説明

繊維ガイドエレメントを備えた精紡部

本発明は、繊維ガイドエレメント(3)を備えた空気精紡機の精紡部(6)に関する。供給しようとする繊維束(1)の外繊維の解撚を高め、ひいては糸品質を改善し、ならびに供給方向(34)に対して平行に位置する繊維エレメントを停滞させないようにするために、入口縁部(32)における、繊維ガイド面(5)の方向に対する繊維束(1)の供給方向(34)が、角度αで傾斜しており、入口縁部(32)が、繊維ガイドエレメント(3)の内側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の形式の、繊維ガイドエレメントを備えた精紡部に関する。
【0002】
本発明は、空気紡績機の技術分野に関する。空気精紡機は、多数の精紡部(精紡箇所)を備えている。各精紡部で、供給される繊維長さ構造物から糸が精紡される。この場合繊維長さ構造物は先ず細くされ、つまり長さ単位あたりの繊維量がドラフトによって小さくされる。次いで細くされた繊維束は、精紡部で加撚されることによって精紡されて、糸が作られる。このために精紡部は、繊維ガイド面を有する繊維ガイドエレメントを備えており、繊維ガイド面は、繊維束を旋回流チャンバにガイドし、そこで公知のエアジェットスピニング法によってスピンドルにおいて糸が作られる。
【0003】
ドラフト機構からスピンドルへの移行部分における、繊維束の極めて高い速度に起因して、スピンドルに前置された繊維ガイドエレメントへの進入を最適に構成する必要がある。高いドラフト機構速度によって、送出ローラ−接触線(ニップライン)の領域で比較的強い空気流が生じる。この空気流によって、繊維束の剥離が生じ得る。図1には、内部に繊維ガイド面5の形成された、チューブ3として形成された繊維ガイドエレメントを示した。前置されたドラフト機構の送出ローラ対2から、繊維束1がチューブ3を通ってガイドされる。
【0004】
このために欧州特許第1335050号明細書ではチューブが提案されており、チューブに、それぞれ傾斜した2つの繊維ガイド面が配置されており、これによって内側に変向部が形成される。縁部として形成された変向部によって、繊維束の表面における自由な繊維の、繊維端部の持ち上げられる割合が高められる。自由な繊維端部は、スピンドルの手前で旋回流によって捕捉される。自由な繊維の割合が高まることによって、糸の巻き替え繊維の割合も高まり、これによって、このようにして精紡された糸の品質が改善される。変向部は確かに糸品質を改善するが、チューブ3に繊維束1が進入する際の、流れ条件の改善には役立たない。繊維ガイドエレメント3に繊維束1が進入する際に、特に、必然的に設けられる縁部において、供給方向34に対して平行に位置する繊維の停滞する恐れがある。
【0005】
したがって本発明の課題は、繊維ガイドエレメントを備えた精紡部および繊維ガイドエレメントを改良して、ドラフト機構から繊維ガイドエレメントへの移行部分でも流れ条件の改善されたものを提供することであり、ひいては繊維束の精紡に関する良好な条件を達成することである。
【0006】
この課題は、請求項1の特徴部に記載した精紡部、ならびに請求項8の特徴部に記載した繊維ガイドエレメントによって解決される。
【0007】
本発明の解決手段によれば、変向部、たとえば入口縁部における、繊維ガイド面の方向に対する繊維束の供給方向が、傾斜角で傾斜しており、変向部は、繊維ガイドエレメントの内部または縁部に配置されており、このような構成によって流れ条件が大幅に改善され、とりわけ繊維束の巻付運動または揺動が効果的に減衰される。変向部、たとえば入口縁部は、繊維ガイドエレメントの縁部に、つまり繊維ガイドエレメントの端面(あとで説明する図2の端面33参照)に配置することができ、また後退(引っ込めること)もしくは斜めの位置決めによって、繊維ガイドエレメントの内側に配置することもできる。
【0008】
本発明は、繊維ガイドエレメントの出口をどのように構成するかについては、言及しない。出口の構成については前掲欧州特許第1335050号明細書に記載の思想に基づいて実現することができる。出口のこのような構成は、本発明で必然的に設けられるものではない。
【0009】
本発明の別の有利な実施形態は、従属請求項に記載した。
【0010】
次に図面につき本発明の実施例を詳しく説明する。
【0011】
図1には、本発明の課題ならびに本発明によって達成された解決手段を判りやすく示すために、送出ローラ対2と、チューブ(スリーブ)として形成された繊維ガイドエレメント3とを備えた空気精紡機の1精紡部6を斜視図で示した。繊維束1は、繊維ガイドエレメント3を通ってガイドされ、次いで繊維束1は、図示していないスピンドル7において加撚することによって精紡されて、糸が作られる。繊維ガイドエレメント3の役割は、繊維束1を最適な形式で後続の旋回流チャンバ36に供給することであり、これによってそこで空気流によって糸を形成することができる。
【0012】
以下において用語「繊維ガイドエレメント」3および「チューブ」3は同義的に用いるものとする。
【0013】
図2には、本発明による繊維ガイドエレメント3を図示した。繊維束1は、方向34で繊維ガイドエレメント3に向かって搬送される。外繊維の極めて良好な解撚を達成するために、入口縁部32に変向部が設けられている。入口縁部32は、搬送方向34と、チューブ3内に配置された繊維ガイドエレメント5との間の傾斜によって形成され、かつチューブ3の内側に配置されている。この実施例ではさらに出口縁部17が設けられており、これによって外繊維の追加的な解撚が達成される。出口縁部17の端部に撚り止め38が設けられている。しかしながら本発明は、スピンドル7の入口開口9への出口および後続の導入部をどのように形成する必要があるかについては、言及しない。入口開口9の上流側(手前)で旋回流チャンバ36に空気流入開口37が配置されている。繊維ガイドエレメント3の内側に入口縁部32を配置したことによって、特に有利には、進入ランプ39を備えた入口は、繊維束1が進入時に停滞しないように、形成される。
【0014】
以下に、入口縁部32の配置構造に関する特に有利な寸法設定について説明する。ここでは図2および図3を参照されたい。念のために述べておくと、寸法設定に関する記述は、全体的に、または個別的にみて、チューブ3への繊維束1の進入に関する有利な条件を実現するものである。
i)繊維ガイド面5と繊維束1の供給方向34との間の傾斜度αは、有利には5°≦α≦85°、特に有利には5°≦α≦70°、さらに有利には5°≦α≦25°である。
ii)繊維束の供給方向は、ドラフト機構平面に対して角度βで傾斜しており、角度βは、有利には0°<β≦10°である。
iii)両方の送出ローラ2の軸線によって規定される平面35に関して、入口縁部32は、前述の平面35から間隔aを有しており、間隔aは、有利には9mm≦a≦13mmの範囲である。
iv)入口縁部32は、チューブ3の円筒形状に関して、チューブ3の上位端面33から間隔bを有して配置されている。この場合間隔bは、有利には0.01mm≦b≦4mmの範囲である。
v)ドラフト機構平面30に関して、入口縁部32は、間隔cを有しており、間隔cは、有利には0≦c≦3mmの範囲である。
vi)進入ランプ39は、繊維ガイド面5に対して角度γで傾斜している。角度範囲は、有利には100°≦γ≦150°である。
【0015】
既に説明したように、記載の値は、個別的に、精紡部6もしくは繊維ガイドエレメント3に適用させることも、組み合わせて適用させることもできる。本発明では、どのように繊維ガイドエレメント3を構成できるかについて、たとえば入口縁部32に丸み部を設けるかについては言及しない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】欧州特許第0854214号明細書および欧州特許第1335050号明細書の従来技術による、精紡部の繊維ガイドエレメントおよび送出ローラ対を示す図である。
【図2】本発明による、精紡部における繊維ガイドエレメントを示す断面図である。
【図3】図2に示した、本発明による繊維ガイドエレメントの一部を詳しく示す断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 繊維束
2 送出ローラ対
3 繊維ガイドエレメント
4 繊維ガイド通路
5 繊維ガイド面
6 精紡部
7 スピンドル
9 入口開口
17 変向部、繊維ガイドエレメントの繊維ガイド面における出口縁部
30 ドラフト機構平面
31 ニップライン
32 繊維ガイドエレメント3の繊維ガイド面5における入口縁部
33 繊維ガイドエレメント3の上位端面
34 繊維ガイドエレメント3に進入するまえの繊維ガイドの供給方向
35 送出ローラ2の回転軸線によって形成された平面
36 旋回流チャンバ
37 入口開口、空気流
38 撚り止め
39 進入ランプ
α 繊維ガイド面5と繊維束の供給方向34との間の角度
β 繊維束の供給方向とドラフト機構平面30との間の角度
γ 進入ランプ39と繊維ガイド面5との間の角度
a ドラフト機構の送出ローラ2の回転軸線を有する平面に対する入口縁部32の間隔
b チューブ3の上位端面33に対する入口縁部32の間隔
c ドラフト機構平面30に対する入口縁部32の間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維束(1)から糸を製作するための空気精紡機の精紡部(6)であって、
該精紡部(6)が、繊維ガイド面(5)の収容された繊維ガイドエレメント(3)を備えており、繊維ガイドエレメント(3)に繊維束(1)が供給されるようになっている形式のものにおいて、
変向部(32)、有利には入口縁部(32)における、繊維ガイド面(5)の方向に対する繊維束(1)の供給方向(34)が、傾斜角αで傾斜しており、変向部(32)が、繊維ガイドエレメント(3)の内部または縁部(33)に配置されていることを特徴とする、繊維ガイドエレメントを備えた精紡部。
【請求項2】
繊維束(1)の供給方向(34)と繊維ガイド面(5)の方向との間の傾斜角αが、5°≦α≦75°、有利には5°≦α≦25°の範囲であり、さらに有利には傾斜角αが、15°の値を有している、請求項1記載の精紡部。
【請求項3】
繊維ガイドエレメント(3)が、端面(33)を備えており、変向部(32)、有利には入口縁部(32)が、繊維ガイド面(5)の方向でみて端面(33)から0.01mm≦b≦4mmの範囲の間隔bを有しており、有利には間隔bが、1mmの値を有している、請求項1または2記載の精紡部。
【請求項4】
繊維ガイドエレメント(3)が、進入ランプ(39)を有しており、該進入ランプ(39)が、繊維ガイド面(5)に対して角度γで傾斜しており、角度γが、100°≦γ≦150°の範囲であり、有利には角度γが、120°の値を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の精紡部。
【請求項5】
繊維ガイドエレメント(3)にドラフト機構が前置されており、入口縁部(32)が、該入口縁部(32)に所属のドラフト機構平面(30)の外側に位置する、請求項1から4までのいずれか1項記載の精紡部。
【請求項6】
ドラフト機構平面(30)が、繊維束(1)の供給方向(34)に対して角度βで傾斜しており、角度βが、0°<β≦10°の範囲であり、有利には角度βが、5°の値を有している、請求項5記載の精紡部。
【請求項7】
ドラフト機構が、2つの送出ローラ(2)を備えており、入口縁部(32)が、送出ローラ(2)の回転軸線によって形成された平面(35)から間隔aを有して位置しており、間隔aが、9mm≦a≦13mmの範囲であり、有利には間隔aが、11mmの値を有している、請求項1から6までのいずれか1項記載の精紡部。
【請求項8】
空気精紡機の精紡部(6)のための、繊維ガイド面(5)の収容された繊維ガイドエレメント(3)において、
繊維ガイドエレメント(3)の内部または縁部に、変向部(32)、有利には入口縁部(32)が、繊維ガイド面(5)と入口ランプ(39)とによって形成されるようになっていることを特徴とする、繊維ガイドエレメント。
【請求項9】
繊維ガイドエレメント(3)が、端面(33)を備えており、変向部(32)、有利には入口縁部が、繊維ガイド面(5)の方向でみて、端面(33)から0.01mm≦b≦4mmの範囲の間隔bを有しており、有利には間隔bが、1mmの値を有している、請求項8記載のガイドエレメント。
【請求項10】
繊維ガイド面(5)と進入ランプ(39)とが、角度γで傾斜しており、角度γが、100°≦γ≦150°の範囲であり、有利には角度γが、120°の値を有している、請求項8または9記載の繊維ガイドエレメント。
【請求項11】
変向部(32)とドラフト機構平面(30)との間の間隔cが、0mm≦c≦7mmの範囲であり、有利には間隔cが、1mmである、請求項1から10までのいずれか1項記載の繊維ガイドエレメントまたは精紡部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−510822(P2007−510822A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538624(P2006−538624)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【国際出願番号】PCT/CH2004/000423
【国際公開番号】WO2005/045105
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(590005597)マシーネンファブリク リーター アクチェンゲゼルシャフト (93)
【氏名又は名称原語表記】Maschinenfabrik Rieter AG
【住所又は居所原語表記】Klosterstrasse 20,CH−8406 Winterthur,Switzerland
【Fターム(参考)】