説明

繊維、皮革または毛皮製品を化学的に洗浄するためのジエーテル化合物の使用

本発明は繊維、皮革または毛皮製品を化学的に洗浄するための改善された方法に関するものであり、該方法では洗浄すべき前記製品を洗浄剤と接触させ、前記洗浄剤は少なくとも1種の溶媒を含み、本発明に従って、洗浄剤は溶媒として一般式(I)の化合物を含んで使用され、式中、xは1〜10の整数であり、R1、R2、R3およびR4は、互いに独立してH、C1−〜C22−アルキル基またはアルケニル基、ポリアルキレンオキシド、C3−〜C6−シクロアルキル基、カルボ−または複素環式C3−〜C6−シクロアルケニル基およびアリール基から選択される。さらに本発明は繊維、皮革および毛皮製品を化学的に洗浄するための洗浄剤を生成する一般式(I)を有する溶媒の使用、ならびに繊維、皮革または毛皮製品を化学的に洗浄する方法に使用する液体洗浄剤に関するもので、前記洗浄剤は一般式(I)を有する溶媒の一部を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維、皮革または毛皮製品を化学的に洗浄する方法に関するものであり、該方法では洗浄される製品を洗浄剤と接触させ、前記洗浄剤は少なくとも1種の溶媒を含有する。また、本発明は繊維、皮革または毛皮製品を化学的に洗浄する洗浄剤を生成するため、一定の特性および特徴を有する溶媒の使用にも関する。本発明はさらに、繊維、皮革または毛皮製品を化学的に洗浄する方法に使用する液体洗浄剤に関するものであり、前記洗浄剤は所与の特性および特徴を有する溶媒を一定割合で有する。
【背景技術】
【0002】
繊維、皮革または毛皮製品の専門的な洗浄は、商業的に非常に重要な現代社会に特有の事業である。特に正装および礼装は通常、例えばカシミヤ、ウールまたは絹などの高品質素材から製造されており、あるいは少なくとも部分的に皮革または毛皮で構成されている。それらの素材は従来のウエットクリーニングでは、水に入れると膨張する可能性があり、また部分的にもつれた固まりになりやすくなる。また、本来それ自体、ウエットクリーニングに適している素材の色の多くは湿堅牢性が低いのに悩まされる。
【0003】
従って、概してこのような製品は適切な溶媒を使用する商業的繊維洗浄で手入れをしなければならない。繊維の溶媒処理の一般的長所は、天然繊維は有機溶媒中でごくわずかに膨張し、それによって、もつれて固まるリスクやフェルト状になるリスクが非常に低いことである。
【0004】
繊維を洗浄するための、例えば芳香族炭化水素、ベンジン、ストダード溶剤およびホワイトスピリットなどの非極性溶媒の適性は19世紀初頭から知られている。後に、例えば塩化炭化水素(CKW)およびフルオロ塩化炭化水素(FCKW)などのハロゲン炭化水素も使用された。しかし、特に70年代、80年代に広まったFCKWは1987年の「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」に従って、禁止された。
【0005】
一方、例えばイソパラフィン(KWL)およびシクロシロキサンD5(デカメチルシクロペンタシロキサン)などのハロゲンを含まない溶媒は繊維洗浄で再び確立されてきている。前記溶媒の調製を蒸留により行う設備で、これら溶媒が使用される場合、溶媒は低圧下で高沸点範囲(KWL:185〜210℃)または沸点(シクロシロキサンD5:沸点211℃)により蒸留する必要があり、それに応じてエネルギーコストが増加してしまう。一方、これらコストを節減するため、蒸留を行わないで、または蒸留速度を落として稼動する設備で、代わりに溶媒再生用の粉末フィルターまたはカートリッジフィルターを使用する設備が存在する。
【0006】
この分野の最新の進展の1つは、繊維洗浄に液体二酸化炭素を使用することである。しかし、液体二酸化炭素の使用に必要な高圧設備は従来の洗浄機と比較して著しく高価であり、これまで新規技術が普及することを妨げていた。
【0007】
商業的な繊維洗浄に世界で最も多く使用されている溶媒はペルクロロエチレン(=テトラクロロエチレン)である。ペルクロロエチレンは不燃性であり、沸点は121℃であり、洗浄機にて常圧で蒸留することが可能である。ペルクロロエチレンは非常に多種多様な形態の汚れに優れた溶解力を示す溶媒であり、高級服の大半は国際繊維扱い表示に基づいてペルクロロエチレンで洗浄可能である。
【0008】
ペルクロロエチレンの使用における短所は地下水および土壌の汚染に関する危険性である。「危険物質規則」に基づいて、ペルクロロエチレンはR40の危険率で健康に有害なものとして分類されており、よって発癌性が疑われている。従って、EU加盟国では、食品を販売するスーパーマーケット内でペルクロロエチレンを使用して洗浄機を稼動することができない国もある。また、ペルクロロエチレン蒸気がれんが造りの壁を通り抜ける危険性があるため、排出を低減する防止策を講じなければならない。例えばカリフォルニア州などの米国の州の多くは、2020年から繊維洗浄の溶媒としてのペルクロロエチレンを禁止している。
【0009】
商業的な繊維洗浄に最も使用されているペルクロロエチレンの使用、保存および輸送に関する法的規制により、商業的な繊維の手入れに適した代替的溶媒が必要となる。
【0010】
ハロゲン化された溶媒は、人類および環境にとって、すでに上述した短所を有する。KWL、シクロシロキサンまたは液体二酸化炭素などの別の代替物として考えられる溶媒は確かに、ペルクロロエチレンより望ましいリスク分類であるが、実際では、特に極めて汚れた繊維の場合、特に顔料および塩で汚れた場合、洗浄効率において特有の短所に悩まされる。これは染み抜きに関しては大幅に労力を注ぐことでしか解消できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、繊維、皮革または毛皮製品の化学洗浄に通常使用されているペルクロロエチレンまたは別の溶媒と比較して、洗浄特性が実質的に同等か、それ以上である溶媒を提供することである。同時に本発明は、その溶媒が繊維、皮革または毛皮製品の化学洗浄に通常使用されているペルクロロエチレンまたは別の溶媒と比較し生態学的および毒物学的により好ましい特性を持つように努めており、そうすることで前記溶媒または前記溶媒を含む液体洗浄剤の使用、保存および輸送は、より安全に、またはより低コストで、および/または低エネルギー消費量で実行可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
その目的は本発明に従って、以下の一般式(I)の溶媒を、繊維、皮革または毛皮製品を化学的に洗浄する方法で使用することにより達成され:
【化1】

(式中、xは1〜10の整数であり、R1、R2、R3およびR4は、互いに独立して以下から選択され:
−H、
−非置換または置換された、直鎖または分岐C1−〜C22−アルキル残基、
−単独または複合的に不飽和である非置換または置換された、直鎖または分岐C1−〜C22−アルケニル残基、
−エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのホモおよびブロック−コ−ポリマーから選択されるポリアルキレンオキシド、
−非置換もしくは置換された、カルボ−または複素環式C3−〜C6−シクロアルキル残基、
−単独もしくは複合的に不飽和である非置換もしくは置換された、カルボ−または複素環式C3−〜C6−シクロアルケニル残基、ならびに
−一般式(II)のアリール
【化2】

式中、nは0〜22の整数であり、R5、R6、R7、R8、R9、R10およびR11は、互いに独立して以下から選択される:
−H、
−非置換または置換された、直鎖または分岐C1−〜C22−アルキル残基、
−単独または複合的に不飽和である非置換または置換された、直鎖または分岐C1−〜C22−アルケニル残基、
−エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのホモおよびブロック−コ−ポリマーから選択されるポリアルキレンオキシド、
−非置換もしくは置換された、カルボ−または複素環式C3−〜C6−シクロアルキル残基、ならびに
−単独もしくは複合的に不飽和である非置換もしくは置換された、カルボ−または複素環式C3−〜C6−シクロアルケニル残基)
この方法では、洗浄されるべき製品を洗浄剤に接触させ、前記洗浄剤は少なくとも1種の溶媒を含み、前記少なくとも1種の溶媒は上記一般式(I)の化合物である。
【0013】
式(I)の溶媒は正式にはジエーテルであり、エーテル機能を生成する通常の合成経路により、例えばウィリアムソンエーテル合成、オキシラン、オキセタン、テトラヒドロフランおよび高度類似体とアルコールとの反応により得られる。例えば式(I)のx=1の化合物の場合、例えばアルデヒドまたはケトンなどのカルボニル化合物と、1カルボニル基当たり2モルのアルコールとを反応させて生成することが可能である。通常、その可逆反応は酸で触媒される。平衡をシフトさせるため、通常、過剰量のアルコールを使用し、得られた水を反応混合液から除去する。化学洗浄の溶媒としての使用に必要な純度を得るには、酸触媒が行われる場合は触媒酸を除去または中和し、前記溶媒の使用時での分解を防止することが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
式(I)の化合物の洗浄能力は、ペルクロロエチレンおよび繊維、皮革または毛皮製品の化学洗浄に従来から使用されている別の溶媒と比較して、少なくとも同等であるか、部分的にはそれ以上でさえあることが分かったのは驚くべきことである。発明者らにとって既知であるが、式(I)の化合物の多くは「危険物質規則」にしたがった分類に属さないことから、生態学的および毒物学的な特性に関して、それらはまた、繊維、皮革および毛皮製品の化学洗浄に従来使用される他のほとんどの溶媒より優れている。特に、式(I)の多くの化合物の生態学的および毒物学的特性はペルクロロエチレンの生態学的および毒物学的特性にまさっている。
【0015】
また、式(I)の化合物は繊維、皮革および毛皮製品の洗浄に使用する溶媒に対する典型的な要求をも満たす。
【0016】
特に、式(I)に一致する溶媒は、例えば油、脂肪およびグリース、ワックス、脂肪酸などの油、油脂汚れに対して良好な溶媒特性を示す。また、それは織物繊維から顔料および塩をよく溶解し、溶媒槽中に溶解した顔料および塩を安定化する。
【0017】
式(I)に一致する溶媒の実施態様の多くは、溶媒を熱分解することなく、容易に蒸留可能である。特定の実施態様の場合、式(I)の溶媒は水とは非混和性であり、従って、必要に応じて水相(例えば水分離器)から非常に容易に分離可能である。
【0018】
また、式(I)の溶媒は有利な乾燥特性を有し、実質的に無臭である。また、式(I)の溶媒は退色を招くことなく、繊維の寸法安定性に悪影響を与えることがない。重要な特徴は、繊維製造に使用する接着剤が式(I)の溶媒では溶解しないということである。
【0019】
この観点から、洗浄すべき製品を溶媒と接触させる繊維、皮革または毛皮製品の化学洗浄法における式(I)に合致する溶媒の使用は非常に有利である。従って、繊維、皮革または毛皮製品の化学洗浄法で式(I)に一致する溶媒を使用する場合、その溶媒は、化学洗浄に使用するペルクロロエチレン、炭化水素(KWL)、シクロシロキサンD5もしくは別の溶媒と完全に、または少なくとも部分的に置き換えることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に従って、洗浄されるべき製品(洗浄されるべき素材)はとりわけ、例えば繊維、皮革および/または毛皮材料の衣類製品、あらゆる種類の繊維および/または皮革材料の作業服および防護服、さらに繊維、皮革および/または毛皮材料のカーテン、カーペットおよび装飾品などのあらゆる種類の繊維、皮革および毛皮製品が挙げられる。
【0021】
化学洗浄という用語は本出願の文脈で広く解釈するものであり、このような製品の化学洗浄に関連する繊維、皮革および毛皮製品の予備処理(染み抜き)をも含む。
【0022】
洗浄すべき製品は化学洗浄機中で洗浄剤と接触させることが好ましい。従って、本発明の実施態様では、繊維、皮革または毛皮製品の洗浄は洗浄機内で機械により式(I)の溶媒を使用して行われる。このような洗浄機は、通常、蒸留、吸収によるか、または両調製工程の組み合わせによって溶媒をリサイクルするクローズドシステムである。
【0023】
特に50年代にペルクロロエチレンまたはホワイトスピリットでの化学洗浄に使用された転送滴下注入(Transferanlagen)の場合、通常、洗浄過程および蒸留は洗浄機内で行い、繊維の乾燥は独立した乾燥機で行った(多くは溶媒回収を伴う)。
【0024】
今の機械は「乾燥から乾燥まで」の技術を使って作動し、この技術では洗浄すべき素材を乾燥状態で機械に入れ、工程が完了した後に再度乾燥状態で機械から取り出す。溶媒冷却機で凝縮された溶媒−水混合液は、その過程の水分離器中で、再度有機相と水相とに分離することが可能である。その後、溶媒は、水分離器のオーバーフローを流出により清浄タンクへと通過することが可能であり、このとき水は汚染接触水としてシステムから除去され、溶媒は排出限界値に適合するまで適切に浄化することが可能である。
【0025】
単槽および二槽(予備洗浄槽および主洗浄槽)の両方で、または例えば作業服の場合、多槽工程で、洗浄工程を行うことが可能である。二槽または多槽工程の場合、本発明で使用する式(I)の溶媒は、第1槽または第1槽に続く槽で、洗浄される素材と接触させる。その他の槽(単数または複数)は繊維、皮革または毛皮製品の化学洗浄用の別の溶媒を1種以上含むことが可能である。あるいは、本発明に従って使用する式(I)の溶媒は、1つ以上、またはすべての槽で洗浄すべき素材と接触させることも可能である。
【0026】
本発明にしたがった別の洗浄工程では、洗浄すべき素材に式(I)の溶媒を特別な洗浄設備で1回以上噴霧する。その方法は、前段落に記述されているように、洗浄すべき素材を式(I)の溶媒を含む1つ以上の洗浄槽に浸す方法段階をも付加的に含むことが可能である。前記方法は、噴霧または洗浄層への浸漬により、洗浄すべき素材を繊維、皮革または毛皮製品の化学洗浄用の別の溶媒と接触させる方法段階をも含んでよい。
【0027】
本発明にしたがった方法の実施態様では、洗浄すべき素材は同一の機械で乾燥させ、ここではまた、洗浄すべき素材を乾燥状態で機械に入れ、工程が完了した後に再度乾燥状態で機械から取り出すことも行うように素材を浸漬または噴霧する(「乾燥から乾燥まで」の技術)。
【0028】
選択的に本発明にしたがった方法では、洗浄工程が完了し、乾燥処理をする前に、洗浄すべき素材に含浸剤を噴霧するか、または含浸剤に浸すことも可能である。
【0029】
本発明の1つの実施態様では、一般式(I)の溶媒において、R2およびR4は互いに独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、n−デシル、イソトリデシル、フェニル、ベンジル、フェニルエチルおよびノニルフェニル残基から選択可能である。
【0030】
本発明のさらなる実施態様では、一般式(I)の溶媒は以下に特徴づけられる:
−xは1〜5の整数であり、
−R1およびR3は、互いに独立してH、非置換もしくは置換された、直鎖もしくは分岐C1−〜C8−アルキルまたはC1−〜C8−イソ−アルキル残基から選択され、また、
−R2およびR4は、互いに独立して非置換もしくは置換された、直鎖もしくは分岐C1−〜C13−n−アルキルまたはC1−〜C13−イソアルキル残基、非置換もしくは置換された、C5−またはC6−シクロアルキル、フェニル、ベンジルまたは2−フェニルエチル残基から選択される。
【0031】
本発明のさらなる実施態様は、一般式(I)の溶媒において以下に特徴づけられる:
−xは1〜5の整数であり、
−R1およびR3はHであり、また、
−R2およびR4は、互いに独立して非置換もしくは置換された、直鎖もしくは分岐C1−〜C8−n−アルキルまたはC1−〜C8−イソ−アルキル残基から選択される。
【0032】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10またはR11の1つ以上が置換されている本発明の実施態様では、置換基(単数または複数)は、−Cl、−Br、−I、−NO2、−NR2、−COOR、−C(O)R、−CONHRおよび−CONR2からなる群より選択することが可能である。
【0033】
本発明の特定の実施態様において、一般式(I)の溶媒は以下に特徴づけられる:
−x=1、
−R1およびR3はHに等しく、また、
−R2およびR4はn−ブチル残基である。
【0034】
従って、この特定の実施態様では、溶媒は、特定の式(III)の化合物であり、メチレングリコールジブチルエーテルと化学的に同定される。
【化3】

【0035】
特定の式(III)の溶媒は、引火点>55℃(PMCC=ペンスキー−マルテンス密閉カップ法)である本発明にしたがった一般式(I)の溶媒の実施態様の1例である。特定の式(III)を有する溶媒は、これは水と混和しないか、または体積で水2%未満を吸収する本発明にしたがった一般式(I)の溶媒の実施態様の1例である。
【0036】
本発明にしたがった式(I)を有する溶媒は、その引火点が高いほど比例して安全である。従って、本発明の実施態様においては、引火点>55℃(PMCC)である式(I)の溶媒を使用する。輸送に関する法律の理由から、式(I)の溶媒の特定の実施態様では引火点≧62℃(PMCC)である。
【0037】
本発明にしたがった洗浄法の特定の実施態様の場合、洗浄剤または溶媒の調製は蒸留で行われる。さらなる特別の実施態様の場合、このような蒸留は減圧下(真空蒸留)で行われる。式(I)に従って使用される溶媒の多くの実施態様では、1013mbarでの引火点<215℃である。このことは蒸留による溶媒の調製でのエネルギー消費が少ないという利点を有する。
【0038】
本発明の特定の実施態様では、洗浄剤は一定割合で洗浄増強溶剤(または洗浄活性化剤)を含む。他の実施態様では、洗浄方法の実行中に洗浄剤の割合に対して洗浄増強溶剤が計量される。さらに他の実施態様では、別の様式での洗浄方法の実施中に、洗浄すべき製品を洗浄増強溶剤と別々に接触させる。
【0039】
洗浄増強溶剤(または洗浄活性化剤)は洗浄効果を改善するための界面活性製剤である。洗浄増強溶剤のさらなる機能には、湿った汚れの除去を改善するための水の乳化、ならびに繊維の布地からの顔料および塩の分離を改善してその再沈着を防止するための溶媒中の顔料および塩の分散が含まれる。多くの洗浄増強溶剤は洗浄槽中に溶解した微細な顔料を安定化し、これにより洗浄すべき素材が色変わりすることを防止する。洗浄増強溶剤はまた、抗腐食添加物、または「簡単な仕上がり」特性で手触りを向上させる非イオン性もしくは陽イオン性界面活性剤、または仕上げ剤とすることも可能である。洗浄増強溶剤の多くは繊維の手入れにおいて衛生上の効果をもたらすが、一方、他の成分は乾燥段階で洗浄すべき素材の静電蓄積を低減または回避し、これにより例えばウールの場合、毛羽立ちが顕著に減少する。
【0040】
本発明の特定の実施態様では、洗浄剤は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、殺菌剤、保存剤、感触向上剤、仕上げ剤、芳香物質、水、保存剤、臭気吸収剤、溶解中間体、腐食抑制剤、脱臭剤、乳化剤、表面処理剤、帯電防止成分、フッ化炭素樹脂またはこれらの組み合わせより選択される洗浄増強溶剤を一定の割合で有する。
【0041】
ここで考えられる陰イオン性界面活性剤は、例えばアルキルエステルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩などの硫酸塩、スルホン酸塩、カルボン酸塩、リン酸塩および脂肪酸を含み、これらは、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリまたはアルカリ土類金属、またはアンモニウム、もしくは例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンなどのアンモニウム化合物から選択され得る陽イオンと併用して、繊維、皮革および毛皮製品の化学洗浄用の洗浄増強溶剤としてこの分野の専門家に適している。
【0042】
ここで考えられる非イオン性界面活性剤には、繊維、皮革および毛皮製品の化学洗浄用の洗浄増強溶剤として専門家に知られている、アルキレンオキシド、例えばエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドのなどの脂肪族アルコールの縮合生成物が挙げられ、ここでは脂肪族アルコールのアルキル鎖は、直鎖または分岐であり飽和または不飽和で、プロピレンオキシドとプロピレングリコールとの縮合により形成される疎水性塩基とエチレンオキシドとの縮合生成物、ならびに、プロピレンオキシドとエチレンジアミンとの反応生成物とエチレンオキシドとの縮合生成物とすることが可能である。さらに考えられる非イオン性界面活性剤は、C10−〜C18−アルキル残基を有する水溶性アミンオキシド、水溶性ホスフィンオキシドおよび水溶性スルホキシドを含む。さらに、繊維、皮革および毛皮製品の化学洗浄用の洗浄増強溶剤として専門家に知られた非イオン性界面活性剤は、C8−〜C20−脂肪族アルキル残基を有するアルキルおよびアルケニルオリゴグリコシドならびに脂肪酸ポリグリコールエステルまたは脂肪族アミンポリグリコールエステル、アルコキシル化トリグリカミド、脂肪酸−N−アルキルグルカミド、ホスフィンオキシド、ジアルキルスルホキシド、混合エーテルまたは混合ホルミルおよびタンパク質加水分解物、ならびにアルキルフェノールのポリエチレン、プロピレンおよびポリブチレンオキシド縮合物である。
【0043】
両性または双性イオン界面活性剤の例では、繊維、皮革および毛皮製品の化学洗浄用の洗浄増強溶剤として専門家に知られるアルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、アルキルジメチルベタイン、アルキルジポリエトキシベタイン、アミノプロピオン酸塩、アミノグリシン酸塩および両性イミダゾリニウム化合物が挙げられる。
【0044】
繊維、皮革および毛皮製品の化学洗浄用の洗浄増強溶剤として専門家に知られる陽イオン性界面活性剤は、R1N(CH33+-、R12N(CH33+-、R123N(CH3+-またはR1234+-のタイプの置換または非置換で、直鎖または分岐第4級アンモニウム塩を含み、式中、R1、R2、R3およびR4はアルキル、ヒドロキシアルキル、フェニル、アルケニルまたはアラルキル残基であり、X-は当業者に適していることが知られた陰イオンである。
【0045】
特定の実施態様では、洗浄剤は水素プロトン供与体、遊離水素プロトンおよび/または遊離カルボニル化合物を捕捉する化学洗浄剤に適した物質も一定割合で有する。例えばその目的に適した塩基性化合物の添加により、存在するプロトン供与体が中和反応し、溶媒のプロトン触媒分解が不能になることで、洗浄剤は安定化し得る。
【0046】
水素プロトン供与体、遊離水素プロトンおよび/または遊離カルボニル化合物を捕捉する化学洗浄剤に適した上述の物質は、例えば炭酸ナトリウム塩または炭酸カリウム塩などのアルカリ金属炭酸塩、ならびに例えばキチン、尿素、アミノグアニジン、フェニルビグアニジン、アミノフェノール(ポリマー)およびアミノ基含有イオン交換体などの1つ以上の遊離アミノ基を有する化合物から無制限に選択することが可能である。遊離アミノ基を1つ以上有する化合物は、シッフ塩基(アゾメチン)を形成するカルボニル化合物に結合することが可能である。同時にこれらのアミノ化合物は塩基として反応し、アンモニウム化合物の形成物との中和反応でプロトン供与体と反応する。そのpHが安定化することにより、発生して溶媒分解をまねく可能性がある酸触媒加水分解反応が防止され、または少なくとも顕著に制限される。
【0047】
水素プロトン供与体、遊離水素プロトンおよび/または遊離カルボニル化合物を捕捉する化学洗浄剤に適した物質は、洗浄剤の他の物質より沸点が高く、化学洗浄剤蒸留において蒸留器内に残って洗浄すべき素材と結合しないように熱安定的であることが好ましい。前記化合物が洗浄剤に可溶でなければ、その代わりとして保存タンクで保存している洗浄剤に前記化合物を入れることは可能であり、そうすることでその場合、前記化合物は洗浄すべき素材と接触することもない。プロトンおよびカルボニル化合物の捕捉反応は、本明細書では不均一反応で起こり、非蒸留洗浄工程について予測することも可能である。
【0048】
特定の実施態様では洗浄剤はまた、繊維、皮革または毛皮製品の洗浄に適し、式(I)の溶媒とは異なる溶媒を一定割合で有する。他の実施態様では、洗浄工程の実行中、繊維、皮革または毛皮製品の洗浄に適し、式(I)の溶媒とは異なる溶媒が洗浄剤に添加されている。さらに他の実施態様では、洗浄方法の実行中、いくつかの他の手段で、繊維、皮革または毛皮製品の洗浄に適し、式(I)の溶媒とは異なる溶媒と、洗浄すべき製品とを別々に接触させる。
【0049】
繊維、皮革または毛皮製品の洗浄に適し、式(I)の溶媒とは異なる別の溶媒には、繊維、皮革または毛皮製品の洗浄に適し、式(I)の溶媒とは異なるすべての溶媒、例えば本明細書の冒頭にある化学洗浄に使用される従来の溶媒が挙げられる。特に、繊維、皮革または毛皮製品の洗浄に適し、式(I)の溶媒とは異なる溶媒には、ペルクロロエチレン、芳香族炭化水素、ベンジン、ストダード溶剤、ホワイトスピリット、塩化炭化水素、フルオロ塩化炭化水素、イソパラフィン(KWL)、シクロシロキサンD5、液体二酸化炭素およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0050】
本発明のさらなる態様では、一般式(I)を有する上述の溶媒は、繊維、皮革または毛皮製品の化学洗浄用洗浄剤の生成、または繊維、皮革および毛皮製品の予備処理(染み抜き)用薬剤の生成のための上述の実施態様のうち1つ以上の多様な実施態様に使用され、前記洗浄剤は本発明にしたがった洗浄剤について前述した1つ以上の特徴を選択的に有する。
【0051】
例えばそれに応じて生成された洗浄剤は、特定の実施態様において、一般式(I)を有する一定割合の洗浄剤以外に、一定割合の洗浄増強溶剤、および/または繊維、皮革または毛皮製品の洗浄に適し、式(I)の溶媒とは異なる一定割合の別の溶媒をも含む。
【0052】
本発明の別のさらなる態様では、繊維、皮革または毛皮製品を化学的に洗浄する方法における液体洗浄剤の使用が請求され、ここでは洗浄剤は、上述の実施態様のうちの1つ以上の異なる実施態様における一般式(I)の一定割合の溶媒、一定割合の洗浄増強溶剤、および/または繊維、皮革または毛皮製品の洗浄に適し、溶媒式(I)とは異なる一定割合の別の溶媒を有し、さらに化学洗浄処理は、化学洗浄機内で達成されることが好ましい。
【0053】
最初の開示の目的のために、本明細書、図面および請求項から当業者に理解され得るすべての特徴は、たとえそれらが特定の他の特徴に関して特定の用語でのみ記述されているとしても、それが明確に排除されていない限り、単独でも、本明細書で開示された他の特徴または特徴群との任意の組み合わせでも併用することが可能であり、そうでなければ技術的態様がこのような組み合わせを不可能または無意味なものにすることが指摘されている。特徴のすべての考え得る組み合わせの包括的な明示は、本明細書の簡潔さおよび読み易さだけのために本明細書では省略するものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維、皮革または毛皮製品を化学的に洗浄する方法であって、洗浄すべき製品を洗浄剤と接触させ、前記洗浄剤は少なくとも1種の溶媒を含み、前記少なくとも1種の溶媒は一般式(I)の化合物であることを特徴とする方法。
【化1】

(式中、xは1〜10の整数であり、R1、R2、R3およびR4は、互いに独立して以下から選択される:
−H、
−非置換または置換された、直鎖または分岐C1−〜C22−アルキル残基、
−単独または複合的に不飽和であり非置換または置換された、直鎖または分岐C1−〜C22−アルケニル残基、
−エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのホモおよびブロック−コ−ポリマーから選択されるポリアルキレンオキシド、
−非置換もしくは置換された、カルボ−または複素環式C3−〜C6−シクロアルキル残基、
−単独もしくは複合的に不飽和であり非置換もしくは置換された、カルボ−または複素環式C3−〜C6−シクロアルケニル残基、ならびに
−一般式(II)のアリール
【化2】

式中、nは0〜22の整数であり、R5、R6、R7、R8、R9、R10およびR11は、互いに独立して以下から選択される:
−H、
−非置換または置換された、直鎖または分岐C1−〜C22−アルキル残基、
−単独または複合的に不飽和であり非置換または置換された、直鎖または分岐C1−〜C22−アルケニル残基、
−エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのホモおよびコポリマーから選択されるポリアルキレンオキシド、
−非置換もしくは置換された、カルボ−または複素環式C3−〜C6−シクロアルキル残基、ならびに
−単独もしくは複合的に不飽和であり非置換もしくは置換された、カルボ−または複素環式C3−〜C6−シクロアルケニル残基)
【請求項2】
2およびR4が互いに独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、n−デシル、イソトリデシル、フェニル、ベンジル、フェニルエチルおよびノニルフェニル残基から選択可能であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
xが1〜5の整数であり、
−R1およびR3が、互いに独立してH、非置換もしくは置換された、直鎖もしくは分岐C1−〜C8−アルキルまたはC1−〜C8−イソアルキル残基から選択され、また、
−R2およびR4が、互いに独立して非置換もしくは置換された、直鎖もしくは分岐C1−〜C13−n−アルキルまたはC1−〜C13−イソアルキル残基、非置換もしくは置換された、C5−またはC6−シクロアルキル、フェニル、ベンジルまたは2−フェニルエチル残基から選択される、ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
xが1〜5の整数であり、
1およびR3がHであり、また、
2およびR4が、互いに独立して、非置換もしくは置換された、直鎖もしくは分岐C1−〜C8−n−アルキルまたはC1−〜C8−イソアルキル残基から選択される、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
置換されたR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10またはR11が存在するとき、それらが−Cl、−Br、−I、−NO2、−NR2、−COOR、−C(O)R、−CONHR、−CONR2から選ばれる少なくとも1つで置換されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1種の溶媒が式(III)の化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【化3】

【請求項7】
前記溶媒が、引火点>55℃もしくは引火点≧62℃、および/または1013mbarでの沸点<215℃であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記洗浄剤が一定割合の洗浄増強溶剤を含むか、または前記洗浄方法の実行中に洗浄増強溶剤を前記洗浄剤に計量しながら添加するか、または前記洗浄方法の実行中に洗浄すべき前記製品を洗浄増強溶剤とも接触させることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記洗浄剤が水素プロトン供与体、遊離水素プロトンおよび/または遊離カルボニル化合物を捕捉する化学洗浄剤に適した物質を付加的に含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記洗浄剤が、繊維、皮革または毛皮製品の洗浄に適し、式(I)の溶媒とは異なる別の溶媒を一定割合で有するか、または前記洗浄方法の実行中に、繊維、皮革または毛皮製品の洗浄に適し、式(I)の溶媒とは異なる別の溶媒を前記洗浄剤に計量しながら添加するか、または前記洗浄方法の実行中に、洗浄すべき前記製品を、繊維、皮革または毛皮製品の洗浄に適し、式(I)の溶媒とは異なる別の溶媒とも接触させることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
繊維、皮革および毛皮製品の前記化学洗浄のための洗浄剤を生成するための請求項1〜7のいずれかに記載の特徴を有する一般式(I)または式(III)の溶媒の使用。
【請求項12】
前記洗浄剤が、請求項1〜7のいずれかに記載の特徴を有する一般式(I)または式(III)の溶媒を一定の割合で有し、および洗浄増強溶剤を一定割合で有し、および/または繊維、皮革または毛皮製品の洗浄に適し、式(I)の溶媒とは異なる別の溶媒を一定割合で有することを特徴とする請求項11記載の使用。
【請求項13】
洗浄剤が、請求項1〜7のいずれかに記載の特徴を有する一般式(I)または式(III)の溶媒を一定の割合で有し、および洗浄増強溶剤を一定割合で、および/または繊維、皮革または毛皮製品の洗浄に適し、式(I)の溶媒とは異なる別の溶媒を一定割合で有することを特徴とする、繊維、皮革または毛皮製品を化学的に洗浄する方法に使用するための液体洗浄剤。
【請求項14】
前記洗浄増強溶剤が、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、殺菌剤、保存剤、感触向上剤、仕上げ剤、芳香物質、水、保存剤、臭気吸収剤、帯電防止成分、溶解中間体、腐食抑制剤、脱臭剤、乳化剤、表面処理剤、フッ化炭素樹脂またはこれらの組み合わせより選択されることを特徴とする請求項9記載の方法、請求項12記載の使用、および請求項13記載の洗浄剤。
【請求項15】
繊維、皮革または毛皮製品の洗浄に適し、式(I)の溶媒とは異なる別の溶媒が、ペルクロロエチレン、芳香族炭化水素、ベンジン、ストダード溶剤、ホワイトスピリット、塩化炭化水素(CKW)、フルオロ塩化炭化水素(FCKW)、イソパラフィン(KWL)およびシクロシロキサンD5(デカメチルシクロペンタシロキサン)ならびにこれらの組み合わせから選択されることを特徴とする請求項10記載の方法、請求項12記載の使用、および請求項13記載の洗浄剤。

【公表番号】特表2012−530856(P2012−530856A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516635(P2012−516635)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058318
【国際公開番号】WO2010/149521
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(511303386)ケミッシェ ファブリーク クロイスラー ウント コー.ゲーエムベーハー (1)
【氏名又は名称原語表記】CHEMISCHE FABRIK KREUSSLER & CO.GMBH
【Fターム(参考)】