説明

繊維ならびに紙用撥水撥油加工剤

【課題】環境に配慮したPFOAおよび/またはPFOS含有量を出来るだけ少なくし、より安心および安全を配慮した洗濯耐久性のある繊維ならびに紙用撥水撥油剤を提供することを課題とする。
【解決手段】フッ素系化合物を含有しない化合物(A)に、PFOAおよび/またはPFOS含有量が高速液体クロマトグラフィー質量分析計(LC−MS)にて測定したとき検出限界値未満であるフッ素系化合物(B)と架橋剤(C)を混合したものからなる、繊維ならびに紙用撥水撥油加工剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維、テキスタイル、紙に対しての撥水撥油剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からのフッ素系化合物を用いない撥水加工剤は環境に配慮した撥水剤で撥水性は良好であるが、撥油性がなく本発明の目的を達成できるものではない(特許文献1、2)。
また近年、フッ素系化合物の撥水撥油剤に人体への安全性、環境負荷を及ぼす可能性のある物質、例えばパーフルオロオクタン酸(以下、PFOA)、パーフルオロオクタスルホン酸(以下、PFOS)等が含有することが判明している(特許文献3)。該物質を含有しないか、あるいは出来るだけ含有量の少ないフッ素系撥水撥油剤が要望されている。該環境配慮型フッ素系化合物の撥水撥油剤として3、4種類の化合物が提案されているが、より安心および安全を配慮した撥水撥油剤は少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭60−22103号公報
【特許文献2】特開2000−212891号公報
【特許文献3】特公平4−5786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる現状を鑑み、環境に配慮した繊維布帛への撥水剤であるフッ素系化合物を含有しない撥水剤にPFOAおよび/またはPFOS含有量の少ない撥水撥油剤を複合化することにより、現在環境配慮型フッ素系化合物の撥水撥油剤として提案されているものよりPFOAおよび/またはPFOS含有量をさらに少なくし、より安心および安全を配慮した洗濯耐久性のある撥水撥油剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を達成するために、環境問題に配慮したフッ素系化合物を含有しない化合物(A)ならびにPFOAおよび/またはPFOS含有量が高速液体クロマトグラフィー質量分析計(LC−MS)にて測定したとき検出限界値未満であるフッ素系化合物(B)と架橋剤(C)を組み合わせて、洗濯耐久性のある良好な撥水撥油性能を付与するための加工剤、加工方法の提供、ならびにそれを用いて繊維、繊維布帛、紙を処理・加工するものである。
【発明の効果】
【0006】
前述の解決手段を採用することにより、環境、生物に配慮した撥水撥油剤で、繊維、繊維布帛に洗濯耐久性の良好な撥水撥油性能が付与でき、衣料用途、産業資材用途等に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の効果を最大限に発揮させるための具体的な内容は、シリコン系化合物、ワックス系化合物、ワックス−ジルコニウム系化合物、アルキレン尿素系化合物、脂肪族アマイド系化合物の少なくとも1種であるフッ素系化合物を含有しない化合物(A)、PFOAおよび/またはPFOS含有量が高速液体クロマトグラフィー質量分析計(LC−MS)にて測定したとき検出限界値未満であるフッ素系化合物(B)、ならびに架橋剤(C)を複合化(配合)した撥水撥油剤である。
【0008】
本発明のフッ素系化合物を含有しない化合物(A)のシリコン系化合物とは、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサン反応型(OH基)ジメチルポリシロキサンなどのシリコン系化合物の少なくとも1種を言う。また、ワックス系化合物とは、通常の蝋などのワックスを始め、合成パラフィンワックス、パラフィン蝋などの少なくとも1種を言うが、これに限定されるものではない。なお、合成パラフィンでは低融点のもの、高融点のものなど多数あるが、高融点のパラフィンワックスが好適である。またパラフィンにアクリル酸エステル系の重合物を共存させた変性物も本発明の目的を達成させるために活用できる。
【0009】
また、ワックスージルコニウム系化合物とは、前述のワックス系化合物をジルコニウム系化合物、具体的には酢酸ジルコニウム、塩酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、水酸化カリウムなどによる塩基性ジルコニウムなどを反応させたものの少なくとも1種を言う。
【0010】
アルキレン尿素化合物とは、オクタデシルエチレン尿素、あるいは、それの変性物の少なくとも1種を言う。
【0011】
また、脂肪族アマイド系化合物とは、N−メチロールステアリルアマイド、あるいはそれの変性物などの高級脂肪酸アマイド誘導体の少なくとも1種を言う。
【0012】
これらのフッ素系化合物を含有しない化合物(A)は、単独もしくは2種以上を併用使用して用いてもよい。また、これらのうち華氏130〜155°F融点温度のパラフィンワックスが特に本発明を達成するのに適している。
【0013】
本発明のフッ素系化合物(B)は、環境負荷物のPFOAおよび/またはPFOS対策を講じたフッ素系撥水撥油剤を言うものであり、かかる化合物に含有されるPFOAおよび/またはPFOSの量は、高速液体クロマトグラフィー質量分析計(LC−MS)で測定した時に、検出限界未満のものである。現在の検出限界は、2〜5ppbである。
【0014】
また、フッ素系化合物(B)は、環境負荷物とされているパーフルオロアルキル基のC8以上のフッ素アルキル基を含有せず、環境負荷のないC6以下にフッ素アルキル基を調整したものである。
【0015】
フッ素系化合物(B)は、下記式1で表わせるフッ素鎖長限定のパーフルオロアルキル基を含有するアクリレート系化合物で、該アクリレート系化合物を1種または2種以上の化合物からなる重合体または共重合体である。また、該アクリレート系化合物は他の重合性化合物、例えばアクリル酸、メタクリル酸、スチレン、塩化ビニルなどのビニル系化合物との共重合体を含むものである。
【0016】
[−CH−C(R)(COOCHCH)−]n ・・・式1
式1において、Rは水素または低級アルキル基であり、RはC2m+1で表わされるパーフルオロアルキル基である。また、mは1〜6までの整数であり、nは10〜200までの整数である。
【0017】
本発明の架橋剤(C)とは、カルボジイミドならびにその誘導体であるカルボジイミド系化合物、尿素とグリオキザール、ホルムアルデヒドとの反応物、あるいはジメチル尿素とグリオキザールの反応物の如きグリオキザール系化合物、ヘキサメチロールメラミン、トリメチロールメラミンなどのメラミン系化合物、イソシアネート系架橋剤、トリアジン環含有化合物の少なくとも1種を言う。
【0018】
イソシアネート系架橋剤としては、トリイソシアネート系化合物、ジイソシアネート系化合物がよく、それらのポリイソシアネート化合物でもよく、これらの少なくとも1種を言い、イソシアネート末端をブロック化し、水分散させて用いる。ブロック化剤としては、メチルエチルケトオキシム、ピラゾールなどの言うが、これに限定されるものではない。
具体的なイソシアネート系化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレントリイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどがあるが、特にヘキサメチレンジイソシアネートのトリスビュレット変性体などのヘキサメチレンジイソシアネートの変性物であるトリイソシアネート系化合物が好ましい。
【0019】
トリアジン環含有化合物とは、トリアジン環を含有し、かつ、重合性官能基を少なくとも2個含有する化合物である。
【0020】
また、エポキシ系化合物、多官能型などのアジリジン系化合物、ジアルデヒド系化合物、オキサゾリン系化合物、酢酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩酸アルミニウムなどのアルミニウム系化合物、炭素数が1〜4のアルキル基を有するチタンやアルミニウムのアルコキシド化合物などの有機金属系化合物、さらには、ワックス‐ジルコニウム系化合物以外の撥水性化合物原体に対し、酢酸ジルコニウム、塩酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩基性ジルコニウムなどのジルコニウム系化合物なども本発明に言う架橋剤を意味する。
【0021】
これらの架橋剤は、単独もしくは2種以上を併用使用して用いてもよい。また、特に低温反応型架橋剤がよい。
【0022】
フッ素系化合物を含有しない化合物(A)に、環境配慮型のフッ素系化合物(B)と架橋剤(C)を混合することにより、環境に配慮した洗濯耐久性の良好な繊維ならびに紙用撥水撥油剤を得ることが出来る。フッ素系化合物を含有しない化合物(A)の単独使用では洗濯耐久性が得られず、環境配慮型のフッ素系化合物(B)を用いなければ撥油性は得られない。また架橋剤(C)を用いなければ、洗濯耐久性を得ることが出来ない。
【0023】
これら(A)、(B)、(C)の3成分を用いることで該問題が回避でき本発明の目的を達成することが出来る。具体的には(A)成分が25〜95質量%、(B)成分が5〜75質量%、(A)成分および(B)成分の合計100質量%に対して、(C)成分が10〜100質量%の範囲で用いることがよく、その中でも特に、(A)成分が60〜90質量%、(B)成分が10〜40質量%、(A)成分および(B)成分の合計100質量%に対して、(C)成分が40〜65質量%の範囲が効果的である。
【0024】
この際、フッ素系化合物を含有しない化合物(A)成分が95質量%以上であれば繊維布帛に加工したときにチョークマークがきつくでてしまい、一方25質量%以下ならば撥水性が低下、またPFOAおよび/またはPFOS含有量のさらなる低下につながらなく本発明の目的を達成することが出来ない。環境配慮型のフッ素系化合物(B)が5質量%以下であれば繊維布帛に加工したときに撥油性が得られず、75質量%以上であればPFOAおよび/またはPFOS含有量のさらなる低下につながらなく本発明の目的を達成することが出来ない。また、架橋剤(C)が10質量%以下ならば洗濯耐久性が得られず、100質量%以上であれば100質量%のとき以上の洗濯耐久性の効果は得られず、なおかつ繊維において実用性のない粗悪な風合になる。
【0025】
本発明において、フッ素系化合物を含有しない化合物(A)と、PFOAおよび/またはPFOS含有量が高速液体クロマトグラフィー質量分析計(LC−MS)にて測定したとき検出限界値未満であるフッ素系化合物(B)と架橋剤(C)とを複合化(配合)して用いることにより、撥水撥油性能の洗濯耐久性を向上させるものであるが、具体的にはパラフィンワックスに酢酸ジルコニウムまた塩酸ジルコニウムと該フッ素系化合物とイソシネート系架橋剤を配合する方法、ハイドロジェンポリシロキサンと該フッ素化合物とカルボジイミドを配合する方法などがあげられる。
また、帯電防止性を付与するための帯電防止剤、風合い調整のための柔軟剤、紫外線遮蔽加工のための紫外線吸収剤、処理液安定性の向上のための界面活性剤、抗菌性付与のための抗菌剤、架橋用の触媒等の併用も可能である。
【0026】
本発明において、前述したような方法で繊維ならびに紙用加工剤を製造するが、それらの加工剤を用いて繊維・繊維布帛・紙に加工剤を付与する方法としては次のような方法があげられる。前述の方法で製造した加工剤を浸漬法、パディング法、印捺法、コーティング法、スプレー法などで繊維・繊維布帛・紙に付与した後、自然乾燥もしくは熱乾燥させる。さらに乾燥後、100〜180℃の温度で熱処理を施すとさらに繊維・繊維布帛に対して洗濯耐久性に優れた撥水撥油性能が付与できる。
【0027】
なお、かかる加工品は洗濯によっても撥水撥油性能の耐久性が持続するが、より効果的には洗濯後に60℃以上の熱を掛けるとより一層撥水撥油性能が回復して良好な性能維持が図れる。
【0028】
本発明の加工剤を用いて加工する際に、適用素材は特に限定しないが、合成繊維ではポリエステル系合成繊維、ポリアミド合成繊維、天然素材としては、木綿、麻、絹、羊毛などの資材、ならびにそれらと合成繊維との混紡、交織物、交編物、さらにはレーヨンなどの半合成繊維ならびにそれと天然繊維との混紡、交織物、交編物が上げられる。形体としては、糸、綿の形態、織物、編物、不織布などの布帛の形態などいずれの形態でもよい。
【0029】
本発明の加工剤を用いて加工する製品形態としては、以下のものが挙げられる。通常のコート、レインコート、スキーウエア、ゴルフパンツ、ウインドブレーカーなどのアウトドア用スポーツ衣料、一般カジュアル衣料、帽子、シューズ、ならびに各種作業衣などの衣料資材、あるいは傘、テント、農業用シートカバー、建築・土木用シートカバーなどの産業資材、さらにはハンバーガーなど食品の包装紙などに適用できる。
【0030】
以下、実施例によりさらに本発明について詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例より何ら限定されるものではない。なお、本発明に言う撥水度とはJIS L−1092スプレー法、撥油度とはAATCC 118法に基づいて測定を行い、級判定をした。
【0031】
本発明における洗濯耐久性のデータ取りは、JIS L−0217 103法に基づいて行った。
【実施例】
【0032】
(乳化物1)
パラフィンワックスを25質量%、酢酸ジルコニウムを3質量%、非イオン系界面活性剤を3質量%、残りが水でトータル100質量%としたパラフィンワックス系撥水剤を調整した。
(乳化物2)
フッ素系化合物(B)は、下記式1で表わせるフッ素鎖長RがCFからC13のパープルオロアルキル基を含有するアクリレート系化合物の共重合体であり、該フッ素系化合物の固形分30%に調整した。
【0033】
[−CH−C(R)(COOCHCH)−]n ・・・式1
(乳化物3)
ハイドロジェンシリコンを20質量%、乳化剤を2質量%、残りが水でトータル100質量%としたシリコン系撥水剤を調整した。
【0034】
架橋剤(C)としては、パラキャットPGE(大原パラヂウム化学(株)社製、ブロックイソシアネート系化合物が40%含有した乳化物3]である。
(配合物1)
乳化物1で得られたパラフィンワックス系撥水剤を80質量%、乳化物2で得られたフッ素系化合物を20質量%配合し、乳化物1および乳化物2の合計100質量%に対して、パラキャットPGEを35質量%配合した撥水撥油剤を調整した。
(配合物2)
乳化物1で得られたパラフィンワックス系撥水剤を80質量%、乳化物2で得られたフッ素系化合物を20質量%配合し、乳化物1および乳化物2の合計100質量%に対して、パラキャットPGEを10%質量配合した撥水撥油剤を調整した。
(配合物3)
乳化物1で得られたパラフィンワックス系撥水剤を80質量%、乳化物2で得られたフッ素系化合物を20質量%配合し、乳化物1および乳化物2の合計100質量%に対して、パラキャットPGEを90質量%配合した撥水撥油剤を調整した。
(配合物4)
乳化物3で得られたシリコン系撥水剤を40質量%、乳化物2で得られたフッ素系化合物を60質量%配合し、乳化物1および乳化物2の合計100質量%に対して、パラキャットPGEを35質量%配合した撥水撥油剤を調整した。
【実施例1】
【0035】
配合物1で得られた撥水撥油剤を5質量%、残りが水で100質量%の加工液を調整した。かかる加工液にポリエステル100%加工糸織物を浸し、マングルにて絞り率が100%になるように絞った。ついで110℃で予備乾燥後、140℃で2分間熱処理をした。この加工布の撥水度は5級、撥油度は6級であった。なお、洗濯後、タンブルドライヤーで乾燥する作業を繰り返し20回実施した後の撥水度は5級、撥油度は5−6級であり、撥水撥油性の洗濯耐久性が良好であることが確認できた。
【実施例2】
【0036】
配合物2で得られた撥水撥油剤を用いて、実施例1と同様の操作にて得られた加工布の撥水撥油を測定した。洗濯前の撥水度は5級、撥油度は6級であり、洗濯後の撥水度は5級、撥油度は5−6級であり、撥水撥油性の洗濯耐久性が良好であることが確認できた。
【実施例3】
【0037】
配合物2で得られた撥水撥油剤を用いて、実施例1と同様の操作にて得られた加工布の撥水撥油を測定した。洗濯前の撥水度は5級、撥油度は6級であり、洗濯後の撥水度は5級、撥油度は5−6級であり、撥水撥油性の洗濯耐久性が良好であることが確認できた。
(比較例1)
乳化物1で得られたパラフィンワックス系撥水剤を80質量%、乳化物2で得られたフッ素系化合物を20質量%配合し、乳化物1および乳化物2の合計100質量%に対して、パラキャットPGEを0質量%配合した撥水撥油剤を調整した。調整した撥水撥油剤を用いて、実施例1と同様の操作にて得られた加工布の撥水撥油を測定した。洗濯前の撥水度は5級、撥油度は6級であり、洗濯後の撥水度は1級、撥油度は0−2級であり、洗濯耐久性が乏しいものになった。
(比較例2)
乳化物1で得られたパラフィンワックス系撥水剤を80質量%、乳化物2で得られたフッ素系化合物を20質量%配合し、乳化物1および乳化物2の合計100質量%に対して、パラキャットPGEを150質量%配合した撥水撥油剤を調整した。調整した撥水撥油剤を用いて、実施例1と同様の操作にて得られた加工布の撥水撥油を測定した。洗濯前の撥水度は5級、撥油度は6級であり、洗濯後の撥水度は5級、撥油度は5−6級であり、架橋剤を増加した効果は得られなかった。
(比較例3)
乳化物1で得られたパラフィンワックス系撥水剤を99質量%、乳化物2で得られたフッ素系化合物を1質量%配合し、乳化物1および乳化物2の合計100質量%に対して、パラキャットPGEを35質量%配合した撥水撥油剤を調整した。調整した撥水撥油剤を用いて、実施例1と同様の操作にて得られた加工布の撥水撥油を測定した。洗濯前の撥水度は5級、撥油度は0級であり、洗濯後の撥水度は5級、撥油度は0級であり、撥油性は得られなかった。
(比較例4)
乳化物1で得られたパラフィンワックス系撥水剤を0質量%、乳化物2で得られたフッ素系撥水撥油剤を100質量%配合し、乳化物1および乳化物2の合計100質量%に対して、パラキャットPGEを0質量%配合した撥水撥油剤を調整した。調整した撥水撥油剤を用いて、実施例1と同様の操作にて得られた加工布の撥水撥油を測定した。洗濯前の撥水度は5級、撥油度は6級であり、洗濯後の撥水度は5級、撥油度は5−6級であり、実施例1〜3と効果は同等だが、PFOAおよび/またはPFOS含有量が多いものである。
【0038】
【表1】

【実施例4】
【0039】
配合物4で得られた撥水撥油剤を用いて、実施例1と同様の操作にて得られた加工布の撥水撥油を測定した。洗濯前の撥水度は4−5級、撥油度は4級であり、洗濯後の撥水度は4級、撥油度は2−3級であり、撥水撥油性があることが確認できた。
(比較例5)
乳化物3で得られたシリコン系撥水剤を100質量%、乳化物2で得られたフッ素系化合物を0質量%配合し、乳化物3および乳化物2の合計100質量%に対して、パラキャットPGEを35質量%配合した撥水撥油剤を調整した。調整した撥水撥油剤を用いて、実施例1と同様の操作にて得られた加工布の撥水撥油を測定した。洗濯前の撥水度は4−5級、撥油度は0級であり、洗濯後の撥水度は3級、撥油度は0級であり、撥油性は得られなかった。
【0040】
【表2】

【実施例5】
【0041】
配合物1で得られた撥水撥油剤を10質量%、残りが水で100質量%の加工液を調整した。かかる加工液を紙に塗布量が100%になるようにスプレー法にて処理した。ついで110℃で予備乾燥後、140℃で2分間熱処理をした。この加工紙に植物油をのせたところ、滲み込みはなく、撥油性があることが確認できた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素系化合物を含有しない化合物(A)に、パーフルオロオクタン酸および/またはパーフルオロオクタンスルホン酸含有量が高速液体クロマトグラフィー質量分析計(LC−MS)にて測定したとき検出限界値未満であるフッ素系化合物(B)と架橋剤(C)を混合し、(A)成分が25〜95質量%および(B)成分が5〜75質量%を含む組成物において、(A)成分および(B)成分の合計100質量%に対して、(C)成分が10〜100質量%である繊維ならびに紙用撥水撥油加工剤。
【請求項2】
フッ素系化合物を含有しない化合物(A)成分は、シリコン系化合物、ワックス系化合物、ワックス−ジルコニウム系化合物、アルキレン尿素系化合物、脂肪族アマイド系化合物の少なくとも1種であり、および架橋剤(C)成分は、カルボジイミド系化合物、グリオキザール系化合物、メラミン系化合物、イソシアネート系化合物、トリアジン環含有化合物、エポキシ系化合物、アゾリジン系化合物、アルミニウム系化合物、有機金属系化合物、ジアルデヒド化合物、オキザゾリン系化合物の少なくとも1種である、請求項1に記載の繊維ならびに紙用撥水撥油加工剤。



【公開番号】特開2010−229593(P2010−229593A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78750(P2009−78750)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(391034938)大原パラヂウム化学株式会社 (19)
【Fターム(参考)】