説明

縮重合系樹脂

【課題】Sn−C結合を有していない錫(II)化合物の触媒活性能を高め、反応時間の短縮化に有効な縮重合反応用助触媒を用いて得られる縮重合系樹脂であって、トナー用結着樹脂としても良好な流動性を有する縮重合系樹脂、該縮重合系樹脂を含有した電子写真用トナー及び該縮重合系樹脂の製造方法を提供すること。
【解決手段】Sn-C結合を有していない錫(II)化合物と互いに隣接する3個の水素原子が水酸基で置換されたベンゼン環を有するピロガロール化合物との存在下、原料モノマーを縮重合させて得られる縮重合系樹脂、該縮重合系樹脂を含有してなる電子写真用トナー、並びに該Sn-C結合を有していない錫(II)化合物と互いに隣接する3個の水素原子が水酸基で置換されたベンゼン環を有するピロガロール化合物との存在下、原料モノマーを縮重合させる、縮重合系樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム、シート、繊維、電子写真用トナー材料等の各種用途に用いられる縮重合系樹脂、該縮重合系樹脂を含有した電子写真用トナー及び該縮重合系樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、ポリアミド等の縮重合系樹脂は、その化学的、物理的性質を利用して、フィルム、シート、繊維等の各種用途に用いられており、得られる樹脂の用途に応じて、縮重合反応を促進する触媒や触媒の活性能を高める助触媒も各種検討されている。
【0003】
例えば、トナーの結着樹脂に用いられる縮重合系樹脂の製造に用いられる触媒としては、触媒活性のみならず、帯電性等のトナー性能に与える影響を考慮して、各種錫化合物が検討されている。近年、安全性等の観点から、酸化ジブチル錫等のSn−C結合を有する錫化合物よりも、Sn−C結合を有していない錫(II)化合物が触媒として使用される傾向がある特許文献1参照)。
【0004】
一方、Sn−C結合を有していない錫(II)化合物をアミド化合物やアミン化合物とともに用いることにより、縮重合反応が促進され、反応時間が短縮されることによって、熱履歴の少ない樹脂が得られることが報告されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−186250号公報
【特許文献2】特開2006-350035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、Sn−C結合を有していない錫(II)化合物の触媒活性能を高め、反応時間の短縮化に有効な縮重合反応用助触媒を用いて得られる縮重合系樹脂であって、トナー用結着樹脂としても良好な流動性を有する縮重合系樹脂、該縮重合系樹脂を含有した電子写真用トナー及び該縮重合系樹脂の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
〔1〕 Sn-C結合を有していない錫(II)化合物と互いに隣接する3個の水素原子が水酸基で置換されたベンゼン環を有するピロガロール化合物との存在下、原料モノマーを縮重合させて得られる縮重合系樹脂、
〔2〕 前記〔1〕記載の縮重合系樹脂を含有してなる電子写真用トナー、並びに
〔3〕 Sn-C結合を有していない錫(II)化合物と互いに隣接する3個の水素原子が水酸基で置換されたベンゼン環を有するピロガロール化合物との存在下、原料モノマーを縮重合させる、縮重合系樹脂の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の縮重合系樹脂は、Sn−C結合を有していない錫(II)化合物とピロガロール化合物との併用により、Sn−C結合を有していない錫(II)化合物の触媒活性能が高められ、反応時間が短縮され、トナー用結着樹脂としても良好な流動性を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の縮重合系樹脂は、Sn-C結合を有していない錫(II)化合物と互いに隣接する3個の水素原子が水酸基で置換されたベンゼン環を有するピロガロール化合物の存在下、原料モノマーを縮重合させて得られる。Sn-O結合を有する錫(II)化合物等のSn-C結合を有していない錫(II)化合物は、安全性の面ではSn−C結合を有する錫化合物に優るものの、触媒活性では、Sn−C結合を有する錫化合物に劣り、長い反応時間又は高い反応温度が必要となる。そのため、生産コストの増大だけでなく、低分子量成分の増加、揮発性有機成分の増大という課題を招く。Sn-C結合を有していない錫(II)化合物は、Sn-C結合を有する錫(II)化合物に比べて不安定な化合物であり、構造変化により触媒活性が失われやすいことに起因しているものと推定される。しかしながら、理由は不明なるも、前記ピロガロール化合物を共存させることにより、Sn-C結合を有していない錫(II)化合物の触媒活性の低下が抑制され、高い触媒活性が維持されるため、反応時間を短縮することができる。その結果、熱履歴の少ない縮重合系樹脂が得られ、反応時間の短縮に伴い、反応中のモノマー分解による低分子量成分や揮発性有機成分の増大を防止することもできる。また、前記ピロガロール化合物を併用して得られた本発明の縮重合系樹脂は、トナー用結着樹脂として用いても、良好な流動性を維持することができる。
【0009】
前記ピロガロール化合物としては、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4-テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート等のカテキン誘導体等が挙げられ、これらの中では、得られる樹脂の透明性の観点から、式(I):
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、R1〜R3はそれぞれ独立して、水素原子又は−COOR4(R4は水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基を示す)を示す)
で表される化合物が好ましい。式中、R4の炭化水素基の炭素数は、1〜8が好ましく、反応活性の観点から、炭素数1〜4がより好ましい。式(I)で表される化合物のなかでは、R1及びR3が水素原子、R2が水素原子又は−COOR4である化合物がより好ましい。具体例としては、ピロガロール(R1〜R3:水素原子)、没食子酸(R1及びR3:水素原子、R2:−COOH)、没食子酸エチル(R1及びR3:水素原子、R2:−COOC25)、没食子酸プロピル(R1及びR3:水素原子、R2:−COOC37)、没食子酸ブチル(R1及びR3:水素原子、R2:−COOC49)、没食子酸オクチル(R1及びR3:水素原子、R2:−COOC817)、没食子酸ラウリル(R1及びR3:水素原子、R2:−COOC1225)等の没食子酸エステル等が挙げられる。樹脂の透明性の観点からは、没食子酸及び没食子酸エステルが好ましい。
【0012】
前記ピロガロール化合物とともに、縮重合反応用触媒として用いられるSn-C結合を有していない錫(II)化合物としては、Sn-O結合を有する錫(II)化合物、Sn-X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する錫(II)化合物等が好ましく、Sn-O結合を有する錫(II)化合物がより好ましい。
【0013】
Sn-O結合を有する錫(II)化合物としては、シュウ酸錫(II)、酢酸錫(II)、オクタン酸錫(II)、2-エチルヘキサン酸錫(II)、ラウリル酸錫(II)、ステアリン酸錫(II)、オレイン酸錫(II)等の炭素数2〜28のカルボン酸基を有するカルボン酸錫(II);オクチロキシ錫(II)、ラウロキシ錫(II)、ステアロキシ錫(II)、オレイロキシ錫(II)等の炭素数2〜28のアルコキシ基を有するアルコキシ錫(II);酸化錫(II);硫酸錫(II)等が、Sn-X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する錫(II)化合物としては、塩化錫(II)、臭化錫(II)等のハロゲン化錫(II)等が挙げられ、これらの中では、帯電立ち上がり効果及び触媒能の点から、(R1COO)2Sn(ここでR1は炭素数5〜19のアルキル基又はアルケニル基を示す)で表される脂肪酸錫(II)、(R2O)2Sn(ここでRは炭素数6〜20のアルキル基又はアルケニル基を示す)で表されるアルコキシ錫(II)及びSnOで表される酸化錫(II)が好ましく、(R1COO)2Snで表される脂肪酸錫(II)及び酸化錫(II)がより好ましく、オクタン酸錫(II)、2-エチルヘキサン酸錫(II)、ステアリン酸錫(II)及び酸化錫(II)がさらに好ましい。
【0014】
縮重合反応として、代表的な例としては、カルボキシル基と水酸基の脱水縮合によりエステル結合(-COO-)を有するポリエステルユニット、カルボキシル基とアミノ基の脱水縮合によりアミド結合(-CONH-)を有するポリアミドユニット、エステル結合とアミド結合の両方を有するポリエステルポリアミドユニット等の縮重合系樹脂ユニットを形成する反応等が挙げられ、エステル結合を有する縮重合系樹脂ユニットの形成において、本発明の効果がより顕著に発揮される。なお、本発明においては、異なる原料モノマー間の反応に限らず、異種官能基を1分子内にもつモノマー、例えば、水酸基とカルボキシル基を有する乳酸から、脱水縮合によりポリ乳酸を生成させる反応も縮重合反応に含まれる。
【0015】
ポリエステルユニットの原料モノマーとしては、通常、アルコール成分とカルボン酸成分とが用いられる。
【0016】
アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等の、式(II):
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、R5Oはアルキレンオキシ基であり、R5は炭素数2又は3のアルキレン基、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示す正の数であり、xとyの和は1〜16、好ましくは1.5〜5である)
で表されるビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブテンジオール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール、グリセリン等の3価以上の多価アルコール等が挙げられる。
【0019】
カルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸;及びこれらの酸の無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル;ロジン;フマル酸、マレイン酸、アクリル酸等で変性されたロジン等が挙げられる。上記のような酸、これらの酸の無水物、及び酸のアルキルエステルを、本明細書では総称してカルボン酸化合物と呼ぶ。本発明においては、帯電性の観点から、芳香族ジカルボン酸化合物が好ましい。芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、70モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましい。
【0020】
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、分子量調整や耐オフセット性向上の観点から、適宜含有されていてもよい。
【0021】
さらに、ポリエステルポリアミドユニットやポリアミドユニットにおけるアミド結合を形成するための原料モノマーとしては、公知の各種ポリアミン、アミノカルボン酸類、アミノアルコール等が挙げられ、好ましくはヘキサメチレンジアミン及びε-カプロラクタムである。
【0022】
なお、以上の原料モノマーには、通常開環重合モノマーに分類されるものも含まれているが、これらは、他のモノマーの縮重合反応で生成する水等の存在により加水分解して縮重合に供されるため、広義には縮重合系樹脂の原料モノマーに含まれると考えられる。
【0023】
縮重合反応における前記ピロガロール化合物の存在量は、縮重合反応に供される原料モノマー100重量部に対して、0.001〜1.0重量部が好ましく、0.005〜0.4重量部がより好ましく、0.01〜0.2重量部がさらに好ましい。ここで、ピロガロール化合物の存在量とは、縮重合反応に供したピロガロール化合物の全配合量を意味する。
【0024】
一方、前記錫(II)化合物の存在量は、縮重合反応に供される原料モノマー100重量部に対して、0.01〜2.0重量部が好ましく、0.1〜1.5重量部がより好ましく、0.2〜1.0重量部がさらに好ましい。ここで、錫(II)化合物の存在量とは、縮重合反応に供した錫(II)化合物の全配合量を意味する。
【0025】
ピロガロール化合物と前記錫(II)化合物の重量比(ピロガロール化合物/錫(II)化合物)は、0.01〜0.5が好ましく、0.03〜0.3がより好ましく、0.05〜0.2がさらに好ましい。
【0026】
縮重合反応は、前記錫(II)化合物及びピロガロール化合物の存在下、不活性ガス雰囲気中にて、180〜250℃の温度で行うことが好ましい。前記錫(II)化合物とピロガロール化合物は、両者を混合して反応系に添加してもよく、別々に添加してもよい。また、カルボン酸成分やアルコール成分と混合して添加してもよい。前記錫(II)化合物及びピロガロール化合物を反応系に添加する時期は、反応開始前及び反応途中のいずれであってもよいが、縮重合反応の促進に対してより高い効果が得られる観点から、反応温度に達するより前の時点であることが好ましく、反応開始前であることがより好ましい。なお、本発明において、反応開始前とは、縮重合反応に伴う水が生成されていない状態を意味する。
【0027】
本発明において、縮重合系樹脂とは、縮重合系樹脂ユニットを含む樹脂をいい、前記縮重合反応により得られるポリエステル、ポリエステルポリアミド、ポリアミド等の縮重合系樹脂ユニットからなる樹脂だけでなく、前記縮重合系樹脂ユニットを含む、2種以上の樹脂成分を有するハイブリッド樹脂、例えば、縮重合系樹脂ユニットと付加重合系樹脂ユニットとが部分的に化学結合したハイブリッド樹脂も含まれる。
【0028】
また、縮重合系樹脂は、実質的にその特性を損なわない程度に変性されていてもよい。例えば、変性されたポリエステルとしては、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルをいう。
【0029】
本発明の縮重合系樹脂は、電子写真用トナーの結着樹脂としても好適に用いることができる。
【0030】
結着樹脂の軟化点としては、トナーの定着性、保存性及び耐久性の観点から、90〜160℃が好ましく、95〜155℃がより好ましく、98〜150℃がさらに好ましい。ガラス転移点は、同様の観点から、45〜85℃が好ましく、50〜80℃がより好ましい。帯電性と環境安定性の観点から、酸価は、1〜90mgKOH/gが好ましく、5〜90mgKOH/gがより好ましく、5〜88mgKOH/gがさらに好ましく、水酸基価は、1〜80mgKOH/gが好ましく、8〜60mgKOH/gがより好ましく、8〜55mgKOH/gがさらに好ましい。
【0031】
本発明においては、さらに本発明の縮重合系樹脂を含有した電子写真用トナーを提供する。トナーには、本発明の効果を損なわない範囲で、公知の結着樹脂、例えば、スチレン-アクリル樹脂等のビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等の他の樹脂が併用されていてもよいが、本発明の縮重合系樹脂の含有量は、結着樹脂中、70重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましく、実質的に100重量%であることがさらに好ましい。
【0032】
トナーには、さらに、着色剤、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が適宜含有されていてもよい。
【0033】
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。着色剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、2〜10重量部がより好ましい。
【0034】
電子写真用トナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。溶融混練法による粉砕トナーの場合、例えば、結着樹脂、着色剤、荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。一方、トナーの小粒径化の観点からは、重合法によるトナーが好ましい。トナーの表面には、疎水性シリカ等の外添剤が添加されていてもよい。
【0035】
トナーの体積中位粒径(D50)は、3〜15μmが好ましく、3〜10μmがより好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
【0036】
得られたトナーは、一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。
【実施例】
【0037】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター(島津製作所、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出する。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0038】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法に基づき測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
【0039】
〔樹脂の数平均分子量〕
ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定する(試料濃度:0.5重量%、溶離液:テトラヒドロフラン、流量:1ml/分、温度:40℃)。なお、試料には樹脂粉末40mgとクロロホルム10mlを20ml容のサンプル管に入れ、ボールミルにて室温にて3時間攪拌後、メンブランフィルター(東洋濾紙(株)製、0.2μm穴径)で濾過して調製したものを用いる。
なお、分析カラムには「GMHLX+G3000HXL」(東ソー(株)製)を使用し、分子量の検量線は数種類の単分散ポリスチレン(東ソー(株)製の2.63×103、2.06×104、1.02×105、ジーエルサイエンス社製の2.10×103、7.00×103、5.04×104)を標準試料として作成する。
【0040】
〔ワックスの融点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、融解熱の最大ピーク温度を融点とする。
【0041】
〔トナーの体積中位粒径(D50)〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)5%電解液
分散条件:分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させる。
測定条件:ビーカーに電解液100mlと分散液を加え、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度で、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
【0042】
実施例1〜20、比較例1〜11及び参考例1
ポリオキシプロピレン(2.05)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA-PO)6840g、テレフタル酸2600g(BPA-PO100モルに対して87モル)、表1に示す触媒及び助触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、235℃で酸価が15mgKOH/gに達するまで縮重合反応させた後、さらに8kPaにて軟化点が107℃に達するまで反応させて、ポリエステルを得た。かかった反応時間を表1に示す。
【0043】
得られたポリエステル100重量部、カーボンブラック「MOGUL L」(キャボット社製)4重量部、負帯電性荷電制御剤「ボントロン S-34」(オリエント化学工業社製)1重量部及びポリプロピレンワックス「NP-105」(三井化学社製、融点140℃)2重量部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出し機を用い、ロール回転速度200r/min、ロール内の加熱温度80℃で溶融混練した。混合物の供給速度は20kg/hr、平均滞留時間は約18秒であった。得られた溶融混練物を冷却、粗粉砕した後、ジェットミルにて粉砕し、分級して、体積中位粒径(D50)が7.5μmの粉体を得た。
【0044】
得られた粉体100重量部に、外添剤として疎水性シリカ「アエロジル R-972」(日本アエロジル(株)製)0.1重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合することにより、トナーを得た。
【0045】
得られたトナーの凝集度を、パウダーテスター(ホソカワミクロン社製)を使用した以下の方法により測定し、評価基準に従って流動性を評価した。結果を表1に示す。なお、凝集度とは、粉体流動性を表す指標であり、数値が高いほど粉体の流動性が低いことを示すものである。
【0046】
〔凝集度の測定方法〕
パウダーテスターの振動台に、3種の異なる目開き(250μm、149μm、74μm)の篩を、上段250μm、中段149μm、下段74μmの順でセットし、上段の篩にトナー2gを乗せ、振動させて、各篩上に残存したトナーの重量(g)を測定する。
【0047】
測定したトナー重量を次式に当てはめて計算し、凝集度(%)を求める。
凝集度(%)=a+b+c
a=(上段に篩に残存したトナーの重量)/2×100
b=(中段に篩に残存したトナーの重量)/2×100×(3/5)
c=(下段に篩に残存したトナーの重量)/2×100×(1/5)
【0048】
〔流動性の評価基準〕
3:凝集度が20%未満
2:凝集度が20%以上、40%未満
1:40重量%以上
【0049】
【表1】

【0050】
実施例21及び比較例12
1,4-ブタンジオール4500g、フマル酸5800g(1,4-ブタンジオール100モルに対して100モル)、表2に示す触媒及び助触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、190℃で縮重合反応させて、ポリエステルを得た。反応率(生成反応水量(mol)/理論生成水量(mol)×100)が90%に到達した時点の時間を測定した。結果を表2に示す。触媒及び助触媒の略号は表1と同じである。
【0051】
さらに得られたポリエステルを用い、実施例1と同様にしてトナーを製造し、流動性を評価した。結果を表2に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
実施例22及び比較例13
90重量%水溶液L-乳酸1000g、表3に示す触媒及び没食子酸を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した2リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、120℃から、5℃/分で、180℃まで昇温させながら縮重合反応させた。その後、150℃にて60トールで1時間反応させて、ポリ乳酸を得た。得られたポリ乳酸の分子量を表3に示す。触媒及び助触媒の略号は表1と同じである。
【0054】
【表3】

【0055】
以上の結果より、縮重合反応において、ピロガロール化合物を助触媒として触媒とともに用いることにより、反応時間や分子量の結果から、触媒活性が高められ、反応が促進されていることが分かる。即ち、実施例1〜21では、対応する比較例と対比して、同程度まで反応を進行させるのに必要とされる反応時間が格段に短縮されており、また触媒のみを使用した比較例13では分子量が1150までしか上がらなかったのに対して、ピロガロール化合物を併用した実施例22では、同じ反応時間でも分子量が2080まで上がっている。また、実施例1〜21で得られた樹脂は、トナー用結着樹脂としても、良好な流動性を発揮することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の縮重合系樹脂は、フィルム、シート、繊維、電子写真用トナー材料等の各種用途に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Sn-C結合を有していない錫(II)化合物と互いに隣接する3個の水素原子が水酸基で置換されたベンゼン環を有するピロガロール化合物との存在下、原料モノマーを縮重合させて得られる縮重合系樹脂。
【請求項2】
ピロガロール化合物が、式(I):
【化1】

(式中、R1〜R3はそれぞれ独立して、水素原子又は−COOR4(R4は水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基を示す)を示す)
で表される、請求項1記載の縮重合系樹脂。
【請求項3】
Sn-C結合を有していない錫(II)化合物がSn-O結合を有する錫(II)化合物である、請求項1又は2記載の縮重合系樹脂。
【請求項4】
縮重合系樹脂の原料モノマー100重量部に対して、Sn-C結合を有していない錫(II)化合物の存在量が0.01〜2.0重量部、ピロガロール化合物の存在量が0.001〜1.0重量部である、請求項1〜3いずれか記載の縮重合系樹脂。
【請求項5】
ピロガロール化合物とSn-C結合を有していない錫(II)化合物の重量比(ピロガロール化合物/錫(II)化合物)が0.01〜0.5である、請求項1〜4いずれか記載の縮重合系樹脂。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の縮重合系樹脂を含有してなる電子写真用トナー。
【請求項7】
Sn-C結合を有していない錫(II)化合物と互いに隣接する3個の水素原子が水酸基で置換されたベンゼン環を有するピロガロール化合物との存在下、原料モノマーを縮重合させる、縮重合系樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2009−29997(P2009−29997A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197985(P2007−197985)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】