説明

縮重合系樹脂

【課題】チタン化合物の触媒活性能を高め、反応時間の短縮化に有効な縮重合反応用助触媒を用いて得られる縮重合系樹脂であって、トナー用結着樹脂として用いた際にも良好な帯電性を有する縮重合系樹脂及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】式(A):
Ti(X)n(Y)m (A)
(式中、Xは炭素数4〜8の置換アミノ基、Yは置換基を有していてもよい炭素数2〜28のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜28のアルケニルオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜28のアシルオキシ基、n及びmは1〜3の整数であり、nとmの和は4である)
で表されるチタン化合物と互いに隣接する3個の水素原子が水酸基で置換されたベンゼン環を有するピロガロール化合物との存在下、原料モノマーを縮重合させて得られる縮重合系樹脂及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム、シート、繊維、電子写真用トナー材料等の各種用途に用いられる縮重合系樹脂及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、ポリアミド等の縮重合系樹脂は、その化学的、物理的性質を利用して、フィルム、シート、繊維等の各種用途に用いられており、得られる樹脂の用途に応じて、縮重合反応を促進する触媒や触媒の活性能を高める助触媒も各種検討されている。
【0003】
例えば、トナーの結着樹脂に用いられる縮重合系樹脂の製造に用いられる触媒としては、触媒活性のみならず、帯電性等のトナー性能に与える影響を考慮して、酸化ジブチル錫等の錫化合物が汎用されているが、近年、安全性等の観点から、酸化ジブチル錫等のSn−C結合を有する錫化合物よりも、チタン化合物が触媒として好ましく使用される傾向がある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−201342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特定のチタン化合物を触媒として使用すると、反応時間が極端に長くなるという課題がある。また、後述のチタン化合物を用いて得られた樹脂をトナーの結着樹脂として用いると、失活後、チタン化合物のアミノ基が何らかの影響を及ぼし、トナーの帯電性が低下するという課題もある。
【0005】
本発明の課題は、チタン化合物の触媒活性能を高め、反応時間の短縮化に有効な縮重合反応用助触媒を用いて得られる縮重合系樹脂であって、トナー用結着樹脂として用いた際にも良好な帯電性を有する縮重合系樹脂及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
〔1〕 式(A):
Ti(X)n(Y)m (A)
(式中、Xは炭素数4〜8の置換アミノ基、Yは置換基を有していてもよい炭素数2〜28のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜28のアルケニルオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜28のアシルオキシ基、n及びmは1〜3の整数であり、nとmの和は4である)
で表されるチタン化合物と互いに隣接する3個の水素原子が水酸基で置換されたベンゼン環を有するピロガロール化合物との存在下、原料モノマーを縮重合させて得られる縮重合系樹脂、並びに
〔2〕 式(A):
Ti(X)n(Y)m (A)
(式中、Xは炭素数4〜8の置換アミノ基、Yは置換基を有していてもよい炭素数2〜28のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜28のアルケニルオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜28のアシルオキシ基、n及びmは1〜3の整数であり、nとmの和は4である)
で表されるチタン化合物と互いに隣接する3個の水素原子が水酸基で置換されたベンゼン環を有するピロガロール化合物との存在下、原料モノマーを縮重合させる、縮重合系樹脂の製造方法であって、前記式(A)で表されるチタン化合物と前記ピロガロール化合物を縮重合反応開始前に反応系に添加する、縮重合系樹脂の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の縮重合系樹脂は、特定のチタン化合物とピロガロール化合物との併用により、チタン化合物の触媒活性能が高められ、反応時間が短縮される樹脂であって、トナー用結着樹脂として用いた際にも良好な帯電性を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の縮重合系樹脂は、特定のチタン化合物と互いに隣接する3個の水素原子が水酸基で置換されたベンゼン環を有するピロガロール化合物の存在下、原料モノマーを縮重合させて得られる。チタン化合物、特に後述のチタン化合物は、初期触媒活性は非常に高いものの、失活が非常に早いという欠点を有する。このため、従来使用されている酸化ジブチル錫に比べて反応初期の触媒活性機能は高いものの、持続性が弱いため、極端に反応時間が長くなる。しかしながら、理由は不明なるも、前記ピロガロール化合物を共存させることにより、チタン化合物の触媒活性の低下が抑制され、高い触媒活性が維持されるため、反応時間を短縮することができる。その結果、熱履歴の少ない縮重合系樹脂が得られ、反応時間の短縮に伴い、低分子量成分や揮発性有機成分の増大を防止することもできる。また、後述のチタン化合物を用いて得られた樹脂をトナーの結着樹脂として用いた際の帯電性における課題に対しても、前記ピロガロール化合物を併用して得られた本発明の縮重合系樹脂は、トナー用結着樹脂として用いても、良好な帯電性を維持することができる。
【0009】
前記ピロガロール化合物としては、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4-テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート等のカテキン誘導体等が挙げられ、これらの中では、得られる樹脂の透明性の観点から、式(I):
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、R1〜R3はそれぞれ独立して、水素原子又は−COOR4(R4は水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基を示す)を示す)
で表される化合物が好ましい。式中、R4の炭化水素基の炭素数は、1〜8が好ましく、反応活性の観点から、炭素数1〜4がより好ましい。式(I)で表される化合物のなかでは、R1及びR3が水素原子、R2が水素原子又は−COOR4である化合物がより好ましい。具体例としては、ピロガロール(R1〜R3:水素原子)、没食子酸(R1及びR3:水素原子、R2:−COOH)、没食子酸エチル(R1及びR3:水素原子、R2:−COOC25)、没食子酸プロピル(R1及びR3:水素原子、R2:−COOC37)、没食子酸ブチル(R1及びR3:水素原子、R2:−COOC49)、没食子酸オクチル(R1及びR3:水素原子、R2:−COOC817)、没食子酸ラウリル(R1及びR3:水素原子、R2:−COOC1225)等の没食子酸エステル等が挙げられ、樹脂の透明性の観点からは、没食子酸及び没食子酸エステルが好ましい。
【0012】
前記ピロガロール化合物とともに、縮重合反応用触媒として用いられるチタン化合物は、式(A):
Ti(X)n(Y)m (A)
(式中、Xは炭素数4〜8の置換アミノ基、Yは置換基を有していてもよい炭素数2〜28のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜28のアルケニルオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜28のアシルオキシ基、好ましくはアルコキシ基、n及びmは1〜3の整数であり、nとmの和は4である)
で表されるチタン化合物である。
【0013】
式(A)において、Xで表される置換アミノ基の炭素数は、6が好ましい。なお、本発明における置換アミノ基とは、チタン原子と直接結合することのできる窒素原子を有する基であり、水酸基を有していてもよいアルキルアミノ基、アミノ基が4級化された4級カチオン基等が挙げられ、好ましくは4級カチオン基である。かかるアミノ基は、例えばハロゲン化チタンをアミン化合物と反応させることにより生成させることができ、かかるアミン化合物としてはモノアルカノールアミン化合物、ジアルカノールアミン化合物、トリアルカノールアミン化合物等のアルカノールアミン化合物、トリアルキルアミン等のアルキルアミン化合物等が挙げられ、これらの中ではアルカノールアミンが好ましく、トリアルカノールアミンがより好ましい。
【0014】
また、Yで表される基の炭素数は、2〜10が好ましく、2〜5がより好ましい。
【0015】
さらに、本発明の効果の観点から、Xで表される基がYで表される基よりも炭素数が多いことが好ましく、その炭素数の差は、好ましくは1〜6、より好ましくは2〜4である。
【0016】
なお、式(A)において、Yで表される基は、水酸基、ハロゲン等の置換基を有していてもよいが、無置換又は水酸基を置換基とするものが好ましく、無置換のものがより好ましい。
【0017】
式(A)で表されるチタン化合物の具体例としては、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(C37O)2〕、チタンジイソプロピレートビスジエタノールアミネート〔Ti(C4102N)2(C37O)2〕、チタンジペンチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(C511O)2〕、チタンジエチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(C25O)2〕、チタンジヒドロキシオクチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(OHC816O)2〕、チタンジステアレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(C1837O)2〕、チタントリイソプロピレートトリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)(C37O)3〕、チタンモノプロピレートトリス(トリエタノールアミネート)〔Ti(C6143N)3(C37O)〕等が挙げられる。
【0018】
縮重合反応として、代表的な例としては、カルボキシル基と水酸基の脱水縮合によりエステル結合(-COO-)を有するポリエステルユニット、カルボキシル基とアミノ基の脱水縮合によりアミド結合(-CONH-)を有するポリアミドユニット、エステル結合とアミド結合の両方を有するポリエステルポリアミドユニット等の縮重合系樹脂ユニットを形成する反応等が挙げられ、エステル結合を有する縮重合系樹脂ユニットの形成において、本発明の効果がより顕著に発揮される。なお、本発明においては、異なる原料モノマー間の反応に限らず、異種官能基を1分子内にもつモノマー、例えば、水酸基とカルボキシル基を有する乳酸から、脱水縮合によりポリ乳酸を生成させる反応も縮重合反応に含まれる。
【0019】
ポリエステルユニットの原料モノマーとしては、通常、アルコール成分とカルボン酸成分とが用いられる。
【0020】
アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等の、式(II):
【0021】
【化2】

【0022】
(式中、R5Oはアルキレンオキシ基であり、R5は炭素数2又は3のアルキレン基、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示す正の数であり、xとyの和は1〜16、好ましくは1.5〜5である)
で表されるビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブテンジオール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール、グリセリン等の3価以上の多価アルコール等が挙げられる。
【0023】
カルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸;及びこれらの酸の無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル;ロジン;フマル酸、マレイン酸、アクリル酸等で変性されたロジン等が挙げられる。上記のような酸、これらの酸の無水物、及び酸のアルキルエステルを、本明細書では総称してカルボン酸化合物と呼ぶ。本発明においては、帯電性の観点から、芳香族ジカルボン酸化合物が好ましい。芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、70モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましい。
【0024】
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、分子量調整や耐オフセット性向上の観点から、適宜含有されていてもよい。
【0025】
さらに、ポリエステルポリアミドユニットやポリアミドユニットにおけるアミド結合を形成するための原料モノマーとしては、公知の各種ポリアミン、アミノカルボン酸類、アミノアルコール等が挙げられ、好ましくはヘキサメチレンジアミン及びε-カプロラクタムである。
【0026】
なお、以上の原料モノマーには、通常開環重合モノマーに分類されるものも含まれているが、これらは、他のモノマーの縮重合反応で生成する水等の存在により加水分解して縮重合に供されるため、広義には縮重合系樹脂の原料モノマーに含まれると考えられる。
【0027】
縮重合反応における前記ピロガロール化合物の存在量は、縮重合反応に供される原料モノマー100重量部に対して、0.001〜1.0重量部が好ましく、0.002〜0.5重量部がより好ましく、0.005〜0.3重量部がさらに好ましく、0.01〜0.3重量部がさらに好ましい。ここで、ピロガロール化合物の存在量とは、縮重合反応に供したピロガロール化合物の全配合量を意味する。
【0028】
一方、前記式(A)で表されるチタン化合物の存在量は、縮重合反応に供される原料モノマー100重量部に対して、0.01〜2.0重量部が好ましく、0.1〜1.5重量部がより好ましく、0.2〜1.0重量部がさらに好ましい。ここで、式(A)で表されるチタン化合物の存在量とは、縮重合反応に供した式(A)で表されるチタン化合物の全配合量を意味する。
【0029】
ピロガロール化合物と式(A)で表されるチタン化合物の重量比(ピロガロール化合物/チタン化合物)は、縮重合反応時間を短縮する観点から、0.001〜0.5が好ましく、0.005〜0.3がより好ましく、0.01〜0.2がさらに好ましい。
【0030】
縮重合反応は、式(A)で表されるチタン化合物及びピロガロール化合物との存在下、不活性ガス雰囲気中にて、180〜250℃の温度で行うことが好ましい。式(A)で表されるチタン化合物とピロガロール化合物は、両者を混合して反応系に添加してもよく、別々に添加してもよい。また、カルボン酸成分やアルコール成分と混合して添加してもよい。式(A)で表されるチタン化合物及びピロガロール化合物を反応系に添加する時期は、反応開始前及び反応途中のいずれであってもよいが、縮重合反応の促進に対してより高い効果が得られる観点から、反応温度に達するより前の時点であることが好ましく、反応開始前であることがより好ましい。なお、本発明において、反応開始前とは、縮重合反応に伴う水が生成されていない状態を意味する。
【0031】
本発明において、縮重合系樹脂とは、縮重合系樹脂ユニットを含む樹脂をいい、前記縮重合反応により得られるポリエステル、ポリエステルポリアミド、ポリアミド等の縮重合系樹脂ユニットからなる樹脂だけでなく、前記縮重合系樹脂ユニットを含む、2種以上の樹脂成分を有するハイブリッド樹脂、例えば、縮重合系樹脂ユニットと付加重合系樹脂ユニットとが部分的に化学結合したハイブリッド樹脂も含まれる。
【0032】
また、縮重合系樹脂は、実質的にその特性を損なわない程度に変性されていてもよい。例えば、変性されたポリエステルとしては、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルをいう。
【0033】
本発明の縮重合系樹脂は、電子写真用トナーの結着樹脂としても好適に用いることができる。
【0034】
結着樹脂の軟化点としては、トナーの定着性、保存性及び耐久性の観点から、90〜160℃が好ましく、95〜155℃がより好ましく、98〜150℃がさらに好ましい。ガラス転移点は、同様の観点から、45〜85℃が好ましく、50〜80℃がより好ましい。帯電性と環境安定性の観点から、酸価は、1〜90mgKOH/gが好ましく、5〜90mgKOH/gがより好ましく、5〜88mgKOH/gがさらに好ましく、水酸基価は、1〜80mgKOH/gが好ましく、8〜60mgKOH/gがより好ましく、8〜55mgKOH/gがさらに好ましい。
【0035】
本発明の縮重合系樹脂を含有した電子写真用トナーには、本発明の効果を損なわない範囲で、公知の結着樹脂、例えば、スチレン-アクリル樹脂等のビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等の他の樹脂が併用されていてもよいが、本発明の縮重合系樹脂の含有量は、結着樹脂中、70重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましく、実質的に100重量%であることがさらに好ましい。
【0036】
トナーには、さらに、着色剤、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が適宜含有されていてもよい。
【0037】
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。着色剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、2〜10重量部がより好ましい。
【0038】
電子写真用トナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。溶融混練法による粉砕トナーの場合、例えば、結着樹脂、着色剤、荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。一方、トナーの小粒径化の観点からは、重合法によるトナーが好ましい。トナーの表面には、疎水性シリカ等の外添剤が添加されていてもよい。
【0039】
トナーの体積中位粒径(D50)は、3〜15μmが好ましく、3〜10μmがより好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
【0040】
得られたトナーは、一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。
【実施例】
【0041】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター(島津製作所、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出する。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0042】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法に基づき測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、クロロホルムに変更した。
【0043】
〔ワックスの融点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、融解熱の最大ピーク温度を融点とする。
【0044】
〔トナーの体積中位粒径(D50)〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)5%電解液
分散条件:分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させる。
測定条件:ビーカーに電解液100mlと分散液を加え、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度で、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
【0045】
実施例1〜17、比較例1〜7及び参考例1
ポリオキシプロピレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA-PO)6520g、テレフタル酸3320g(BPA-PO100モルに対して100モル)、表1に示す触媒及び助触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、235℃で反応させ、各経過時間での反応水量から、反応率(生成反応水量(mol)/理論生成水量(mol)×100)を算出した。なお、得られた樹脂を、触媒、助触媒の種類等によってA〜Fに分類し、表1にその物性と合わせて示す。
【0046】
【表1】

【0047】
実施例18及び比較例8
1,4-ブタンジオール4500g、フマル酸5800g(1,4-ブタンジオール100モルに対して100モル)、表2に示す触媒及び助触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、190℃で縮重合反応させて、ポリエステルを得た。酸価が35mgKOH/gに到達した後、8kPaで真空反応させ、0.5時間毎に一部を採取して酸価を測定し、酸価が5mgKOH/gに達する時間を求めた。結果を表2に示す。触媒、助触媒及び分類の略号は表1と同じである。
【0048】
【表2】

【0049】
実施例19〜25及び比較例9〜11
ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA-PO)5420g(80モル)、ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA-EO)1227g(20モル)、テレフタル酸2324g(BPA-POとBPA-EOの総量100モルに対して70モル)、表3に示す触媒及び助触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、235℃で反応率(生成反応水量(mol)/理論生成水量(mol)×100)が95%に到達するまで反応させた後、トリメリット酸(TMA)768g(BPA-POとBPA-EOの総量100モルに対して20モル)を添加し、210℃で軟化点が115℃に達するまで反応させて、ポリエステルを得た。結果を表3に示す。触媒、助触媒及び分類の略号は表1と同じである。
【0050】
得られたポリエステル100重量部、カーボンブラック「MOGUL L」(キャボット社製)4重量部、負帯電性荷電制御剤「T-77」(保土谷化学工業社製)1重量部及びポリプロピレンワックス「NP-105」(三井化学社製、融点140℃)1重量部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出し機を用い、ロール回転速度200r/min、ロール内の加熱温度80℃で溶融混練した。混合物の供給速度は20kg/hr、平均滞留時間は約18秒であった。得られた溶融混練物を冷却、粗粉砕した後、ジェットミルにて粉砕し、分級して、体積中位粒径(D50)が8.0μmの粉体を得た。
【0051】
得られた粉体100重量部に、外添剤として疎水性シリカ「アエロジル R-972」(日本アエロジル(株)製)0.1重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合することにより、トナーを得た。
【0052】
得られたトナー97重量部に、鉄粉キャリア「FL93-100」(パウダーテック社製、体積平均粒径:100μm)を混合し、ボールミルで10分間ブレンド後、帯電量を測定した。結果を表3に示す。
【0053】
【表3】

【0054】
以上の結果より、縮重合反応において、ピロガロール化合物を助触媒として触媒とともに用いることにより、反応率の追跡、反応時間の結果から、触媒活性が高められ、反応が促進されていることが分かる。即ち、実施例1〜17では、分類された群の中の比較例と対比して、触媒活性の失活防止が確認され、また、別のモノマー組成で縮重合させた実施例18と比較例8の対比からも、触媒活性の失活防止が確認できた。さらに、実施例19〜25では、分類された群の中の比較例と対比して、同程度まで反応を進行させるのに必要とされる反応時間が格段に短縮されている。また、実施例19〜25で得られた樹脂は、トナー用結着樹脂としても、十分高い帯電量を有しており、良好な帯電性を発揮することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の縮重合系樹脂は、フィルム、シート、繊維、電子写真用トナー材料等の各種用途に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(A):
Ti(X)n(Y)m (A)
(式中、Xは炭素数4〜8の置換アミノ基、Yは置換基を有していてもよい炭素数2〜28のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜28のアルケニルオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜28のアシルオキシ基、n及びmは1〜3の整数であり、nとmの和は4である)
で表されるチタン化合物と互いに隣接する3個の水素原子が水酸基で置換されたベンゼン環を有するピロガロール化合物との存在下、原料モノマーを縮重合させて得られる縮重合系樹脂。
【請求項2】
ピロガロール化合物が、式(I):
【化1】

(式中、R1〜R3はそれぞれ独立して、水素原子又は−COOR4(R4は水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基を示す)を示す)
で表される、請求項1記載の縮重合系樹脂。
【請求項3】
ピロガロール化合物と式(A)で表されるチタン化合物の重量比(ピロガロール化合物/チタン化合物)が0.001〜0.5である、請求項1又は2記載の縮重合系樹脂。
【請求項4】
縮重合系樹脂の原料モノマー100重量部に対して、式(A)で表されるチタン化合物の存在量が0.01〜2.0重量部、ピロガロール化合物の存在量が0.001〜1.0重量部である、請求項1〜3いずれか記載の縮重合系樹脂。
【請求項5】
式(A)において、Xで表される基がYで表される基よりも炭素数が多い、請求項1〜4いずれか記載の縮重合系樹脂。
【請求項6】
式(A):
Ti(X)n(Y)m (A)
(式中、Xは炭素数4〜8の置換アミノ基、Yは置換基を有していてもよい炭素数2〜28のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜28のアルケニルオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜28のアシルオキシ基、n及びmは1〜3の整数であり、nとmの和は4である)
で表されるチタン化合物と互いに隣接する3個の水素原子が水酸基で置換されたベンゼン環を有するピロガロール化合物との存在下、原料モノマーを縮重合させる、縮重合系樹脂の製造方法であって、前記式(A)で表されるチタン化合物と前記ピロガロール化合物を縮重合反応開始前に反応系に添加する、縮重合系樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2009−29998(P2009−29998A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197987(P2007−197987)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】