説明

繊維マトリックス及び繊維マトリックスの作成方法

三次元繊維構造の形成方法を開示する。本方法は、a)液体担体、繊維、及びバインダーを含む出発物質を提供する工程、b)出発物質を基板に通過させ、基板上に繊維を堆積させる工程、c)三次元繊維マトリックスを形成する工程、及びd)バインダーを硬化する工程を含む。基板上の出発物質の流れが無秩序であり、高い割合の空隙を含有する三次元構造内に繊維が配置されるように、基板上への材料の流れを調整してもよい。このプリフォームは、湿潤状態で加圧してもよく、圧力下で硬化する。繊維は、炭素繊維を含んでもよい。再生炭素繊維が特に有用であることがわかった。得られたプリフォームは確率的であってもよく、融蝕用途及びブレーキ用途での使用に最適である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、繊維ベースのプリフォーム及びかかるプリフォーム用の繊維マトリックスの作成方法に関する。このプリフォームは、融蝕、高性能、摩擦、摩耗及び耐食の各用途での使用に最適である。特に、本発明は、ブレーキ、ロケットモーター用ハウジング等の高温用途で使用される炭素ベースのマトリックスの生成方法に関する。
【0002】
炭素−炭素複合材料用途で使用するためにプリフォームを製造することはよく知られている。Morganは、「炭素繊維とその複合材料(Carbon Fibres and their Composites)」の中で、プリフォーム、及びかかるプリフォームを炭素複合材料生成の前駆体として生成する方法について詳細に述べている。
【0003】
また、炭化ケイ素、PPS繊維、PEEK繊維、又はセラミック酸化物繊維等のその他の繊維から繊維ベースのプリフォームを製造することも知られている。かかる複合材料は熱分解後、一般的にブレーキ用途で使用される。熱分解プロセスの1つの形式として、炭化水素及び気体による化学蒸着が挙げられる。かかるプロセスは、一般的にCVDと呼ばれている。代替的な熱分解プロセスとして、熱硬化性樹脂による注入、又はピッチ材料若しくは液体シリコーン材料による液体含浸が挙げられる。かかるプロセスは、一般的にCVIプロセスと呼ばれている。
【0004】
細断繊維のトウの一方向、2次元、及び3次元の不織布プリプレグ(予備含浸複合材料繊維)を使用することが知られている。このような材料は、高温の注入プロセスのベースとして使用されてきた。
【0005】
高温用途で使用される炭素−炭素複合材料は、最終構造中の繊維量が高いことが望ましい。不織布材料は集中的な熱処理が必要であり、炭化プロセス中に収縮する場合が多い。また、かかる材料は圧縮しない限り繊維体積率が低いことがよく知られている。さらに、炭素繊維は破砕性を有し、且つ圧縮力を過剰に用いるとプリフォームの本体内で炭素繊維が著しく破損することが当技術分野ではよく知られている。いくつかの複合材料は圧縮されてきたが、全炭素含有量が少なく、使用される炭素はナノ粒子であった。
【0006】
織物プリプレグを使用してプリフォームの繊維体積率を向上させることができる。織物プリプレグは層状で使用でき、各層の厚さ及び坪量は有限であり、多くの層を互いに接着して最終プリフォームを形成することができる。層ごとに繊維構造のx/y位置合わせを行うことにより、フィルムの低回転速度での形成が促進され、従ってブレーキ用途における低温剪断摩耗が低減される。しかし、繊維の平面配向を貫通する「z」方向繊維を有し、確実にプリフォーム体の内部構造が隣接する層同士の界面で破局的剪断故障を起こさないようにすることが望ましい。典型的に、この問題は、ニードリング又はステッチングのいずれかにより解決されてきた。かかるプロセスは、US5143184及びUS5599603で教示されている。
【0007】
不織布材料の場合、ニードリング及びステッチングを用いて、プリフォーム基板の最終体積率を向上させることもできる。US5599603では、不織布地を所望の厚さに糸で縫合している。
【0008】
ニードリングの所望性については、例えば、US6361722、US5803210及びEP1813833の実施例で述べられている。十分に高い繊維体積率を有するプリフォームを得るためにニードリングを必要とすることが一般的に受け入れられている。最終プリプレグに布地が使用されていることを考えると、最終体積率は制限要因と考えられる。緻密化前の繊維体積率が十分に高くない場合、この材料は要求が緩い融蝕用途には最適だが、繊維体積率が低いため、高性能ブレーキ用途等の高摩耗用途ではこのプリフォームを使用することはできない。
【0009】
織物材料を用いると繊維の高い本体体積率が得られるが、多重層を使用し且つ緻密化前にプリフォームを構成するため、構成プロセスの詳細に慎重なハンドリング及び注意が求められる。これは、破局的平面貫通破壊の可能性を排除するために各層の繊維の配向を変える必要があるため、確実に多重層を特定の幾何学的配列に揃えなければならないためである。多重層を得るためには、US2008/0090064で詳述されているニードリング又はステッチングを使用する必要がある。このため、プリフォームの生成に数週間程度のかなりの期間を要する可能性がある。
【0010】
Burchell氏、Judkins氏、Roger氏及びShaw氏の「炭素繊維ベースの吸着剤Monolithsの構造及び特性(Structure and Properties of Carbon Fibre based absorbent Monoliths)」及びMaterials Innovation Materials LLC社のSBIRフェーズ1最終報告書(SBIR Phase 1 Final Report)に記載されているように、炭素繊維及びバインダーを含有するスラリーからプリフォームを製造することが知られている。周知の方法では、スラリーを撹拌する必要があり、多孔質成形型を有するモールドをこのスラリー内に沈め、その後このスラリー混合物から引き上げる。繊維は多孔質成形型上に沈降する。水などの溶媒は、真空を加えることにより成形型から除去することができる。代替的に、スラリー材料をタンクから多孔質成形型まで下方向に流し、何らかの方法で多孔質成形型に真空を加え、成形型から溶媒を吸出し、炭素繊維をモールド内に残すことも行われてきた。
[発明の概要]
本発明の第1局面によれば、繊維マトリックスの作成方法が提供され、本方法は以下を含む。
a.液体担体、繊維及びバインダーを含む出発物質を提供し、
b.前記出発物質を基板に通過させて、前記基板上に繊維を堆積させ、
c.三次元繊維マトリックスを形成し、及び
d.前記バインダーを硬化する。
【0011】
好ましくは、前記三次元マトリックスは以下の少なくとも1つにより形成される。
i)真空力を前記基板上の前記繊維に加え、
ii)前記基板上に出発物質の無秩序流を創出する。
【0012】
従って、前記第1局面の1つのオプションでは、前記方法は以下を含む。
a.液体担体、繊維及びバインダーを含む出発物質を提供し、
b.前記出発物質を基板に通過させて、前記基板上に繊維を堆積させ、
c.真空力を前記基板上の前記繊維に加えて、三次元繊維マトリックスを形成し、及び
d.前記バインダーを硬化する。
【0013】
前記第1局面の第2オプションでは、前記方法は以下を含む。
a.液体担体、繊維及びバインダーを含む出発物質を提供し、
b.前記出発物質を基板に通過させて、前記基板上に繊維を堆積させ、
c.前記基板上に出発物質の無秩序流を創出して、三次元繊維マトリックスを形成し、及び
d.前記バインダーを硬化する。
【0014】
1つの実施形態では、前記三次元マトリックスを形成するため、i)前記基板上の前記繊維に真空力を加えること、及びii)前記基板上に出発物質の無秩序流を創出すること、の両方を行ってもよい。
【0015】
好ましい本発明の第1局面によれば、繊維マトリックスの作成方法が提供され、本方法は以下を含む。
a.液体担体、繊維、及びバインダーを含む出発物質を提供し、且つモールド内に基板を提供し、
b.出発物質の流れを調整して前記モールド内に流入させ、且つ前記モールドにおいて前記出発物質を基板に通過させて、基板上に繊維を堆積させ、
c.三次元繊維マトリックスを形成し、及び
d.前記バインダーを硬化する。
【0016】
好ましくは、前記好ましい第1局面において、前記三次元マトリックスは以下の少なくとも1つによって形成される。
i)前記基板上の前記繊維に真空力を加えること、
ii)前記基板上に出発物質の無秩序流を創出すること。
【0017】
従って、前記好ましい第1局面の1つのオプションにおいて、前記方法は以下を含む。
a.液体担体、繊維、及びバインダーを含む出発物質を提供し、且つモールド内に基板を提供し、
b.出発物質の流れを調整して前記モールド内に流入させ、前記出発物質を基板に通過させて、基板上に繊維を堆積させ、
c.前記基板上の前記繊維に真空力を加え、三次元繊維マトリックスを形成し、及び
d.前記バインダーを硬化する。
【0018】
前記好ましい第1局面の第2のオプションにおいて、前記方法は以下を含む。
a.液体担体、繊維、及びバインダーを含む出発物質を提供し、且つモールド内に基板を提供し、
b.出発物質の流れを調整して前記モールド内に流入させ、前記出発物質を基板に通過させて、前記基板上に繊維を堆積させ、
c.前記基板上に出発物質の無秩序流を創出して、三次元繊維マトリックスを形成し、及び
d.前記バインダーを硬化する。
【0019】
好ましい第1局面の1つの実施形態において、前記三次元マトリックスを形成するため、i)前記基板上の前記繊維に真空力を加えること、及びii)前記基板上に出発物質の無秩序流を創出すること、の両方を行ってもよい。
【0020】
好ましくは、前記繊維は炭素繊維を含む。
本発明の第2局面によれば、三次元マトリックスを有する繊維不織布基板を含む繊維プリフォームが提供される。この場合、繊維は硬化バインダーによりマトリックス形成物内で固着させることを特徴とする。
【0021】
本発明の第3局面によれば、前記第1局面の方法によって入手可能な繊維マトリックスである繊維プリフォームが提供される。
本発明は、第4局面において、ブレーキ又はロケットモーター用ハウジングで使用される物品等、高温用途で使用される物品の製造における、前記第2又は第3局面のプリフォームの使用を提供する。
【0022】
本発明は、第5局面において、ブレーキ又はロケットモーター用ハウジングで使用される物品等の、高温用途で使用される物品の生成方法を提供し、前記方法は以下の工程を含む。
i)前記第2又は第3局面のプリフォームを提供し、
ii)前記プリフォームに対してCVD又はCVIプロセスを実行する。
【0023】
また、本発明は、第6局面において、前記第2又は第3局面のプリフォームを含む、ブレーキ又はロケットモーター用ハウジングで使用される物品等、高温用途で使用される物品を提供する。
[発明の詳細な説明]
好ましくは、出発物質は、液体担体、繊維及びバインダーを含み、繊維は炭素繊維を含むことを特徴とする。
【0024】
本発明において、実験室での繊維体積率は、低くても15〜18%、高い場合は30%超を容易に達成した。このような高い繊維体積率は、微粉砕炭素微粒子を含まなければならない可能性があるが、40%までの繊維体積率又はさらにそれよりも高い繊維体積率も達成可能である。従って、繊維体積率は、15〜40%(18〜40%等、例えば20〜35%)であってもよく、又はこれより高くてもよい。
【0025】
1つの実施形態において、繊維体積率は、15%以上(例えば15〜75%又は15〜70%)、又は18%以上(例えば18〜75%又は18〜70%)、又は20%以上(例えば20〜75%、又は20〜70%、又は20〜65%、又は20〜60%、又は20〜55%、又は20〜50%)である。
【0026】
繊維体積率の好ましい範囲は、20%〜30%以上(例えば20%〜50%、20〜45%等)、特に20%〜40%である。かかる繊維体積率は、不織布炭素繊維構造ではこれまで達成されなかった。
【0027】
この範囲の繊維体積率はアルミナ繊維等の無機材料で得られてきたが、これらは加工が容易な繊維である。これに対し、従来の賢明な方法では、炭素繊維等の他の繊維に対して必要な加工を行う場合、基本的に粉末化するであろう。従って、本発明の方法は、炭素繊維を含む全ての種類の繊維において繊維体積率を20%〜30%、又はそれ以上にでき、非常に有利である。
【0028】
第1局面の方法の特に有利な点は、出発物質が細断されたポリアクリロニトリル(PAN)炭素繊維の場合、繊維体積率が少なくとも30%以下の生成物を得ることができることである。その上、出発物質がピッチをベースとした炭素繊維である場合、少なくとも40%までの繊維体積率を達成することができる。
【0029】
出発物質がバージン又は再生炭素繊維の場合、例えば50%以上又は60%以以上の高い繊維体積率を得ることができる。
当技術分野で知られているように、繊維体積率は、マトリックスの厚さを測定し、且つそのマトリックスのサンプルを秤量することによって測定してもよい。サンプルのバインダー含有量は、そのサンプルを秤量し、サンプルをバインダーが燃え尽きる温度以上の温度にさらし、その後再秤量して重量差を算出することにより設定してもよい。サンプルを何度まで加熱するかは、バインダーの種類により異なる。従って、単位面積当たりの繊維量及び空隙量を計算することができる。
【0030】
1つの実施形態において、三次元マトリックスは、基板上に出発物質の無秩序流を創出し、任意にさらに基板上の繊維に真空力を加えることにより形成される。
無秩序流を生じさせる手段を1つ以上使うことにより、基板上に出発物質の無秩序流を生じさせてもよい。無秩序流とは、システム挙動がシステムの正確な初期条件に非常に依存するため、事実上、予測不可能でランダム過程と区別ができない流れであると理解してもよい。典型的に、流れシステムにおいて、無秩序システム流は、層流よりむしろ乱流を示唆するレイノルズ数を有する。
【0031】
あるシステムのレイノルズ数(R)は、R=(システムの密度)×(システムの速度)×(システムの落下距離又はシステムが貫流するパイプの直径)/(システムの粘度)によって定義される。システムの密度の測定はkg/m3、及び速度の測定はm/sで行う。距離又は直径の測定はm、及び粘度の測定はkg/m・sで行う。
【0032】
密度の測定は室温及び室圧で行う。粘度の測定は、室温及び室圧下で粘度メーター、特にNorcross製M8BO粘度メーター(Norcross Corporation,Newton,MA,USA)を使って行う。システムの速度(流量)の測定は、室温及び室圧下で流量計を使用して、特にTitan FT2 Turbine流量計(Titan Flowmeters,UK)により行う。
【0033】
層流システムの値は2000を十分下回るが、無秩序流又は乱流システムのレイノルズ数は2000以上であり、3000以上又はさらに4000以上と高い可能性がある。
出発物質を基板上に落下させることにより、基板上に出発物質の無秩序流を生じさせてもよい。
【0034】
代替的に又は追加的に、基板上の出発物質の無秩序流は、複数の出口ポイントから出発物質を基板に通過させることにより生じさせてもよい。複数の出口ポイントは、2つ以上の出口を有するマニホールドによって提供されてもよい。
【0035】
代替的に又は追加的に、高圧力による流れを用いて出発物質をモールドに供給することにより、基板上に出発物質の無秩序流を生じさせてもよい。
代替的に又は追加的に、リストリクタプレートを供給パイプ内に挿入し、供給パイプ内に背圧を創出し、より高い力で材料を基板上に押し出すことにより、基板上に出発物質の無秩序流が得られよう。
【0036】
代替的に又は追加的に、出発物質を基板に対して角度を持たせて供給することにより出発物質の無秩序流を基板上に生じさせてもよい。いくつかの実施形態では、この無秩序流をモールドの側面から基板に供給するようにしてもよい。好ましくは、出発物質は圧力下でポンプによってモールド内に送られる。出発物質の対向する入口ポイントを提供することにより、出発物質の直交流が基板上に無秩序流を形成するようにすることが望ましい場合もある。
【0037】
代替的に又は追加的に、基板の下に複数の真空ポイントを提供することによって、基板上に出発物質の無秩序流を生じさせたり支援したりしてもよい。真空マニホールドを提供し、基板に多くの真空箇所を適用するようにしてもよい。
【0038】
無秩序流を生じさせる1つ以上の手段を組み合わせてもよい。例えば、基板に加えられる真空力に加え、出発物質を単一の入口ポイントから基板上に落下させたり、又はマルチポイントマニホールドから基板を通過させたりしてもよい。
【0039】
1つの実施形態において、真空力を基板に加えてもよい。基板に真空力を加えて、基板上に堆積した繊維を介して液体担体が排出され、繊維から排出されることが好ましい。
1つの実施形態において、出発物質は、保持容器からマニホールド内に送られ、マニホールド内に集められる。出発物質は、マニホールドから複数のマニホールド出口を介して基板上に送られる。マニホールド出口は基板表面に対して実質的に90°であってもよく、又は鋭角又は鈍角であってもよい。出発物質は、マニホールド出口から圧力下で流れてもよく、又はマニホールドから重力で排出されてもよい。
【0040】
いくつかの実施形態において出発物質は自重でマニホールドに運ばれるが、他の実施形態において出発物質の運搬はポンプによって行われてもよい。繊維の損傷を防止するには蠕動ポンプシステムが好ましいが、代替的なポンプシステムを用いてもよい。
【0041】
周知の方法に勝る利点は、基板を介した担体材料の複数の流れが、三次元の確率的構造を基板上に形成することにある。つまり、形成される構造は、x、y及びz方向の繊維を有し、これらの繊維はランダムに配向される。
【0042】
出発物質からの液体担体の基板を通る流れは比較的速いことが望ましい。1つの実施形態において、液体担体の速度は、1m/s以上(2m/s以上、3m/s以上、4m/s以上、又は5m/s以上等)である。代替的な実施形態において、液体担体の速度は10m/s以上である。
【0043】
好ましくは、液体担体流の速度は、重力で1メートル落下するときの速さ以上である。
好ましい方法では、出発物質は保持容器から基板までの距離を落下可能とされる。基板は、側壁を有するモールド内に置いてもよい。1つの実施形態において、出発物質は、単一の流れで保持容器から基板に落下する。好ましい距離は、繊維を運ぶために必要な液体担体量に依存する。運搬速度も、最も好ましい距離に影響し得る。落下距離は、0.5m〜10m(0.5〜7.5m等)、好ましくは0.75〜6m、及び最も好ましくは1〜5m(1〜4m又は1〜2m等)であってもよい。1つの実施形態において、好ましい距離は約1.5mである。
【0044】
2000gsmのプリフォームを生成する1つの好ましい実施形態において、出発物質の全量が、排出の開始前にモールドに移される。1m2の基板の場合、モールドの体積は4m2、従って距離は4mである。この実施形態では200mmの供給パイプが使用される。モールドの充填と排出を同時に行う場合、距離を短くしてもよい。
【0045】
出発物質は、基板を通過する前に加圧されてもよい。
液体担体が出発物質から基板を貫流する際に高い速度を達成するように、出発物質に最適な圧力がかかっていることが望ましい。好ましくは、この圧力は、5kPa以上(6kPa以上、7kPa以上、8kPa以上等)、好ましくは9kPa以上(例えば10kPa以上)である。1つの実施形態において、出発物質の最小圧力は、15kPa以上(例えば20kPa以上(30kPa以上等))であってもよい。
【0046】
好ましくは、基板上の無秩序流を最大化するため、出発物質は、基板までの距離を落下することにより創出される圧力を超える圧力まで加圧される。落下によって生成される圧力の近似値は、9.75m(32フィート)当たり103kPa(15psi)である。落下により生成される圧力の1.5倍又は2倍の圧力が望ましいと考えられる。
【0047】
2m落下する場合、出発物質の圧力は、31kPa(4.5psi)以上、好ましくは41kPa(6psi)以上であってもよい。4m落下する場合、出発物質の最小圧力は、69kPa(10psi)以上、好ましくは90kPa(13psi)であってもよい。より高い圧力が好ましい場合もある。
【0048】
基板上の出発物質の流れは無秩序であり、レイノルズ数が、2000以上(2500以上等)、好ましくは3000以上(3500以上等)、より好ましくは4000以上(例えば4500以上、5000以上、6000以上、7000以上、8000以上、9000以上、又は10,000以上)であることが望ましい。
【0049】
いくつかのシステムでは非常に高いレイノルズ数を達成してもよく、140,000〜160,000以上の高い値であってもよい。
1つの好ましい範囲は、3000〜10,000以上(例えば3000〜200,000(4000〜160,000等))である。いくつかの実施形態において、好ましい範囲は、5000〜25,500以上(例えば5000〜180,000)である。他の実施形態において、好ましい範囲は、25,500〜100,000以上(例えば25,500〜170,000)であってもよい。
【0050】
出発物質は、基板を通過する前にマニホールドに入るようにしてもよい。マニホールドは単一の出口を有してもよいし、又は2〜20個(例えば2〜10個等)の複数の出口を有してもよい。好ましくは、マニホールドの出口数は、出発物質によって覆われる基板の大きさにより、2、4、6、8又は10である。基板が大きければ、より多くの出口を提供してもよい。出発物質は、複数の流れとなって基板上を流れる。基板上には2つ以上の出発物質の流れが存在する。いくつかの実施形態において、4つ又は6つ又は8つの流れが存在してもよい。好ましい流れの数は、基板及び形成されるマトリックスの面積に依存してもよい。流れの数は、好ましくは、形成されるマトリックスの面積とともに増加する。基板1平方フィート(0.09290m2)毎に1つの出口を提供してもよい。各出口は直径を有し、好ましくは、各マニホールド出口の直径は同じである。
【0051】
従来の方法では、繊維は一般的に2次元に展開される。いくつかの繊維は部分的に第3次元で配置されるが、これは完全な三次元マトリックスではなく、その上確率的構造は得られない。本発明において、三次元マトリックスが形成される。さらに、確率的構造が生成され得る。
【0052】
従来の方法では、出発物質は基板方向に流れるため、大部分は担体材料が流れる方向に配向される。流れが基板に衝突すると、流れは基板面に方向転換され、従って繊維は基板面に配向され基板に対して垂直ではなくなる。
【0053】
本発明の方法では、出発物質の流れは無秩序であってもよく、多くの流れや向流は繊維をいくつもの配向に方向付け、そのため確率的構造が形成される。かかる確率的構造では、繊維の配向は3次元であり、繊維はx、y及びz方向に配置される。実際、繊維は事実上、平面とその平面に対して90度の間の角度の、ほとんど全てではないにしてもそのほとんどで配向されてもよい。例えば、繊維は、平面とその平面に対して90度の間の角度の50%以上(60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は95%以上等)で配向されてもよい。
【0054】
個々の繊維は、水平面から垂直に0〜±90°で配向されてもよい。また、個々の繊維は、水平面を起点にして360°以内でランダムに配向されてもよい。
好ましくは、本発明において形成される3次元マトリックスでは、繊維の5重量%以上(10重量%以上等)が、実質的に「z」方向に配向される。好ましくは、繊維の5〜30重量%(10〜25重量%等)が、実質的に「z」方向に配向される。より好ましくは、繊維の10重量%〜20重量%が、実質的に「z」方向に配向される。
【0055】
確率的構造を有するマトリックスの形成は、プリフォームとして使用可能であり且つ高い割合の空隙を含有する生成物を提供していることがわかった。このことは、CVDでの気体注入及びCVIでの液体注入を容易にするという点で望ましい。織物繊維の堆積によって形成される従来技術のプリフォームの欠点は、比較的少ない空隙しか存在せず、そのため気体又は液体の注入が困難であり、プロセスに数日または数週間かかり非常に遅い点である。これと比較して、本発明のマトリックスの空隙率では気体の注入は比較的早く、必要な気体注入はものの数時間で行うことができる。
【0056】
好ましくは、本マトリックスは、10体積%以上の空隙(15体積%以上の空隙等)を含有し、好ましくは、本マトリックスは20体積%以上の空隙を含有し、及びより好ましくは、20〜80体積%の空隙(20〜70体積%の空隙等)を含有しうる。1つの好ましい実施形態において、本マトリックスは、30〜70体積%(30〜60体積%等)の空隙を含有する。1つの好ましい実施形態において、本マトリックスは40〜70体積%の空隙、より好ましくは40〜60体積%(40〜50体積%等)を含有する。
【0057】
プリフォーム中の空隙の存在及び配置は、C−SCAN又はSEM顕微鏡又はその他の同様の技術を使って測定することができる。個々の空隙の大きさは、かかる技術により測定してもよいが、一般的に実際の空隙率は平均化される。マトリックス中の空隙率は、繊維及びバインダーの含有量と100体積%との差である。
【0058】
さらなる、本発明のプロセスは、空隙の分布が秩序的又は幾何学的というよりもランダムであるマトリックスを生成する。このことは気体注入が最適化されることを意味するため有利である。特に、従わなければならない特定の幾何学的形状又は経路は存在しないであろう。
【0059】
C−SCAN又はSEM顕微鏡を使ってマトリックスを検証することによって、ランダム分布の存在を確認してもよい。かかる技術により、当業者であれば、空隙が幾何学的又は規則的分布ではなく、ランダム(非秩序的)分布であるか否かわかるであろう。
【0060】
例えば、担体材料が保持容器から基板へ垂直に移動して担体材料の衝突又は担体材料流の第3方向への方向付けを創出することによって得られうる基板上の担体材料の無秩序流は、形成される繊維マトリックスの確率性を向上させることがわかった。
【0061】
所望の繊維坪量は、出発物質の基板への送達及び液体担体の除去の好ましい形態に影響し得る。例えばマニホールドからの単一の出口ポイント又は複数の出口ポイントによって、又は上方からの単一の又は複数の出口ポイントと組み合わせて使用してもよい側面の入口ポイントから、出発物質を基板に送達するシステムを用いることにより、低坪量材料を十分に形成することがわかった。特に好ましい実施形態は、側面入口供給が基板の上方からの単一の又は複数の入口ポイントと組み合わせられたシステムを適用する。下り流にぶつかる側面入口ポイントからの直交流は、基板上の出発物質の無秩序流の度合いを高める。
【0062】
繊維マトリックスの繊維坪量が2000gsm以上であることが望ましい場合、基板の下流にある多数の吸出しポイントによって基板の下に排流を提供することが好ましい場合もある。マニホールドは基板の下に提供されてもよい。多数の出口パイプの全面積が一般的なドレーンパイプの面積よりも僅かに小さいため、液体担体の排出速度はあまり速くないことが好ましい。単一の出口が出発物質を基板に送達することが好ましい。坪量が増えるにつれて液体及び繊維量が増加し、単一の出口は基板上への材料流に対応することが求められるため、単一の出口を出発物質の供給手段として使用することが好ましい場合もある。高流量に対応可能な代替的なシステムを使用してもよい。
【0063】
液体担体、繊維及びバインダーを含む出発物質はスラリーを形成することが望ましい場合がある。
出発物質は、基板を通過する前は保持容器内に保持されてもよい。保持容器内の出発物質は加熱してもよい。出発混合物を加熱することにより、さらに高温のバインダーの使用を容易にする。さらなる高温を用いることにより、液体担体としてさらに高粘性の材料も使用できるようになる。
【0064】
モールド又は成形型内に基板を提供してもよい。出発物質の流れを調整してモールド内に流入させることは本発明の重要な局面であると考えられる。また、モールド内の出発物質が基板を通過する流れを調整することも望ましい。
【0065】
工程a)で使用する出発物質は、液体担体、繊維及びバインダーを任意の順序で混合することによりにより提供してもよい。例えば、繊維を液体担体に添加し、それからバインダーを添加してもよい。代替的に、バインダーを液体担体に添加し、それから繊維を添加してもよい。
【0066】
好ましくは、出発物質は、液体担体中に繊維を含むスラリー又は分散液の形態をとる。
液体担体は、水又は水溶液等の水性生成物でもよいし、又は有機溶媒等の非水性生成物でもよい。好ましい実施形態において、担体は水性生成物である。基板を通過する前に出発物質を加熱する場合は、液体担体としてさらに高粘性の材料を使用してもよい。
【0067】
液体担体は、繊維を分離して液体流により基板に移動させるための媒体としての役割を果たす。液体担体の比重は出発混合物中で使用される繊維の比重より低いことが望ましい。使用する繊維より比重が低い液体担体を使用することにより、液体担体は繊維を浮遊させることなく繊維を分散させ、液体担体流中で繊維を移動させることができる。炭素繊維を使用する実施形態では、炭素繊維の比重は1.7〜1.8であるため、比重が1.7未満の液体担体を好ましくは使用すべきである。
【0068】
液体担体は、例えば、分散助剤、粘度調整剤、チキソトロープ剤、及び界面活性剤等の、湿った簀の目入り不織布生成物で使用される周知の添加剤から選択される1つ以上のさらなる成分を含んでもよい。
【0069】
好ましくは、出発物質は、繊維が分離され自由に流れ得る高剪断混合物である。出発物質中の繊維の流れを維持し、保持容器の底部に繊維がとどまるのを防止することが望ましい。混合物を撹拌してもよい。撹拌は連続的であってもよく、又は断続的であってもよい。剪断ミキサーを使用してもよい。
【0070】
好ましくは、出発物質の粘度は低い。好ましくは、出発物質の粘度は、100mPa・S未満、より好ましくは50mPa・S未満、及びさらにより好ましくは10mPa・S未満である。最も好ましくは、出発物質の粘度は、5mPa・S未満、より好ましくは3mPa・S未満、及びさらにより好ましくは2mPa・S未満である。好ましくは、出発物質の粘度は、0.1mPa・S〜1mPa・S(0.5mPa・S〜1mPa・S等)である。
【0071】
より好ましくは、液体担体の粘度は水と同様に低い。液体担体の量に対する、液体担体に添加される繊維の割合は、出発物質が非粘性溶液として機能し且つ水と同様の粘度を有するように調整してもよい。
【0072】
従って、1つの実施形態において、液体担体に対する繊維の比率は、出発物質全体の粘度が水の粘度、即ち約0.8〜0.9mPa・Sになるように調整される。
好ましくは、基板は、5以上、10以上、又は20以上の穿孔等、多くの穿孔を有する。好ましい実施形態において、繊維の長さは、少なくとも1つの穿孔の直径を超える。最も好ましい実施形態において、繊維の最小長さは穿孔の最大直径を超える。
【0073】
工程b)において、繊維状マットが基板上に形成されるように上記溶液を基板に付着させてもよい。基板は適切には平面であるか、又は実質的に平面である。従って、マット中の繊維は、繊維が基板上に堆積するにつれ、基板の平面に平行な2次元で、及び基板に垂直な第3次元で連結し得る。
【0074】
基板は、プラスチック又は金属又は合金等の任意の最適な材料から作成されてもよく、例えばスチール又はアルミニウム又は同様の材料から作成されてもよい。基板は、液体担体、バインダー及び繊維成分に対して不活性である材料からなることが好ましい。
【0075】
基板は、繊維が堆積した領域を画定する側面部又は周縁部を備えてもよい。側面部又は周縁部は、液体担体が穿孔を介して注ぎ込まれる漏斗の役割を果たし得る。側面部は、繊維マトリックスの最終用途に合わせて所望の形状にしてもよい。
【0076】
側面部は多くの流れポイントを有するように形成されてもよい。流れポイントは、繊維が堆積する領域内に出発物質が入るための入口ポイントを含んでもよい。代替的に又は追加的に、流れポイントは1つ以上の排流ポイントであってもよい。基板の一部分において排流ポイントの密度を高めることによって、その領域での排流量が増加してその部分により多くの繊維を集め、プリフォームの当該部分に堆積する繊維の密度を高めてもよい。
【0077】
1つの実施形態において、基板はメッシュの形態をとる。代替的に、基板は有孔スクリーンであってもよい。メッシュあるいはスクリーンなどの基板は、設置型であってもよく、又はコンベヤーベルト等、移動するように配置されてもよい。
【0078】
工程c)で、真空力を基板上の繊維に加えてもよい。堆積した繊維中の水などの液体や分子に真空力が加えられ、真空力下で繊維内を移動させる。水などの液体や分子が真空力下で繊維内を移動する際、分子は繊維の少なくともいくらかを、基板の平面に対して角度を有する平面(「z」平面)に配向させる。
【0079】
基板に加えられた真空力下で担体分子が堆積した繊維を介して移動することにより、繊維の少なくともいくらかはz平面にさらに配向し、確率的構造の形成を支援する。
好ましい実施形態おいて、真空力は、低度から中程度の真空を達成するようにしてもよい。真空力は、100kPa(約750トル)以下(例えば100kPa〜3kPa(約750トル〜約25トル)又は3kPa〜100mPa(約25トル〜約1x10-3トル)等)であってもよい。代替的に、100mPa以下(100mPa〜100nPa(約1x10-3トル〜約1x10-9トル)等)の真空力を加えることによって、高程度の真空を達成してもよい。
【0080】
加えられる真空力は、「z」平面に配向される繊維の数に影響してもよい。また、加えられる真空力は、繊維が「z」平面に移動する距離に影響してもよい。
真空力を加える角度は、基板平面に対して45度以上(60度以上等)、好ましくは70度以上又は80度以上(85度以上等)であってもよい。より好ましい実施形態において、基板の平面に対して実質的に90度で真空力を加える。
【0081】
基板は排流パイプ等のドレーン装置への接続部を備えてもよい。真空力は、ドレーン装置に取り付けられた吸引ポンプ、特に低真空吸引ポンプによって加えるようにしてもよい。真空力は、マルチポイント真空マニホールドによって加えてもよい。
【0082】
好ましい方法では、繊維を基板に付着させ、最初に液体担体のいくらかを重力で繊維から排出させる。一定の割合(例えば40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、又は80重量%以上)の液体担体を排出させたら、真空力を繊維に加える。これは液体担体のさらなる割合を除去するとともに、繊維を三次元マトリックスに形作る役割を果たす場合がある。
【0083】
基板は、適切には穿孔処理され、第1面及び対向する第2面を有する。特に好ましい実施形態において、基板は、第1面及び対向する第2面を有する有孔スクリーンの形態をとる。
【0084】
繊維は基板の第1面上に堆積する。真空力は好ましくは、基板の対向する第2面に加えられる。真空力は、穿孔処理された基板の第1面の方へ繊維を引き出し、繊維の三次元マトリックスを形成する役割を果たす。真空力は、基板の第2面に直接加えてもよく、又は遠隔的に加えてもよい。例えば、基板にドレーン装置が備えられている場合、第2面から最も遠く離れたドレーン装置の端部に真空力を加えてもよい。
【0085】
好ましくは、真空力下で繊維中の全湿分が除去されるわけではなく、繊維状マトリックスは一定の割合の湿分を含有する。
出発物質中の繊維対液体比は、1:25〜1:200(1:50〜1:150等)、好ましくは1:75〜1:125であってもよい。1:200等の低い比率は長さが25mm以上の繊維に使用してもよく、一方1:25等の高い比率は長さが3mm以下の繊維等の短い繊維に使用してもよい。好ましい繊維対液体比率は1:100である。上述のように、繊維対液体比を調整して出発物質の最適な粘度を達成してもよい。
【0086】
基板に付着した繊維から液体が排出され真空力が加えられたら、即ち工程c)の後、繊維液体比は1:2〜1:14(1:2〜1:10等、例えば1:3〜1:9)まで低下させもよい。好ましい繊維対液体比は1:5〜1:9、特に好ましい繊維対液体比は1:7である。
【0087】
工程d)でバインダーを硬化する。これは、3次元繊維マトリックスを任意の繊維体積率で任意の形状に固定する役割を果たす。
硬化工程は適切には熱を加えることを含む。特に、繊維状マトリックスは、バインダーの硬化温度を上回る温度まで加熱してもよい。適切には、バインダーの硬化温度は70℃以上であるため、工程d)は繊維状マトリックスを70℃以上に加熱することを含む。
【0088】
工程d)で熱を加えることにより繊維状マトリックスを乾燥してもよい。熱を加えるための任意の最適な技術を考察してもよい。例えば、基板を通過する熱空気供給の形態で熱を供給してもよいし、又は基板の近傍に備えられた電気的要素によって加熱を達成してもよい。繊維状マトリックスを乾操器内に置いてもよいし、又は最適な温度に加熱した乾操器を通過させてもよい。
【0089】
好ましくは、硬化工程d)は70℃〜450℃の温度で実施される。より好ましい実施形態において、この温度は100℃〜450℃であってもよい。特に好ましい範囲は120℃〜220℃である。使用する硬化温度は、使用するバインダー及び重合体バインダーの熱安定性によって決定してもよい。硬化温度はバインダーの分解温度より低くなければならない。本方法の1つの実施形態において、硬化温度は165℃〜220℃である。
【0090】
硬化工程d)の継続時間はほんの数秒〜数分であってもよい。好ましくは、工程d)の継続時間は10秒〜60分であってもよい。より好ましくは、継続時間は1分〜30分であってもよい。継続時間は、温度が上昇する時間とプリフォームの冷却時間を含んでもよい。
【0091】
好ましい任意の工程では、工程c)で形成された繊維状マトリックスはその後圧縮される。好ましくは、繊維状マトリックスは、湿分を含有した状態で圧縮される。繊維状マトリックスは、基板に真空を加えることにより得られたものであってもよい。代替的に又は追加的に、繊維状マトリックスは、基板上の液体担体の無秩序流を生じさせることによって得られる三次元マトリックスであってもよい。上記で参照したように、無秩序流を生じさせる要因は、
−多くの出口ポイントから基板上に流れる出発物質
−圧力下
−基板に対して角度を有する
−多くの直交流
−基板上への落下
の少なくとも1つであってもよい。
【0092】
このさらなる任意の圧縮工程で加えられる圧縮圧力は5kPa以上、好ましくは50kPa〜50000kPa以上(100kPa〜25000kPa以上等)であってもよい。これは、繊維状マトリックスの厚さ及び体積を低減する役割を果たす。静的圧力により圧縮力を加えてもよい。代替的に、連続的に送り込まれるニップローラー又はベルトにより圧縮力を加えることもできる。
【0093】
好ましい圧力は、要求される繊維の最終体積率によって決定してもよい。体積率が約5〜10%と低い場合、少なくとも40N/cm2(400kPa)の圧力を加えてもよい。体積率が30%〜40%と高い場合、500N/cm2(5000kPa)又は25000kPa以上のプレス圧力を加えてもよい。
【0094】
好ましくは、硬化工程d)は、任意の圧縮工程と同時に、又は任意の圧縮工程の後に行われる。硬化と圧縮が同時に生じることが好ましい。
驚くべきことに、繊維状マトリックスが湿分を含有する状態(例えば、繊維対液体比が1:2〜1:14)で圧縮し実質的に同時にバインダーを硬化すると有利な硬化が得られることがわかった。特に、マトリックスが炭素繊維を含有する場合、この処理を行うと、高い圧力処理に通常伴う炭素繊維の望ましくない脆い特性が、驚くべきことに、顕著又は過剰ではなくなることがわかった。繊維破損は生じない。本体繊維長のかなりの部分で、圧縮力を加えることで破損、粉末化又は縮小は生じないことがわかった。
【0095】
従って、好ましくは、工程d)で圧力を加えながらバインダーを硬化させる。1つの実施形態において、最初に圧力を加え、その後圧力を加え続けながらバインダーを硬化させる。
【0096】
バインダーが一旦硬化したら、(所望の繊維体積率(例えば20%〜30%以上)の)繊維マトリックスはもはや緩和したりもとの厚さに戻ったり(結果として繊維体積率が減少したり)することはない。従って、硬化工程d)の完了後は圧力を加え続ける必要はない。
【0097】
硬化が完了したら繊維マトリックスに熱を加え続け、マトリックスを完全に乾燥させる。硬化が生じる温度まで昇温し、マトリックスが硬化するまでその温度を維持し、その後マトリックスの乾燥が生じる温度に調節してもよい。マトリックスは、100℃〜450℃の温度で乾燥してもよい。好ましい実施形態おいて、この温度は100℃〜400℃であってもよく、より好ましい実施形態において、この温度は250℃〜400℃である。
【0098】
マトリックスの加熱は重金属プレート等のプレートによって行ってもよい。プレートはマトリックスの一側面のみに提供されてもよく、好ましくはマトリックスの両側面に提供される。1つの実施形態において、マトリックスの温度は連続的に硬化温度まで上げられる。好ましい実施形態おいて、温度は100℃〜120℃まで上げられ、この温度は一定の時間保持され、流れがマトリックスから流出できるようにする。この時間は、数分〜数時間であってもよい。さらに、この時間は特に5分〜2時間の間で変化してもよい。この時間はマトリックスの厚さによって決定してもよい。厚さが6mmの好ましい実施形態では100℃〜120℃での加熱時間は6分であり、厚さが35mmの実施形態では100℃〜120℃での加熱時間は1時間である。
【0099】
工程d)中に繊維マトリックスに加えられる圧力は、5kPa以上、好ましくは50kPa〜50000kPa(100kPa〜25000kPa等、例えば250〜750kPa)であってもよい。繊維マトリックスに加えられる圧力は、50N/cm2(500kPa)であってもよい。代替的に、加えられる圧力は25N/cm2(250kPa)であってもよい。繊維が短い場合は、加えられる圧力はさらに高くてもよい。
【0100】
2段階で圧力を加えることが望ましいことがわかった。第1段階では、マトリックスの厚さをもとの厚さに比べて約50%(もとの厚さに比べて40〜60%の厚さ等)まで縮める。第1段階で使用される圧力は、100psi(670kPa)〜300psi(2070kPa)、より好ましくは200psi(1380kPa)〜300psi(2070kPa)(約250psi(1725kPa)等)であってもよい。好ましくは、第2段階では繊維体積率を増加させるためより高い圧力を使用する。この第2段階で使用される圧力は、1000psi(6890kPa)〜4000psi(27600kPa)psi(1500psi(10300kPa)〜3000psi(20700kPa)等)であってもよい。1500psi(10300kPa)の二次圧では20〜25%の繊維体積率が得られ、3000psi(20700kPa)の二次圧では繊維体積率は30〜33%に増加することがわかった。
【0101】
1つの実施形態において、硬化工程d)に続いて、繊維状マトリックスを圧縮下でさらに冷却する。しかしこれは必須ではなく、大気圧下でマトリックスを冷却してもよい。
工程b)での繊維の堆積、工程c)での三次元構造の形成、及び硬化工程d)、さらに任意の圧縮又は冷却工程は、連続プロセスであってもよく、又はバッチプロセスであってもよい。
【0102】
出発物質中の繊維は、適切には、PAN繊維及び/又はピッチ炭素繊維及び/又は再生炭素繊維等の炭素繊維を含む。その他の種類の繊維も任意に炭素繊維とともに存在してもよい。出発物質に含まれるかかるさらなる繊維の種類は、例えば、金属繊維、ガラス繊維、PPS、PEEK、ケブラー(Kevlar)等のアラミド繊維、又は融蝕及びブレーキ用途で使用されるその他の最適な繊維から選択されてもよい。
【0103】
1つの実施形態において、ガラス繊維、金属繊維、PPS、PEEK、及びケブラー(Kevlar)等のアラミド繊維から選択される繊維は、0〜80重量%(0〜50重量%等)の繊維を含む。1つのかかる実施形態において、ガラス繊維又は金属繊維に含まれる繊維は、1重量%〜20重量%、より好ましくは2重量%〜10重量%、最も好ましくは3重量%〜7重量%である。1つの好ましい実施形態において、金属繊維又はガラス繊維に含まれる繊維は、4〜6重量%(5重量%等)である。1つのかかる好ましい実施形態において、バインダーはMowlith VC600等の酢酸ビニル、塩化ビニル共重合体である。
【0104】
好ましくは、繊維の10重量%以上(20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、33重量%以上、40重量%以上、又は50重量%以上等)は、炭素繊維である。
例えば、炭素繊維と他の種類の繊維との配合物の重量比は1:4〜4:1(例えば1:3〜3:1、1:2〜2:1等)になると予想することができる。この場合、重量比は1:1を含む。
【0105】
1つの実施形態において、繊維の60重量%以上(70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、又は99重量%以上等)は、炭素繊維である。
1つの実施形態において、繊維の90重量%以上(95重量%以上又は99重量%以上等)は、炭素繊維、又はガラス繊維、金属繊維、PPS、PEEK、及びケブラー(Kevlar)等のアラミド繊維の1つ以上と組み合わせた炭素繊維から選択される。
【0106】
1つの実施形態において、出発物質中の繊維は、炭素繊維であってもよく、及びPAN(ポリアクリロニトリル)繊維、ピッチ炭素繊維又は再生炭素繊維から選択されてもよい。驚くべきことに、再生炭素繊維は、炭素繊維のかなりの部分に有害な破損を生じさせることなく使用でき、且つ本方法の処理を実行することができることを発見した。炭素繊維は、完全織物、不織布、一方向、2次元及び3次元の炭素布地、並びに完全に樹脂を注入し成形した複合材料構造等、多くの用途から再生してもよい。再生炭素繊維は、特定の長さに切断された繊維、又はランダムな長さに細断された繊維の混合物、又はこれらの配合物として供給及び使用してもよい。
【0107】
直径が20ミクロン以下、特に5ミクロン〜20ミクロンであり、且つ繊維長さが1mm〜60mmのPAN炭素繊維又はピッチ炭素繊維は、本発明における使用で特に最適であることがわかった。かかる繊維は、SGL carbon Group社、Toho Tenax社、及びZoltek社から、細断されたトウの形態で入手してもよい。より好ましくは、炭素繊維の直径は5ミクロン〜10ミクロンであり、最も好ましくは約7ミクロンである。
【0108】
代替的に、出発物質中の繊維は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ケブラー(Kevlar)等のアラミド繊維、又は融蝕用途及びブレーキ用途での使用に最適なその他の繊維から選択されてもよい。
【0109】
1つの実施形態において、細断繊維を供給してもよい。細断繊維は、例えば、基板と同じ長さ又は基板と同じ深さであってもよい。1つの実施形態において、基板の厚さは35mm以下であり、使用する繊維は、長さが100mm以下の繊維である。1つの実施形態において、基板の厚さは35mm以下であり、使用する繊維は、長さが50mm以下の繊維である。1つの実施形態において、基板の厚さは35mm以下であり、使用する繊維は、長さが25mmの繊維又は長さが25mm及び50mmの繊維の配合物である。
【0110】
本発明における最大繊維長さは100mmであってもよく、又はそれより長い可能性もある。本発明における最小繊維長さは、1mmであってもよく、又はそれよりも短い可能性もある。
【0111】
1つの実施形態において、本発明における最大繊維長さは、60mmであってもよいが、最大長さは通常50mmとなろう。1つの実施形態において、細断繊維は長さ1mm以上及び50mm以下で使用される。これらの細断繊維は、全てがこの範囲内の単一の長さを有する繊維、又はこの範囲内の2つ以上の異なる長さを有する繊維を含んでもよい。特に様々な長さの細断繊維の混合物を使用してもよい。この場合、最小長さは1mm、最大長さは50mmである。
【0112】
従って、いくつかの実施形態において、使用する繊維は、長さが異なる繊維の配合物、例えば2つ以上の異なる長さの繊維の配合物であってもよい。この場合、長さは12mm、25mm及び50mmから選択される。好ましい配合物は、長さが25mmと50mmの繊維の50/50(重量)の配合物である。代替的な配合物は、長さが3mm〜12mmの繊維の任意の混合物を含む。選択された繊維長の配合は、繊維マトリックスの所望の最終厚さによって決定してもよい。
【0113】
長い繊維を使用してもよいと考えられる。炭素繊維は保持容器内で撹拌中に剪断されないことが望ましいため、繊維の長さの制限要因は、撹拌用保持容器で使用するポンプ又は剪断ミキサーの大きさとなる。大型ポンプを使用すれば長い繊維を使用できると考えられる。
【0114】
また、任意の長さの繊維を100重量%(長さ3mmの繊維を100重量%、又は長さ6mmの繊維を100重量%、又は長さ12mmの繊維を100重量%、又は長さ18mmの繊維を100重量%、又は長さ25mmの繊維を100重量%等)使用することも可能である。
【0115】
別の好ましい実施形態において、炭素繊維の直径は6ミクロン〜12ミクロンである。繊維の長さは、3mm〜50mm(例えば3mm〜35mm)から選択されてもよい。
少なくとも繊維マトリックス中の一定の割合の繊維(例えば繊維の5重量%以上、繊維の10重量%以上等)が、最終繊維マトリックスの意図された厚さの少なくとも半分の長さを有する繊維であると有利となり得る。かかる繊維は、繊維マトリックスを十分に支持し得り、且つより耐性の高いマトリックスを提供し得る。例えば、32mmの厚さを有する繊維マトリックスは、繊維長さが16mm以上(例えば長さ20mm以上、長さ20〜25mm等)の繊維を少なくともいくらか含む繊維から生成され得る。35mmの厚さを有する繊維マトリックスは、長さが17.5mm以上(例えば長さ20mm以上、長さ20〜25mm等)の繊維を少なくともいくらか含む繊維から生成されてもよい。
【0116】
所望の厚さが30〜35mmである場合、3mm〜25mmの長さを有する繊維の配合物を使用すると有利であることがわかった。
明らかに、繊維の加工性に留意する必要があり、長さが50mmm以上の繊維は加工が困難であり得ることが理解されよう。従って、厚さが100mm以上のマトリックスを所望した場合、繊維マトリックスを十分に支持し得り且つより耐性の高いマトリックスを提供し得る長い繊維を有する利点を、長い繊維の加工の困難さが上回る可能性がある。
【0117】
特に有利な使用可能な繊維配合物は、相当割合(例えば20重量%以上、30重量%以上、又は40重量%以上)の長さ2mm〜5mm(例えば約3mm)の短い繊維と、20重量%以下(例えば1〜20重量%、5〜15重量%等)の長さ20mm以上等の長い繊維を含む。また、この配合物は5mm超20mm以下の長さを有する中程度の長さの繊維を含んでもよい。
【0118】
1つの実施形態において、以下の繊維が存在し得る:
20〜60重量%(例えば20〜55重量%)の長さ2mm〜5mmの繊維、
20〜70重量%(例えば30〜65重量%)の長さ5mm超20mm以下の繊維、
1〜20重量%(例えば5〜15重量%)の長さ20mm〜50mmの繊維。
【0119】
マトリックスの所望の厚さが大きい場合、長い繊維を繊維配合物に含んでもよいことが実現されよう。
好ましい実施形態おいて、本発明の再生炭素繊維は、繊維の一部又は全てとして使用される。再生炭素繊維は、例えば、3mm〜100mmの長さに細断されてもよい。1つの実施形態において、再生炭素繊維は、例えば、3mm〜25mmの長さに細断してもよい。
【0120】
1つの実施形態において、使用される繊維は、全て再生炭素繊維である。代替的な実施形態において、PAN炭素繊維は、再生炭素繊維と配合される。PAN繊維は、好ましくは、12mm繊維と25mm繊維の配合物である。
【0121】
再生炭素繊維は、英国のMilled Carbon社及びドイツのCFK Valley Recycling社から入手することができる。再生炭素繊維は、バージン炭素繊維のもとの特性の90〜95%を有することが示されている。再生炭素繊維は、炭素繊維の実用化された用途で使用することができる。従って、バージン炭素繊維が高い市場価格を占有しているため、加工費を抑えることができる。さらに、より経済的な炭素−炭素複合材料が生成され、繊維を再生及び再利用できるためPANからの炭素繊維を製造することによる環境への負荷が低減される。
【0122】
使用する繊維は、単一の繊維形態であってもよいし、又は2つ以上の種類の繊維の配合物であってもよい。好ましい実施形態は、再生炭素繊維とケブラー(Kevlar)等のアラミド繊維との混合物である。出発物質は、単一の長さを有する再生炭素繊維を含有してもよいし、又はこの再生炭素繊維は2つ以上の長さを有する配合物であってもよい。特に好ましい炭素繊維配合物は、3mmと12mmの長さの混合物である。再生炭素繊維及びアラミド繊維の配合比は、好ましくは1:4〜4:1、より好ましくは1:2〜2:1である。特に好ましい比率は1:1である。この比率は、所望の終末生成物の性能特性によって決定してもよい。炭素繊維の割合を増やすと終末生成物の剛度及び強度が上昇する一方、アラミドは耐衝撃性及び耐摩擦性特性を向上させるのに最適である。
【0123】
代替的に、他の繊維配合物を使用してもよい。例えば、金属繊維及びガラス繊維を炭素繊維との配合物中に使用してもよいことがわかった。
出発繊維、繊維配合、溶液中に繊維を含む分散液の均一性、及び繊維長さ又は長さの配合の選択を調整することにより、形成される繊維状マトリックスの物理特性を選択することができる。マトリックスは、深さが均一のシートとして生成されてもよいし、又は炭素繊維が凝集した部位を含んでもよい。18mm超の長さを有する繊維等の長い繊維を含むには、高レベルの凝集を回避するため、繊維を分散させる液体を増やす必要があり得ることがわかった。長い繊維は最終マトリックスの強化に貢献すると考えられる。
【0124】
出発物質にはバインダーが含まれる。バインダーは、任意の最適なバインダーから選択されてもよく、黒鉛化及び炭化プロセスと相溶性のあるバインダーが好ましい。バインダーは、好ましくは、一旦硬化したら繊維と接着して繊維をマトリックス形成物内に閉じ込める役割を果たすバインダーか、又は一旦硬化したら繊維のマトリックス内にフィルム状の基板を形成して繊維をマトリックス形成物内に閉じ込めるバインダーのいずれかでなければならない。
【0125】
特に分散液又は乳化剤としてバインダーを添加する場合は、バインダーは出発物質中にゲル又は凝集を形成することが望ましい。バインダーはさらなる成分を添加することなく出発物質中にゲル又は凝集を形成するようにしてもよい。代替的に、さらなる成分を添加して出発物質の特性を改善することが好ましい場合もある。例えば、凝集剤を含むことが望ましい場合がある。好ましい凝集剤は、選択されたバインダーによって決定してもよい。代替的に、出発物質中のバインダーを不安定化してゲル形成を促進する役割を果たす成分を添加することが望ましい場合もある。出発物質中にゲル又は凝集を形成するバインダーを使用する利点は、形成されるマトリックス内にバインダーが保持されバインダーが排出されないことにある。代替的に、バインダーは粉末の形態で添加されてもよく、かかるバインダーはゲル化しないが、繊維マトリックス内に捕捉されるためバインダーは排出されない。好ましいバインダーは、Phenodur VPW 1946及び1942等のエポキシノボラックバインダーから選択してもよい。
【0126】
マトリックス中に低炭化性有機種を取り入れたバインダーを使用することができるが、あまり好ましくない。かかるバインダーは、ウレタン、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、ポリウレタンの共重合体を含む。
【0127】
より好ましいバインダーは、フェノール、ポリビニルイミド及びポリビニルアルコール並びに酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体を含む群から選択されてもよい。ポリアミド、PVC、PVDC、及びポリビニルスルホンは、いくつかの用途で使用してもよい。さらに、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリエステル、ポリヒドロキシエーテル、及びエポキシ系材料等のバインダー材料が最適と考えられる。ブラジルのSao Paulo州Brooklinに所在するBioresin社から商品名Bio Polyolで販売されている、ひまし油ベースのヒドロキシ官能性ポリオールは、最適な炭素材料との粘結剤として知られており、また最適であり得る。また、エポキシノボラックを使用してもよい。
【0128】
好ましいバインダーは、有機バインダー又はシランバインダーである。このようなバインダーは、繊維又は粉末として乾いた形式で供給してもよいし、又は溶液、分散液又は乳化剤として供給してもよい。基板上に形成されるマトリックスの細孔の大きさを上回る繊維の長さ/粉末の大きさを選択して担体液体とともにマトリックスからバインダーが流出しないようにできるため、繊維又は粉末の形態で使用するバインダーは、凝集剤及び不安定化剤の添加を必要としない場合がある。
【0129】
1つの実施形態において、フェノールバインダーが好ましい。これは、フェノールバインダーはマトリックス中に種を組み込まず、高い炭化収率及び低い収縮性を有するためである。Durophen 9340又はDurophen FN等の最適な水と相溶性のあるフェノールバインダーをCytec社から入手することができる。
【0130】
また、最適なバインダーはアクリルラテックスであってもよい。
本発明の別の好ましい形態において、バインダーは、オーストリアのHOS Technik社が供給するHomide 250、又はEnsinger−Hyde社が乾燥粉末として供給するUltem等の高炭化性イミドバインダーである。
【0131】
代替的な実施形態において、ポリビニルピリリドン(polyvinylpyrrilidone)バインダーを使用してもよい。Sunflower Technology Development Co.Ltdが供給するSunvidone(登録商標)K、又はBASF社が製造するLuvitec(登録商標)K17等の材料が特に最適であることがわかった。
【0132】
高炭化性バインダーは、エポキシバインダー及びサイズ剤を燃え尽きるまで燃焼するためのコストを低減できるため、使用することが望ましい。
本発明の第一の使用目的は、CVD又はCVI用に準備を整えた材料を生成することであるため、繊維(特に炭素繊維)にサイズ剤を塗工しないことが好ましい。これに対し、従来は、炭素繊維マトリックスを押圧する場合、マトリックスに圧力を加える間に炭素繊維を保護するための保護被覆を提供するため、炭素繊維にサイズ剤を塗工することが望ましいと理解されてきた。
【0133】
従って、いくつかの実施形態において、水と相溶性のあるサイズ剤を繊維に塗工してもよいが、好ましくは、炭素繊維及び/又はその他の繊維配合物にサイズ剤を塗工しない。
本発明では、バインダーは熱硬化性であることが好ましい。本発明での使用に最適である非熱硬化性バインダーは、酢酸ビニル、二塩化ビニル共重合体であるMowlith VC600であることがわかった。バインダーは、非融蝕性、樹脂との相溶性、並びに水及び/又は塩等の環境要因への耐性の少なくとも1つを有することが望ましい。
【0134】
バインダーは、液体又は固体の形態で液体担体に添加してもよい。バインダーは、液体担体中で安定することが好ましいが、それほど安定しないため、十分な量のバインダーは繊維マトリックス中に捕捉されず、束縛効果は得られない。有利には、バインダーは、液体担体中に重合体のゲル又は凝集を形成する。好ましくは、基板上に形成された繊維マトリックスを通過できないほど重合体鎖が大きくなるように、凝集にサイズ剤を塗工する。バインダーは、適切には、70℃超の温度(70〜450℃等、例えば100〜450℃)で硬化するバインダーであってもよい。好ましくは、バインダーは硬化温度を超える温度までは安定する。
【0135】
好ましくは、最終生成物中のバインダーの割合が乾燥した繊維状マトリックスの最終重量の5%〜60%となるように、バインダーを添加する。例えば、最終生成物中のバインダーの割合は、乾燥した繊維状マトリックスの最終重量の5%〜30%(5%〜25%等)であってもよい。好ましい実施形態おいて、バインダーは、マトリックスの最終重量の10%〜20%を構成してもよい。
【0136】
出発物質中に他の薬剤を含むか、又は工程b)を実施する前に出発物質にかかる薬剤を添加することが望ましい場合もある。各薬剤は、分散剤、界面活性剤、チキソトロープ剤又は粘度調整剤、溶液中のバインダーを不安定化する添加剤、凝集剤、発泡防止剤を含む群から選択してもよい。不安定化剤として酸、塩基及びアミンを使用してもよい。
【0137】
1つの実施形態において、微粒子の形態での添加充填材料は、出発物質中に含まれてもよく、又は工程b)が実施される前に出発物質に添加されてもよい。かかる添加充填材料は、複合材料の機能性又は最終特性を向上させる場合がある。
【0138】
添加充填材料の添加量は、乾燥した繊維状マトリックス中の重量%として、1%〜50%(例えば5〜45%、10〜40%等)であってもよい。添加充填材料は、乾燥した材料として、又は分散液もしくは溶液の形態での湿った状態で供給されてもよい。
【0139】
最適な添加充填材料は、金属、二酸化ケイ素、及び炭素を含む。従来技術の不織布プリフォームはこれらの材料を含むが、これらの材料はプリフォームを製造した後に添加するために別途プロセスを必要とすることが知られている。本方法の利点は、プリフォームに組み込まれた添加剤を用い、別の製造プロセスを必要とすることなくプリフォームを製造することにある。
【0140】
好ましい実施形態おいて、二酸化ケイ素は、乾燥した繊維状マトリックスの重量に対するシリカの乾燥時重量の割合で表すと、10%〜20%の割合で添加される。二酸化ケイ素は、ヒュームドシリカの形態で乾燥した粉末として、又はコロイド状シリカ等の溶液として、上記溶液に添加することができる。かかる材料は、WR Grace社、Grace Division社、及びEKA Chemicals社から入手することができる。コロイド状シリカを使用する場合、液体担体への正確な添加量を決定するため、コロイド状でのシリカの乾燥時重量の要求量を提供するためにどれだけの量のコロイド状シリカが必要であるかを算出する必要がある。
【0141】
本発明の1つの実施形態において、炭素微粒子を添加充填材料として使用することができる。これは、その後の熱分解プロセスの効率を向上させ、繊維状マット内の自由体積空間を減少させることができる。CVI等のその後の炭素析出プロセスにおいて、自由体積空間が少ないため、炭素析出が少ないことが求められよう。好ましい実施形態おいて、直径10ミクロン以下の微粉砕炭素粒子が添加される。
【0142】
添加充填材料の粒径は250ミクロン以下であることが望ましい。好ましくは、添加充填材料の微粒子の大きさは100ミクロン以下、より好ましくは50ミクロン以下であり、添加微粒子の大きさが20ミクロン以下であることが最も好ましい。
【0143】
好ましくは、添加充填材料として使用する炭素粒子の直径は小さく(例えば100ミクロン以下)、好ましくは50ミクロン以下である。直径が小さい粒子を使用すると、マットの繊維圧縮への粒子の影響が限られる。小さい炭素粒子は、圧縮が加えられるとマット内のより大きな細孔に移動する。この移動の結果、任意の気体、樹脂又は液体の注入材料は、あまり蛇行していない注入経路に従わなければならない。
【0144】
さらに、直径10ミクロン以下の小さい粒子を使用すると、繊維状マット構造全体の微粒子分布を容易に均一にすることができる。さらに、小さい粒子を使用すると、基板の外表面が優先的に充填されるのを防止すると考えられる。プリフォームの外表面の細孔の充填を回避することは重要である。なぜなら、プリフォームの本体内に多孔質経路を提供し、効果的な炭化及び注入を可能にするため、外側の細孔が詰まると、費用が嵩む機械加工により細孔の詰まりを除去する必要が出てくる可能性があるからである。
【0145】
本発明の第2局面によると、三次元マトリックスを有する繊維不織布基板を含む繊維プリフォームが提供される。この繊維は、硬化バインダーによりマトリックス形成物内で固着することを特徴とする。
【0146】
この繊維プリフォームは、第1局面の方法で入手可能な繊維マトリックスであってもよい。
プリフォーム中の繊維は、第1局面で記載した通りであってもよい。好ましくは、繊維プリフォームは、炭素繊維を含む。任意にその他の種類の繊維(例えば金属繊維、ガラス繊維、PPS繊維、PEEK繊維、又はケブラー(Kevlar)繊維等のアラミド繊維)も存在してもよい。好ましくは、炭素繊維の直径は5ミクロン以上である。好ましい実施形態おいて、炭素繊維は、PAN、ピッチ炭素繊維又は再生炭素繊維から選択される。代替的な繊維は、PPS又はPEEK、又はケブラー(Kevlar)繊維等のアラミド繊維であってもよい。いくつかの実施形態において、上記繊維は、繊維の配合物であってもよい。配合される繊維は、例えば、炭素繊維とアラミド繊維(ケブラー(Kevlar)繊維等)を含んでもよい。使用する重量比は1:4〜4:1であってもよい。特に好ましい比率は1:1である。繊維(同じ種類の繊維又は異なる種類の繊維の配合物)は、同じ長さでも、又は異なる長さでもよい。
【0147】
プリフォーム中のバインダーは、上述の種類であってもよい。好ましい実施形態おいて、プリフォーム中のバインダーは、フェノールバインダー、イミドバインダー、又はポリビニルピリリドンバインダー等の炭化性バインダー材料を含む。バインダーは、例えば、マトリックスの重量の10重量%〜20重量%の量で存在してもよい。
【0148】
好ましい実施形態おいて、プリフォームは、炭素又は二酸化ケイ素又は金属等の微粒子の形態での添加充填材料である添加剤をさらに含む。添加充填材料は、上記の通りであってもよい。1つの実施形態において、添加剤は、直径10ミクロン以下の微粉砕炭素粒子の形態での炭素である。より好ましくは、充填剤の直径は10ミクロン〜250ミクロンであり、直径20ミクロン〜250ミクロンが特に好ましい。添加充填材料は、例えば、マトリックス重量の5重量%〜30重量%であってもよい。任意の厚さで繊維体積率が増加すると、充填剤含有量も増加し得る。
【0149】
いくつかの実施形態において、プリフォームはモノリシック構造であり、これは単一の形成構造物から得られてもよい。モノリシック構造は多重層を有さない。好ましくは、プリフォームは確率的である。プリフォームは層状三次元構造であってもよい。
【0150】
プリフォームの厚さは1mm〜250mmであってもよい。好ましくは、厚さは、1mm〜50mm、より好ましくは1mm〜40mmであってもよい。
プリフォームの坪量(単位面積当たりの重量)は、600g/m2〜100,000g/m2超の範囲で変化してもよい。
【0151】
好ましくは、プリフォームは20体積%以上(30体積%以上等)の空隙を含有する。好ましくは、プリフォームは20〜80体積%の空隙、より好ましくは30〜70体積%の空隙、例えば30〜60体積%の空隙を含有する。1つの実施形態において、プリフォームは40〜50体積%の空隙を含有する。
【0152】
好ましくは、プリフォームの繊維体積率は10%〜40%以上(例えば20〜70%)、より好ましくは20%〜40%である。1つの実施形態において、プリフォーム中の繊維はPAN炭素繊維であり、繊維体積率は30%以下であってもよい。代替的な実施形態において、繊維はピッチベースの炭素繊維であり、繊維体積率は40%以下であってもよい。代替的な実施形態において、繊維はバージン炭素繊維又は再生炭素繊維であり、繊維体積率は50又は60%以下、又はさらに高くてもよい。
【0153】
プリフォームは、気体を注入可能に構成され且つ耐性の高いマトリックスを提供する繊維マトリックスを有する3次元確率的構造を有することが望ましい。20%未満の繊維体積率はブレーキ用途での使用では抵抗特性が不十分であり、40%超の繊維体積率は構造内の細孔を詰まらせCVIの効率性を損なう傾向があることがわかった。
【0154】
等方性を有するマトリックス材料として、及び取り扱いが簡単な薄板として、プリフォームを使用してもよい。CVD又はCVIプロセスでプリフォームを使用してもよい。
本発明の重坪量プリフォームは、硬質板として生成されてもよい。硬質板は、CVD又はCVIプロセスでの任意の調整前に、容易に切断して成形できる。従って、高額な形成プロセスを排除できる。
【0155】
プリフォームは、ブレーキ用途及び炉のライニング等の融蝕用途で使用してもよい。さらに、プリフォームは、その他の要求の少ない用途で使用してもよい。
繊維マトリックスは、積層プリフォームを調製する場合に使用してもよいことがわかった。1つ以上のマトリックスのシートをアラミド繊維の層と組み合わせてもよい。好ましくは、マトリックスの2つ以上の層をアラミド繊維の1つ以上の層と組み合わせてもよい。1つの実施形態において、マトリックスの1つ以上のシートの厚さは1mmである。厚さは0.5mm〜100mmであってもよい。好ましくは、厚さは0.75mm〜75mmであってもよい。厚さは1mm〜50mmであってもよい。マトリックス中のバインダーはアラミド繊維の接着剤として機能することがわかった。得られる材料は、軽量且つ高耐衝撃性であり、有利な特性を有することがわかった。
【0156】
特に好ましい積層体は、本発明の第1局面に従って形成された繊維マトリックスの積層を用いて作成され、アラミド繊維を含有する層と積層された再生炭素繊維を含有する。好ましい実施形態おいて、この積層体は、3層以上の層を含む。積層体は、アラミド繊維又は炭素繊維を核層として形成してもよい。積層体は、共重合体を使って積層し、これを押圧することによって形成してもよい。特に好ましい共重合体は、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体である。代替的な共重合体は、メタクリル酸、ウレタン、ポリエステル、PVOH、エポキシド、及びスチレンを含む。
【0157】
短い細断炭素繊維は、マトリックスの各層間の充填剤として使用してもよい。代替的に、織物プリプレグを、マトリックス層間で使用してもよい。SiO2等のその他の微粒子を使用してもよい。SiO2は、これまで、湿った簀の目入り基板及び/又は不織布基板に使用されたことはないと考えられる。
【0158】
本発明の第3局面によると、第1局面の方法により得られる繊維マトリックスである繊維プリフォームが提供される。
第2又は第3局面のプリフォームは、融蝕、高性能、摩擦、摩耗及び/又は耐食の各用途で使用されてもよい。
【0159】
本発明は、第4局面において、ブレーキ又はロケットモーター用ハウジングで使用される物品等の高温用途で使用される物品の製造での第2又は第3局面のプリフォームの使用を提供する。
【0160】
本発明は、第5局面において、ブレーキ又はロケットモーター用ハウジングで使用される物品等の、高温用途で使用される物品の生成方法を提供する。本方法は以下の工程を含む。
i)第2又は第3局面のプリフォームを提供する工程
ii)プリフォームにCVD又はCVIプロセスを実行する工程
1つの実施形態において、工程(i)は、第1局面の方法を実行することによって達成してもよい。
【0161】
1つの実施形態において、工程(ii)は、熱分解によって達成されてもよい。工程(ii)は、炭化水素及び気体による化学蒸着、又は熱硬化性樹脂による化学蒸着、又はピッチ材料又は液体シリコーン材料による液体含浸を含んでもよい。
【0162】
また、本発明は、第6局面において、ブレーキ又はロケットモーター用ハウジングで使用される物品等の、高温用途で使用される物品も提供する。本物品は、第2又は第3局面のプリフォームを含む。
【0163】
前記物品は、第5局面の方法によって得られてもよい。
1つの実施形態において、前記物品はブレーキシューのライニングである。
本発明の第1局面の好ましい特徴は、適宜、本発明の第2〜第6局面にも適用されることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】実験室試験システムのスケッチである。
【図2】製造システムを示す図である。
【図3】多重真空マニホールドを用いた代替的製造システムを示す図である。
【図4】基板に無秩序流が流れる代替的製造システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0165】
以下の実施例及び図面を参照しながら、例を挙げながら本発明をさらに詳しく説明する。
図1では、液体担体、バインダー、及び炭素繊維からなるスラリー1を含む出発物質が、容器2から、モールド6の基部に配置されたメッシュ4を含む基板上に注がれ落下する。モールド壁8はメッシュ4を包囲し、モールド6内では出発物質の無秩序流が生じる。液体担体材料は、メッシュ4を介してドレーン10内に排出される。ドレーン10に真空力が加えられる。
【0166】
図2は、剪断ミキサー14を有する保持容器12内で出発物質を調製する製造システムを示す。出発物質は、保持容器から、出口16を介してパイプ18を通り、マニホールド20内に流れる。出発物質は、マニホールド内で分散し、複数のマニホールド出口22からモールド24内に排出される。本実施形態では、マニホールドは8つのマニホールド出口を備え、出発物質は重力でモールド24内に排出される。マニホールドは、モールド24の基部に位置するメッシュ基板26の少なくとも約100cm上方に配置される。出発物質は、8つのマニホールド出口22からモールド24内に流入し、モールド内で出発物質の向流及び直交流が起こり、無秩序流が創出され、三次元確率的マトリックスが形成される。
【0167】
液体担体はモールドから排出され排水路28を流れる。真空30により真空力が加えられる。モールド24からメッシュ基板26が除去され、コンベヤー30によってプレスに運ばれる。プレスでは、プリフォームに圧力をかけ、プリフォームを加熱して硬化させる。
【0168】
図3は、基板から液体担体を吸い出す多重真空マニホールド40を用いた代替的製造システムを示す。本製造システムは、図2を参照して説明した製造システムとほとんど同じである。本製造システムは、分散した繊維を含有する保持容器42を含む。出発物質は、保持容器内に保持される前に加熱してもよいし、又は保持容器内に保持されてから加熱してもよい。出発物質はパイプ44によって保持容器から除去され、ポンプ46が出発物質の除去を調整する。出発物質はモールド48内に流入し、モールド48の基部に位置する基板50上に落下する。ポンプ46は圧力下で出発物質をモールド48内に送り出すようにしてもよいことが理解されよう。吸出しマニホールド40は、基板50の下に位置し、中央ドレーン54に通ずる多数の吸出しポイント52を有する。多数の吸出しポイント52を真空マニホールド40に提供することにより、基板上に堆積したマトリックスを通過する多くの液体担体流が創出され、三次元繊維マトリックス構造が形成される。
【0169】
図4は、自重又はポンプにより保持容器からマニホールド60に供給される製造システムの代替的な実施形態を示す。マニホールド60は、多くの出口62を有する。これらのうち8つの出口62は、モールド66の基部に位置する基板64に出発物質を垂直に送出するように配置される。その他のマニホールド60からの出口は、モールド66の側面68に接続される。
[実施例]
全ての実施例は本発明のプロセスを用いて調製される。本プロセスでは、上記の液体担体、繊維及びバインダーを含む出発物質を基板に通過させて基板上に繊維を堆積させ、三次元繊維マトリックスを形成し、バインダーを硬化する。
[実施例1]
本発明のプロセスを用いて0.0968m2のサンプルを調製した。
以下を用いて出発物質を調製した。
−繊維配合物(25mm炭素繊維50重量%及び50mm炭素繊維50重量%)480g
−水 12kg
−バインダー(アクリル系バインダーシステム) 120g
この出発物質を落下させてメッシュ基板を通過させ、基板上に繊維を堆積させ、その後約550トルの真空力を加えてから、70N/cm2の圧縮力下で170℃まで加熱した。
【0170】
繊維量23%及び坪量4000gm2を有する厚さ10.2mmのシートを生成した。この実施例の生成物中の空隙率は約69%であった。
[実施例2]
実施例1と同じ方法及び材料を用いてさらなるサンプルを調製した。しかし、30重量%のコロイド状シリカを出発物質に添加した。
【0171】
この場合の最終繊維体積率は26%、厚さは8.2mm、坪量は3650gm2であった。この実施例の生成物中の空隙率は約60%であった。
[実施例3〜8]
これら全ての実施例において、終末生成物の10kg、20kg又は30kgのバッチを作成した。
[実施例3]
以下を用いて出発物質を調製した。
−PANバージン繊維配合物(長さ3mm:40重量%、長さ6mm:30重量%、長さ12mm:25重量%、長さ25mm:5重量%)
−ポリビニル(PVOH)バインダー
−水
充填剤は添加しなかった。
【0172】
ポンプ供給を用いて出発物質を加圧し、この供給のレイノルズ数が4000を超えるようにした。この出発物質はメッシュ基板を通過して基板上に繊維を堆積させ、その後約600トルの真空力を加えてから、約120N/cm2の圧縮力下で180℃まで加熱した。
【0173】
生成された繊維マトリックスは以下を含んだ。
−炭素繊維 80重量%
−PVOHバインダー 20重量%
大きさ650mmx650mm及び厚さ16mm〜32mmのプリフォームを調製した。坪量は12200gm2〜13200gm2であった。
【0174】
厚さ32mmの生成物の繊維体積率は23%〜24%であった。この生成物中の空隙率は約70%であった。
厚さ16mmの生成物の繊維体積率は49%であった。この生成物中の空隙率は約37.5%であった。
[実施例4]
以下を用いて出発物質を調製した。
−PANバージン繊維配合物(長さ3mm:40重量%、6mm:30重量%、長さ12mm:25重量%、長さ25mm:5重量%)
−ポリビニル(PVOH)バインダー
−水
充填剤は添加しなかった。
【0175】
ポンプ供給を用いて出発物質を加圧し、この供給のレイノルズ数が4000を超えるようにした。この出発物質はメッシュ基板を通過して基板上に繊維を堆積させ、その後約600トルの真空力を加えてから、約120N/cm2の圧縮力下で180℃まで加熱した。
【0176】
生成された繊維マトリックスは以下を含んだ。
−炭素繊維 85重量%
−PVOHバインダー 15重量%
大きさ500mmx500mm及び厚さ16mm〜32mmのプリフォームを調製した。坪量は12200gm2〜13200gm2であった。
【0177】
厚さ32mmの生成物の繊維体積率は23%〜24%であった。この生成物中の空隙率は71.5%であった。
厚さ16mmの生成物の繊維体積率は49%であった。この生成物中の空隙率は約39%であった。
[実施例5]
以下を用いて出発物質を調製した。
−100%再生炭素(繊維長3〜12mmをランダムに配合)
−ポリビニル(PVOH)バインダー
−水
−最大粒径50μmの微粉砕炭素の充填剤(PVPバインダーとともに液体担体中の分散液として提供)
ポンプ供給を用いて出発物質を加圧し、この供給のレイノルズ数が4000を超えるようにした。この出発物質はメッシュ基板を通過して基板上に繊維を堆積させ、その後約700トルの真空力を加えてから、140N/cm2の圧縮力下で180℃まで加熱した。
【0178】
生成された繊維マトリックスは以下を含んだ。
−炭素繊維 70重量%
−PVOHバインダー 10重量%
−微粉砕炭素 15重量%
−PVPバインダー 5重量%
大きさ500mmx500mm及び厚さ32mmのプリフォームを調製した。繊維体積率は23%〜24%、坪量は12200gm2〜13200gm2であった。この生成物中の空隙率は約69%であった。
[実施例6]
以下を用いて出発物質を調製した。
−PANバージン繊維配合物(長さ3mm:25重量%、長さ6mm:25重量%、長さ12mm:35重量%、長さ25mm:15重量%)
−ポリビニル(PVOH)バインダー
−水
−最大粒径50μmの微粉砕炭素の充填剤(PVPバインダーとともに液体担体中の分散液として提供)
ポンプ供給を用いて出発物質を加圧し、この供給のレイノルズ数が4000を超えるようにした。この出発物質はメッシュ基板を通過して基板上に繊維を堆積させ、その後約700トルの真空力を加えてから、140N/cm2の圧縮力下で180℃まで加熱した。
【0179】
生成された繊維マトリックスは以下を含んだ。
−炭素繊維 70重量%
−PVOHバインダー 10重量%
−微粉砕炭素 15重量%
−PVPバインダー 5重量%
大きさ500mmx500mm及び厚さ32mmのプリフォームを調製した。繊維体積率は23%〜24%、坪量は12200gm2〜13200gm2であった。この生成物中の空隙率は約69%であった。
[実施例7]
大きさ500mmx500mm及び厚さ6mmのプリフォームを調製した。
[変形例A]
以下を用いて出発物質を調製した。
−PANバージン繊維配合物(長さ3mm:40重量%、長さ6mm:30重量%、長さ12mm:25重量%、長さ25mm:5重量%)
−ポリビニル(PVOH)バインダー
−水
ポンプ供給を用いて出発物質を加圧し、この供給のレイノルズ数が4000を超えるようにした。この出発物質はメッシュ基板を通過して基板上に繊維を堆積させ、その後約600トルの真空力を加えてから、260N/cm2の圧縮力下で170℃まで加熱した。
【0180】
繊維体積率は約30%、坪量は2550gm2〜3100gm2であった。この生成物中の空隙率は約65%であった。
[変形例B]
以下を用いて出発物質を調製した。
−PANバージン繊維配合物(3mm繊維:40重量%、6mm繊維:30重量%、12mm繊維:25重量%、25mm繊維:5重量%)及び微粉砕炭素微粒子
−ポリビニル(PVOH)バインダー
−水
−最大粒径50μmの微粉砕炭素の充填剤(PVPバインダーとともに液体担体中の分散液として提供)
ポンプ供給を用いて出発物質を加圧し、この供給のレイノルズ数が4000を超えるようにした。この出発物質はメッシュ基板を通過して基板上に繊維を堆積させ、その後約700トルの真空力を加えてから、240N/cm2の圧縮力下で180℃まで加熱した。
【0181】
繊維体積率は約30%、坪量は2550gm2〜3100gm2であった。この生成物中の空隙率は約60%であった。
生成された繊維マトリックスは以下を含んだ。
−炭素繊維 70重量%
−PVOHバインダー 10重量%
−微粉砕炭素 15重量%
−PVPバインダー 5重量%
[実施例8]
大きさ500mmx500mm及び厚さ35mm又は17.5mmのプリフォームを調製した。
[変形例A]
以下を用いて出発物質を調製した。
−100%再生炭素繊維(繊維長3〜12mmの任意配合物)
−ポリビニル(PVOH)バインダー
−水
充填剤は使用しなかった。
【0182】
ポンプ供給を用いて出発物質を加圧し、この供給のレイノルズ数が4000を超えるようにした。この出発物質はメッシュ基板を通過して基板上に繊維を堆積させ、その後約700トルの真空力を加えてから、260N/cm2の圧縮力下で180℃まで加熱した。
【0183】
生成された繊維マトリックスは以下を含んだ。
−炭素繊維 85重量%
−PVOHバインダー 15重量%
繊維体積率は約30%、坪量は14,900gm2〜17,900gm2であった。厚さ35mmの生成物中の空隙率は約65%であった。
[変形例B]
以下を用いて出発物質を調製した。
−再生炭素繊維配合物(繊維長3〜12mmの任意配合物)
−ポリビニル(PVOH)バインダー
−水
−最大粒径50μmの微粉砕炭素を含む充填剤(PVPバインダーとともに液体担体中の分散液として提供)
ポンプ供給を用いて出発物質を加圧し、この供給のレイノルズ数が4000を超えるようにした。この出発物質はメッシュ基板を通過して基板上に繊維を堆積させ、その後約600トルの真空力を加えてから、240N/cm2の圧縮力下で170℃まで加熱した。
【0184】
生成された繊維マトリックスは以下を含んだ。
−炭素繊維 60重量%
−PVOHバインダー 10重量%
−微粉砕炭素充填剤 25重量%
−PVPバインダー 5重量%。
【0185】
繊維体積率は約30%、坪量は14,900gm2〜17,900gm2であった。厚さ35mmの生成物の空隙率は約57.5%であった。
[実施例9]
大きさ500mmx700mm及び厚さ3mm又は17mmのプリフォームを調製した。
【0186】
以下を用いて出発物質を調製した。
−100%再生炭素繊維(繊維長3〜100mmでランダムに配合)
−酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体バインダー(Mowlith VC600)
−水
充填剤は使用しなかった。
【0187】
この出発物質を高い位置から落下させてメッシュ基板に通過させることにより、繊維を基板上に堆積させ、その後約700トルの真空力を加えてから、260N/cm2の圧縮力下で180℃まで加熱した。
【0188】
生成された繊維マトリックスは以下を含んだ。
−炭素繊維 70重量%
−バインダー 30重量%
作成された第1生成物の坪量は16000gsm、及び厚さは17mmであった。繊維体積率は52%、空隙率は23%であった。
【0189】
作成された第2生成物の坪量は2000gsm、及び厚さが3mmであった。繊維体積率は36%、空隙率は40%であった。
[実施例10]
本発明によって形成された繊維マトリックスを用いて積層材料を生成した。全体の繊維坪量が3000gsmの基板は、3つの層で形成された。この3層の積層の上部及び下部は6mmの細断アラミド繊維(ケブラー(Kevlar))から形成された1000gsmの基板で形成された。3層の積層の核は、繊維長が3mm〜12mmの再生炭素繊維から形成された1000gsmの基板で形成された。この核は、上述の方法に従って形成された(実施例9)。170℃の温度で酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体(Mowlith VC600)を10%添加して、各層を積み重ねて押圧した。ケブラー繊維を含む各層も本発明に従って形成された。この積層の最終繊維体積率は約30%、及び空隙率は約68%であった。
[実施例11]
全体的な繊維坪量が1000gsmの基板を用いて、代替的な種類の積層材料を上部層及び下部層として形成した。この基板は、長さが3mm〜23mmの再生炭素を用いて形成され、且つ上記の方法に従って作成された(実施例9)。6mmの細断アラミド繊維(ケブラー)からなる核層を使用した。この核層の全体的な繊維坪量は1000gsmであった。積層材料は、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体(Mowlith VC600)を10%添加して積み重ねて押圧することにより形成され、170℃で硬化した。この積層材料の全体的な繊維坪量は3000gsm、繊維体積率は約30%、及び空隙率は約68%であった。
[実施例12]
繊維の配合物を用いて繊維マトリックスを形成した。本実施例では、6mmの細断繊維(ケブラー)及び細断長さが3mm〜12mmの再生炭素繊維を、再生炭素繊維対ケブラー繊維比1:1(重量比)で配合した。実施例9の方法を用いた。10%の酢酸ビニル/塩化ビニルバインダー(Mowlith VC600)で繊維マトリックスを押圧及び硬化し、繊維体積率約30%及び空隙率約68%を得た。
【0190】
実施例10〜12に示されたアラミド繊維配合物の変形例は、摩擦及び弾道用途で特に有用である可能性があると考えられる。
[実施例13]
バージン炭素繊維を用いて繊維マトリックスを形成した。出発物質を提供するために水と組み合わせた材料は以下の通りであった。
−3mm繊維:30重量%
−6mm繊維:20重量%
−12mm繊維:15重量%
−25mm繊維:5重量%
−酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体バインダー(Mowlith VC600):30重量%
出発物質は、単一の入口と8つの出口を有するマニホールドを通って、モールド内に位置するメッシュ基板に送られた。出発物質は、単一の入口を介してマニホールド内に落下し、8つのマニホールド出口から排出され、モールド内に入る。マニホールドはメッシュ基板の上方に配置され、スラリーを高い位置からメッシュ基板上に落下させる。
【0191】
出発物質はメッシュ基板を通過し、基板上に繊維を堆積させ、約700トルの真空力を加えてから、260N/cm2の圧縮力下で180℃まで加熱した。
16000gsmのシートを押圧して厚さを13.5mmとし、繊維体積率約66%及び空隙率約30%を得た。
[実施例14]
再生炭素繊維を用いて繊維マトリックスを形成した。出発物質を提供するために水と組み合わせた材料は以下の通りであった。
−細断されたランダムな再生炭素(長さ3mm〜12mm):70重量%
−酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体バインダー(Mowlith VC600):30重量%
出発物質は、単一の入口と8つの出口を有するマニホールドを通って、モールド内に位置するメッシュ基板に送られた。出発物質は、単一の入口を介してマニホールド内に落下し、8つのマニホールド出口から排出され、モールド内に入る。マニホールドはメッシュ基板の上方に配置され、スラリーをメッシュ基板上に落下させる。
【0192】
この出発物質をメッシュ基板に通過させ、約700トルの真空力を加えてから、260N/cm2の圧縮力下で180℃まで加熱した。
16000gsmのシートを押圧して厚さを13.5mmとし、繊維体積率約66%及び空隙率約30%を得た。
[バインダー試験]
多くの異なるバインダーを用いて実験を行い、有用性を比較した。結果をまとめた表を以下に示す。表中、FBWは繊維坪量(g/m2)であり、VFは繊維体積率である。
【0193】
【表1】

【0194】
【表2】

【0195】
【表3】

【0196】
【表4】

【0197】
【表5】

【0198】
【表6】

【0199】
上記の結果から、カルボキシル化アクリルとPercolは、この実験では、高い繊維体積率の最適なマトリックスを形成しなかったことがわかる。しかし、代替的な不安定化剤は、出発物質中に最適なゲルを形成し、高い繊維体積率が求められる用途で達成される結果を改善すると考えられる。硫酸カルシウムを不安定化添加剤として使用することにより、ゲル化が生じて基板上のポリマー獲得が改善され、改善した結果を達成した。
【0200】
Fulatexの形態でのアクリルバインダーは、高い繊維体積率を達成でき、優れた結果を示したことがわかる。
前述のように、硬化温度を超える温度で安定化するバインダーを選択する。Phenodur 1946を用いて200℃まで加熱する実施例では、バインダー物質がこの温度で分解を始めることが試験により示されている。しかし、180℃での硬化で十分であり、バインダー物質は分解されない。
【0201】
選択したバインダーが最終生成物の特性に寄与し、従ってバインダーの選択によって生成物の特性をハンドリング性及び剛度の点で調整することができる。
上記実施例から、とりわけ、以下のいずれかの実施形態を用いた場合の生成物で特に好ましい結果が得られることがわかる。
−出発物質を離れた距離から基板上に落下させ、さらに真空力を基板上の繊維に加える。
−出発物質を複数の出口ポイントから基板に通過させ、真空力を基板上の繊維に加える。
−一定の圧力で出発物質を基板に供給し、さらに真空力を基板上の繊維に加える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)液体担体、繊維及びバインダーを含む出発物質を提供することと、
b)前記出発物質を基板に通過させて、前記基板上に繊維を堆積させることと、
c)三次元繊維マトリックスを形成することと、
d)前記バインダーを硬化すること
を含む、繊維マトリックスの作成方法。
【請求項2】
前記繊維は炭素繊維を含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、5kPa以上の圧力を加えながら加熱することにより前記バインダーを硬化することを含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記繊維状マトリックスが湿分を含有した状態で前記繊維状マトリックスに圧力を加えることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
i)前記基板上の前記繊維に真空力を加えること、又は
ii)前記基板上に出発物質の無秩序流を創出すること、又は
iii)前記基板上に出発物質の無秩序流を創出し、前記基板上の前記繊維に真空力を加えること
によって、前記三次元マトリックスが形成されることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
i)前記出発物質を離れた距離から前記基板上に落下させることと、
ii)複数の出口ポイントから、前記出発物質を前記基板に通過させることと、
iii)圧力で、前記出発物質を前記基板に供給すること
の少なくとも1つによって、前記基板上に前記出発物質の無秩序流が創出されることを特徴とする、請求項5の選択肢ii)又はiii)に記載の方法。
【請求項7】
前記出発物質の無秩序流のレイノルズ数が2000以上である、請求項5の選択肢ii)又はiii)、又は請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記基板上の前記繊維に真空力を加えることが、前記基板の下流に複数の真空吸出しポイントを提供することを含むことを特徴とする、請求項5の選択肢i)又はiii)、又はこれに従属するいずれか1の請求項記載の方法。
【請求項9】
前記繊維の直径が5〜20ミクロンである、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記繊維にサイズ剤を塗工しないことを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程a)は、液体担体、繊維、及びバインダーを含む出発物質を提供し、且つモールド内に基板を提供することを含み、
工程b)は、出発物質の流れを調整して前記モールド内に流入させ、且つ前記モールドにおいて前記基板に前記出発物質を通過させて、前記基板上に繊維を堆積させることを含む
ことを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記出発物質の粘度が10mPa・S未満であることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記液体担体、繊維及びバインダーを含む前記出発物質は、前記基板を通過する前に保持容器内に提供され、その後、前記出発物質は全て前記保持容器から排出され、前記基板を通過することを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記バインダーは水性生成物であり、前記出発物質に使用される前記繊維の比重より低い比重を有することを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
(i)前記繊維は、炭素繊維と、金属繊維、ガラス繊維、PPS繊維、PEEK繊維、及びアラミド繊維の1つ以上とを含むか、又は
(ii)前記繊維は、基本的に炭素繊維からなるか
のいずれかであることを特徴とする、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記繊維は、異なる長さが配合された細断繊維として提供されることを特徴とする、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
三次元マトリックスを有する繊維不織布基板を含む確率的繊維プリフォームであって、前記繊維は硬化バインダーにより前記マトリックス形成物内で固着することを特徴とするプリフォーム。
【請求項18】
前記繊維プリフォームは、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の方法によって得られる繊維マトリックスであることを特徴とする、請求項17記載の繊維プリフォーム。
【請求項19】
前記プリフォームはモノリシック構造であることを特徴とする、請求項17又は18に記載の繊維プリフォーム。
【請求項20】
前記繊維はx、y及びz方向に配置され、前記繊維の5〜30重量%は実質的にz方向に配置される、請求項17乃至19のいずれか1項に記載の繊維プリフォーム。
【請求項21】
前記プリフォームは20体積%以上の空隙を含有する、請求項17乃至20のいずれか1項に記載の繊維プリフォーム。
【請求項22】
前記プリフォームは30体積%〜70体積%の空隙を含有する、請求項21記載の繊維プリフォーム。
【請求項23】
前記プリフォームの繊維体積率は20%以上である、請求項17乃至22のいずれか1項に記載の繊維プリフォーム。
【請求項24】
前記プリフォームの繊維体積率は20%〜40%であることを特徴とする、請求項23記載の繊維プリフォーム。
【請求項25】
前記繊維は炭素繊維を含むことを特徴とする、請求項17乃至24のいずれか1項に記載の繊維プリフォーム。
【請求項26】
請求項17乃至25のいずれか1項に定義された繊維プリフォームの少なくとも1つの層と、アラミド繊維の1つ以上の層とを含む積層繊維プリフォーム。
【請求項27】
請求項17乃至26のいずれか1項に定義されたプリフォームを含む、高温用途で使用される物品。
【請求項28】
ブレーキ又はロケットモーター用ハウジングで使用される物品である、請求項27記載の物品。
【請求項29】
前記物品はブレーキシューのライニングであることを特徴とする、請求項28記載の物品。
【請求項30】
高温用途で使用される物品の製造における請求項17乃至26のいずれか1項に記載のプリフォームの使用。
【請求項31】
(i)請求項17乃至26のいずれか1項に定義されたプリフォームを提供する工程と、
(ii)前記プリフォームにCVD又はCVIプロセスを実行する工程と
を含む、高温用途で使用される物品の生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−533503(P2012−533503A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520102(P2012−520102)
【出願日】平成22年7月19日(2010.7.19)
【国際出願番号】PCT/GB2010/051171
【国際公開番号】WO2011/007184
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(512013721)カーボン ファイバー プリフォームズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】