説明

繊維ロープ用締結具

【課題】ロープが抜けにくい繊維ロープ用締結具の提供。
【解決手段】繊維製のロープ6に圧着固定される繊維ロープ用締結具1であって、ロープ6が挿通されて圧着固定される筒状のスリーブ2と、ロープ6とともにスリーブ2に挿入されるスペーサー5と、を備え、スペーサー5は、スリーブ2とロープ6の間に挿入される外スペーサー3を有し、スリーブ2の内面とこの内面に対向する外スペーサー3の面の一方又は両方は、圧着加工時に対向する面に食い込んで、又は対向する面を食い込ませて当該外スペーサーの滑りを防止する防滑形状を含み、外スペーサー3は、ロープ6と対向する面に、圧着加工時にロープ6に食い込んで、又はロープ6を食い込ませてロープ6の抜けを防止する外スペーサー側抜け防止手段を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維ロープに圧着固定する繊維ロープ用締結具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤロープを連結する際等に、2本のロープを金属製のスリーブに通して圧着固定する締結具が広く用いられている。例えば、ロープ先端にアイを形成する場合には、ロープ先端部を、輪状のフック(アイ)を形成するように折り返し、ワイヤの先端部とこれに束ねるロープ中間部とを共にスリーブに挿通し、このスリーブを圧着固定することによりロープの先端部と中間部を固定してアイを形成している。このワイヤロープ用の締結具では、スリーブの内面にワイヤロープの素線を食い込ませることにより、スリーブからワイヤロープが抜けることを防止している。
【0003】
ところが、このワイヤロープ用の締結具を、繊維ロープに締結する場合に代用すると、ロープの繊維が金属製のスリーブの内面に食い込まないため、ロープに少し大きな荷重を加えると、圧着したスリーブからロープが抜ける虞が有る。
そこで、ロープが抜けないようにするために、凹凸のある金型でスリーブを圧着することで、スリーブに波目状の凹凸を設ける方法が提案されている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭49−11682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の方法では、ワイヤロープ用の締結具のスリーブや金型をそのまま代用することできないため、別途繊維ロープ用のスリーブを形成したり、スリーブを圧着するための金型を別途製作したりする必要が有り、余計な労力がかかるとともに、コストが嵩むという問題が有る。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ワイヤロープ用の締結具のスリーブや圧着用金型をそのまま代用しても、ロープの抜けにくい繊維ロープ用締結具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた発明は、繊維製のロープに圧着固定される繊維ロープ用締結具であって、ロープが挿通されて圧着固定される筒状のスリーブと、前記ロープとともに前記スリーブに挿入されるスペーサーと、を備え、前記スペーサーは、前記スリーブと前記ロープの間に挿入される外スペーサーを有し、前記スリーブの内面とこの内面に対向する前記外スペーサーの面の一方又は両方は、圧着加工時に対向する面に食い込んで、又は対向する面を食い込ませて当該外スペーサーの滑りを防止する防滑形状を含み、前記外スペーサーは、前記ロープと対向する面に、圧着加工時にロープに食い込んで、又はロープを食い込ませてロープの抜けを防止する外スペーサー側抜け防止手段を含むことを特徴とする。
【0007】
スリーブの内面とこの内面に対向する外スペーサーの面の一方又は両方が、対向する面に食い込んで、又は対向する面を食い込ませて外スペーサーの滑りを防止する防滑形状を有し、外スペーサーが、ロープと対向する面に、ロープに食い込んで、又はロープを食い込ませてロープの抜けを防止する外スペーサー側抜け防止手段を有することで、スリーブからロープが抜け落ちることを効果的に抑制できる。
【0008】
本発明の繊維ロープ用締結具は、繊維製のロープに圧着固定される繊維ロープ用締結具であって、ロープが挿通されて圧着固定される筒状のスリーブと、前記ロープとともに前記スリーブに挿入されるスペーサーと、を備え、前記スペーサーは、前記スリーブと前記ロープの間に挿入される外スペーサーを有し、前記スリーブの内面とこの内面に対向する前記外スペーサーの面の一方又は両方は、圧着加工時に対向する面に食い込んで、又は対向する面を食い込ませて当該外スペーサーの滑りを防止する防滑形状を含み、前記外スペーサーのロープに対向する面と前記ロープとを接着剤により接着することによりロープの抜けを防止することを特徴としてもよい。こうすることで、簡便に外スペーサーに対するロープの抜けを防止することができる。
【0009】
前記防滑形状は、対向する面に食い込む凸形状、又は対向する面を食い込ませる凹形状又は孔であることが好ましい。こうすることで、対向する面に食い込んだ部分が、この対向する面側に引っかかって、外スペーサーのスリーブに対する滑りをより効果的に防止することができる。
【0010】
前記外スペーサー側抜け防止手段は、前記外スペーサーのロープと対向する面に設けられたロープに食い込む凸形状又はロープが食い込む凹形状若しくは孔であることが好ましい。こうすることで、ロープがこのロープに対向する外スペーサーの面に引っかかり、より効果的にロープの抜けを防止することができる。
【0011】
前記スリーブは、複数のロープを挿通して圧着固定可能であり、前記スペーサーは、前記複数のロープの間に挿入される内スペーサーをさらに有し、前記内スペーサーは、ロープと対向する面に、ロープに食い込んで、又はロープを食い込ませてロープの抜けを防止する内スペーサー側抜け防止手段を含むことが好ましい。こうすることで、ロープとロープの間で滑りが発生することを抑制できる。
【0012】
前記内スペーサー側抜け防止手段は、前記内スペーサーのロープと対向する面に設けられたロープに食い込む凸形状、又はロープが食い込む凹形状若しくは孔であることが好ましい。こうすることで、ロープとロープの間で滑りが発生することをより効果的に抑制することができる。
【0013】
前記外スペーサー側抜け防止手段及び/又は内スペーサー側抜け防止手段が、断面が湾曲線である波目状の凹凸であることがこのましい。このように、波目状の凹凸の断面が湾曲線状であることで、この波目状の凹凸によりロープが切断されることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の繊維ロープ用締結具によれば、スリーブからロープが抜け落ちることを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一の実施の形態に係る繊維ロープ用締結具でロープに形成したアイの断面図である。
【図2】図1の繊維ロープ用締結具をロープに装着し、圧着加工を行う前の断面図である。
【図3】図1の繊維ロープ用締結具において、(a)スリーブの斜視図、及び(b)その断面図、(c)外スペーサーの斜視図、及び(d)その断面図、(e)内スペーサーの斜視図、及び(f)その断面図である。
【図4】(a)は、図1の繊維ロープ用締結具にロープを挿通してプレス金型にセットした様子を示す縦断面図、(b)はその横断面図である。(c)は、(a)、(b)の状態からプレスを行ったあとの状態を示す模式的横断面図であり、(d)は、プレス後のスリーブ及びその内部の様子を示す模式的横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一の実施の形態に係る繊維ロープ用締結具1であり、この繊維ロープ用締結具1は、主にスリーブ2と一対の外スペーサー3,3及び内スペーサー4を有するスペーサー5とを備えている。
以下の実施の形態では、ロープ先端にアイを形成する場合について説明するが、繊維ロープ用締結具1は、2本の別体のロープを連結するためにも好適に用いることができる。
尚、本発明の繊維ロープ用締結具は、2本のロープを挿通するものに限らず、1本のロープ又は3本以上のロープを挿通して圧着固定するものも含み、他の構成についても以下の実施の形態に限られるものではない。
【0017】
スリーブ2は、管状の部材であり、貫通孔7を備えている。貫通孔7は、アイを形成するロープ6の先端部6aと、これに対応する中間部6bとを両方挿入し、これらを平行に並べて収納するよう設けられている。本実施形態では、図3(a)に示すように、スリーブ2は、外壁及び内壁の断面がともにトラック形をなす金属製の筒状体であり、貫通孔7は、平行に延びる一対のロープ挿通部7a,7aを有しており、ロープ挿通部7a,7aは、連絡部7bで連絡している。連絡部7bは、ロープ挿通部7aより、やや内壁間が狭くなっている。
ただし、スリーブ2及び貫通孔7の断面形状としては、トラック形に限られず、オーバル形、ひょうたん形、円形等の他、曲線で囲まれた図形や直線と曲線で囲まれた図形、各種の多角形等を適宜用いることができる。
【0018】
スリーブ2の材質としては、特に限定されず、鉄、アルミニウム、銅、ステンレス等、公知の金属材料を適宜使用できるが、圧着しやすいアルミニウムが好ましい。また、スリーブ2としては、ワイヤロープ用の締結具に用いられているスリーブが経済性の観点から特に好ましい。
【0019】
図示はしないが、スリーブ2の内面には、圧着固定時に外スペーサー3の外面3bに食い込むか、又は外面3bを食い込ませる防滑形状を設けることもできる。
この、防滑形状としては、圧着加工時に外スペーサー3の外側面3aに食い込んで、又は外側面3aを食い込ませて外スペーサー3の滑りを防止するものであれば、特に限定されず、スペーサー3の外面3bに食い込ませるための凸形状、又は外面3b食い込ませるための凹形状若しくは孔を適宜設けることができる。凸形状としては、特に限定されず、針状、棒状、錘台状、半球状の突起や、断面が各種形状の凸条等、公知の形状を適宜用いることができる。凹形状としては、柱状、錘形状、半球状の窪みを有するものや、各種断面形状を有する凹条等の他、公知の形状を適宜選択することができる。孔の形状としては、断面が円や多角形の他、公知の形状を適宜選択することができる。
【0020】
スペーサー5は、外スペーサー3、及び内スペーサー4を有しており、ロープ6とともにスリーブ2に挿入される。外スペーサー3は、ロープ6とスリーブ2の間に挿入され、内スペーサー4は、ロープ先端部6aと、ロープ中間部6bの間に挿入される。
外スペーサー3と内スペーサー4とは、一体に形成されてもよいし別体に形成されてもよい。
【0021】
外スペーサー3は、図3(c)、(d)に示すように一対の半円筒状の部材からなり、金属製のパイプを、軸芯を含む平面で二つ割りにして形成される。このように、外スペーサー3が、一対の半円筒状部材からなることで、ロープ6を外スペーサー3の内側に完全に収納し、ロープ6とスリーブ2内面の接触を防止してロープ6がスリーブ2に対して滑ることを抑制することができる。
【0022】
外スペーサーの形状としては、スリーブとロープの間に挿入できるものであれば特に限定されず、板材、断面が円弧状の部材、管、棒、線材等を適宜用いることができ、例えば、角筒状のものを分割して用いてもよいし、円筒を半分ずつに分割するのではなく、一方の断面が半円より大きく、他方の断面が半円より小さいものにしてもよく、3つ以上に分割してもよい。また、平板を、プレスで半円筒状に加工してもよい。
【0023】
また、外スペーサー3は、内径がスリーブ2に挿通するロープ6の外径より大きく設けられるとともに外径がスリーブ2のロープ挿通部7aの内径より小さく設けられており、長さがスリーブ2の長さよりやや小さく設けられている。このような寸法とすることで、外スペーサー3をスリーブ2とロープ6の間に挿入し易くできるとともに、圧着加工時に外スペーサー3がスリーブ2からはみ出ることを抑制できる。
【0024】
外スペーサー3は、金属製のパイプの外側面3bに、防滑形状3cとして、軸芯を含む断面がギザギザ線からなる波状の凹凸が旋盤加工され、内側面3aに、外スペーサー側抜け防止手段3dとして、軸芯を含む断面が湾曲線からなる波状の凹凸が旋盤加工されたのち半割り加工がなされている。これらの波目模様(防滑手段3c及び外スペーサー側抜け防止手段3d)は、パイプを半割りする前の状態において、雄ねじ又は雌ねじの様にらせん状に設けられたものであってもよいし、1周ごとに独立した輪状に設けられていてもよい。
【0025】
このように、外スペーサー3の外側面3bの防滑形状3cを波状の凹凸に形成することで、例えば針状の凸部を形成する場合等に比べて、凹凸を潰れ難くすることができる。また、防滑形状3cの波状の凹凸の断面をギザギザ線状とすることで、スリーブ2の内面に食い込みやすくすることができる。さらに、防滑形状3cの波状の凹凸を外側面の周方向に略平行にすることで、外スペーサー3とスリーブ2の間において、ロープ6に力が加わる方向の滑りを効果的に抑制することができる。
【0026】
また、外スペーサー3の内側面3aに抜け防止手段3dとして波状の凹凸を設けることで、この凹凸をロープに食い込ませてロープが内側面3aに対して滑ることを抑制できる。外スペーサー側抜け防止手段3dの波状の凹凸を内側面3aの周方向と略平行に設けることで、内側面3aとロープ6の間において、ロープ6に力が加わる方向の滑りを効果的に抑制することができる。また、外スペーサー側抜け防止手段3dの波状の凹凸の断面を外側面3bに設けたようなギザギザ状とはせずに、湾曲線状とすることで、ロープ6の素線がこの凹凸により切断されることを抑制することができる。
【0027】
防滑形状としては、圧着加工時にスリーブの内面に食い込んで、又はスリーブの内面を食い込ませて外スペーサーの滑りを防止するものであれば、特に限定されず、スリーブの内面に食い込ませるための凸形状、又はスリーブの内面を食い込ませるための凹形状若しくは孔を適宜設けることができる。凸形状としては、特に限定されず、針状や棒状、錘台状、半球状の突起、断面が各種形状の凸条等、公知の形状を適宜用いることができる。凹形状としては、特に限定されず、柱状、錘形状、半球状の窪みを有するものや、各種断面形状を有する凹条等の他、公知の形状を適宜選択することができる。孔の形状としては、断面が円や多角形の他、公知の形状を適宜選択することができる。
【0028】
外スペーサー側抜け防止手段としては、ロープに食い込む形状又はロープが食い込むような形状であれば特に限定されず、例えば、ロープに食い込む形状として各種の凸形状を、ロープが食い込むような形状として各種の凹形状若しくは孔を設けることができる。また、ロープと外スペーサーとを接着剤で接着することにより外スペーサーからロープが抜け落ちることを防止しすることもできる。
【0029】
ここで、外スペーサーについて他の実施形態を挙げると、外スペーサーとして、コイル状の線材を用いることもできる。こうすることで、圧着固定時に線材と線材の間の隙間にスリーブの内面を食い込ませるとともに、線材をスリーブの内面に食い込ませることができる。また、コイル状の線材の内側に挿入されたロープを線材と線材の間に食い込ませるとともに、線材をロープに食い込ませることができる。コイル状に巻かれた線材にロープを挿通してもよいし、ロープに線材をコイル状に巻きつけてもよい。コイル状の線材は、周回が隣り合う線材を密着させて巻かれたものでもよいし、離間させて巻かれたものでもよい。コイル状の線材は、スリーブ内に収まる長さが好ましい。
【0030】
外スペーサー3に用いる材料としては特に限定されず、アルミニウム、銅、ステンレス等の他、公知の金属材料、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等の各種の公知の樹脂、ガラス繊維強化樹脂や炭素繊維強化樹脂等の各種の公知の複合材料を適宜用いることができる。
【0031】
外スペーサー3及びスリーブ2に用いられる材料のうち、防滑手段が設けられる外スペーサー3の材料が、スリーブ2の材料より硬い材料であることが好ましい。こうすることで、より効果的に、外スペーサー3の防滑手段3cをスリーブ2の内面に食い込ませることができる。
本実施形態では、スリーブ2は、アルミニウム製であり、外スペーサー3は、鉄製である。
【0032】
内スペーサー4は、図3(e)及び(f)に示すように、断面が湾曲線からなる波状の板材であり、金属製の板をプレス加工して、外スペーサー3とは別体として形成されている。このように、内スペーサー4を波状の板材とすることで、板材表面に内スペーサー側抜け防止手段4aとして形成される波状の凹凸をロープ6に食い込ませてロープ6が内スペーサー4に対して滑ることを抑制できる。内スペーサー側抜け防止手段4aの波状の凹凸を圧着固定時におけるロープの長手方向と略垂直に設けることで、内スペーサー4とロープ6の間において、ロープ6に力が加わる方向の滑りを効果的に抑制することができる。また、内スペーサー側抜け防止手段4aの波状の凹凸の断面を湾曲線状とすることで、ロープ6の素線がこの凹凸により切断されることを抑制することができる。
内スペーサー4の幅は、貫通孔7の連絡部7bの高さよりやや小さく設けられている。
【0033】
内スペーサーは、スリーブに挿通された複数のロープの間に挿入可能であれば、その形状は特に限定されず、板状材、管状、棒状のいずれ形状を用いることができる他、公知の形状を適宜用いることができる。
【0034】
また、内スペーサー4に設けられるロープ6の内スペーサー側抜け防止手段4aとしては、ロープに食い込む形状又はロープを食い込ませることができる形状であれば特に限定されず、ロープに食い込ませるための形状として各種の凸形状を、ロープを食い込ませるため形状として各種の凹形状若しくは孔等を適宜設けることができる。この凸形状、凹形状又は孔としては、外スペーサー3の内面に設けられる凸形状、凹形状又は孔の形状を好適に用いることができる。
【0035】
ここで、スペーサーについて他の実施形態を挙げると、複数のロープをスリーブに通して連結する場合に、各ロープをコイル状の線材に挿通したり、あるいは各ロープに線材をコイル状に巻きつけたりして、これらの線材をスペーサーとすることもできる。こうすることで、線材と線材の隙間にスリーブの内面を食い込ませるとともに、線材をスリーブの内面に食い込ませることができる。また、コイル状の線材の内側に挿入されたロープを線材と線材の間に食い込ませるとともに、線材をロープに食い込ませることができる。この場合、線材のロープとスリーブの間に挟まれる部分が外スペーサーに該当し、ロープとロープの間に挟まれる部分が内スペーサーに該当する。
【0036】
内スペーサー4に用いる材料としては特に限定されず、鉄、アルミニウム、銅、ステンレス等、公知の金属材料を適宜用いることができる他、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等の各種の公知の樹脂、ガラス繊維強化樹脂や炭素繊維強化樹脂等の各種の公知の複合材料を用いることもできる。内スペーサー4に用いる材料は、外スペーサー3に用いられる材料と同等以上の強度を有するものが好ましい。内スペーサー3に外スペーサー3に用いられる材料と同等以上の強度を有するものを用いることで、内スペーサー4が外スペーサー3の強度に負けて変形してしまうことを抑制することができる。
本実施形態では、外スペーサー3及び内スペーサー4ともに鉄製としている。
【0037】
次に、本実施形態の繊維ロープ用締結具1をロープ6に締結する手順について、ロープ6の先端にアイを形成する場合を例に挙げて説明する。ここで、繊維ロープ用締結具1を用い得るロープ6としては、表面に用いられる素線が非金属製のロープであれば特に限定されず、麻や木綿等の天然繊維や、ナイロンやポリエチレン等の化学繊維等の他、公知の非金属繊維を素線とする繊維ロープに好適に用いることができる。
【0038】
図2に示すように、まずロープ6の先端部6aを、スリーブ2の一端側から一方のロープ挿通孔7aに挿通する。そして、ロープ6の先端から所定の長さの部分を、輪状のフックを形成するように折り返して、ロープ先端部6aをスリーブ2の他端側から他方のロープ挿通孔7aに挿通する。次に、一対の外スペーサー3,3をスリーブ2とロープの先端部6aの間及びスリーブ2とロープの中間部6bの間に挿入し、ロープ先端部6aとロープ中間部6bの間に内スペーサー4を挿入する。
【0039】
次に、図4(a)及び(b)に示すように、ロープ6の先端部6a及びロープ6の中間部6bがプレス方向(図4(a)では上下方向)に並ぶように、即ちスリーブ2の断面の長尺方向を圧縮方向にして、ロープ6が挿通された繊維ロープ用締結具1を上下の金型A,Aの間にセットする。
【0040】
図4(c)に示すように、スリーブ2は、断面が略真円状に圧縮される。スリーブ2の肉の一部は、上下の金型A,Aの間に形成された一対の隙間に逃がされて、スリーブ2の外周に長手方向の凸条を形成する。
【0041】
詳細は図示しないが、スリーブ2の内面には、外スペーサー3の外側面3bに設けられた防滑形状3c(ギザギザ状の波目模様)が食い込んでおり、外スペーサー3がスリーブ2から抜けることを効果的に抑制している。ロープ6には、外スペーサー側抜け防止手段3d及び内スペーサー側抜け防止手段4aの波状の凹凸が食い込んでおり、ロープ6が両スペーサー3,4の間から抜けることを効果的に抑制している。
【0042】
ここで、外スペーサー3及び内スペーサー4は、外スペーサー側抜け防止手段3d及び内スペーサー側抜け防止手段4aの波状の凹凸が互いの山と谷とが向き合うように圧着固定することもできるし、山と山が向き合うように圧着固定することもできる。山と谷が向き合うようにすることで、ロープ6が、外スペーサー3及び内スペーサー4の波状の凹凸の間で波線状に湾曲し、ロープ6が長手方向に荷重を受けた場合に、ロープ6が伸びにくく径が痩せにくいため、ロープ6からさらに抜け落ちにくくなる。山と山が向き合うようにすると、山が向き合う多数の個所でロープを挟み込むことができる。外スペーサ側抜け防止手段3aと内スペーサ側抜け防止手段4aの波のピッチを異ならせることもできる。
【0043】
本発明の、繊維ロープ用締結具は、上記の実施形態に限られず、例えば、内スペーサーは用いずに、ロープ同士を接着剤や樹脂で固定してもよい。また、内スペーサーとして、波線状に湾曲加工した線材を用いてもよい。スリーブより外スペーサーを柔らかい材料とし、スリーブの内面に凹凸を設け、この凹凸を外スペーサーに食い込ませるようにしてもよい。
さらに、上記の特許文献1のように、凹凸のある金型でスリーブに凹凸を設けるようプレスしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上説明したように、本発明の繊維ロープ用締結具は、スリーブから繊維ロープが抜けてしまうことを効果的に抑制できるため、各種の繊維製ロープに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 繊維ロープ用締結具
2 スリーブ
3 外スペーサー
3c 防滑手段
3d 外スペーサー側抜け防止手段
4 内スペーサー
4a 内スペーサー側抜け防止手段
5 スペーサー
6 繊維ロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維製のロープに圧着固定される繊維ロープ用締結具であって、
ロープが挿通されて圧着固定される筒状のスリーブと、
前記ロープとともに前記スリーブに挿入されるスペーサーと、
を備え、
前記スペーサーは、前記スリーブと前記ロープの間に挿入される外スペーサーを有し、
前記スリーブの内面とこの内面に対向する前記外スペーサーの面の一方又は両方は、圧着加工時に対向する面に食い込んで、又は対向する面を食い込ませて当該外スペーサーの滑りを防止する防滑形状を含み、
前記外スペーサーは、前記ロープと対向する面に、圧着加工時にロープに食い込んで、又はロープを食い込ませてロープの抜けを防止する外スペーサー側抜け防止手段を含むことを特徴とする繊維ロープ用締結具。
【請求項2】
繊維製のロープに圧着固定される繊維ロープ用締結具であって、
ロープが挿通されて圧着固定される筒状のスリーブと、
前記ロープとともに前記スリーブに挿入されるスペーサーと、
を備え、
前記スペーサーは、前記スリーブと前記ロープの間に挿入される外スペーサーを有し、
前記スリーブの内面とこの内面に対向する前記外スペーサーの面の一方又は両方は、圧着加工時に対向する面に食い込んで、又は対向する面を食い込ませて当該外スペーサーの滑りを防止する防滑形状を含み、
前記外スペーサーのロープに対向する面と前記ロープとを接着剤により接着することによりロープの抜けを防止することを特徴とする繊維ロープ用締結具。
【請求項3】
前記防滑形状は、対向する面に食い込む凸形状、又は対向する面を食い込ませる凹形状又は孔である請求項1又は請求項2に記載の繊維ロープ用締結具。
【請求項4】
前記外スペーサー側抜け防止手段は、前記外スペーサーのロープと対向する面に設けられたロープに食い込む凸形状又はロープが食い込む凹形状若しくは孔である請求項1に記載の繊維ロープ用締結具。
【請求項5】
前記スリーブは、複数のロープを挿通して圧着固定可能であり、
前記スペーサーは、前記複数のロープの間に挿入される内スペーサーをさらに有し、
前記内スペーサーは、ロープと対向する面に、ロープに食い込んで、又はロープを食い込ませてロープの抜けを防止する内スペーサー側抜け防止手段を含む請求項1、請求項3又は請求項4に記載の繊維ロープ用締結具。
【請求項6】
前記内スペーサー側抜け防止手段は、前記内スペーサーのロープと対向する面に設けられたロープに食い込む凸形状、又はロープが食い込む凹形状若しくは孔である請求項5に記載の繊維ロープ用締結具。
【請求項7】
前記外スペーサー側抜け防止手段及び/又は内スペーサー側抜け防止手段が、断面が湾曲線である波目状の凹凸である請求項5項に記載の繊維ロープ用締結具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−87380(P2013−87380A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228042(P2011−228042)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【特許番号】特許第5039849号(P5039849)
【特許公報発行日】平成24年10月3日(2012.10.3)
【出願人】(595060339)泉陽株式会社 (1)
【復代理人】
【識別番号】100171941
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 忠行
【Fターム(参考)】