説明

繊維、生地及び衣料

【課題】ポリアミド繊維が有する染色性等の特性を維持しつつ、繊維の黄変や赤変の発生を抑制し、かつ、優れた消臭効果を有する繊維、生地及び衣料を提供する。
【解決手段】ポリアミド樹脂、酸性化合物及び酸化チタンを含有する繊維であって、前記ポリアミド樹脂は、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11及びナイロン12からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂であり、前記酸性化合物は、スチレン−無水マレイン酸共重合体、又は、酸無水物であり、前記ポリアミド樹脂100重量部に対して、前記酸性化合物を0.15〜3重量部、酸化チタンを2.5〜10重量部含有する繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド繊維が有する染色性等の特性を維持しつつ、繊維の黄変や赤変の発生を抑制し、かつ、優れた消臭効果を有する繊維、生地及び衣料に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂からなる繊維(以下、ポリアミド繊維ともいう)は、優れた化学的、機械的性質を有し衣料用及び産業資材用繊維として幅広く用いられている。このようなポリアミド繊維は、繊維を構成するポリアミド樹脂が分子鎖末端にアミノ基を有しており、酸性染料による染色性が良好であるという点でも優れた繊維である。
【0003】
しかしながら、このアミノ基は、酸性物質に対して活性であり、例えば、空気中の二酸化窒素ガス等の酸性ガスと反応した場合、ポリアミド繊維あるいはこのような繊維からなる布帛が着色して黄変することがあり、ポリアミド繊維製品の商品価値を著しく損なわれてしまうという問題があった。具体的には、自動車等の原動機からの排気ガスや、ファンヒータ等の石油暖房機器からの排気ガスによって、ポリアミド繊維に黄変が発生するという問題があった。
【0004】
このため、ポリアミド繊維については、従来から種々の黄変防止方法が提案されており、例えば、特許文献1には、紙材中に梱包・保護されるポリアミド繊維の黄変防止を目的として、アニオン系活性基を有する化合物と酢酸を含む溶液でポリアミド繊維を処理する方法が開示されている。特許文献1では、このような方法を用いることで、希硫酸や酢酸等による単一溶液処理と比較して、優れた黄変防止効果を得ることができると主張している。しかしながら、この方法では、処理に使用したアニオン系活性剤をアルカリ精練等で脱落させないと、染色工程における染着性が損なわれてしまうという問題があった。
【0005】
また、特許文献2には、ポリアミド系繊維を、アシル化剤を含む溶液で処理し、アミノ基を共有結合で封鎖する方法が提案されている。
しかしながら、この方法は、耐黄変性に優れてはいるが、水性媒体では、酸無水物を多量に用いないと耐黄変性が不充分になるという問題があった。更に、染色性に影響しない程度にアミノ基を封鎖することが難しく、ポリアミド系繊維の発色性が低下するという問題点もあった。
【0006】
近年の生活環境の向上に伴い、生活空間の一層の快適性を確保すべく、生活臭に対する関心はますます高まってきており、衣料分野、生活関連分野、衛生材料分野、インテリア分野、産業資材分野等において、消臭機能や抗菌機能を持つ製品が多数上市されている。
特に、衣料用品の分野では、これらを実際に身体に着用することから、様々な消臭加工技術が開発されており、インテリア用品を含めた他用途への展開も着実に進められている。
消臭機能を付与する上で考慮すべき悪臭の1つとして、排泄物の臭いがある。排泄物臭としては、尿が元になり菌に分解されて臭気を発するアンモニア臭があり、このアンモニア臭を除去して生活空間の快適性を一層充実させることが強く求められていた。
また、ポリアミド繊維を多く用いた衣料等においても、アンモニア臭等の悪臭に対する消臭性を付与することが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭55−47150号公報
【特許文献2】特開平4−272270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記現状に鑑み、ポリアミド繊維が有する染色性等の特性を維持しつつ、繊維の黄変や赤変の発生を抑制し、かつ、優れた消臭効果を有する繊維、生地及び衣料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリアミド樹脂、酸性化合物及び酸化チタンを含有する繊維であって、前記ポリアミド樹脂は、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11及びナイロン12からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂であり、前記酸性化合物は、スチレン−無水マレイン酸共重合体、又は、酸無水物であり、前記ポリアミド樹脂100重量部に対して、前記酸性化合物を0.15〜3重量部、酸化チタンを2.5〜10重量部含有する繊維である。以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明者は、鋭意検討の結果、特定のポリアミド樹脂を含有する繊維に、更に酸性化合物及び酸化チタンを所定量含有させることにより、流通過程や使用時における繊維の黄変や赤変の発生を抑制することができ、ポリアミド繊維が有する染色性等の特性を持続することが可能となることを見出した。更に、アンモニア臭等の悪臭に対する消臭性を大幅に高めることが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明の繊維は、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11及びナイロン12からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂からなるポリアミド樹脂を含有する。
上記ポリアミド樹脂を含有する繊維は、優れた化学的、機械的性質を有するとともに、高い染色性を有する。
【0012】
上記ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11及びナイロン12からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂としては、特に限定されないが、単一組成、即ち、ホモポリマーであってもよく、本発明の効果を損なわない程度、例えば、全単量体中50モル%以下、好ましくは10モル%以下であれば他の共重合成分が共重合されていても構わない。
【0013】
本発明の繊維は、酸性化合物を含有し、上記酸性化合物は、スチレン−無水マレイン酸共重合体、又は、酸無水物である。
本発明では、このような酸性化合物を用いることで、繊維の耐黄変性を大幅に向上させることができる。
【0014】
上記酸性化合物として、スチレン−無水マレイン酸共重合体を用いた場合、繰り返しの洗濯に対しても黄変防止の効果が持続しやすく、特に汗成分が繊維に残留した状態で日光を受けるような環境での変退色を抑制する効果が大きい。
【0015】
上記スチレン−無水マレイン酸共重合体は、スチレンに由来するセグメントと無水マレイン酸に由来するセグメントとを有しているが、上記スチレンに由来するセグメントと、上記無水マレイン酸に由来するセグメントとの比は、スチレンに由来するセグメントが1に対して、無水マレイン酸に由来するセグメントが1/3〜1であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0016】
上記スチレン−無水マレイン酸共重合体の重量平均分子量(Mw)の好ましい下限は1000、好ましい上限は50000である。1000未満であると、繊維表面からブリードアウトすることがあり、50000を超えると、繊維にフシ糸が生じやすくなることがある。
【0017】
上記酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水酢酸、無水安息香酸、無水コハク酸、無水ニコチン酸、無水プロピオン酸、無水−n−カプロン酸、無水グルタル酸、無水ギ酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水トリフルオロ酢酸等が挙げられる。なかでも、無水フタル酸が好ましい。
【0018】
本発明の繊維における上記酸性化合物の含有量の下限は、ポリアミド樹脂100重量部に対して0.15重量部、上限は3重量部である。0.15重量部未満であると、黄変や赤変を抑制する効果が得られず、3重量部を超えると、繊維自体の物性が低下したり、紡糸時に糸切れが発生して紡糸性が低下したりする。上記酸性化合物の含有量の好ましい下限は0.2重量部、より好ましい下限は0.3重量部であり、上記酸性化合物の含有量の好ましい上限は2重量部、より好ましい上限は1.5重量部である。
【0019】
上記酸性化合物として、上記スチレン−無水マレイン酸共重合体を用いる場合、本発明の繊維における上記スチレン−無水マレイン酸共重合体の含有量の好ましい下限は、ポリアミド樹脂100重量部に対して0.3重量部、好ましい上限は2.5重量部である。0.3重量部未満であると、黄変や赤変を抑制する効果が得られないことがあり、2.5重量部を超えると、繊維自体の物性が低下したり、紡糸時に糸切れが発生して紡糸性が低下したりすることがある。上記スチレン−無水マレイン酸共重合体の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は2重量部である。
【0020】
上記酸性化合物として、上記酸無水物を用いる場合、本発明の繊維における上記酸無水物の含有量の好ましい下限は、ポリアミド樹脂100重量部に対して0.3重量部、好ましい上限は2重量部である。0.3重量部未満であると、黄変や赤変を抑制する効果が得られないことがあり、2重量部を超えると、繊維自体の物性が低下したり、紡糸時に糸切れが発生して紡糸性が低下したりすることがある。上記酸無水物の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は1.8重量部である。
【0021】
本発明の繊維は、酸化チタンを含有する。
上記酸化チタンを含有することにより、酸化チタンの酸化還元作用により有機物を分解し、特に、汗や尿に起因するアンモニア臭に対する消臭性を付与することが可能となる。その結果、本発明の繊維を衣料等の身体に直接接する衣料に好適に使用することができる。更に、上記酸化チタンは、一般的な無機フィラーと比較しても優れた消臭性を実現することができる。
また、酸化チタンを含有することで、肌着、スポーツウェア用に要求される白色を得ることができる。更に、その白色をベースに別途顔料を追加することで淡色繊維とすることもできる。
加えて、酸化チタンを含有することで、湿潤時のベタツキ感を低減し、さらさらの風合いを得ることができる。
【0022】
上記酸化チタンとしては、ルチル型酸化チタン、アナタース型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタンの何れも好ましく用いられるが、特にルチル型酸化チタンが好ましい。
上記ルチル型酸化チタンは、アナタース型酸化チタン等の上記ルチル型酸化チタン以外の酸化チタンと比較して、酸化チタンを分散させる母体ポリマー分子鎖の断裂による紡糸時の糸切れや、繊維強度の経時劣化等の不具合が発生しにくく、好適に使用することができる。
【0023】
更に、上記酸化チタンとしては、表面処理を施したものが好ましく、表面処理剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア等の金属酸化物;シランカップリング剤、チタンカップリング剤、有機酸、ポリオール、シリコーン等の有機物等が挙げられる。なかでもシリカ、アルミナ及びジルコニアから選ばれた少なくとも1種で表面処理された酸化チタンが好ましい。
【0024】
上記酸化チタンの粒子径については、本発明の効果を達成しうる形態であれば特に限定されないが、平均粒子径の好ましい下限は10nm、好ましい上限は2000nmである。上記酸化チタンの平均粒子径が上記範囲内であれば、アンモニア臭等の悪臭に対して高い消臭性を発揮することが可能となる。なお、上記平均粒子径の値は、例えば、電子顕微鏡により撮影された写真から、最大粒子径の算術平均値を算出することにより得ることができる。
上記平均粒子径が10nm未満であると、再凝集しやすくなって、繊維にフシができてしまうことがあり、2000nmを超えると、紡糸性が不安定になり、糸切れ等が発生することがある。
【0025】
本発明の繊維における上記酸化チタンの含有量の下限は、ポリアミド樹脂100重量部に対して2.5重量部、上限は10重量部である。2.5重量部未満であると、アンモニア臭等の悪臭に対する消臭性が不充分となり、10重量部を超えると、紡糸性が不安定になり、糸切れなどが発生することがある。好ましい下限は3重量部、好ましい上限は8重量部である。
【0026】
本発明の繊維は、リン系酸化防止剤を含有することが好ましい。上記リン系酸化防止剤を含有することで、特に耐赤変性を大幅に向上させることができる。
なお、本発明において、リン系酸化防止剤とは、リン原子を有する酸化防止剤をいい、P(OR)構造を有する酸化防止剤であることが好ましい。ここで、Rは、アルキル基、アルキレン基、アリール基、アリーレン基等であり、3個のRは同一でも異なっていてもよく、任意の2個のRが互いに結合して環構造を形成していてもよい。
【0027】
上記リン系酸化防止剤としては、例えば、トリス−(ノニルフェニル)−ホスファイト(大内新興化学工業社製、「ノクラックTNP」)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・ジャパン社製、「Irgafos168」)、トリス[2−[[2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェフィン−6−イル]オキシ]エチル]アミン(チバ・ジャパン社製、「Irgafos12」)、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸(チバ・ジャパン社製、「Irgafos38」)、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト(チバ・ジャパン社製、「Irgafos126」)、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスフォナイト(チバ・ジャパン社製、「IrgafosP−EPQ」)、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト(ADEKA社製、「アデカスタブPEP36」)、ジステアリルペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト(ADEKA社製、「アデカスタブPEP−8」)、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン(住友化学社製、「スミライザーGP」)等が挙げられる。
【0028】
本発明の繊維における上記リン系酸化防止剤の含有量の好ましい下限は、ポリアミド樹脂100重量部に対して0.1重量部、好ましい上限は3重量部である。0.1重量部未満であると、赤変を抑制する効果が得られないことがあり、3重量部を超えると、繊維からブリードしやすくなり、粉ふきが生じることがある。より好ましい下限は0.4重量部、より好ましい上限は1.5重量部、更に好ましい下限は0.5重量部、更に好ましい上限は1重量部である。
【0029】
本発明の繊維の態様としては特に限定されず、上記ポリアミド樹脂、酸性化合物及び酸化チタンのみからなるものであってもよいが、他の樹脂と併用してもかまわない。
【0030】
また、本発明の繊維は、本発明の効果を損なわない範囲で、難燃剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、光安定剤、無機物、高級脂肪酸塩等の添加剤を含有してもよい。
【0031】
本発明の繊維が、上記ポリアミド樹脂以外の他の樹脂を含有する場合には、これらの樹脂の混合物を紡糸してなるものであってもよいし、コンジュゲート繊維であってもよい。
上記他の樹脂としては特に限定されず、例えば、PET、PBT、PTT等のポリエステル系樹脂、レーヨン、アクリル等が挙げられる。
上記他の樹脂を用いる場合、複合界面又は接触界面において変退色することを防止するために、上記他の樹脂にも上記酸性化合物及び上記酸化チタンを、上記ポリアミド樹脂へ添加する比率と同様の比率で添加することが好ましい。
【0032】
上記コンジュゲート繊維は特に限定されず、例えば、芯鞘型コンジュゲート繊維、サイドバイサイド型コンジュゲート繊維、放射型コンジュゲート繊維、中空環状型コンジュゲート繊維等が挙げられる。
本発明の繊維が上記芯鞘型コンジュゲート繊維である場合、芯部に上記ポリアミド樹脂、鞘部に上記他の樹脂を用いてもよいし、芯部に上記他の樹脂、鞘部に上記ポリアミド樹脂を用いてもよい。
【0033】
上記芯鞘型コンジュゲート繊維の形状は特に限定されず、例えば、繊維の長さ方向に対して垂直に切断した場合の断面形状が真円のものであってもよいし、楕円等であってもよい。また、芯部と鞘部とが同心円状に形成された同心芯鞘型コンジュゲート繊維であってもよく、芯部と鞘部とが偏心的に形成された偏心芯鞘型コンジュゲート繊維であってもよい。更に、鞘部の一部が開口した部分開口芯鞘型コンジュゲート繊維であってもよい。加えて、繊維の長さ方向に対して垂直に切断した場合に芯部が複数存在するような構造であってもよい。
【0034】
本発明の繊維の形態としては、マルチフィラメントでもモノフィラメントでもよい。
マルチフィラメントである場合には、マルチフィラメントの繊度としては20〜2400デシテックスが好ましく、マルチフィラメントを構成する単糸の繊度としては1〜20デシテックスが好ましい。
モノフィラメントである場合には、その繊度としては、撚糸する場合の収束性、耐久性及び製織性を考慮して、1.1〜10デシテックスが好ましい。
【0035】
本発明の繊維は、非極性化合物からなる紡糸油剤が付与されていることが好ましい。
上記紡糸油剤を付与することで、繊維の潤滑性が上がるとともに、添加した酸性化合物や酸化チタンのブリードアウトが少なくなる。
【0036】
本発明では、上記紡糸油剤として非極性化合物が用いられる。
上記非極性化合物からなる紡糸油剤としては、シリコーン系紡糸油剤、ポリエチレンワックス等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、適宜組み合わせて使用することもできる。本発明では、シリコーン系紡糸油剤を用いることが好ましい。
なお、上記紡糸油剤は、通常のローラ式やノズル式給油法により、本発明の繊維に付与される
【0037】
本発明の繊維における上記紡糸油剤の付与量の好ましい下限は、繊維100重量部に対して0.1重量部、好ましい上限は10重量部である。0.1重量部未満であると、繊維と編み針の摩擦が大きくなり、編立時に生地に傷が生じることがあり、10重量部を超えると、精錬が困難になる(精錬時に充分に油剤が落ちない)ことがある。より好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は8重量部である。
【0038】
本発明の繊維を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記ポリアミド樹脂、酸性化合物及び酸化チタンを含有するペレットを用いて溶融紡糸を行う方法等の従来公知の方法を用いることができる。
また、上記他の樹脂を用いたコンジュゲート繊維とする場合は、ポリアミド樹脂、酸性化合物、及び、酸化チタンを含有するペレット、及び、上記他の樹脂を含有するペレットを複合紡糸装置に投入し、溶融紡糸することにより、コンジュゲート繊維を得る方法等が挙げられる。
【0039】
本発明の繊維を用いてなる生地もまた、本発明の1つである。
本明細書において生地には、編物、織物、不織布等が含まれる。
本発明の生地は、本発明の繊維のみからなるものであってもよいが、本発明の目的を阻害しない範囲で、肌触り等の衣料に必要な要件を改善する目的で、他の繊維と交編してもかまわない。このような他の繊維としては特に限定されないが、例えば、ポリエステル、綿、レーヨン等が挙げられる。
本発明の繊維、又は本発明の生地を用いてなる衣料もまた、本発明の1つである。
本発明の衣料としては、例えば、靴下、ストッキングなどのレッグウェア、上着、肌着、手袋、アームカバー、フェイスマスク、帽子、マフラー等が挙げられる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、ポリアミド繊維が有する染色性等の特性を維持しつつ、繊維の黄変や赤変の発生を抑制し、かつ、優れた消臭効果を有する繊維、生地及び衣料を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
ポリアミド樹脂であるナイロン6(宇部興産社製、「UBEナイロン1011FB」)100重量部、スチレン−無水マレイン酸共重合体(サートマージャパン社製、「SMA1000」)2.5重量部、リン系酸化防止剤(住友化学社製、「スミライザーGP」)0.1重量部、紫外線吸収剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン234」)0.3重量部、光安定剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン144」)0.3重量部、及び、酸化チタン(堺化学工業社製、「D−918」、平均粒子径260nm)6重量部を添加した後、溶融混合し、ペレタイザーを用いて樹脂ペレットを作製した。
次いで、得られた樹脂ペレットを用い、溶融紡糸法にて製糸を行い、繊度が120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径が約20μmの原糸を得た。得られた原糸を用いて編み立てを行い、フライス生地を作製した。
得られたフライス生地を繊維の油剤を充分に洗浄除去した後、乾燥し、180℃で30秒間加熱処理する。次いで、水に浸漬し、40℃で10分間処理した。次いで、50℃の温水ですすぎ洗いをした後、170℃で15秒間ヒートセットした。
【0043】
(実施例2)
ポリアミド樹脂であるナイロン66(宇部興産社製、「UBEナイロン2015B」)100重量部、スチレン−無水マレイン酸共重合体(サートマージャパン社製、「SMA1000」)1.5重量部、リン系酸化防止剤(チバ・ジャパン社製、「Irgafos126」)0.5重量部、紫外線吸収剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン234」)0.3重量部、光安定剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン144」)0.3重量部、及び、酸化チタン(堺化学工業社製、「D−918」)5重量部を添加した後、溶融混合し、ペレタイザーを用いて樹脂ペレットを作製した。
次いで、得られた樹脂ペレットを用い、溶融紡糸法にて製糸を行い、繊度が120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径が約20μmの原糸を得た。得られた原糸を用いて編み立てを行い、フライス生地を作製した。
得られたフライス生地を繊維の油剤を充分に洗浄除去した後、乾燥し、180℃で30秒間加熱処理する。次いで、水に浸漬し、40℃で10分間処理した。次いで、50℃の温水ですすぎ洗いをした後、170℃で15秒間ヒートセットした。
【0044】
(実施例3)
ポリアミド樹脂であるナイロン11(アルケマ社製、「リルサンBESNTL」)100重量部、スチレン−無水マレイン酸共重合体(サートマージャパン社製、「SMA1000」)0.5重量部、リン系酸化防止剤(ADEKA社製、「アデカスタブPEP36」)1重量部、紫外線吸収剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン234」)0.3重量部、光安定剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン144」)0.3重量部、及び、酸化チタン(堺化学工業社製、「D−918」)4重量部を添加した後、溶融混合し、ペレタイザーを用いて樹脂ペレットを作製した。
次いで、得られた樹脂ペレットを用い、溶融紡糸法にて製糸を行い、繊度が120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径が約20μmの原糸を得た。得られた原糸を用いて編み立てを行い、フライス生地を作製した。
得られたフライス生地を繊維の油剤を充分に洗浄除去した後、乾燥し、130℃で30秒間加熱処理する。次いで、水に浸漬し、40℃で10分間処理した。次いで、50℃の温水ですすぎ洗いをした後、120℃で15秒間ヒートセットした。
【0045】
(実施例4)
ポリアミド樹脂であるナイロン12(宇部興産社製、「UBESTA3014B」)100重量部、スチレン−無水マレイン酸共重合体(サートマージャパン社製、「SMA1000」)0.3重量部、リン系酸化防止剤(住友化学社製、「スミライザーGP」)2重量部、紫外線吸収剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン234」)0.3重量部、光安定剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン144」)0.3重量部、及び、酸化チタン(堺化学工業社製、「D−918」)4重量部を添加した後、溶融混合し、ペレタイザーを用いて樹脂ペレットを作製した。
次いで、得られた樹脂ペレットを用い、溶融紡糸法にて製糸を行い、繊度が120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径が約20μmの原糸を得た。得られた原糸を用いて編み立てを行い、フライス生地を作製した。
得られたフライス生地を繊維の油剤を充分に洗浄除去した後、乾燥し、130℃で30秒間加熱処理する。次いで、水に浸漬し、40℃で10分間処理した。次いで、50℃の温水ですすぎ洗いをした後、120℃で15秒間ヒートセットした。
【0046】
(実施例5)
ポリアミド樹脂であるナイロン6(宇部興産社製、「UBEナイロン1011FB」)100重量部、スチレン−無水マレイン酸共重合体(サートマージャパン社製、「SMA1000」)2.5重量部、リン系酸化防止剤(ADEKA社製、「アデカスタブPEP36」)0.5重量部、紫外線吸収剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン234」)0.3重量部、光安定剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン144」)0.3重量部、及び、酸化チタン(堺化学工業社製、「D−918」)3重量部を添加した後、溶融混合し、ペレタイザーを用いて樹脂ペレットを作製した。
次いで、得られた樹脂ペレットを用い、溶融紡糸法にて製糸を行い、繊度が120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径が約20μmの原糸を得た。得られた原糸を用いて編み立てを行い、フライス生地を作製した。
得られたフライス生地を繊維の油剤を充分に洗浄除去した後、乾燥し、180℃で30秒間加熱処理する。次いで、水に浸漬し、40℃で10分間処理した。次いで、50℃の温水ですすぎ洗いをした後、170℃で15秒間ヒートセットした。
【0047】
(実施例6)
ポリアミド樹脂であるナイロン12(宇部興産社製、「UBESTA3014B」)100重量部、無水フタル酸1.5重量部、リン系酸化防止剤(住友化学社製、「スミライザーGP」)0.5重量部、紫外線吸収剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン234」)0.3重量部、光安定剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン144」)0.3重量部、及び、酸化チタン(堺化学工業社製、「D−918」)8重量部を添加した後、溶融混合し、ペレタイザーを用いて樹脂ペレットを作製した。
次いで、得られた樹脂ペレットを用い、溶融紡糸法にて製糸を行い、繊度が120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径が約20μmの原糸を得た。得られた原糸を用いて編み立てを行い、フライス生地を作製した。
得られたフライス生地を繊維の油剤を充分に洗浄除去した後、乾燥し、130℃で30秒間加熱処理する。次いで、水に浸漬し、40℃で10分間処理した。次いで、50℃の温水ですすぎ洗いをした後、120℃で15秒間ヒートセットした。
【0048】
(実施例7)
ポリアミド樹脂であるナイロン6(宇部興産社製、「UBEナイロン1011FB」)100重量部、無水フタル酸1重量部、リン系酸化防止剤(ADEKA社製、「アデカスタブPEP36」)0.3重量部、リン系酸化防止剤(チバ・ジャパン社製、「Irgafos126」)0.1重量部、紫外線吸収剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン234」)0.3重量部、光安定剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン144」)0.3重量部、及び、酸化チタン(堺化学工業社製、「D−918」)5重量部を添加した後、溶融混合し、ペレタイザーを用いて樹脂ペレットを作製した。
次いで、得られた樹脂ペレットを用い、溶融紡糸法にて製糸を行い、繊度が120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径が約20μmの原糸を得た。得られた原糸を用いて編み立てを行い、フライス生地を作製した。
得られたフライス生地を繊維の油剤を充分に洗浄除去した後、乾燥し、180℃で30秒間加熱処理する。次いで、水に浸漬し、40℃で10分間処理した。次いで、50℃の温水ですすぎ洗いをした後、170℃で15秒間ヒートセットした。
【0049】
(実施例8)
ポリアミド樹脂であるナイロン66(宇部興産社製、「UBEナイロン2015B」)100重量部、無水フタル酸0.5重量部、リン系酸化防止剤(住友化学社製、「スミライザーGP」)0.5重量部、紫外線吸収剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン234」)0.3重量部、光安定剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン144」)0.3重量部、及び、酸化チタン(堺化学工業社製、「D−918」)4重量部を添加した後、溶融混合し、ペレタイザーを用いて樹脂ペレットを作製した。
次いで、得られた樹脂ペレットを用い、溶融紡糸法にて製糸を行い、繊度が120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径が約20μmの原糸を得た。得られた原糸を用いて編み立てを行い、フライス生地を作製した。
得られたフライス生地を繊維の油剤を充分に洗浄除去した後、乾燥し、180℃で30秒間加熱処理する。次いで、水に浸漬し、40℃で10分間処理した。次いで、50℃の温水ですすぎ洗いをした後、170℃で15秒間ヒートセットした。
【0050】
(実施例9)
ポリアミド樹脂であるナイロン11(アルケマ社製、「リルサンBESNTL」)100重量部、無水フタル酸0.3重量部、リン系酸化防止剤(ADEKA社製、「アデカスタブPEP36」)1重量部、紫外線吸収剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン234」)0.3重量部、光安定剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン144」)0.3重量部、及び、酸化チタン(堺化学工業社製、「D−918」)3重量部溶融混合し、ペレタイザーを用いて樹脂ペレットを作製した。
次いで、得られた樹脂ペレットを用い、溶融紡糸法にて製糸を行い、繊度が120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径が約20μmの原糸を得た。得られた原糸を用いて編み立てを行い、フライス生地を作製した。
得られたフライス生地を繊維の油剤を充分に洗浄除去した後、乾燥し、130℃で30秒間加熱処理する。次いで、水に浸漬し、40℃で10分間処理した。次いで、50℃の温水ですすぎ洗いをした後、120℃で15秒間ヒートセットした。
【0051】
(実施例10)
ポリアミド樹脂であるナイロン12(宇部興産社製、「UBESTA3014B」)100重量部、無水フタル酸1.5重量部、紫外線吸収剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン234」)0.3重量部、光安定剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン144」)0.3重量部、及び、酸化チタン(堺化学工業社製、「D−918」)5重量部を添加した後、溶融混合し、ペレタイザーを用いて樹脂ペレットを作製した。
次いで、得られた樹脂ペレットを用い、溶融紡糸法にて製糸を行い、繊度が120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径が約20μmの原糸を得た。得られた原糸を用いて編み立てを行い、フライス生地を作製した。
得られたフライス生地を繊維の油剤を充分に洗浄除去した後、乾燥し、130℃で30秒間加熱処理する。次いで、水に浸漬し、40℃で10分間処理した。次いで、50℃の温水ですすぎ洗いをした後、120℃で15秒間ヒートセットした。
【0052】
(比較例1)
ポリアミド樹脂であるナイロン6(宇部興産社製、「UBEナイロン1011FB」)100重量部、スチレン−無水マレイン酸共重合体(サートマージャパン社製、「SMA1000」)5重量部、リン系酸化防止剤(ADEKA社製、「アデカスタブPEP36」)5重量部、紫外線吸収剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン234」)0.3重量部、光安定剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン144」)0.3重量部、及び、酸化チタン(堺化学工業社製、「D−918」)5重量部を添加した後、溶融混合し、ペレタイザーを用いて樹脂ペレットを作製した。
次いで、得られた樹脂ペレットを用い、溶融紡糸法にて製糸を行った。フィラメント切れ多発により、原糸として採取できなかった。
【0053】
(比較例2)
ポリアミド樹脂であるナイロン66(宇部興産社製、「UBEナイロン2015B」)100重量部、スチレン−無水マレイン酸共重合体(サートマージャパン社製、「SMA1000」)1重量部、リン系酸化防止剤(住友化学社製、「スミライザーGP」)0.2重量部、紫外線吸収剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン234」)0.3重量部、光安定剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン144」)0.3重量部、及び、酸化チタン(堺化学工業社製、「D−918」)2重量部を添加した後、溶融混合し、ペレタイザーを用いて樹脂ペレットを作製した。
次いで、得られた樹脂ペレットを用い、溶融紡糸法にて製糸を行い、繊度が120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径が約20μmの原糸を得た。得られた原糸を用いて編み立てを行い、フライス生地を作製した。
得られたフライス生地を繊維の油剤を充分に洗浄除去した後、乾燥し、180℃で30秒間加熱処理する。次いで、水に浸漬し、40℃で10分間処理した。次いで、50℃の温水ですすぎ洗いをした後、170℃で15秒間ヒートセットした。
【0054】
(比較例3)
ポリアミド樹脂であるナイロン66(宇部興産社製、「UBEナイロン2015B」)100重量部、リン系酸化防止剤(チバ・ジャパン社製、「Irgafos126」)1重量部、紫外線吸収剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン234」)0.3重量部、光安定剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン144」)0.3重量部、及び、酸化チタン(堺化学工業社製、「D−918」)5重量部を添加した後、溶融混合し、ペレタイザーを用いて樹脂ペレットを作製した。
次いで、得られた樹脂ペレットを用い、溶融紡糸法にて製糸を行い、繊度が120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径が約20μmの原糸を得た。得られた原糸を用いて編み立てを行い、フライス生地を作製した。
得られたフライス生地を繊維の油剤を充分に洗浄除去した後、乾燥し、180℃で30秒間加熱処理する。次いで、水に浸漬し、40℃で10分間処理した。次いで、50℃の温水ですすぎ洗いをした後、170℃で15秒間ヒートセットした。
【0055】
(比較例4)
ポリアミド樹脂であるナイロン11(アルケマ社製、「リルサンBESNTL」)100重量部、スチレン−無水マレイン酸共重合体(サートマージャパン社製、「SMA1000」)0.3重量部、紫外線吸収剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン234」)0.3重量部、光安定剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン144」)0.3重量部、及び、硫酸バリウム(堺化学工業社製、「B−31」)5重量部を添加した後、溶融混合し、ペレタイザーを用いて樹脂ペレットを作製した。
次いで、得られた樹脂ペレットを用い、溶融紡糸法にて製糸を行い、繊度が120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径が約20μmの原糸を得た。得られた原糸を用いて編み立てを行い、フライス生地を作製した。
得られたフライス生地を繊維の油剤を充分に洗浄除去した後、乾燥し、130℃で30秒間加熱処理する。次いで、水に浸漬し、40℃で10分間処理した。次いで、50℃の温水ですすぎ洗いをした後、120℃で15秒間ヒートセットした。
【0056】
(比較例5)
ポリアミド樹脂であるナイロン12(宇部興産社製、「UBESTA3014B」)100重量部、スチレン−無水マレイン酸共重合体(サートマージャパン社製、「SMA1000」)0.05重量部、リン系酸化防止剤(ADEKA社製、「アデカスタブPEP36」)0.05重量部、紫外線吸収剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン234」)0.3重量部、光安定剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン144」)0.3重量部、及び、酸化チタン(堺化学工業社製、「D−918」)5重量部を添加した後、溶融混合し、ペレタイザーを用いて樹脂ペレットを作製した。
次いで、得られた樹脂ペレットを用い、溶融紡糸法にて製糸を行い、繊度が120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径が約20μmの原糸を得た。得られた原糸を用いて編み立てを行い、フライス生地を作製した。
得られたフライス生地を繊維の油剤を充分に洗浄除去した後、乾燥し、130℃で30秒間加熱処理する。次いで、水に浸漬し、40℃で10分間処理した。次いで、50℃の温水ですすぎ洗いをした後、120℃で15秒間ヒートセットした。
【0057】
(比較例6)
ポリアミド樹脂であるナイロン11(アルケマ社製、「リルサンBESNTL」)100重量部、無水フタル酸0.1重量部、リン系酸化防止剤(ADEKA社製、「アデカスタブPEP36」)0.6重量部、紫外線吸収剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン234」)0.3重量部、光安定剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン144」)0.3重量部、及び、酸化チタン(堺化学工業社製、「D−918」)5重量部を添加した後、溶融混合し、ペレタイザーを用いて樹脂ペレットを作製した。
次いで、得られた樹脂ペレットを用い、溶融紡糸法にて製糸を行い、繊度が120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径が約20μmの原糸を得た。得られた原糸を用いて編み立てを行い、フライス生地を作製した。
得られたフライス生地を繊維の油剤を充分に洗浄除去した後、乾燥し、130℃で30秒間加熱処理する。次いで、水に浸漬し、40℃で10分間処理した。次いで、50℃の温水ですすぎ洗いをした後、120℃で15秒間ヒートセットした。
【0058】
(比較例7)
ポリアミド樹脂であるナイロン6(宇部興産社製、「UBEナイロン1011FB」)100重量部、紫外線吸収剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン234」)0.3重量部、光安定剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン144」)0.3重量部、及び、酸化チタン(堺化学工業社製、「D−918」5重量部を添加した後、溶融混合し、ペレタイザーを用いて樹脂ペレットを作製した。
次いで、得られた樹脂ペレットを用い、溶融紡糸法にて製糸を行い、繊度が120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径が約20μmの原糸を得た。得られた原糸を用いて編み立てを行い、フライス生地を作製した。
得られたフライス生地を繊維の油剤を充分に洗浄除去した後、乾燥し、180℃で30秒間加熱処理する。次いで、無水酢酸の1%水溶液に浸漬し、40℃で10分間処理した。次いで、50℃の温水ですすぎ洗いをした後、170℃で15秒間ヒートセットした。
【0059】
(比較例8)
ポリアミド樹脂であるナイロン6(宇部興産社製、「UBEナイロン1011FB」)100重量部、紫外線吸収剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン234」)0.3重量部、光安定剤(チバ・ジャパン社製、「チヌビン144」)0.3重量部、及び、酸化チタン(堺化学工業社製、「D−918」)5重量部を添加した後、溶融混合し、ペレタイザーを用いて樹脂ペレットを作製した。
次いで、得られた樹脂ペレットを用い、溶融紡糸法にて製糸を行い、繊度が120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径が約20μmの原糸を得た。得られた原糸を用いて編み立てを行い、フライス生地を作製した。
得られたフライス生地を繊維の油剤を充分に洗浄除去した後、乾燥し、180℃で30秒間加熱処理する。次いで、水に浸漬し、40℃で10分間処理した。次いで、50℃の温水ですすぎ洗いをした後、170℃で15秒間ヒートセットした。
【0060】
(評価)
実施例及び比較例で得られた生地について、以下の方法により評価を行った。結果を表1〜2に示した。
【0061】
(1)コートルズ黄変試験
3cm×10cmの生地サンプルを作製し、これをジブチルニトロフェノール0.01%含有する試験紙で挟み、更にガラスプレートで挟みこんだ。次いで、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含有しないフィルムで密閉し、生地サンプルと試験紙との間に隙間ができないように、錘を載せて、50±3℃で16時間保管した。その後、試料を室温まで冷却し、フィルム、ガラスプレートを取り除き、直ちにグレースケール(JIS L 0805)により生地の黄変色の程度を測定した。評価は0.5級刻み、1〜5級で行い、4級以上である場合を良好と判定した。
また、作製した生地サンプルを家庭用全自動洗濯機(シャープ社製、ES−S4A)を用いて、「標準コース」、洗剤(アタック(無蛍光))0.67g/L、浴比1:30、ネットなしの条件で洗濯を行った後、40℃に設定した恒温室に12時間放置した。
この洗濯・乾燥の工程を100回繰り返し行った後における黄変色の程度についても測定した。
【0062】
(2)NOx黄変試験
JIS L 0855「窒素酸化物に対する染色堅牢度試験方法」の「強試験」に準拠して、黄変の度合は、測色器(Macbeth WHITE−EYE3000)を用いて測定し、CIELAB表色系のb値の試験前と試験後とでの変化(Δb値)で評価した。Δb値が大きいほど黄変が大きいことを示す。
Δb値=(試験後のb値)−(試験前のb値)
【0063】
(3)ファンヒータ赤変試験
5cm×10cmの生地サンプルを作製した後、ポンプ噴霧式石油ファンヒータ(三菱電機社製KD−25CTD)の噴出し口から90cmの距離に置き、該ファンヒータをのべ24時間稼動させた後、生地サンプルの赤変の度合を調べた。この評価はNOx、SOx、高湿度雰囲気が同時に作用する際の変色問題を考慮している。赤変の度合は、測色器(Macbeth WHITE−EYE3000)を用いることにより測色し、CIELAB表色系のa値の試験前と試験後とでの変化(Δa値)で評価した。Δa値が大きいほど赤変が大きいことを示す。
Δa値=(試験後のa値)−(試験前のa値)
【0064】
(4)汗耐光試験
JIS L 0888 「光及び汗に対する染色堅牢度試験方法」の「B法」に準拠した方法でアルカリ性人工汗液を使用し、紫外線カーボンアーク灯形耐光試験機にて測定を行った。
【0065】
(5)アンモニア防臭試験
1Lのガラス容器内がアンモニア100ppmの濃度になるように28%アンモニア水を滴下した。次いで、そのガラス容器内に生地サンプル1gを吊るし入れ、密閉した。
この密閉ガラス容器を50℃恒温槽内に設置し、2時間経過後のガラス容器中のアンモニア濃度を、北川式ガス検知器を使用して測定した。
なお、測定濃度値が小さいほどアンモニア防臭性に優れることを示す。
【0066】
(6)染色試験
5cm×5cmの生地サンプルを作製し、これを酸性染料を含有する液に100℃、30分浸漬し、染料で染まるか、染まらないかを目視にて判定した。なお、酸性染料を含有する液としては、Yellow C.I.25の3%溶液、Blue C.I.25の3%溶液、及び、Red C.I.25の3%溶液を用いた。
また、判定は、比較例8のフライス生地を、酸性染料を含有する液に100℃、30分浸漬した対照例との比較で官能評価した。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によれば、ポリアミド繊維が有する染色性等の特性を維持しつつ、繊維の黄変や赤変の発生を抑制し、かつ、優れた消臭効果を有する繊維、生地及び衣料を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂、酸性化合物及び酸化チタンを含有する繊維であって、
前記ポリアミド樹脂は、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11及びナイロン12からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂であり、
前記酸性化合物は、スチレン−無水マレイン酸共重合体、又は、酸無水物であり、
前記ポリアミド樹脂100重量部に対して、前記酸性化合物を0.15〜3重量部、酸化チタンを2.5〜10重量部含有する
ことを特徴とする繊維。
【請求項2】
更に、リン系酸化剤防止剤を含有することを特徴とする請求項1記載の繊維。
【請求項3】
請求項1又は2記載の繊維を用いてなることを特徴とする生地。
【請求項4】
請求項1又は2記載の繊維又は請求項3記載の生地を用いてなることを特徴とする衣料。

【公開番号】特開2012−214919(P2012−214919A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79998(P2011−79998)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】