説明

繊維処理剤及びその製造方法

【課題】繊維製品への機能性成分の吸着性が高く、柔軟性だけでなく、さらに種々の機能を繊維製品に付与することができる繊維処理剤及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】融点が30℃以上の油性成分(a1)、及び忌避剤、冷温感刺激剤、皮膚保護成分、紫外線吸収剤、抗菌剤からなる群から選択される一種以上の機能性成分(a2)の混合物と、水との乳化物(A)、並びに、カチオン性化合物(B)を含有する繊維処理剤及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維処理剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯後の繊維製品の風合いを高めるために、繊維用仕上げ剤又は衣料用柔軟剤と呼ばれる繊維処理剤が用いられている。繊維処理剤には、一般に、柔軟性付与成分であるカチオン界面活性剤を含む油相と水相とを混合して調製される水中油滴型乳化物が利用されている。
近年、洗濯後の繊維製品においては、柔軟性だけでなく、香りも重視されるようになってきている。これに対して、繊維製品への香料の吸着性を向上させて、高い残香性を付与する方法がこれまでに提案されている。たとえば、油剤及び香料が特定の高分子化合物で乳化された乳化粒子と、特定のノニオン界面活性剤とを含有する繊維処理剤が開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、消費者ニーズ等の点から、繊維処理剤には、洗濯後の繊維製品に、柔軟性や残香性以外の新しい機能を付与できることが要求されている。
かかる要求に対して、繊維製品が経時的に変色するのを抑制するため、紫外線吸収剤を、カチオン性化合物と酸化防止剤と水溶性溶剤に配合して得られる繊維処理剤が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−297752号公報
【特許文献2】特開2009−7731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の繊維処理剤を製造する場合、機能性成分の種類によっては安定に配合することが難しく、柔軟性や残香性以外の新しい機能を付与すること自体が困難であった。
特許文献2に記載された技術では、洗濯におけるすすぎの際、繊維製品の変色を抑制する効果を発揮する機能性成分(紫外線吸収剤)がすすぎ液と共に排出されやすいため、繊維製品に充分に残存させることが困難であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、繊維製品への機能性成分の吸着性が高く、柔軟性だけでなく、さらに種々の機能を繊維製品に付与することができる繊維処理剤及びその製造方法を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、上記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明の繊維処理剤は、融点が30℃以上の油性成分(a1)、及び忌避剤、冷温感刺激剤、皮膚保護成分、紫外線吸収剤、抗菌剤からなる群から選択される一種以上の機能性成分(a2)の混合物と、水との乳化物(A)、並びに、カチオン性化合物(B)を含有することを特徴とする。
本発明の繊維処理剤において、前記機能性成分(a2)は、ジエチルトルアミド、パラメンタン−3,8−ジオール、アニスオイル、シンナミックアセテート、ネリルプロピオネート、メチルアンスラニレート、シトロネラ、蟻酸ネリル、環状テルペンアルコール、ヒノキ油、ベバー油、ブロモアンファー、ローレル油、ユーカリプタス油からなる群から選択される一種以上の忌避剤を含むことが好ましい。
また、本発明の繊維処理剤において、前記機能性成分(a2)は、ノニル酸ワニリルアミド、ニコチン酸ベンジル、バニリルブチルエーテル、バニリルプロピルエーテル、バニリルペンチルエーテル、トウガラシエキス、メントール、メントール誘導体、カンフルからなる群から選択される一種以上の冷温感刺激剤を含むことが好ましい。
また、本発明の繊維処理剤において、前記油性成分(a1)は、融点が40℃以上の高級アルコール、及び融点が40℃以上の高級脂肪酸から選択される一種以上であることが好ましい。
また、本発明の繊維処理剤において、前記油性成分(a1)は、炭素数16〜24の高級アルコール、及び炭素数16〜24の高級脂肪酸から選択される一種以上であることが好ましい。
【0007】
本発明の繊維処理剤の製造方法は、前記本発明の繊維処理剤の製造方法であって、前記油性成分(a1)と前記機能性成分(a2)とを混合して混合物を得る工程(i)と、該混合物と水とを乳化して乳化物(A)を得る工程(ii)と、該乳化物(A)と前記カチオン性化合物(B)とを混合する工程(iii)とを有することを特徴とする。
本発明の繊維処理剤の製造方法において、前記工程(iii)は、前記カチオン性化合物(B)と水とを乳化して乳化物(C)を得る操作、及び該乳化物(C)と前記乳化物(A)とを混合する操作を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、繊維製品への機能性成分の吸着性が高く、柔軟性だけでなく、さらに種々の機能を繊維製品に付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施例で用いた油性成分(質量比がa1−3:a1−5=1:12の混合物)のDSCチャートを示す図である。
【図2】本実施例で用いた油性成分(質量比がa1−3:a1−5=1:5の混合物)のDSCチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<繊維処理剤>
本発明の繊維処理剤は、融点が30℃以上の油性成分(a1)、及び忌避剤、冷温感刺激剤、皮膚保護成分、紫外線吸収剤、抗菌剤からなる群から選択される一種以上の機能性成分(a2)の混合物と、水との乳化物(A)、並びに、カチオン性化合物(B)を含有する。
【0011】
[乳化物(A)]
乳化物(A)(以下「(A)成分」ともいう。)は、融点が30℃以上の油性成分(a1)(以下「(a1)成分」ともいう。)、及び忌避剤、冷温感刺激剤、皮膚保護成分、紫外線吸収剤、抗菌剤からなる群から選択される一種以上の機能性成分(a2)(以下「(a2)成分」ともいう。)の混合物と、水とが乳化したものである。
本発明の繊維処理剤においては、(a2)成分を直接、そのまま配合するのではなく、(a1)成分と共に水と乳化して得られる乳化物として配合することにより、繊維製品への(a2)成分の吸着性が高まり、種々の機能を繊維製品に付与することができる。
乳化物(A)は、水中油滴(O/W)型エマルションもしくは油中水滴(W/O)型エマルションのいずれであってもよく、又はこれら以外の型のエマルションであってもよく、なかでも分散安定性が良好であることから、水中油滴(O/W)型エマルションであることが好ましい。
【0012】
乳化物(A)の25℃における粘度は、10〜300mPa・sであることが好ましく、10〜200mPa・sであることがより好ましい。この範囲にあると、(A)成分のハンドリング性がより向上する。
本発明において「粘度」は、試料を25℃に調整し、B型粘度計(TOKIMEC社製)を用いて測定される値を示す(測定条件:ロータNO.2、回転数30rpm、10回転後の粘度を測定する)。
【0013】
乳化物(A)における乳化物粒子の平均粒子径は、0.1〜100μmであることが好ましく、0.1〜50μmであることがより好ましく、5〜50μmであることがさらに好ましい。この範囲にあると、(a2)成分の吸着により発揮される効果の持続性がより向上する。また、繊維製品が特に黒色などの濃色のものである場合、洗濯乾燥の後、繊維製品に残存した乳化物粒子の付着跡が残りにくくなる。
本発明において「平均粒子径」は、粒度分布計を用いて測定される体積平均粒子径をいう。該粒度分布計としては、大塚電子株式会社製の粒径アナライザーFPAR−1000、株式会社堀場製作所製のLASER SCATTERING PARTICLE SIZE DISTRIBUTION ANALYZER等を用いることができる。
【0014】
(融点が30℃以上の油性成分(a1))
(a1)成分の融点は30℃以上であり、好ましくは融点が40℃以上であり、より好ましくは50℃以上である。一方、(a1)成分の融点の上限値は、好ましくは融点が100℃以下であり、より好ましくは90℃以下であり、さらに好ましくは80℃以下である。
(a1)成分の融点が下限値以上であると、繊維処理剤を高温条件で保存した際、乳化物(A)の分散安定性がより向上する。また、洗濯の後、繊維製品に吸着した(a2)成分による効果が、外気温や室温に影響されず、長く持続しやすいため、好ましい。(a1)成分の融点が上限値以下であると、ハンドリング性が良く、配合しやすい。
【0015】
本発明において「融点」は、常圧のもとでの融点をいう。融点は、油化学辞典−脂質・界面活性剤−(丸善)に記載されている値、又は、示差走査熱量測定(DSC)法により測定される値を示す。
DSC法により測定する場合、示差走査熱量計(製品名:DSC120、セイコーインスツル(SII)社製)を用い、試料を測定用セルに入れ、20℃から90℃まで、2℃/分の昇温速度で加温し、吸熱ピークから融け始めの温度を読み取ることで融点とする。ただし、試料が複数の油性成分からなる混合物の場合など、融け始めの温度が明確でないときにはピークトップの温度を融点とする。複数のピークが現れる場合、ピーク面積(転移エンタルピー)が最も大きなピークのピークトップの温度を融点とする。対照にはアルミナを用いる。
【0016】
融点が30℃以上の油性成分(a1)としては、高級アルコール、高級脂肪酸、脂肪酸グリセリンエステル等が挙げられる。
高級アルコールは、炭素数の下限値が好ましくは14以上、より好ましくは16以上であり、さらに好ましくは18以上であり、炭素数の上限値が好ましくは24以下であり、そのなかでも鎖式アルコールが特に好ましい。具体的には、1−テトラデカノール、1−ヘキサデカノール、1−オクタデカノール、1−イコサノール、1−ドコサノール等が挙げられ、なかでも1−テトラデカノール、1−オクタデカノール、1−イコサノール、1−ドコサノールが好ましく、1−オクタデカノール、1−イコサノール、1−ドコサノールがより好ましい。
高級脂肪酸は、炭素数の下限値が好ましくは12以上、より好ましくは14以上、さらに好ましくは16以上であり、炭素数の上限値が好ましくは24以下、より好ましくは22以下であり、そのなかでも鎖状飽和モノカルボン酸が特に好ましい。具体的には、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、イコサン酸、ドコサン酸などが挙げられ、なかでもオクタデカン酸、イコサン酸、ドコサン酸が好ましい。
脂肪酸グリセリンエステルは、炭素数16以上の飽和脂肪酸とグリセリンとのモノ、ジ又はトリエステルが好ましい。具体的には、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノパルミテート等が挙げられ、なかでもグリセリンモノステアレートが好ましい。
【0017】
(a1)成分は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
なかでも、(a1)成分としては、水温が高くなる夏場においても乳化物粒子の吸着を高めるという観点から、融点が40℃以上の高級アルコール、及び融点が40℃以上の高級脂肪酸から選択される一種以上であることが好ましく、融点が50℃以上の高級アルコール、及び融点が50℃以上の高級脂肪酸から選択される一種以上であることがより好ましい。
また、(a1)成分としては、高温条件での保存安定性を考慮し、融点が高いものを選ぶという観点から、炭素数16〜24の高級アルコール、及び炭素数16〜24の高級脂肪酸から選択される一種以上であることが好ましい。
【0018】
二種以上の(a1)成分を用いる場合、(a1)成分としては、高級アルコール、高級脂肪酸及び脂肪酸グリセリンエステルから選択される二種以上を用いることが好ましく;高級アルコール、高級脂肪酸及び脂肪酸グリセリンエステルから選択される二種又は三種の混合物を用いることがより好ましく、高級アルコールと高級脂肪酸との混合物を用いることが特に好ましい。
【0019】
(a1)成分として高級アルコールと高級脂肪酸との混合物を用いる場合、1−オクタデカノール及び1−ドコサノールから選択される高級アルコールと、オクタデカン酸及びドコサン酸から選択される高級脂肪酸との混合物を用いることが好ましい。
高級アルコールと高級脂肪酸との混合比率は、質量比で、高級アルコール:高級脂肪酸=30:1〜1:1であることが好ましく、15:1〜2:1であることがより好ましく、13:1〜3:1であることがさらに好ましい。
高級アルコールと高級脂肪酸との混合比率がこの範囲にあると、(a2)成分の吸着性が向上する。該混合比率において、特に高級脂肪酸の比率が高くなると、(A)成分のハンドリング性が悪くなるため、好ましくない。
【0020】
乳化物(A)中、(a1)成分の含有割合は、5〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
(a1)成分の含有割合が下限値以上であると、繊維製品への(a2)成分の吸着性が向上する。一方、(a1)成分の含有割合が上限値以下であると、(A)成分の粘度が高くなりすぎず、ハンドリング性が向上する。
【0021】
(機能性成分(a2))
本発明の繊維処理剤において、機能性成分(a2)は、忌避剤、冷温感刺激剤、皮膚保護成分、紫外線吸収剤、抗菌剤からなる群から選択される一種以上である。ただし、該機能性成分(a2)は、前記の融点が30℃以上の油性成分(a1)を除くものである。
【0022】
・忌避剤
本発明において「忌避剤」は、蚊、ブヨ、アブ、刺しバエ、ダニ、蛾、アリ等の昆虫に対して忌避効果を有する成分である。
忌避剤としては、ジエチルトルアミド、パラメンタン−3,8−ジオール、アニスオイル、シンナミックアセテート、ネリルプロピオネート、メチルアンスラニレート、シトロネラ、蟻酸ネリル、環状テルペンアルコール、ヒノキ油、ベバー油、ブロモアンファー、ローレル油、ユーカリプタス油などが挙げられる。
なかでも、特に蚊の忌避効果、その効果の持続性及び安全性がより良好であることから、パラメンタン−3,8−ジオール、ジエチルトルアミド、ローレル油がより好ましく、パラメンタン−3,8−ジオール、ジエチルトルアミドがさらに好ましい。
【0023】
・冷温感刺激剤
本発明において「冷温感刺激剤」は、繊維に付着してその付着部の温度が低下したり上昇したり変化するのではなく、繊維製品を着用して皮膚にこの薬剤が接触した際に冷たさ又は温かさを感じる成分である。
冷温感刺激剤としては、ノニル酸ワニリルアミド、ニコチン酸ベンジル、バニリルブチルエーテル、バニリルプロピルエーテル、バニリルペンチルエーテル、トウガラシエキス、メントール、メントール誘導体、カンフルなどが挙げられる。
なかでも、冷温感刺激剤の発揮する効果の持続性がより良好であることから、バニリルブチルエーテル、メントール誘導体がより好ましい。
メントール誘導体としては、l−メンチルグリセリルエーテル、メントキシプロペンジオール等が挙げられる。
【0024】
・皮膚保護成分
本発明において「皮膚保護成分」は、繊維製品を着用して皮膚にこの薬剤が接触して皮膚の保湿効果が高まる成分である。
皮膚保護成分としては、液体状パラフィン、ワセリン、モンタンロウ、スクアラン、スクアレン、オリーブ油、アボガド油、月見草油、ホホバ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ハッカ油、ヒマワリ油、ナタネ油、ゴマ油、小麦胚芽油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、大豆油、ホホバ油、セラミド、擬似セラミド類などが挙げられる。
【0025】
・紫外線吸収剤
本発明において「紫外線吸収剤」は、紫外線を防御する効果のある薬剤であり、紫外線を吸収し、赤外線や可視光線等に変換して放出する成分である。
紫外線吸収剤としては、p−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸エチル、p−アミノ安息香酸グリセリル、p−ジメチルアミノ安息香酸アミル等のアミノ安息香酸誘導体;サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸ジプロピレングリコール、サリチル酸オクチル、サリチル酸ミリスチル等のサリチル酸誘導体;ジイソプロピルケイ皮酸メチル、p−メトキシケイ皮酸エチル、p−メトキシケイ皮酸イソプロピル、p−メトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、p−メトキシケイ皮酸ブチル等のケイ皮酸誘導体;2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2、2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル等のアゾール系化合物;4−t−ブチル−4'−メトキシベンゾイルメタン等が挙げられる。
【0026】
・抗菌剤
本発明において「抗菌剤」は、繊維上での菌の増殖を抑え、さらには微生物の分解物由来の嫌なにおいの発生を抑える効果を有する成分である。
抗菌剤としては、ダイクロサン、トリクロサン、ビス−(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛、ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩、8−オキシキノリン、ポリリジン等が挙げられる。
【0027】
(a2)成分は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
なかでも、(a2)成分としては、ジエチルトルアミド、パラメンタン−3,8−ジオール、アニスオイル、シンナミックアセテート、ネリルプロピオネート、メチルアンスラニレート、シトロネラ、蟻酸ネリル、環状テルペンアルコール、ヒノキ油、ベバー油、ブロモアンファー、ローレル油、ユーカリプタス油からなる群から選択される一種以上の忌避剤を含むことが好ましい。
また、(a2)成分としては、ノニル酸ワニリルアミド、ニコチン酸ベンジル、バニリルブチルエーテル、バニリルプロピルエーテル、バニリルペンチルエーテル、トウガラシエキス、メントール、メントール誘導体、カンフルからなる群から選択される一種以上の冷温感刺激剤を含むことが好ましい。
【0028】
乳化物(A)中、(a2)成分の含有割合は、3〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
(a2)成分の含有割合が下限値以上であると、(a2)成分が発揮する効果がより得られやすくなる。一方、(a2)成分の含有割合が上限値以下であれば、(a2)成分が発揮する効果が持続しやすくなる。また、繊維処理剤の高温条件での経時安定性が向上する。
【0029】
乳化物(A)中、(a1)成分と(a2)成分(二種以上含む場合はその全部)との混合比率は、質量比で、(a1)成分:(a2)成分=1:3〜3:1の範囲であることが好ましく、1:2〜2:1の範囲であることがより好ましい。(a1)成分と(a2)成分との混合比率がこの範囲にあると、繊維製品への(a2)成分の吸着性が向上する。
【0030】
(水)
乳化物(A)中の水の含有割合は、40〜95質量%が好ましく、50〜90質量%がより好ましい。
水の含有割合が下限値以上であれば、ハンドリング性が良好となり、一方、水の含有割合が上限値以下であれば、粘度が低くなりすぎず、配合時に撹拌しやすい。
【0031】
乳化物(A)には、上記の(a1)成分、(a2)成分及び水以外に、必要に応じてその他の成分を含有してもよい。
本発明の繊維処理剤においては、その他の成分として、水溶性溶剤、乳化剤を含有することが好ましく、水溶性溶剤と乳化剤とを併用することが特に好ましい。水溶性溶剤と乳化剤とを併用することにより、乳化物(A)における乳化物粒子の平均粒子径が前記の好適な範囲により安定に保たれ、繊維製品への(a2)成分の吸着性がさらに向上する。
【0032】
・・水溶性溶剤
水溶性溶剤としては、エタノール、イソプロパノールなどの炭素数2〜3の1級アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの炭素数2〜6のグリコール;グリセリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどの炭素数3〜8の多価アルコール等が挙げられる。
なかでも、香気や価格の点から、炭素数2〜3の1級アルコール、多価アルコールが好ましく、そのなかでもエタノール、グリセリンが特に好ましい。
水溶性溶剤は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
乳化物(A)中、水溶性溶剤の含有割合は、30質量%以下が好ましく、2〜20質量%がより好ましい。水溶性溶剤の含有割合がこの範囲にあると、繊維製品への(a2)成分の吸着性がより高まり、(a2)成分が発揮する効果の持続性が向上する。
【0033】
・・乳化剤
乳化剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤などが挙げられる。なかでも、乳化性能に優れ、安価であることから、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤が好ましい。
【0034】
カチオン界面活性剤としては、分子中にエステル基もしくはアミド基で分断されていてもよい炭素数8〜12のアルキル基又はアルケニル基を2つ有する2鎖型のカチオン界面活性剤、分子中にエステル基もしくはアミド基で分断されていてもよい炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基を1つ有する1鎖型のカチオン界面活性剤、エチレンオキシドの平均付加モル数が5〜100モルであるポリオキシエチレンアルキルメチルアンモニウム塩、分子中にエステル基もしくはアミド基で分断されていてもよい炭素数14〜20のアルキル基又はアルケニル基を2つ有する2鎖型のカチオン界面活性剤等が挙げられる。具体的には、N,N−ジステアロイルオキシエチル−N−メチル,N−ヒドロキシエチルアンモニウムメチルサルフェート、N,N−ジオレオイルオキシエチル−N−メチル,N−ヒドロキシエチルアンモニウムメチルサルフェート、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、又はこれらの混合物が好適なものとして挙げられる。
ここで「分子中にエステル基もしくはアミド基で分断されていてもよいアルキル基又はアルケニル基」とは、炭素鎖の途中(隣り合う炭素原子と炭素原子との間)に、エステル基及びアミド基の一種以上を有していてもよいアルキル基又はアルケニル基を意味する。
【0035】
ノニオン界面活性剤としては、炭素数10〜22のアルキル基又はアルケニル基を有し、エチレンオキシドの平均付加モル数が10〜100モルであるポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルキル(該アルキルの炭素数1〜3)エステル;エチレンオキシドの平均付加モル数が10〜100モルであるポリオキシエチレンアルキルアミン、炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキルポリグルコシド、エチレンオキシドの平均付加モル数が10〜100モルである硬化ヒマシ油などが挙げられる。中でも、炭素数10〜14のアルキル基を有し、エチレンオキシドの平均付加モル数が30〜70モルのポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。
【0036】
乳化剤は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
乳化物(A)中、乳化剤の含有割合は、30質量%以下が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。
乳化剤の含有割合がこの範囲にあると、乳化物(A)における乳化物粒子の平均粒子径を、上述した好適な範囲に容易に制御することができる。そして、繊維製品への(a2)成分の吸着性が向上する。
なお、この乳化剤としてカチオン界面活性剤を用いる場合、後述するカチオン性化合物(B)と同じものを用いてもよい。
【0037】
また、本発明の繊維処理剤においては、その他の成分として、酸化防止剤、防腐剤、消泡剤、pH調整剤等の添加剤を含有してもよい。
【0038】
繊維処理剤中、乳化物(A)の含有割合は、0.01〜20質量%が好ましく、0.02〜15質量%がより好ましい。
(A)成分の含有割合が下限値以上であると、該繊維処理剤中の乳化物(A)の含有割合が増えるため、繊維への吸着性が増して(a2)成分が発揮する効果の持続性が高くなる。一方、(A)成分の含有割合が上限値以下であれば、(B)成分による乳化物粒子の吸着が阻害されにくくなる。
【0039】
繊維処理剤中、前記(a1)成分の含有割合は、0.1〜5質量%が好ましく、0.4〜5質量%がより好ましい。
(a1)成分の含有割合がこの範囲にあると、(A)成分における乳化物粒子の繊維製品への吸着性が向上する。また、該乳化物粒子の繊維処理剤中での分散安定性が良好に保たれやすい。
【0040】
繊維処理剤中、前記(a2)成分の含有割合は、0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。
(a2)成分の含有割合が下限値以上であると、繊維製品への(a2)成分の吸着性が高まり、(a2)成分が発揮する効果が得られやすい。一方、(a2)成分の含有割合が上限値以下であれば、繊維処理剤が変色を起こしにくい。
【0041】
乳化物(A)が水溶性溶剤又は乳化剤を含有する場合、
繊維処理剤中、水溶性溶剤の含有割合は、5質量%以下が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましく、0.1〜3質量%がさらに好ましい。水溶性溶剤の含有割合がこの範囲にあると、繊維製品への(a2)成分の吸着性が高まり、(a2)成分が発揮する効果の持続性が向上する。
繊維処理剤中、乳化剤の含有割合は、0.5質量%以下が好ましく、0.01〜0.5質量%がより好ましく、0.05〜0.3質量%がさらに好ましい。乳化剤の含有割合がこの範囲にあると、繊維製品への(a2)成分の吸着性が向上する。
【0042】
[カチオン性化合物(B)]
本発明の繊維処理剤においては、前記乳化物(A)を、カチオン性化合物(B)(以下「(B)成分」ともいう。)と共に含有することにより、(A)成分における乳化物粒子が繊維製品の表面に効率的に吸着でき、該乳化物粒子の吸着性が向上する。
カチオン性化合物(B)は、水溶性のものでもよく、水不溶性のものでもよく、これらの混合物を用いてもよい。
ここで「水溶性」とは、25℃の水100gに1g以上が溶解することをいう。
「水不溶性」とは、25℃の水100gへの溶解度が1g未満であることをいう。
【0043】
(水溶性のカチオン性化合物)
水溶性のカチオン性化合物のなかで好適なものとしては、下記の一般式(I)もしくは一般式(II)で表される3級アミン化合物の中和物又は4級化物、水溶性のカチオン性高分子化合物が挙げられる。
【0044】
【化1】

[式(I)中、Rはエステル基、エーテル基又はアミド基で分断されていてもよい炭素数12〜20の炭化水素基を表す。複数のRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基を表す。式(II)中、複数のRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれエステル基、エーテル基又はアミド基で分断されていてもよい炭素数8〜12の炭化水素基を表す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基を表す。]
【0045】
・一般式(I)もしくは一般式(II)で表される3級アミン化合物の中和物又は4級化物
本発明において「エステル基、エーテル基又はアミド基で分断されていてもよい炭化水素基」とは、炭素鎖の途中(隣り合う炭素原子と炭素原子との間)に、エステル基、エーテル基及びアミド基の一種以上を有していてもよい炭化水素基を意味する。
前記式(I)中、Rの炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基又はアルケニル基が挙げられる。Rの炭素数は、14〜20が好ましく、14〜18がより好ましい。なかでも、Rの炭化水素基としては、繊維に吸着して柔軟性がより高まることから、炭素数14〜20の炭化水素基が好ましく、炭素数14〜20の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、炭素数14〜18の直鎖状のアルキル基がさらに好ましい。
前記式(I)中、Rとしては、メチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基が好ましく、メチル基、ヒドロキシエチル基がより好ましい。
【0046】
前記式(II)中、Rの炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基又はアルケニル基が挙げられる。Rの炭素数は、10〜12が好ましい。なかでも、Rの炭化水素基としては、高温保存時の分散安定性の観点から、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基又はアルケニル基が好ましい。Rとして具体的には、デシル基、ドデシル基、デシロイルオキシエチル基が好ましい。
前記式(II)中、Rとしては、メチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基が好ましく、メチル基、ヒドロキシエチル基がより好ましい。
【0047】
前記の一般式(I)又は一般式(II)で表される3級アミン化合物の中和物を形成する酸としては、塩酸、硫酸、メチル硫酸等が挙げられる。該中和物としては、前記式(I)又は前記式(II)で表される3級アミン化合物を予め中和したものを使用してもよく、これらの酸(塩酸、硫酸、メチル硫酸等)のいずれかを含有する水溶液中に、該3級アミン化合物の液状物又は固体状物を投入して得られたものを使用してもよく、該3級アミン化合物とこれらの酸のいずれかとを同時に水に投入して得られたものを使用してもよい。
該3級アミン化合物の4級化物を形成する4級化剤としては、塩化メチル、ジメチル硫酸等が挙げられる。
【0048】
前記の一般式(I)もしくは一般式(II)で表される3級アミン化合物の中和物又は4級化物としては、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロライド、ステアロイルオキシエチル−N,N−ジヒドロキシエチル−N−メチルアンモニウムメチルサルフェート、N,N−ジデシロイルオキシエチル−N−ヒドロキシエチル−N−メチルアンモニウムメチルサルフェートが好ましい。
なかでも、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロライド、ステアロイルオキシエチル−N,N−ジヒドロキシエチル−N−メチルアンモニウムメチルサルフェートがより好ましい。
【0049】
・水溶性のカチオン性高分子化合物
水溶性のカチオン性高分子化合物としては、カチオン化度が0.1%以上であるものが好ましく、0.1〜35%であるものがより好ましい。特に、カチオン化度が2.5%以上であるものが好ましく、2.5〜20%であるものが最も好ましい。カチオン化度がこのような条件を満たすことにより、前記(A)成分における乳化物粒子を効率的に繊維製品へ吸着させることができる。
【0050】
ここで「カチオン化度」とは、水溶性のカチオン性高分子化合物がカチオン性モノマーの重合体、カチオン性モノマーとノニオン性モノマーとの共重合体、及びノニオン性重合体の一部をカチオン性基で変性又は置換したもの(カチオン化セルロースなど)の場合には下記式(1)により、また、水溶性のカチオン性高分子化合物がカチオン性モノマーとアニオン性モノマーとの共重合体、及びカチオン性モノマーとアニオン性モノマーとノニオン性モノマーとの共重合体の場合には下記式(2)により算出される値と定義する。
カチオン化度(%)=X×Y×100 ・・・式(1)
[X:高分子化合物のカチオン性基中のカチオン化された原子(窒素等)の原子量
Y:高分子化合物1g中に含まれるカチオン性基のモル数]
【0051】
カチオン化度(%)=X×(Y−Z)×100 ・・・式(2)
[X:高分子化合物のカチオン性基中のカチオン化された原子(窒素等)の原子量
Y:高分子化合物1g中に含まれるカチオン性基のモル数
Z:高分子化合物1g中に含まれるアニオン性基のモル数
(Zのアニオン性基とは、高分子鎖中のモノマー単位に含まれるカルボキシ基、スルホン酸基などが挙げられる。具体的には、アクリル酸中のカルボン酸などである。ただし、カチオン性基の対イオンは含まない。)]
【0052】
カチオン化度の算出例として、下記一般式(III)で表されるMERQUAT280(NALCO社製、質量比でm:n=80:20)の場合を以下に示す。
【0053】
【化2】

【0054】
X:14(窒素原子の原子量)
Y:4.95×10−3(カチオン性基の1g中の質量0.8gとカチオン性基の分子量より算出)
Z:2.78×10−3(アニオン性基の1g中の質量0.2gとアニオン性基の分子量より算出)
カチオン化度(%)=X×(Y−Z)×100
=14×(4.95×10−3−2.78×10−3)×100
≒3.0
前記式(2)により、カチオン化度は3.0(%)と算出される。
【0055】
なお、上述したカチオン化度の算出法によれば、ノニオン性モノマーの重合体、及びアニオン性モノマーの重合体のカチオン化度は0%となる。
【0056】
水溶性のカチオン性高分子化合物は、ポリエチレングリコールを標準物質としてゲルパーメーションクロマトグラフィ法で測定される重量平均分子量(Mw)が1000〜5000000であるものが好ましく、3000〜1000000であるものがより好ましく、5000〜500000であるものがさらに好ましい。
Mwが前記範囲であると、繊維処理剤の粘度の増加が抑制されて、使用性をより良好なものとすることが可能となる。
【0057】
水溶性のカチオン性高分子化合物の具体例としては、MERQUAT100(NALCO社製)、アデカカチオエースPD−50(旭電化工業(株))、ダイドールEC−004、ダイドールHEC、ダイドールEC(大同化成工業(株)製)等の塩化ジメチルジアリルアンモニウムの重合体;MERQUAT550 JL5(NALCO社製)等の塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、MERQUAT280(NALCO社製)等の塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体、レオガードKGP(ライオン(株)製)等のカチオン化セルロース、LUVIQUAT−FC905(B・A・S・F社製)等の塩化イミダゾリニウム・ビニルピロリドン共重体、LUGALVAN−G15000(B・A・S・F社製)等のポリエチレンイミン、ポバールCM318((株)クラレ製)等のカチオン化ポリビニルアルコール、キトサン等のアミノ基を有する天然系の高分子誘導体、ジエチルアミノメタクリレート・エチレンオキシド等が付加された親水基を有するビニルモノマーとの共重合体等が挙げられる。
なかでも、塩化ジメチルジアリルアンモニウムの重合体、カチオン化セルロースが特に好ましい。
【0058】
(水不溶性のカチオン性化合物)
水不溶性のカチオン性化合物のなかで好適なものとしては、下記の一般式(IV)で表される3級アミン化合物の中和物又は4級化物が挙げられる。
【0059】
【化3】

[式中、複数のRは、同一でも異なっていてもよく、エステル基、エーテル基又はアミド基で分断されていてもよい炭素数14〜20の炭化水素基を表す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基もしくは炭素数2〜4のヒドロキアルキル基、又はエステル基、エーテル基もしくはアミド基で分断されていてもよい炭素数14〜20の炭化水素基を表す。]
【0060】
前記式(IV)中、Rの炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基又はアルケニル基が挙げられる。Rの炭素数は、16〜20が好ましく、18〜20がより好ましい。なかでも、Rの炭化水素基としては、繊維に吸着して柔軟性がより高まることから、エステル基又はアミド基で分断されてもよい炭素数16〜20の炭化水素基が好ましく、エステル基もしくはアミド基で分断されてもよい炭素数18〜20の直鎖状のアルキル基又はアルケニル基がさらに好ましい。
前記式(IV)中、Rのアルキル基、ヒドロキアルキル基としては、メチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基が好ましく、メチル基、ヒドロキシエチル基がより好ましい。Rの炭化水素基は、前記Rの炭化水素基と同様である。
【0061】
前記の一般式(IV)で表される3級アミン化合物の中和物を形成する酸、該3級アミン化合物の4級化物を形成する4級化剤は、上記式(I)又は式(II)で表される3級アミン化合物における場合と同様のものが挙げられる。
【0062】
前記の一般式(IV)で表される3級アミン化合物の中和物又は4級化物としては、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジパルミチルジメチルアンモニウムクロライド、N,N−ジステアロイルオキシエチル−N−メチル,N−ヒドロキシエチルアンモニウムメチルサルフェート、N,N−ジオレオイルオキシエチル−N−メチル,N−ヒドロキシエチルアンモニウムメチルサルフェート等が挙げられる。
なかでも、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、N,N−ジステアロイルオキシエチル−N−メチル,N−ヒドロキシエチルアンモニウムメチルサルフェート、N,N−ジオレオイルオキシエチル−N−メチル,N−ヒドロキシエチルアンモニウムメチルサルフェートが特に好ましい。
【0063】
カチオン性化合物(B)は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
(B)成分としては、前記(A)成分における乳化物粒子の繊維製品への吸着性が特に良好であることから、前記式(I)で表される3級アミン化合物の中和物もしくは4級化物、前記式(IV)で表される3級アミン化合物の中和物もしくは4級化物、又はこれらの混合物が好ましい。なかでも、前記の式(I)又は式(IV)で表される3級アミンの4級化物、又はこれらの混合物がより好ましい。
【0064】
カチオン性化合物(B)として前記の式(I)もしくは式(II)で表される3級アミン化合物の中和物又は4級化物を用いる場合、繊維処理剤中、該(B)成分の含有割合は、1〜20質量%が好ましく、1.5〜16質量%がより好ましい。
該(B)成分の含有割合が下限値以上であると、前記(A)成分における乳化物粒子を、より効率的に繊維製品へ吸着させることができる。一方、(B)成分の含有割合が上限値以下であれば、該乳化物粒子を充分に繊維製品へ吸着させることができ、経済的にも抑えられる。
【0065】
カチオン性化合物(B)として水溶性のカチオン性高分子化合物を用いる場合、繊維処理剤中、該(B)成分の含有割合は、1〜10質量%が好ましく、1.2〜8質量%がより好ましい。
該(B)成分の含有割合が下限値以上であると、前記(A)成分における乳化物粒子の繊維製品への吸着性がより高まる。一方、(B)成分の含有割合が上限値以下であれば、繊維処理剤の粘度の増加が抑制されて、使用性をより良好なものとすることが可能となる。
【0066】
カチオン性化合物(B)として前記式(IV)で表される3級アミン化合物の中和物又は4級化物を用いる場合、繊維処理剤中、該(B)成分の含有割合は、1〜20質量%が好ましく、1.5〜16質量%がより好ましい。
該(B)成分の含有割合が下限値以上であると、前記(A)成分における乳化物粒子の繊維製品への吸着性がより高まる。また、良好な柔軟性を繊維製品に付与できる。一方、(B)成分の含有割合が上限値以下であれば、繊維処理剤の粘度の増加が抑制されて、使用性をより良好なものとすることが可能となる。
【0067】
繊維処理剤中、乳化物(A)とカチオン性化合物(B)との混合比率は、質量比で、乳化物(A):カチオン性化合物(B)=0.5:99.5〜70:30の範囲であることが好ましく、1:99〜50:50の範囲であることがより好ましい。
前記質量比の範囲より、(A)成分の混合比率が高くなりすぎると、(A)成分が(B)成分と共に繊維に吸着する効果が低減しやすい。一方、(B)成分の混合比率が高くなりすぎると、繊維に吸着する乳化物粒子の量が少なくなりやすい。
【0068】
[その他の成分]
本発明の繊維処理剤には、上記の乳化物(A)及びカチオン性化合物(B)以外に、必要に応じてその他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、繊維処理剤に通常含まれる成分、たとえば、該繊維処理剤の色調又は臭いが劣化することを抑制する目的で、酸化防止剤(ジブチルヒドロキシトルエン等)又はキレート剤(ヒドロキシエタンジホスホン酸など)を繊維処理剤中に0〜1質量%含有してもよい。
また、該繊維処理剤で処理した布や衣類等に抗菌性を付与したり、汗臭などの発生を抑制したりする目的で、抗菌剤(塩化ベンザルコニウム等)を繊維処理剤中に0〜3質量%含有してもよい。
また、該繊維処理剤の防腐性を高めるために、防腐剤(イソチアゾロン液、2−ニトロ−1,3−プロパンジオール等)を繊維処理剤中に0〜0.1質量%含有してもよい。
また、該繊維処理剤に好ましい色調を付与する目的で、酸性染料や直接染料などを繊維処理剤中に0〜0.1質量%含有してもよい。
また、該繊維処理剤の分散安定性を高める目的で、ノニオン界面活性剤(アルコールエトキシレートのアルキレンオキシド付加物、硬化ひまし油のアルキレンオキシド付加物など)を繊維処理剤中に0〜5質量%含有してもよい。なお、このノニオン界面活性剤は、(A)成分を調製する際、乳化剤として用いてもよいノニオン界面活性剤と同じものでもよく異なるものでもよい。
また、該繊維処理剤の安定性やハンドリング性を向上させる目的で、水溶性溶剤(エタノール、グリセリン等)を繊維処理剤中に0〜10質量%含有してもよい。なお、この水溶性溶剤は、(A)成分を調製する際に用いてもよい水溶性溶剤と同じものでもよく異なるものでもよい。
【0069】
さらに、該繊維処理剤で処理した布のすべり性を良くする目的で、シリコーン化合物を含有してもよい。このシリコーン化合物は、一般的に繊維製品の処理に使用されているシリコーン化合物が挙げられ、繊維製品に吸着した際に滑らかさが付与されるものであれば特に限定されない。
一般的に繊維製品の処理に使用されているシリコーン化合物としては、ジメチルシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、メチルフェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、フッ素変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、ポリグリセロール変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等が挙げられる。
該シリコーン化合物の分子構造は、直鎖状であってもよく、分岐又は架橋していてもよい。また、前記の変性シリコーン化合物は、1種類の有機官能基により変性されていてもよく、2種以上の有機官能基により変性されていてもよい。
【0070】
該シリコーン化合物は、その25℃における動粘度が10〜100000000mm/sであるものが好ましく、1000〜100000mm/sであるものがより好ましい。動粘度がこのような範囲にあると、配合のし易さ及び本発明の繊維処理剤で処理した布の滑り性の点で好ましい。
【0071】
シリコーン化合物は、オイルをそのまま使用することができ、また、任意の乳化剤によって分散された乳化物としても使用できる。
【0072】
シリコーン化合物は市販品を使用することができ、その具体例としては、たとえば以下に示すものが挙げられる。
ジメチルシリコーン:SH200C−1,000CS、SH200C−5,000CS、SH200C−30,000CS、SH200C−60,000CS、SH200C−100,000CS、SH200C−1,000,000CS(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)。
ポリエーテル変性シリコーンオイル:SH3772M、SH3775M、SH3749、FZ−2161、FZ−2203(以上、東レ・ダウ コーニング(株)製);KF6011、KF6012、KF6013、KF6016、KF6017(以上、信越化学工業(株)製);SILWET L−7001、TSF4450、TSF4452(以上、モメンティブパフォーマンスマテリアルズジャパン合同会社製)。
アミノ変性シリコーン:BY16−849、BY16−853C、BY16−872、BY16−892、BY16−879B(以上、東レ・ダウコーニング(株)製);TSF4706(モメンティブパフォーマンスマテリアルズジャパン合同会社製)。
アルキル変性シリコーン:SF8416、BY16−846、AMS−C30(以上、東レ・ダウコーニング(株)製);SILSOFT034(モメンティブパフォーマンスマテリアルズジャパン合同会社製)。
アミド・ポリエーテル変性シリコーン:BY16−878、BY16−891(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)。
【0073】
シリコーン化合物は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
繊維処理剤中、シリコーン化合物の含有割合は、0.05〜20質量%が好ましく、0.2〜10質量%がより好ましく、0.5〜5質量%がさらに好ましい。
シリコーン化合物の含有割合が下限値以上であると、処理した布のすべり性や滑らかさがより高まり、上限値以下であれば、繊維処理剤の粘度の増加が抑制されて、使用性をより良好なものとすることが可能となる。
【0074】
また、本発明の繊維処理剤は、該繊維処理剤の香りを良くするため、香料を含有してもよい。香料としては、繊維用仕上げ剤又は衣料用柔軟剤等に一般的に使用される香料成分、香料組成物が挙げられる。
繊維処理剤中、香料の含有割合は、0.001〜5質量%が好ましく、0.01〜4質量%がより好ましく、0.1〜3質量%がさらに好ましい。
香料の含有割合が下限値未満であると、繊維製品への残香性の付与が不充分であり、上限値を超えても、それ以上の残香性が得られず、経済的にも好ましくない。
【0075】
本発明の繊維処理剤は、25℃におけるpHが2〜7であることが好ましい。
該繊維処理剤のpHは、繊維処理剤を希釈せずに原液を25℃で静置し、pHメーターを使用して測定した値を示す。
本発明の繊維処理剤は、25℃における粘度が10〜1000mPa・sであることが好ましい。このような範囲にあると、ハンドリング性がより向上するため、好ましい。
【0076】
<繊維処理剤の製造方法>
本発明の繊維処理剤の製造方法は、前記本発明の繊維処理剤の製造方法であって、油性成分(a1)と機能性成分(a2)とを混合して混合物を得る工程(i)と、 該混合物と水とを乳化して乳化物(A)を得る工程(ii)と、該乳化物(A)とカチオン性化合物(B)とを混合する工程(iii)とを有する。
【0077】
[油性成分(a1)と機能性成分(a2)との混合物を得る工程(i)]
(a1)成分と(a2)成分との混合物は、たとえば以下のようにして調製することができる。
(a1)成分をその融点以上に加温して液状とする。次いで、液状とした(a1)成分に、液状の(a2)成分と、必要に応じて水溶性溶剤又は乳化剤等とを加えて液状の混合物を得る。あるいは、(a1)成分と、(a2)成分と、水溶性溶剤と、乳化剤とを、(a1)成分の融点以上に加温しながら混合して液状の混合物を得る。
特に、(a1)成分と、(a2)成分と、水溶性溶剤と、乳化剤とを、同時に、(a1)成分の融点以上に加温しながら混合して液状の混合物を得る方法が好ましい。かかる方法によれば、次の工程(ii)で、(a2)成分を内包した乳化物粒子が分散した乳化物(A)を容易に調製できる。(a2)成分を内包した乳化物粒子を配合することにより、繊維製品への(a2)成分の吸着性が向上する。加えて、かかる方法によれば、ラメラ構造又はベシクル構造を有する乳化物粒子が得られやすい。乳化物粒子がラメラ構造又はベシクル構造を有すると、乳化物粒子の繊維製品への吸着性がより高まり、これに伴って(a2)成分が発揮する効果の持続性に優れる。
ラメラ構造又はベシクル構造を有する乳化物粒子は、(a1)成分、水溶性溶剤又は乳化剤の種類とこれらの配合量、乳化時の撹拌条件などを制御することにより調製できる。
【0078】
[乳化物(A)を得る工程(ii)]
本工程(ii)において、撹拌には、パドル翼、プロペラ羽根等を備えた低剪断型の混合装置を用いることができる。
乳化物(A)は、たとえば以下のようにして調製することができる。
工程(i)で得られた液状の混合物を、(a1)成分の融点以上に予め加温したイオン交換水に撹拌しながら滴下する。
たとえばパドル翼を備えた低剪断型の混合装置を用いた場合、液状の混合物とイオン交換水とを撹拌する際の撹拌速度は、100〜2000rpmとすることが好ましく、
200〜1500rpmとすることがより好ましい。
該撹拌速度が下限値以上であると、液状の混合物とイオン交換水とがより良好に混ざり合い、乳化物粒子の微細化が図られ、乳化物粒子の分散性が向上する。撹拌速度を上限値超としても、乳化物粒子の分散性向上の効果が飽和する。
液状の混合物とイオン交換水との撹拌時間は、10秒〜10分間とすることが好ましく、30秒〜5分間とすることがより好ましい。該撹拌時間がこの範囲であれば、乳化物粒子の微細化が充分に図られ、乳化物粒子の分散性が向上する。
【0079】
その後、好ましくは30℃以下、より好ましくは15〜30℃まで撹拌を続けて冷却することにより乳化物(A)を調製することができる。
【0080】
[乳化物(A)とカチオン性化合物(B)とを混合する工程(iii)]
乳化物(A)とカチオン性化合物(B)とを混合する方法としては、乳化物(A)にカチオン性化合物(B)を加えてもよく、カチオン性化合物(B)に乳化物(A)を加えてもよい。
カチオン性化合物(B)は、固体状、溶液、分散液などの形態で配合することができる。
本工程(iii)の一例として、前記カチオン性化合物(B)と水とを乳化して乳化物(C)を得る操作、及び該乳化物(C)と前記乳化物(A)とを混合する操作を含む工程が好適に挙げられる。
【0081】
・乳化物(C)を得る操作
本操作において、撹拌には、ホモミキサー、ウルトラミキサー、フィルミックス、クレアミックス等の高剪断型の混合装置;パドル翼、プロペラ羽根等を備えた低剪断型の混合装置を用いることができる。
乳化物(C)は、たとえば以下のようにして得ることができる。
カチオン性化合物(B)と、必要に応じてノニオン界面活性剤などのその他の成分とを、(B)成分の融点以上の温度で加熱しながら混合することにより、溶融状態の油相を得る。次に、水溶性のその他の成分を任意に含む水相を用意し、(B)成分の融点以上の温度に予め加温した該水相と、前記油相とを、(B)成分の融点以上の温度で混合して乳化物(C)を得る。
その際、高剪断型の混合装置であるホモミキサー等を用い、加温した水相に、加温した油相を加えて混合することにより乳化物(C)を得る方法(前者)、又は、パドル翼、プロペラ羽根等を備えた低剪断型の混合装置を用い、加温した油相に、加温した水相を撹拌しながら徐々に加えて混合することにより乳化物(C)を得る方法(後者)、が好適な方法として挙げられる。
【0082】
これらのなかでも、微細で均一な粒子径を有する(B)成分の乳化物を容易に調製でき、分散安定性の良好な繊維処理剤が得られやすいことから、後者の方法が好ましく、液晶転相乳化法を用いることがより好ましい(特開平2−68137号公報、特開平10−237762号公報、特開2003−96674号公報参照)。
具体的には、水相を分割して加える。すなわち、前記油相と、(B)成分の融点以上の温度に予め加温した前記水相の一部(以下「第一水相」という)とを、(B)成分の融点以上の温度で混合して、高濃度の(B)成分を含む混合物(好ましくは液晶組成物)を得る。その後、該混合物に、(B)成分の融点以上の温度に予め加温した残りの水相(以下「第二水相」という)を加えて、(B)成分の融点以上の温度で混合(好ましくはO/W型エマルションへ転相)して乳化物(C)を得る。
【0083】
第一水相と第二水相との質量比は、第一水相:第二水相=10:90〜90:10とすることが好ましく、20:80〜50:50とすることがより好ましい。第一水相と第二水相との質量比が前記範囲であると、液晶が良好に形成され、転相によって分散安定性の高い乳化物が得られやすい。
【0084】
乳化物(C)を調製する際、(B)成分と共に、ノニオン界面活性剤を併用することが好ましい。すなわち、(B)成分とノニオン界面活性剤とを含む油相と、水相とを乳化することが好ましい。ノニオン界面活性剤のなかでも、アルコールエトキシレートのアルキレンオキシド付加物、硬化ひまし油のアルキレンオキシド付加物を併用することがより好ましく、アルコールエトキシレートのアルキレンオキシド付加物を併用することが特に好ましく、ポリオキシエチレンイソデシルエーテルを併用することが最も好ましい。
【0085】
乳化時の撹拌条件としては、たとえばプロペラ羽根を備えた低剪断型の混合装置を用いた場合、前記油相と前記水相(第一水相又は第二水相)とを撹拌する際の撹拌速度を、100〜2000rpmとすることが好ましく、200〜1500rpmとすることがより好ましい。
撹拌速度が下限値以上であると、前記油相と前記水相とが充分に混ざり合い、(B)成分の乳化物粒子の微細化が図られ、乳化物粒子の分散性が向上する。撹拌速度を上限値超としても、乳化物粒子の分散性向上の効果が飽和する。
前記油相と前記第一水相との撹拌時間は、1〜10分間とすることが好ましく、2〜5分間とすることがより好ましく、前記第二水相を加えた際の撹拌時間は、1〜10分間とすることが好ましく、2〜5分間とすることがより好ましい。
該撹拌時間がこの範囲であれば、(B)成分の乳化物粒子の微細化が充分に図られ、乳化物粒子の分散性が向上する。
【0086】
乳化物(C)における乳化物粒子の平均粒子径は、好ましくは10nm〜1μmであり、より好ましくは50nm〜800nmである。この範囲にあると、最終的に得られる繊維処理剤の分散安定性が向上する。
【0087】
・乳化物(C)と乳化物(A)とを混合する操作
本操作において、撹拌には、スタティックミキサー等の公知の混合装置を使用することができる。本工程においては、乳化物(C)中に乳化物(A)を、又は、乳化物(A)中に乳化物(C)を安定に分散するため、低剪断での撹拌とすることが好ましい。
乳化物(C)と乳化物(A)とを混合する際、乳化物(C)を、好ましくは30℃以下、より好ましくは0〜30℃まで冷却した後、乳化物(A)と乳化物(C)とを混合することが好ましい。これにより、乳化物(C)と乳化物(A)とをより安定に分散させることができ、(a2)成分が発揮する効果が持続しやすくなる。
乳化物(C)と乳化物(A)とを混合する際の撹拌速度は、10〜2000rpmとすることが好ましく、50〜1500rpmとすることがより好ましい。
撹拌速度が下限値以上であると、乳化物(C)と乳化物(A)とがより良好に混ざり合い、繊維処理剤の分散安定性が向上する。撹拌速度を上限値以下であれば、(A)成分及び(C)成分の乳化物粒子が壊れにくく、安定に保たれやすい。
乳化物(C)と乳化物(A)との撹拌時間は、0.5〜60分間とすることが好ましく、0.5〜30分間とすることがより好ましい。該撹拌時間がこの範囲であれば、乳化物(C)と乳化物(A)とがより良好に混ざり合い、繊維処理剤の分散安定性が向上する。
【0088】
本発明の繊維処理剤は、一例として、洗濯におけるすすぎの際、該繊維処理剤をすすぎ水に加えることにより使用することができる。また、該繊維処理剤を、トリガー容器、ディスペンサー容器又はエアゾール缶などに充填し、繊維製品に直接噴霧することで繊維を処理できる。
本発明の繊維処理剤は、繊維製品の原料が天然繊維でも合成繊維でも区別なく使用することができる。
【0089】
従来の繊維処理剤は、単に(a2)成分を繊維処理剤中に溶解する又は直接分散させているため、洗濯におけるすすぎの際、すすぎ液と共に排出されやすかった。また、(a1)成分と(a2)成分とが別個に配合された繊維処理剤、たとえば(a1)成分をその融点以上に加温して液状としたものと、(a2)成分とを、順次、(a1)成分の融点以上に予め加温したイオン交換水に撹拌しながら加えて得られる乳化物を含有する繊維処理剤では、繊維製品への(a2)成分の吸着性が充分とは云えなかった。
これに対して、本発明の繊維処理剤は、(a1)成分及び(a2)成分の混合物と水との乳化物(A)を含有することにより、洗濯後の繊維製品に(a2)成分が残存しやすい。
これは、乳化物(A)中の(a2)成分を含む乳化物粒子が、(a2)成分単独に比べて、すすぎ液側よりも繊維側との親和性が高いことにより繊維に吸着しやすいため、と考えられる。
加えて、本発明の繊維処理剤は、繊維への吸着性の高いカチオン性化合物(B)を含有する。(A)成分における乳化物粒子は、(a1)成分と(B)成分との間で相互作用が働き、(B)成分と共に繊維に吸着する。このため、(A)成分における乳化物粒子は、該乳化物粒子自体の繊維に対する吸着力に加えて、(B)成分との併用によっても繊維に吸着しやすくなっている、と考えられる。
以上により、本発明の繊維処理剤によれば、繊維製品への(a2)成分の吸着性が高く、柔軟性だけでなく、さらに種々の機能を繊維製品に付与することができる。
本発明の繊維処理剤は、繊維用仕上げ剤、衣料用柔軟剤、衣料用液体洗剤、ハリ付与剤、アイロン助剤、除シワ剤、布製品用消臭剤等に利用できる。
【0090】
上述した本発明の製造方法によれば、(a2)成分を含む乳化物粒子が分散した水中油滴(O/W)型エマルションを形成できる。好ましくは、(a1)成分及び(a2)成分の混合物と水とを乳化して調製される乳化物(A)と、カチオン性化合物(B)と水とを乳化して調製される乳化物(C)とを混合して得られる組成物(O/W型エマルション)からなる繊維処理剤が製造される。本発明により製造される繊維処理剤は、繊維製品への(a2)成分の吸着性が高く、柔軟性だけでなく、さらに種々の機能を繊維製品に付与することができる。
【実施例】
【0091】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。各実施例及び各比較例で用いた成分の配合量は、特に指定しない限り純分換算値である。
【0092】
(使用原料)
実施例及び比較例の繊維処理剤を製造するのに用いた成分を以下に示す。
・油性成分(a1)
a1−1:1−テトラデカノール(常圧における融点37.9℃)。
a1−2:グリセリンモノステアレート(常圧における融点59℃)。
a1−3:オクタデカン酸(常圧における融点69.6℃)。
a1−4:1−オクタデカノール(常圧における融点58℃)。
a1−5:1−ドコサノール(常圧における融点70.6℃)。
a1−6:1−ドデカノール(常圧における融点24℃)比較例用の成分。
なお、a1−1〜a1−6の融点は、油化学辞典−脂質・界面活性剤−(丸善)から引用した。
後述の乳化物A−13,A−14で使用した油性成分(a1−3とa1−5との混合物)の融点は、示差走査熱量計(製品名:DSC120、セイコーインスツル(SII)社製)を用いて測定した。該油性成分(a1−3とa1−5との混合物)を測定用セルに入れ、20℃から90℃まで、2℃/分の昇温速度で加温し、検出されたピークトップの温度を読み取ることで融点とした。対照にはアルミナを用いた。
かかる融点測定の際に得られた油性成分のDSCチャートを図1、2に示す。
図1は、質量比がa1−3:a1−5=1:12である、a1−3とa1−5との混合物についてのDSCチャートを示す。このピークトップの温度は66.5℃であった。
図2は、質量比がa1−3:a1−5=1:5である、a1−3とa1−5との混合物についてのDSCチャートを示す。このピークトップの温度は65.0℃であった。
【0093】
・機能性成分(a2)
a2−1:忌避剤、パラメンタン−3,8−ジオール(高砂香料工業株式会社製)。
a2−2:忌避剤、ジエチルトルアミド(純正化学株式会社製)。
a2−3:忌避剤、ローレル油(Biolandes社製)。
a2−4:冷温感刺激剤、バニリルブチルエーテル(商品名:HOT ACT VBE、高砂香料工業株式会社製)。
a2−5:冷温感刺激剤、l−メンチルグリセリルエーテル(商品名:CA−10、高砂香料工業株式会社製)。
【0094】
・カチオン性化合物(B)
B−1:カチオン界面活性剤(商品名:アーカードT−800、ライオン・アクゾ株式会社製)ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、前記式(I)におけるR=C1837,R=CHの3級アミンと4級化剤(塩化メチル)とが反応した4級化物;純分50質量%、エタノール50質量%。
B−2:カチオン界面活性剤(商品名:アーカード210、ライオン・アクゾ株式会社製)ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、前記式(II)におけるR=C1021,R=CHの3級アミンと4級化剤(塩化メチル)とが反応した4級化物。
B−3:カチオン界面活性剤、前記式(IV)におけるR=オレイン酸/ステアリン酸/パルミチン酸残基,R=ヒドロキシエチル基の3級アミンと4級化剤(ジメチル硫酸)とが反応した4級化物。特開2003−12471号公報の実施例4に記載された合成方法により得た化合物。
B−4:カチオン界面活性剤、前記式(IV)におけるR=オレイン酸/ステアリン酸残基,R=ヒドロキシエチル基の3級アミンと4級化剤(ジメチル硫酸)とが反応した4級化物。特開2002−167366号公報の実施例1に記載された合成方法により得た化合物。
B−5:カチオン界面活性剤。特開平5−230001号公報の実施例1において、ステアリン酸に代えて硬化牛脂脂肪酸を使用し、4級化しなかったこと以外は、同公報の実施例1と同様にして合成して得た化合物。具体的には、N−メチルエタノールアミンとアクリロニトリルとの付加物より、公知の方法〔J.Org.Chem.,26,3409,(1960)〕で合成した N−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチル−1,3−プロピレンジアミン66gと、硬化牛脂脂肪酸284gとを、撹拌機、温度計及び脱水管を備えた4つ口フラスコに仕込み、180℃まで昇温した。その温度で約10時間生成する水を留去しながら加熱した。得られた生成物300gをイソプロピルアルコール60gに溶解し、撹拌機、温度計及び圧力計を備えたオートクレーブに仕込み、メチルクロライド28gを圧入した。100℃で約8時間反応した後、減圧でイソプロピルアルコールを留去して、目的物である反応物(3級アミン)300gを得た。得られた反応物(3級アミン)の酸価、ケン化価、水酸基価、全アミン価、3級アミン価を測定し、該反応物の組成を調べた結果、ジアルキル体が86質量%、モノアルキルアミド体が10質量%、未反応脂肪酸が4質量%であった。また、ガスクロマトグラフィーによる分析から、未反応のN−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチル−1,3−プロピレンジアミンが該反応物中に0.1質量%含有されていた。最後に、未変性エタノール(日本エタノール株式会社製)53gを加え、固形分が85質量%のエタノール溶液を調製した。
【0095】
・カチオン性化合物(B)の比較成分
ノニオン−2:ノニオン界面活性剤(商品名:レオコールTDA−400−75、ライオン株式会社製)。
【0096】
・乳化物(A)を調製する際に用いたその他の成分
エタノール:95%合成エタノール、日本合成アルコール株式会社製。
塩化ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド:アーカードT−800(商品名)、ライオン・アクゾ株式会社製;純分50質量%、エタノール50質量%。
【0097】
・乳化物(C)を調製する際に用いたその他の成分
ノニオン−1:ポリオキシエチレンイソデシルエーテル(イソトリデシルアルコールにエチレンオキシドが平均60モル付加したもの)実験室合成品。イソトリデシルアルコール(商品名:ルテンゾールTO3、BASF社製)115gと、触媒として40質量%KOH 1.25gとを耐圧製反応容器に仕込み、常法により容器内を窒素置換した。次いで、100℃、2.7kPa以下で30分間脱水した後、温度を140℃まで昇温した。撹拌しながら0.25MPa以下でエチレンオキシド867.8gを付加反応させ、該付加反応の終了後、圧力が平衡になるまで熟成した。次に、温度60℃以下まで冷却し、精製水249gを配合した後、80質量%酢酸0.37gと、エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム(色調安定化のためのキレート剤)0.01gとを添加し、30分間混合することによりノニオン−1(ポリオキシエチレンイソデシルエーテル)を得た。
変性シリコーン:ポリエーテル変性シリコーン(商品名:SH3775、東レ・ダウコーニング株式会社製)。
香料:次に示す香料組成物。香料組成物の組成(香料成分名、含有量)アンブロキサン2質量%、イソイースーパー1質量%、ガンマウンデカラクトン1質量%、エチルバニリン(ジプロピレングリコールの1質量%溶液として)1質量%、オイゲノール0.4質量%、オレンジオイル1質量%、カシュメラン0.5質量%、ガラクソライド(ベンジルベンゾエートの50質量%溶液として)10質量%、クマリン2質量%、ゲラニオール1質量%、シトラール1質量%、シトロネロール1質量%、ジハイドロミルセノール2質量%、フルーティアクセント2質量%、アルデヒド ミックス(炭素数10と炭素数11と炭素数12のアルデヒド混合物のジプロピレングリコールの10質量%溶液として)5質量%、ジメチルベンジルカルビニルアセテート1質量%、ゼラニウムオイル1質量%、ターピネオール1質量%、フェニルエチルアルコール8質量%、ダマセノン(ジプロピレングリコールの1質量%溶液として)5質量%、1−デカナール(ジプロピレングリコールの10質量%溶液として)1質量%、テトラハイドロリナロール1質量%、トナライド7質量%、トリプラール(ジプロピレングリコールの1質量%溶液として)0.5質量%、ヘキシルシンナミックアルデヒド2質量%、ベータヨノン1質量%、ヘディオン2質量%、ベルトフィックス2質量%、ベンジルサリシレート2質量%、ベンジルベンゾエート4質量%、メチルイオノン1質量%、ライムオイル1質量%、リナリルアセテート0.5質量%、リナロール1質量%、リモネン1質量%、リラール2質量%、リリアール3質量%、レモンオイル1質量%、ローズ ベース3質量%、ジプロピレングリコール17.1質量%
【0098】
<繊維処理剤の製造−実施例1>
[工程(i)]
下記の表1に示す組成に従って、油性成分(a1)としてa1−1と、機能性成分(a2)としてa2−1と、エタノールと、塩化ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドとを、70℃に加温しながら混合して混合溶液を調製した。
【0099】
[工程(ii)]
次に、ガラス容器(内径9mm、高さ18mm)内で、該混合溶液と、60℃に加温したイオン交換水の残部とを混合(乳化)した。その際、パドル翼とスリーワンモーター(TYPE HEIDON 1200G)を用い、回転速度1000rpmの条件で1分間撹拌した。
次に、この乳化物をスターラーで60分間撹拌しながら、ゆっくりと常温(25℃)まで冷却し、全量で500gになるように再度、イオン交換水を用いてバランスすることにより乳化物(A)を調製した。
【0100】
[工程(iii)]
次いで、スリーワンモーター(新東科学株式会社製)とプロペラ羽根(長さ15mm、幅13mmの羽根を12枚有するもの)とを備えた撹拌機を用いて、以下のようにして乳化物(C)を調製した。
下記の表2に示す組成に従って、予め55℃に加温して溶融させたカチオン性化合物B−5及びノニオン−1(ポリオキシエチレンイソデシルエーテル)を、ガラス容器(内径100mm、高さ150mm)に取り、前記撹拌機を用い、回転速度1000rpmの条件で撹拌することにより油相を得た。
次に、該油相に、55℃に加温したイオン交換水(全量で600mLになる量)を2回に分けて添加し、撹拌することにより乳化物(C)を調製した。その際、イオン交換水は、1回目に所定配合量の30質量%分、2回目に残りの70質量%分を配合した。また、撹拌は、1回目のイオン交換水の添加後に3分間、2回目のイオン交換水の添加後に2分間、それぞれ回転速度1000rpmの条件で行った。
【0101】
次いで、得られた乳化物(C)を室温(25℃)まで冷却し、そこへ乳化物(A)を加え、スターラーで均一に分散するように、回転速度500rpmの条件で15分間撹拌し、全量で600mLになるように再度、イオン交換水を用いてバランスすることにより繊維処理剤を製造した。
【0102】
<繊維処理剤の製造−実施例2〜21>
表1〜3に示す組成に従って配合成分とその配合量を変更した以外は、実施例1と同様にして繊維処理剤を製造した。
ただし、実施例2〜21において、[工程(ii)]で配合するイオン交換水の残部は、各例で配合する油性成分(a1)の融点以上に加温した状態で用いた。
実施例20では、[工程(iii)]で、さらに香料を、カチオン性化合物(B)及びノニオン−1と共に加えた。
実施例21では、[工程(iii)]で、さらに香料と変性シリコーンを、カチオン性化合物(B)及びノニオン−1と共に加えた。
【0103】
<繊維処理剤の製造−比較例1〜6>
表1、4に示す組成に従って配合成分とその配合量を変更した以外は、実施例1と同様にして繊維処理剤を製造した。
ただし、比較例1において、[工程(ii)]で配合するイオン交換水の残部は、配合する油性成分(a1)の融点以上に加温した状態で用いた。
比較例2〜6では、油性成分(a1)を未配合とした以外は、実施例1と同様にして繊維処理剤を製造した。
【0104】
<繊維処理剤の製造−比較例7>
下記の表4に示す組成に従って、予め55℃に加温して溶融させたノニオン−2と、55℃に加温したイオン交換水(全量で600mLになる量)とを、ガラス容器(内径100mm、高さ150mm)に取り、前記撹拌機を用い、回転速度1000rpmの条件で3分間撹拌した。
次いで、室温(25℃)まで冷却し、そこへ乳化物(A)を加え、スターラーで均一に分散するように、回転速度500rpmの条件で15分間撹拌し、全量で600mLになるように再度、イオン交換水を用いてバランスすることにより繊維処理剤を製造した。
【0105】
表1は、本実施例で調製した各乳化物(A)の組成を示す。
表1中、各配合成分の配合量は、乳化物中の含有割合(質量%)を表す。「残部」は、乳化物(A)に含まれる各成分の総量が100質量%になるように配合した、乳化物(A)中のイオン交換水の含有量を意味する。
【0106】
【表1】

【0107】
表1に示す乳化物A−1〜A−19中に分散している乳化物粒子の体積平均粒子径を、株式会社堀場製作所製のLASER SCATTERING PARTICLE SIZE DISTRIBUTION ANALYZER(型番:LA−920)を用いて測定した。具体的には、この装置に120〜150mLのイオン交換水を注いだ後、撹拌した後の透過率が90±2%となるように乳化物(A)を加えて測定した。
その結果、乳化物A−1〜A−19中に分散している乳化物粒子の体積平均粒子径はいずれも10〜40μmであった。
【0108】
<繊維処理剤の評価>
[繊維製品への機能性成分の吸着性]
繊維製品への機能性成分の吸着性は、繊維処理剤で処理した評価布に対して、GC−MS装置にてヘッドスペース分析を行い、該評価布からの揮発量を求めることにより評価した。具体的には、以下のようにして行った。
評価布A:5Lのビーカーに、水道水4Lを入れたものを準備した。そこに、繊維処理剤の濃度が333ppmとなるように、実施例の繊維処理剤をそれぞれ添加して分散させた。その中に、市販の綿100%のタオルを入れ(浴比20倍)、3分間撹拌した。その後、該綿タオルを取り出し、二槽式洗濯機の脱水槽に入れて2分間脱水したものを評価布Aとして用いた。
評価布B:実施例の繊維処理剤の代わりに、比較例の繊維処理剤を用いた以外は、評価布Aの場合と同様に処理したものを評価布Bとして用いた。
前記の評価布Aと評価布Bについて下記のヘッドスペース分析を行い、揮発量の比(評価布Bの揮発量に対する、評価布Aの揮発量)を指標とし、下記の評価基準に従って評価を行った。
なお、前記揮発量の比は、同一の機能性成分(a2)を含有する繊維処理剤で処理した評価布間で算出した(比較例2と実施例1〜5、比較例2と実施例10〜21、比較例2と比較例1、比較例2と比較例7;比較例3と実施例6、比較例4と実施例7、比較例5と実施例8、比較例6と実施例9)。評価布の揮発量は、各例につき3回の測定の平均値を採用した。
評価基準
◎◎:評価布Bの揮発量に対して、評価布Aの揮発量が3倍以上であった。
◎:評価布Bの揮発量に対して、評価布Aの揮発量が2倍以上3倍未満であった。
○:評価布Bの揮発量に対して、評価布Aの揮発量が1.2倍より多く、2倍未満であった。
×:評価布Bの揮発量に対して、評価布Aの揮発量が1.2倍以下であった。
【0109】
ヘッドスペース分析の方法:
評価布を裁断したもの5gをそれぞれ100mLのバイヤル瓶に入れて密栓し、40℃の恒温槽内で30分間静置し、そのヘッドスペースを、スペルコ社製の固相マイクロ抽出SPME(ファイバー:StableflexTM/SS、50μm/30μm Divinylbenzen/CarboxenTM/Polydimethylsiloxane)で30分間抽出した。
抽出後のSPMEを、Agilent社製のGC−MS装置(HP7890 Series GC System+Mass Selective Detector)を用いて、以下に示す条件にて測定した。
カラム:HP−INNOWAX(30m×0.25mm×0.25μm)
測定温度:40(10分間ホールド)〜150℃、昇温速度5℃/min.
150〜260℃(5分間ホールド)、昇温速度10℃/min.
キャリアガス:ヘリウム、注入口温度250℃
注入法:パルスドスプリットレス
【0110】
[繊維製品を着用した際の冷温感効果]
繊維製品を着用した際の冷温感効果は、実施例及び比較例の繊維処理剤でそれぞれ処理した評価布を縫い合わせたシャツを実際に着用することにより評価した。具体的には、以下のようにして行った。
評価布C:5Lのビーカーに、水道水4Lを入れたものを準備した。そこに、繊維処理剤の濃度が1200ppmとなるように、実施例の繊維処理剤をそれぞれ添加して分散させた。その中に、半裁した市販の綿100%の肌シャツを入れ(浴比20倍)、3分間撹拌した。その後、該肌シャツを取り出し、二槽式洗濯機の脱水槽に入れて2分間脱水した。そして、この肌シャツを20℃、40%RH下で1晩乾燥させたものを評価布Cとして用いた。
評価布D:実施例の繊維処理剤の代わりに、比較例の繊維処理剤を用いた以外は、評価布Cの場合と同様に処理したものを評価布Dとして用いた。
1晩乾燥した後、評価布C(半裁した肌シャツ)と評価布D(半裁した肌シャツ)とを縫い合わせて1枚の肌シャツを作製した。そして、該肌シャツを20〜40代の男性10名がそれぞれ1日着用した後、評価布C側と評価布D側とで冷温感に相違があったか否かについて、下記の評価基準に従って評価を行った。その結果を、10名の評価点の平均点で示す。
評価基準
3点:評価布Cが、評価布Dに比べて、明らかに温かい又は冷たいと感じた。
2点:評価布Cが、評価布Dに比べて、やや温かい又は冷たいと感じた。
1点:評価布Cと評価布Dとは冷温感に差はないと感じた。
【0111】
表2〜4は、本実施例で製造した各例の繊維処理剤の組成と、前記の評価結果を示す。
表2〜4中、乳化物(A)の配合量は、繊維処理剤中の忌避剤又は冷温感刺激剤の含有割合(質量%)を表す。また、乳化物(A)以外の成分の配合量は、その成分の繊維処理剤中の含有割合(質量%)を表す。「残部」は、繊維処理剤に含まれる各成分の総量が100質量%になるように配合した、繊維処理剤中のイオン交換水の含有量を意味する。
【0112】
【表2】

【0113】
【表3】

【0114】
【表4】

【0115】
表2〜4に示す評価結果から、実施例1〜7、10〜21の繊維処理剤は、比較例1、7の繊維処理剤に比べて、繊維製品への機能性成分の吸着性が高いことが分かる。
また、実施例8、9の繊維処理剤で繊維製品を洗濯処理することにより、冷温感刺激剤が発揮する機能を繊維製品に付与できることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が30℃以上の油性成分(a1)、及び忌避剤、冷温感刺激剤、皮膚保護成分、紫外線吸収剤、抗菌剤からなる群から選択される一種以上の機能性成分(a2)の混合物と、水との乳化物(A)、並びに、カチオン性化合物(B)を含有する繊維処理剤。
【請求項2】
前記機能性成分(a2)は、ジエチルトルアミド、パラメンタン−3,8−ジオール、アニスオイル、シンナミックアセテート、ネリルプロピオネート、メチルアンスラニレート、シトロネラ、蟻酸ネリル、環状テルペンアルコール、ヒノキ油、ベバー油、ブロモアンファー、ローレル油、ユーカリプタス油からなる群から選択される一種以上の忌避剤を含む、請求項1記載の繊維処理剤。
【請求項3】
前記機能性成分(a2)は、ノニル酸ワニリルアミド、ニコチン酸ベンジル、バニリルブチルエーテル、バニリルプロピルエーテル、バニリルペンチルエーテル、トウガラシエキス、メントール、メントール誘導体、カンフルからなる群から選択される一種以上の冷温感刺激剤を含む、請求項1又は請求項2記載の繊維処理剤。
【請求項4】
前記油性成分(a1)は、融点が40℃以上の高級アルコール、及び融点が40℃以上の高級脂肪酸から選択される一種以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の繊維処理剤。
【請求項5】
前記油性成分(a1)は、炭素数16〜24の高級アルコール、及び炭素数16〜24の高級脂肪酸から選択される一種以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の繊維処理剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の繊維処理剤の製造方法であって、
前記油性成分(a1)と前記機能性成分(a2)とを混合して混合物を得る工程(i)と、
該混合物と水とを乳化して乳化物(A)を得る工程(ii)と、
該乳化物(A)と前記カチオン性化合物(B)とを混合する工程(iii)と
を有する繊維処理剤の製造方法。
【請求項7】
前記工程(iii)は、前記カチオン性化合物(B)と水とを乳化して乳化物(C)を得る操作、及び該乳化物(C)と前記乳化物(A)とを混合する操作を含む、請求項6記載の繊維処理剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−97377(P2012−97377A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246657(P2010−246657)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】