説明

繊維仕上げ用エマルジョン組成物及びその製造方法

【課題】本発明は、繊維又は繊維製品に、糖アルコール又はその誘導体により良好な涼感性を付与し得るばかりではなく、該涼感性についての著しく高い洗濯耐久性をも付与し得る、新規な繊維仕上げ用エマルジョン組成物、及び、該繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】(A)糖アルコール又はその誘導体、(B)分子内にシロキサン結合を有する物質、及び、(C)界面活性剤を含む、繊維仕上げ用エマルジョン組成物であって、上記組成物を構成するエマルジョン粒子が多層構造を有し、かつ、該エマルジョン粒子の95%以上の粒子の直径が200nm以下であり、かつ、上記組成物の波長400〜800nmにおける可視光線透過率が70%以上であることを特徴とする繊維仕上げ用エマルジョン組成物、並びに、該繊維仕上げ用エマルジョン組成物を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維仕上げ用エマルジョン組成物及びその製造方法に関し、更に詳しくは、衣料品等の着用時に着用者に対して良好な涼感効果を付与し得る、糖アルコール又はその誘導体等を含む繊維仕上げ用エマルジョン組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料品等の着用時に、着用者に対して、良好な涼感効果を付与し得る繊維処理加工剤、例えば、涼感加工剤、冷感加工剤として、従来、種々のものが知られている。例えば、吸水性ポリマーを内包した多孔質無機粉末粒子を繊維に把持させてなる繊維又は繊維製品が知られている(特許文献1)。ここで、多孔質無機粉末粒子としては、結晶性多孔質アルミノケイ酸塩、多孔質シリカ及び多孔質アルミナが挙げられている。また、吸水性ポリマーとしては、水不溶性粒状吸水性ポリマー、例えば、(メタ)アクリル酸もしくはその塩、(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミド、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸もしくはその塩、スチレンスルホン酸もしくはその塩、2−ヒドロキシ(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、ビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリル酸エステル等の単独重合体又はこれら単量体を2種以上用いた共重合体の架橋物;酢酸ビニル−アクリル酸メチル共重合体鹸化物、酢酸ビニル−マレイン酸共重合体鹸化物、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体鹸化物、カルボキシメチルセルロース等の架橋物;スチレン−無水マレイン酸ナトリウム共重合体鹸化物、澱粉−アクリル酸グラフト重合体、多糖類−アクリル酸グラフト重合体、澱粉−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物等が挙げられている。該発明は、吸水性ポリマーを多孔質無機粉末粒子に内包させ、この多孔質無機粉末粒子を繊維に固着させた際に、吸水性ポリマーが水分を吸収してその体積が膨張しても、多孔質無機粉末粒子の体積変化が起こらず、その結果、繊維を洗濯した際に、繊維に固着した多孔質無機粉末粒子が繊維から剥離しないことを見出し、繊維に洗濯耐久性に優れた接触冷感作用を賦与し得たものである。
【0003】
芯成分がポリエーテルエステル化合物を所定量含むポリエステル、鞘成分が所定のコロイダルシリカを所定量含むポリエステルであり、鞘成分比率が20重量%以上50重量%以下である芯鞘型ポリエステル複合繊維が知られている(特許文献2)。該発明の芯鞘型ポリエステル複合繊維は、芯成分にポリエーテルエステル化合物を所定量含有させることにより、吸湿性、接触冷感性および制電性を付与するものである。ここで、ポリエーテルエステル化合物とは同一分子鎖内にエーテル結合とエステル結合を有する共重合体であり、ジカルボン酸成分とジオール成分からなるポリエステル成分とポリアルキレングリコールからなるポリエーテル成分の共重合体が挙げられている。
【0004】
所定の乾式法シリカ粒子を所定量含有するポリエステルからなる中空太細繊維であって、中空率が25%以上の中空部、繊維表面に微細凹凸構造及び繊維表面の少なくとも一部に繊維軸方向の径が0.5〜10μm、幅方向の径が0.5〜5μmの繊維表面から中空部へ貫通する細孔を有するポリエステル中空太細繊維が知られている(特許文献3)。該発明においては、繊維表面に水が存在すると、水は、繊維表面から貫通孔を通って中空部へ移動し、中空部の毛細管現象で拡散され、また、繊維表面からの急速な水の吸収と共に繊維表面の微細凹凸構造とによって、優れた接触涼感とドライ感のある風合いを与え得るものである。
【0005】
上記の発明のほか、繊維製品を製造する際に、編み方及び織り方を工夫する方法、素材に強撚糸及び麻糸を使用する方法等が試みられている。しかし、上記の発明を含めいずれも着用者に対する涼感効果は十分であるとは言えなかった。
【0006】
良好な涼感効果を付与し得る物質として、キシリトール等の糖アルコールを使用することが知られている。例えば、清涼感を有する糖アルコールを付与した糸と、カバード糸とから編成された靴下が知られている(特許文献4)。ここで、糖アルコールとして、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール、マルチトール、ラクチトール等が挙げられている。該糖アルコール、例えば、キシリトールを糸に施与する方法としては、公知の加工法が採用されている。即ち、浴槽内に市販のキシリトール加工剤を所定量投入し、所定時間浸漬する。その後、吸水性のある柔軟剤を添加し、所定時間及び所定温度で反応させることにより、キシリトールを付与した糸を得るものである。しかし、得られた製品は洗濯耐久性が低く、洗濯後に良好な清涼感を保持することができなかった。
【0007】
また、糖アルコールを必須成分として含有する繊維仕上げ剤組成物が知られている(特許文献5)。該組成物は、糖アルコールに加えて、炭化水素、高級アルコール、脂肪酸ポリアルキレンポリアマイド若しくはその第4級化物、ロウ類、トリグリセライド、エステル油、シリコーンオイル、フッ素樹脂及びフッ素オイルのうちの1種以上、並びに、界面活性剤、キレート剤、無機塩、アルカリ剤、有機酸、無機酸等を含むものである。とりわけ、実施例には、糖アルコールとして、キシリトール、ソルビトール、マンニトールを使用し、スクワラン、オリーブ油、ジメチルシリコーン、ステアリルアルコールに加えて、界面活性剤として、トリメチルステアリルアンモニウムクロライド及びジメチルステアリルアンモニウムクロライドの第4級アンモニウム塩を使用した繊維仕上げ剤組成物が開示されている。実施例において、該繊維仕上げ剤組成物は、容量1リットルのガラス製真空乳化機に、上記各物質を全量が0.5kgになるように仕込み、50mmHgの減圧下、50℃、8,000回転/分で30分間撹拌して製造されている。該発明の繊維仕上げ剤組成物においても、やはり洗濯耐久性が低く、洗濯後に良好な清涼感を保持することができなかった。また、第4級アンモニウム塩を含む繊維仕上げ剤組成物を使用すると、繊維及び繊維製品に黄変が生ずるという欠点もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−235278号公報
【特許文献2】特開2005−273085号公報
【特許文献3】特開平8−291463号公報
【特許文献4】特開2006−316386号公報
【特許文献5】特開2001−98460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、繊維又は繊維製品に、糖アルコール又はその誘導体による良好な涼感性を付与し得るばかりではなく、該涼感性についての著しく高い洗濯耐久性をも付与し得る、新規な繊維仕上げ用エマルジョン組成物、及び、該繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、例えば、上記の特許文献5に記載されたような、キシリトール等の糖アルコールを必須成分とする繊維仕上げ剤組成物による繊維及び繊維製品への涼感効果の付与に関し、該涼感効果の低い洗濯耐久性を、どのようにすれば向上することができるかについて種々の検討を試みた。そして、まず、従来の糖アルコールを必須成分とする繊維仕上げ剤組成物の洗濯耐久性が、何故、低いのかについて検討した。その結果、特許文献5に記載されたような繊維仕上げ剤組成物を構成するエマルジョンは、通常の水中油滴型(O/W型)エマルジョンであることから、エマルジョン粒子内部は疎水性で外部に向かうにつれて親水性の強い物質、即ち、糖アルコールで構成されており、従って、これを繊維及び繊維製品に施与すると、より親水性の高い物質である糖アルコールが表面に露出してしまい、それ故、洗濯時に洗い流されて耐久性に劣るのではないかとの知見を得た。一方、油中水滴型(W/O型)エマルジョンは、糖アルコール等の水溶性物質をエマルジョン内に内包し易い構造だが、得られるエマルジョンの水に対する溶解性が一般的に悪く、繊維加工剤として適していない。また、エマルジョン構造が脆弱なため、繊維に付着しても糖アルコールが洗濯時に洗い流され、更には、エマルジョン粒子系が大きくなるため繊維内部に浸透出来ず洗濯時に洗い流され易い。本発明者らは、これら知見に基づいて、更に検討を進め、エマルジョン形態を、一度油中水滴型(W/O型)にした後に水中油滴型(O/W型)にすることで、親水性の糖アルコールがよりエマルジョン内部に存在した水中油滴型(O/W型)エマルジョンが得られ、そして、従って、該O/W型エマルジョンを繊維及び繊維製品に施与すると、親水性の糖アルコール上を、組成物中に含まれる疎水性の物質、例えば、シリコーンオイル等が覆い、洗濯耐久性を向上し得るのではないかと考えた。そして、更に検討を進めたところ、下記の所定の方法を採用すれば、そのようなO/W型の繊維仕上げ用エマルジョン組成物を製造し得ることを見出した。また、そればかりではなく、驚くべきことに、該方法を使用して製造した繊維仕上げ用エマルジョン組成物は、該組成物中に含まれるエマルジョン粒子が、従来の繊維仕上げ用エマルジョン組成物中のエマルジョン粒子とは全く異なり、複層構造を有する。そして、それにより、より一層優れた洗濯耐久性を有するのである。また、該方法を使用して製造した繊維仕上げ用エマルジョン組成物は、その光線透過率が著しく高い。即ち、該組成物を構成するエマルジョン粒子は、その粒子直径が著しく小さく、そして、従って、該組成物を繊維及び繊維製品に施与すると、該組成物が繊維の内部まで容易に入り込み、例えば、木綿等では繊維のフィブリル構造にまで容易に入り込み、その結果、著しく良好な洗濯耐久性を付与し得ることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0011】
即ち、本発明は、
(1)(A)糖アルコール又はその誘導体、(B)分子内にシロキサン結合を有する物質、及び、(C)界面活性剤を含む、繊維仕上げ用エマルジョン組成物であって、上記組成物を構成するエマルジョン粒子が多層構造を有し、かつ、該エマルジョン粒子の95%以上の粒子の直径が200nm以下であり、かつ、上記組成物の波長400〜800nmにおける可視光線透過率が70%以上であることを特徴とする繊維仕上げ用エマルジョン組成物である。
【0012】
好ましい態様として、
(2)エマルジョン粒子の95%以上の粒子の直径が150nm以下である、上記(1)記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物、
(3)エマルジョン粒子の95%以上の粒子の直径が120nm以下である、上記(1)記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物、
(4)エマルジョン粒子の95%以上の粒子の直径が100nm以下である、上記(1)記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物、
(5)エマルジョン粒子のメジアン径(d50)が150nm以下である、上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物、
(6)エマルジョン粒子のメジアン径(d50)が130nm以下である、上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物、
(7)エマルジョン粒子のメジアン径(d50)が100nm以下である、上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物、
(8)エマルジョン粒子のメジアン径(d50)が90nm以下である、上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物、
(9)波長400〜800nmの可視光線による光線透過率が80%以上である、上記(1)〜(8)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物、
(10)波長400〜800nmの可視光線による光線透過率が90%以上である、上記(1)〜(8)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物、
(11)上記組成物が、水中油滴型(O/W型)エマルジョンである、上記(1)〜(10)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物、
(12)上記組成物が、油中水滴型(W/O型)エマルジョンを転相させて得られた水中油滴型(O/W型)エマルジョンである、上記(1)〜(10)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物、
(13)(C)界面活性剤が、(C1)非イオン性界面活性剤、及び、(C2)アニオン性界面活性剤より成る群から選ばれる一つ以上である、上記(1)〜(12)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物、
(14)(C1)非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンセカンダリーアルコールエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル及びポリオキシエチレン硬化ひまし油より成る群から選ばれる一以上である、上記(13)記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物、
(15)(C1)非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンセカンダリーアルコールエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル及びポリオキシエチレンイソデシルエーテルより成る群から選ばれる一以上である、上記(13)記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物、
(16)(C2)アニオン性界面活性剤が、アルキルサルフェート・ナトリウム塩、アルキルエーテルサルフェート・ナトリウム塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム及びジアルキルスルホコハク酸ナトリウムより成る群から選ばれる一以上である、上記(13)〜(15)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物、
(17)(C2)アニオン性界面活性剤が、アルキルサルフェート・ナトリウム塩である、上記(13)〜(15)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物、
(18)(B)分子内にシロキサン結合を有する物質が、メチルハイドロジェンポリシロキサン、シリコーンオイル、及び、シリコーン樹脂より成る群から選ばれる一つ以上である、上記(1)〜(17)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物、
(19)(B)分子内にシロキサン結合を有する物質が、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル及びメチルハイドロジェンポリシロキサンより成る群から選ばれる一つ以上である、上記(1)〜(17)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物、
(20)(A)糖アルコール又はその誘導体が、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、トレハロース及びラクトースより成る群から選ばれる一つ以上である、上記(1)〜(19)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物、
(21)(A)糖アルコール又はその誘導体が、エリスリトール及び/又はキシリトールである、上記(1)〜(19)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物、
(22)(D)架橋剤を更に含む、上記(1)〜(21)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物、
(23)(D)架橋剤が、ブロックイソシアネート系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド及びその誘導体、オキサゾリン系化合物、グリオキサール系化合物並びにメラミン系化合物より成る群から選ばれる一つ以上である、上記(22)記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物、
(24)(E)バインダーを更に含む、上記(1)〜(23)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物、
(25)(E)バインダーが、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン・アクリル樹脂、シリコーン・アクリル樹脂、シリコーン・ウレタン樹脂、エポキシ樹脂及び酢酸ビニル樹脂より成る群から選ばれる一つ以上である、上記(24)記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物、
(26)(E)バインダーがウレタン樹脂である、上記(24)記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物
を挙げることができる。
【0013】
本発明は、また、
(27)(I)(A)糖アルコール又はその誘導体と(C)界面活性剤とを混合し、次いで、得られた混合物に、成分(A)及び(C)の合計質量の0.15〜1.10倍の水を加える工程、
(II)工程(I)で得られた混合物に、該混合物を撹拌しながら、工程(I)で添加した成分(A)の質量の0.50〜6.00倍の(B)分子内にシロキサン結合を有する物質を加える工程、及び、
(III)工程(II)で得られた混合物に、該混合物を撹拌しながら、更に、水を加える工程
を含む、繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法である。
【0014】
好ましい態様として、
(28)工程(II)における(B)分子内にシロキサン結合を有する物質の添加量が、工程(I)で添加した成分(A)の質量の0.50〜1.50倍である、上記(27)記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法、
(29)工程(II)における(B)分子内にシロキサン結合を有する物質の添加量が、工程(I)で添加した成分(A)の質量の0.65〜1.10倍である、上記(27)記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法、
(30)工程(I)における水の添加量が、成分(A)及び(C)の合計質量の0.50〜1.00倍である、上記(27)〜(29)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法、
(31)得られた繊維仕上げ用エマルジョン組成物を構成するエマルジョン粒子の95%以上の粒子の直径が200nm以下である、上記(27)〜(30)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法、
(32)得られた繊維仕上げ用エマルジョン組成物を構成するエマルジョン粒子の95%以上の粒子の直径が150nm以下である、上記(27)〜(30)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法、
(33)得られた繊維仕上げ用エマルジョン組成物を構成するエマルジョン粒子の95%以上の粒子の直径が120nm以下である、上記(27)〜(30)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法、
(34)得られた繊維仕上げ用エマルジョン組成物を構成するエマルジョン粒子の95%以上の粒子の直径が100nm以下である、上記(27)〜(30)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法、
(35)得られた繊維仕上げ用エマルジョン組成物を構成するエマルジョン粒子のメジアン径(d50)が150nm以下である、上記(27)〜(34)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法、
(36)得られた繊維仕上げ用エマルジョン組成物を構成するエマルジョン粒子のメジアン径(d50)が130nm以下である、上記(27)〜(34)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法、
(37)得られた繊維仕上げ用エマルジョン組成物を構成するエマルジョン粒子のメジアン径(d50)が100nm以下である、上記(27)〜(34)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法、
(38)得られた繊維仕上げ用エマルジョン組成物を構成するエマルジョン粒子のメジアン径(d50)が90nm以下である、上記(27)〜(34)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法、
(39)得られた繊維仕上げ用エマルジョン組成物の、波長400〜800nmの可視光線による光線透過率が70%以上である、上記(27)〜(38)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法、
(40)得られた繊維仕上げ用エマルジョン組成物の、波長400〜800nmの可視光線による光線透過率が80%以上である、上記(27)〜(38)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法、
(41)得られた繊維仕上げ用エマルジョン組成物の、波長400〜800nmの可視光線による光線透過率が90%以上である、上記(27)〜(38)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法、
(42)(C)界面活性剤が、(C1)非イオン性界面活性剤、及び、(C2)アニオン性界面活性剤より成る群から選ばれる一つ以上である、上記(27)〜(41)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法、
(43)(C1)非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンセカンダリーアルコールエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル及びポリオキシエチレン硬化ひまし油より成る群から選ばれる一以上である、上記(42)記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法、
(44)(C1)非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンセカンダリーアルコールエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル及びポリオキシエチレンイソデシルエーテルより成る群から選ばれる一以上である、上記(42)記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法、
(45)(C2)アニオン性界面活性剤が、アルキルサルフェート・ナトリウム塩、アルキルエーテルサルフェート・ナトリウム塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム及びジアルキルスルホコハク酸ナトリウムより成る群から選ばれる一以上である、上記(42)〜(44)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法、
(46)(C2)アニオン性界面活性剤が、アルキルサルフェート・ナトリウム塩である、上記(42)〜(44)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法、
(47)(B)分子内にシロキサン結合を有する物質が、メチルハイドロジェンポリシロキサン、シリコーンオイル、及び、シリコーン樹脂より成る群から選ばれる一つ以上である、上記(27)〜(46)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法、
(48)(B)分子内にシロキサン結合を有する物質が、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン及びメチルハイドロジェンポリシロキサンより成る群から選ばれる一つ以上である、上記(27)〜(46)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法、
(49)(A)糖アルコール又はその誘導体が、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、トレハロース及びラクトースより成る群から選ばれる一つ以上である、上記(27)〜(48)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法、
(50)(A)糖アルコール又はその誘導体が、エリスリトール及び/又はキシリトール、上記(27)〜(48)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法、
(51)(A)糖アルコール又はその誘導体5〜40質量部、(B)分子内にシロキサン結合を有する物質10〜30質量部、(C1)非イオン性界面活性剤5〜15質量部及び(C2)アニオン性界面活性剤0〜5質量部、並びに、水の合計100質量部を使用する、上記(27)〜(50)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法、
(52)(A)糖アルコール又はその誘導体15〜25質量部、(B)分子内にシロキサン結合を有する物質15〜25質量部、(C1)非イオン性界面活性剤8〜10質量部及び(C2)アニオン性界面活性剤0.8〜3質量部、並びに、水の合計100質量部を使用する、上記(27)〜(50)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法、
(53)工程(III)の次に、(D)架橋剤及び/又は(E)バインダーを更に加える工程(IV)を含む、上記(27)〜(52)のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法、
(54)(D)架橋剤が、ブロックイソシアネート系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド及びその誘導体、オキサゾリン系化合物、グリオキサール系化合物並びにメラミン系化合物より成る群から選ばれる一つ以上である、上記(53)記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法、
(55)(E)バインダーが、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン・アクリル樹脂、シリコーン・アクリル樹脂、シリコーン・ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂及び酢酸ビニル樹脂化合物より成る群から選ばれる一つ以上である、上記(53)又は(54)記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法、
(56)(E)バインダーがウレタン樹脂である、上記(53)又は(54)記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法
を挙げることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物は、繊維又は繊維製品に、糖アルコール又はその誘導体による良好な涼感性を付与し得るばかりではなく、従来技術ではなしえなかった、該涼感性の著しく高い洗濯耐久性をも付与し得る。また、本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法は、上記の効果を有する繊維仕上げ用エマルジョン組成物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物と従来の繊維仕上げ用エマルジョン組成物(市販品)との透明性を比較した外観図である。
【図2】図2は、本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物及び従来の繊維仕上げ用エマルジョン組成物(市販品)並びに蒸留水の可視光線透過率の測定結果を示した図である。
【図3】図3は、涼感性能評価の際の温度測定の概略を示した図である。
【図4】図4は、実施例1で得られた繊維仕上げ用エマルジョン組成物(加工剤組成物)中のエマルジョン粒子の写真である(4,000倍)。
【図5】図5は、実施例2で得られた繊維仕上げ用エマルジョン組成物(加工剤組成物)中のエマルジョン粒子の写真である(4,000倍)。
【図6】図6は、実施例3で得られた繊維仕上げ用エマルジョン組成物(加工剤組成物)中のエマルジョン粒子の写真である(4,000倍)。
【図7】図7は、比較例1で得られた繊維仕上げ用エマルジョン組成物(加工剤組成物)中のエマルジョン粒子の写真である(4,000倍)。
【図8】図8は、比較例2で得られた繊維仕上げ用エマルジョン組成物(加工剤組成物)中のエマルジョン粒子の写真である(4,000倍)。
【図9】図9は、比較例3で得られた繊維仕上げ用エマルジョン組成物(加工剤組成物)中のエマルジョン粒子の写真である(1,000倍)。
【図10】図10は、比較例4で得られた繊維仕上げ用エマルジョン組成物(加工剤組成物)中のエマルジョン粒子の写真である(1,000倍)。
【図11】図11は、比較例7で得られた繊維仕上げ用エマルジョン組成物(加工剤組成物)中のエマルジョン粒子の写真である(4,000倍)。
【図12】図12は、市販品1のエマルジョン粒子の写真である(1,000倍)。
【図13】図13は、半透明エマルジョンのエマルジョン粒子の写真である(4,000倍)。
【図14】図14は、実施例2で得られたエマルジョン組成物中のエマルジョン粒子に関して、各成分が占める部分を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物において、該組成物を構成するエマルジョン粒子は多層構造を有する。ここで、多層構造とは、異なる成分がエマルジョン粒子内で層状に分布することを言う。本発明では、水溶性の(A)糖アルコール又はその誘導体を、疎水性の(B)分子内にシロキサン結合を有する物質で被覆し、更に、その外側を(C)界面活性剤で被覆している構造を言う。本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物において、該組成物を構成するエマルジョン粒子の95%以上、好ましくは98%以上の粒子の直径の上限が、200nm、好ましくは150nm、より好ましくは120nm、更に好ましくは100nmである。一方、下限は、特に制限はなく小さいほど好ましいが、製造技術上の問題から、好ましくは20nm、より好ましくは40nmである。エマルジョン粒子の直径が上記上限を超えては、繊維又は繊維製品に本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物を施与して得られる涼感効果の洗濯耐久性が低くなる。また、本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物を構成するエマルジョン粒子のメジアン径(d50)の上限が、好ましくは150nm、より好ましくは130nm、更に好ましくは100nm、より更に好ましくは90nmである。一方、下限は、特に制限はなく小さいほど好ましいが、製造技術上の問題から、好ましくは30nm、より好ましくは50nmである。エマルジョン粒子のメジアン径(d50)が上記上限を超えては、繊維又は繊維製品に本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物を施与して得られる涼感効果の洗濯耐久性が低くなることがある。ここで、本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物を構成するエマルジョン粒子の粒度分布は、エマルジョン組成物を蒸留水で濃度2体積%に希釈した試料を、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置、例えば、株式会社堀場製作所製HORIBA LA−910(商標)を使用して測定したものである。
【0018】
本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の波長400〜800nmの可視光線による光線透過率は、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物は、肉眼による目視ではほぼ透明である。上記光線透過率が、上記下限未満では、繊維又は繊維製品に本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物を施与して得られる涼感効果の洗濯耐久性が低くなることがある。ここで、本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の波長400〜800nmの可視光線による光線透過率は、紫外可視分光光度計、例えば、島津製作所製島津自記分光光度計UV−2200(商標)を使用して測定したものである。
【0019】
本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物に含まれる成分(A)糖アルコール又はその誘導体としては、好ましくは、炭素数4〜12の糖アルコール及びそれらの誘導体が挙げられる。炭素数4〜12の糖アルコールとしては、例えば、トリイトール、テトリトール、ぺンチトール、ヘキシトール、ヘプチトール、オクチトール等が挙げられる。これらのうち、水に対する溶解熱(吸熱)が大きいことから、好ましくは、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、ラクチトール等が使用され、より好ましくはエリスリトール、キシリトールが使用される。また、該糖アルコールの誘導体としては、例えば、該糖アルコールのエステル化合物、ウレタン化合物、エポキシ化合物、エポキシシラン化合物等が挙げられる。
【0020】
本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物に含まれる成分(B)分子内にシロキサン結合を有する物質としては、重量平均分子量が、好ましくは50,000以下、より好ましくは200〜20,000のシリコーン及びその誘導体、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、シリコーンオイル、及び、シリコーン樹脂が挙げられる。ここで、シリコーンオイルとしては、例えば、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボニル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アミノ/アルコキシ変性シリコーンオイル、エポキシ/ポリエーテル変性シリコーンオイル、アミノ/ポリエーテル変性シリコーンオイル、ジメチルシリコーンオイル、フェニルシリコーンオイル等が挙げられる。該シリコーンオイルの粘度は、好ましくは1〜100,000mm/s、より好ましくは50〜10,000mm/sである。該粘度は、25℃における粘度であり、回転粘度計、例えば、株式会社東京計器製BL型粘度計を使用して測定したものである。シリコーン樹脂としては、例えば、シリコーン・アクリル樹脂、シリコーン・ウレタン樹脂を代表するシリコーン誘導体樹脂等が挙げられる。該シリコーン樹脂の重量平均分子量は、好ましくは50,000以下、より好ましくは5,000〜15,000である。これらのうち、好ましくは、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、メチルハイドロジェンポリシロキサンが使用される。
【0021】
本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物に含まれる成分(C)界面活性剤は、特に限定されるものではなく、いずれのものも使用することができる。好ましくは、成分(C1)非イオン性界面活性剤、及び、成分(C2)アニオン性界面活性剤が使用され、より好ましくは、(C1)非イオン性界面活性剤が使用される。成分(C1)非イオン性界面活性剤としては、限定されるものではないが、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンセカンダリーアルコールエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル、例えば、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。これらのうち、ポリオキシエチレンセカンダリーアルコールエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテルが好ましい。(C1)非イオン性界面活性剤のHLB値は、好ましくは8〜18、より好ましくは10〜15である。また、成分(C2)アニオン性界面活性剤としては、限定されるものではないが、例えば、アルキルサルフェート・ナトリウム塩、アルキルエーテルサルフェート・ナトリウム塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等が挙げられる。これらのうち、アルキルサルフェート・ナトリウム塩が好ましい。
【0022】
また、本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物には、上記の成分に加えて、洗濯耐久性を向上させる目的で、成分(D)架橋剤及び/又は成分(E)バインダーを含めることができる。成分(D)架橋剤としては、例えば、ブロックイソシアネート系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド及びその誘導体、オキサゾリン系化合物、グリオキサール系化合物、例えば、尿素とグリオキサールとホルムアルデヒドとの反応生成物、ジメチル尿素とグリオキサールとの反応生成物等、並びに、メラミン系化合物、例えば、ヘキサメチロールメラミン、トリメチロールメラミン等が挙げられる。ここで、ブロックイソシアネート系架橋剤及びイソシアネート系架橋剤としては、ジイソシアネート化合物、トリイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物が好ましく、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレントリイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。これらのうち、トリイソシアネート化合物、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリスビュレット変性体等のヘキサメチレンジイソシアネートの変性物が好ましく使用される。また、成分(E)バインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン・アクリル樹脂、シリコーン・アクリル樹脂、シリコーン・ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂化合物等が挙げられる。これらのうち、吸水性及び耐水性の観点から、ウレタン樹脂が好ましく使用される。
【0023】
本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物は、好ましくは水中油滴型(O/W型)エマルジョンである。本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物中に含まれる、(A)糖アルコール又はその誘導体、(B)分子内にシロキサン結合を有する物質、(C)界面活性剤、及び、水の含有量は、これら成分の合計100質量部中、成分(A)の含有量は、好ましくは5〜40質量部、より好ましくは15〜25質量部であり、成分(B)の含有量は、好ましくは10〜30質量部、より好ましくは15〜25質量部であり、成分(C)のうち、(C1)非イオン性界面活性剤の含有量は、好ましくは5〜15質量部、より好ましくは8〜10質量部であり、(C2)アニオン性界面活性剤の含有量は、好ましくは0〜5質量部であり、より好ましくは0.8〜3質量部であり、残部が水である。各成分の上記含有量の範囲外では、本発明のエマルジョン組成物が安定して得られないばかりか、組成物の粘度が高くなって繊維又は繊維製品への塗布が容易ではなくなることがある。また、(D)架橋剤は、上記のエマルジョン組成物100質量部に対して、好ましくは10〜100質量部、より好ましくは10〜40質量部含めることができ、(E)バインダーは、同じく上記のエマルジョン組成物100質量部に対して、好ましくは10〜200質量部、より好ましくは10〜40質量部含めることができる。また、本発明のエマルジョン組成物には、上記の成分のほかに、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、更に水で希釈したり、低温安定化剤、色素等を更に含めることができる。
【0024】
本発明のエマルジョン組成物は、(A)糖アルコール又はその誘導体と(C)界面活性剤とを混合し、次いで、得られた混合物に所定量の水を加える工程(I)、工程(I)で得られた混合物に、該混合物を撹拌しながら、所定量の、(B)分子内にシロキサン結合を有する物質を加える工程(II)、及び、工程(II)で得られた混合物に、該混合物を撹拌しながら、更に、水を加える工程(III)を含む方法により、製造することができる。以下、該方法を更に詳細に説明する。まず、成分(A)、(B)、(C)及び水、例えば、蒸留水の合計が100質量部となるように、かつ、成分(B)の量が、成分(A)の質量の下記に示した所定の倍数になるように、かつ、工程(I)において、水を成分(A)及び(C)の合計質量の所定の倍数で加えることができるように、各成分を、上記の各成分の含有量の範囲内の量で準備する。次いで、工程(I)に従って、成分(A)の全量と成分(C)の全量とを容器中で環境温度及び環境圧力(通常、室温及び大気圧)下で混合する。得られた成分(A)と(C)との混合物に、同じく環境温度及び環境圧力下で、好ましくは該混合物を撹拌しながら、好ましくは60〜80℃に加温した水を添加して混合する。ここで、添加する水の量は、成分(A)と(C)との合計質量の、好ましくは0.15〜1.10倍、より好ましくは0.50〜1.00倍であり、上記で準備した水の量の好ましくは20〜50質量%である。水は一度に添加してもよいし、数回又は多数回に分けて添加しても構わない。また、成分(B)がアミノ基を有する物質であるときには、上記のように水を添加する前、水を添加するとき、又は水を添加した後に、好ましくは、濃度70%以上、より好ましくは90%以上の酢酸を、成分(B)100質量部に対して、0.2〜2質量部添加することができる。これにより、成分(B)のアミノ基をカチオン化してより容易に乳化することが可能となる。また、酢酸に代えて、例えば、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、リン酸等を使用することもできる。上記の工程(I)の操作により、液晶組成物が得られる。次いで、工程(II)に従って、上記の工程(I)で得られた混合物に、環境温度〜100℃、好ましくは60〜70℃、及び環境圧力下で、該混合物を撹拌しながら、成分(B)の全量を添加、好ましくは滴下添加する。ここで、添加する成分(B)の量は、工程(I)で添加した(A)糖アルコール又はその誘導体の質量の0.50〜6.00倍、好ましくは0.50〜1.50倍、より好ましくは0.65〜1.10倍である。成分(B)としてシリコーン樹脂を使用する際には、シリコーン樹脂の原料となるモノマー又はプレポリマーを、上記のように滴下添加して、その場で乳化重合しシリコーン樹脂とすることができる。成分(B)を添加、好ましくは滴下添加するに際して行う撹拌は、好ましくは回転撹拌装置、例えば、ホモミキサーを使用して、好ましくは5,000回転/分以上、より好ましくは5.000〜8,000回転/分で実施される。これにより、成分(A)、(B)、(C)及び水を含む油中水滴型(W/O型)エマルジョン組成物が得られる。次いで、工程(III)に従い、上記の工程(II)で得られた混合物、即ち、W/O型エマルジョン組成物に、該混合物を撹拌しながら、更に、好ましくは60〜80℃に加温した、残りの水を加えて混合する。この際、水は好ましくは多数回に分けて加える、例えば、滴下添加することが好ましい。上記撹拌は、好ましくは回転撹拌装置、例えば、ホモミキサーを使用して、好ましくは3,000〜10,000回転/分、より好ましくは5.000〜8,000回転/分で実施される。これにより、工程(II)で得られたW/O型エマルジョン組成物が、水中油滴型(O/W型)エマルジョン組成物へと変化し、本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物が得られる。また、該繊維仕上げ用エマルジョン組成物に、(D)架橋剤及び/又は(E)バインダーを更に加えるに際しては、該繊維仕上げ用エマルジョン組成物に成分(D)及び/又は(E)及び水を加えて加工液とし、直ちに、繊維及び繊維製品に施与することが好ましい。
【0025】
本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物は、木綿、ウール、シルク、麻等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成繊維、及び、それらの混交物に施与可能である。この中でも、とりわけ、木綿、レーヨン、ポリエステル/木綿混交物等に施与することが好ましい。これらに施与した際、従来の涼感加工剤、例えば、特許文献5記載の繊維仕上げ剤組成物に比べて、より優れた洗濯耐久性を発現することができる。また、素材形態はステープル、フィラメント、紡績糸、加工糸、不織布、織物、編物、更には、縫製された繊維製品、いわゆるピース状態であってもよい。
【0026】
本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物を上記の繊維及び繊維製品に施与する方法としては、従来公知の方法を使用することができる。いわゆるパッドードライ・キュア方法によれば、本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物が1〜20質量%、好ましくは5〜10質量%濃度となるように、該エマルジョン組成物と水とを混合して加工液を調製し、この加工液に木綿等の繊維及び繊維製品を浸漬し、パッディング処理をしてマングルで絞り、その後、100〜120℃で乾燥し、次いで、130〜180℃で1〜3分間熱処理することにより施与し得る。いわゆる浸漬処理又は液中処理法と言われる方法によれば、施与する繊維及び繊維製品の質量の2〜10質量%に相当する量の本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物に水を加えて、該エマルジョン組成物の濃度が2〜10質量%になるようにし、これを加工液として、これにデニム等の繊維及び繊維製品を浸漬し、撹拌しつつ30〜80℃、好ましくは30〜50℃に加温して、その温度で5〜30分間浸漬処理を行い、次いで、遠心脱水をした後、タンブルドライで乾燥を実施することにより施与し得る。また、スプレー法、コーティング法等を使用することもできる。
【0027】
以下の実施例において、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0028】
下記の実施例及び比較例において使用した各成分は、下記の通りである。
【0029】
<成分(A):糖アルコール及びその誘導体>
エリスリトール(三菱化学フーズ株式会社製エリスリトール)
キシリトール(日本ポリマック有限会社製キシリトール)
【0030】
<成分(B):分子内にシロキサン結合を有する物質>
アミノ変性シリコーンオイル[信越化学工業株式会社製KF−8004(商標)、アミノ当量:約1,500、粘度(25℃):800mm/s、重量平均分子量:約10,000]
エポキシ変性シリコーンオイル[信越化学工業株式会社製KF−105(商標)、エポキシ当量:約490、粘度(25℃):15mm/s、重量平均分子量:約1,000]
メチルハイドロジェンポリシロキサン[信越化学工業株式会社製KF−99(商標)、官能基当量:約60、粘度(25℃):20mm/s]
【0031】
<成分(C1):非イオン界面活性剤>
ポリオキシエチレンセカンダリーアルコールエーテル[HLB:13、青木油脂工業株式会社製ファインサーフ290(商標))
ポリオキシエチレントリデシルエーテル[HLB:12、青木油脂工業株式会社製ファインサーフTD−75(商標)]
【0032】
<成分(C2):アニオン性界面活性剤>
アルキルサルフェート・ナトリウム塩[日油株式会社製パーソフトEK(商標)]
【0033】
<成分(D):架橋剤>
ブロックイソシアネート系架橋剤[大原パラヂウム化学株式会社製パラキャットPGW−4(商標)]
【0034】
<成分(E):バインダー>
ウレタン樹脂系バインダー[大原パラヂウム化学株式会社製パラゾールPN−14(商標)]
【0035】
<その他の成分>
スクワラン(株式会社岸本特殊肝油工業所製植物性スクワラン)
ステアリルアルコール[新日本理化株式会社製リカコール90B(商標)]
ジメチルステアリルアンモニウムクロライド[花王株式会社製コータミン86Pコンク(商標)]
トリメチルステアリルアンモニウムクロライド[花王株式会社製コータミンD86P(商標)]
【0036】
下記の実施例及び比較例において使用した評価試験の方法は、下記の通りである。
【0037】
<涼感性能評価(洗濯耐久性評価)>
実施例及び比較例で製造した加工剤組成物5質量部を水95質量部で希釈した。該液を加工液として、該液に綿100%から成る編物(20cm×20cm)を浸漬し、マングルでピックアップが100%になるように絞った後、110℃で3分間乾燥した。次いで、該布帛を160℃で2分間、テンター型のベイキングマシーンで熱処理を施した。但し、実施例5の加工剤組成物においては、綿100%から成る編物に代えて、綿55%及びポリエステル45%から成るブロード生地(20cm×20cm)を使用した。
【0038】
上記処理を施した布帛を30℃及びRH40%の条件下の恒温恒湿室内に30分間放置した。次いで、図3の(a)、(b)、(c)に示すように、まず、該布帛に30℃の水を1滴(約0.03cc)滴下して含侵させ、次いで、該水含侵部分に温度センサー[株式会社ティアンドディ製TR−0106(商標)、温度記録計:株式会社ティアンドディ製おんどとりTR−71U(商標)]を設置し、次いで、該温度センサーを該布帛で挟み込み、5分間経過後の温度を測定した。また、対照として、加工剤組成物による処理をしていない布帛を30℃及びRH40%の条件下の恒温恒湿室内に30分間放置したのち、上記と同一にして水滴を滴下して、5分間経過後の温度を測定した。涼感性能は、各布帛に関して水滴を滴下していない状態で、同様にして布帛温度を測定し、水滴を滴下していない布帛温度から水滴を滴下したときの布帛温度を差し引いた値に基づいて評価した。該温度差が大きいほど、涼感性能が優れていることを示す。該涼感性能は、各布帛について、洗濯なし、洗濯10回、洗濯20回、洗濯30回において測定し評価した。ここで、洗濯方法は、JIS L−0217 103に準拠して実施した。
【0039】
<エマルジョン組成物中のエマルジョン粒子の粒度分布測定>
実施例及び比較例で製造した加工剤組成物、並びに、市販品を水で希釈して、各組成物を1〜5体積%濃度に調整し、これを試料として使用した。測定装置として、レーザー回折/散乱粒度分布測定装置[株式会社堀場製作所製HORIBA LA−910(商標)]を使用した。
【0040】
<エマルジョン組成物の可視光線透過率測定>
実施例及び比較例で製造した加工剤組成物、並びに、市販品及び蒸留水を試料として使用した。装置として、紫外可視分光光度計、島津製作所製島津自記分光光度計UV−2200(商標)を使用し、波長を可視光域の200nmから800nmまで変化させて透過率を測定した。
【0041】
<エマルジョン組成物中のエマルジョン粒子の観察>
実施例及び比較例で製造した加工剤組成物、並びに、市販品を試料として使用した。装置として、マイクロスコープ、株式会社キーエンス(KEYENCE)製VH−5000(レンズ:VH−Z500)(いずれも商標)を使用した。採取した各エマルジョンに、酸性染料1質量%水溶液を2質量%添加し試験液体とした。プレパラートに該試験液体を1滴載せカバーグラスをかぶせてマイクロスコープを使用して所定の倍率でエマルジョン粒子の形態を観察した。使用した酸性染料は、住友化学工業株式会社製SUMIOL MILL BRILL RED B(商標)である。
【0042】
(実施例1)
(A)エリスリトール60グラム(20質量部)、並びに、(C1)HLB値が13のポリオキシエチレンセカンダリーアルコールエーテル30グラム(10質量部)及び(C2)アルキルサルフェート・ナトリウム塩3.6グラム(1.2質量部)を、500ccのビーカーに入れて室温及び大気圧下で撹拌して混合し、次いで、得られた混合物に、同じく室温及び大気圧下で、該混合物を撹拌しながら、90%酢酸0.6グラム[(B)アミノ変性シリコーンオイル100質量部に対して1.0質量部]及び約70℃の水60グラム[20質量部、成分(A)及び(C)の合計質量の約0.64倍]を添加した。これにより、液晶組成物が形成された。次いで、該組成物に、同じく室温及び大気圧下で、該混合物を撹拌しながら、(B)アミノ変性シリコーンオイル60グラム(20質量部)[添加した成分(A)の質量の1.00倍]を滴下添加した。上記の操作により、成分(A)、(B)、(C)及び水を含む油中水滴型(W/O型)エマルジョン組成物が得られた。また、上記の操作において、撹拌はいずれも卓上ホモミキサー[特殊機化工業株式会社(現、プライミクス株式会社)製TK HOMO MIXER(商標)]を使用して、撹拌速度を7,000回転/分として実施した。次いで、得られたエマルジョン組成物に、該組成物を、同一の卓上ホモミキサーを使用して撹拌速度7,000回転/分で撹拌しながら、成分(A)、(B)、(C)及び水の合計量が300グラム(100質量部)となるように、約70℃の水86.4グラム(28.8質量部)を添加して混合した。これにより、W/O型エマルジョン組成物が、水中油滴型(O/W型)エマルジョン組成物へと変化し、本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物(加工剤組成物)約300グラムが得られた。得た繊維仕上げ用エマルジョン組成物について、上記のようにして、エマルジョン組成物中のエマルジョン粒子の観察を行ったところ、該エマルジョン粒子は多層構造を有していることが分かった(図4)。
【0043】
(実施例2)
成分(A)をキシリトールに代え、成分(B)の添加量を45グラム(15質量部)[添加した成分(A)の質量の0.75倍]に代え、かつ、最後に添加する約70℃の水の量を101.4グラム(33.8質量部)として、成分(A)、(B)、(C)及び水の合計量が300グラム(100質量部)となるように調節した以外は、実施例1と同一にして、本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物(加工剤組成物)約300グラムを得た。得た繊維仕上げ用エマルジョン組成物について、上記のようにして、エマルジョン組成物中のエマルジョン粒子の観察を行ったところ、該エマルジョン粒子は多層構造を有していることが分かった(図5)。
【0044】
(実施例3)
成分(A)をキシリトールに代え、成分(B)をエポキシ変性シリコーンオイルに代え、かつ、90%酢酸を添加しなかった以外は、実施例1と同一にして、本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物(加工剤組成物)300グラムを得た。得た繊維仕上げ用エマルジョン組成物について、上記のようにして、エマルジョン組成物中のエマルジョン粒子の観察を行ったところ、該エマルジョン粒子は多層構造を有していることが分かった(図6)。
【0045】
(実施例4)
成分(A)をキシリトールに代え、成分(B)をメチルハイドロジェンポリシロキサンに代え、成分(C1)をHLB値が12のポオキシエチレントリデシルエーテルに代え、かつ、90%酢酸を添加しなかった以外は、実施例1と同一にして、本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物(加工剤組成物)300グラムを得た。得た繊維仕上げ用エマルジョン組成物について、上記のようにして、エマルジョン組成物中のエマルジョン粒子の観察を行ったところ、該エマルジョン粒子は多層構造を有していることが分かった。
【0046】
(実施例5)
実施例1で得られた繊維仕上げ用エマルジョン組成物5質量部、(D)ブロックイソシアネート系架橋剤2質量部、及び、水93質量部を混合して、加工剤組成物100質量部を調製した。
【0047】
(実施例6)
実施例1で得られた繊維仕上げ用エマルジョン組成物5質量部、(E)ウレタン樹脂系バインダー2質量部、及び、水93質量部を混合して、加工剤組成物100質量部を調製した。
【0048】
(実施例7)
液晶組成物を形成する際に添加する水の量を15グラム[5質量部、成分(A)及び(C)の合計質量の0.16倍]とし、かつ、最後に添加する約70℃の水の量を131.4グラム(43.8質量部)とした以外は、実施例1と同一にして、本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物(加工剤組成物)約300グラムを得た。得た繊維仕上げ用エマルジョン組成物について、上記のようにして、エマルジョン組成物中のエマルジョン粒子の観察を行ったところ、該エマルジョン粒子は多層構造を有していることが分かった。
【0049】
(実施例8)
液晶組成物を形成する際に添加する水の量を102.9グラム[34.3質量部、成分(A)及び(C)の合計質量の1.10倍]とし、かつ、最後に添加する約70℃の水の量を43.5グラム(14.5質量部)とした以外は、実施例1と同一にして、本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物(加工剤組成物)約300グラムを得た。得た繊維仕上げ用エマルジョン組成物について、上記のようにして、エマルジョン組成物中のエマルジョン粒子の観察を行ったところ、該エマルジョン粒子は多層構造を有していることが分かった。
【0050】
(実施例9)
成分(B)の添加量を30グラム(10質量部)[添加した成分(A)の質量の0.50倍]に代え、かつ、最後に添加する約70℃の水の量を116.4グラム(38.8質量部)とした以外は、実施例1と同一にして、本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物(加工剤組成物)約300グラムを得た。得た繊維仕上げ用エマルジョン組成物について、上記のようにして、エマルジョン組成物中のエマルジョン粒子の観察を行ったところ、該エマルジョン粒子は多層構造を有していることが分かった。
【0051】
(実施例10)
成分(B)の添加量を75グラム(25質量部)[添加した成分(A)の質量の1.25倍]に代え、かつ、最後に添加する約70℃の水の量を71.4グラム(23.8質量部)とした以外は、実施例1と同一にして、本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物(加工剤組成物)約300グラムを得た。得た繊維仕上げ用エマルジョン組成物について、上記のようにして、エマルジョン組成物中のエマルジョン粒子の観察を行ったところ、該エマルジョン粒子は多層構造を有していることが分かった。
【0052】
(実施例11)
(A)エリスリトール15.0グラム(5.0質量部)、並びに、(C1)HLB値が13のポリオキシエチレンセカンダリーアルコールエーテル7.5グラム(2.5質量部)及び(C2)アルキルサルフェート・ナトリウム塩0.9グラム(0.3質量部)を、500ccのビーカーに入れて室温及び大気圧下で撹拌して混合し、次いで、得られた混合物に、同じく室温及び大気圧下で、該混合物を撹拌しながら、90%酢酸0.9グラム[(B)アミノ変性シリコーンオイル100質量部に対して1.0質量部]及び約70℃の水15.0グラム[5.0質量部、成分(A)及び(C)の合計質量の0.64倍]を添加した。これにより、液晶組成物が形成された。次いで、該組成物に、同じく室温及び大気圧下で、該混合物を撹拌しながら、(B)アミノ変性シリコーンオイル90グラム(30質量部)[添加した成分(A)の質量の6.00倍]を滴下添加した。上記の操作により、成分(A)、(B)、(C)及び水を含む油中水滴型(W/O型)エマルジョン組成物が得られた。次いで、成分(A)、(B)、(C)及び水の合計量が300グラムとなるように、約70℃の水171.6グラム(57.2質量部)を添加して混合した。これにより、W/O型エマルジョン組成物が、水中油滴型(O/W型)エマルジョン組成物へと変化し、本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物(加工剤組成物)約300グラムが得られた。ここで、上記の撹拌は、いずれも、実施例1と同一条件にて実施した。得た繊維仕上げ用エマルジョン組成物について、上記のようにして、エマルジョン組成物中のエマルジョン粒子の観察を行ったところ、該エマルジョン粒子は多層構造を有していることが分かった。
【0053】
(比較例1)
成分(A)を使用せず、液晶組成物を形成する際に添加する約70℃の水の量を21.6グラム[7.2質量部、成分(A)及び(C)の合計質量の約0.64倍]及び最後に添加する水の量を184.9グラム(61.6質量部)に調節した以外は、実施例1と同一にしてエマルジョン組成物(加工剤組成物)約300グラムを製造した。得られたエマルジョン組成物は、O/W型エマルジョンであった。得たエマルジョン組成物について、上記のようにして、エマルジョン組成物中のエマルジョン粒子の観察を行ったところ、該エマルジョン粒子は単層構造を有していることが分かった(図7)。
【0054】
(比較例2)
成分(A)、(B)、(C1)及び(C2)を一括混合し、これに90%酢酸を滴下添加し、次いで、得られた混合物を、卓上ホモミキサーを使用して撹拌速度7,000回転/分で撹拌しながら、成分(A)、(B)、(C)及び水の合計量が300グラム(100質量部)となるように、約70℃の水146.4グラム(48.8質量部)を複数回に分けて添加した以外は、各成分の配合量等は実施例1と同一にしてエマルジョン組成物(加工剤組成物)約300グラムを製造した。得られたエマルジョン組成物は、O/W型エマルジョンであった。得たエマルジョン組成物について、上記のようにして、エマルジョン組成物中のエマルジョン粒子の観察を行ったところ、該エマルジョン粒子は単層構造を有していることが分かった(図8)。
【0055】
(比較例3)
(A)キシリトール90グラム(30質量部)、スクワラン90グラム(30質量部)、ステアリルアルコール6グラム(2質量部)、ジメチルステアリルアンモニウムクロライド9グラム(3質量部)、及び、トリメチルステアリルアンモニウムクロライド6グラム(2質量部)を一括混合し、次いで、得られた混合物を、50mmHgの減圧下50℃で、上記と同じ卓上ホモミキサーを使用して撹拌速度8,000回転/分で撹拌しながら、上記各成分及び水の合計量が300グラム(100質量部)となるように、約50℃の水99グラム(33質量部)を複数回に分けて添加してエマルジョン組成物(加工剤組成物)300グラムを製造した。得た繊維仕上げ用エマルジョン組成物について、上記のようにして、エマルジョン組成物中のエマルジョン粒子の観察を行ったところ、該エマルジョン粒子は単層構造を有していることが分かった(図9)。
【0056】
(比較例4)
(A)キシリトール90グラム(30質量部)、ステアリルアルコール6グラム(2質量部)、ジメチルステアリルアンモニウムクロライド9グラム(3質量部)、及び、トリメチルステアリルアンモニウムクロライド6グラム(2質量部)を、500ccのビーカーに入れて室温及び大気圧下で撹拌して混合し、次いで、得られた混合物に、同じく室温及び大気圧下で、該混合物を撹拌しながら、約70℃の水60グラム(20質量部)を添加した。これにより、液晶組成物が形成された。次いで、該組成物に、同じく室温及び大気圧下で、該混合物を撹拌しながら、スクワラン90グラム(30質量部)を滴下添加した。上記の操作により、成分(A)、ステアリルアルコール、ジメチルステアリルアンモニウムクロライド、トリメチルステアリルアンモニウムクロライド及び水を含む油中水滴型(W/O型)エマルジョン組成物が得られた。また、上記の操作において、撹拌はいずれも上記と同一の卓上ホモミキサーを使用して、撹拌速度を7,000回転/分として実施した。次いで、得られたエマルジョン組成物に、該混合物を同一の卓上ホモミキサーを使用して撹拌速度7,000回転/分で撹拌しながら、成分(A)、ステアリルアルコール、ジメチルステアリルアンモニウムクロライド、トリメチルステアリルアンモニウムクロライド及び水の合計量が300グラム(100質量部)となるように、約70℃の水39グラム(13質量部)を添加して混合した。これにより、W/O型エマルジョン組成物が、水中油滴型(O/W型)エマルジョン組成物へと変化し、繊維仕上げ用エマルジョン組成物(加工剤組成物)300グラムが得られた。得た繊維仕上げ用エマルジョン組成物について、上記のようにして、エマルジョン組成物中のエマルジョン粒子の観察を行ったところ、該エマルジョン粒子は単層構造を有していることが分かった(図10)。
【0057】
(比較例5)
(A)キシリトール60グラム(20質量部)、並びに、(C1)HLB値が13のポオキシエチレンセカンダリーアルコールエーテル30グラム(10質量部)及び(C2)アルキルサルフェート・ナトリウム塩3.6グラム(1.2質量部)を、500ccのビーカーに入れて室温及び大気圧下で撹拌して混合し、次いで、得られた混合物に、同じく室温及び大気圧下で、該混合物を撹拌しながら、90%酢酸0.6グラム[(B)アミノ変性シリコーンオイル100質量部に対して1.0質量部]及び約70℃の水60グラム[20質量部、成分(A)及び(C)の合計質量の約0.64倍]を添加した。これにより、液晶組成物が形成された。次いで、該組成物に、同じく室温及び大気圧下で、該混合物を撹拌しながら、成分(A)、(B)、(C)及び水の合計量が300グラム(100質量部)となるように、(B)アミノ変性シリコーンオイル146.4グラム(48.8質量部)[添加した成分(A)の質量の2.44倍]を滴下添加した。これによりW/O型エマルジョン(加工剤組成物)約300グラムが得られた。ここで、上記の撹拌は、いずれも、実施例1と同一条件にて実施した。
【0058】
(比較例6)
液晶組成物を形成する際に添加する約70℃の水の量を131.1グラム[43.7質量部、成分(A)及び(C)の合計質量の約1.40倍]とし、かつ、最後に添加する水の量を15.3グラム[5.1質量部]とした以外は、実施例1と同一にして実施した。該水を添加する段階で液晶組成物を得ることができず、成分(B)を添加してもエマルジョンを形成することができなかった。
【0059】
(比較例7)
液晶組成物を形成する際に添加する約70℃の水の量を9.3グラム[3.1質量部、成分(A)及び(C)の合計質量の約0.10倍]とし、最後に添加する水の量を137.1グラム(45.7質量部)に調節した以外は、実施例1と同一にして実施し、エマルジョン組成物(加工剤組成物)300グラムを製造した。得た繊維仕上げ用エマルジョン組成物について、上記のようにして、エマルジョン組成物中のエマルジョン粒子の観察を行ったところ、該エマルジョン粒子は単層構造を有していることが分かった(図11)。
【0060】
(比較例8)
(B)アミノ変性シリコーンオイルの量を24グラム(8質量部)[添加した成分(A)の質量の0.4倍]とし、最後に添加する水の量を122.4グラム(40.8質量部)に調節した以外は、実施例1と同一にして実施した。乳化組成物を得ることができなかった。
【0061】
(比較例9)
(A)エリスリトール9.3グラム(3.1質量部)、並びに、(C1)HLB値が13のポリオキシエチレンセカンダリーアルコールエーテル4.7グラム(1.6質量部)及び(C2)アルキルサルフェート・ナトリウム塩0.6グラム(0.2質量部)を、500ccのビーカーに入れて室温及び大気圧下で撹拌して混合し、次いで、得られた混合物に、同じく室温及び大気圧下で、該混合物を撹拌しながら、90%酢酸0.6グラム[(B)アミノ変性シリコーンオイル100質量部に対して1.0質量部]及び約70℃の水4.8グラム[1.6質量部、成分(A)及び(C)の合計質量の0.33倍]を添加した。これにより、液晶組成物が形成された。次いで、該組成物に、同じく室温及び大気圧下で、該混合物を撹拌しながら、(B)アミノ変性シリコーンオイル60グラム(20質量部)[添加した成分(A)の質量の6.45倍]を滴下添加した。上記の操作により、成分(A)、(B)、(C)及び水を含む油中水滴型(W/O型)エマルジョン組成物が得られた。次いで、成分(A)、(B)、(C)及び水の合計量が300グラムとなるように、約70℃の水220.6グラム(73.5質量部)を添加して混合した。各成分が分離してエマルジョン組成物を得ることはできなかった。ここで、上記の撹拌は、いずれも、実施例1と同一条件にて実施した。
【0062】
表1には、実施例1〜4、7〜11及び比較例1〜4で製造したエマルジョン組成物、並びに、涼感性を付与するための市販のエマルジョン組成物(市販品1及び2)についての、粒度分布測定の結果を示した。ここで、市販品1は、タナテックスケミカルズジャパン株式会社製TASTEX COOL−EX(商標)であり、市販品2は、同じくタナテックスケミカルズジャパン株式会社製TASTEX COOL EX―A 02(商標)である。
【0063】
【表1】

【0064】
図2には、本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物(実施例1及び2、夫々、図2中の1及び2に相当する)及び従来の繊維仕上げ用エマルジョン組成物(市販品2、図2中の4に相当する)の可視光線透過率の測定結果を示した。また、参考として、蒸留水(図2中の5に相当する)、及び、半透明エマルジョン[大原パラヂウム化学株式会社製パラシリコンD−78(商標)](図2中の3に相当する)の可視光線透過率の測定結果も示した。実施例1及び2で得られた本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の、波長400〜800nmの可視光線による光線透過率は、いずれも90%以上と非常に高いものであり、その光線透過率は蒸留水の光線透過率とほぼ同一であった。一方、従来の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の、波長400〜800nmの可視光線による光線透過率は10%以下であり、非常に低いものであった。
【0065】
図1は、実施例1で製造した本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物と従来の繊維仕上げ用エマルジョン組成物[市販品1:タナテックスケミカルズジャパン株式会社製TASTEX COOL−EX(商標)]との透明性を比較した外観図(写真)である。該写真は背景を黒色としたものである。エマルジョン組成物はいずれも透明のサンプル瓶に入れたものである。本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物は透明であることから、背景の黒色が組成物を通して現れており、全体が黒色に映し出されている。一方、市販品は不透明な白濁した組成物であり、組成物全体が白色に映し出されている。以上のように、本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物は、従来品と比較して、著しく可視光線透過率が高いことが分かる。
【0066】
表2には、実施例1〜11及び比較例1〜4、7で製造したエマルジョン組成物、並びに、涼感性を付与するための市販のエマルジョン組成物(市販品1及び2)についての、涼感性能評価(洗濯耐久性評価)結果を示した。
【0067】
【表2】

【0068】
表3及び4には、夫々、実施例1〜4、7〜11及び比較例1、6〜9における各成分の配合量と涼感性能評価(洗濯耐久性評価)結果を示した。
【0069】
【表3】

表3中、エマルジョン組成物中の各成分の数字の単位は、各質量比を示す数字を除いて、全て質量部である。
【0070】
【表4】

表4中、*印はエマルジョン組成物が得られなかった比較例である。また、エマルジョン組成物中の各成分の数字の単位は、各質量比を示す数字を除いて、全て質量部である。
【0071】
実施例1〜4の繊維仕上げ用エマルジョン組成物における涼感性能の洗濯耐久性は著しく良好であり、洗濯30回後においても殆ど変化することがなかった。また、実施例7〜11の繊維仕上げ用エマルジョン組成物における涼感性能の洗濯耐久性も良好であることが分かった。また、上記実施例で得られたエマルジョン組成物は、いずれも多層構造のエマルジョン粒子から成り、そのエマルジョン粒子径は100nm以下であり、かつ、可視光線透過率は70%以上と高かった。実施例5及び6は、夫々、架橋剤及びバインダーを含めたものである。いずれの実施例においても、洗濯30回後において涼感性能は全く変化しなかった。
【0072】
一方、比較例1は、成分(A)を含めず、本発明の方法で繊維仕上げ用エマルジョン組成物を製造したものである。得られたエマルジョン組成物は、単層構造のエマルジョン粒子から成り、そのエマルジョン粒子径は100nm以下であり、かつ、可視光線透過率は70%以上と高かった。しかし、成分(A)を含めていないことから、涼感性能を発揮し得なかった。比較例2は、各成分の配合量は実施例1と同一であるが、従来から使用されている方法で繊維仕上げ用エマルジョン組成物を製造したものである。得られたエマルジョン組成物は、単層構造のエマルジョン粒子から成り、そのエマルジョン粒子径は100nm以下であり、かつ、可視光線透過率は70%以上と高かった。初期の涼感性能は実施例1と同等であったが、洗濯耐久性は著しく悪く、涼感性能は、洗濯10回後において、対照として示した未加工布と同等の値まで低下した。比較例3は、特許文献5の実施例に記載の本発明品1の組成で特許文献5に記載の方法を使用して繊維仕上げ用エマルジョン組成物を製造したものであり、現在、広く市販されているものである。得られたエマルジョン組成物は、単層構造のエマルジョン粒子から成り、その粒子径が460〜520nmと大きく、可視光線透過率は低く不透明なものであった。また、初期の涼感性能は実施例1と同等であったが、洗濯耐久性は著しく悪く、涼感性能は、洗濯10回後において、対照として示した未加工布と同等の値まで低下した。比較例4は、特許文献5の実施例に記載の本発明品1の組成を使用して、これを実施例1の方法、即ち、本発明の方法に準じて製造したものである。得られたエマルジョン組成物は、単層構造のエマルジョン粒子から成り、その粒子径が420〜480nmと大きく、可視光線透過率は低く不透明なものであった。また、初期の涼感性能は実施例1と同等であったが、洗濯耐久性は著しく悪く、涼感性能は、洗濯10回後において、対照として示した未加工布と同等の値まで低下した。このように特許文献5記載の組成を使用して、本発明の方法で繊維仕上げ用エマルジョン組成物を製造しても、良好な涼感性能を保持する洗濯耐久性は得られないことが分かった。比較例5は、最後に水を添加する工程(III)を実施しなかったものである。W/O型エマルジョン組成物が得られた。該W/O型エマルジョン組成物は、水に溶解し難く繊維仕上げ用の加工剤組成物として適していなかった。比較例6は、液晶組成物を形成する際、即ち、工程(I)で添加する約70℃の水の量を、成分(A)及び(C)の合計質量の約1.40倍として、添加する水の、成分(A)及び(C)の合計質量に対する比を本発明の範囲より大きくしたものである。乳化組成物を製造することができなかった。比較例7は、液晶組成物を形成する際、即ち、工程(I)で添加する約70℃の水の量を、成分(A)及び(C)の合計質量の約0.10倍として、添加する水の、成分(A)及び(C)の合計質量に対する比を本発明の範囲より小さくしたものである。得られた乳化組成物中のエマルジョン粒子は単層構造を有していた。また、洗濯耐久性が悪いものであった。初期の涼感性能は実施例1と同等であったが、洗濯10回後において対照として示した未加工布と同等の値まで低下した。比較例8は、(B)アミノ変性シリコーンオイルの添加量を、成分(A)の質量の0.40倍として、添加する成分(B)の成分(A)に対する質量比を本発明の範囲より小さくしたものである。乳化組成物を製造することができなかった。比較例9は、(B)アミノ変性シリコーンオイルの添加量を、成分(A)の質量の6.45倍として、添加する成分(B)の成分(A)に対する質量比を本発明の範囲より大きくしたものである。やはり、乳化組成物を製造することができなかった。
【0073】
市販品1及び2は、いずれも、初期の涼感性能は実施例1と同等であったが、洗濯耐久性は著しく悪く、涼感性能は、洗濯10回後において、対照として示した未加工布と同等の値まで低下した。
【0074】
図4〜6には、夫々、実施例1〜3で得られた繊維仕上げ用エマルジョン組成物(加工剤組成物)中のエマルジョン粒子の観察結果の写真を示した。これらの写真から明らかなように、本発明のエマルジョン粒子は、多層構造を有することが分かった。図14は、実施例2で得られたエマルジョン組成物中のエマルジョン粒子に関して、各成分が占める部分を示した説明図である。図14に示す通り、エマルジョン粒子の中心部分に(A)糖アルコールの層が存在し、その周囲が(B)分子内にシロキサン結合を有する物質で被覆されており、更に、その外側が(C)界面活性剤で被覆されている多層構造を有していることが分かる。一方、図7〜11には、夫々、比較例1〜4及び7の繊維仕上げ用エマルジョン組成物(加工剤組成物)中のエマルジョン粒子の観察結果の写真を示した。また、図12には、市販品1[タナテックスケミカルズジャパン株式会社製TASTEX COOL−EX(商標)]のエマルジョン粒子の観察結果の写真を示し、図13には、半透明エマルジョン[大原パラヂウム化学株式会社製パラシリコンD−78(商標)]のエマルジョン粒子の観察結果の写真を示した。これら比較例及び市販品のエマルジョン粒子は、単層構造を有し、本発明のエマルジョン粒子のように多層構造を有しないことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物は、繊維又は繊維製品に、糖アルコール又はその誘導体による良好な涼感性を付与し得るばかりではなく、該涼感性の著しく高い洗濯耐久性をも付与し得る。また、本発明の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法は、上記の効果を有する繊維仕上げ用エマルジョン組成物を製造することができる。従って、本発明は、今後、例えば、衣服等の分野において、おおいに使用されることが期待されるのみならず、寝装品、椅子貼地、カーシート、靴下、靴、帽子、インソール等の幅広い分野においての使用も期待される。加えて、不織布等を使用した産業資材、ティッシュ、ウエットティッシュ、食品及び果物の包装紙、ダンボール等の紙分野における使用も期待され得る。
【符号の説明】
【0076】
1 実施例1で得られた繊維仕上げ用エマルジョン組成物
2 実施例2で得られた繊維仕上げ用エマルジョン組成物
3 半透明エマルジョン[大原パラヂウム化学株式会社製パラシリコンD−78(商標)]
4 市販品2[タナテックスケミカルズジャパン株式会社製TASTEX COOL EX―A 02(商標)]
5 蒸留水
11 布帛(試験布)
12 水滴
13 温度センサー
14 記録計
a 布帛に水滴を滴下した状態
b 水滴部に温度センサーをセットした状態
c 温度センサーを布帛で包んだ状態
A (A)糖アルコール
B (B)分子内にシロキサン結合を有する物質
C (C)界面活性剤
D 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)糖アルコール又はその誘導体、(B)分子内にシロキサン結合を有する物質、及び、(C)界面活性剤を含む、繊維仕上げ用エマルジョン組成物であって、上記組成物を構成するエマルジョン粒子が多層構造を有し、かつ、該エマルジョン粒子の95%以上の粒子の直径が200nm以下であり、かつ、上記組成物の波長400〜800nmにおける可視光線透過率が70%以上であることを特徴とする繊維仕上げ用エマルジョン組成物。
【請求項2】
上記組成物が、水中油滴型(O/W型)エマルジョンである、請求項1記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物。
【請求項3】
上記組成物が、油中水滴型(W/O型)エマルジョンを転相させて得られた水中油滴型(O/W型)エマルジョンである、請求項1記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物。
【請求項4】
(C)界面活性剤が、(C1)非イオン性界面活性剤、及び、(C2)アニオン性界面活性剤より成る群から選ばれる一つ以上である、請求項1〜3のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物。
【請求項5】
(B)分子内にシロキサン結合を有する物質が、メチルハイドロジェンポリシロキサン、シリコーンオイル、及び、シリコーン樹脂より成る群から選ばれる一つ以上である、請求項1〜4のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物。
【請求項6】
(B)分子内にシロキサン結合を有する物質が、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル及びメチルハイドロジェンポリシロキサンより成る群から選ばれる一つ以上である、請求項1〜4のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物。
【請求項7】
(A)糖アルコール又はその誘導体が、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、トレハロース及びラクトースより成る群から選ばれる一つ以上である、請求項1〜6のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物。
【請求項8】
(D)架橋剤及び/又は(E)バインダーを更に含む、請求項1〜7のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物。
【請求項9】
(I)(A)糖アルコール又はその誘導体と(C)界面活性剤とを混合し、次いで、得られた混合物に、成分(A)及び(C)の合計質量の0.15〜1.10倍の水を加える工程、
(II)工程(I)で得られた混合物に、該混合物を撹拌しながら、工程(I)で添加した成分(A)の質量の0.50〜6.00倍の(B)分子内にシロキサン結合を有する物質を加える工程、及び、
(III)工程(II)で得られた混合物に、該混合物を撹拌しながら、更に、水を加える工程
を含む、繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法。
【請求項10】
工程(II)における(B)分子内にシロキサン結合を有する物質の添加量が、工程(I)で添加した成分(A)の質量の0.50〜1.50倍である、請求項9記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法。
【請求項11】
工程(I)における水の添加量が、成分(A)及び(C)の合計質量の0.50〜1.00倍である、請求項9又は10記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法。
【請求項12】
得られた繊維仕上げ用エマルジョン組成物を構成するエマルジョン粒子の95%以上の粒子の直径が200nm以下である、請求項9〜11のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法。
【請求項13】
得られた繊維仕上げ用エマルジョン組成物の波長400〜800nmの可視光線による光線透過率が70%以上である、請求項9〜12のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法。
【請求項14】
(C)界面活性剤が、(C1)非イオン性界面活性剤、及び、(C2)アニオン性界面活性剤より成る群から選ばれる一つ以上である、請求項9〜13のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法。
【請求項15】
(B)分子内にシロキサン結合を有する物質が、メチルハイドロジェンポリシロキサン、シリコーンオイル、及び、シリコーン樹脂より成る群から選ばれる一つ以上である、請求項9〜14のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法。
【請求項16】
(B)分子内にシロキサン結合を有する物質が、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル及びメチルハイドロジェンポリシロキサンより成る群から選ばれる一つ以上である、請求項9〜14のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法。
【請求項17】
(A)糖アルコール又はその誘導体が、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、トレハロース及びラクトースより成る群から選ばれる一つ以上である、請求項9〜16のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法。
【請求項18】
(A)糖アルコール又はその誘導体5〜40質量部、(B)分子内にシロキサン結合を有する物質10〜30質量部、(C1)非イオン性界面活性剤5〜15質量部及び(C2)アニオン性界面活性剤0〜5質量部、並びに、水の合計100質量部を使用する、請求項9〜17のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法。
【請求項19】
(A)糖アルコール又はその誘導体15〜25質量部、(B)分子内にシロキサン結合を有する物質15〜25質量部、(C1)非イオン性界面活性剤8〜10質量部及び(C2)アニオン性界面活性剤0.8〜3質量部、並びに、水の合計100質量部を使用する、請求項9〜17のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法。
【請求項20】
工程(III)の次に、(D)架橋剤及び/又は(E)バインダーを更に加える工程(IV)を含む、請求項9〜19のいずれか一つに記載の繊維仕上げ用エマルジョン組成物の製造方法。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−19091(P2013−19091A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−133587(P2012−133587)
【出願日】平成24年6月13日(2012.6.13)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行所名:ダイセン株式会社 刊行物名及びタイトル:繊維ニュース 2011年5月20日付 第7面 「堅ろう度を大幅向上 大原パラヂウム化学 キシリトール使いの接触冷感」
【出願人】(391034938)大原パラヂウム化学株式会社 (19)
【Fターム(参考)】