説明

繊維加工品積層体の開繊装置

【課題】従来よりも開繊の効率を向上させることができる繊維加工品積層体の開繊装置を提供する。
【解決手段】シート状の繊維加工品を複数重ね合わせてなる繊維加工品積層体LFを開繊する繊維加工品積層体の開繊装置1であって、軸線周りに回転する開繊シリンダ11と、開繊シリンダの外周面の近傍に設けられ、繊維加工品積層体を開繊シリンダの外周面に向けて搬送する一対のフィードローラ12と、フィードローラの開繊シリンダの回転方向側に並ぶように隣接して設けられるとともに、開繊シリンダの外周に沿って設けられる複数の押さえローラ131、132を有する押さえローラ群13と、を備え、押さえローラ群は、各押さえローラの外周面と、開繊シリンダの外周面と、の間隔が、フィードローラから離れる押さえローラほど小さくなるように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維加工品積層体の開繊装置に関する。更に詳しくは、従来よりも開繊の効率を向上させることができる繊維加工品積層体の開繊装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不織布、織物、編物等のシート状の繊維加工品やそれらを積層した繊維加工品積層体、または、それらの端材などを開繊処理して再利用することが知られている。開繊処理の方法としては、例えば、図4に示すように、外周面に刃が設けられて回転する主ローラ100(開繊シリンダ)と、このローラに近接して設けられ、開繊対象物Sを把持して開繊シリンダに送り出す一対の把持ローラ101(フィードローラ)と、を備える装置を用いることが知られている。このような装置では、開繊対象物Sをフィードローラにより送り出して開繊シリンダ側に供給して細かくほぐして開繊する。しかしこの際、開繊シリンダから開繊対象物Sが浮き上がってしまって十分に開繊されず、未開繊の塊が発生してしまうことがあった。
【0003】
このため、上記構成に加えて、開繊シリンダの外周に沿って、フィードローラの開繊シリンダの回転方向側に並ぶように複数の把持補助ローラを隣接させて配設して浮き上がりを防止することが知られている(例えば、特許文献1、2、3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭53−31822公報
【特許文献2】特開昭53−81731公報
【特許文献3】特開昭54−50627公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1〜3に示されるような方法であっても、開繊対象物が把持補助ローラと開繊シリンダとの間をすり抜けてしまい、開繊状態が不十分となってしまう場合があった。
【0006】
本発明は、以上の問題に鑑み、従来よりも開繊の効率を向上させることができる繊維加工品積層体の開繊装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、シート状の繊維加工品を複数重ね合わせてなる繊維加工品積層体を開繊する繊維加工品積層体の開繊装置であって、
軸線周りに回転する開繊シリンダと、
前記開繊シリンダの外周面の近傍に設けられ、前記繊維加工品積層体を前記開繊シリンダの外周面に向けて搬送する一対のフィードローラと、
前記フィードローラの前記開繊シリンダの回転方向側に並ぶように隣接して設けられるとともに、前記開繊シリンダの外周に沿って設けられる複数の押さえローラを有する押さえローラ群と、を備え、
前記押さえローラ群は、各前記押さえローラの外周面と、前記開繊シリンダの外周面と、の間隔が、前記フィードローラから離れる前記押さえローラほど小さくなるように設けられていることを要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記押さえローラの直径は、前記フィードローラの直径よりも小さく設定されていることを要旨とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記押さえローラの外周面には軸線方向に沿って溝が形成されていることを要旨とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3において、前記溝は、その断面形状が、前記溝の底壁から前記押さえローラの表面方向に向かうに連れて裾が広がるように拡開した形状となっていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の繊維加工品積層体の開繊装置によれば、シート状の繊維加工品を複数重ね合わせてなる開繊対象物としての繊維加工品積層体を開繊するにあたり、軸線周りに回転する開繊シリンダと、この開繊シリンダの外周面の近傍に設けられ、繊維加工品積層体を開繊シリンダの外周面に向けて搬送する一対のフィードローラと、フィードローラの開繊シリンダの回転方向側に並ぶように隣接して設けられるとともに、開繊シリンダの外周に沿って設けられる複数の押さえローラを有する押さえローラ群と、を備えている。このような構成により、繊維加工品積層体は、開繊シリンダの外周面から浮き上がってしまうことなく開繊シリンダ側に押さえ付けられるとともに、開繊シリンダに押さえ付けられている距離及び時間が十分に確保される。また、押さえローラ群は、各押さえローラの外周面と、開繊シリンダの外周面と、の間隔が、フィードローラから離れる押さえローラほど小さくなるように設けられている。これにより、繊維加工品積層体は、開繊されてその厚さが徐々に薄くなったとしても、複数の押さえローラによって順次好適に開繊シリンダに押さえ付けられる。その結果、従来よりも開繊の効率を向上させることができる。
また、前記押さえローラの直径が前記フィードローラの直径よりも小さく設定されている場合は、押さえローラをフィードローラにより近接させて配置することができる。これにより、押さえローラによる繊維加工品積層体の押さえ位置をフィードローラにより近い位置とすることができる。その結果、フィードローラに把持されている繊維加工品積層体が開繊シリンダに引っ張られて引きちぎられてしまう前に押さえローラにより押さえることができる。
更に、前記押さえローラの外周面には軸線方向に沿って溝が形成されている場合は、溝のない場合と比較して、開繊シリンダの回転により引っ張られる力に対してより抵抗力が働き、繊維加工品積層体が押さえローラからすり抜けてしまうことを低減することができる。
また、前記溝は、その断面形状が、前記溝の底壁から前記押さえローラの表面方向に向かうに連れて裾が広がるように拡開した形状となっている場合は、繊維加工品積層体を開繊した開繊処理物が押さえローラに絡みついてしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】実施例に係る繊維加工品積層体の開繊装置を示す模式図である。
【図2】実施例に係る繊維加工品積層体の開繊装置を示す部分拡大模式図である。
【図3】実施例に係る押さえローラを示す模式図である。
【図4】従来の開繊装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0014】
本実施形態に係る繊維加工品積層体の開繊装置(1)は、シート状の繊維加工品を複数重ね合わせてなる繊維加工品積層体(LF)を開繊する繊維加工品積層体の開繊装置であって、以下に述べる開繊シリンダ(11)と、一対のフィードローラ(12)と、押さえローラ群(13)と、を備えている。また、本実施形態に係る繊維加工品積層体の開繊装置は、例えば、開繊シリンダの外周に沿って配置されたウォーカローラ(14)及びストリッパーローラ(15)を更に備えることができる。
【0015】
なお、上記繊維加工品積層体は、シート状の繊維加工品を複数重ね合わせてなる限り、その大きさ、形状、層数等は特に問わない。また、繊維加工品積層体は、単一種類の繊維加工品を積層したものであってもよいし、異なる種類の繊維加工品を積層したものであってもよい。繊維加工品としては、例えば、不織布、織物、編物等が挙げられる。
【0016】
また、繊維加工品を構成する繊維も特に限定されないが、例えば、ケナフ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、針葉樹(杉、檜等)、広葉樹及び綿花などの各種の植物が有する繊維や、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン/プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂などの熱可塑性樹脂を用いてなる繊維、熱硬化性樹脂を用いてなる繊維等が挙げられる。これらの繊維は、1種のみ用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0017】
上記「開繊シリンダ」は、軸線周りに回転する限り、その構成、形状、大きさ、材質等は特に問わない。この開繊シリンダは、例えば、その外周面に、ガーネットワイヤ等の開繊刃が設けられていることができる。
【0018】
上記「一対のフィードローラ」は、上記開繊シリンダの外周面の近傍に設けられ、繊維加工品積層体を開繊シリンダの外周面に向けて搬送する限り、その構成、形状、大きさ、材質等は特に問わない。上記フィードローラは、例えば、その外周面と、上記開繊シリンダの外周面と、の間隔Cが、繊維加工品積層体の厚さtの0.1〜0.3倍程度であることができる。
【0019】
上記「押さえローラ群」は、上記フィードローラの上記開繊シリンダの回転方向側に並ぶように隣接して設けられるとともに、開繊シリンダの外周に沿って設けられる複数の押さえローラ(131、132)を有する限り、その構成等は特に問わない。この押さえローラ群は、各押さえローラの外周面と、開繊シリンダの外周面と、の間隔が、フィードローラから離れる押さえローラほど小さくなるように配置されている。フィードローラに最も近接して配置されている押さえローラに対応する間隔C1は、例えば、上記間隔Cの0.45〜0.6倍程度であることができ、好ましくは、0.47〜0.55倍程度、更に好ましくは、0.5倍程度であることができる。また、ある押さえローラに対応する間隔Cnは、その押さえローラのフィードローラ側に隣接する押さえローラに対応する間隔Cn−1の0.45〜0.6倍程度であることができ、好ましくは、0.47〜0.55倍程度、更に好ましくは、0.5倍程度であることができる。
【0020】
上記「押さえローラ」の構造、形状、大きさ、材質、個数等は特に問わない。この押さえローラは、例えば、その直径(D1、D2)が、フィードローラの直径(D)よりも小さく設定されていることができる(例えば、図2等参照)。
また、押さえローラは、例えば、その外周面に、軸線方向に沿って溝が形成されていることができる。この溝の大きさ、個数等は特に問わない。また、溝の断面形状も特に問わないが、例えば、溝の底壁から押さえローラの表面方向に向かうに連れて裾が広がるように拡開した形状であることができる(例えば、図3等参照)。
【0021】
上記「ウォーカローラ」は、通常、上記開繊シリンダの回転方向とは反対の方向に回転するとともに、開繊シリンダの周速よりも十分に遅い周速となるように回転する。これにより、搬送される開繊処理物を開繊シリンダとウォーカローラとの間を通過する開繊処理物に対して更に開繊処理を施すことができる。ウォーカローラの構造、形状、大きさ、材質、個数等は特に問わない。ウォーカローラは、例えば、開繊シリンダと同様に、その外周面にガーネットワイヤ等の開繊刃が設けられていることができる。
【0022】
上記「ストリッパーローラ」は、通常、上記ウォーカローラに隣接するように設けられているとともに、ウォーカローラと同じ方向に回転するように設けられている。これにより、ストリッパーローラは、ウォーカローラの外周面に付着した開繊処理物を剥離する。ストリッパーローラは、上記ウォーカローラと同様の構成であることができる。
【実施例】
【0023】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、繊維加工品積層体として、基材となるケナフ等の植物性繊維と、バインダとなる熱可塑性樹脂繊維と、を含有するシート状の不織布を積層した繊維加工品積層体LFを例示する。繊維加工品積層体LFは、型取りされて加熱圧縮成形が施されることにより車両等の内装材として用いられるものであるが、この型取り時に発生する端材を回収して開繊処理を施す場合を例示する。また、この繊維加工品積層体LFの厚さtは約10mmとなっている。
【0024】
(1)繊維加工品積層体の開繊装置の構成
本実施例に係る繊維加工品積層体の開繊装置1(以下、単に開繊装置ともいう)は、図1に示すように、軸線周りに回転する開繊シリンダ11と、開繊シリンダ11の外周面の近傍に設けられ、繊維加工品積層体LFを開繊シリンダ11の外周面に向けて搬送する一対のフィードローラ12と、フィードローラ12の開繊シリンダ11の回転方向側に並ぶように隣接して設けられるとともに、開繊シリンダ11の外周に沿って設けられる複数(図1中2つ)の押さえローラ131、132を有する押さえローラ群13と、を備えている。また、本実施例において、開繊装置1は、開繊シリンダ11の外周に沿って配置されたウォーカローラ14及びストリッパーローラ15を更に備えている。そして、これらのシリンダ及びローラはケーシング17により覆われており、このケーシング17内で開繊処理が行われる。
【0025】
開繊シリンダ11には、その外周面に、ガーネットワイヤと呼ばれる表面に無数の突起が形成されたワイヤ(図示せず)が巻き付けられている。開繊シリンダ11は、その軸線周りに回転することにより、フィードローラ12から送り出された繊維加工品積層体LFを、ガーネットワイヤの突起で引っ掻くようにして開繊する。また、開繊シリンダ11は、外周面に付着した開繊処理物をその回転方向に搬送する。
【0026】
フィードローラ12は、開繊シリンダ11の外周面の近傍に設けられた一対のローラである。また、フィードローラ12は、繊維加工品積層体LFをローラ同士で挟持して送り出し、開繊シリンダ11の外周面に押し当てる。本実施例において、フィードローラ12の外周面と、開繊シリンダ11の外周面と、の間隔Cは、繊維加工品積層体LFの厚さtの約0.1〜0.3倍となる1〜3mmに設定されている。
【0027】
なお、開繊シリンダ11は、フィードローラ12の送り速度に比して十分に速い周速となるように回転する。また、開繊シリンダ11の外周面とフィードローラ12の外周面との間隔Cは、繊維加工品積層体LFの厚さと比較して小さく設定されている。
【0028】
押さえローラ群13は、図2に示すように、各押さえローラ131、132の外周面と、開繊シリンダ11の外周面と、の間隔C1、C2が、フィードローラ12から離れる押さえローラほど小さくなるように設けられている。具体的には、間隔C1は、間隔Cの約2/3倍となる0.6〜2mmに設定されているとともに、間隔C2は、間隔C1の約1/3倍となる0.3〜1mmに設定されている。
【0029】
本実施例において、押さえローラ131、132の直径D1、D2は、図2に示すように、フィードローラ12の直径Dよりも小さく設定されている。また、図3に示すように、各押さえローラ131、132の外周面には、軸線方向に沿って複数の溝13Aが形成されている。各溝13Aは、その底壁から押さえローラ131、132の表面方向に向かうに連れて裾が広がるように拡開した形状となっている。
【0030】
ウォーカローラ14は、開繊シリンダ11と同様に、その外周面にガーネットワイヤ(図示せず)が巻き付けられたローラである。ウォーカローラ14は、開繊シリンダ11の回転方向とは反対の方向に回転するとともに、開繊シリンダ11の周速よりも十分に遅い周速となるように回転する。これにより、開繊装置1は、開繊シリンダ11により搬送される開繊処理物を開繊シリンダ11とウォーカローラ14との間を通過させて、開繊処理物に対して更に開繊処理を施す。
【0031】
ストリッパーローラ15は、開繊シリンダ11と同様に、その外周面にガーネットワイヤ(図示せず)が巻き付けられたローラである。ストリッパーローラ15は、ウォーカローラ14に隣接するように設けられているとともに、ウォーカローラ14と同じ方向に回転するように設けられている。このストリッパーローラ15は、ウォーカローラ14の外周面に付着した開繊処理物を剥離する。
【0032】
本実施例において、開繊装置1は、図1に示すように、フィードローラ12の上流側に、搬送手段16が設けられている。搬送手段16は、繊維加工品積層体LFをフィードローラ12に供給するベルトコンベアである。
【0033】
(2)繊維加工品積層体の開繊装置の作用
次に、上記構成の繊維加工品積層体の開繊装置の作用について説明する。
まず、繊維加工品積層体LFを搬送手段16に載置して搬送し、フィードローラ12に供給する。フィードローラ12は繊維加工品積層体LFを挟持して開繊シリンダ11の外周面に押し付けるように送り出す。開繊シリンダ11はその軸線周りに回転しており、押し付けられた繊維加工品積層体LFは、ガーネットワイヤの突起で引っ掻かれて開繊される。このとき、繊維加工品積層体LFは、フィードローラ12に挟持された状態で、その先端側が開繊シリンダ11の回転方向に引っ張られ、開繊シリンダ11の外周に沿って搬送される。すると、繊維加工品積層体LFは、押さえローラ群13の押さえローラ131、132により、開繊シリンダ11側へ順次押さえ付けられる。
【0034】
ここで、上述のように、押さえローラ群13は、各押さえローラ131、132の外周面と、開繊シリンダ11の外周面と、の間隔C1、C2が、フィードローラ12から離れる押さえローラほど小さくなるように設けられている。これにより、繊維加工品積層体LFは、押さえローラ群13を通過するに連れて、その厚さが次第に薄くなるように開繊シリンダ11に引っ掻かれて開繊される。また、このとき、押さえローラ131、132は、その外周面に形成された溝13Aの作用により繊維加工品積層体LFを確実に押さえ付けている。また、溝13Aの断面形状は、溝13Aの底壁から押さえローラ131、132の表面方向に向かうに連れて裾が広がるように拡開した形状となっており、開繊処理物が押さえローラ131、132に絡みついてしまうことはない。
【0035】
その後、開繊処理された開繊処理物は、開繊シリンダ11の表面に付着して搬送され、ウォーカローラ14との間を通過することにより更に開繊される。また、ウォーカローラ14に付着した開繊処理物は、ストリッパーローラ15により剥離される。このようにして開繊された開繊処理物は、ケーシング17の排出口17Aから排出される。
【0036】
(3)実施例の効果
以上より、本実施例の繊維加工品積層体の開繊装置1によると、シート状の繊維加工品を複数重ね合わせてなる開繊対象物としての繊維加工品積層体LFを開繊するにあたり、軸線周りに回転する開繊シリンダ11と、この開繊シリンダ11の外周面の近傍に設けられ、繊維加工品積層体LFを開繊シリンダ11の外周面に向けて搬送する一対のフィードローラ12と、フィードローラ12の開繊シリンダ11の回転方向側に並ぶように隣接して設けられるとともに、開繊シリンダ11の外周に沿って設けられる複数の押さえローラ131、132を有する押さえローラ群13と、を備えている。
【0037】
このような構成により、繊維加工品積層体LFは、開繊シリンダ11の外周面から浮き上がってしてしまうことなく開繊シリンダ側に押さえ付けられるとともに、開繊シリンダ11に押さえ付けられている距離及び時間が十分に確保される。そして、押さえローラ群13は、各押さえローラ131、132の外周面と、開繊シリンダ11の外周面と、の間隔が、フィードローラ12から離れる押さえローラほど小さくなるように設けられている。このような構成により、繊維加工品積層体LFは、開繊されてその厚さが徐々に薄くなったとしても、複数の押さえローラ131、132によって順次好適に開繊シリンダ11に押さえ付けられる。その結果、従来よりも開繊の効率を向上させることができる。
【0038】
また、本実施例では、押さえローラ131、132の直径D1、D2がフィードローラ12の直径Dよりも小さく設定されているので、押さえローラ131、132をフィードローラ12により近接させて配置することができる。これにより、押さえローラ131、132による繊維加工品積層体LFの押さえ位置をフィードローラ12により近い位置とすることができる。その結果、フィードローラ12に把持されている繊維加工品積層体LFが開繊シリンダ11に引っ張られて引きちぎられてしまう前に押さえローラ群13により押さえることができる。
【0039】
更に、本実施例では、押さえローラ131、132の外周面には軸線方向に沿って溝13Aが形成されているので、溝のない場合と比較して、開繊シリンダ11の回転により引っ張られる力に対してより抵抗力が働き、繊維加工品積層体LFが押さえローラ131、132からすり抜けてしまうことを防止することができる。
【0040】
また、本実施例では、溝13Aは、その断面形状が、溝13Aの底壁から押さえローラ131、132の表面方向に向かうに連れて裾が広がるように拡開した形状となっているので、繊維加工品積層体LFを開繊した開繊処理物が押さえローラ131、132に絡みついてしまうことを防止することができる。
【0041】
更に、本実施例では、押さえローラ群13を通過した開繊処理物を、開繊シリンダ11と、開繊シリンダ11の外周に沿って配置されたウォーカローラ14と、の間を通過させて更に開繊するようにしたので、開繊効率をより高めることができる。
【0042】
なお、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更することができる。即ち、上記実施例では、2つの押さえローラ131、132を有する押さえローラ群13を例示したが、これに限定されず、例えば、3つ以上の押さえローラを有する押さえローラ群としてもよい。
【0043】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0044】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
シート状の繊維加工品を複数重ね合わせてなる繊維加工品積層体を開繊する技術として広く利用される。特に、基材となるケナフ等の植物性繊維と、バインダとなる熱可塑性樹脂繊維と、を含有するシート状の不織布の積層体を開繊する技術として好適に利用される。
【符号の説明】
【0046】
1;開繊装置、11;開繊シリンダ、12;フィードローラ、13;押さえローラ群、131,132;押さえローラ、13A;溝、14;ウォーカローラ、15;ストリッパーローラ、16;搬送手段、17;ケーシング、17A;排出口、C;フィードローラの外周面と開繊シリンダの外周面との間隔、C1,C2(Cn);押さえローラの外周面と開繊シリンダの外周面との間隔、D;フィードローラの直径、D1,D2;押さえローラの直径、LF;繊維加工品積層体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の繊維加工品を複数重ね合わせてなる繊維加工品積層体を開繊する繊維加工品積層体の開繊装置であって、
軸線周りに回転する開繊シリンダと、
前記開繊シリンダの外周面の近傍に設けられ、前記繊維加工品積層体を前記開繊シリンダの外周面に向けて搬送する一対のフィードローラと、
前記フィードローラの前記開繊シリンダの回転方向側に並ぶように隣接して設けられるとともに、前記開繊シリンダの外周に沿って設けられる複数の押さえローラを有する押さえローラ群と、を備え、
前記押さえローラ群は、各前記押さえローラの外周面と、前記開繊シリンダの外周面と、の間隔が、前記フィードローラから離れる前記押さえローラほど小さくなるように設けられていることを特徴とする繊維加工品積層体の開繊装置。
【請求項2】
前記押さえローラの直径は、前記フィードローラの直径よりも小さく設定されている請求項1記載の繊維加工品積層体の開繊装置。
【請求項3】
前記押さえローラの外周面には軸線方向に沿って溝が形成されている請求項1又は2記載の繊維加工品積層体の開繊装置。
【請求項4】
前記溝は、その断面形状が、前記溝の底壁から前記押さえローラの表面方向に向かうに連れて裾が広がるように拡開した形状となっている請求項3記載の繊維加工品積層体の開繊装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−255229(P2012−255229A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128695(P2011−128695)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】