説明

縮環ピリミジン誘導体

【課題】 CCケモカインレセプター4(CCR4)が関与する炎症性疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患等の予防又は治療剤としてに有用な化合物を提供すること。
【解決手段】 2位に飽和環の結合したピペリジノ又はピペラジノ等の飽和6員ヘテロ環基を有し、4位に置換アミノ基を有する縮環ピリミジン誘導体が、CCR4の機能調節剤として良好な活性を有すること見出し、特に皮膚炎等の炎症性疾患治療剤と有用であることを知見して、本発明を完成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な縮環ピリミジン誘導体、及びそれを有効成分とする医薬、特に炎症性疾患治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞遊走因子であるケモカインは構造的な特徴により大きくCXC/αケモカインとCC/βケモカインの二種に分類される。また、これらケモカインの受容体は7回膜貫通Gタンパク質共役型受容体ファミリーに属し、CXCケモカインレセプターとCCケモカインレセプターから構成されている(Pharmacological Reviews, 52, 145, 2000)。
CCケモカインレセプター4(CCR4)は、Tリンパ細胞及び胸腺からクローニングされ(Biochemical and Biophysical Research Communications, 218, 337, 1996、European Journal of Immunology, 26, 3021, 1996)、当初、Th2タイプといわれるT細胞に主に発現していると報告されていた(Journal of Experimental Medicine, 187, 875, 1998)。しかし、その後の詳細な解析によりCCR4はTh1及びTh2のエフェクター・メモリーT細胞に広く存在することが示された(Journal of Immunology, 166, 103, 2001、The Journal of Clinical Investigation, 108, 1331, 2001)。更に最近の研究では、CCR4はほとんどすべての皮膚指向性のT細胞(Nature, 400, 776, 1999)及び単球・マクロファージ、樹状細胞、NK細胞に存在することも明らかにされている(Arthritis & Rheumatism, 44, 1022, 2001)。
CCケモカインであるThymus and activation-regulated chemokine(TARC)とMacrophage-derived chemokine(MDC)はCCR4の特異的なリガンドである(Journal of Biological Chemistry, 272, 15036, 1997、Journal of Biological Chemistry, 273, 1764, 1998)。TARCはT細胞遊走因子として(Journal of Biological Chemistry, 271, 21514, 1996)、またMDCは単球・マクロファージ・NK細胞の遊走因子として発見され(Journal of Experimental Medicine, 185, 1595, 1997)、どちらのケモカインも炎症性ケモカインと恒常性ケモカインの特徴を併せ持つことが知られている(Immunology Today, 20, 254, 1999)。
CCR4とそのリガンドであるTARC及びMDCは、炎症性疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患等の様々な疾患に関与することが数多くの報告により示唆されている。例えば、喘息(The Journal of Clinical Investigation, 107, 1357, 2001)、アトピー性皮膚炎(Journal of Investigative Dermatology, 115, 640, 2000)、乾癬(Laboratory Investigation, 81, 335, 2001)、関節リウマチ(Arthritis & Rheumatism, 44, 2750, 2001)、炎症性腸疾患(Clinical & Experimental Immunology, 132, 332, 2003)等が挙げられる。従って、CCR4の機能調節剤はこれらの疾患等の予防又は治療剤として期待される。上記炎症性疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患等の予防又は治療剤としては、ステロイド剤等種々の薬剤が使用されているが、その治療効果と副作用の点から、新たな作用機序に基づく薬剤の開発が切望されている。
【0003】
IgE拮抗活性を有し、アレルギー性疾患や軟骨障害治療剤として有用なキナゾリン誘導体が報告されている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
特許文献1には、下記化合物が開示されている。
【化3】

(式中、GはCH又はNを、R1及びR2はH、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、ハロゲン等を、R3及びR4はH、置換されていてもよいアリール等を、R5は置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいヘテロ環基等を示す。詳細は当該公報参照。)
【0004】
また、特許文献2には下記化合物が開示されている。
【化4】

(式中、X及びX1はH、アルキル、アルコキシ、ハロゲン等を、R1はアルコキシアルキル、シクロアルキル、アルキル又はベンゾジオキサニルメチルを、R2はH等を、R3及びR4は結合する窒素原子と一体となって、(a)テトラヒドロイソキノリル、(b)4位がベンジル、アルコキシアルキレンオキシもしくはアルキルスルホンアミドで置換されたピペリジノ、(c)3-メチル-3-フェニルピペリジノ、あるいは(d)4位がH、アルコキシカルボニル、アシル、ヒドロキシアルコキシカルボニル、フロイル、ベンゾオキサゾール-2-イル、ピリミジン-2-イルもしくはベンゾジオキサン-2-カルボニルで置換されたピペラジノを示す。詳細は当該公報参照。)
しかしながら、いずれの文献にも、4位に置換アミノ基を有し、かつ、2位に飽和環の結合したピペリジノ又はピペラジノ基を有する具体的化合物の開示はなく、その具体的な抗炎症活性やCCR4機能調節作用に関する開示も示唆もない。
【0005】
また、ホスホジエステラーゼ阻害活性を有する下記化合物が特許文献3に報告されているが、当該化合物はDで示される基上に、ニトロ又はニトロソ基を必ず有する。
【化5】

(式中、R24はH又は式K-G-Dで示される基を示す。詳細は当該公報参照。)
【0006】
【特許文献1】特開2000−281660
【特許文献2】国際公開第92/07844号パンフレット
【特許文献3】米国特許第6331543号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者等は、CCR4の機能調節作用に基づく、炎症性疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患等の予防・治療に有用な医薬組成物を提供すること、さらにはこれらを含有する医薬を提供することを目的として研究を行った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、CCR4の機能調節作用を有する化合物につき鋭意検討した。その結果、2位に飽和環の結合したピペリジノ又はピペラジノ等の飽和6員ヘテロ環基を有し、4位に置換アミノ基を有する縮環ピリミジン誘導体がCCR4の機能調節剤として有用であることを知見し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、下記一般式(I)で示される新規な縮環ピリミジン誘導体又はその製薬学的に許容される塩と製薬学的に許容される担体とからなる医薬組成物、殊に喘息、アトピー性皮膚炎及び関節リウマチ等の予防・治療薬として有効な医薬組成物に関する。
【0009】
【化6】

(式中の記号は以下の意味を示す。
A:置換されていてもよいアリール又は置換されていてもよいシクロアルキル、
【化7】

X:CR3又はN、
Y:CR4又はN、但し、XがCR3のときYはNを、XがNのときYはCR4を示す、
Z:CR5R6、NR7又はO、
R1:同一又は互いに異なって、-R0、-OH、ハロゲン、置換されていてもよい低級アルキル、-O-(置換されていてもよい低級アルキル)、-S-(置換されていてもよい低級アルキル)、-SO2-(置換されていてもよい低級アルキル)、-NO2、-N(R8)(R9)、-CO-R0、-CO2-R0、-N(R8)COR0、-N(R8)CO2R0又は-N(R8)SO2R0
R0:低級アルキル、
R2:同一又は互いに異なって、-R0、ハロゲン、-OH、-OR0、ハロゲノ低級アルキル、-R00-OH、-CON(R8)(R9)、-R00-O-R0、-R00-N(R8)(R9)、-R00-CN、-R00-N(R8)-CO-R0、-R00-N(R8)-SO2-R0、-R00-O-CO-R0、-R00-CO2-R0又は-R00-CON(R8)(R9)、
R3、R4、R8及びR9:同一又は互いに異なって、H又はR0
R5及びR6:同一又は互いに異なって、H又はR2に記載の基、或いはR5及びR6が一体となってオキソ、
R7:H、-R0、ハロゲノ低級アルキル、-R00-OH、-CON(R8)(R9)、-R00-O-R0、-R00-N(R8)(R9)、-R00-CN、-R00-N(R8)-CO-R0、-R00-N(R8)-SO2-R0、-R00-O-CO-R0、-R00-CO2-R0又は-R00-CON(R8)(R9)、
R00:低級アルキレン、
n:0、1、2又は3、
m:0、1、2、3又は4、
j:0、1、2又は3、
k:0、1又は2。以下同様。)
【発明の効果】
【0010】
本発明の縮環ピリミジン誘導体は、CCR4或いはTARC及び/又はMDCの機能調節作用を有することから、種々の炎症性疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患等〔例えば、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、花粉症、皮膚炎(アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎)、乾癬、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、インスリン依存型糖尿病(IDDM)、臓器移植時の拒絶反応、癌、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)、間質性膀胱炎、敗血症、疼痛の予防・治療薬として有用である。特に、喘息、アトピー性皮膚炎又は関節リウマチの予防・治療薬として期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書中、「アルキル」及び「アルキレン」とは、直鎖状又は分枝状の炭化水素鎖を意味する。「低級アルキル」は、好ましくは炭素数1〜6個のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜4個のアルキル基、更に好ましくはメチル及びエチルである。「低級アルキレン」は、上記「低級アルキル」の任意の水素原子1個を除去してなる二価基を意味し、好ましくは炭素数1〜4個のアルキレンであり、より好ましくはメチレン、エチレン及びプロピレンである。
「ハロゲン」は、F、Cl、Br及びIを示す。「ハロゲノ低級アルキル」とは、好ましくは、1個以上のハロゲンで置換された炭素数1〜6個のアルキルを意味し、より好ましくは1個以上のFで置換されたC1-6アルキルであり、更に好ましくは、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル及びトリフルオロエチルである。
【0012】
「シクロアルキル」は、好ましくは炭素数3〜10個のシクロアルキルであり、架橋されていてもよい。より好ましくはシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンチル及びアダマンチルである。「アリール」は、炭素数6〜14個の芳香族炭化水素基を意味し、「シクロアルキル」と縮環したフェニル基を含む。好ましくはフェニル及びナフチルであり、より好ましくはフェニルである。
【0013】
「置換されていてもよい」とは、「無置換」あるいは「同一又は異なる置換基を1〜5個有していること」を示す。
「置換されていてもよいアリール」及び「置換されていてもよいシクロアルキル」における置換基は、好ましくは、ハロゲン、低級アルキル、-OH、-O-低級アルキル、-CN、-S-低級アルキル、NO2であり、更に好ましくは、ハロゲン、低級アルキル、-OH、-O-低級アルキル、-CN、より更に好ましくは、ハロゲン、-CNである。
「置換されていてもよい低級アルキル」における置換基は、好ましくは、ハロゲン、-OH、-O-低級アルキル、フェニル、-CO2H、-CO2-低級アルキルであり、更に好ましくは、ハロゲン、-O-低級アルキル、フェニルである。
【0014】
本発明の一般式(I)における好ましい化合物は以下の化合物又はその製薬学的に許容される塩である:
Aとして好ましくは、置換されていてもよいアリール;
Bとして好ましくは、縮環するピリミジン環と共にキナゾリン環を形成する基であり、更に置換基として1〜2個のR1を有するのがより好ましく、ここにR1としては、低級アルキル、ハロゲン又はO-低級アルキルが好ましい;
R2としては、ハロゲノ低級アルキル、-R00-OH又は-R00-O-R0が好ましい;
jとして好ましくは0又は1、より好ましくは0である;
kとして好ましくは0又は1、より好ましくは1である;
ZとしてはCH2又はOが好ましい。
【0015】
本発明の化合物(I)は置換基の種類によっては幾何異性体や互変異性体が存在する場合があるが、本発明にはこれらの異性体の分離したもの、あるいは混合物が包含される。
また、化合物(I)は不斉炭素原子を有する場合があり、これに基づく(R)体、(S)体の光学異性体が存在しうる。本発明はこれらの光学異性体の混合物や単離されたものを全て包含する。
更に、化合物(I)には、薬理学的に許容されるプロドラッグも含まれる。薬理学的に許容されるプロドラッグとは、加溶媒分解により又は生理学的条件下で本発明のNH2、OH、CO2H等に変換できる基を有する化合物である。プロドラッグを形成する基としては、Prog. Med., 5, 2157-2161 (1985)や「医薬品の開発」(廣川書店、1990年)第7巻 分子設計163-198に記載の基が挙げられる。
【0016】
化合物(I)は、酸付加塩又は置換基の種類によっては塩基との塩を形成する場合もある。かかる塩としては、製薬学的に許容される塩であり、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マイレン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩基、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リジン、オルニチン等の有機塩基との塩やアンモニウム塩等が挙げられる。
さらに、本発明は、化合物(I)及びその塩の各種の水和物や溶媒和物及び結晶多形の物質を含む医薬組成物をも包含する。
【0017】
(製造法)
本発明の有効成分である化合物(I)及びその製薬学的に許容される塩は、その基本骨格あるいは置換基の種類に基づく特徴を利用し、種々の公知の合成法を適用して製造することができる。その際、官能基の種類によっては、当該官能基を原料乃至中間体の段階で適当な保護基で保護、又は当該官能基に容易に転化可能な基に置き換えておくことが製造技術上効果的な場合がある。このような官能基としては例えばアミノ基、水酸基、カルボキシル基等であり、それらの保護基としては例えばグリーン(T. W. Greene)及びウッツ(P. G. M. Wuts)著、「Protective Groups in Organic Synthesis(第3版、1999年)」に記載の保護基を挙げることができ、これらを反応条件に応じて適宜選択して用いればよい。このような方法では、当該保護基を導入して反応を行った後、必要に応じて保護基を除去、あるいは所望の基に転化することにより、所望の化合物を得ることができる。
また、化合物(I)のプロドラッグは上記保護基と同様、原料乃至中間体の段階で特定の基を導入、あるいは得られた化合物(I)を用い反応を行うことで製造できる。反応は通常のエステル化、アミド化、脱水等、当業者により公知の方法を適用することにより行うことができる。
【0018】
第1製法
【化8】

【0019】
(式中L1は脱離基を示す。以下同様。)
本製法は2位に脱離基を有するキナゾリン誘導体(II)に環状アミン化合物(III)をイプソ置換させ、本発明化合物(I)を製造する方法である。
L1が示す脱離基としては、ハロゲン、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基等が挙げられる。反応は化合物(II)を反応に不活性な溶媒中、塩基又は酸(好ましくは塩化水素)の存在又は非存在下、当量あるいは過剰量の(III)を用いて冷却下〜加熱還流下に通常1時間〜5日間行なわれる。溶媒としては反応に不活性であれば特に限定はされないが、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン等のエーテル類、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール等のアルコール類、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、2,6-ルチジン等の有機塩基、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、tert-ブトキシカリウム等の塩基が挙げられる。
【0020】
第2製法
【化9】

【0021】
本製法は4位にクロロ基を有するキナゾリン誘導体(IV)にアミン化合物(V)をイプソ置換させ、本発明化合物(I)を製造する方法である。反応は、上記第1製法に記載と同様の条件で行うことができる。
第3製法
一般式(I)における基R1又はR2上、或いは環基A上に種々の置換基を有する化合物は、本発明化合物(I)を原料として、当業者にとって自明である反応、又はこれらの変法を用いることにより、容易に合成することができる。例えば以下の反応が適用できる。
(1)加水分解
カルボン酸エステル体を加水分解することによって、カルボキシル基を有する本発明化合物を製造できる。反応は加水分解の常法を用いることができ、例えば、前述の「Protective Groups in Organic Synthesis(第3版)」のカルボキシル基の脱保護反応等に記載の方法を適用することができる。
(2)アミド化、スルホンアミド化及びエステル化
水酸基又はアミノ基を有する本発明化合物を原料とし、カルボン酸若しくはスルホン酸化合物又はそれらの反応性誘導体を使用することにより、種々のアミド化合物又はエステル化合物が製造できる。反応は縮合剤(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(WSC)、1,1'-カルボニルビス-1H-イミダゾール(CDI)等)、場合によっては、更に添加剤(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド(HONSu)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)等)の存在下行うことができる。カルボン酸若しくはスルホン酸化合物の反応性誘導体としては、酸ハライド、酸無水物、活性エステル等が使用できる。反応は、例えば日本化学会編「実験化学講座(第4版)」22巻(1992年)(丸善)等に記載の方法により行うこともできる。
(3)還元
NH2基を有する本発明化合物は、ニトロ基を有する化合物を原料とし、パラジウム炭素等の触媒存在下に水素雰囲気下反応を行う接触還元による方法、或いは、当量または過剰量の鉄粉、亜鉛、またはスズ等の金属試薬を用いる還元反応により製造することができる。例えば日本化学会編「実験科学講座(第4版)」26巻(1992年)(丸善)等に記載の方法で行なうことができる。
なお、NH2基を有する本発明化合物は、フタルイミド基を有する化合物からも製造できる。反応は、前述の「Protective Groups in Organic Synthesis(第3版)」のアミノ基の脱保護反応等に記載の方法を適用することができる。
【0022】
原料合成
【化10】

原料化合物(II)は4位にクロロ基を有するキナゾリン誘導体(VI)をアミン化合物(V)とイプソ置換反応を行なうことにより製造できる。反応は前記第1製法と同様の条件が適用できる。
【0023】
【化11】

原料化合物(IV)はキナゾリン-4-オン誘導体(VIII)を、反応に不活性な溶媒中又は無溶媒で、当量〜大過剰の塩素化剤と反応させることで製造できる。塩素化剤としては、例えばオキシ塩化リン、五塩化リン、塩化チオニル等を単独で又はそれらを混合して用いることができる。溶媒としては、芳香族炭化水素類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、N,N-ジメチルアニリン等を単独で、又はそれらを混合して用いることができる。キナゾリン-4-オン誘導体(VIII)は2-クロロキナゾリン-4-オン誘導体(VII)を一般式(III)で示されるアミンとイプソ置換反応を行なうことにより製造できる。反応は前記第1製法と同様の条件が適用できる。
【0024】
【化12】

(式中Pはアミノ基の保護基を示す。以下同様。)
環状アミン化合物(IIIa)及び(IIIb)は、上記式に示す方法により製造できる。保護基P及び脱保護反応は、前述の「Protective Groups in Organic Synthesis(第3版)」のアミノ基の脱保護反応等に記載の方法を適用することができる。また、アルキル化は、還元的アルキル化の常法を用いることができ、例えば日本化学会編「実験化学講座(第4版)」20巻(1992年)(丸善)等に記載の方法が挙げられる。
【0025】
【化13】

環状アミン化合物(IIIc)及び(IIId)は、上記式に示す方法により製造できる。
その他、種々の環状アミン化合物(III)は、例えば、水酸基を有する化合物より、アルキル化剤(アルキルハライドやスルホン酸アルキルエステル等)によるアルキル化又は光延反応によりアルキルエーテル基、フッ素化剤(三フッ化ジエチルアミノ硫黄や三フッ化モルホリノ硫黄等)によりフルオロ基、フタルイミドとの光延反応によりフタルイミド基を有する化合物へと、それぞれ変換できる。
【0026】
上記各製法により得られた反応生成物は、遊離化合物、その塩あるいは水和物など各種の溶媒和物として単離され、精製される。塩は通常の造塩処理に付すことにより製造できる。
単離、精製は、抽出、濃縮、留去、結晶化、濾過、再結晶、各種クロマトグラフィー等通常の化学操作を適用して行われる。
各種異性体は異性体間の物理化学的な差を利用して常法により単離できる。例えば、光学異性体は一般的な光学分割法、例えば分別結晶化又はクロマトグラフィー等により分離できる。また、光学異性体は、適当な光学活性な原料化合物より製造することもできる。
【0027】
本発明化合物の薬理活性は以下の試験により確認した。
1.CCR4を介した[35S]GTPγS結合試験に対する作用
(1) Human CCR4発現細胞株の取得
EF-1αプロモーター下流にヒトCCR4遺伝子を挿入したベクター(ネオマイシン耐性遺伝子含む)を作製し、マウスpre B細胞株B300-19細胞にエレクトロポレーション法によりトランスフェクションした。これらの細胞をG418添加培地で培養し、限界希釈法によりヒトCCR4を恒常的かつ安定に発現する単一の細胞株を取得した。
(2) Human CCR4発現細胞株膜画分の調整
ヒトCCR4発現細胞を回収しPBSで洗浄した後、Lysis Buffer(10mM Hepes pH 7.5, 2mM EDTA, protainase inhibitor)で懸濁した。懸濁液を氷上に15分間置いた後、ホモジェナイザーにより細胞を破砕し遠心した(20000 rpm, 10 min, 4℃)。さらに上清を超遠心(22K, 30 min, 4℃)した後、ペレットをPBSに懸濁したものを膜画分として以後の実験に用いた。
(3) GTPγS結合試験
試験化合物は、各濃度を20 mM Hepes pH 7.05、100 mM NaCl、5 mM MgCl2、GDP 2μM、Human MDC、[35S]GTPγS 150 pM、Wheatgerm agglutinin SPA beads 1 mg及びHuman CCR4発現細胞株膜画分1μgを含有する反応混合液中で1時間30分、室温で反応させ放射活性を測定した。
以下の実施例化合物は、100 nM濃度で50%以上の阻害活性を示した:
実施例1、3〜13、17〜19、22〜24、26〜28、31、32、34、35、37、39〜43、45〜56、58〜67、69〜72、76〜78、81〜88、89、91〜93、97、99〜101の化合物。
【0028】
2.マウスオキサゾロン誘発接触性皮膚炎に対する作用
Balb/cマウス(6〜10週齢、雌性、日本チャールス・リバー社)の腹部に3%オキサゾロン/エタノール溶液150μl(シグマアルドリッチジャパン)を塗布により感作した。感作後6日目に1%オキサゾロン/エタノール溶液10μlを右耳の両面に塗布した。試験薬物投与はオキサゾロン溶液の塗布12時間後に実施し(試験薬物投与群)、コントロール群には試験薬物を溶解するのに用いた溶媒のみを投与した。右耳介の厚みは塗布前と20時間後にシックネスゲージ(ミツトヨ)を用いて測定し、腫れ(厚み増加分=20時間後測定値−塗布前測定値)を算出した。抑制率は感作せずにオキサゾロン溶液を塗布した群をノーマル群として下式により計算した。なお、上記試験は、一群5匹で実施した。
抑制率=(コントロール群の腫れ−試験薬物投与群の腫れ)x100/(コントロール群の腫れ−ノーマル群の腫れ)
実施例66の化合物は100 mg/kg経口投与で良好な抑制活性を示した。
3.マウスコラーゲン誘発関節炎に対する作用
マウスコラーゲン誘発関節炎に対する作用はThe Japanese Journal of Pharmacology, 88, 332 (2002)に記載の方法を用いて評価した。
上記の各試験例以外にも、例えばImmunology, 98, 345 (1999)に記載のマウス喘息モデル、Journal of Investigative Dermatorogy, 111, 86 (1998)に記載のオキサゾロン誘発慢性接触性皮膚炎モデル(アトピー性皮膚炎モデル)等、抗炎症作用を評価するために一般的に用いられる各種評価モデルにより、本発明化合物の薬理作用を確認することができる。
【0029】
化合物(I)又はその塩の1種又は2種以上を有効成分として含有する製剤は通常製剤化に用いられる担体や賦形剤、その他の添加剤を用いて調製される。
投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、あるいは静注、筋注等の注射剤、坐剤、経皮剤、経鼻剤あるいは吸入剤等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。投与量は症状、投与対象の年齢、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定されるが、通常、経口投与の場合、成人1日当たり0.001 mg/kg乃至100 mg/kg程度であり、これを1回で、あるいは2〜4回に分けて投与する。また、症状によって静脈投与される場合は、通常、成人1回当たり0.0001 mg/kg乃至10 mg/kgの範囲で1日に1回乃至複数回投与される。また、吸入の場合は、通常、成人1回当たり0.0001 mg/kg乃至1 mg/kgの範囲で1日に1回乃至複数回投与される。
本発明による経口投与のための固体組成物としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が用いられる。このような固体組成物においては、一つ又はそれ以上の活性物質が、少なくとも一つの不活性な賦形剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な添加剤、例えばステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤やカルボキシメチルスターチナトリウム等の崩壊剤、溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性コーティング剤で被膜してもよい。
【0030】
経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な溶剤、例えば精製水、エタノールを含む。この組成物は不活性な溶剤以外に可溶化剤、湿潤剤、懸濁化剤のような補助剤、甘味剤、矯味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
非経口投与のための注射剤としては、無菌の水性又は非水性の液剤、懸濁剤、乳剤を含む。水性の溶剤としては、例えば注射用蒸留水及び生理食塩水が含まれる。非水性の溶剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート80(商品名)等がある。このような組成物は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。また、これらは無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解、懸濁して使用することもできる。
吸入剤や経鼻剤等の経粘膜剤は固体、液体、半固体状のものが用いられ、従来公知の方法に従って製造することができる。例えば、ラクトースや澱粉のような賦形剤や、更に、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、滑沢剤、安定剤や増粘剤等が適宜添加されていてもよい。投与は、適当な吸入又は吹送のためのデバイスを使用することができる。例えば、計量投与吸入デバイス等の公知のデバイスや噴霧器を使用して、化合物を単独で又は処方された混合物の粉末として、もしくは医薬的に許容し得る担体と組み合わせて溶液又は懸濁液として投与することができる。乾燥粉末吸入器等は、単回又は多数回の投与用のものであってもよく、乾燥粉末又は粉末含有カプセルを利用することができる。あるいは、適当な駆出剤、例えば、クロロフルオロアルカン、ヒドロフルオロアルカン又は二酸化炭素等の好適な気体を使用した加圧エアゾールスプレー等の形態であってもよい。
【実施例】
【0031】
以下、実施例に基づき本発明化合物(I)の製法を更に詳細に説明する。本発明化合物は下記実施例に記載の化合物に限定されるものではない。また原料化合物の製法を参考例に示す。
また、参考例及び後記表中以下の略号を用いる。Ex:実施例番号、REx:参考例番号、No:化合物番号、Dat:物理化学的データ(F:FAB-MS(M+H)+、FN:FAB-MS(M-H)-、ES:ESI-MS(M+H)+、ESN:ESI-MS(M-H)-、EI:EI-MS(M+)、AP:APCI-MS(M+H)+、NMR1:CDCl3中の1H NMRにおける特徴的なピークのδ(ppm)、NMR2:DMSO-d6中の1H NMRにおける特徴的なピークのδ(ppm)、MP:融点(℃)、EA:元素分析値(%)(Cal:計算値;Fnd:実測値))、Sal:塩及び含有溶媒(HCl:塩酸塩、無記載:フリー体、成分の前の数字は例えば2HClは2塩酸塩を示す)、Str:構造式、Syn:製造法(数字は同様に製造した実施例番号を示す)、Me:メチル、Et:エチル、Ms:メタンスルホニル、tBu:t-ブチル、Boc:t-ブトキシカルボニル、Ph:フェニル、Bn:ベンジル、Ac:アセチル。
【0032】
参考例1
2-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリルをDMF中、アジ化ナトリウムと100℃で1時間反応した。溶媒を留去し得られた残渣を、トルエン中、トリフェニルホスフィンと室温で2時間反応した。溶媒を留去し得られた残渣を、THF中、1M塩酸で室温下19時間処理し、以下常法により後処理、精製して、2-シアノ-4-(トリフルオロメチル)アニリンを得た。NMR1:6.81 (1H, d, J=8.8 Hz), 7.54 (1H, dd, J=8.8, 2.2 Hz), 7.66 (1H, d, J=2.2 Hz)。
参考例2
2-アミノ-4,5-ジフルオロ安息香酸メチルをTHF中、ナトリウムメトキシドと、80℃で1.5時間反応して、2-アミノ-4-メトキシ-5-フルオロ安息香酸メチルを得た。NMR1:6.15 (1H, d, J=7.2 Hz), 3.87 (3H, s), 3.84 (3H, s)。
参考例3
5-フルオロアントラニル酸メチルを酢酸中、シアン酸カリウムと100℃で18時間反応して、6-フルオロキナゾリン-2,4-(1H,3H)-ジオンを得た。F:181。
参考例4
2-アミノ-6-フルオロ安息香酸の水溶液に酢酸を加え、次いで35℃でシアン酸カリウム水溶液を滴下し、反応して、5-フルオロ-2,4-(1H,3H)-ジオンを得た。ES:181。
参考例5
2-アミノテレフタル酸ジメチルより参考例3と同様にして得た2-[(アミノカルボニル)アミノ]テレフタル酸ジメチルを、1M水酸化ナトリウム水溶液中、70℃で1時間処理して、2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキナゾリン-7-カルボン酸を得た。F:207。
【0033】
参考例6
2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキナゾリン-7-カルボン酸をエタノール中、塩化チオニルで処理して、2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキナゾリン-7-カルボン酸エチルを得た。FN:233。
参考例7
2-アミノ-4,5-ジクロロベンゾニトリルのDMF溶液にDBUを加え、二酸化炭素雰囲気下、室温下、22時間撹拌した。反応液を1M塩酸水溶液に加え、生じた沈殿物をろ過、減圧下乾燥し、6,7-ジクロロキナゾリン-2,4(1H,3H)-ジオンを得た。NMR2:11.52 (1H, brs), 11.33 (1H, brs), 7.97 (1H, s)。
参考例8
6,7-ジクロロキナゾリン-2,4(1H,3H)-ジオン、五塩化リン及びオキシ塩化リンの混合物を20時間加熱還流し、常法により後処理して、2,4,6,7-テトラクロロキナゾリンを得た。F:269。
参考例9
4-フルオロアントラニル酸と尿素を200℃反応し、7-フルオロキナゾリン-2,4-(1H,3H)-ジオンを得、更に参考例8と同様にして、2,4-ジクロロ-7-フルオロキナゾリンを得た。EI:216。
参考例10
5,5-ジメチル-2-オキソシクロヘキサンカルボン酸メチルをエタノール中、ナトリウムメトキシド存在下、チオ尿素と反応して、6,6-ジメチル-2-チオキソ-2,3,5,6,7,8-ヘキサヒドロキナゾリン-4(1H)-オンを得た。ES:211。
【0034】
参考例11
6,6-ジメチル-2-チオキソ-2,3,5,6,7,8-ヘキサヒドロキナゾリン4(1H)-オンをDMF中、ヨウ化メチルと反応して、6,6-ジメチル-2-(メチルスルフェニル-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリン-4(3H)-オンを得た。ES:225。
参考例12
6,6-ジメチル-2-(メチルスルフェニル)-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリン4(3H)-オンをオキシ塩化リンと2時間加熱還流して、4-クロロ-6,6-ジメチル-2-(メチルスルフェニル)-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリンを得た。ES:243。
参考例13
6-フルオロ-2-チオキソ-2,3-ジヒドロキナゾリン4(1H)-オンを用いて参考例11及び12と同様にして、4-クロロ-6-フルオロ-2-(メチルスルフェニル)キナゾリンを得た。F:229。
参考例14
シクロヘプチルアミンと2,4-ジクロロ-6,7-ジメトキシキナゾリンをDMF中、室温下反応して、2-クロロ-N-シクロヘプチル-6,7-ジメトキシキナゾリン-4-アミンを得た。F:336。
参考例15
2,4,7-トリクロロキナゾリンと4-クロロアニリンを2-プロパノール中、DIPEA存在下、3.5時間加熱還流して、2,7-ジクロロ-N-(4-クロロフェニル)キナゾリン-4-アミンを得た。ESN:322。
【0035】
参考例16
2,4-ジクロロ-6,7-ジメトキシキナゾリンと4-クロロ-2-フルオロアニリンのエタノール溶液に1M塩酸水溶液を加え、3時間加熱還流した。生じた沈殿物をろ過し、減圧下乾燥して、2-クロロ-N-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-6,7-ジメトキシキナゾリン-4-アミン塩酸塩を得た。ES:368
参考例17
2,4-ジクロロ-6,7-ジメトキシキナゾリン及び3,4,5-トリフルオロアニリンのエタノール溶液に、4M塩化水素/酢酸エチル溶液を加え、一晩加熱還流して、2-クロロ-N-(3,4,5-トリフルオロフェニル)-6,7-ジメトキシキナゾリン-4-アミン塩酸塩を得た。ES:370。
参考例18
2,4-ジクロロ-6-フルオロキナゾリン及び2-アミノ-5-ブロモベンゾニトリルをTHF中、カリウムt-ブトキシド存在下反応して、5-ブロモ-2-(2-クロロ-6-フルオロ-キナゾリン-4-イルアミノ)-ベンゾニトリルを得た。ES:377, 379。
参考例19
N-(4-クロロフェニル)-6,6-ジメチル-2-(メチルスルフェニル)-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリン-4-アミンをジクロロメタン中、氷冷下、m-クロロ安息香酸で処理して、N-(4-クロロフェニル)-6,6-ジメチル-2-(メチルスルフィニル)-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリン-4-アミンを得た。F:350。
参考例20
4-オキソピペリジン-1-カルボン酸ベンジル及びピペリジン-3-イルメタノールの混合物にチタニウム テトライソプロポキシドを加え、80℃で攪拌した。次いで、氷冷下、エタノール及び水素化ホウ素ナトリウムを加え、室温下反応して、3-(ヒドロキシメチル)-1,4'-ビピペリジン-1'-カルボン酸ベンジルを得た。ES:333。
【0036】
参考例21
ピペリジン-3-イルアセトニトリル及びベンジル 4-オキソピペリジン-1-カルボキシレートを酢酸中、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム存在下反応して、3-(シアノメチル)-1,4'-ビピペリジン-1'-カルボン酸ベンジルを得た。F:342。
参考例22
4-オキソピペリジン-1-カルボン酸 t-ブチル、3-ピペリジンメタノール、10%パラジウム炭素及びメタノール混合物を、水素雰囲気下攪拌して、3-(ヒドロキシメチル)-1,4'-ビピペリジン-1'-カルボン酸 t-ブチルを得た。ES:299。
参考例23
アルゴン雰囲気下、水酸化ホウ素リチウムのTHF懸濁液に、1'-t-ブチル 3-エチル (3S)-1,4'-ビピペリジン-1',3-ジカルボキシレートのTHF溶液を氷冷下滴下し、次いで、加熱還流下攪拌して、(3S)-3-(ヒドロキシメチル)-1,4'-ビピペリジン-1'-カルボン酸 t-ブチルを得た。ES:299。
参考例24
1'-t-ブチル 3-エチル 1,4'-ビピペリジン-1',3-ジカルボキシレートのTHF溶液に、室温で臭化メチルマグネシウムのTHF溶液を滴下することにより、3-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)-1,4'-ビピペリジン-1'-カルボン酸 t-ブチルを得た。F:327。
【0037】
参考例25
ジエチルアミノ硫黄トリフルオリドのジクロロメタン溶液に、4-ヒドロキシ-1,4'-ビピペリジン-1'-カルボン酸ベンジルのジクロロメタン溶液を氷冷下、1時間かけて滴下し、室温で5時間撹拌して、4-フルオロ-1,4'-ビピペリジン-1'-カルボン酸ベンジルを得た。ES:321。
参考例26
3-(ヒドロキシメチル)-1,4'-ビピペリジン-1'-カルボン酸 t-ブチルをTHF中、水素化ナトリウムで処理し、次いでヨードメタンと反応して、3-(メトキシメチル)-1,4'-ビピペリジン-1'-カルボン酸 t-ブチルを得た。ES:313。
参考例27
4-オキソピペリジン-1-カルボン酸 t-ブチルのジメチルアセトアミド溶液にピペリジン-3-イルメタノール、硫酸マグネシウム、アセトンシアンヒドリンを加え、40℃で2.5日間反応して、4'-シアノ-3-(ヒドロキシメチル)-1,4'-ビピペリジン-1'-カルボン酸 t-ブチルを得た。ES:324。
参考例28
4'-シアノ-3-(ヒドロキシメチル)-1,4'-ビピペリジン-1'-カルボン酸 t-ブチルをTHF中、臭化メチルマグネシウムと室温下4時間反応して、3-(ヒドロキシメチル)-4'-メチル-1,4'-ビピペリジン-1'-カルボン酸 t-ブチルを得た。ES:313。
参考例29
3-(ヒドロキシメチル)-1,4'-ビピペリジン-1'-カルボン酸ベンジル、10%パラジウム-炭素及びエタノール混合物を、水素雰囲気下、室温で攪拌して、1,4'-ビピペリジン-3-イルメタノールを得た。ES:199。
参考例30
3-(ヒドロキシメチル)-1,4'-ビピペリジン-1'-カルボン酸 t-ブチルをメタノール中、4M塩酸-酢酸エチル溶液で処理して、1,4'-ビピペリジニル-3-メタノール2塩酸塩を得た。ES:199。
【0038】
参考例31
3-(メトキシメチル)-1,4'-ビピペリジン-1'-カルボン酸 t-ブチルを氷冷下、トリフルオロ酢酸で処理して、3-(メトキシメチル)-1,4'-ビピペリジントリフルオロ酢酸塩を得た。ES:213。
参考例32
3-(ヒドロキシメチル)-1,4'-ビピペリジン-1'-カルボキン酸t-ブチルのTHF溶液にフタルイミド、トリフェニルホスフィン及びアゾジカルボン酸ジエチルを順次加え、室温下反応して得られた化合物を、酢酸エチル中、4M塩化水素-酢酸エチル溶液で処理して、2-(1,4'-ビピペリジン-3-イルメチル)-1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオン2塩酸塩を得た。F:428。
参考例33
2-クロロ-6,7-ジメトキシキナゾリン-4(1H)-オン及び3-(メトキシメチル)-1,4'-ビピペリジンをn-ブタノール中、DBU存在下、110℃で2.5日間反応して、6,7-ジメトキシ-2-[3-(メトキシメチル)-1,4'-ビピペリジン-1'-イル]キナゾリン-4(1H)-オンを得た。ES:417。
参考例34
6,7-ジメトキシ-2-[3-(メトキシメチル)-1,4'-ビピペリジン-1'-イル]キナゾリン-4(1H)-オンのオキシ塩化リン溶液にN,N-ジメチルアニリンを添加し、1時間加熱還流して、1'-(4-クロロ-6,7-ジメトキシキナゾリ-2-ニル)-3-(メトキシメチル)-1,4'-ビピペリジンを得た。ES:435。
参考例35
1-[1-(t-ブトキシカルボニル)ピペリジン-4-イル]-L-プロリンメチルエステルを用いて実施例30と同様の操作を行い、粗製の1-(ピペリジン-4-イル)-L-プロリンメチルエステル 2塩酸塩を得た。この化合物をジオキサン中、実施例3と同様にして、1-(1-{4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-6,7-ジメトキシキナゾリン-2-イル}ピペリジン-4-イル)-L-プロリンメチルエステルを得た。ES:527。
【0039】
参考例36
2-クロロ-N-(4-クロロフェニル)-6,7-ジメトキシキナゾリン-4-アミン塩酸塩より、後記実施例2と同様にして、2-[(1'-{4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-6,7-ジメトキシキナゾリン-2-イル}-1,4-ビピペリジン-3-イル)メチル]-1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオンを得た。F:641。
参考例37
1-ベンジル-3-メトキシメチルピロリジンを用いて参考例22と同様の操作を行い、粗製の4-(3-メトキシピロリジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチルを得た。この化合物を用いて参考例30と同様の操作を行い、4-(3-メトキシピロリジン-1-イル)ピペリジン2塩酸塩を得た。F:185。
参考例3の方法と同様にして参考例38の化合物を、参考例7の方法と同様にして参考例39の化合物を、参考例8の方法と同様にして参考例40〜44の化合物を、参考例9の方法と同様にして参考例45の化合物を、参考例11の方法と同様にして参考例46の化合物を、参考例14の方法と同様にして参考例47〜49の化合物を、参考例15の方法と同様にして参考例50〜54の化合物、参考例55〜65の化合物(但し、溶媒はDMF)、参考例66〜69の化合物(但し、溶媒はアセトニトリル-THF(4:1))及び参考例70〜72の化合物(但し、溶媒はジオキサン)を、参考例16の方法と同様にして参考例73〜77の化合物及び参考例78〜81の化合物(但し、溶媒は2-プロパノール)を、参考例17の方法と同様にして参考例82〜85の化合物及び参考例86〜90の化合物(但し、溶媒は2-プロパノール)を、参考例18の方法と同様にして参考例91の化合物を、参考例19の方法と同様にして参考例92の化合物を、参考例20の方法と同様にして参考例93の化合物を、参考例22の方法と同様にして参考例94〜104の化合物を、参考例23の方法と同様にして参考例105の化合物を、参考例25の方法と同様にして参考例106の化合物を、参考例26の方法と同様にして参考例107〜109の化合物を、参考例29の方法と同様にして参考例110の化合物を、参考例30の方法と同様にして参考例111〜124の化合物を、参考例31の方法と同様にして参考例125の化合物を、それぞれ対応する原料を使用して製造した。参考例38〜125の化合物の構造及び物理化学的データを表1〜6にそれぞれ示す。
【0040】
実施例1
2-クロロ-N-(4-クロロフェニル)-6-フルオロキナゾリン-4-アミン 1.20 g のジオキサン 50 ml 溶液に (3S)-1,4'-ビピペリジン-3-イルメタノール2塩酸塩 1.10 g及びDBU 1.82 ml を順次加え、90℃で3日間攪拌した。反応液を室温まで降温し、溶媒を留去して得られた残渣に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム-メタノール-28%アンモニア水)で精製し、((3S)-1'-{4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-6-フルオロキナゾリン-2-イル}-1,4'-ビピペリジン-3-イル)メタノールを淡黄色結晶として得た。この化合物をメタノール 30 ml 及び THF 15 ml に溶解し、4M 塩化水素-酢酸エチル溶液 4.0 ml を加えて塩酸塩とした後、溶媒を留去した。得られた粗結晶をエタノールから再結晶して、((3S)-1'-{4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-6-フルオロキナゾリン-2-イル}-1,4'-ビピペリジン-3-イル)メタノール2塩酸塩 1.22 g を微黄色結晶として得た。
実施例2
(2-クロロ-6,7-ジメトキシ-キナゾリン-4-イル)-[2-(4-フルオロフェニル)エチル]アミン525 mgを用いて実施例1の方法と同様に(但し、溶媒としてn-ブタノールを用いて110℃で3日間反応させた)して、(1'-{4-[2-(4-フルオロ-フェニル)-エチルアミノ]-6,7-ジメトキシ-キナゾリン-2-イル}-1,4'-ビピペリジニル-3-イル)-メタノール2塩酸塩 170 mg を白色結晶として得た。
【0041】
実施例3
2-クロロ-N-(4-クロロフェニル)-6,7-ジメトキシキナゾリン-4-アミン塩酸塩940 mg を用いて、実施例1の方法と同様に(但し、溶媒としてn-ブタノール 50 ml、塩基としてDBUの代わりにDIPEA 900 mgを用いて110℃で反応させた)して、((3S)-1'-{4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-6,7-ジメトキシキナゾリン-2-イル}-1,4'-ビピペリジン-3-イル)メタノール 2塩酸塩 510 mg を無色結晶として得た。
実施例4
2-クロロ-N-シクロヘプチル-6,7-ジメトキシキナゾリン-4-アミン 1.01 g を用いて、実施例1の方法と同様に(但し、溶媒としてn-ブタノール、アミンとして4-ピロリジン-1-イルピペリジンを930 mg (2等量)用い、DBUは用いずに3時間加熱還流下反応させた)して、N-シクロヘプチル-6,7-ジメトキシ-2-(4-ピロリジン-1-イルピペリジン-1-イル)キナゾリン-4-アミン 740 mg を淡黄色結晶として得た。
実施例5
(2-クロロ-6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)-(2,3,4-トリフルオロベンジル)アミン 500 mg を用いて実施例1の方法と同様に(但し、溶媒としてDMF、塩基としてDBUの代わりに炭酸カリウム 540 mgを用いて80℃で5日間反応させた)して、{1'-[6,7-ジメトキシ-4-(2,3,4-トリフルオロベンジルアミノ)キナゾリン-2-イル]-1,4'-ビピペリジニル-3-イル}メタノール 2塩酸塩 79 mg を白色結晶として得た。
【0042】
実施例6
N-(4-クロロフェニル)-6,6-ジメチル-2-(メチルスルフィニル)-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリン-4-アミン 300 mg を用いて、実施例1の方法と同様に(但し、溶媒として 1,2-ジエトキシエタン 10 ml を用いて140℃で1.5日間反応させた)して、(1'-{4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-6,6-ジメチル-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリン-2-イル}-1,4'-ビピペリジン-3-イル)メタノール 2塩酸塩 38 mgを微茶褐色結晶として得た。
実施例7
2,4-ジクロロ-6,7-ジメトキシキナゾリン 777mgと3,4-ジフルオロアニリン 387 mgを用いて前述の参考例16と同様の操作を行って 2-クロロ-N-(3,4-ジフルオロフェニル)-6,7-ジメトキシキナゾリン-4-アミン塩酸塩の粗結晶 903 mgを得た。この化合物を用いて実施例3と同様にして、(1'-{4-[(3,4-ジフルオロフェニル)アミノ]-6,7-ジメトキシキナゾリン-2-イル}-1,4'-ビピペリジン-3-イル)メタノール 2塩酸塩 513 mgを白色結晶として得た。
実施例8
2,4,6-トリクロロキナゾリン 315 mgと4-クロロアニリン 172 mgを用いて前述の参考例15と同様の操作を行って、2-クロロ-N-(4-クロロフェニル)-6-クロロキナゾリン-4-アミンの粗結晶 474 mgを得た。この化合物を用いて実施例3と同様にして、(1'-{6-クロロ-4-[(4-クロロフェニル)アミノ]キナゾリン-2-イル}-1,4'-ビピペリジン-3-イル)メタノール 2塩酸塩 244 mgを無色結晶として得た。
実施例9
2,4-ジクロロ-6,7-ジメトキシキナゾリン 518mgと2,4,6-トリフルオロアニリン 294 mgを用いて前述の参考例17と同様の操作を行い、2-クロロ-N-(2,4,6-トリフルオロフェニル)-6,7-ジメトキシキナゾリン-4-アミン塩酸塩の粗結晶 400 mgを得た。この化合物を用いて実施例3と同様にして、(1'-{4-[(2,4,6-トリフルオロフェニル)アミノ]-6,7-ジメトキシキナゾリン-2-イル}-1,4'-ビピペリジン-3-イル)メタノール 2塩酸塩 225 mgを無色結晶として得た。
【0043】
実施例10
2,4-ジクロロ-6,7-ジメトキシキナゾリンキナゾリン500mg、2,6-ジフルオロ-4-ブロモアニリン401mg、を用いて前述の参考例17と同様の操作を行い、粗製の2-クロロ-N-(4-ブロモ-2,6-ジフルオロフェニル)-6,7-ジメトキシキナゾリン-4-アミン塩酸塩 1.24 g を得た。この内1.10 gを用いて実施例3と同様にして、{1'-[4-(4-ブロモ-2,6-ジフルオロフェニルアミノ)-6,7-ジメトキシキナゾリン-2-イル]-1,4'-ビピペリジン-3-イル}メタノール 2塩酸塩 169mg を無色結晶として得た。
実施例11
2,4-ジクロロ-6-メチルキナゾリン 213 mg に4-クロロアニリン 128 mg を加え、エタノール 10 ml に溶解した。エチルジイソプロピルアミン 0.21 ml を加え、2時間還流した。室温に冷却後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、2-クロロ-N-(4-クロロフェニル)-6-メチルキナゾリン-4-アミンの粗生成物 358 mg を得た。この化合物を用いて実施例3と同様にして、(1'-{4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-6-メチルキナゾリン-2-イル}-1,4'-ビピペリジン-3-イル)メタノール 2塩酸塩 291 mgを無色結晶として得た。
実施例12
3-(シアノメチル)-1,4'-ビピペリジン-1'-カルボン酸ベンジル 500 mg にパラジウム炭素 50 mg、メタノール15 mlを順次加え、水素雰囲気下室温にて4時間撹拌した。反応液をセライトで濾過し、溶媒を留去して、粗成生物273 mg を得た。この生成物を1-ブタノール 15 ml に溶解し、2-クロロ-N-(4-クロロフェニル)-6,7-ジメトキシキナゾリン-4-アミン 564 mg、DBU 889 mgを加え、110℃で2日間撹拌した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール/28%アンモニア水)で精製後、クロロホルム/ジイソプロピルエーテル/ヘキサンで固化させ、沈殿物を濾取して、(1'-{4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-6,7-ジメトキシキナゾリン-2-イル}-1,4'-ビピペリジン-3-イル)アセトニトリル 411 mgを得た。このうちの 208 mgを 酢酸エチル 4 ml及びメタノール 4 ml に溶解し、氷冷下4M 塩化水素-酢酸エチル溶液0.2 mlを加え、溶媒を留去した後、残渣をメタノールより再結晶して、(1'-{4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-6,7-ジメトキシキナゾリン-2-イル}-1,4'-ビピペリジン-3-イル)アセトニトリル 2塩酸塩 125 mgを無色粉末として得た。
【0044】
実施例13
2,4,6,7-テトラクロロキナゾリン 234 mgと4-クロロアニリン 111 mg を用いて前述の参考例15と同様の操作を行って、2-クロロ-N-(4-クロロフェニル)-6,7-ジクロロキナゾリン-4-アミン 310 mgを得た。この化合物を用いて実施例2と同様にして、(1'-{6,7-ジクロロ-4-[(4-クロロフェニル)アミノ]キナゾリ-2-ニル}-1,4'-ビピペリジ-3-ニル)メタノール 2塩酸塩 303 mgを無色結晶として得た。
実施例14
1-(1-{4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-6,7-ジメトキシキナゾリン-2-イル}ピペリジン-4-イル)-L-プロリンメチルエステル 370 mg のメタノール 10 ml 溶液に5M 水酸化ナトリウム水溶液 1.0 ml を加え、50℃で12時間攪拌した。反応溶液を1M 塩酸で中和後、溶媒を留去し、エタノールで抽出した。不溶物を濾去後、溶媒を留去し、得られた結晶性残渣をエタノール-ジエチルエーテル混合溶媒で洗浄することにより、1-(1-{4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-6,7-ジメトキシキナゾリン-2-イル}ピペリジン-4-イル)-L-プロリン 2塩酸塩 300 mg を淡黄色結晶として得た。
実施例15
(1'-{4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-6,7-ジメトキシキナゾリン-2-イル}-1,4'-ビピペリジン-3-イル)メタノール 400 mgのピリジン 10 ml溶液に無水酢酸 180 mg及びDMAP 12 mgを加え、室温で2時間撹拌した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム-メタノール-28%アンモニア水)で精製し、(1'-{4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-6,7-ジメトキシキナゾリ-2-ニル}-1,4'-ビピペリジ-3-ニル)メチル アセテート 390 mgを無色結晶として得た。この化合物 172 mgを酢酸エチル 3 mlに溶解し、4M塩酸-酢酸エチル溶液0.2 mlを加え、室温で1時間撹拌した。溶媒を留去し、残渣をエーテルで洗浄して、酢酸 (1'-{4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-6,7-ジメトキシキナゾリ-2-ニル}-1,4'-ビピペリジ-3-ニル)メチル2塩酸塩 194 mgを淡黄色結晶として得た。
【0045】
実施例16
1'-(4-クロロ-6,7-ジメトキシキナゾリン-2-イル)-3-(メトキシメチル)-1,4'-ビピペリジン 217 mg及び[2-(4-クロロフェニル)エチル]アミン 93 mgのDMF溶液にDBU 114 mgを加え、室温で2時間、80℃で2時間、100℃で18時間撹拌した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム-メタノール-28%アンモニア水)で精製し、N-[2-(4-クロロフェニル)エチル]-6,7-ジメトキシ-2-[3-(メトキシメチル)-1,4'-ビピペリジン-1'-イル]キナゾリン-4-アミン 125 mgを黄色の液体として得た。この化合物を酢酸エチル 5 mlに溶解し、4M塩酸-酢酸エチル溶液0.15 mlを加え、室温で1時間撹拌した。溶媒を留去し、残渣を2-プロパノールで再結晶して、N-[2-(4-クロロフェニル)エチル]-6,7-ジメトキシ-2-[3-(メトキシメチル)-1,4'-ビピペリジン-1'-イル]キナゾリン-4-アミン 2塩酸塩 67 mgを無色結晶として得た。
実施例17
ヒドラジン1水和物 48 mg の エタノール 20 ml 溶液に2-[(1'-{4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-6,7-ジメトキシキナゾリン-2-イル}-1,4'-ビピペリジン-3-イル)メチル]-1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオン 320 mgを加え、4時間還流した。溶媒を留去し、残渣をメタノールに溶解し、4M塩化水素の酢酸エチル溶液 0.5 mlを加えた後、溶媒を留去した。残渣にメタノール 5 mlを加え還流した後、室温で一晩撹拌し、固体を濾過後、溶媒を留去し、残渣をエタノールから再結晶して、2-[3-(アミノメチル)-1,4'-ビピペリジン-1'-イル]-N-(4-クロロフェニル)-6,7-ジメトキシキナゾリン-4-アミン 2塩酸塩 182 mg を無色結晶として得た。
実施例18
2-[(1'-{4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-6,7-ジメトキシキナゾリン-2-イル}-1,4'-ビピペリジン-3-イル)メチル]-1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオン 320 mg を用いて実施例17と同様にして、2-[3-(アミノメチル)-1,4'-ビピペリジン-1'-イル]-N-(4-クロロフェニル)-6,7-ジメトキシキナゾリン-4-アミンを得た。この化合物をジクロロメタン 5 ml に溶解し、無水酢酸 102 mg、ピリジン 79 mgを加えた後、更にピリジン 1 mlを加え、室温下2時間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、室温下2時間撹拌後、クロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール/28%アンモニア水)にて精製し、N-[(1'-{4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-6,7-ジメトキシキナゾリン-2-イル}-1,4'-ビピペリジン-3-イル)メチル]アセトアミド 244 mg を淡黄色固体として得た。この化合物 240 mg を酢酸エチル 5 ml及びメタノール1 mlに溶解し、4M 塩化水素-酢酸エチル溶液 0.5 mlを加え、溶媒を留去し、残渣をエタノールより再結晶して、N-[(1'-{4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-6,7-ジメトキシキナゾリン-2-イル}-1,4'-ビピペリジン-3-イル)メチル]アセトアミド 2塩酸塩 132 mg を無色結晶として得た。
【0046】
実施例19
2-[(1'-{4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-6,7-ジメトキシキナゾリン-2-イル}-1,4'-ビピペリジン-3-イル)メチル]-1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオン 320 mg を用いて実施例17と同様にして、2-[3-(アミノメチル)-1,4'-ビピペリジン-1'-イル]-N-(4-クロロフェニル)-6,7-ジメトキシキナゾリン-4-アミンを得た。この化合物をジクロロメタン 10 ml に溶解し、氷冷下メタンスルホニルクロリド 114 mg及びトリエチルアミン 1 ml を加え、氷冷下2時間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、室温下2時間撹拌後、クロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール/28%アンモニア水)で精製し、残渣にジイソプロピルエーテルを加えて固化させ、沈殿物を濾取、乾燥して、N-[(1'-{4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-6,7-ジメトキシキナゾリン-2-イル}-1,4'-ビピペリジン-3-イル)メチル]メタンスルホンアミド 257 mgを淡黄色固体として得た。この化合物 253 mg を酢酸エチル 5 ml及びメタノール 1 ml に溶解し、4M 塩化水素-酢酸エチル溶液 0.5 ml を加えた後、溶媒を留去し、残渣をメタノールより再結晶して、N-[(1'-{4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-6,7-ジメトキシキナゾリン-2-イル}-1,4'-ビピペリジン-3-イル)メチル]メタンスルホンアミド 2 塩酸塩 161 mg を無色結晶として得た。
実施例20
(1'-{4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-6-ニトロキナゾリン-2-イル}-1,4'-ビピペラジン-3-イル)メタノール 3.16 g のメタノール 200 ml 溶液にアルゴン雰囲気下、10%パラジウム-炭素 300 mg を加え、一気圧水素雰囲気下で3時間攪拌した。反応終了後、反応液をセライト濾過し、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣にジエチルエーテル200 ml を加え沈殿物を濾取し、(1'-{4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-6-アミノキナゾリン-2-イル}-1,4'-ビピペラジン-3-イル)メタノール 1.33 g を黄色固体として得た。この化合物 200 mg をクロロホルム10 ml に溶解し、4M 塩酸/酢酸エチル溶液 1 ml を加えた後、減圧下溶媒を留去し、エタノール-ジエチルエーテルより再結晶して、(1'-{4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-6-アミノキナゾリン-2-イル}-1,4'-ビピペラジン-3-イル)メタノール2塩酸塩 210 mg を褐色結晶として得た。
【0047】
実施例21
(1'-{4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-6-アミノキナゾリン-2-イル}-1,4'-ビピペリジン-3-イル)メタノール 300 mg のジクロロメタン 50 ml 溶液にピリジン5 ml、無水酢酸 0.66 ml を順次加え室温で48時間攪拌した。反応液を減圧下濃縮し、酢酸エチルを加え飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム-メタノール)で精製後、クロロホルム10 mlに溶解し、4 M塩化水素-酢酸エチル溶液 1 mlを加え、減圧下濃縮し、エタノール-ジエチルエーテルより再結晶して、N-{4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-2-[3-(ヒドロキシメチル)-1,4'-ビピペリジン-1'-イル]キナゾリン-6-イル}アセトアミド2塩酸塩2水和物 280 mg を橙色結晶として得た。
実施例22
2-メチルスルファニル-N-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-シクロヘプタ[d]ピリミジン-4-アミン1塩酸塩 1.21 gのジクロロメタン 20 ml 混合溶液に、氷冷下、m-クロロ過安息香酸 956 mg を加え、5℃で1時間攪拌した。さらにm-クロロ過安息香酸 291 mg を加え、室温で1時間攪拌した。反応液にチオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を水、次いで飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去して、N-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-2-(メチルスルフィニル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-シクロヘプタ[d]ピリミジン-4-アミンとN-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-2-(メチルスルホニル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-シクロヘプタ[d]ピリミジン-4-アミンの混合物を得た。この混合物を用いて実施例6と同様にして、(1'-{4-[(4-クロロ-2-フルオロフェニル)アミノ]-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-シクロヘプタ[d]ピリミジン-2-イル}-1,4'-ビピペリジン-3-イル)メタノール2塩酸塩 331 mg を無定形黄色固体として得た。
実施例1〜22の方法と同様にして後記表7〜16に示す実施例化合物を、それぞれ対応する原料を使用して製造した。実施例1〜101の化合物の構造及び物理化学的データを表7〜16に示す。また、表17〜20に本発明の別の化合物の構造を示す。これらは、上記の製造法や実施例に記載の方法及び当業者にとって自明である方法、又はこれらの変法を用いることにより、容易に合成することができる。
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
【表5】

【0052】
【表6】

【0053】
【表7】

【0054】
【表8】

【0055】
【表9】

【0056】
【表10】

【0057】
【表11】

【0058】
【表12】

【0059】
【表13】

【0060】
【表14】

【0061】
【表15】

【0062】
【表16】

【0063】
【表17】

【0064】
【表18】

【0065】
【表19】

【0066】
【表20】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で示される縮環ピリミジン誘導体又はその塩。
【化1】

(式中の記号は以下の意味を示す。
A:置換されていてもよいアリール又は置換されていてもよいシクロアルキル、
【化2】

X:CR3又はN、
Y:CR4又はN、但し、XがCR3のときYはNを、XがNのときYはCR4を示す、
Z:CR5R6、NR7又はO、
R1:同一又は互いに異なって、-R0、-OH、ハロゲン、置換されていてもよい低級アルキル、-O-(置換されていてもよい低級アルキル)、-S-(置換されていてもよい低級アルキル)、-SO2-(置換されていてもよい低級アルキル)、-NO2、-N(R8)(R9)、-CO-R0、-CO2-R0、-N(R8)COR0、-N(R8)CO2R0又は-N(R8)SO2R0
R0:低級アルキル、
R2:同一又は互いに異なって、-R0、ハロゲン、-OH、-OR0、ハロゲノ低級アルキル、-R00-OH、-CON(R8)(R9)、-R00-O-R0、-R00-N(R8)(R9)、-R00-CN、-R00-N(R8)-CO-R0、-R00-N(R8)-SO2-R0、-R00-O-CO-R0、-R00-CO2-R0又は-R00-CON(R8)(R9)、
R3、R4、R8及びR9:同一又は互いに異なって、H又はR0
R5及びR6:同一又は互いに異なって、H又はR2に記載の基、或いはR5及びR6が一体となってオキソ、
R7:H、-R0、ハロゲノ低級アルキル、-R00-OH、-CON(R8)(R9)、-R00-O-R0、-R00-N(R8)(R9)、-R00-CN、-R00-N(R8)-CO-R0、-R00-N(R8)-SO2-R0、-R00-O-CO-R0、-R00-CO2-R0又は-R00-CON(R8)(R9)、
R00:低級アルキレン、
n:0、1、2又は3、
m:0、1、2、3又は4、
j:0、1、2又は3、
k:0、1又は2。

【公開番号】特開2007−210886(P2007−210886A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−53121(P2004−53121)
【出願日】平成16年2月27日(2004.2.27)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】