説明

繊維ボードの製造方法及び繊維ボード

【課題】軽量かつ高強度でありながらも、層間剥離が発生しにくく、簡易に製造でき、生産性も高い繊維ボードの製造方法及び繊維ボードを提供する。
【解決手段】繊維11とバインダー樹脂12とを混合してウェブを形成する工程(ウェブ形成工程)と、前記ウェブを二枚重ねにして圧着する工程(ウェブ圧着工程)とからなる繊維ボード9の製造方法であって、前記ウェブ形成工程において前記ウェブの上面又は下面いずれか一方から他方に向かって前記バインダー樹脂12の含有率が徐々に高くなるように前記ウェブを形成し、前記ウェブ圧着工程において前記ウェブの上面又は下面のうち前記バインダー樹脂12の含有率が低い面同士を対向させ、高温状態で圧縮した後、冷却して、前記ウェブ同士を圧着する繊維ボード9の製造方法とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維とバインダー樹脂とを混合した繊維積層体(ウェブ)を高温状態で圧縮して得られる繊維ボードの製造方法及び繊維ボードに関する。
【背景技術】
【0002】
繊維にバインダー樹脂を混合してなるウェブを高温状態で圧縮して得られる繊維ボードは、壁材・床材・断熱材等の建材や畳等の芯材として幅広い分野で使用されている。
【0003】
また、当該繊維ボードにおける特殊な構造のものとして、表面層が堅くて中央部が比較的柔軟な繊維ボードがある。この繊維ボードは、軽量化、吸音、吸湿、衝撃吸収等の効果を狙って使用されており、その製造方法は、下記特許文献1〜3に記載されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、天然繊維と熱可塑性樹脂繊維とを混合して形成された弾性の異なる複数の繊維マットを積層させて繊維積層マットを形成させる第1の工程と、前記繊維積層マットを熱プレス処理することで、該繊維積層マットの圧縮体であるプレボードを形成させる第2の工程と、前記プレボードを前記熱可塑性樹脂繊維の融点以上の温度で熱処理し該プレボードを膨張させることで、厚み方向に異なる密度を有する膨張プレボードを形成させる第3の工程とを有することを特徴とする繊維積層体の製造方法が記載されている。これにより、剛性と軽量化を両立するのに有効な繊維積層体技術を実現することができるとされている。
【0005】
また、特許文献2には、熱可塑性樹脂の混在率を異にする薄層の繊維ウェブを熱可塑性樹脂の混在率の大小の順に積層して繊維積層体を形成し、該繊維積層体を加熱加圧して繊維積層体ボードを成型することを特徴とする繊維積層体ボードの製造方法が記載されている。これにより、全体としては短層構造であって層間界面が存在していないことから、層間剥離が発生せず、かつ、連続した一連の工程で製造することができるため、製造工程を簡単化して、製造時間の短縮と製造コストの低減を図ることができるとされている。
【0006】
さらにまた、特許文献3には、解繊した綿状繊維とこの綿状繊維同士を結合する重量比7%以下の合成樹脂よりなるバインダーとを混合して加熱圧縮して成型ボードを製造する際に、該加熱圧縮工程に先立って、綿状繊維とバインダーとの混合物を、常温にて一定時間圧縮した後圧縮を解放する予備締め固め工程を複数回繰り返し、表面側と裏面側とに中間層より密な層を持つ勾配密度を持たせるようにした綿状繊維による成型ボードの製造方法が記載されている。これにより、バインダーの混合比を少なくしつつ、強度の高いボードを製造可能とされている。
【0007】
【特許文献1】特開2002-371455号公報
【特許文献2】特開2000-141524号公報
【特許文献3】特許第3459684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1に記載された製造方法では、弾性の異なる複数の繊維マット間で力学的特性や熱膨張係数が異なる。これが原因で、長期間の使用により繊維マット同士を貼り合わせた界面に応力が集中して、この部分から剥離しやすかった。また、繊維積層マットを熱プレス処理してプレボードを形成した後、さらに加熱してプレボードを膨張させ、場合によっては再度熱プレス処理する必要があるため、工数がかさみ面倒であった。
【0009】
また、上記特許文献2に記載された製造方法でも隣接する繊維ウェブ同士で力学的特性や熱膨張係数に差が生じるため、長年の使用によって繊維ウェブ同士の界面から剥離しやすかった。この現象を抑制するには、繊維ウェブを極薄層にして熱可塑性樹脂の混在率を極僅かずつ変化させた状態で積層し、隣接する繊維ウェブの間で力学的特性等の差をできるだけ小さくすればよい。しかし、この製造方法では積層に時間がかかるため生産性が極端に低くなっていた。さらに、設備的にも比較的大掛かりとなるものであった。
【0010】
一方、特許文献3記載の製造方法は、複数のウェブを積層しなくてもよいため剥離しにくい繊維ボードを製造することができる。しかし、この製造方法は、長時間に亘る予備締め固め工程を複数回繰り返す必要があるため、やはり工数がかさみ面倒であった。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、軽量かつ高強度でありながらも、層間剥離が発生しにくく、簡易に製造でき、生産性も高い繊維ボードの製造方法及び繊維ボードを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、繊維とバインダー樹脂とを混合してウェブを形成する工程(ウェブ形成工程)と、前記ウェブを二枚重ねにして圧着する工程(ウェブ圧着工程)とからなる繊維ボードの製造方法であって、前記ウェブ形成工程において前記ウェブの上面又は下面いずれか一方から他方に向かって前記バインダー樹脂の含有率が徐々に高くなるように前記ウェブを形成し、前記ウェブ圧着工程において前記ウェブの上面又は下面のうち前記バインダー樹脂の含有率が低い面同士を対向させ、高温状態で圧縮した後、冷却して、前記ウェブ同士を圧着する繊維ボードの製造方法とすることで解決される。
【0013】
これにより、バインダー樹脂の含有率が高くなった表面層は堅く、低くなった中央部は比較的柔軟な、軽量かつ高強度な繊維ボードを提供できる。また、バインダー樹脂の含有率が低い面同士を対向させてウェブ同士を圧着することで、両者に熱膨張係数に殆ど差が生じないため、圧着部分で層間剥離が発生しにくい繊維ボードを提供できる。さらに、特許文献1記載の製造方法のように形成したプレボードを熱処理して膨張させる必要がなく、特許文献2記載の製造方法のように積層に時間がかかり工数が増加することもなく、特許文献3記載の製造方法のように長時間に亘る予備締め固め工程を複数回繰り返す必要もないため、簡易に製造でき、生産性も高い簡易な繊維ボードの製造方法となる。
【0014】
このとき、前記ウェブ形成工程において、繊維とバインダー樹脂との混合物をエアレイド法で堆積してウェブを形成する繊維ボードの製造方法とすることができる。「エアレイド法」は、繊維を空気流に均一分散し、吐出部に設けた細孔から繊維を吹き出して下部に設置された金属またはプラスチックのネットに落とし、ネット下部で空気を吸引しながら、繊維をネット上に集積する方法である。エアレイド法を使用することで、非常に容易かつ安定的にウェブの上面又は下面いずれか一方から他方に向かってバインダー樹脂の含有率が徐々に高くなるようにウェブを形成することができる。例えば、繊維としてケナフ繊維、バインダー樹脂としてポリプロピレン樹脂繊維を使用した場合には、高比重のケナフ繊維が低比重のポリプロピレン樹脂の繊維より早く堆積しやすい。このため、ウェブの下面から上面に向かってポリプロピレン樹脂の繊維(バインダー樹脂)の含有率が徐々に高くなるように容易に形成することができる。
【0015】
前記繊維が天然繊維であり、前記バインダー樹脂が熱可塑性樹脂からなる短繊維であって、前記天然繊維は前記熱可塑性樹脂からなる短繊維よりも融点が高い繊維ボードの製造方法とすることも好ましい。繊維として天然繊維を使用することで地球環境に優しい繊維ボードを提供できる。天然繊維としてはケナフ繊維が好ましい。ケナフは一年草であって成長が極めて早く容易に栽培でき、その靭皮にはセルロース分が60%以上と高い含有率で存在していることから、天然資源として極めて有効に活用することができる。また、バインダー樹脂として熱可塑性樹脂を使用することでウェブ同士を短時間に圧着することができる。さらに、バインダー樹脂として短繊維を使用することで、前述したエアレイド法を用いることができ、繊維とバインダー樹脂(熱可塑性樹脂からなる短繊維)との混合物を容易に堆積することが可能となる。熱可塑性樹脂からなる短繊維としては、安価でかつ融点の低いポリプロピレンからなる短繊維が本発明の繊維ボードの製造方法に好適である。加えて、天然繊維は熱可塑性樹脂からなる短繊維よりも融点が高いことで、天然繊維の形態を残したまま繊維同士を接着することができ、低密度で軽量な繊維ボードを得ることができる。
【0016】
前記ウェブ形成工程において、ウェブを予備的に加熱する繊維ボードの製造方法とすることも好ましい。これにより、ウェブのハンドリングが容易になり、ウェブを二枚重ねにする場合等の作業性が向上する。
【0017】
前記ウェブ形成工程において、ウェブの上面又は下面のうちバインダー樹脂の含有率が高い面に樹脂をコーティングする繊維ボードの製造方法とすることも好ましく、前記ウェブ圧着工程において、二枚重ねにしたウェブの上下に樹脂フィルムを配置して高温状態で圧縮した後、冷却して、ウェブ同士を圧着する繊維ボードの製造方法とすることも好ましい。これにより、繊維ボードの上下両面に樹脂層が形成されることとなり、軽量でありながらもより一層高強度な繊維ボードを提供できる。また、コーティングされた樹脂や、ウェブの上下に配置された樹脂フィルムがウェブ圧着工程で二枚重ねにしたウェブと共に加熱圧縮されることで、これら樹脂層の厚み方向に数多くの微小な孔が開き、高強度でありながらも通気性、吸音性、吸湿性等に優れた繊維ボードを提供することができる。さらに、樹脂層に微小な孔が開いていることで、ウェブの間に機能材料を挟み込んだ場合に、機能材料の特性を十分発揮可能な繊維ボードを提供することができる。コーティングする樹脂としては特に制限されないが、熱可塑性樹脂が好ましい。なかでも低融点で安価なポリオレフィン系樹脂がより好ましく、特に好ましくはポリプロピレン樹脂である。樹脂フィルムとしては、炭素繊維・ガラス繊維・アラミド繊維等に未硬化の熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂等)を含浸させたプリプレグや熱可塑性樹脂フィルムが使用できる。なかでも短時間で圧着できる熱可塑性フィルムが好ましく、より好ましくは低融点で安価なポリプロピレン樹脂フィルムである。その一方で、ポリプロピレン樹脂フィルムは表面エネルギーが低く濡れ性も悪い。このため塗料等が接着しにくい。そこで、繊維ボードに塗装や粘着シートの貼付けを行う場合には、表面に易接着処理を施したポリプロピレン樹脂フィルムを使用することができる。易接着処置として、コロナ放電処理、紫外線照射処理、プライマー処理、サンドブラスト処理等を挙げることができる。
【0018】
上述した、ウェブの上面又は下面のうちバインダー樹脂の含有率が高い面に樹脂をコーティングする繊維ボードの製造方法において、前記コーティングされる樹脂に強化用フィラーが配合されている繊維ボードの製造方法とすることができる。これにより、低密度で軽量でありながらもより高強度な繊維ボードを提供することができる。「強化用フィラー」は樹脂に配合することで被膜強度を向上させるフィラーであれば特に制限されない。具体的には炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維および金属繊維等の繊維状フィラーや、ホウ酸アルミニウムウィスカー、チタン酸カリウム、微粒子シリカ等が例示できる。被膜強化機能をより発揮するため、強化用フィラーは熱可塑性樹脂からなる短繊維よりも融点が高いことが好ましい。
【0019】
前記ウェブ圧着工程において、二枚重ねにしたウェブをプレート又はシートで挟み、高温状態で圧縮した後ウェブを挟んでいるプレート又はシートごと圧縮しながら冷却して、前記ウェブ同士を圧着し、前記プレート又は前記シートは、高温状態で圧縮する際に溶融せず、かつ、平坦である繊維ボードの製造方法とすることも好ましい。これにより、高温状態で圧縮するプレス装置自体にバインダー樹脂が付着することがなくなる。また、プレート又はシートが平坦であることで、ウェブとの界面におけるバインダー樹脂の流動性が向上し、表面の仕上がり状態が良好な繊維ボードを提供できる。この場合、二枚重ねにしたウェブをプレート又はシートで挟み、高温状態で圧縮した後、圧縮状態を開放し、ウェブを挟んでいるプレート又はシートごと冷却プレスに移して、圧縮しながら冷却してウェブ同士を圧着することができる。また、二枚重ねにしたウェブをプレート又はシートで挟み、高温状態で圧縮した後、圧縮状態を開放せずにそのままの状態で冷却してウェブ同士を圧着することもできる。しかし、後者の方法は、一台のプレス装置で加熱と冷却を行うことになり、熱効率が悪く工数も増加する。そのため、加熱プレス等を使用して高温状態で圧縮した後、冷却プレスを使用する前者の方法がより好ましい。この場合、二枚重ねにしたウェブを挟んだプレート等ごと冷却することにより、プレート等を剥離する際に毛羽立ちが発生しにくく、表面状態に優れた繊維ボードを提供することができる。
【0020】
さらに、プレート表面にポリテトラフルオロエチレン樹脂(以下テフロン(登録商標)と呼ぶ)加工が施されていることが好ましく、シート表面にもテフロン(登録商標)加工が施されていたりシート自体がテフロン(登録商標)シートであることが好ましい。プレート等を剥離する際の作業性がより向上するとともに、表面状態のより優れた繊維ボードを提供することができる。また、二枚重ねにしたウェブの上下に配置する樹脂フィルム(前述)として、表面にプライマー処理を施したポリプロピレン樹脂フィルムを使用した場合には、プレート等を剥離する際にプライマー処理層が転写してしまう現象が起こりにくく、繊維ボードの全面に亘って塗料等の接着性に優れた繊維ボードを提供できる。
【0021】
前記ウェブ圧着工程において、二枚重ねにしたウェブの間に樹脂フィルムを挟み込んで、高温状態で圧縮した後冷却して、ウェブ同士を圧着する繊維ボードの製造方法とすることも好ましい。本発明の繊維ボードの製造方法は、バインダー樹脂の含有率が低い面同士を対向させて前記ウェブ同士を圧着するため、もともと層間剥離が発生しにくい繊維ボードを提供できるものである。しかし、さらに層間剥離が発生しにくい繊維ボードを提供するために、二枚重ねにした前記ウェブの間に樹脂フィルムを挟み込んで、高温状態で圧縮した後、冷却して、ウェブ同士を圧着するのである。樹脂フィルムとしては、炭素繊維・ガラス繊維・アラミド繊維等に未硬化の熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂等)を含浸させたプリプレグや熱可塑性フィルムが使用できる。なかでも短時間で圧着できる熱可塑性フィルムが好ましく、低融点で安価なポリオレフィン系樹脂フィルムがより好ましい。特に好ましくはポリプロピレン樹脂フィルムである。樹脂フィルムは二枚重ねにしたウェブ同士をより強固に接着する結合剤としての役割を果たす。
【0022】
前記ウェブ圧着工程において、二枚重ねにしたウェブの間に機能材料を挟み込んだ状態で加熱圧縮してウェブ同士を圧着する繊維ボードの製造方法とすることもできる。これにより、吸湿機能や抗菌防虫効果等の各種機能を付与した繊維ボードを提供できる。機能材料としては、ゼオライト等の吸着剤、松ヤニ・除虫菊剤等の抗菌防虫材、ガラス繊維等の補強材等、ユーザーニーズに合わせて種々選択することができる。
【0023】
前記ウェブ圧着工程において、二枚重ねにしたウェブの端部に補強材料を挟み込んで、高温状態で圧縮した後冷却して、前記補強材料が挟み込まれたウェブの端部を高密度化し、前記ウェブ圧着工程の後に、圧着されたウェブの前記補強材料が挟み込まれた端部に切削加工を施す繊維ボードの製造方法とすることも好ましい。これにより、繊維ボード全体としては表面層が堅く中央部は比較的柔軟であるが、補強材料が挟み込まれた端部は中央部も堅くなる。この端部に切削加工を行うことで、軽量でありながらも切削加工部の強度を十分確保した繊維ボードを提供できるのである。
【0024】
前記ウェブ圧着工程において、バインダー樹脂の配合率の等しいウェブを高温状態で圧縮した後冷却して、前記ウェブ同士を圧着した繊維ボードの製造方法とすることも好ましい。「バインダー樹脂の配合率」とは、繊維とバインダー樹脂とを混合してウェブを形成する工程(ウェブ形成工程)において、繊維とバインダー樹脂とを混合する際のバインダー樹脂の配合率である。バインダー樹脂の配合率の等しいウェブを圧着することで、反りがなく、経時的にも反りが発生しにくい、平坦で寸法精度に優れた繊維ボードを容易に提供できる。
【0025】
前記ウェブ圧着工程において、バインダー樹脂の配合率の異なるウェブを高温状態で圧縮した後冷却して、前記ウェブ同士を圧着した繊維ボードの製造方法とすることも好ましい。バインダー樹脂の配合率の異なるウェブを圧着することで、配合率の高いウェブ側が内側になるような反りを有する繊維ボードを安定的に提供できる。反りの程度はバインダー樹脂の配合率の差によって制御可能であり、配合率の差が大きくなると反りも大きくなる。
【0026】
また、上記課題は、繊維とバインダー樹脂とからなる繊維ボードであって、バインダー樹脂の含有率が厚み方向の中央部から上面及び下面に向かって徐々に高くなり、厚み方向の中央部に機能材料が挟み込まれてなる繊維ボードとすることでも解決される。この繊維ボードは厚み方向の中央部に機能材料が挟み込まれていることで、吸湿機能や抗菌防虫効果等の各種機能を有する。
【0027】
このとき、前記バインダー樹脂の含有率が厚み方向の中央部から上下に対称である繊維ボードとすることや、前記バインダー樹脂の含有率が厚み方向の中央部から上下に対称でない繊維ボードとすることができる。
【0028】
また、厚み方向の中央部に機能材料が挟み込まれてなる繊維ボードとすることも好ましく、上面及び下面に熱可塑性樹脂層を有し、かつ、厚み方向に通気性を有する繊維ボードとすることも好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によって、軽量かつ高強度でありながらも、簡易に製造でき、生産性も高い繊維ボードの製造方法及び繊維ボードを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。図1は本発明の繊維ボードの製造方法の一例を示すフローチャートである。図2は図1の堆積工程の一例であるエアレイド装置を使用したウェブの堆積方法を示す正面図であり、図3は図2のエアレイド装置を使用して堆積させたウェブの拡大断面図である。図4は図1の予備加熱工程の一例である、加熱コンベヤ装置を用いたウェブの加熱方法を示す正面図であり、図5は図4の加熱コンベヤ装置で加熱処理したウェブの拡大断面図である。図6は図1の樹脂塗布工程の一例である、Tダイ成型金型を使用したウェブへの樹脂塗布方法を示す正面図であり、図7は図1のトリミング工程の一例である、スリッターを使用したウェブ幅方向のトリミング方法を示す正面図であり、図8はトリミング済ウェブの拡大断面図である。図9は図1の加熱プレス工程の一例である、ウェブ上下にテフロン(登録商標)シートを載置した加熱プレス方法を示す正面図であり、図10は図9において加熱プレスを行っている状態を示した図であり、図11は図9において二枚重ねのウェブの上下にポリプロピレン樹脂フィルムを挟み込んだ加熱プレス方法を示す正面図であり、図12は図9において二枚重ねのウェブの間にポリプロピレン樹脂フィルム挟み込んだ加熱プレス方法を示す正面図であり、図13は図9において二枚重ねのウェブの間にゼオオライトを挟み込んだ加熱プレス方法を示す正面図である。また、図14は図1の冷却プレス工程の一例である、水冷式プレスを使用した冷却プレス方法を示す正面図であり、図15は本発明の繊維ボードを示す拡大断面図である。図2、図4、図6、図7のそれぞれにおいて、外装部の手前部分を取り払った状態を仮想した図となっている。
【0031】
まず、繊維とバインダー樹脂とを混合する。混合には種々の公知手法を用いることができる。バインダー樹脂も繊維状である場合には混綿機を使用することができる。
【0032】
次に、繊維とバインダー樹脂の混合物を堆積してウェブを形成する。ウェブを形成するには種々の公知手法を用いることができる。バインダー樹脂も繊維状である場合にはカード法やエアレイド法等を使用することができるが、エアレイド法を使用することが好ましい。エアレイド装置を使用して繊維とバインダー樹脂との混合物を堆積する様子を図2に示す。繊維11と繊維状のバインダー樹脂12との混合物は円筒状のフォーミングヘッド21に投入される。このフォーミングヘッド21の側面は多くの孔を有した高速回転するスクリーン22で構成されている。フォーミングヘッド21に投入された混合物を、高速回転するスクリーン22から一気に排出し、コンベヤ23下側に設けられた吸引装置24で吸引して、コンベヤ23上に短繊維を積層させウェブを形成するのである。繊維11とバインダー樹脂12のうち、比重の大きい方が先に堆積しやすいため、ウェブの上面又は下面いずれか一方から他方に向かってバインダー樹脂の含有率が徐々に高くなる。例えば繊維11としてケナフ繊維、バインダー樹脂12としてポリプロピレン樹脂の短繊維を使用した場合には、高比重のケナフ繊維が先に堆積しやすいため、図3に示すようにウェブ1の下面から上面に向かってバインダー樹脂12(ポリプロピレン樹脂の短繊維)の含有率が徐々に高くなることになる。
【0033】
本発明で用いる繊維は、化学繊維や天然繊維のいずれでもよく、またこれらを混合して使用してもよい。化学繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維、アセテート繊維を挙げることができる。天然繊維としては、例えば、木綿、羊毛、絹、麻、ケナフ繊維、パーム繊維、杉や檜の皮を繊維状に裁断したものを挙げることができる。なお、本発明で用いるこれらの繊維は正規の原料を用いたものの他に、紡績工程、不織布製造工程、染織工程、縫製工程等で発生する屑綿、屑糸、屑布、あるいは使用済みの衣料等を開繊した回収屑綿でもよい。繊維としては天然繊維を用いることが地球環境保護の観点から好ましく、そのなかでも早く容易に栽培できるケナフを使用したケナフ繊維を用いることがより好ましい。また、ケナフ繊維に、杉や檜の皮を繊維状に裁断したものを加えることで、色調に深みが加わり高級感あふれる繊維ボードを提供することができる。この繊維ボードの端部に切削加工した場合であっても、加工した箇所は深みのある色調となり、高級感を損なうことなく切削加工ができる。
【0034】
また、本発明で用いるバインダー樹脂は、通常使用されている市販の熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂が使用できる。熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ホリエステル樹脂、エポキシ樹脂が挙げられ、熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、NBRが挙げられる。なかでも環境負荷が少なく、リサイクル可能であり、かつ、ウェブ同士を短時間で圧着できる熱可塑性樹脂が好ましい。さらに、使用するバインダー樹脂の形状は粉状、直径3〜10mmの小塊状、繊維状、ネット状等の形態で用いることができる。なかでもエアレイド法での堆積が可能な短繊維状に加工した熱可塑性樹脂からなる短繊維を用いることが好ましく、低融点で安価なポリオレフィン系樹脂の短繊維がより好ましい。特に好ましくはポリプロピレン製の短繊維である。より高強度な繊維ボードとしたい場合には、芯がポリプロピレン樹脂、鞘がポリエチレン樹脂で構成された芯鞘型複合繊維を使用してもよい。繊維としてケナフ繊維、バインダー樹脂としてポリプロピレン製の短繊維を使用した場合には、天然繊維であるケナフ繊維はポリプロピレン製の短繊維よりも融点が高くなり、ケナフ繊維の形状を残したまま繊維同士を接着することができる。
【0035】
また、エアレイド法でウェブ1を形成する場合、繊維11とバインダー樹脂12の短繊維の長さは10〜60mmが好ましい。繊維又は短繊維の長さを10mm以上とすることにより工業的に安定して短繊維を得ることができる。また、60mm以下とすることにより、繊維の開繊性がさらに良くなり、ウェブ塊が発生し難くなる。より好ましい長さは20〜50mmである。
【0036】
次に、堆積したウェブ1を予備的に加熱する。これは、後述するトリミング工程や二枚重ね工程において、ウェブ1をハンドリングしやすくし、作業性を高めるためである。作業を簡素化したい場合等には、本工程を省略してもよい。バインダー樹脂12として熱可塑性樹脂を用いた場合、ウェブ1内部の温度がバインダー樹脂12の融点以上となるように加熱する。これによって、繊維11同士の接触点のうち一部がバインダー樹脂12によって固定されウェブ1をハンドリングしやすくなる。バインダー樹脂12として熱硬化性樹脂を用いた場合、ウェブ1内部がバインダー樹脂12の硬化温度に達するまで加熱する必要があるが、一方で後述する加熱プレス工程までは半硬化状態を維持しておく必要がある。そのため、予備加熱工程の温度や時間の管理が非常にシビアになる。よって、予備的に加熱する工程は、バインダー樹脂12として熱可塑性樹脂を用いた場合にのみ行うことが好ましい。加熱装置としては、図4のような上下一体の網状コンベヤベルト311の上下に面ヒーター312が設けられた加熱コンベヤ31を例示できる。図4の加熱装置には、加熱コンベヤ31の後に、ウェブ1を冷却する冷却コンベヤ32を設けている。この冷却コンベア32は、吹き付け口321からウェブ1にエアーを供給し、吸引装置322で吸引している。ウェブ1を予備的に加熱すると図5のように厚みが薄くなる。
【0037】
堆積したウェブ1又は予備加熱したウェブ1の、バインダー樹脂12の含有率が高い面に樹脂をコーティングする。コーティングする樹脂は熱可塑性樹脂が好ましく、低融点で安価なポリオレフィン系樹脂がより好ましい。特に好ましくはポリプロピレン樹脂である。コーティング方法としては、図6に示すように、コンベヤ41に載置したウェブ1を移動させながら、加熱溶融した熱可塑性樹脂42をTダイ金型43から押し出しながら塗布することが可能である。繊維ボードの強度をあまり増加させる必要がない場合には本コーティング工程を省略してもよい。また、コーティングする樹脂に、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維、微粒子シリカ等の強化用フィラーを配合してもよい。また、フィラーの配合率は、フィラーの形状、表面状態等にもよるが5〜50重量%が好ましい。5重量%以上であると被膜を強化することができる。50重量%以下であるとフィラーを配合した樹脂の流動性が確保され、ウェブに樹脂をコーティングしやすくなる。フィラーの配合率は、より好ましくは20〜40重量%である。
【0038】
堆積したウェブ1又は予備加熱を行ったウェブ1を、所望の製品形状に合わせてトリミングする。トリミングには種々の公知の方法を使用することができる。例えばトムソン型を使用したプレスや、図7に示す様にコンベヤ51上に載置したウェブ1の幅方向両端部をスリッター52で切断した後、ギロチンシェアー(図示せず)で所望の長さに切断することが可能である。トリミング済のウェブ1を図8に示す。
【0039】
次に、図9に示すように、トリミング済のウェブ1を二枚用意し、上面又は下面のうちバインダー樹脂の含有率が低い面14同士を対向させてウェブ1を二枚重ねにする。二枚重ねにしたウェブ1を、ガラス繊維を平織りした布にテフロン(登録商標)をコーティングしたシート71で上下から挟み、加熱プレス装置6の下型621に載置する。加熱プレス装置6には上型620と下型621の内部にヒーター63が設けられている。そして、ウェブ1内部の温度がバインダー樹脂の硬化温度又は融点以上となるような温度を加えながらプレス(高温状態で圧縮)を行う(図10)。プレス圧力は、所望の厚みの繊維ボードが得られるように設定すればよいが、高めのプレス圧力にしておいて、シリンダー64に下死点を設けることで、所望の厚みの繊維ボードが得られるようにしてもよい。また、図9ではシート71としてガラス繊維を平織りした布にテフロン(登録商標)コーティングしたものを使用しているがこれに限定されず、高温状態で圧縮する際に溶融せず、かつ、平坦であれば、他のシートやプレートを使用してもよい。プレートは、熱伝導率が高く金型表面の温度をウェブ表面に効率良く伝達できるアルミ、銅、鉄等の金属製のプレート等が使用できる。プレート表面にテフロン(登録商標)加工してもよい。プレートを使用した場合には、熱容量が大きいため、昇温等に時間がかかる。そこで、比較的熱容量が少なく短時間に昇温可能なシートを使用することが好ましい。シートとしては、ガラス繊維を平織りした布にテフロン(登録商標)コーティングしたシート71の他に通常のテフロン(登録商標)シート、ポリイミドフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム等が使用できるが、バインダー樹脂が表面に付着しにくいテフロン(登録商標)シートやガラス繊維を平織りした布にテフロン(登録商標)コーティングしたシートが好ましい。なかでも、ガラス繊維を平織りして得られた布にテフロン(登録商標)コーティングしたシートがより好ましい。ガラス繊維は、熱膨張係数が小さく構造材としても働くため、加熱・冷却を繰り返してもシートに皺がつきにくく、表面性に優れた繊維ボードを提供することができるからである。
【0040】
また、図11に示すように、二枚重ねにしたウェブ1の上下に樹脂フィルム72を配置して、前記樹脂フィルム72を配置した上下からテフロン(登録商標)シート71でウェブ1を挟み、高温状態で圧縮してもよい。樹脂フィルム72は熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグや熱可塑性樹脂フィルムを使用することができるが、熱可塑性樹脂フィルムを使用することか好ましい。なかでもポリプロピレン樹脂フィルムがより好ましい。高温状態で圧縮された樹脂フィルム72の表面には繊維によって微細な貫通孔が開き、繊維ボードの通気性、吸音性が向上する。また、上下の樹脂フィルム72は異なる種類でもよい。例えば、上側にポリプロピレン樹脂フィルム、下側にポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを配置してもよい。この場合には、軟化点や融点の高いポリエチレンテレフタレートフィルムには貫通孔が開きにくいため、ポリプロピレンフィルム樹脂層を形成した側の吸音性が高い繊維ボードとすることができる。また、図13に示すように、機能材料74を挟み込んだ場合(後述)にも、ポリプロピレンフィルム樹脂層を形成した側の機能性が高い繊維ボードとすることができる。
【0041】
さらに、図12に示すように、二枚重ねにしたウェブ1の間に樹脂フィルム73を挟み込んで高温状態で圧縮してもよい。これにより、ウェブ1同士の接着性が向上して、より一層ウェブ1同士の界面で剥離しにくい繊維ボードを提供できる。樹脂フィルム73は熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグや熱可塑性樹脂フィルムを使用することができるが、熱可塑性樹脂フィルムを使用することか好ましい。より好ましくはポリプロピレン樹脂フィルムである。
【0042】
さらに加えて、図13に示すように、二枚重ねにしたウェブ1の間にゼオライト等の吸着剤、松ヤニ・除虫菊剤等の抗菌防虫材、ガラス繊維等の補強材等の機能材料74を挟み込んで高温状態で圧縮してもよい。この場合、機能材料74を挟み込む量によっては、二枚重ねにしたウェブ1界面での接着力が低下する可能性がある。そこで二枚重ねにしたウェブ1の間に機能材料に加えて樹脂フィルム(図示せず)を挟み込んで高温状態で圧縮してもよい。
【0043】
上記実施形態では、トリミングしたウェブ1を、そのまま加熱プレス装置6で圧縮した。しかし、湿度の高い雰囲気中に長時間ウェブを放置すると、吸湿して多くの水分を含むことがある。この状態で加熱圧縮すると、吸湿水分が水蒸気となって体積膨張し、ウェブ1同士の圧着不良等となる場合があった。これを防止するため、加熱圧縮に先立ってウェブ1の水蒸気抜きを行ってもよい。具体的には、ウェブ1内部の温度が100〜120℃程度になるような条件で予備的に加熱加圧すること等が可能である。予備的な加熱加圧は複数回行うことが好ましく、2〜5回行うことがより好ましい。
【0044】
高温状態で圧縮されたウェブ1を、冷却状態でプレスする。この場合、二枚重ねにしたウェブ1を高温状態で圧縮した後、圧縮状態を開放し、図14に示すようにテフロン(登録商標)シート71ごと冷却プレス装置8に移して、圧縮しながら冷却してウェブ1同士を圧着することができる。冷却プレス装置8は、上型810や下型811の内部に通水経路82が設けられたもの等を使用できる。プレス圧力は、所望の厚みの繊維ボードが得られるように設定すればよいが、高めのプレス圧力にしておいて、シリンダー64に下死点を設けることで、所望の厚みの繊維ボードが得られるようにしてもよい。また、二枚重ねにしたウェブ1を高温状態で圧縮した後、圧縮状態を開放せずにそのままの状態でプレス装置ごと冷却してウェブ1同士を圧着することもできる。この場合一台のプレス装置で加熱と冷却とを行うこととなり、熱効率が悪い。よって、二枚重ねにしたウェブ1を高温状態で圧縮した後、圧縮状態を開放し、冷却プレス装置8に移して、圧縮しながら冷却してウェブ1同士を圧着することが好ましい。
【0045】
図15に繊維ボード9の断面図を示す。図3、図5、図8において繊維状であるバインダー樹脂12は、繊維ボードの状態まで加工が進むと溶融し、当初の繊維状形態を殆ど留めていない。よって、図15ではバインダー樹脂12を、繊維ボード9の図中白抜き部分(熱可塑性樹脂42層の部分を除く)として示している。このように、繊維ボード9はバインダー樹脂12の含有率が厚み方向の中央部から上面及び下面に向かって徐々に高くなっているのである。また、熱可塑性樹脂42層には繊維11によって微細な孔が開き、繊維ボードの通気性、吸音性が向上することとなる。
【0046】
以下、実施例により更に具体的に説明する。
【0047】
ケナフ繊維(平均繊維長45mm)とポリプロピレン樹脂繊維(繊度6.7detx、平均繊維長25mm)を給綿機に投入し、それぞれ5Kgを自動計量して混綿機により混合した。この混合物を大量の空気と共にエアレイド装置に導入した。エアレイド装置は、ネット状の金属多孔板が円筒状に成形され、繊維をその目から分散落下させるネット状円筒タイプの装置を使用した。このネット状の金属多孔板を前後・左右・水平円状に高速往復振動し、前記混合物を一気に分散落下させ、幅約2.2m、厚み約8cmのウェブを形成した。ウェブは、下面から上面に向かってポリプロピレン樹脂の含有率が徐々に高くなるものであった。
【0048】
次にこのウェブを鉄線で造った上下一体の網目状コンベヤベルトの間に挟んで、予め220〜230℃に加熱した熱風処理室を約4分間通過させた。その室内通過時には上下コンベヤベルトの間隔が7cmになるように厚み設定装置を設定し、多数対の非加熱プレスロールでこのコンベヤベルトを押さえる方式で繊維マットの加熱処理をした。加熱処理後のウェブを鉄線で造った上下一体の網目状コンベヤベルトの間に挟んで空気冷却方式で約4分間冷却し、コンベヤベルトから取り出したところ、ウェブの厚さは7cmとなっていた。
【0049】
このウェブを、コンベヤで移動させながら、その両端部分をスリッターで切り落として、幅2mのウェブを得た。このウェブを、ギロチンシェアーで長さ1mに切断した。
【0050】
切断されたウェブを二枚用意し、バインダー樹脂の含有率が低い面同士を対向させ、ウェブを二枚重ねにした。二枚重ねにしたウェブの上下に厚み50μmのポリプロピレン製フィルムを載置し、さらに、ガラス繊維を平織りした布にテフロン(登録商標)をコーティングした厚み0.6mmのシートで上下を挟み、加熱プレス装置に載置した。加熱プレス装置は金型表面温度が200℃、圧力20MPaに設定してあり、上型と下型の間隔が15mmになるようにシリンダーの下死点を調整した。この条件で、二枚重ねにしたウェブを100秒間加熱圧縮した後、圧縮を解除して、シートごとウェブを取り出し、水冷式の冷却プレス装置に載置した。冷却プレス装置は圧力20MPaに設定してあり、上型と下型の間隔が15mmになるように下死点を調整した。この条件で、加熱圧縮したウェブをシートごと240秒間冷却圧縮した後、圧縮を解除して厚さ15mmの繊維ボードを得た。
【0051】
得られた繊維ボードは厚みの割に軽く、幅方向の中央部分は比較的柔軟であるものの、上面及び下面にはポリプロピレン樹脂層が形成され十分な曲げ強度を有していた。また、反りが発生しておらず寸法精度も優れていた。さらに、ポリプロピレン樹脂層には多数の孔が空いており、通気性に優れた繊維ボードであった。さらに、厚手のベニヤ材と比較して安価に製造でき、耐水性や寸法安定性にも優れ、住宅の壁材として使用するのに最適であった。
【0052】
以上、特定の実施例を参照して本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、当該技術分野における熟練者等により、本明細書に添付された特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変更及び修正が可能であるとの点に留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の繊維ボードの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【図2】図1の堆積工程の一例である、エアレイド装置を使用したウェブの堆積方法を示す正面図である。
【図3】図2のエアレイド装置を使用して堆積させたウェブの拡大断面図である。
【図4】図1の予備加熱工程の一例である、加熱コンベヤ装置を用いたウェブの加熱方法を示す正面図である。
【図5】図4の加熱コンベヤ装置で加熱処理したウェブの拡大断面図である。
【図6】図1の樹脂塗布工程の一例である、Tダイ成型金型を使用したウェブへの樹脂塗布方法を示す正面図である。
【図7】図1のトリミング工程の一例である、スリッターを使用したウェブ幅方向のトリミング方法を示す正面図である。
【図8】トリミング済ウェブの拡大断面図である。
【図9】図1の加熱プレス工程の一例である、ウェブ上下にテフロン(登録商標)シートを載置した加熱プレス方法を示す正面図である。
【図10】図9において、加熱プレスを行っている状態を示した図である。
【図11】図9において、二枚重ねのウェブの上下にポリプロピレン樹脂フィルムを挟み込んだ加熱プレス方法を示す正面図である。
【図12】図9において、二枚重ねのウェブの間にポリプロピレン樹脂フィルム挟み込んだ加熱プレス方法を示す正面図である。
【図13】図9において、二枚重ねのウェブの間にゼオオライトを挟み込んだ加熱プレス方法を示す正面図である。
【図14】図1の冷却プレス工程の一例である、水冷式プレスを使用した冷却プレス方法を示す正面図である。
【図15】本発明の繊維ボードを示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 ウェブ
11 繊維
12 バインダー樹脂
2 エアレイド装置
21 フォーミングヘッド
23,41,51 コンベヤ
24 吸引装置
3 加熱装置
31 加熱コンベヤ
312 面ヒーター
32 冷却コンベヤ
42 熱可塑性樹脂
43 Tダイ金型
52 スリッター
6 加熱プレス装置
63 ヒーター
64 シリンダー
71 テフロン(登録商標)シート
72,73 樹脂フィルム
74 機能材料
8 冷却プレス装置
82 通水経路
9 繊維ボード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維とバインダー樹脂とを混合してウェブを形成する工程(ウェブ形成工程)と、前記ウェブを二枚重ねにして圧着する工程(ウェブ圧着工程)とからなる繊維ボードの製造方法であって、前記ウェブ形成工程において前記ウェブの上面又は下面いずれか一方から他方に向かって前記バインダー樹脂の含有率が徐々に高くなるように前記ウェブを形成し、前記ウェブ圧着工程において前記ウェブの上面又は下面のうち前記バインダー樹脂の含有率が低い面同士を対向させ、高温状態で圧縮した後、冷却して、前記ウェブ同士を圧着する繊維ボードの製造方法。
【請求項2】
前記ウェブ形成工程において、繊維とバインダー樹脂との混合物をエアレイド法で堆積してウェブを形成する請求項1記載の繊維ボードの製造方法。
【請求項3】
前記繊維が天然繊維であり、前記バインダー樹脂が熱可塑性樹脂からなる短繊維であって、前記天然繊維は前記熱可塑性樹脂からなる短繊維よりも融点が高い請求項1記載の繊維ボードの製造方法。
【請求項4】
前記ウェブ形成工程において、ウェブを予備的に加熱する請求項1記載の繊維ボードの製造方法。
【請求項5】
前記ウェブ形成工程において、ウェブの上面又は下面のうちバインダー樹脂の含有率が高い面に樹脂をコーティングする請求項1記載の繊維ボードの製造方法。
【請求項6】
前記コーティングされる樹脂に強化用フィラーが配合されている請求項5記載の繊維ボードの製造方法。
【請求項7】
前記ウェブ圧着工程において、二枚重ねにしたウェブをプレート又はシートで挟み、高温状態で圧縮した後、ウェブを挟んでいるプレート又はシートごと圧縮しながら冷却して、前記ウェブ同士を圧着し、前記プレート又は前記シートは、高温状態で圧縮する際に溶融せず、かつ、平坦である請求項1記載の繊維ボードの製造方法。
【請求項8】
前記ウェブ圧着工程において、二枚重ねにしたウェブの上下に樹脂フィルムを配置して、高温状態で圧縮した後冷却して、ウェブ同士を圧着する請求項1記載の繊維ボードの製造方法。
【請求項9】
前記ウェブ圧着工程において、二枚重ねにしたウェブの間に樹脂フィルムを挟み込んで、高温状態で圧縮した後冷却して、ウェブ同士を圧着する請求項1記載の繊維ボードの製造方法。
【請求項10】
前記ウェブ圧着工程において、二枚重ねにしたウェブの間に機能材料を挟み込んで、高温状態で圧縮した後冷却して、ウェブ同士を圧着する請求項1記載の繊維ボードの製造方法。
【請求項11】
前記ウェブ圧着工程において、二枚重ねにしたウェブの端部に補強材料を挟み込んで、高温状態で圧縮した後冷却して、前記補強材料が挟み込まれたウェブの端部を高密度化し、前記ウェブ圧着工程の後に、圧着されたウェブの前記補強材料が挟み込まれた端部に切削加工を施す請求項1記載の繊維ボードの製造方法。
【請求項12】
前記ウェブ圧着工程において、バインダー樹脂の配合率の等しいウェブを高温状態で圧縮した後冷却して、前記ウェブ同士を圧着した請求項1記載の繊維ボードの製造方法。
【請求項13】
前記ウェブ圧着工程において、バインダー樹脂の配合率の異なるウェブを高温状態で圧縮した後冷却して、前記ウェブ同士を圧着した請求項1記載の繊維ボードの製造方法。
【請求項14】
繊維とバインダー樹脂とからなる繊維ボードであって、バインダー樹脂の含有率が厚み方向の中央部から上面及び下面に向かって徐々に高くなり、厚み方向の中央部に機能材料が挟み込まれてなる繊維ボード。
【請求項15】
前記バインダー樹脂の含有率が厚み方向の中央部から上下に対称である請求項14記載の繊維ボード。
【請求項16】
前記バインダー樹脂の含有率が厚み方向の中央部から上下に対称でない請求項14記載の繊維ボード。
【請求項17】
上面及び下面に熱可塑性樹脂層を有し、かつ、厚み方向に通気性を有する請求項14記載の繊維ボード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−62239(P2006−62239A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−248512(P2004−248512)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(595076329)三暉工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】