説明

繊維、それを含む圧着シール用シート及び圧着シート

【課題】圧着シール強度が高く、且つ、環境の変化によりシール強度の変化が無く、製造工程が簡素化でき、ヒートシール強度が高く、圧着シール面を剥離したときに当該面の毛羽立ちが少ない圧着シール用シートを得ることにある。
【解決手段】数平均分子量(Mn)が200〜20000のエチレン系重合体ワックスを主成分とする繊維を提供する。また、当該繊維を含む合成パルプを提供する。更には、当該繊維又は当該合成パルプからなる合成シート、圧着シール用シート及び圧着シートを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワックスを含む繊維、それを用いたシートに関する。更には当該シートを用いた、圧力のみで接着可能で、容易に剥離可能(イージーピール)な圧着シール用シート及び圧着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、容易に剥離可能(イージーピール)な接着剤をコーティングしたシートを用いた圧着はがきが広く用いられている。圧着はがきは、主に接着成分として天然ゴムラテックスを使用している。天然ゴムラテックスを使用したシートは、温度、湿度(水分)、紫外線等の環境の変化により、接着力が変化し、輸送や保管時に積み上げられたシートが自重により、微接着(ブロッキング)してしまう問題が発生する場合がある。また、このシートの接着剤は、基材シート製造と別工程でコーティングする製法であり、製造コストが高いものとなっている。
これらの問題点を解決する為に、接着剤含有層上に保護層を設けたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)また、水浸透防止剤を塗工したものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、これらのシートは構造が複雑であり、環境の変化によりシール強度の変化が生じたり、接着剤のコーティングが別工程となるので、製造コストが高くなる虞がある。
【0003】
【特許文献1】特開平3−140298号公報
【特許文献2】特開2000-280656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、特にダイレクトメール等の圧着したシートを剥離し、剥離面を有する圧着シートとして好ましく用いられる圧着シール用シートを得ることであって、圧着シール強度が高く、且つ、環境の変化によりシール強度の変化が無く、製造工程が簡素化でき、ヒートシール強度が高く、圧着シール面を剥離したときに当該面の毛羽立ちが少ない圧着シール用シートを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為に鋭意検討した結果、エチレン系重合体ワックスを主成分とした繊維を用いてなる圧着シール用シートが、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下のようになる。
【0006】
『[1]数平均分子量(Mn)が200〜20000のエチレン系重合体ワックスを主成分とする繊維。
[2]数平均分子量(Mn)が400〜10000のエチレン系重合体ワックスを主成分とする[1]記載の繊維。
[3]エチレン系重合体ワックスが、密度900〜985kg/mである[1]又は[2]記載の繊維。
[4]他成分として、高密度ポリエチレンを含有する[1]〜[3]のいずれかに記載の繊維。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載の繊維を含有する合成パルプ。
[6][1]〜[4]のいずれかに記載の繊維又は請求項5記載の合成パルプを含む合成シート。
[7]他の繊維を含有する[6]記載の合成シート。
[8]他の繊維が天然繊維である[7]記載の合成シート。
[9][6]〜[8]のいずれかに記載の合成シートを少なくとも1層含む積層体。
[10][9]記載の積層体からなる圧着シール用シート。
[11][10]記載の圧着シール用シートを複数枚積層してなる圧着シート。』
【発明の効果】
【0007】
本発明の繊維はエチレン系重合体ワックスを主成分としているので、圧着シール用シートとして使用した場合に、圧力のみで接着可能であり、またある程度の力で剥離すること可能である。更には環境の変化により剥離に要する力の変動が無く、更には接着剤のコーティング工程を省略でき、更には剥離した面の毛羽立ちが少ない。
したがって、本発明の圧着シール用シートを2枚積層して圧着シートとした場合には、ダイレクトメール等、2枚のシートの内側に印刷をして顧客先で剥離するのに好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
エチレン系重合体ワックス
本発明に係わるエチレン系重合体ワックスは、エチレン単独重合体またはエチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとの共重合体で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量(Mn)が200〜20000、好ましくは400〜10000、更に好ましくは800〜8500の範囲にある重合体である。
エチレンと共重合されるα−オレフィンとしては、好ましくは炭素原子数3〜10のα−オレフィンであり、より好ましくはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどが挙げられ、好ましくはプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンである。
【0009】
なお、数平均分子量(Mn)は、GPCによるポリスチレン換算の値であり、GPCによる測定は、温度140℃、溶媒オルトジクロロベンゼンの条件下で行われる。
【0010】
本発明に係わるエチレン系重合体ワックスは、密度勾配管法で測定した密度が好ましくは850〜985kg/m3、より好ましくは900〜985kg/m3、さらに好ましくは940〜985kg/m3の範囲にある。
【0011】
本発明に係わるエチレン系重合体ワックスは、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が好ましくは65〜150℃、より好ましくは70〜130℃、さらに好ましくは100〜130℃の範囲にある。
【0012】
本発明に係わるエチレン系重合体ワックスは、アセトン抽出分量が、好ましくは0〜20重量%、より好ましくは0〜15重量%の範囲にある。なお、アセトン抽出分量は以下のようにして測定される。ソックスレー抽出器(ガラス製)により、フィルター(ADVANCE社製、No.84)を使用し、エチレン系重合体ワックス10gをフィルター上にセットして、下段の丸底フラスコ(300ml)にアセトン200mlを装入し70℃の湯浴で5時間抽出を行う。
本発明に係るエチレン系重合体ワックスは、例えば周期表第4族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物および/またはイオン化イオン性化合物とからなる以下のようなメタロセン系触媒を用いて製造することができる。
【0013】
繊維
本発明の繊維は、前記エチレン系重合体ワックスを主成分とする合成繊維である。主成分とするとは、繊維中に50重量%以上、好ましくは60〜90重量%、更に好ましくは70〜80重量%含んでいることをいう。
【0014】
本発明の繊維は、用途に応じて前記ワックス以外に他の化合物を含有していても良く、その中でも、熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、前記ワックスと混合して繊維化できる限り、種々公知の熱可塑性樹脂を使用し得る。
熱可塑性樹脂の中でも、ポリオレフィンであることが好ましい。ポリオレフィンとしては、炭素数2〜6のα−オレフィンの単独重合体、あるいは相互の共重合体、さらにはこれらと他の共重合性のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル等との共重合体、さらにはこれら単独重合体や共重合体に不飽和カルボン酸モノマーを過酸化物でグラフト反応させて得られるポリマーが好ましく例示される。特に、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテンまたは4−メチル−1−ブテンの結晶性の重合体および共重合体が好ましく例示される。それらの中でもエチレン系樹脂であることが好ましく、具体的には、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンやエラストマー(エチレン−α−オレフィン共重合体)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、エチレン−メタクリル酸共重合体、マレイン酸やアクリル酸による酸変性ポリエチレンが挙げられる。これらのポリオレフィンは、発明の趣旨から明らかなようにどのような製造法で製造されたものであっても良い。
本発明に係る熱可塑性樹脂は、前記ワックスに比べて分子量あるいは溶融粘度が大きい重合体であり、通常、MFR(ASTM D1238、荷重2160g)が100g/10分以下(エチレン系重合体の場合、温度190℃;プロピレン系重合体の場合、230℃)の重合体である。
これらエチレン系樹脂の中でも、高密度ポリエチレン、好ましくは密度が945〜985kg/m、MFR(ASTM D1238、荷重2160g、190℃)が1〜30g/10分の範囲にある高密度ポリエチレンが好ましい。
エチレン系重合体ワックスに熱可塑性樹脂を10重量%以上混合することにより、エチレン系重合体ワックスを繊維化することが容易となるので好ましい。
【0015】
本発明に係わる繊維は、前記エチレン系重合体ワックスと他の化合物との混合比率は、使用する他の化合物の種類や用途に応じて種々選択できる。他の化合物としてエチレン系樹脂を用いる場合には、エチレン系重合体ワックスを50〜90重量%、エチレン系樹脂を50〜90重量%で混合することが好ましい。また、その混合比率は用途に応じて種々選択できるが、エチレン系重合体ワックスとエチレン系樹脂とが、重量比で通常50:50〜90:10、好ましくは60:40〜80:20である。このような範囲にあれば、例えば圧着シートに用いた際に圧着シール強度が高く、且つ、環境の変化によりシール強度の変化が無いシートが得られる。
【0016】
本発明の繊維は、繊維長さが短い短繊維であっても、連続した長繊維であっても良い。例えば、溶融紡糸した連続繊維、スパンボンド法やメルトブロー法により得られる繊維、連続した繊維を切断したカットファイバー又は分岐状繊維が挙げられる。これらの中でも、繊維同士の絡み合いは合成シートの表面から発塵を抑える効果があるので、分岐状繊維が好ましい。分岐状繊維とは、1本の繊維が多数に枝分かれした構造を有しており、例えば特開2007−77519号公報に示すような形態の繊維である。分岐状繊維は、光学顕微鏡または電子顕微鏡で観察することにより確認することができる。
【0017】
合成パルプ
本発明に係る合成パルプは、前記繊維、好ましくは前記分岐状繊維が、多数集合した繊維の集合体であり、通常、繊維同士が特定方向に整列せず、(分岐した)繊維同士が互いに絡み合ったり、分岐部分が交差したりして入り込んでいる形態を有する。
本発明に係る合成パルプは、1本の繊維の最長部分の平均値(以下、「平均繊維長」という。)が、通常0.05〜50mmであり、0.05〜10mmであるのが好ましく、0.1〜10mmであるのが特に好ましい。平均繊維長がこの範囲にあれば、当該繊維を集合体としたときに適度な嵩高性を有するので好ましい。平均繊維長は、例えば以下の手順で求めることができる。
【0018】
濃度0.02重量%になるように繊維の集合体を水に分散し、フィンランド国のメッツォオートメーション社製自動繊維測定機(製品名;FiberLab-3.5)で一本一本の繊維の長さを測定する。当該測定機では、キャピラリー中を流れる際の繊維にキセノンランプ光を照射してCCD(電荷結合素子)センサーで映像信号を採取し、画像解析する。繊維の長さは0.05mm刻み(級)で、繊維の長さと各繊維の長さに該当する繊維の存在率(%)の両方を測定し、これらをもとに以下の式により平均繊維長を得る。測定は、12000〜13000本の繊維について行う。
【0019】
各級の平均繊維長Lnを求める。
Ln=ΣL/N
L:1つの級における一本一本の実測繊維長
N:1つの級における繊維本数
これらから以下の式により平均繊維長を求める。
平均繊維長(mm)=Σ(Nn×Ln)/Σ(Nn×Ln
Nn:各級の繊維本数
Ln:各級の数平均繊維長(mm)
【0020】
本発明の分岐状繊維は、直径(以下、「繊維径」という)の最小値が0.5μm程度であることが好ましく、その最大値は50μm程度であることが好ましい。繊維径がこの範囲にあれば、当該繊維を集合体としたときに適度な嵩高性を有するので好ましい。繊維径は、1本、1本の繊維を光学顕微鏡あるいは、電子顕微鏡で観察する事で測定することができる。具体的には、例えば、繊維径の最大値および最小値は、次のようにして測定することができる。キーエンス社製デジタルHFマイクロスコープVH8000にて倍率100倍で繊維を観察し、繊維径が10μm以上の部分を無作為に100箇所選択し、選択部分の繊維径を測定し、該測定値のうち最大の値を「繊維径の最大値」とする。日本電子社製走査型電子顕微鏡JSM6480にて倍率3000倍で繊維を観察し、繊維径が10μm未満の部分を無作為に100箇所選択し、選択部分の繊維径を測定し、該測定値の最小の値を「繊維径の最小値」とする。
【0021】
本発明の合成パルプは、本発明の目的を損なわない範囲において他の種々の化合物を含有していても良い。例えば、従来公知の抗菌剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、各種安定剤、酸化防止剤、分散剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、充填剤等が挙げられる。これらのうち、複数の化合物を含有していても良く、その含有量は目的に応じて適宜選択できる。
【0022】
分岐状繊維の製造方法
本発明の合成パルプは、種々の方法により得られるが、通常はフラッシュ法で製造することが可能である。フラッシュ法とは、高圧でポリマーを溶媒に溶解したものを減圧下に噴出することによって溶媒を揮散させ、さらに必要に応じワーリング・ブレンダー、ディスクリファイナー等にて繊維を切断および叩解することで不織布を製造する方法である。特に、特開昭48−44523号公報に記載されている方法により、エチレン系重合体ワックス及び必要に応じて高密度ポリエチレンを混合した溶液を懸濁剤の存在下、水媒体に分散させたものをフラッシュさせると、繊維状物質が乱雑に分岐した形状を有する本発明の分岐状繊維の集合体である合成パルプが得られる。
フラッシュ法は、具体的には、水と懸濁剤の存在下にエチレン系重合体ワックス及び必要に応じて高密度ポリエチレンを混合した溶液をフラッシュする。最初に、エチレン系重合体ワックス等を、該エチレン系重合体ワックス等が溶解可能な溶剤に溶解し、前述した懸濁剤及び水を加えてエマルジョンを得る。
【0023】
溶剤としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素系、ベンゼン、トルエン等の芳香族系、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭素類等の中から、エチレン系重合体ワックス等を溶解させることができ、且つ、フラッシュ時に揮発して、得られた繊維の集合体に残存しにくいものを適宜選択する。
【0024】
懸濁剤の添加量は、繊維中、懸濁剤が0.1〜5質量%となる量とすることが好ましい。製造過程において、添加した懸濁剤の一部が抜けるような操作をする場合は多めに添加する等、適宜調整し添加する。添加量の目安としては、原料樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部である。懸濁剤を添加することにより、エマルションを安定化することができるとともに、フラッシュ後の繊維切断を水中で安定的に行うことができる。
【0025】
次に、得られたエマルジョンを、100〜200℃、好ましくは130〜150℃に加熱し、圧力(絶対圧力)0.1〜5MPa、好ましくは圧力0.5〜1.5MPaの加圧状態にし、ノズルより減圧下へ噴出(フラッシュ)すると同時に溶剤を気化させる。減圧の条件は、圧力1kPa〜95kPaとすることが好ましく、噴出先は窒素雰囲気等の不活性雰囲気であることが好ましい。本発明において、「圧力」とは絶対圧力のことを示す。
上記のようにしてフラッシュすることにより、分岐構造を有する不定長の繊維が得られる。この繊維は、さらにワーリング・ブレンダー、ディスクリファイナー等にて切断および叩解して、所望の長さにすることが好ましい。そのとき、繊維を0.5〜5g/リットル濃度の水スラリーの状態にして上記切断・叩解処理を行うことが好ましい。
【0026】
以上説明した方法によれば、分岐構造を有する繊維、特に本発明に係る分岐状繊維を好ましく製造することができる。尚、分岐状繊維に、前記の添加剤を混合する場合には、エマルジョンの段階で添加することが好ましい。そうすることで、分岐状繊維に成形した後も添加剤の効果を長期間保持することが可能となる。
【0027】
合成シート
本発明の合成シートは、前記の繊維又は合成パルプを含有する。
本発明の合成シートは、必要に応じて他の繊維を含んでいても良い。他の繊維としては、天然繊維であっても合成繊維であっても良い。天然繊維としては、NBKP(針葉樹晒しクラフトパルプ)、LBKP(広葉樹晒しクラフトパルプ)の木材パルプに加え、マニラ麻、楮、三椏、雁皮などの非木材パルプ等の天然パルプ、レーヨン、コットンが挙げられる。この中でもNBKPがシートの引っ張り強度が高い点で好ましい。他のシートの厚さは用途目的に応じて適宜選択することができる。
本発明の合成シートは、前記のワックスを主成分とする繊維を50〜100重量%含んでいることが好ましく、更には30〜80重量%含んでいることが好ましい。本発明の低発塵紙合成シートとしては、ワックスを主成分とする繊維75〜90重量%及びNBKP25〜10重量%とからなることが好ましい。
本発明の合成シートは、用途に応じて種々選択できるが、通常、目付けが5〜50g/mの範囲にあることが好ましい。
本発明の合成シートは、前記のポリオレフィンワックスや他の繊維の他に、本発明の目的を損なわない範囲で他の成分を含むことができる。例えば、従来公知の耐熱安定剤、耐候安定剤、各種安定剤、酸化防止剤、分散剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、充填剤等が挙げられる。これらは複数使用してもよく、その含有量は、用途に応じて適宜選択できる。
【0028】
積層体
本発明の積層体は、前記の合成シートと基材層との積層体である。
基材層としては用途に応じて選択できるが、後述の圧着シール用シートとして用いる場合は、繊維製シートであることが好ましい。繊維製シートとしては、紙、織布、不織布等種々のものが挙げられ、その素材としても、天然繊維であっても、合成繊維であっても良い。天然繊維としては、NBKP(針葉樹晒しクラフトパルプ)、LBKP(広葉樹晒しクラフトパルプ)の木材パルプに加え、マニラ麻、楮、三椏、雁皮などの非木材パルプ等の天然パルプ、レーヨン、コットンが挙げられる。この中でもNBKPがシートの引っ張り強度が高い点で好ましい。他のシートの厚さは用途目的に応じて適宜選択することができる。
前記合成シートと基材層との積層は、種々公知の方法で行われる。例えば、合成シートと基材層とを予め作製しその後に積層する方法、いずれか一方のシートを先に作製しこれに連続して他方のシートを紡糸しながら積層する方法などが挙げられる。
前記の2つのシートは、湿式抄紙法により積層しても良いし、熱によって積層しても良いし、接着剤を塗布又は含浸等して積層しても良いし、接着性のある他の層を設けて積層しても良い。この中でも湿式抄紙法により積層する方法がコストのうえで好ましい。
【0029】
圧着シール用シート
本発明の圧着シール用シートは、前記積層体からなる。圧着シール用シートとは、圧力によってシート同士を接合するものである。本発明の圧着シール用シートは、圧力を加えることにより前記合成シート側を他の層に接合することができる。
【0030】
圧着シート
本発明の圧着シートは、前記の圧着シール用シートを複数枚積層してなる。圧着シート2枚を、それぞれエチレン系重合体ワックスを主成分とする合成繊維を含むシートが接合するように積層することが好ましい。
圧着シール用シートを構成するエチレン系重合体ワックスを主成分とする合成繊維を含むシートがエチレン系重合体ワックスを含むので、2枚の圧着シール用シートを重ねあわせ圧力をかけると、圧力により2枚のシート中のエチレン系重合体ワックスからなる繊維が互いに接着しあうので、圧力のみで接着することができる。また、合成繊維がシート表面にある程度、繊維が露出しているので繊維同士が絡み合うことも圧力のみで接着することができることの要因となる。
本発明の圧着シートは種々の用途に使用することができ、例えば、親展ハガキ、ダイレクトメール等に使用することができる。
【実施例】
【0031】
以下の評価方法で評価を行い、その結果を表1に示す。
[評価方法]
圧着シール強度の測定
2枚の同じ圧着シール用シートを繊維層同士が接合するように積層して、積層したものから15mm幅の試験片を切取った。積層は、圧着シール用シートを繊維層同士が接合するように重ね合わせ、カレンダーロール(由利ロール機械株式会社製)を用いてニップ圧150kN/mで圧着しておこなった。
試験片の圧着シール用シートの重ね合わせた部分をクロスヘッドスピード100mm/minで剥離し、その際の剥離強度(g/15mm)を測定して圧着シール強度とした。
ヒートシール強度の測定
2枚の同じ圧着シール用シートを繊維層同士が接合するように積層して、積層したものから15mm幅の試験片を切取った。積層は、圧着シール用シートを繊維層同士が接合するように重ね合わせ、カレンダーロール(由利ロール機械株式会社製)を用いてヒートシール(温度150℃、圧力2kg/cm2、ヒートシール時間1秒間、シールバーの幅10mm)。
試験片の圧着シール用シートのについて、クロスヘッドスピード100mm/minで圧着部を剥離し、その際の剥離強度(g/15mm)を測定してヒートシール強度とした。
【0032】
(実施例1)
(1)エチレン系重合体ワックスを主成分とする繊維の製造
密度980kg/m、分子量4000、融点128℃のエチレン系重合体ワックス(三井化学(株)製 商品名 エクセレックス(登録商標)40800)70重量%、及び、密度962kg/m、分子量10000、融点135℃の高密度ポリエチレン(三井化学(株)製 ハイゼックス(登録商標)2200J)30重量%を含む混合物を用いて、フラッシュ法で分岐状繊維の集合体からなる合成パルプを製造した。
(2)圧着シール用シートの製法
カナダ標準フリーネス(CSF)で350ccに調整したNBKPを得た。これを用いて角型手抄きシートマシーンで坪量110g/mの基材層を抄紙した。
合成シートとして、前記合成パルプ75重量%と前記のNBKP25重量%を混合し、角型手抄きシートマシーンを用いて坪量20g/mの合成シートを抄紙した。
基材層と合成シートとが湿潤した状態で、当該2層を重ね合わせ、ロータリードライヤーを用いて温度105℃で乾燥し、さらにカレンダーロール(由利ロール機械株式会社製)を用いてニップ圧20kN/m、速度2/min、常温でカレンダ処理を行うことで圧着シール用シートを得た。
この圧着シール用シートの、圧着シール強度は0.31N/15mm、ヒートシール強度は1.0N/15mmであった。その結果を表1に示した。
【0033】
(実施例2)
エチレン系重合体ワックスを、密度970kg/m、分子量10000、融点124℃のエチレン系重合体ワックス(三井化学(株)製 エクセレックス20700)とした以外は実施例1と同様にして圧着シール用シートを得た。
この圧着シール用シートの、圧着シール強度は0.23N/15mm、ヒートシール強度は0.9N/15mmであった。その結果を表1に示した。
【0034】
(実施例3)
エチレン系重合体ワックスを、密度970kg/m、分子量8000、融点127℃のエチレン系重合体ワックス(三井化学(株)製 ハイワックス800P)とした以外は実施例1と同様にして圧着シール用シートを得た。
この圧着シール用シートの、圧着シール強度は0.29N/15mm、ヒートシール強度は1.4N/15mmであった。その結果を表1に示した。
【0035】
(実施例4)
エチレン系重合体ワックスを、密度950kg/m、分子量900、融点116℃のエチレン系重合体ワックス(三井化学(株)製 ハイワックス100P)とした以外は実施例1と同様にして圧着シール用シートを得た。
この圧着シール用シートの、圧着シール強度は0.22N/15mm、ヒートシール強度は1.0N/15mmであった。その結果を表1に示した。
【0036】
(実施例5)
エチレン系重合体ワックスを、密度920kg/m、分子量1000、融点109℃のエチレン系重合体ワックス(三井化学(株)製 ハイワックス110P)とした以外は実施例1と同様にして圧着シール用シートを得た。
この圧着シール用シートの、圧着シール強度は0.12N/15mm、ヒートシール強度は0.6N/15mmであった。その結果を表1に示した。
【0037】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量(Mn)が200〜20000のエチレン系重合体ワックスを主成分とする繊維。
【請求項2】
数平均分子量(Mn)が400〜10000のエチレン系重合体ワックスを主成分とする請求項1記載の繊維。
【請求項3】
エチレン系重合体ワックスが、密度900〜985kg/mである請求項1又は2記載の繊維。
【請求項4】
他成分として、高密度ポリエチレンを含有する請求項1〜3のいずれかに記載の繊維。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の繊維を含有する合成パルプ。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の繊維又は請求項5記載の合成パルプを含む合成シート。
【請求項7】
他の繊維を含有する請求項6記載の合成シート。
【請求項8】
他の繊維が天然繊維である請求項7記載の合成シート。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれかに記載の合成シートを少なくとも1層含む積層体。
【請求項10】
請求項9記載の積層体からなる圧着シール用シート。
【請求項11】
請求項10記載の圧着シール用シートを複数枚積層してなる圧着シート。

【公開番号】特開2008−266832(P2008−266832A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111435(P2007−111435)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】