説明

縮約モデル決定装置、縮約モデル決定方法及び縮約モデル決定プログラム

【課題】電力系統の詳細が不明であったとしても縮約モデルを作成すること。
【解決手段】縮約モデル決定装置は、連系線における連系線動揺波形を記憶する。また、縮約モデル決定装置は、所定の電力系統モデルに含まれる複数のパラメータに任意の値を設定する。また、縮約モデル決定装置は、任意の値を設定した所定の電力系統モデルごとに、電力系統モデルが第1の電力系統と連系線で接続された場合における連系線動揺波形を算出し、算出した連系線動揺波形と記憶部に記憶された連系線動揺波形との差分を算出する。また、縮約モデル決定装置は、差分が最も小さい電力系統モデルを第2の電力系統の縮約モデルとして決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縮約モデル決定装置、縮約モデル決定方法及び縮約モデル決定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統の安定度解析では、電力系統の系統規模が大きいと、膨大な計算時間が必要となる。そこで、主系統と外部系統とを対象として安定度解析を実行する際には、外部系統を縮約することで系統規模を小さくした上で、安定度解析を実行することがある。主系統とは、例えば、安定度解析の主な対象となる電力系統が該当し、外部系統とは、主系統と接続された他の電力系統が該当する。電力系統の縮約手法としては、例えば、発電機や送電線などの物理的なイメージを残したまま縮約する物理的縮約手法や、縮約対象となる電力系統の特性を数式化して固有値の低次元化を図る数学的縮約手法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−5992号公報
【特許文献2】特開平10−56735号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】平岩、林、内田著 「モード解析による工学的系統縮約手法の精度向上」、電学論B、124巻7号、2004年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の縮約手法では、縮約対象となる電力系統の詳細が不明である場合に縮約できないという課題がある。例えば、外部系統について詳細な情報が不明である場合には、外部系統を縮約することができない。
【0006】
開示の技術は、上述に鑑みてなされたものであって、縮約対象となる電力系統の詳細が不明であったとしても縮約可能である縮約モデル決定装置、縮約モデル決定方法及び縮約モデル決定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示する縮約モデル決定装置は、一つの態様において、第1の電力系統と連系線で接続された第2の電力系統の縮約モデルを決定する縮約モデル決定装置である。また、開示する縮約モデル決定装置は、前記連系線における連系線動揺波形を記憶する記憶部を有する。また、開示する縮約モデル決定装置は、所定の電力系統モデルに含まれる複数のパラメータに任意の値を設定する第1のパラメータ設定部を有する。また、開示する縮約モデル決定装置は、前記第1のパラメータ設定部により任意の値が設定された前記所定の電力系統モデルごとに、当該電力系統モデルが前記第1の電力系統と連系線で接続された場合における連系線動揺波形を算出し、算出した連系線動揺波形と前記記憶部に記憶された連系線動揺波形との差分を算出する第1の差分算出部を有する。また、開示する縮約モデル決定装置は、前記第1の差分算出部により算出された差分が最も小さい電力系統モデルを前記第2の電力系統の縮約モデルとして決定する縮約モデル決定部を有する。
【発明の効果】
【0008】
開示する縮約モデル決定装置の一つの態様によれば、電力系統の詳細が不明であったとしても、縮約モデルを作成することが可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施例1における主系統と外部系統との一例を示す図である。
【図2】図2は、実施例1に係る縮約モデル決定装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】図3は、実施例1における記憶部に記憶された連系線動揺波形の一例を示す図である。
【図4】図4は、実施例1における所定の電力系統モデルの一例を示す図である。
【図5】図5は、実施例1における第1の差分算出部による差分算出処理について示す図である。
【図6】図6は、実施例1における電力系統モデルに含まれる発電機の一例を示す概念図である。
【図7】図7は、実施例1におけるAVRの構成の一例を示す図である。
【図8】図8は、実施例1におけるPSSの構成の一例を示す図である。
【図9】図9は、実施例1に係る縮約モデル決定装置による処理の全体の流れの一例を示すフローチャートである。
【図10】図10は、実施例1におけるネットワーク需給パラメータ設定部による処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図11】図11は、実施例1における発電機励磁系パラメータ調整部による処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図12】図12は、東日本における電力系統の模擬であって、発電機を30個有する場合における電力系統図である。
【図13】図13は、図12に示す電力系統の縮約モデルの連系線動揺波形とパワースペクトル密度波形とを示す図である。
【図14】図14は、図12に示す電力系統の縮約モデルを作成する上で、パラメータの値と評価関数との関係を示す図である。
【図15】図15は、西日本における電力系統の模擬であって、発電機を30個有する場合における電力系統図である。
【図16】図16は、図15に示す電力系統の縮約モデルの連系線動揺波形とパワースペクトル密度波形とを示す図である。
【図17】図17は、図15に示す電力系統の縮約モデルを作成する上で、パラメータの値と評価関数との関係を示す図である。
【図18】図18は、本実施例における縮約モデル決定プログラムを実行するコンピュータの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、開示する縮約モデル決定装置、縮約モデル決定方法及び縮約モデル決定プログラムの実施例について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施例により開示する発明が限定されるものではない。各実施例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【実施例1】
【0011】
[縮約モデル決定装置の全体像]
実施例1に係る縮約モデル決定装置の全体像について簡単に示す。実施例1に係る縮約モデル決定装置100は、後述する一連の処理を実行することで、主系統と連系線で接続された外部系統の縮約モデルを決定する。以下では、主系統を「第1の電力系統」とも称し、外部系統を「第2の電力系統」とも称する。
【0012】
図1は、実施例1における主系統と外部系統との一例を示す図である。図1において、11は、電力系統の詳細が明らかである電力系統であり、主系統を示す。12は、電力系統の詳細が不明である電力系統であり、外部系統を示す。13は、主系統11と外部系統12とを連系する連系線を示す。
【0013】
例えば、A社が主系統11を運用し、B社が外部系統12を運用する場合を用いて説明する。この場合、A社は、自社が運用する電力系統である主系統11についての詳細な情報を保持する一方、自社が運用する電力系統ではない外部系統12について、詳細な情報や正確な情報が得られないことがある。ここで、広域安定度を解析する場合には、自社が運用する電力系統以外の電力系統についても考慮する必要がある。例えば、A社が主系統11について広域安定度を解析する場合には、外部系統12についても考慮する必要がある。
【0014】
実施例1に係る縮約モデル決定装置100によれば、例え、詳細が不明な外部系統であったとしても、後述する一連の処理を実行することで、縮約モデルを決定することが可能となる。この結果、外部系統の詳細が不明であったとしても、外部系統の縮約モデルを決定し、決定した外部系統の縮約モデルを用いて安定度解析を実行することが可能である。
【0015】
[縮約モデル決定装置の構成]
図2を用いて、実施例1に係る縮約モデル決定装置100の構成の一例を示す。図2は、実施例1に係る縮約モデル決定装置の構成の一例を示すブロック図である。図2に示す例では、縮約モデル決定装置100は、入力部101と、出力部102と、記憶部110と、制御部120とを有する。
【0016】
実施例1では、縮約モデル決定装置100が、主系統と連系線13で接続された外部系統について、縮約モデルを決定する場合を用いて説明する。また、以下では、外部系統と主系統とを連結する連系線にて実際に検出され得る連系線動揺波形が予め得られるものとして説明する。
【0017】
入力部101は、記憶部110及び制御部120と接続される。入力部101は、例えば、キーボードやマウス、マイクなどが該当する。入力部101は、情報や指示を利用者から受け付け、受け付けた情報や指示を記憶部110や制御部120に入力する。例えば、入力部101は、連系線にて実際に検出され得る連系線動揺波形が利用者によって入力される。
【0018】
出力部102は、制御部120と接続される。出力部102は、例えば、モニタや、各種の情報出力端子が該当する。出力部102は、制御部120から情報を受け付け、受け付けた情報を出力する。
【0019】
なお、入力部101によって受け付けられる情報や指示の詳細や、出力部102によって出力される情報の詳細については、ここでは説明を省略し、関係する各部について説明する際に併せて説明する。
【0020】
記憶部110は、入力部101及び制御部120と接続される。記憶部110は、例えば、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)などの半導体メモリ素子、又は、ハードディスクや光ディスクなどが該当する。記憶部110は、制御部120による各種処理に用いるデータを記憶する。
【0021】
記憶部110は、主系統と外部系統とを接続する連系線において、実際に検出され得る連系線動揺波形を記憶する。記憶部110に記憶された連系線動揺波形は、例えば、利用者によって予め入力される。なお、以下では、記憶部110が、連系線動揺波形を記憶する場合を用いて説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、連系線動揺波形をフーリエ変換することで得られるパワースペクトル密度波形を記憶しても良い。連系線動揺波形をフーリエ変換することで得られるパワースペクトル密度波形については、後述するため、ここでは説明を省略する。
【0022】
図3を用いて、実施例1における記憶部110に記憶された連系線動揺波形の一例を示す。図3は、実施例1における記憶部に記憶された連系線動揺波形の一例を示す図である。図3において、横軸は、時間軸を示し、縦軸は、連系線相差角を示す。
【0023】
制御部120は、入力部101、出力部102及び記憶部110と接続される。制御部120は、各種の処理手順などを規定したプログラムを記憶する内部メモリを有し、種々の処理を制御する。制御部120は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)などの電子回路が該当する。図2に示す例では、制御部120は、ネットワーク需給パラメータ設定部121と、発電機励磁系パラメータ調整部122と、縮約モデル決定部123とを有する。
【0024】
ネットワーク需給パラメータ設定部121は、利用者から縮約モデルを決定する旨の指示を受信すると、所定の電力系統モデルに含まれる複数のネットワーク需給パラメータ設定処理を実行する。図2に示す例では、ネットワーク需給パラメータ設定部121は、第1のパラメータ設定部121aと、第1の差分算出部121bとを有する。なお、ネットワーク需給パラメータ設定部121による詳細な処理の一例については、フローチャートを用いて後述する。
【0025】
ネットワーク需給パラメータ設定部121は、所定の電力系統モデルに含まれる複数のネットワーク需給パラメータとして、所定の電力系統モデルに含まれる発電機の発電量を示すパラメータと、所定の電力系統モデルに含まれるネットワークのインピーダンスを示すパラメータと、所定の電力系統モデルに含まれる負荷の負荷量を示すパラメータとを用いる。
【0026】
図4を用いて、実施例1における電力系統モデルに含まれるネットワーク需給パラメータについて示す。図4は、実施例1における所定の電力系統モデルの一例を示す図である。図4の20は、外部系統を縮約した電力系統モデルの一例を示す。また、図4の21及び22は、電力系統モデル20に含まれる発電機を示す。図4の23〜25は、電力系統モデル20に含まれるノードを示す。図4の26は、ノード23とノード24との間におけるネットワークのインピーダンスを示し、図4の27は、ノード24とノード25との間におけるネットワークのインピーダンスを示す。図4の28及び29は、電力系統モデル20に含まれる負荷を示す。図4には、電力系統モデルの一例として、2機2負荷モデルを示した。2機2負荷モデルとは、発電機が2つあり、負荷が2つある電力系統モデルを示す。
【0027】
図4に示す例では、ネットワーク需給パラメータは、発電機21及び発電機22の発電量と、ネットワークのインピーダンス26及び27と、負荷28及び負荷29の負荷量とが該当する。
【0028】
なお、以下では、発電機21及び発電機22の発電量を、それぞれ、「PG1」「PG2」とも記載し、ネットワークのインピーダンス26及び27を、それぞれ、「Z1」「Z2」とも記載し、負荷28及び負荷29の負荷量を、それぞれ、「PL1」「PL2」とも記載する。
【0029】
また、図4に示す例では、2つの負荷が直列に接続された電力系統モデルを例に示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、2つの負荷が並列に接続された電力系統モデルを用いても良い。また、図4に示す例では、電力系統モデル20として、2機2負荷モデルを示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発電機の数が1つであっても良く、3つ以上であっても良い。また、同様に、負荷の数は、1つであっても良く、3つ以上であっても良い。
【0030】
図2の説明に戻る。第1のパラメータ設定部121aは、所定の電力系統モデルに含まれる複数のネットワーク需給パラメータに任意の値を設定する。具体的には、第1のパラメータ設定部121aは、電力系統モデル20に含まれる負荷の負荷量を示すパラメータに任意の値を設定し、電力系統モデル20に含まれる発電量を示すパラメータに任意の値を設定し、電力系統モデル20に含まれるネットワークのインピーダンスを示すパラメータに任意の値を設定する。図2の電力系統モデル20を例に説明すると、第1のパラメータ設定部121aは、発電機21及び発電機22の発電量として任意の値を設定し、ネットワークのインピーダンス26及び27に任意の値を設定し、負荷28及び負荷29の負荷量に任意の値を設定する。
【0031】
また、第1のパラメータ設定部121aは、所定の電力系統モデルに含まれる複数のネットワーク需給パラメータに対して、異なる値の組み合わせを設定する。言い換えると、第1のパラメータ設定部121aは、異なる値の組み合わせが付与された電力系統モデルを複数作成する。例えば、第1のパラメータ設定部121aは、パラメータに設定され得る値を総当たりで用いて値の組み合わせをすべて作成し、作成した組み合わせ各々が設定された電力系統モデル各々を作成する。この結果、値の組み合わせの数だけ、異なる値の組み合わせが設定された電力系統モデルが作成される。
【0032】
なお、ネットワーク需給パラメータに設定され得る値は、予め利用者によって設定され得る値の範囲が設定されても良く、利用者によって入力された外部系統についての情報に基づいて範囲を決定しても良い。
【0033】
第1の差分算出部121bは、第1のパラメータ設定部121aにより任意の値が設定された所定の電力系統モデルごとに、電力系統モデルが主系統と連系線で接続された場合における連系線動揺波形を算出し、記憶部110に記憶された連系線動揺波形との差分を算出する。
【0034】
すなわち、第1の差分算出部121bは、記憶部110から、連系線にて実際に検出され得る連系線動揺波形を取得する。そして、第1の差分算出部121bは、連系線にて実際に検出され得る連系線動揺波形と、所定の電力系統モデルが連系線で主系統に接続された場合における連系線動揺波形とを比較し、差分を算出する。
【0035】
また、連系線動揺波形の差分を算出する際、第1の差分算出部121bは、電力系統モデルの連系線動揺波形をフーリエ変換することでパワースペクトル密度波形を算出し、記憶部110に記憶された連系線動揺波形のパワースペクトル密度波形との差分を算出する。また、第1の差分算出部121bは、パワースペクトル密度波形に含まれる振動成分を検出し、検出した振動成分に対応する周波数範囲ごとに差分を算出する。
【0036】
すなわち、第1の差分算出部121bは、連系線動揺波形をそのまま用いて差分を算出するのではなく、横軸が周波数となり、縦軸が連系線相差角のパワースペクトル密度(PSD、Power Spectral Density)となるパワースペクトル密度波形を用いて、差分を算出する。
【0037】
パワースペクトル密度波形を用いて差分を算出する意義について簡単に説明する。1点目として、横軸が周波数となるパワースペクトル密度波形を用いた場合には、横軸が時間となる連系線動揺波形を用いた場合と比較して、細かな波形のずれにとらわれず動揺成分の差を直接比較できることがある。2点目として、横軸が周波数となるパワースペクトル密度波形では、周波数範囲で区切ることができ、振動成分ごとに差分を算出することが容易であることがある。第1の差分算出部121bは、これら2点に着目し、パワースペクトル密度波形を用いて差分を算出する。
【0038】
所定の電力系統モデルが連系線で主系統に接続された場合における連系線動揺波形の算出手法について簡単に説明する。連系線動揺波形の算出手法としては、任意の手法を用いて良い。例えば、連系線動揺波形は、パラメータに任意の値を設定した所定の電力系統モデルと、主系統についての情報を入力として、任意の解析プログラムを実行することで得られる。任意の解析プログラムとは、例えば、財団法人電力中央研究所により作成された電力系統安定度解析プログラムなどが該当し、「Y法」とも称される。
【0039】
図5を用いて、第1の差分算出部121bによる差分算出処理の一例について簡単に示す。図5は、実施例1における第1の差分算出部による差分算出処理について示す図である。
【0040】
図5の(1)は、連系線動揺波形の一例を示し、図5の(2)は、パワースペクトル密度波形の一例を示す。図5の連系線動揺波形において、横軸は時間を示し、縦軸は連系線における相差角を示す。また、図5のパワースペクトル密度波形において、横軸は周波数を示し、縦軸は、連系線相差角のパワースペクトル密度を示す。また、図5の31は、所定の電力系統モデルが連系線で主系統に接続された場合における連系線動揺波形の一例を示す。図5の32は、連系線にて実際に検出され得る連系線動揺波形の一例を示す。図5の41は、連系線動揺波形31をフーリエ変換することで得られるパワースペクトル密度波形の一例を示す。図5の42は、連系線動揺波形32をフーリエ変換することで得られるパワースペクトル密度波形の一例を示す。
【0041】
図5の(1)に示すように、第1の差分算出部121bは、パラメータに任意の値を設定した所定の電力系統モデルについて、任意の解析プログラムを用いることで、所定の電力系統モデルが連系線で主系統に接続された場合における連系線動揺波形31を算出する。また、第1の差分算出部121bは、連系線にて実際に検出され得る連系線動揺波形32を記憶部110から読み出す。
【0042】
そして、図5の(2)に示すように、第1の差分算出部121bは、連系線動揺波形31をフーリエ変換することでパワースペクトル密度波形41を算出し、連系線動揺波形32をフーリエ変換することでパワースペクトル密度波形42を算出する。
【0043】
そして、図5の(2)に示す例では、第1の差分算出部121bは、パワースペクトル密度波形において、「0Hz」〜「0.3Hz」に振動成分を検出し、「0.3Hz」〜「0.6Hz」に振動成分を検出する。そして、第1の差分算出部121bは、検出した「0Hz」〜「0.3Hz」の間及び「0.3Hz」〜「0.6Hz」の間それぞれについて、パワースペクトル密度波形41とパワースペクトル密度波形42との差分を算出する。
【0044】
なお、第1の差分算出部121bは、図5を用いて説明する一連の処理を、パラメータ設定部121aにより設定されるパラメータの組み合わせごとに実行する。
【0045】
ここで、連系線にて実際に検出され得る連系線動揺波形32との差分が小さいことの意味について簡単に説明する。連系線動揺波形32との差分が小さいとは、連系線動揺波形32と合致度が高いことを示し、ネットワーク需給パラメータが設定された電力系統モデルが、実際の外部系統と近似していることを示す。
【0046】
(数1)を用いて、パワースペクトル密度波形の差分を算出する手法の一例を示す。(数1)は、差分を算出する数式を示す。(数1)の「評価関数F」は、差分を示し、評価関数Fが大きければ大きいほど、差分が大きいことを示し、2つのパワースペクトル密度波形の合致度が低いことを示す。また、評価関数Fが小さければ小さいほど、差分が小さいことを示し、2つのパワースペクトル密度波形の合致度が大きいことを示す。(数1)の「f」は、周波数を示す。(数1)の「詳細系の連系線相差角のPSD(f)」は、主系統についてのパワースペクトル密度波形を示す。(数1)の「縮約後のPSD(f)」は、パラメータに任意の値が設定された縮約モデルについてのパワースペクトル密度波形を示す。
【0047】
(数1)に示す例では、第1の差分算出部121bは、周波数が「f=0」から「N」の間にある周波数それぞれについて、記憶部110に記憶された連系線動揺波形のパワースペクトル密度波形と、電力系統モデルについてのパワースペクトル密度波形との差分の絶対値を算出し、算出した差分の累積値を算出することで、評価関数Fを算出する。ここで、上述したように、「0Hz」〜「0.3Hz」と、「0.3Hz」〜「0.6Hz」とについて、それぞれ差分を算出する場合には、第1の差分算出部121bは、(数1)において、「f=0」及び「N=0.3」とした上で値を算出し、「f=0.3」及び「N=0.6」とした上で値を算出する。そして、第1の差分算出部121bは、「0Hz」〜「0.3Hz」について算出した値と、「0.3Hz」〜「0.6Hz」について算出した値とを加算し、加算により得られた値を評価関数Fとして用いる。
【0048】
【数1】

【0049】
第1の差分算出部121bは、最も小さい差分が算出された電力系統モデルを、発電機励磁系パラメータ調整部122に出力する。つまり、ネットワーク需給パラメータ設定部121は、任意の値が設定された所定の電力系統モデル各々のうち、連系線にて実際に検出され得る連系線動揺波形との合致度が最も高かった電力系統モデルを出力する。
【0050】
発電機励磁系パラメータ調整部122は、以下に説明するように、所定の電力系統モデルに含まれる発電機についてのパラメータである発電機励磁系パラメータ調整処理を実行する。図2に示す例では、発電機励磁系パラメータ調整部122は、第2のパラメータ設定部122aと、第2の差分算出部122bとを有する。なお、発電機励磁系パラメータ調整部122による詳細な処理の一例については、フローチャートを用いて後述する。
【0051】
発電機励磁系パラメータ調整部122は、発電機励磁系パラメータとして、慣性定数(Mg)と、AVR(Automatic Voltage Regulator、自動電圧調整装置)定数と、PSS(Power System Stabilizer、電力系統安定化装置)定数とを用いる。図6を用いて、実施例1における電力系統モデルに含まれる発電機励磁系パラメータについて示す。図6は、実施例1における電力系統モデルに含まれる発電機の一例を示す概念図である。
【0052】
図6において、51は、ボイラーを示し、52は、タービンを示す。53は、電磁石を有し、電磁石が回転することで電気を発生させる発電機を示す。54や55は、発電機53の制御系を示す。具体的には、54は、発電機端子電圧を一定に保つことで、発電機がもつ同期化力を維持する役割を担うAVRを示す。また、55は、AVRの補助入力として端子電圧を変動させ、等価的なダンピングトルクを正方向に増加させることで電力動揺の安定化を図るPSSを示す。
【0053】
図6に示す例では、ボイラー内にある水が水蒸気となると、図6の矢印61に示すように、水蒸気がタービン52を回転させる。その結果、図6の矢印62や矢印63に示すように、発電機53の電磁石が回転することで電気が発生し、矢印64に示されるように、電気が送られる。なお、タービン52を回転させる方式は、水蒸気を用いる方式に限定されるものではなく、任意の方式であって良い。例えば、燃焼させた高温高圧のガスを直接タービンにあてて回転させるガスタービン方式であっても良く、水力発電のように水を直接タービン(この場合、水車)にあてて回転させる方式であっても良い。
【0054】
ここで、慣性定数は、図6に示す例を用いて説明すると、発電機53において電磁石の回転のしやすさを示す。慣性定数は、一般的に、「5」〜「13」の間の値となることを踏まえ、発電機励磁系パラメータ調整部122は、慣性定数の初期値として、「8.5」を用いる。
【0055】
また、AVR定数とPSS定数とは、図6に示す例を用いて説明すると、それぞれ、AVR54とPSS55とにおいて用いられるパラメータを示す。図7と図8とを用いて、AVR定数とPSS定数とについて簡単に示す。
【0056】
図7は、実施例1におけるAVRの構成の一例を示す図である。図7では、AVRは、サイリスタ励磁方式のAVRを例に示した。図8は、実施例1におけるPSSの構成の一例を示す図である。図7に示したAVRの構成の一例や、図8に示したPSSの構成の一例は、一般的な構成であり、詳細な説明については省略する。
【0057】
ここで、図7に示すように、AVR定数は、図7において「調整対象パラメータ」として囲んだ3つの値が該当する。図7に示す例では、AVR定数の初期値が、それぞれ、「1.3」「7.1」「170」となっている場合を示した。また、図8に示すように、PSS定数は、図8において「調整対象パラメータ」として囲んだ3つの値が該当する。図8に示す例では、PSS定数の初期値が、それぞれ、「0.14」「2.0」「5」となっている場合を示した。
【0058】
図2の説明に戻る。第2のパラメータ設定部122aと第2の差分算出部122bとは、協働することで、所定の電力系統モデルに含まれる発電機についてのパラメータを調整する。具体的には、詳細については後述するように、第2のパラメータ設定部122aは、電力系統モデルの発電機励磁系パラメータに初期値を設定する。そして、第2の差分算出部122bは、発電機についてのパラメータが設定された電力系統モデルについて、第1の差分算出部121bと同様に差分を算出する。そして、第2のパラメータ設定部122aは、第2の差分算出部122bにより算出された差分に基づいて、発電機についてのパラメータを調整する。
【0059】
第2のパラメータ設定部122aと第2の差分算出部122bとについて、順に、更に説明する。第2のパラメータ設定部122aは、第1の差分算出部121bにより算出された差分が最も小さい電力系統モデルに含まれる発電機励磁系パラメータに任意の値を設定する。具体的には、第2のパラメータ設定部122aは、PSS定数とAVR定数と慣性定数に任意の値を設定する。
【0060】
具体的には、第2のパラメータ設定部122aは、ネットワーク需給パラメータ設定部121によりネットワーク需給パラメータが設定された電力系統モデルが出力されると、電力系統モデルに含まれる発電機のPSS定数とAVR定数と慣性定数とに初期値を設定する。例えば、第2のパラメータ設定部122aは、慣性定数に「8.5」を設定し、図7に示されるように、「1.3」「7.1」「170」をAVR定数に設定し、図8に示されるように、「0.14」「2.0」「5」をPSS定数に設定する。また、第2のパラメータ設定部122aは、第2の差分算出部122bにより算出された差分に基づいて、PSS定数やAVR定数、慣性定数を調整する。
【0061】
また、第2のパラメータ設定部122aは、調整結果となる電力系統モデルを縮約モデル決定部123に出力する。
【0062】
第2の差分算出部122bは、PSS定数とAVR定数と慣性定数とに任意の値が設定された電力系統モデルごとに、電力系統モデルが主系統と連系線で接続された場合における連系線動揺波形を算出する。そして、第2の差分算出部122bは、算出した連系線動揺波形と、記憶部110に記憶された連系線動揺波形との差分を算出する。
【0063】
具体的には、第2のパラメータ設定部122aは、第1の差分算出部121bと同様に、記憶部110から、連系線にて実際に検出され得る連系線動揺波形を取得する。そして、第2のパラメータ設定部122aは、連系線にて実際に検出され得る連系線動揺波形と、第2のパラメータ設定部122aにより発電機励磁系パラメータが設定された電力系統モデルについての連系線動揺波形とを比較し、差分を算出する。
【0064】
また、連系線動揺波形の差分を算出する際、第2のパラメータ設定部122aは、第1の差分算出部121bと同様に、パワースペクトル密度波形の差分を算出する。また、第2のパラメータ設定部122aは、パワースペクトル密度波形に含まれる振動成分を検出し、検出した振動成分に対応する周波数範囲ごとに差分を算出する。
【0065】
縮約モデル決定部123は、第1の差分算出部121bにより算出された差分が最も小さい電力系統モデルを初期値とし、差分が更に小さい値となるように調整し、第2の差分算出部122bにより算出された差分が最も小さい電力系統モデルを、外部系統の縮約モデルとして決定する。
【0066】
例えば、上述したように、発電機励磁系パラメータ調整部122は、第1の差分算出部121bにより算出された差分が最も小さい電力系統モデルについて、発電機励磁系パラメータを調整する。この結果、縮約モデル決定部123は、発電機励磁系パラメータ調整部122による調整結果となる電力系統モデルを、外部系統の縮約モデルとして決定する。
【0067】
また、縮約モデル決定部123は、決定した縮約モデルを出力する。例えば、縮約モデルをモニタから表示したり、縮約モデルのデータを利用者に出力したりする。
【0068】
[縮約モデル決定装置による処理]
次に、図9を用いて、実施例1に係る縮約モデル決定装置100による処理の全体の流れの一例を示す。図9は、実施例1に係る縮約モデル決定装置による処理の全体の流れの一例を示すフローチャートである。
【0069】
図9に示すように、縮約モデル決定装置100では、利用者から指示を受け付けると(ステップS101肯定)、ネットワーク需給パラメータ設定部121が、所定の電力系統モデルに含まれる複数のネットワーク需給パラメータの設定処理を実行する(ステップS102)。そして、発電機励磁系パラメータ調整部122は、発電機励磁系パラメータの調整処理を実行する(ステップS103)。
【0070】
そして、縮約モデル決定部123は、縮約モデルを決定する(ステップS104)。つまり、縮約モデル決定部123は、ネットワーク需給パラメータ設定部121によってネットワーク需給パラメータが設定され、発電機励磁系パラメータ調整部122によって発電機励磁系パラメータが調整された電力系統モデルを、縮約モデルとして決定する。より詳細には、縮約モデル決定部123は、第1の差分算出部121bにより算出された差分が最も小さい電力系統モデルを初期値とし、差分が更に小さい値となるように調整し、第2の差分算出部122bにより算出された差分が最も小さい電力系統モデルを、外部系統の縮約モデルとして決定する。
【0071】
そして、縮約モデル決定部123は、決定した縮約モデルを出力する(ステップS105)。
【0072】
[ネットワーク需給パラメータ設定部による処理]
図10を用いて、実施例1におけるネットワーク需給パラメータ設定部121による処理の流れの一例を示す。図10は、実施例1におけるネットワーク需給パラメータ設定部による処理の流れの一例を示すフローチャートである。図10に示す一連の処理は、図9におけるステップS102の処理に対応する。
【0073】
図10に示すように、ネットワーク需給パラメータ設定部121では、第1のパラメータ設定部121aが、所定の電力系統モデルのネットワーク需給パラメータに任意の値を設定する(ステップS201)。この際、第1のパラメータ設定部121aは、パラメータに設定され得る値を総当たりで用いて値の組み合わせをすべて作成し、作成した組み合わせ各々を電力系統モデルに設定する。この結果、値の組み合わせの数だけ、異なる値の組み合わせがパラメータに設定された電力系統モデルがあることになる。
【0074】
そして、第1の差分算出部121bは、第1のパラメータ設定部121aにより任意の値が設定された所定の電力系統モデルごとに、電力系統モデルが第1の電力系統と連系線で接続された場合における連系線動揺波形を算出し(ステップS202)、電力系統モデルの連系線動揺波形をフーリエ変換することでパワースペクトル密度波形を算出する(ステップS203)。
【0075】
また、第1の差分算出部121bは、記憶部110から、連系線にて実際に検出され得る連系線動揺波形を取得する(ステップS204)。そして、第1の差分算出部121bは、異なるネットワーク需給パラメータが設定された所定の電力系統モデルの連系線動揺波形ごとに、記憶部110に記憶された連系線動揺波形のパワースペクトル密度波形との差分を算出する(ステップS205)。具体的には、第1の差分算出部121bは、パワースペクトル密度波形に含まれる振動成分を検出し、検出した振動成分に対応する周波数範囲ごとに差分を算出する。
【0076】
そして、第1の差分算出部121bは、算出した差分が最も小さかったパワー密度波形に対応する電力系統モデルを、発電機励磁系パラメータ調整部122に出力する(ステップS206)。つまり、ネットワーク需給パラメータ設定部121は、異なるネットワーク需給パラメータが設定された所定の電力系統モデルのうち、連系線にて実際に検出され得る連系線動揺波形との合致度が最も高かった電力系統モデルを出力する。
【0077】
なお、上記の処理手順は、上記の順番に限定されるものではなく、処理内容を矛盾させない範囲で適宜変更しても良い。例えば、図10に示す例では、所定の電力系統モデル各々についてパワースペクトル密度波形を算出した後に、記憶部110から連系線動揺波形を取得する場合を例に示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1のパラメータ設定部121aにより任意の値が設定される前に、記憶部110から連系線動揺波形を取得しても良く、任意の値が設定された後パワースペクトル密度波形が算出される前に、記憶部110から連系線動揺波形を取得しても良い。
【0078】
[発電機励磁系パラメータ調整部による処理]
図11を用いて、実施例1における発電機励磁系パラメータ調整部122による処理の流れの一例を示す。図11は、実施例1における発電機励磁系パラメータ調整部による処理の流れの一例を示すフローチャートである。図11に示す一連の処理は、図9におけるステップS103の処理に対応する。なお、図11に示した一連の処理では、図10のステップS206にて出力された電力系統モデルが処理対象となる。図11に示す一連の処理は、電力系統モデルに含まれる発電機ごとに実行される。
【0079】
図11に示すように、発電機励磁系パラメータ調整部122では、第2のパラメータ設定部122aが、発電機励磁系パラメータに初期値を設定する(ステップS301)。例えば、第2のパラメータ設定部122aは、慣性定数に「8.5」を設定し、図7に示されるように、「1.3」「7.1」「170」をAVR定数に設定し、図8に示されるように、「0.14」「2.0」「5」をPSS定数に設定する。
【0080】
そして、第2の差分算出部122bは、第1の差分算出部121bによる処理と同様に、差分を算出する(ステップS302)。すなわち、第2の差分算出部122bは、第2のパラメータ設定部122aにより発電機励磁系パラメータが設定された電力系統モデルのパワースペクトル密度波形と、記憶部110に記憶された連系線動揺波形のパワースペクトル密度波形との差分を算出する。
【0081】
そして、第2のパラメータ設定部122aは、発電機励磁系パラメータのうちいずれか1つの値を所定の割合変化させ、かつ他のパラメータの値については値を変化させなかった電力系統モデルを、発電機励磁系パラメータそれぞれについて作成する(ステップS303)。例えば、慣性定数を「+1%」変化させた電力系統モデルを作成し、AVR定数のうち「1.3」を「+1%」変化させた電力系統モデルを作成し、その他の発電機励磁系パラメータについても同様に処理を実行する。
【0082】
そして、第2の差分算出部122bは、発電機励磁系パラメータのうちいずれか1つの値が変化された電力系統モデルごとに、第1の差分算出部121bによる処理と同様に、差分を算出する(ステップS304)。
【0083】
ここで、第2のパラメータ設定部122aは、第1の差分算出部121bにより算出された差分が最も小さい電力系統モデルについて、所定の閾値よりも差分が小さいかを判定する(ステップS305)。ここで、小さいと判定した場合には(ステップS305肯定)、第2のパラメータ設定部122aは、小さいと判定した電力系統モデルを縮約モデル決定部123に出力する(ステップS306)。
【0084】
一方、第2のパラメータ設定部122aは、所定の閾値よりも差分が小さくないと判定した場合には(ステップS305否定)、変化させた発電機励磁系パラメータの値を所定の割合更に変化させた上で(ステップS307)、上述したステップS303に戻り、所定の閾値よりも差分が小さいかを判定するまで処理を繰り返す。例えば、第2のパラメータ設定部122aは、変化されたパラメータの値を「+10%」変化させた上で、上述したステップS303に戻り、処理を繰り返す。
【0085】
このように、第2のパラメータ設定部122aは、発電機励磁系パラメータ各々を所定の割合変化させた上で、差分を最も小さくした発電機励磁系パラメータを更に変化させる。言い換えると、評価関数を小さくする上での寄与度が他の発電機励磁系パラメータと比較して高かった発電機励磁系パラメータを、再度変化させる。
【0086】
ここで、ステップS303及びステップS307において、パラメータの値を所定の割合変化させる処理について補足する。第2のパラメータ設定部122aは、ステップS303では、第2のパラメータ設定部122aは、発電機励磁系パラメータ各々の値を、一律の割合にて変化させる。例えば、第2のパラメータ設定部122aは、一律「+1%」値を変化させたり、一律「−1%」値を変化させたりする。一方、第2のパラメータ設定部122aは、ステップS307では、差分が最も小さいと判定されたパワースペクトル密度波形に対応する電力系統モデルにて変化していたパラメータについて、値を更に変化させる。
【0087】
また、ステップS307において、第2のパラメータ設定部122aは、電力系統モデルのパワースペクトル密度波形の値が、記憶部110に記憶された連系線動揺波形のパワースペクトル密度波形よりも大きかった場合には、パラメータが小さくなるように値を変化させる。また、ステップS307において、第2のパラメータ設定部122aは、電力系統モデルのパワースペクトル密度波形の値が、記憶部110に記憶された連系線動揺波形のパワースペクトル密度波形よりも小さかった場合には、パラメータが大きくなるように値を変化させる。
【0088】
なお、上記の処理手順は、上記の順番に限定されるものではなく、処理内容を矛盾させない範囲で適宜変更しても良い。例えば、上記のステップS307を実行しなくても良い。
【0089】
[実施例1の効果]
上述したように、実施例1によれば、記憶部110は、連系線動揺波形を記憶し、ネットワーク需給パラメータ設定部121は、所定の電力系統モデルに含まれる複数のパラメータに任意の値を設定する。また、ネットワーク需給パラメータ設定部121は、第1のパラメータ設定部121aにより任意の値が設定された所定の電力系統モデルごとに、電力系統モデルが第1の電力系統と連系線で接続された場合における連系線動揺波形を算出し、算出した連系線動揺波形と記憶部110に記憶された連系線動揺波形との差分を算出する。また、縮約モデル決定部123は、第1の差分算出部121bにより算出された差分が最も小さい電力系統モデルを外部系統の縮約モデルとして決定する。この結果、電力系統の詳細が不明であったとしても、外部系統の縮約モデルを作成することが可能である。
【0090】
電力系統の広域安定度を検討する場合、外部系統により動特性に与えられる影響は大きく、外部系統について検討することが重要となる。にもかかわらず、電力系統は各社単位で運用がなされることがあり、この場合、外部系統について詳細な情報が得られないことが多い。ここで、従来の手法では、外部系統について詳細な情報が得られない場合に、縮約モデルを決定することが困難であった。これに対して、実施例1によれば、外部系統に関して得られる情報が僅かであっても縮約モデルを決定可能であり、かつ縮約モデルの動特性の合致度を向上することが可能である。
【0091】
図12に示す電力系統を縮約した場合を例に用いて、実施例1に係る縮約モデル決定装置100の効果について更に示す。図12は、東日本における電力系統の模擬であって、発電機を30個有する場合における電力系統図である。図12の実線71で囲った部分を外部系統とし、破線72で囲った部分を主系統とし、73を連系線とする。
【0092】
図13は、図12に示す電力系統の縮約モデルの連系線動揺波形とパワースペクトル密度波形とを示す図である。図13の(1)は、連系線動揺波形を示し、図13の(2)は、パワースペクトル密度波形を示す。図13の74は、連系線73にて実際に検出され得る連系線動揺波形を示し、75は、縮約モデル決定部123により決定された縮約モデルを用いた場合の連系線動揺波形を示す。図13の76は、連系線動揺波形74のパワースペクトル密度波形を示し、77は、連系線動揺波形75のパワースペクトル密度波形を示す。
【0093】
図13に示すように、縮約モデル決定部123により決定された縮約モデルの連系線動揺波形75やパワースペクトル密度波形77は、それぞれ、実際に検出されることが予想される連系線動揺波形74やパワースペクトル密度波形76と合致度が高いことがわかる。
【0094】
図14は、図12に示す電力系統の縮約モデルを作成する上で、パラメータの値と評価関数との関係を示す図である。図14の縦軸は、評価関数を示し、横軸は、断面数を示す。断面数とは、パラメータに設定した値の組み合わせの数を示す。すなわち、図14に示す例では、パラメータに設定した値の組み合わせとして、3000強の組み合わせが用いられ、3000強の組み合わせ各々について評価関数が算出されたことを示す。また、図14に示す例では、振動成分ごとに評価関数を算出する場合を例に示した。すなわち、図14に示す例では、「0.1Hz」〜「0.3Hz」について評価関数を算出し、「0.3Hz」〜「0.6Hz」について評価関数を算出した場合を例に示した。
【0095】
図14に示すように、パラメータによっては、評価関数が大きくなっているが、本実施例によれば、「0.1Hz」〜「0.3Hz」にある動揺成分についても、「0.3Hz」〜「0.6Hz」にある動揺成分についても、評価関数が低くなる値の組み合わせを見いだせていることがわかる。
【0096】
このように、図12に示すような電力系統図であったとしても、図13や図14に示されるように、合致度が高い縮約モデルを決定可能であることがわかる。
【0097】
図15に示す電力系統を縮約した場合を例に用いて、実施例1に係る縮約モデル決定装置100の効果について更に示す。図15は、西日本における電力系統の模擬であって、発電機を30個有する場合における電力系統図である。図15の実線81で囲った部分を外部系統とし、破線82で囲った部分を主系統とし、83を連系線とする。
【0098】
図16は、図15に示す電力系統の縮約モデルの連系線動揺波形とパワースペクトル密度波形とを示す図である。図16の(1)は、連系線動揺波形を示し、図16の(2)は、パワースペクトル密度波形を示す。図16の84は、連系線83にて実際に検出され得る連系線動揺波形を示し、85は、縮約モデル決定部123により決定された縮約モデルを用いた場合の連系線動揺波形を示す。図16の86は、連系線動揺波形84のパワースペクトル密度波形を示し、87は、連系線動揺波形85のパワースペクトル密度波形を示す。
【0099】
図16に示すように、縮約モデル決定部123により決定された縮約モデルの連系線動揺波形85やパワースペクトル密度波形87は、それぞれ、実際に検出されることが予想される連系線動揺波形84やパワースペクトル密度波形86と十分な合致度を示していることがわかる。
【0100】
図17は、図15に示す電力系統の縮約モデルを作成する上で、パラメータの値と評価関数との関係を示す図である。図17の縦軸は、評価関数を示し、横軸は、断面数を示す。図17に示す例では、振動成分ごとに評価関数を算出する場合を例に示した。すなわち、図17に示す例では、「0.1Hz」〜「0.3Hz」について評価関数を算出し、「0.3Hz」〜「0.6Hz」について評価関数を算出した場合を例に示した。
【0101】
図17に示すように、図14と同様に、パラメータによっては、評価関数が大きくなっているが、本実施例によれば、「0.1Hz」〜「0.3Hz」にある動揺成分についても、「0.3Hz」〜「0.6Hz」にある動揺成分についても、評価関数が低くなる値の組み合わせを見いだせていることがわかる。
【0102】
このように、図15に示すような電力系統図であったとしても、図16や図17に示されるように、合致度が高い縮約モデルを決定可能であることがわかる。
【0103】
また、実施例1によれば、ネットワーク需給パラメータ設定部121は、電力系統モデルの連系線動揺波形をフーリエ変換することでパワースペクトル密度波形を算出し、算出したパワースペクトル密度波形と記憶部に記憶された連系線動揺波形のパワースペクトル密度波形との差分を算出する。この結果、合致度が高くなったか低くなったかを高精度に算出でき、縮約モデルを高精度に作成することが可能である。
【0104】
また、実施例1によれば、ネットワーク需給パラメータ設定部121は、パワースペクトル密度波形に含まれる振動成分を検出し、検出した振動成分に対応する周波数範囲ごとに差分を算出する。この結果、合致度が高くなったか低くなったかを高精度に算出でき、縮約モデルを高精度に作成することが可能である。
【0105】
すなわち、パワースペクトル密度波形を用いることで、図5の(2)にも示されるように、細かな波形のずれにとらわれることなく、主要な動揺成分に的を絞って、直接差分を確実に算出することができ、種々のパラメータが設定された電力系統モデルと外部系統との合致度を高精度に把握することが可能である。また、パワースペクトル密度波形を用いることで、動揺成分ごとに差分を算出することもでき、外部系統との合致度を高精度に把握することが可能である。
【0106】
また、実施例1によれば、ネットワーク需給パラメータ設定部121は、電力系統モデルに含まれる負荷量を示すパラメータと、発電量を示すパラメータと、ネットワークのインピーダンスを示すパラメータとに対して、任意の値を設定する。また、発電機励磁系パラメータ調整部122は、ネットワーク需給パラメータ設定部121により算出された差分が最も小さい電力系統モデルに含まれる発電機のPSS定数とAVR定数と慣性定数として、任意の値を設定する。また、発電機励磁系パラメータ調整部122は、発電機励磁系パラメータに任意の値を設定した電力系統モデルごとに連系線動揺波形を算出し、記憶部110に記憶された連系線動揺波形との差分を算出する。そして、縮約モデル決定部123は、ネットワーク需給パラメータ設定部121により算出された差分が最も小さい電力系統モデルであって、発電機励磁系パラメータ調整部122により算出された差分が最も小さい電力系統モデルを、外部系統の縮約モデルとして決定する。この結果、発電機励磁系パラメータ系についても考慮した上で縮約モデルを決定でき、縮約モデルを高精度に作成することが可能である。
【0107】
また、実施例1によれば、発電機励磁系パラメータ調整部122は、電力系統モデルの連系線動揺波形をフーリエ変換することでパワースペクトル密度波形を算出し、算出したパワースペクトル密度波形と記憶部110に記憶された連系線動揺波形のパワースペクトル密度波形との差分を算出する。この結果、合致度が高くなったか低くなったかを高精度に算出でき、縮約モデルを高精度に作成することが可能である。
【0108】
また、実施例1によれば、発電機励磁系パラメータ調整部122は、パワースペクトル密度波形に含まれる振動成分を検出し、検出した振動成分に対応する周波数範囲ごとに差分を算出する。この結果、合致度が高くなったか低くなったかを高精度に算出でき、縮約モデルを高精度に作成することが可能である。
【実施例2】
【0109】
さて、これまで本発明の実施例について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、その他の実施例にて実施されても良い。そこで、以下では、その他の実施例を示す。
【0110】
[電力系統]
例えば、上述した実施例では、縮約モデル決定装置100が、詳細が不明な電力系統について、縮約モデルを決定する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、縮約モデル決定装置100は、詳細が明らかな電力系統について、上述した一連の処理を実行することで、縮約モデルを決定しても良い。
【0111】
[設定系統]
また、例えば、上述した実施例では、ネットワーク需給パラメータ設定部121では、第1のパラメータ設定部121が、ネットワーク需給パラメータに総当たりにて値を設定し、第1の差分算出部121bが、全組み合わせについて差分を算出する場合を用いて説明した。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ネットワーク需給パラメータ設定部121は、発電機励磁系パラメータ調整部122と同様に、総当たりにて実行するのではなく、第1の差分算出部121bにより算出された差分に基づいてネットワーク需給パラメータ調整することで、最適なネットワーク需給パラメータを設定しても良い。
【0112】
[設定系統]
また、例えば、上述した実施例では、発電機励磁系パラメータ調整部122では、第2のパラメータ設定部122aが、第2の差分算出部122bにより算出された差分に基づいて、発電機についてのパラメータを調整する場合を用いて説明した。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、発電機励磁系パラメータ調整部122は、ネットワーク需給パラメータ設定部121と同様に、総当たりにて値を設定し、最適な発電機励磁系パラメータを設定しても良い。
【0113】
[外部系統についての情報]
また、例えば、上述した実施例では、記憶部110が、外部系統の連系線動揺波形を記憶し、制御部120が用いる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、制御部120は、外部系統について他の情報を利用できる場合には、他の情報についても併せて利用しても良い。例えば、外部系統についての連系線潮流や負荷量の概算値がわかっている場合には、利用者は、連系線潮流や負荷量の概算値を記憶部110に入力しておき、制御部120が、連系線潮流や負荷量の概算値を連系線動揺波形と合わせて用いても良い。
【0114】
例えば、制御部120は、連系線潮流や負荷量の概算値がわかっていれば、負荷量や発電量のパラメータについて、取り得る値の範囲を決定することが可能である。このことを踏まえ、ネットワーク需給パラメータ設定部121は、連系線潮流や負荷量の概算値に基づいて、負荷量や発電量の範囲を設定して用いても良い。
【0115】
[パラメータ]
また、例えば、上述した実施例では、ネットワーク需給パラメータを設定するとともに、発電機励磁系パラメータを調整する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ネットワーク需給パラメータを設定する一方、発電機励磁系パラメータについては初期値のままとしても良い。
【0116】
[パワースペクトル密度波形]
また、例えば、上述した実施例では、縮約モデル決定装置100は、連系線動揺波形ではなく、パワースペクトル密度波形を用いて差分を算出する場合を例に示したが、本発明はこれに限定されるものでない。例えば、連系線動揺波形を用いて差分を算出しても良い。
【0117】
[振動成分ごと]
また、例えば、上述した実施例では、縮約モデル決定装置100は、振動成分ごとに差分を算出する場合を例に示したが、本発明はこれに限定されることなく、所定の周波数帯についてまとめて差分を算出しても良い。
【0118】
[システム構成]
また、本実施例において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上述文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については(図1〜図11)、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0119】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、図2に示す例を用いて説明すると、記憶部110を縮約モデル決定装置100の外部装置としてネットワーク経由で接続するようにしても良い。
【0120】
また、例えば、図2に示す例では、縮約モデル決定装置100が、ネットワーク需給パラメータ設定部121と発電機励磁系パラメータ調整部122とを有する場合を例に示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発電機励磁系パラメータ調整部122を有さなくても良い。この場合、縮約モデル決定装置100は、発電機励磁系パラメータを調整することなく、縮約モデルを決定する。
【0121】
[プログラム]
本実施例では、縮約モデル決定装置100について説明したが、縮約モデル決定装置100が有する構成をソフトウェアによって実現することで、同様の機能を有する縮約モデル決定プログラムを得ることができる。そこで、縮約モデル決定プログラムを実行するコンピュータについて説明する。
【0122】
図18は、本実施例における縮約モデル決定プログラムを実行するコンピュータの構成の一例を示すブロック図である。図18に示すように、このコンピュータ200は、RAM210と、CPU220と、HDD230と、LANインタフェース240と、入出力インタフェース250とを有する。
【0123】
RAM210は、プログラムやプログラムの実行途中結果などを記憶するメモリである。CPU220は、RAM210からプログラムを読み出して実行する中央処理装置である。HDD230は、プログラムやデータを格納するディスク装置である。LANインタフェース240は、コンピュータ200をLAN経由で他のコンピュータに接続するためのインタフェースである。入出力インタフェース250は、マウスやキーボードなどの入力装置及び表示装置を接続するためのインタフェースである。
【0124】
ここで、コンピュータ200において実行される縮約モデル決定プログラム211は、例えば、コンピュータ200にインストールされ、HDD230に記憶される。そして、CPU220は、HDD230からプログラムを読み出して、データを適宜RAM210に読み書きしながら実行することで、縮約モデル決定プログラムを実行する。
【0125】
[その他]
なお、本実施例で説明した縮約モデル決定プログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、縮約モデル決定プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【符号の説明】
【0126】
11 主系統
12 外部系統
13、73、83、 連系線
20 電力系統モデル
21、22 発電機
23〜25 ノード
26、27 ネットワークのインピーダンス
28、29 負荷
31、32、74、75、84、85 連系線動揺波形
41、42、76、77、86、87 パワースペクトル密度波形
51 ボイラー
52 タービン
53 発電機
54 AVR
55 PSS
100 縮約モデル決定装置
101 入力部
102 出力部
110 記憶部
120 制御部
121 ネットワーク需給パラメータ設定部
121a 第1のパラメータ設定部
121b 第1の差分算出部
122 発電機励磁系パラメータ調整部
122a 第2のパラメータ設定部
122b 第2の差分算出部
123 縮約モデル決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電力系統と連系線で接続された第2の電力系統の縮約モデルを決定する縮約モデル決定装置であって、
前記連系線における連系線動揺波形を記憶する記憶部と、
所定の電力系統モデルに含まれる複数のパラメータに任意の値を設定する第1のパラメータ設定部と、
前記第1のパラメータ設定部により任意の値が設定された前記所定の電力系統モデルごとに、当該電力系統モデルが前記第1の電力系統と連系線で接続された場合における連系線動揺波形を算出し、算出した連系線動揺波形と前記記憶部に記憶された連系線動揺波形との差分を算出する第1の差分算出部と、
前記第1の差分算出部により算出された差分が最も小さい電力系統モデルを前記第2の電力系統の縮約モデルとして決定する縮約モデル決定部と
を備えたことを特徴とする縮約モデル決定装置。
【請求項2】
前記第1の差分算出部は、前記電力系統モデルの連系線動揺波形をフーリエ変換することでパワースペクトル密度波形を算出し、算出したパワースペクトル密度波形と前記記憶部に記憶された連系線動揺波形のパワースペクトル密度波形との差分を算出することを特徴とする請求項1に記載の縮約モデル決定装置。
【請求項3】
前記第1の差分算出部は、前記パワースペクトル密度波形に含まれる振動成分を検出し、検出した振動成分に対応する周波数範囲ごとに差分を算出することを特徴とする請求項2に記載の縮約モデル決定装置。
【請求項4】
前記第1のパラメータ設定部は、前記電力系統モデルに含まれる負荷量を示すパラメータと発電量を示すパラメータとネットワークのインピーダンスを示すパラメータとに対して、任意の値を設定し、
前記第1の差分算出部により算出された差分が最も小さい電力系統モデルに含まれる発電機のPSS(Power System Stabilizer)定数とAVR(Automatic Voltage Regulator)定数と慣性定数として、任意の値を設定する第2のパラメータ設定部と、
前記第2のパラメータ設定部により任意の値が設定された電力系統モデルごとに、当該電力系統モデルが前記第1の電力系統と連系線で接続された場合における連系線動揺波形を算出し、算出した連系線動揺波形と前記記憶部に記憶された連系線動揺波形との差分を算出する第2の差分算出部とを更に備え、
前記縮約モデル決定部は、前記第1の差分算出部により算出された差分が最も小さい電力系統モデルであって、前記第2の差分算出部により算出された差分が最も小さい電力系統モデルを、前記第2の電力系統の縮約モデルとして決定することを特徴とする請求項1〜3に記載の縮約モデル決定装置。
【請求項5】
前記第2の差分算出部は、前記電力系統モデルの連系線動揺波形をフーリエ変換することでパワースペクトル密度波形を算出し、算出したパワースペクトル密度波形と前記記憶部に記憶された連系線動揺波形のパワースペクトル密度波形との差分を算出することを特徴とする請求項4に記載の縮約モデル決定装置。
【請求項6】
前記第2の差分算出部は、前記パワースペクトル密度波形に含まれる振動成分を検出し、検出した振動成分に対応する周波数範囲ごとに差分を算出することを特徴とする請求項5に記載の縮約モデル決定装置。
【請求項7】
第1の電力系統と連系線で接続された第2の電力系統の縮約モデルを決定する縮約モデル決定方法であって、
所定の電力系統モデルに含まれる複数のパラメータに任意の値を設定する第1のパラメータ設定ステップと、
前記第1のパラメータ設定ステップにより任意の値が設定された前記所定の電力系統モデルごとに、当該電力系統モデルが前記第1の電力系統と連系線で接続された場合における連系線動揺波形を算出し、算出した連系線動揺波形と記憶部に記憶された連系線動揺波形との差分を算出する第1の差分算出ステップと、
前記第1の差分算出ステップにより算出された差分が最も小さい電力系統モデルを前記第2の電力系統の縮約モデルとして決定する縮約モデル決定ステップと
を含むことを特徴とする縮約モデル決定方法。
【請求項8】
第1の電力系統と連系線で接続された第2の電力系統の縮約モデルを決定する縮約モデル決定プログラムであって、
コンピュータに、
所定の電力系統モデルに含まれる複数のパラメータに任意の値を設定する第1のパラメータ設定手順と、
前記第1のパラメータ設定手順により任意の値が設定された前記所定の電力系統モデルごとに、当該電力系統モデルが前記第1の電力系統と連系線で接続された場合における連系線動揺波形を算出し、算出した連系線動揺波形と記憶部に記憶された連系線動揺波形との差分を算出する第1の差分算出手順と、
前記第1の差分算出手順により算出された差分が最も小さい電力系統モデルを前記第2の電力系統の縮約モデルとして決定する縮約モデル決定手順と
を実行させることを特徴とする縮約モデル決定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−114996(P2012−114996A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260118(P2010−260118)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】