004】
非特許文献2には、有機半導体材料として、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)を用いて製造した有機トランジスタ素子は、電荷移動度及びオンオフ比が高いことが記載されている。
【0005】
非特許文献3には、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)のフィルムが、比較的高い電荷移動度及び弱い電場依存性を示すことが記載されている。
【0006】
しかしながら、上記有機化合物等、従来、有機半導体材料として使用されてきた有機化合物は、再配向エネルギーが十分に小さくはない。そこで、再配向エネルギーが十分に小さい有機化合物を提供することができれば、これを有機半導体材料として用いることにより、より高い電荷移動度が実現され得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ケミカル レビュー(Chemical Review)、2004年、第104巻、p.4971−5003
【非特許文献2】アプライド フィジクス レターズ(Applied Physics Letters)、1996年、第69巻、p.4108−4110
【非特許文献3】アプライド フィジクス レターズ(Applied Physics Letters)、1998年、第73巻、p.1565−1567
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、再配向エネルギーが十分に小さい有機化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は、式
【0010】
【化1】

【0011】
〔式中、Eは、各々独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、ボロン酸残基、ホウ酸エステル残基又はスタンニル基を表す。Qは、式
【0012】
【化2】

【0013】
{式中、A環、B環及びC環は、各々独立して、芳香環を表す。X、X、X、X、X、X及びXは、各々独立して、炭素原子又は窒素原子を表す。Rは、各々独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基、ニトロ基又はシアノ基を表す。2個のRが互いに結合して環状構造を形成してもよい。}
【0014】
で表される化合物から水素原子を2個除いた2価の基を表す。Qが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。Qは、式−CR1a=CR1b−{式中、R1a及びR1bは、各々独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はシアノ基を表す。}で表される基、式−C≡C−で表される基又は2価の芳香族基を表す。Qが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。nは1以上の整数を表す。m1は、0〜10の整数を表す。m2は、0〜10の整数を表す。ただし、n個あるm1の全てが0になることはない。nが2以上の場合、n個あるm1は、同一であっても相異なってもよく、n個あるm2は、同一であっても相異なってもよい。〕
【0015】
で表される化合物を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記化合物を含有する組成物、薄膜又は有機半導体材料を提供する。
【0017】
また、本発明は、有機半導体材料として前記薄膜を備える有機薄膜素子又は有機トランジスタ素子を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の化合物は再配向エネルギーが十分に小さく、有機薄膜素子の有機半導体材料として用いるのに極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の有機薄膜トランジスタの一例を示す模式断面図である。
【図2】本発明の有機薄膜トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図3】本発明の有機薄膜トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図4】本発明の有機薄膜トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図5】本発明の有機薄膜トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図6】本発明の有機薄膜トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図7】本発明の有機薄膜トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図8】本発明の有機薄膜トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、必要に応じて図面を参照することにより、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
<化合物>
本発明の化合物はピロール環に芳香環が縮合した構造を有し、かつ、該ピロール環に含まれる窒素原子が他の2個の芳香環にも含まれる平面的な化学構造を有する低分子又は高分子化合物である。平面的な化学構造は化合物の再配向エネルギーを小さくするのに有利である。具体的には、本発明の化合物は、上記式(2)で表される縮合芳香族化合物、又は式(2)で表される縮合芳香族化合物から水素原子を2個除いた2価の基を繰り返し単位として有する高分子化合物である。前記2価の基は高分子化合物の繰り返し単位の一部を構成するものであってもよい。
【0022】
すなわち、本発明の化合物は式(1)で表される。
【0023】
【化3】

【0024】
式(1)中、Eは、各々独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、ボロン酸残基、ホウ酸エステル残基又はスタンニル基を表す。
【0025】
ここで、アルキル基は、直鎖、分岐のいずれでもよく、シクロアルキル基であってもよい。アルキル基が有する炭素数は、通常1〜60であり、1〜20であることが好ましい。アルキル基の中でも、直鎖アルキル基、分岐アルキル基が好ましく、直鎖アルキル基がより好ましい。
【0026】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基等の直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基等の分岐アルキル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
【0027】
アルキル基は置換基を有していてもよく、アルキル基が有していてもよい置換基としては、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。置換基を有しているアルキル基の具体例としては、メトキシエチル基、ベンジル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0028】
アルコキシ基は、置換基を有していてもよく、置換基を除いたアルコキシ基の炭素数は、通常1〜20である。アルコキシ基は、直鎖、分岐いずれでもよく、シクロアルコキシ基であってもよい。
【0029】
アルコキシ基の具体例としては、n−ブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、n−ドデシルオキシ基等が挙げられる。
【0030】
アルコキシ基の中でも、n−ブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基等の直鎖アルキルオキシ基が好ましい。
【0031】
アルキルチオ基は、置換基を有していてもよく、置換基を除いたアルキルチオ基の炭素数は、通常1〜20である。アルキルチオ基は、直鎖、分岐いずれでもよく、シクロアルキルチオ基であってもよい。
【0032】
アルキルチオ基の具体例としては、n−ブチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、n−ドデシルチオ基等が挙げられる。
【0033】
アルキルチオ基の中でも、n−ブチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、n−ドデシルチオ基等の直鎖アルキルチオ基が好ましい。
【0034】
アリール基は、芳香族炭化水素化合物から芳香環に直接結合する水素原子1個を除いた原子団であり、ベンゼン環を有する基、縮合環を有する基、独立した芳香族環又は縮合環2個以上が直接結合した基を含む。アリール基が有する炭素数は、通常6〜60であり、6〜20であることが好ましい。アリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−フルオレニル基、3−フルオレニル基、4−フルオレニル基、4−フェニルフェニル基等が挙げられる。
【0035】
アリール基は置換基を有していてもよい。アリール基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。置換基を有しているアリール基としては、4−ヘキシルフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、ペンタフルオロフェニル基等が挙げられる。アリール基が置換基を有する場合、置換基としてはアルキル基が好ましい。
【0036】
ヘテロアリール基は、芳香族性を有する複素環式化合物から、芳香環に直接結合する水素原子1個を除いた原子団であり、縮合環を有する基、独立した複素芳香族環又は縮合環2個以上が直接結合した基を含む。ヘテロアリール基が有する炭素数は、通常2〜60であり、3〜20であることが好ましい。ヘテロアリール基としては、2−フリル基、3−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、2−オキサゾリル基、2−チアゾリル基、2−イミダゾリル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−ベンゾフリル基、2−ベンゾチエニル基、2−チエノチエニル基等が挙げられる。
【0037】
ヘテロアリール基は置換基を有していてもよい。ヘテロアリール基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。置換基を有しているヘテロアリール基としては、5−オクチル−2−チエニル基、5−フェニル−2−フリル基等が挙げられる。ヘテロアリール基が置換基を有する場合、置換基としてはアルキル基が好ましい。
【0038】
アリールオキシ基は、置換基を有していてもよく、置換基を除いたアリールオキシ基の炭素数は、通常6〜20である。アリールオキシ基としては、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基等が挙げられる。
【0039】
アリールチオ基は、置換基を有していてもよく、置換基を除いたアリールチオ基の炭素数は、通常6〜20である。アリールチオ基としては、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基等が挙げられる。
【0040】
アルケニル基は、置換基を有していてもよく、置換基を除いたアルケニル基の炭素数は、通常2〜20である。アルケニル基としては、ビニル基、1−オクテニル基等が挙げられる。
【0041】
アルキニル基は、置換基を有していてもよく、置換基を除いたアルキニル基の炭素数は、通常2〜20である。置換基を有していてもよいアルキニル基としては、エチニル基、1−オクチニル基、2−フェニルエチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
【0042】
アミノ基は、置換基を有していてもよく、置換基を除いたアミノ基の炭素数は、通常0〜40である。置換基を有していてもよいアミノ基としては、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ピロリジル基、ピペリジル基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、ピリジルアミノ基等が挙げられる。
【0043】
シリル基は、置換基を有していてもよく、置換基を除いたシリル基の炭素数は、通常0〜60である。置換基を有していてもよいシリル基としては、シリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基等が挙げられる。
【0044】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0045】
アシル基は、置換基を有していてもよく、置換基を除いたアシル基の炭素数は、通常1〜20である。置換基を有していてもよいアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、ペンタフルオロベンゾイル基等が挙げられる。
【0046】
アシルオキシ基は、置換基を有していてもよく、置換基を除いたアシルオキシ基の炭素数は、通常2〜20である。置換基を有していてもよいアシルオキシ基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、ペンタフルオロベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0047】
アミド基は、置換基を有していてもよい。置換基を有していてもよいアミド基としては、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジベンズアミド基等が挙げられる。
【0048】
カルボキシル基は、置換基を有していてもよい。置換基を有していてもよいカルボキシル基としては、カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェニルオキシカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基等が挙げられる。
【0049】
ボロン酸残基は、−B(OH)2で表される基である。
【0050】
ホウ酸エステル残基としては、下記式:
【0051】
【化4】

【0052】
で表される基等が挙げられる。
【0053】
スタンニル基は、置換基を有していてもよく、置換基を除いたスタンニル基の炭素数は、通常0〜20である。置換基を有していてもよいスタンニル基としては、トリメチルスタンニル基、トリブチルスタンニル基等が挙げられる。
【0054】
高分子化合物を製造するためのモノマーとして使用する観点からは、Eが、各々独立して、ハロゲン原子、ボロン酸残基、ホウ酸エステル残基又はスタンニル基が好ましい。
【0055】
式(1)中、Qは、式(2)で表される化合物から水素原子を2個除いた2価の基を表す。
【0056】
【化5】

【0057】
式(2)中、A環、B環及びC環は、各々独立して、芳香環を表す。X、X、X、X、X、X及びXは、各々独立して、炭素原子又は窒素原子を表す。Rは、各々独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基、ニトロ基又はシアノ基を表す。2個のRが互いに結合して環状構造を形成してもよい。
【0058】
式(2)中、A環、B環及びC環は各々独立して、芳香環を表す。ここで、芳香環の炭素数は、好ましくは2〜60であり、より好ましくは2〜22であり、さらに好ましくは3〜14である。該炭素数には置換基の炭素数は含まれない。芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、ピレン環、ペンタセン環、ペリレン環、フルオレン環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、チオフェン環、ピロール環、フラン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾピロール環、ベンゾフラン環、キノリン環、イソキノリン環、チエノチオフェン環、ベンゾチアジアゾール環等が挙げられる。芳香環は置換基を有していてもよい。
【0059】
式(2)中、X、X、X、X、X、X及びXは、それぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表す。X、X、X、X、X、X及びXのうち、少なくとも4つは炭素原子であることが好ましい。また、X、X、X、X、X、X及びXにおいて、隣り合う二つのうち少なくとも1つが炭素原子であることが好ましい。
【0060】
式(2)中、B環は、合成の容易さの観点からは、6員環であることが好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。
【0061】
B環がベンゼン環の場合、式(2)は式(3)で表される。
【0062】
【化6】

【0063】
式(3)中、A環、C環、X、X、X、X及びRは、前記と同じ意味を表す。Rは、各々独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基、ニトロ基又はシアノ基を表す。ベンゼン環の隣接する炭素原子に結合している2個のRが互いに結合して環状構造を形成してもよい。
【0064】
式(3)中、Rで表されるアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基の定義、具体例は、前述のEで表されるアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基の定義、具体例と同じである。
【0065】
式(3)中、化合物の再配向エネルギーを低下させる観点からは、A環及びC環は、それぞれ独立に、チオフェン環、ピロール環又はフラン環であることが好ましく、チオフェン環であることがより好ましい。
【0066】
中でも、合成の容易さの観点からは、Qが、式(4a)で表される基又は式(4b)で表される基であることが好ましい。
【0067】
【化7】

【0068】
式(4a)及び式(4b)中、R及びRは、前記と同じ意味を表す。Rは、各々独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基、ニトロ基又はシアノ基を表す。
【0069】
で表されるアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基の定義、具体例は、前述のEで表されるアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基の定義、具体例と同じである。
【0070】
としては、例えば、下記の基が挙げられる。
【0071】
【化8】

【0072】
【化9】

【0073】
【化10】

【0074】
【化11】

【0075】
式(1)中、Qは、それぞれ独立して、−CR1a=CR1b−、−C≡C−又は二価の芳香族基を表す。
【0076】
1a及びR1bは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はシアノ基を表す。
【0077】
1a及びR1bで表されるアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基の定義、具体例は、前述のEで表されるアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基の定義、具体例と同じである。
【0078】
二価の芳香族基は、芳香環から水素原子2個を除いた原子団であり、縮合環を有する基、独立した芳香族環又は縮合環2個以上が直接結合した基を含む。二価の芳香族基としては、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、テトラセンジイル基、ピレンジイル基、ペンタセンジイル基、ペリレンジイル基、フルオレンジイル基、オキサジアゾールジイル基、チアジアゾールジイル基、オキサゾールジイル基、チアゾールジイル基、チオフェンジイル基、ビチオフェンジイル基、テルチオフェンジイル基、クアテルチオフェンジイル基、ピロールジイル基、フランジイル基、セレノフェンジイル基、ピリジンジイル基、ピラジンジイル基、ピリミジンジイル基、トリアジンジイル基、ベンゾチオフェンジイル基、ベンゾピロールジイル基、ベンゾフランジイル基、キノリンジイル基、イソキノリンジイル基、チエノチオフェンジイル基、ベンゾチアジアゾールジイル基、ベンゾジチオフェンジイル基等が挙げられる。二価の芳香族基は置換基を有していてもよい。
【0079】
は、二価の芳香族基が好ましく、置換基を有していてもよいフェニレンジイル基、置換基を有していてもよいフルオレンジイル基、置換基を有していてもよいチオフェンジイル基、置換基を有していてもよいチエノチオフェンジイル基、置換基を有していてもよいベンゾジチオフェンジイル基がより好ましく、以下の式で表される基が特に好ましい。
【0080】
【化12】

【0081】
(ここで、Rは、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表す。)
【0082】
式(1)中、nは1以上の整数を表し、m1は、0〜10の整数を表し、m2は、0〜10の整数を表す。ただし、n個あるm1の全てが0になることはない。nが2以上の場合、n個あるm1は、同一であっても相異なってもよく、n個あるm2は、同一であっても相異なってもよい。式(1)で表される化合物の結晶性を高め、式(1)で表される化合物を含むトランジスタ素子の性能を向上させる観点からは、m1が1であり、m2が0であることが好ましい。
【0083】
式(1)で表される化合物の良好な薄膜を作製する観点からは、nが3以上であることが好ましい。
【0084】
式(1)にで表される化合物の溶媒への溶解性を高め、薄膜の作製を容易にする観点からは、nが3以上10000以下であることが好ましく、3以上5000以下であることがより好ましい。
【0085】
式(1)で表される化合物の結晶性を高め、式(1)で表される化合物を含むトランジスタ素子の性能を向上させる観点からは、nが1であることが好ましい。
【0086】
式(1)で表される化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0087】
【化13】

【0088】
【化14】

【0089】
【化15】

【0090】
【化16】

【0091】
<組成物>
本発明の組成物としては、2種類以上の式(1)で表される化合物を含有する組成物、式(1)で表される化合物とは異なる化合物と1種以上の式(1)で表される化合物とを含有する組成物が挙げられる。式(1)で表される化合物とは異なる化合物としては、例えば、式(1)で表される化合物以外の有機半導体材料が挙げられる。本発明の組成物は、式(1)で表される化合物と溶媒とを含む液状の組成物であってもよい。
【0092】
<有機薄膜>
次に、本発明の式(1)で表される化合物を含有する有機薄膜について説明する。
【0093】
有機薄膜の好適な厚さは、当該有機薄膜を適用する素子に応じて異なるが、通常1nm〜100μmの範囲であり、2nm〜1000nmであると好ましく、5nm〜500nmであるとより好ましく、20nm〜200nmであると更に好ましい。
このような厚さの有機薄膜により、良好な電荷輸送性を有し、強度も十分な有機薄膜素子を形成しやすくなる。
【0094】
有機薄膜は、前記式(1)で表される化合物の1種類を単独で含むものであってもよく、また2種類以上を含むものであってもよい。有機薄膜が、前記式(1)で表される化合物以外の成分を含む場合は、前記式(1)で表される化合物を10質量%以上含むことが好ましく、30質量%以上含むことがより好ましい。前記式(1)で表される化合物の含有量が30質量%未満である場合、薄膜化が困難となったり、良好な電荷移動度が得られ難くなったりする傾向にある。
【0095】
前記式(1)で表される化合物以外の成分としては、例えば、前記式(1)で表される化合物以外の有機半導体材料が挙げられる。
【0096】
本発明の有機薄膜は、如何なる方法により製造されたものであってもよいが、例えば、式(1)で表される化合物を有機溶媒に溶解させて溶液とし、この溶液を用いて成膜することにより形成することができる。
【0097】
本発明の有機薄膜を製造する際に用いられる有機溶媒としては、有機薄膜に含まれる成分を良好に溶解又は分散させることができる有機溶媒が好ましい。必要に応じ、加熱して、有機薄膜に含まれる成分を有機溶媒に溶解させてもよい。有機溶媒の例としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の不飽和炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、クロロヘキサン、ブロモヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素;エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブチルアルコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルモルホリンオキシド等のアミド類が挙げられるが、化合物をよく溶解させる観点からは、不飽和炭化水素、ハロゲン化飽和炭化水素又はハロゲン化不飽和炭化水素が好ましく、トルエン、キシレン、クロロホルム又はジクロロベンゼンがより好ましい。なお、前記有機溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0098】
本発明の有機薄膜の形成は、前記溶液等を基板上に塗布し、必要に応じて、塗布と同時に又は塗布後に溶媒を除去することにより行えばよい。該塗布の例としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法が挙げられる。
【0099】
なお、前記塗布は、加熱した状態で行ってもよい。加熱することにより、高濃度の塗布液を塗布することが可能となり、より均質な薄膜を形成できるほか、室温での塗布が困難であった材料等を用いることも可能となる。
【0100】
また、前記有機薄膜に対して、ラビング法、光配向法、シェアリング法、引き上げ塗布法等により配向を付与することにより、電荷輸送性を一層高めてもよい。
【0101】
<有機薄膜素子>
本発明の有機薄膜は、再配向エネルギーが小さい式(1)で表される化合物を含むことから、優れた電荷輸送性を有し、有機薄膜トランジスタ、有機太陽電池等の有機薄膜素子の製造に有用である。
【0102】
特に有機薄膜トランジスタの電荷輸送材料として有用である。
【0103】
再配向エネルギーは、ホール移動に伴う構造変化に関するエネルギー障壁の4倍に相当する量であり、これが小さいほど高いホール移動度が期待できる。
【0104】
<有機トランジスタ>
有機トランジスタとしては、ソース電極及びドレイン電極と、これらの電極間の電流経路となり、式(1)で表される化合物を含む活性層と、該電流経路を通る電流量を制御するゲート電極とを備えた構成を有するものが挙げられる。このような構成を有する有機トランジスタとしては、電界効果型有機トランジスタ、静電誘導型有機トランジスタ等が挙げられる。
【0105】
電界効果型有機トランジスタは、通常、ソース電極及びドレイン電極と、これらの電極間の電流経路となり、式(1)で表される化合物を含む活性層と、該電流経路を通る電流量を制御するゲート電極と、活性層とゲート電極との間に配置される絶縁層とを有する有機トランジスタである。特に、ソース電極及びドレイン電極が、活性層に接して設けられており、さらに活性層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられている有機トランジスタが好ましい。
【0106】
静電誘導型有機トランジスタは、通常、ソース電極及びドレイン電極と、これらの電極間の電流経路となり、式(1)で表される化合物を含む活性層と、該電流経路を通る電流量を制御するゲート電極とを有し、該ゲート電極が活性層中に設けられている有機トランジスタである。特に、ソース電極、ドレイン電極、及び前記ゲート電極が、前記活性層に接して設けられている有機トランジスタが好ましい。
【0107】
ゲート電極は、ソース電極からドレイン電極へ流れる電流経路が形成でき、かつ、ゲート電極に印加した電圧で該電流経路を流れる電流量が制御できる構造であればよく、例えば、くし型電極である。
【0108】
図1は、本発明の有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の一例を示す模式断面図である。図1に示す有機トランジスタ100は、基板1と、基板1上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を覆うようにして基板1上に形成された活性層2と、活性層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の領域上の絶縁層3を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4とを備えるものである。
【0109】
図2は、本発明の有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の他の例を示す模式断面図である。図2に示す有機トランジスタ110は、基板1と基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を覆うようにして基板1上に形成された活性層2と、ソース電極5と所定の間隔を持って活性層2上に形成されたドレイン電極6と、活性層2及びドレイン電極6上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の領域上の絶縁層3を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4とを備えるものである。
【0110】
図3は、本発明の有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の他の例を示す模式断面図である。図3に示す有機トランジスタ120は、基板1と基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域の一部を覆うように、絶縁層3上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6の一部を覆うように絶縁層3上に形成された活性層2とを備えるものである。
【0111】
図4は、本発明の有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の他の例を示す模式断面図である。図4に示す有機トランジスタ130は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域の一部を覆うように絶縁層3上に形成されたソース電極5と、ソース電極5の一部を覆うようにして絶縁層3上に形成された活性層2と、活性層2の一部を覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上に形成されたドレイン電極6とを備えるものである。
【0112】
図5は、本発明の有機トランジスタ(静電誘導型有機トランジスタ)の他の例を示す模式断面図である。図5に示す有機トランジスタ140は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って複数形成されたゲート電極4と、ゲート電極4の全てを覆うようにして活性層2上に形成された活性層2a(活性層2aを構成する材料は、活性層2と同一であっても異なっていてもよい)と、活性層2a上に形成されたドレイン電極6とを備えるものである。
【0113】
図6は、本発明の有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の他の例を示す模式断面図である。図6に示す有機トランジスタ150は、基板1と、基板1上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6の一部を覆うようにして活性層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5が下部に形成されている絶縁層3の領域とドレイン電極6が下部に形成されている絶縁層3の領域とをそれぞれ一部覆うように、絶縁層3上に形成されたゲート電極4とを備えるものである。
【0114】
図7は、本発明の有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の他の例を示す模式断面図である。図7に示す有機トランジスタ160は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を覆うように形成された活性層2と、活性層2の一部を覆うように活性層2上に形成されたソース電極5と、活性層2の一部を覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って活性層2上に形成されたドレイン電極6とを備えるものである。
【0115】
図8は、本発明の有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の他の例を示す模式断面図である。図8に示す有機トランジスタ170は、ゲート電極4と、ゲート電極4上に形成された絶縁層3と、絶縁層3上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、を備えるものである。この場合、ゲート電極4は基板1を兼ねる構成となっている。
【0116】
上述した本発明の有機トランジスタにおいては、活性層2及び/又は活性層2aは、本発明の化合物を含有する膜によって構成され、ソース電極5とドレイン電極6との間の電流通路(チャネル)となる。また、ゲート電極4は、電圧を印加することにより電流通路(チャネル)を通る電流量を制御する。
【0117】
このような電界効果型有機トランジスタは、公知の方法、例えば特開平5−110069号公報記載の方法により製造することができる。また、静電誘導型有機トランジスタは、特開2004−006476号に公報記載の方法等の公知の方法により製造することができる。
【0118】
基板1の材料は、有機トランジスタの特性を阻害しない材料であればよい。基板としては、ガラス基板、フレキシブルなフィルム基板、プラスチック基板を用いることができる。
【0119】
絶縁層3の材料は、電気の絶縁性が高い材料であればよく、SiOx、SiNx、Ta25、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、有機ガラス、フォトレジスト等を用いることができるが、低電圧化の観点からは、誘電率の高い材料を用いることが好ましい。
【0120】
絶縁層3の上に活性層2を形成する場合は、絶縁層3と活性層2の界面特性を改善するため、シランカップリング剤等の表面処理剤で絶縁層3の表面を処理して表面改質した後に活性層2を形成することも可能である。
【0121】
有機電界効果トランジスタの場合、電子やホール等の電荷は、一般に絶縁層と活性層の界面付近を通過する。従って、この界面の状態がトランジスタの移動度に大きな影響を与える。そこで、界面状態を改良して特性を向上させる方法として、シランカップリング剤による界面の制御が提案されている(例えば、表面化学、2007年、第28巻、第5号、p.242−248)。
【0122】
シランカップリング剤としては、アルキルクロロシラン類(オクチルトリクロロシラン(OTS)、オクタデシルトリクロロシラン(ODTS)、フェニルエチルトリクロロシラン等)、アルキルアルコキシシラン類、フッ素化アルキルクロロシラン類、フッ素化アルキルアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)等のシリルアミン化合物等が挙げられる。また、表面処理剤で処理する前に、絶縁層表面をオゾンUV処理、O2プラズマ処理してもよい。
【0123】
このような処理によって、絶縁層として用いられるシリコン酸化膜等の表面エネルギーを制御することができる。また、表面処理により、活性層を構成している膜の絶縁層上での配向性が向上し、高い電荷輸送性(移動度)が得られる。
【0124】
ゲート電極4には、金、白金、銀、銅、クロム、パラジウム、アルミニウム、インジウム、モリブデン、低抵抗ポリシリコン、低抵抗アモルファスシリコン等の金属や、錫酸化物、酸化インジウム、インジウム・錫酸化物(ITO)等の材料を用いることができる。これらの材料は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、ゲート電極4としては、高濃度にドープされたシリコン基板を用いることも可能である。高濃度にドープされたシリコン基板は、ゲート電極としての性能とともに、基板としての性能も併有する。このような基板としての性能も有するゲート電極4を用いる場合には、基板1とゲート電極4とが接している有機トランジスタにおいて、基板1を省略してもよい。
【0125】
ソース電極5及びドレイン電極6は、低抵抗の材料から構成されることが好ましく、金、白金、銀、銅、クロム、パラジウム、アルミニウム、インジウム、モリブデン等から構成されることが特に好ましい。これらの材料は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0126】
前記有機トランジスタにおいて、ソース電極5及びドレイン電極6と、活性層2との間には、更に他の化合物から構成された層が介在していてもよい。このような層としては、電子輸送性を有する低分子化合物、ホール輸送性を有する低分子化合物、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、これらの金属と有機化合物との錯体、ヨウ素、臭素、塩素、塩化ヨウ素等のハロゲン、硫酸、無水硫酸、二酸化硫黄、硫酸塩等の酸化硫黄化合物、硝酸、二酸化窒素、硝酸塩等の酸化窒素化合物、過塩素酸、次亜塩素酸等のハロゲン化化合物、アルキルチオール化合物、芳香族チオール類、フッ素化アルキル芳香族チオール類等の芳香族チオール化合物等からなる層が挙げられる。
【0127】
また、上述したような有機トランジスタを作製した後には、素子を保護するため、有機トランジスタ上に保護膜を形成することが好ましい。これにより、有機トランジスタが大気から遮断され、有機トランジスタの特性の低下を抑制することができる。また、有機トランジスタの上に駆動する表示デバイスを形成する場合、その形成工程における有機トランジスタへの影響も該保護膜により低減することができる。
【0128】
保護膜を形成する方法としては、有機トランジスタを、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂や無機のSiONx膜等で覆う方法等が挙げられる。大気との遮断を効果的に行うため、有機トランジスタを作製後、有機トランジスタを大気にさらすことなく(例えば、乾燥した窒素雰囲気中、真空中等で)保護膜を形成することが好ましい。
【0129】
このように構成された有機トランジスタの一種である有機電界効果トランジスタは、アクティブマトリックス駆動方式の液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの画素駆動スイッチング素子等として適用できる。そして、上述した実施形態の有機電界効果トランジスタは、活性層として、本発明の化合物を含有し、そのことにより電荷輸送性が向上した活性層を備えているため、その電界効果移動度が高いものとなる。したがって、十分な応答速度を持つディスプレイの製造等に有用である。
【実施例】
【0130】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0131】
(NMR分析)
NMR測定は、化合物を重クロロホルムに溶解させ、NMR装置(Varian社製、INOVA300)を用いて行った。
【0132】
(重量平均分子量)
重量平均分子量については、ゲル透過クロマトグラフィ(GPC、島津製作所製、商品名:LC−10Avp)により求めた。測定する高分子化合物は、約0.5重量%の濃度になるようテトラヒドロフランに溶解させ、GPCに50μL注入した。GPCの移動相にはテトラヒドロフランを用い、0.6mL/分の流速で流した。カラムは、TSKgel SuperHM−H(東ソー製)2本とTSKgel SuperH2000(東ソー製)1本とを直列に繋げた。検出器には示差屈折率検出器(島津製作所製:RID−10A)を用いた。
【0133】
合成例1
(N−(2,6−ジブロモフェニル)ピロールの合成)
【0134】
【化17】

【0135】
フラスコに、2,6−ジブロモアニリンを48g(0.19mol)、2,5−ジメトキシテトラヒドロフランを28g(0.21mol)及び酢酸を500mL入れた。反応溶液を120℃に加熱しながら4時間撹拌した。その後、反応溶液を濃縮し、500mLの水と500mLのメタノールとの混合液に濃縮した溶液を滴下して析出物を得た。析出物を濾過し、乾燥させ、N−(2,6−ジブロモフェニル)ピロールを得た。得量は52gであり、収率は91%であった。
【0136】
1H−NMR(300MHz,CDCl3) δ7.65(d,2H),7.15(t,1H),6.69(m,2H),6.39(m,2H)
【0137】
合成例2
(N−(2,6−ジ(3−チエニル)フェニル)ピロールの合成)
【0138】
【化18】

【0139】
フラスコ内の気体を窒素で置換したフラスコに、N−(2,6−ジブロモフェニル)ピロールを23g(78mmol)、3−チオフェンボロン酸を24g(0.19mol)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(商品名:Aliquat336(登録商標)、Aldrich製)を1.6g、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを1.6g(2.3mmol)及びトルエンを300mL入れ、反応溶液を還流させた。反応溶液に2mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液を150mL滴下した。滴下後、反応溶液を8時間還流させた。その後、反応溶液の水層を除去し、水で3回洗浄した。得られたトルエン溶液を濃縮し、メタノールに滴下して析出物を得た。析出物を濾過し、乾燥させ、N−(2,6−ジ(3−チエニル)フェニル)ピロールを得た。得量は20gであり、収率は84%であった。
【0140】
1H−NMR(300MHz,CDCl3) δ7.56(d,2H),7.45(t,1H),7.18(m,2H),6.91(m,2H),6.72(m,2H),6.42(m,2H),6.15(m,2H)
【0141】
実施例1
(化合物1の合成)
【0142】
【化19】

【0143】
フラスコ内の気体を窒素で置換したフラスコに、N−(2,6−ジ(3−チエニル)フェニル)ピロールを3.0g(9.8mmol)、塩化鉄(III)を13g(78mmol)、ニトロメタンを10mL及びキシレンを500mL入れた。その後、反応溶液を室温(25℃)で3時間撹拌した。反応溶液を水で3回洗浄し、その後、キシレン溶液中のキシレンを蒸発させ、固体を得た。該固体をシリカゲルカラム中のシリカゲルに吸着させ、n−へキサンを流して精製し、n−へキサン溶液を回収した。その後、n−へキサンを蒸発させて、化合物1を得た。得量は0.40gであり、収率は14%であった。
【0144】
1H−NMR(300MHz,CDCl3) δ7.94(d,2H),7.75(d,2H),7.61(t,1H),7.44(d,2H),7.12(s,2H)
【0145】
合成例3
(N−(2,6−ジ(3−チエニル)−4−ドデシルフェニル)ピロールの合成)
【0146】
【化20】

【0147】
フラスコに、4−ドデシルアニリンを31g(0.12mol)、N,N−ジメチルホルムアミドを150mL入れた。反応溶液を0℃に冷却し、撹拌しながら、N−ブロモスクシンイミドを2.6mol/L含むN,N−ジメチルホルムアミド溶液を100mL滴下した。滴下終了後、室温(25℃)で1時間撹拌した。その後、反応溶液を700mLの水に注ぎ、さらに700mLのクロロホルムを加え、有機層を抽出した。有機層を水で3回洗浄し、その後、有機層を濃縮して2,6−ジブロモ−4−ドデシルアニリンを得た。得量は45gであった。
【0148】
フラスコに、2,6−ジブロモ−4−ドデシルアニリンを45g、2,5−ジメトキシテトラヒドロフランを20g(0.15mol)及び酢酸を400mL入れた。反応溶液を120℃に加熱し、4時間撹拌した。その後、反応溶液を濃縮し、300mLの水と200mLのメタノールとの混合液に濃縮した反応溶液を滴下して析出物を得た。析出物を濾過し、乾燥させ、N−(2,6−ジブロモ−4−ドデシルフェニル)ピロールを得た。得量は42gであった。
【0149】
フラスコ内の気体を窒素で置換したフラスコに、N−(2,6−ジブロモ−4−ドデシルフェニル)ピロールを40g、3−チオフェンボロン酸を23g(0.18mol)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(商品名:Aliquat336(登録商標)、Aldrich製)を3.0g、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(PdCl(PPh)を1.0g及びトルエンを300mL入れ、反応溶液を還流させた。反応溶液に2mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液を170mL滴下した。滴下後、反応溶液を8時間還流させた。その後、反応溶液の水層を除去し、水で2回洗浄した。得られたトルエン溶液中のトルエンを蒸発させ、固体を得た。該固体をシリカゲルカラム中のシリカゲルに吸着させ、n−へキサンを流して精製し、n−へキサン溶液を回収した。その後、n−へキサンを蒸発させて、N−(2,6−ジ(3−チエニル)−4−ドデシルフェニル)ピロールを得た。得量は32gであり、収率は79%であった。
【0150】
1H−NMR(300MHz,CDCl3) δ7.36(s,2H),7.16(m,2H),6.90(m,2H),6.71(m,2H),6.41(m,2H),6.12(m,2H),2.70(t,2H),1.71(m,2H),1.2〜1.4(m,18H),0.88(t,3H)
【0151】
実施例2
(化合物2の合成)
【0152】
【化21】

【0153】
フラスコ内の気体を窒素で置換したフラスコに、N−(2,6−ジ(3−チエニル)−4−ドデシルフェニル)ピロールを7.6g(0.016mol)、塩化鉄(III)を21g(0.13mol)、ニトロメタンを10mL及びトルエンを500mL入れた。反応溶液を室温(25℃)で4時間撹拌した。その後、反応溶液を濃縮し、500mLの水に注いだ。さらに、1Lのクロロホルムを加え、有機層であるクロロホルム溶液を抽出し、クロロホルム溶液を水で2回洗浄を行った。クロロホルム溶液中のクロロホルムを蒸発させ、固体を得た。該固体をシリカゲルカラム中のシリカゲルに吸着させ、n−へキサンを流して精製し、n−へキサン溶液を回収した。その後、n−へキサンを蒸発させた。得られた固体を、熱イソプロパノールから再結晶して化合物2を得た。得量は2.2gであり、収率は29%であった。
【0154】
1H−NMR(300MHz,CDCl3) δ7.65−7.70(m,4H),7.38(m,2H),7.02(s,2H),2.85(t,2H),1.77(m,2H),1.1〜1.4(m,18H),0.88(t,3H)
【0155】
実施例3
(化合物3の合成)
【0156】
【化22】

【0157】
フラスコに、化合物2を0.50g(1.1mmol)、クロロホルムを100mL入れ、反応溶液を−78℃に冷却して撹拌した。反応溶液にN−ヨードスクシンイミドを0.48g(2.1mmol)を加え、3時間、−78℃で保温撹拌した。その後、反応溶液の温度を徐々に室温(25℃)に戻した。その後、クロロホルム溶液である反応溶液を水(50mL)で2回洗浄を行った。クロロホルム溶液中のクロロホルムを蒸発させ、固体を得た。該固体をシリカゲルカラム中のシリカゲルに吸着させ、n−へキサンを流して精製し、n−へキサン溶液を回収した。その後、n−へキサンを蒸発させて、化合物3を得た。得量は0.20gであり、収率は26%であった。
【0158】
1H−NMR(300MHz,CDCl3) δ7.78(d,2H),7.65(s,2H),7.49(d,2H),2.86(t,2H),1.77(m,2H),1.2〜1.3(m,18H),0.87(t,3H)
【0159】
実施例4
(化合物4の合成)
【0160】
【化23】

【0161】
フラスコ内の気体を窒素で置換したフラスコに、化合物3を0.11g(0.15mmol)、2,2’−ビピリジルを0.059g(0.38mmol)、テトラヒドロフランを7mL入れて室温(25℃)で撹拌した。反応溶液にビス(1,4−シクロオクタジエン)ニッケル(0)を0.10g(0.38mmol)加えた。その後、60℃で24時間反応させ、その後、反応溶液にメタノールを加えた。析出物をクロロベンゼンに溶解させ、クロロベンゼン溶液を、クロロベンゼンを展開溶媒として用いたシリカゲルカラムに通して精製を行った。精製後のクロロベンゼン溶液を濃縮し、メタノールに滴下した。析出物を濾過し、化合物4を15mg得た。化合物4のポリスチレン換算の重量平均分子量は1.3×10であった。
【0162】
実施例5
(化合物5の合成)
【0163】
【化24】

【0164】
フラスコ内の気体を窒素で置換したフラスコに、1−ドデセンを0.21g(1.2mmol)、0.5Mの9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナンのテトラヒドロフラン溶液を2.5mL入れ、反応溶液を室温(25℃)で10時間撹拌した。その後、反応溶液に化合物3を0.60g(0.83mmol)を入れた。次に、ジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(PdCl(dppf))を6.8mg入れた。反応溶液を還流させ、5Mの水酸化ナトリウム水溶液を0.66mL入れた。その後、反応溶液を10時間還流させた。反応溶液を水に注ぎ、さらにトルエンを加え、トルエン層を抽出した。その後、トルエン溶液を水で二回洗浄した。トルエン溶液中のトルエンを蒸発させ、固体を得た。該固体をシリカゲルカラム中のシリカゲルに吸着させ、n−へキサンを流して精製し、n−へキサン溶液を回収した。その後、n−へキサンを蒸発させて、化合物5を得た。得量は0.20gであり、収率は30%であった。
【0165】
1H−NMR(300MHz,CDCl3) δ7.72(d,2H),7.66(d,2H),7.05(s,2H),2.85(m,6H),1.80(m,6H),1.2〜1.5(m,54H),0.95(m,9H)
【0166】
実施例6
(化合物6の合成)
【0167】
【化25】

【0168】
フラスコ内の気体を窒素で置換したフラスコに、化合物5を0.20g(0.25mmol)、クロロベンゼンを50mL入れた。反応溶液に塩化鉄(III)を0.40g(2.5mmol)加えた。その後、120℃で6時間反応させた。その後、反応溶液を水で2回洗浄し、クロロベンゼン溶液をシリカゲルカラムに通して精製した。その後、クロロベンゼン溶液を濃縮し、メタノールに滴下した。析出物を濾過し、化合物6を得た。得量は44mgであった。化合物6のポリスチレン換算の重量平均分子量は4.4×10であった。
【0169】
実施例7
(有機薄膜トランジスタ1の製造及びその特性の評価)
【0170】
電荷輸送性化合物である化合物4を含む溶液を用いて、図8に示す構造を有する有機薄膜トランジスタ1を作製した。
【0171】
即ち、まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板の表面を熱酸化し、200nmのシリコン酸化膜を形成した。こうして得られた熱酸化膜(以下、熱酸化膜ということがある)を形成した基板をアセトンに浸して10分間超音波洗浄した後、オゾンUVクリーナーで30分間オゾンUV処理を行なった。その後、大気中でヘキサメチルジシラザン(HMDS)を熱酸化膜上にスピンコートすることにより、熱酸化膜の表面修飾を行った。
【0172】
次に、化合物4をクロロホルムに溶解させて、これをメンブランフィルターでろ過して塗布液を調製した。該塗布液中の化合物4の濃度は、0.5重量%であった。
【0173】
その後、該塗布液を、前記表面修飾した熱酸化膜上にスピンコート法で塗布し、化合物4を含む有機薄膜を形成した。その後、メタルマスクを用いた真空蒸着法により有機薄膜上に酸化モリブデン(MoO)を蒸着し、ソース電極及びドレイン電極を形成して、有機薄膜トランジスタ1を作製した。
【0174】
有機薄膜トランジスタ1のゲート電圧Vg及びソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させて、トランジスタ特性を測定した。移動度は9×10−6cm/Vsであった。
【0175】
合成例4
(ポリ(9,9’−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)の合成)
【0176】
【化26】

【0177】
フラスコ内の気体を窒素で置換したフラスコに、2,7−ジブロモ−9,9’−ジオクチルフルオレンを0.50g(0.91mmol)、2,2’−ビピリジルを0.31g(2.0mmol)、テトラヒドロフランを50mL入れた。反応溶液を撹拌し、60℃に加熱し、ビス(シクロオクタジエン)ニッケルを0.44g(2.0mmol)加えた。その後、60℃で10分反応させた。反応溶液をメタノールに加えて析出物を得た。析出物をトルエンに溶解させ、水で2回洗浄した。トルエン溶液を、トルエンを展開溶媒として用いたシリカゲルカラムに通して精製を行った。その後、トルエン溶液を濃縮し、メタノールに滴下した。析出物を濾過し、ポリ(9,9’−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)を得た。化合物6のポリスチレン換算の重量平均分子量は1.9×10であった。
【0178】
比較例1
(有機薄膜トランジスタ2の製造及びその特性の評価)
化合物4を、ポリ(9,9’−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)にかえた以外は、実施例7と同様にして、有機薄膜トランジスタ2を作製した。
【0179】
有機薄膜トランジスタ1のゲート電圧Vg及びソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させて、トランジスタ特性を測定したところ、トランジスタは作動せず、トランジスタ特性を示さなかった。
【0180】
計算例1
(再配向エネルギーの量子化学計算)
化合物の再配向エネルギーは、ザ ジャーナル オブ フィジカル ケミストリー A(The Journal of Physical Chemistry A)1999年、第103巻、p.5551−5556に記載された式(5)を計算し、算出した。
【0181】
[数1]
[再配向エネルギー]=[中性状態の安定構造を保持した状態で正の電荷を与えた化合物のエネルギー]
+[カチオンラジカル状態の安定構造を保持した状態で電荷を零にした化合物のエネルギー]
−[中性状態の安定構造における化合物のエネルギー]
−[カチオンラジカル状態の安定構造における化合物のエネルギー] (5)
【0182】
本発明の化合物(式(6)で表される化合物)、ポリ(9,9’−ジアルキルフルオレン−2,7−ジイル)(式(7)で表される化合物)、ポリ(3−アルキルチオフェン−2,5−ジイル)(式(8)で表される化合物)について、密度汎関数法(B3LYP密度汎関数と6−31G*基底関数を使用)を用い、式(5)によって再配向エネルギーを計算した。計算には、量子化学計算プログラムGaussian09 Reision A 02を用いた。
【0183】
各化合物の中性状態における末端炭素原子間距離が30Å未満であって30Åに最も近い値となる重合度(t1)を有する化合物、及び、中性状態における末端炭素原子間距離が30Å以上であって30Åに最も近い値となる重合度(t2)を有する化合物の再配向エネルギーを計算し、距離に着目した内挿法により、中性状態における末端炭素原子間距離が30Åとなる化合物の値を求め、比較した。計算結果を表1に示す。
【0184】
【化27】

【0185】
共役系高分子には、一般に、重合度を伸ばしていくと吸収波長が殆ど変化しなくなる有効共役長があることが知られている。式(6)で表される化合物、(7)で表される化合物、(8)で表される化合物について、末端原子間距離が15Å以上となる重合度tをそれぞれ7〜17個選び、各tにおける再配向エネルギーの値を計算した。重合度tと再配向エネルギーとの関係を式(9)でフィッティングし、重合度を無限大とした式(6)〜式(8)で表される化合物の再配向エネルギー(λ)を求めた。
【0186】
[数2]
[再配向エネルギー]=λ+a×exp(−b×t−c×t) (9)
【0187】
式(9)中、a、b及びcは、フィッティングパラメータを表す。フィッティングの精度の尺度である相関係数の2乗値は、全て0.995以上であった。計算結果を表1に示す。
【0188】
[表1]
化合物の再配向エネルギー(括弧内はtの値と中性状態の安定構造における末端炭素原子間距離)

【0189】
本発明の化合物の再配向エネルギーは、ポリフルオレン、ポリチオフェンの再配向エネルギーよりも小さい。
【符号の説明】
【0190】
1…基板、
2、2a…活性層、
3…絶縁層、
4…ゲート電極、
5…ソース電極、
6…ドレイン電極、
100、110、120、130、140、150、160、170…有機トランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

〔式中、Eは、各々独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、ボロン酸残基、ホウ酸エステル残基又はスタンニル基を表す。Qは、式
【化2】

{式中、A環、B環及びC環は、各々独立して、芳香環を表す。X、X、X、X、X、X及びXは、各々独立して、炭素原子又は窒素原子を表す。Rは、各々独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基、ニトロ基又はシアノ基を表す。2個のRが互いに結合して環状構造を形成してもよい。}
で表される化合物から水素原子を2個除いた2価の基を表す。Qが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。Qは、式−CR1a=CR1b−{式中、R1a及びR1bは、各々独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はシアノ基を表す。}で表される基、式−C≡C−で表される基又は2価の芳香族基を表す。Qが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。nは1以上の整数を表す。m1は、0〜10の整数を表す。m2は、0〜10の整数を表す。ただし、n個あるm1の全てが0になることはない。nが2以上の場合、n個あるm1は、同一であっても相異なってもよく、n個あるm2は、同一であっても相異なってもよい。〕
で表される化合物。
【請求項2】
が、式
【化3】


〔式(3)中、A環、C環、X、X、X、X及びRは前記と同じ意味を表す。Rは、各々独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基、ニトロ基又はシアノ基を表す。ベンゼン環の隣接する炭素原子に結合している2個のRが互いに結合して環状構造を形成してもよい。〕
で表される化合物から水素原子を2個除いた2価の基である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
A環及びC環が、各々独立して、芳香族複素環である請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
A環及びC環が、各々独立して、チオフェン環、ピロール環又はフラン環である請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
が、式
【化4】

〔式中、R及びRは前記と同じ意味を表す。Rは、各々独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基、ニトロ基又はシアノ基を表す。〕
で表される基である請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
m1が1であり、m2が0である請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
nが3〜10000の整数である請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
nが1である請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
Eが、各々独立して、ハロゲン原子、ボロン酸残基、ホウ酸エステル残基又はスタンニル基である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物を含有する組成物。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物を含有する薄膜。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物を含有する有機半導体材料。
【請求項13】
有機半導体材料として請求項11に記載の薄膜を備える有機薄膜素子。
【請求項14】
有機半導体材料として請求項11に記載の薄膜を備える有機トランジスタ素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−82344(P2012−82344A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230768(P2010−230768)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】