説明

繊維処理剤組成物、洗剤及び柔軟仕上げ剤、並びにこれらにより処理された繊維製品

【課題】優れた柔軟性、低黄変性を与え、同時にシワを低減させる繊維処理剤組成物、洗剤及び柔軟仕上げ剤、並びにこれらにより処理された繊維製品を提供する。
【解決手段】式(1)で示される25℃における粘度が100〜1,000,000mPa・sであるオルガノポリシロキサンを主成分とする繊維処理剤組成物。


[R1は1価炭化水素基、R2は式:−R4(NR5CH2CH2aNR67〔R4は2価炭化水素基、R5〜R7は水素原子、1価炭化水素基又はR8で、R8は式:−(CO−C510O)b−R9(R9は水素原子又は1価炭化水素基、bは1〜50)で、aは0〜4。但し、本オルガノポリシロキサンに存在するR5〜R7の1個以上はR8。〕の1価有機基、R3は水酸基、−OR10(R10は1価炭化水素基)、R1、又はR2で、mは10〜1,500、nは0〜100。但し、n=0の時、R3の一つ以上はR2。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類等の繊維製品に優れた柔軟性、低黄変性を与え、更にシワを低減させるための繊維処理剤組成物、洗剤及び柔軟仕上げ剤、並びにこれらにより処理された繊維製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維製品に柔軟性等を付与するための繊維処理剤として、ジメチルポリシロキサン、エポキシ基含有オルガノポリシロキサン、アミノ基含有オルガノポリシロキサンが使用されている。特に優れた柔軟性を付与することができるアミノ基含有オルガノポリシロキサンが最も多く用いられている。アミノ基として、特に、−C36NH2、−C36NHC24NH2などを有するオルガノポリシロキサンを主剤とする繊維処理剤が優れた柔軟性を示すため広く使用されている。また、最近では、液体洗剤用の柔軟剤としても使用されている。
【0003】
アミノ基として−C36NH2、−C36NHC24NH2などを有するオルガノポリシロキサンを用いて処理した繊維は、加熱処理、乾燥あるいは経日による熱や紫外線等によるアミノ基の劣化が起こり、特に白色系ないしは淡色系繊維又は繊維製品ではその色調が黄色に変化し、柔軟性も低下するという欠点を有している。
【0004】
上記の黄色化防止のため、特許文献1(特開昭57−101076号公報)では、アミノ基含有オルガノポリシロキサンと有機酸無水物もしくは塩化物との反応が、特許文献2(特開昭59−179884号公報)では、エポキシ化合物との反応が、特許文献3(特開平1−306683号公報)では、高級脂肪酸との反応が、特許文献4(特開平2−47371号公報)では、カーボネートとの反応が、アミノ基を変性させる方法としてそれぞれ開示されており、一部は実用化されている。更に、特許文献5(特開平8−053547号公報)では、シクロヘキシル基含有アミノ変性オルガノポリシロキサン、特許文献6、7(特開平7−216754号公報、特開平10−046473号公報)は、立体障害ピペリジル基含有オルガノポリシロキサンが、特許文献8(特開2001−89571号公報)では、アミン、ポリオール、アミド官能性オルガノポリシロキサンコポリマー等が開示されている。
【0005】
一方、最近では繊維製品、特に綿製品あるいはポリエステル・綿製品のシワを低減させる繊維処理剤の開発が活発に行われており、柔軟性と防シワ性の両方を付与する繊維処理剤含有液体洗剤等の開発が行われている。特許文献9(特表2002−531712号公報)では、シワ抑制剤として、滑剤、形状記憶ポリマー、リチウム塩、可塑剤からなる組成物が開示されている。特許文献10(特表2002−513097号公報)では、カチオン性界面活性剤を含む組成物が開示されている。特許文献11(特開2005−187987号公報)には、エステル基を含むカチオン活性剤とシリコーン化合物に1%以上の水溶性高分子を併用した組成物が開示されている。特許文献12(特開2004−512431号公報)には、水不溶性のポリマーナノ粒子を使用する方法が開示されている。更に、特許文献13(特表平10−508912号公報)には、有効量のシリコーンと皮膜形成を含む水溶性組成物をスプレー処理する方法が開示されている。また、特許文献14(特開平9−95866号公報)には、ポリラクトン含有架橋製熱可塑性樹脂を活性エネルギー線で照射する形状記憶布帛が開示されている。
【0006】
しかし、これらの方法では、シワを低減する効果が乏しく、優れた柔軟性、低黄変性を有する繊維処理剤を得ることはできなかった。
【0007】
【特許文献1】特開昭57−101076号公報
【特許文献2】特開昭59−179884号公報
【特許文献3】特開平1−306683号公報
【特許文献4】特開平2−47371号公報
【特許文献5】特開平8−053547号公報
【特許文献6】特開平7−216754号公報
【特許文献7】特開平10−046473号公報
【特許文献8】特開2001−89571号公報
【特許文献9】特表2002−531712号公報
【特許文献10】特表2002−513097号公報
【特許文献11】特開2005−187987号公報
【特許文献12】特開2004−512431号公報
【特許文献13】特表平10−508912号公報
【特許文献14】特開平9−95866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、衣類等の繊維製品に優れた柔軟性、低黄変性を与えながら、同時にシワを低減させるための繊維処理剤組成物、洗剤及び柔軟仕上げ剤、並びにこれらにより処理された繊維製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、以下に示す回転粘度計により測定される25℃における粘度(絶対粘度)が100〜1,000,000mPa・sである新規なポリカプロラクトン・アミノ基含有オルガノポリシロキサンを主成分とし、好ましくはこれを、界面活性剤を用いて水中に乳化分散させた繊維処理剤組成物を用いて、衣類等の繊維製品に処理した場合、優れた柔軟性、低黄変性を与えながら、同時にシワを低減させることができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記繊維処理剤組成物、洗剤及び柔軟仕上げ剤、並びにこれらにより処理された繊維製品を提供する。
〔請求項1〕
下記一般式(1)で示される25℃における粘度が100〜1,000,000mPa・sであるオルガノポリシロキサンを主成分とする繊維処理剤組成物。
【化1】

[式中、R1は非置換の炭素数1〜20の1価炭化水素基であり、R2は下記式(i)
−R4(NR5CH2CH2aNR67 (i)
〔式中、R4は炭素数1〜6の2価炭化水素基であり、R5、R6及びR7は水素原子、同一もしくは異種の炭素数1〜6の1価炭化水素基又はR8であり、R8は下記式(ii)
−(CO−C510O)b−R9 (ii)
(ここで、R9は水素原子又は炭素数1〜6の1価炭化水素基であり、bは1〜50の整数である。)
で示される基であり、aは0〜4の整数である。但し、本オルガノポリシロキサンに存在するR5、R6、R7のうち、いずれか1個以上はR8である。〕
で表される1価有機基であり、R3は水酸基、−OR10(R10は炭素数1〜6の1価炭化水素基)、R1、及びR2から選択される基であり、mは10〜1,500の整数、nは0〜100の整数である。但し、n=0の時、R3のうち少なくとも一つはR2である。]
〔請求項2〕
式(1)において、aが0又は1である請求項1記載の繊維処理剤組成物。
〔請求項3〕
式(1)において、R5、R6及びR7がすべてR8である請求項1又は2記載の繊維処理剤組成物。
〔請求項4〕
式(1)において、R3がメトキシ基、エトキシ基又は水酸基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維処理剤組成物。
〔請求項5〕
式(1)において、R9が水素原子である請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維処理剤組成物。
〔請求項6〕
乳化物である請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維処理剤組成物。
〔請求項7〕
繊維製品に防シワ性を付与することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の繊維処理剤組成物。
〔請求項8〕
請求項1〜5のいずれか1項に記載された式(1)で示されるオルガノポリシロキサンを含有することを特徴とする繊維製品用の洗剤。
〔請求項9〕
請求項1〜5のいずれか1項に記載された式(1)で示されるオルガノポリシロキサンを含有することを特徴とする繊維製品用の柔軟仕上げ剤。
〔請求項10〕
請求項1〜5のいずれか1項に記載された式(1)で示されるオルガノポリシロキサンで処理された繊維製品。
【発明の効果】
【0011】
本発明のオルガノポリシロキサンを主成分とする繊維処理剤組成物は、従来のアミノ基含有オルガノポリシロキサンを主成分とする繊維処理剤よりも、柔軟性が同等以上であり、黄変性も低く、更にシワを低減させるものであり、該オルガノポリシロキサンは、一般的な繊維処理剤、あるいは洗剤用、柔軟仕上げ剤用の添加剤等として幅広く使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の繊維処理剤組成物は、下記一般式(1)で示される25℃における粘度が100〜1,000,000mPa・sであるオルガノポリシロキサンを主成分とするものである。
【0013】
【化2】

[式中、R1は非置換の炭素数1〜20の1価炭化水素基であり、R2は下記式(i)
−R4(NR5CH2CH2aNR67 (i)
〔式中、R4は炭素数1〜6の2価炭化水素基であり、R5、R6及びR7は水素原子、同一もしくは異種の炭素数1〜6の1価炭化水素基又はR8であり、R8は下記式(ii)
−(CO−C510O)b−R9 (ii)
(ここで、R9は水素原子又は炭素数1〜6の1価炭化水素基であり、bは1〜50の整数である。)
で示される基であり、aは0〜4の整数である。但し、本オルガノポリシロキサンに存在するR5、R6、R7のうち、いずれか1個以上はR8である。〕
で表される1価有機基であり、R3は水酸基、−OR10(R10は炭素数1〜6の1価炭化水素基)、R1、及びR2から選択される基であり、mは10〜1,500の整数、nは0〜100の整数である。但し、n=0の時、R3のうち少なくとも一つはR2である。]
【0014】
上記一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサンにおいて、R1は非置換の炭素数1〜20の1価炭化水素基であり、R1の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、エイコシル基などのアルキル基、ビニル基、アリル基などのアルケニル基、フェニル基などのアリール基、シクロペンチル基、シクロへキシル基などのシクロアルキル基等を挙げることができる。これらの中でも、特にメチル基が好ましい。
【0015】
2は式(i):−R4(NR5CH2CH2aNR67で表される1価有機基である。ここで、式(i)中のR4は炭素数1〜6の2価炭化水素基であり、R4の具体例としては、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等であるが、中でもトリメチレン基が好ましい。
5、R6及びR7は水素原子、同一もしくは異種の炭素数1〜6の1価炭化水素基又はR8であり、R5、R6、R7の具体例としては、水素原子、あるいはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基などのアルキル基、ビニル基、アリル基などのアルケニル基、フェニル基などのアリール基、シクロペンチル基、シクロへキシル基などのシクロアルキル基、あるいは後述するR8であるが、中でも特に水素原子及びR8が好ましい。最も好ましいものはR8であり、分子中に存在するR5、R6、R7のうち1個以上、好ましくは2個以上、より好ましくはR5、R6、R7の全てがR8であることが必要である。
【0016】
8は、下記一般式(ii)で示される1価有機基である。
−(CO−C510O)b−R9 (ii)
ここで、R9は水素原子又は炭素数1〜6の1価炭化水素基であり、R9の具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基などのアルキル基等の炭素数1〜6の1価炭化水素基である。この中でも水素原子が好ましい。
また、式(i)中のaは0〜4の整数であり、特に0又は1であることが好ましい。式(ii)中のbは1〜50の整数であり、より好ましくは1〜10の整数である。
【0017】
3は水酸基、−OR10(R10は炭素数1〜6の1価炭化水素基)、R1、及びR2から選択される基であり、R3の具体例としては、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、プロボキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、上記R1あるいはR2であるが、より好ましいものはメトキシ基、エトキシ基、水酸基である。但し、n=0の時、R3の少なくとも一つはR2である。
また、mは10〜1,500の整数であり、特には50〜1,000の整数であることが好ましい。同様にnは0〜100の整数とされるが、特には0〜20の整数であることが好ましい。
【0018】
上記オルガノポリシロキサンの25℃における粘度については、100mPa・s未満では、柔軟性が十分ではなく、1,000,000mPa・sを超えると、乳化物を得ることが困難になるため、100〜1,000,000mPa・sの範囲のものとする必要がある。特に1,000〜500,000mPa・sの範囲とすることが好ましい。なお、本発明において、25℃における粘度は、100,000mPa・s未満の範囲ではBM型粘度計(株式会社東京計器)により測定した値であり、100,000mPa・s以上の範囲ではBH型粘度計(株式会社東京計器)により測定した値である。
【0019】
本発明の式(1)で示されるオルガノポリシロキサンは、従来公知のアミノ基含有オルガノポリシロキサンと、下記式(3)
【化3】

で表されるε−カプロラクトンを開環付加重合させることにより得ることができる。この開環付加重合は、トルエン、キシレン等の溶剤中で触媒を使用し、加熱撹拌することにより反応させることができる。
【0020】
アミノ基含有オルガノポリシロキサンとしては、従来から公知の−C36NH2、−C36NHC24NH2などを有するオルガノポリシロキサンが例示できる。
【0021】
一般的に開環付加重合するラクトン単量体として、具体的には、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン、β−プロピオラクトンが挙げられるが、アミノ基に対する反応性及び開環付加重合物の架橋後の結晶化度が高く、防シワ性に優れる点から、本発明においてはε−カプロラクトンを用いる。
【0022】
上記アミノ基含有オルガノポリシロキサンとε−カプロラクトンの反応割合は、ε−カプロラクトン/アミノ基(モル比)で1〜50であることが好ましく、より好ましくは1〜30である。
反応条件は、例えばトルエンを溶剤として使用する場合は、窒素置換下、110℃で4時間程度反応させることが好ましい。
【0023】
本発明の繊維処理剤組成物は、繊維製品に処理するために、上記オルガノポリシロキサンを、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ミネラルターペンなどの有機溶剤に溶解させたものとするか、あるいはノニオン系、アニオン系、カチオン系、両性系界面活性剤などを用いて乳化物とする。
【0024】
また、上記オルガノポリシロキサンを乳化させた繊維処理剤組成物(乳化物)とする場合、これらの界面活性剤としては特に限定はないが、例えば、非イオン性界面活性剤としては、エトキシ化高級アルコール、エトキシ化アルキルフェノール、多価アルコール脂肪酸エステル、エトキシ化多価アルコール脂肪酸エステル、エトキシ化脂肪酸、エトキシ化脂肪酸アミド、ソルビトール、ソルビタン脂肪酸エステル、エトキシ化ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられ、そのHLBは5〜20の範囲内にあることが好ましく、特に10〜16の範囲内であることが好ましい。また、アニオン性界面活性剤の例としては、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコールリン酸エステル塩、エトキシ化高級アルコール硫酸エステル塩、エトキシ化アルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、エトキシ化高級アルコールリン酸塩等が挙げられる。また、カチオン性界面活性剤の例としては、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルアミン塩酸塩、ココナットアミンアセテート、アルキルアミンアセテート、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、N−アシルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニオベタイン類、N−アシルアミドプロピル−N,N′−ジメチル−N′−β−ヒドロキシプロピルアンモニオベタイン類等が挙げられる。
【0025】
界面活性剤の使用量は、上記オルガノポリシロキサン100質量部に対し、5〜50質量部が好ましく、より好ましくは10〜30質量部である。また、乳化の際の水の使用量は、オルガノポリシロキサン純分濃度が10〜80質量%となるようにすれば良く、好ましくは20〜60質量%となるような量である。
【0026】
上記の乳化物は従来公知の方法で得ることができ、本発明におけるオルガノポリシロキサンと界面活性剤を混合し、これをホモミキサー、ホモジナイザー、コロイドミル、ラインミキサー、万能混合機、ウルトラミキサー、プラネタリーミキサー、コンビミックス、三本ロールミキサーなどの乳化機で乳化すればよい。
【0027】
本発明の繊維処理剤組成物には、本発明の範囲を大幅に逸脱しない範囲で、防腐剤、防錆剤等を添加することは任意である。
【0028】
本発明の繊維処理剤組成物を用いて各種繊維又は繊維製品を処理する際には、この組成物を所定の濃度に調製し、浸漬、スプレー、ロールコート等により繊維に付着させる。付着量は繊維の種類により異なり特に限定されないが、オルガノポリシロキサン付着量として0.01〜10質量%の範囲とするのが一般的である。次いで熱風吹き付け、加熱炉等で乾燥させればよい。繊維の種類によっても異なるが、乾燥は100〜150℃、2〜5分の範囲で行えばよい。
【0029】
また、本発明の繊維処理剤組成物で処理可能な繊維又は繊維製品についても特に限定はなく、綿、絹、麻、ウール、アンゴラ、モヘア等の天然繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル、スパンデックス等の合成繊維に対してもすべて有効である。また、その形態、形状にも制限はなく、ステープル、フィラメント、トウ、糸等のような原材料形状に限らず、織物、編み物、詰め綿、不織布等の多様な加工形態のものも、本発明の繊維処理剤組成物の処理可能な対象となる。
【0030】
また、本発明の上記式(1)で示されるオルガノポリシロキサンを、アニオン性界面活性剤を主成分とする液状の洗剤、あるいは粒状の洗剤に配合することにより、本発明の繊維処理剤組成物と同じ効果を有する洗剤を得ることもできる。
同様に、柔軟仕上げ剤に本発明の式(1)で示されるオルガノポリシロキサンを配合することもできる。
この場合、式(1)で示されるオルガノポリシロキサンの使用量は、洗剤あるいは柔軟仕上げ剤全体の0.5〜5.0質量%が好ましい。
【実施例】
【0031】
以下に、実施例、比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によってのみ限定されるものではない。なお、実施例中の粘度はすべて回転粘度計により測定される25℃における値であり、屈折率はJIS K 0062に準拠して測定した値であり、アミン当量は中和滴定法により測定した値である。
【0032】
[実施例1]
冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌装置を備えた容量1,000mlの四つ口セパラブルフラスコに、下記式(A)で示されるアミノ基含有オルガノポリシロキサン(粘度:1,800mPa・s,アミン当量3,800g/モル)400g、下記式(3)で示されるε−カプロラクトン(分子量:114)120g(アミノ基含有オルガノポリシロキサンの全NH基に対して5倍モル)、トルエン300g及びTi系触媒0.2gを仕込み、窒素ガスを導入した後に密閉して、110℃で5時間反応を行った。反応終了後、10mmHg減圧下、80℃で1時間、低沸点留分の除去を行い、外観が淡黄色透明、粘度が230,000mPa・s(25℃)、屈折率が1.421(25℃)、アミン当量が測定不可能(NH基が残っていない)なオイル状物(A−1)495gを得た。核磁気共鳴吸収法(1H−NMR)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、フーリエ赤外分光法(FT−IR)により、該オイル状物の構造を調べたところ、上記アミノ基含有オルガノポリシロキサンの全アミノ基にカプロラクトンが約5モル付加した、ポリカプロラクトン・アミノ基含有オルガノポリシロキサンであることを確認した。
【0033】
【化4】

【0034】
このオルガノポリシロキサン(A−1)350gに、ポリオキシエチレントリデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=10モル、HLB=13.6)105g及びポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸ナトリウム(エチレンオキサイド付加モル数=5モル)30%水溶液3.5gを加えて混合した後、脱イオン水50gを加えてホモミキサーにて高速で15分間高速撹拌することにより、転相、及び混練を行った。更にイオン交換水408.5gを加えてホモミキサーにて2,000rpmで15分間撹拌を行うことによって希釈を行い、半透明のエマルジョン(A−2)を得た。
【0035】
柔軟性、黄変性及び防シワ性の評価用試験液は、エマルジョン(A−2)15gにイオン交換水500gを加えた処理液に、評価布として、テトロン/綿混紡(65%/35%)ブロード布(幅×長さ=200mm×230mm、柔軟性、防シワ性評価用)及び蛍光染料処理した綿ブロード布(黄変性評価用)をそれぞれの試験液に2分間浸漬した後、絞り率100%の条件でロールを用いて絞り、100℃で2分間乾燥した後、更に150℃で2分間熱処理し、処理布を作製した。黄変性については、更に200℃で2分間熱処理を行うことにより処理布を作製した。防シワ性は、テトロン/綿混紡(65%/35%)ブロード布を100℃で2分間乾燥後、150℃で2分間熱処理した処理布をイオン交換水中で60回強く手もみをして、シワを生じさせ、洗濯機にて脱水後に、乾燥用固定枠にて、山型クリップ(幅:145mm、重さ:70g、クラウン製)を布の下部にぶら下げて、12時間風乾させた後のシワの状態を観察した。
【0036】
下記の基準により柔軟性、黄変性、防シワ性を評価した。結果を表1に示した。
〔評価方法〕
(柔軟性の評価)
二人のパネラーが手触で評価した。
◎ シルキーなぬめり感がある
○ ぬめり感がある
△ ぬめり感不良
× 不良
【0037】
(黄変性の評価)
測色色差計(ZE2000、日本電色工業株式会社製)を用いてb値を測定した。b値が小さいほど白色度が高く黄変性が低いことを示す。
【0038】
(防シワ性の評価)
二人のパネラーが目視にて評価した。
1 シワが残っていない
2 殆どシワは残っていない
3 僅かにシワが残っている
4 シワが残っている
【0039】
[実施例2]
冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌装置を備えた容量1,000mlの四つ口セパラブルフラスコに、下記式(B)で示されるアミノ基含有オルガノポリシロキサン(粘度:30,000mPa・s、アミン当量19,000g/モル)400g、式(3)で示されるε−カプロラクトン(分子量:114)23g(アミノ基含有オルガノポリシロキサンの全NH基に対して5倍モル)、トルエン300g及びTi系触媒0.2gを仕込み、窒素ガスを導入した後に密閉して、110℃で5時間反応を行った。反応終了後、10mmHg減圧下、80℃で1時間低沸点留分の除去を行い、殆ど無色透明、粘度が370,000mPa・s(25℃)、屈折率が1.407(25℃)、アミン当量が測定不可能なオイル状物(B−1)380gを得た。その後、核磁気共鳴吸収法(1H−NMR)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、フーリエ赤外分光法(FT−IR)により、該オイル状物の構造を調べたところ、下記アミノ基含有オルガノポリシロキサンの全アミノ基にカプロラクトンが約5モル付加した、ポリカプロラクトン・アミノ基含有オルガノポリシロキサンであることを確認した。
【0040】
【化5】

【0041】
このオルガノポリシロキサン(B−1)350gに、ポリオキシエチレントリデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=10モル、HLB=13.6)105g及びポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸ナトリウム(エチレンオキサイド付加モル数=5モル)30%水溶液3.5gを加えて混合した後、脱イオン水50gを加えてホモミキサーにて高速で15分間高速撹拌することにより、転相、及び混練を行った。更に脱イオン水408.5gを加えてホモミキサーにて2,000rpmで15分間撹拌を行うことによって希釈を行い、乳白色のエマルジョン(B−2)を得た。この(B−2)を用いて、実施例1と同様に処理液を調整し、処理布を作製し、特性を評価した。その結果を表1に示した。
【0042】
[実施例3]
冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌装置を備えた容量1,000mlの四つ口セパラブルフラスコに、下記式(C)で示されるアミノ基含有オルガノポリシロキサン(粘度:1,300mPa・s、アミン当量1,700g/モル)200g、式(3)で示されるε−カプロラクトン(分子量:114)100g(アミノ基含有オルガノポリシロキサンの全NH基に対して5倍モル)、トルエン300g及びTi系触媒0.2gを仕込み、窒素ガスを導入した後に密閉して、110℃で5時間反応を行った。反応終了後、10mmHg減圧下、80℃で1時間低沸点留分の除去を行い、淡黄色透明、粘度が55,000mPa・s(25℃)、屈折率が1.425(25℃)、アミン当量が5,400g/モルのオイル状物(C−1)280gを得た。核磁気共鳴吸収法(1H−NMR)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、フーリエ赤外分光法(FT−IR)により、該オイル状物の構造を調べたところ、上記アミノ基含有オルガノポリシロキサンのアミノ基にカプロラクトンが部分的に約5モルずつ付加したポリカプロラクトン・アミノ基含有オルガノポリシロキサンであることを確認した。
【0043】
【化6】

【0044】
この(C−1)を用いて実施例1と同様に乳化をして半透明のエマルジョン(C−2)を得た。この(C−2)を用いて、実施例1と同様に処理液を調整し、処理布を作製し、特性を評価した。その結果を表1に示した。
【0045】
[実施例4]
冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌装置を備えた容量1,000mlの四つ口セパラブルフラスコに、下記式(D)で示されるアミノ基含有オルガノポリシロキサン(粘度:25mPa・s、アミン当量800g/モル)200g、式(3)で示されるε−カプロラクトン(分子量:114)344g(アミノ基含有オルガノポリシロキサンの全NH基に対して4倍モル)、トルエン300g及びTi系触媒0.2gを仕込み、窒素ガスを導入した後に密閉して、110℃で5時間反応を行った。反応終了後、10mmHg減圧下、80℃で1時間低沸点留分の除去を行い、淡黄色透明、粘度が2,800mPa・s(25℃)、屈折率が1.439(25℃)、アミン当量が測定不可能なオイル状物(D−1)510gを得た。核磁気共鳴吸収法(1H−NMR)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、フーリエ赤外分光法(FT−IR)により、該オイル状物の構造を調べたところ、上記アミノ基含有オルガノポリシロキサンの全アミノ基にカプロラクトンが約4モル付加したポリカプロラクトン・アミノ基含有オルガノポリシロキサンであることを確認した。
【0046】
【化7】

【0047】
この(D−1)を用いて実施例1と同様に乳化をして半透明のエマルジョン(D−2)を得た。この(D−2)を用いて、実施例1と同様に処理液を調整し、処理布を作製し、特性を評価した。その結果を表1に示した。
【0048】
[比較例1]
実施例1におけるポリカプロラクトン・アミノ基含オルガノポリシロキサン(A−1)を、原料であるアミノ基含有オルガノポリシロキサン(A)として、実施例1と同様に乳化を行い、半透明のエマルジョンを得た。このものにつき実施例1と同様に処理液を調整し、処理布を作製し、特性を評価した。その結果を表1に示した。
【0049】
[比較例2]
実施例2におけるポリカプロラクトン・アミノ基含オルガノポリシロキサン(B−1)を、原料であるアミノ基含有オルガノポリシロキサン(B)として、実施例1と同様に乳化を行い、乳白色のエマルジョンを得た。このものにつき実施例1と同様に処理液を調整し、処理布を作製し、特性を評価した。その結果を表1に示した。
【0050】
[比較例3]
実施例3におけるポリカプロラクトン・アミノ基含オルガノポリシロキサン(C−1)を、原料であるアミノ基含有オルガノポリシロキサン(C)として、実施例1と同様に乳化を行い、乳白色のエマルジョンを得た。このものにつき実施例1と同様に処理液を調整し、処理布を作製し、特性を評価した。その結果を表1に示した。
【0051】
[比較例4]
冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌装置を備えた容量1,000mlの四つ口セパラブルフラスコに、下記式(A)で示されるアミノ基含有オルガノポリシロキサン(粘度:1,800mPa・s,アミン当量3,800g/モル)400g、下記式(4)で示されるγ−ブチロラクトン(分子量:86)90g(アミノ基含有オルガノポリシロキサンの全NH基に対して5倍モル)、トルエン300g及びTi系触媒0.2gを仕込み、窒素ガスを導入した後に密閉して、110℃で5時間反応を行った。反応終了後、10mmHg減圧下、80℃で1時間低沸点留分の除去を行い、白色半透明、粘度が22,000mPa・s、アミン当量が5,800g/モルのオイル状物(E)495gを得た。核磁気共鳴吸収法(1H−NMR)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、フーリエ赤外分光法(FT−IR)により、該オイル状物の構造を調べたところ、上記アミノ基含有オルガノポリシロキサンのアミノ基にブチロラクトンが部分的に約5モルずつ付加した、ポリブチロラクトン・アミノ基含有オルガノポリシロキサンであることを確認した。
【0052】
【化8】

【0053】
このオルガノポリシロキサン(E)350gに、ポリオキシエチレントリデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=10モル、HLB=13.6)105g及びポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸ナトリウム(エチレンオキサイド付加モル数=5モル)30%水溶液3.5gを加えて混合した後、脱イオン水50gを加えてホモミキサーにて高速で15分間高速撹拌することにより、転相、及び混練を行った。更に脱イオン水408.5gを加えてホモミキサーにて2,000rpmで15分間撹拌を行うことによって希釈を行い、半透明のエマルジョンを得た。このものにつき実施例1と同様に処理液を調整し、処理布を作製し、特性を評価した。その結果を表1に示した。
【0054】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される25℃における粘度が100〜1,000,000mPa・sであるオルガノポリシロキサンを主成分とする繊維処理剤組成物。
【化1】

[式中、R1は非置換の炭素数1〜20の1価炭化水素基であり、R2は下記式(i)
−R4(NR5CH2CH2aNR67 (i)
〔式中、R4は炭素数1〜6の2価炭化水素基であり、R5、R6及びR7は水素原子、同一もしくは異種の炭素数1〜6の1価炭化水素基又はR8であり、R8は下記式(ii)
−(CO−C510O)b−R9 (ii)
(ここで、R9は水素原子又は炭素数1〜6の1価炭化水素基であり、bは1〜50の整数である。)
で示される基であり、aは0〜4の整数である。但し、本オルガノポリシロキサンに存在するR5、R6、R7のうち、いずれか1個以上はR8である。〕
で表される1価有機基であり、R3は水酸基、−OR10(R10は炭素数1〜6の1価炭化水素基)、R1、及びR2から選択される基であり、mは10〜1,500の整数、nは0〜100の整数である。但し、n=0の時、R3のうち少なくとも一つはR2である。]
【請求項2】
式(1)において、aが0又は1である請求項1記載の繊維処理剤組成物。
【請求項3】
式(1)において、R5、R6及びR7がすべてR8である請求項1又は2記載の繊維処理剤組成物。
【請求項4】
式(1)において、R3がメトキシ基、エトキシ基又は水酸基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維処理剤組成物。
【請求項5】
式(1)において、R9が水素原子である請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維処理剤組成物。
【請求項6】
乳化物である請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維処理剤組成物。
【請求項7】
繊維製品に防シワ性を付与することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の繊維処理剤組成物。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載された式(1)で示されるオルガノポリシロキサンを含有することを特徴とする繊維製品用の洗剤。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載された式(1)で示されるオルガノポリシロキサンを含有することを特徴とする繊維製品用の柔軟仕上げ剤。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか1項に記載された式(1)で示されるオルガノポリシロキサンで処理された繊維製品。

【公開番号】特開2010−138527(P2010−138527A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317913(P2008−317913)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】