説明

繊維加工機械用のインジェクタ

【課題】均一なジェット水流の形成を確実にするインジェクタの提供。
【解決手段】流入チャンバ13は、インジェクタ本体11内部に設けられる。いくつかの連通チャネル23を通して、当該流入チャンバは、圧力分配チャンバ18と流体連通にある。連通チャネル23は、流入チャンバ13の長手方向の中心平面39に対してオフセットされるように、1列あるいは2列に配列される。偏向表面46は、連通チャネル23の縦軸26に対して、斜めに、あるいは横断方向に、延びる。当該媒体は、下流のノズル・ストリップ36のノズル孔37に到達する前に、その方向を変える。従って、流入チャンバ13からノズル孔37に向かう直接のストレートな流れはできない。ノズル孔37を通ってジェット水流38が形成され、当該ジェット水流は出口開口30を経てインジェクタ10により噴射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維加工機械のためのインジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
インジェクタには、圧力源と流体連通するか、あるいは流体連通することのできる流入チャンバが具えられている。流入チャンバの加圧された流体または気体媒体、好ましくは水、は少なくとも1つの連通路を介して、そして、特に、いくつかの連通路を介して圧力分配チャンバへさらに搬送される。圧力分配チャンバは、出口開口と流体連通状態にある。圧力分配チャンバと出口開口との間に、ノズル・ストリップのための、ストリップ形ノズル・フォイルのための受口がある。ノズル・フォイルは、当該受口に設けられたノズル・フォイルにより圧力分配チャンバと出口開口との間の流体連通を提供する、複数のノズル孔を有する。ノズル孔は、微細な、針のような媒体のジェットを形成するために設けられ、それにより、当該ジェットは、インジェクタによって、出口開口を通して噴射されうる。ジェットの助けにより、ランダム繊維不織布は、フリース素材を生成するために交絡される。使用中、ウォータージェット成形システムはドラム周辺で直列に、または放射状に連続して配置されるいくつかのインジェクタを備える。連続配置は、巻取当接部(web abutment)を含み、ドラム周辺の配置は、ドラム当接部(drum abutment)を含む。ドラム当接部および巻取当接部を1つのジェット水流成形システムに組み込むこともできる。
【0003】
圧力分配チャンバのノズル孔の流入状況によっては、品質の異なるジェット、特にジェット水流、が形成されるかもしれないことが知られている。連通チャネルおよび圧力分配チャンバを通ってノズル孔に至るまでの流れがストレートである場合、結果として生じるジェット水流はその針状形状からみてより緻密およびより安定である。それと異なり、圧力分配チャンバ内で形成された乱流の上にあるノズル孔は、より拡散したジェット水流を生ずる。ジェット水流のこれらの差異は、ランダム繊維不織布の異なる密度を生む結果になり、均一な強さおよび密度をもつフリース素材を形成することができない。
【0004】
この問題を排除するために、特許文献1は、連通チャネルがスリット・チャネルとして構成されることを示唆しており、スリット・チャネルに一列に並べられたノズル孔に対する流れは、ストレートかつ直接的で、そして基本的に乱気流とはならない。これを確実にするためには、スリット・チャネルの入力口の領域の流れ状況は、スリット・チャネルに沿って等しくなくてはならず、これのために、穴のあいた管が、流入チャンバに配置され、当該管は、流入チャンバ内で、圧力源により供給される水を分配するように設けられている。
【0005】
インジェクタは、特許文献2から公知であり、当該インジェクタには、連通チャネルの出力口下の圧力分配チャンバに、ノズル孔のいくつかへの直接的な流れを避けるための、円筒形の衝撃部材が具備されている。この場合、連通チャネルからの水流は、当初衝撃部材に衝突して、ノズル孔に到達する前に当該部材周辺に流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許第60011900号明細書
【特許文献2】独国特許第102005055939号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これに鑑み、本発明の目的は、流入チャンバにおいて、または、圧力分配チャンバにおいて、追加の整流部品を必要とせず、しかも均一のジェット水流の形成を確実にするインジェクタを提供すること、と見なされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1のインジェクタにより達成される。
【0009】
流入チャンバとノズル孔との間の媒体の流路は、圧力分配チャンバによって、と同様に、少なくとも1つの連通チャネルによって、定められる。本発明のインジェクタでは、この流路は、連通チャネルおよび/または圧力分配チャンバの行程によって、事前特定され、そこでは、当該流路は、連通チャネルのおよび/または圧力分配チャンバの区間にある少なくとも一つの偏向部位を含む。偏向部位には、領域、すなわち、連通チャネルのおよび/または圧力分配チャンバの壁セクション、の全ての表面が含まれる。この第1の偏向部位で、媒体がノズル・ストリップまたはノズル・フォイルのノズル孔に到達する前に、当該媒体の、好ましくは水の、流れ方向が変えられる。このようにして、ノズル孔のいずれに於いても、流入チャンバからの媒体のストレートな、直接の流れができないことが確実となる。ノズル孔での流れ状況は均一化され、それによって、生成されたフリース素材の品質と密度についての差異をもたらすジェット間の相違を避ける。流入チャンバにおいて、または、圧力分配チャンバにおいて、流れに影響を与える部品を配置する必要はない。従って、2つのチャンバは、より小さな寸法をもつことができ、チャンバの壁面はより小さくなる。より小さな壁面に作用する媒体の圧力は、インジェクタに及ぼされる変形力を減らすので、インジェクタの壁厚を減少する。これにより、変化する要求に外観形状を適合させることが可能となる。従って、例えば、インジェクタに円錐の外観形状をもたせることができる。この場合、ノズル孔の領域は流入チャンバの領域より、より小さな幅をもつ。真空ドラムのまわりにいくつかのインジェクタを半径方向に配置することにより、インジェクタが長方形の実施態様の場合よりも、より密接に互いに隣接するインジェクタの配置を可能にする。さらに、例えば、いかなる部品も含まないチャンバを洗浄する場合、インジェクタの維持も容易になる。
【0010】
好都合にも、流入チャンバの入力口と圧力分配チャンバの出力口との間の連通チャネルは、ストレートな流れを可能にする。例えば、連通チャネルは、円筒形の穴からなってよい。この結果、少なくとも一つの連通チャネルを容易に作成できる。特に、いくつかの連通チャネルが、流入チャンバと圧力分配チャンバとの間に、長さ方向に規則的な距離をもって設けられる。
【0011】
好ましくは、連通チャネルは、出力口を通って、そして、インジェクタにノズル・フォイルが設置されているとき、そのノズル・フォイルの中央を通って、長さ方向において、伸びる長手方向の中心平面の外側で延びる。連通チャネルは、この長手方向の中心平面を横切らない。連通チャネルのこの配置では、当該連通チャネルの入力口は、断面で見て、半径形である。
【0012】
もしいくつかの連通チャネルが設けられるならば、連通チャネルのうちの少なくとも1つは出口開口を通る長手方向の中心平面の両側に、長手方向の中心平面から距離をおいて配置されてもよい。換言すれば、出口開口を通る長手方向の中心平面は、インジェクタを2つの部分に分け、少なくとも一つの連通チャネルが、両方部分に設けられる。このようにして、水は、圧力分配チャンバに、異なる、例えば、対向する方向から流れることができる。異なる連通チャネルから搬入され、異なる流入方向を示す水の流れは、圧力分配チャンバ中で互いに直接向けられるか、または長さ方向に互いにオフセットされて導入されることができる。ノズル・フォイルが使用されるときに、ノズル孔が位置する出口開口に向う移行領域で、圧力分配チャンバ内で、非常に均一な流れ状況を生成するために、両手段は適切である。いくつかの連通チャネルが出口開口の長手方向の中心平面の一方の側に設けられている場合、これらは長手方向の中心平面から異なる距離にあってもよい。
【0013】
好ましい実施態様では、圧力分配チャンバの流路の第1の偏向部位は、出力口の下流に設けられる。圧力分配チャンバの第1の壁セクションで全表面にわたる第1の変更部位は、第1の偏向表面を備える。当該表面は、出力口を通って出る水の流出方向に対して、斜めに、または横断方向に延びて、したがって、流れの進路の第一の抵抗であって流れ方向に影響を及ぼす、第1の偏向表面と、そして、第1の偏向表面に対抗して流れ方向に関して放射状に配置され、したがって第1の偏向部位である第2の偏向表面とは、従って第1の偏向部位である。第1の偏向表面は、圧力分配チャンバの第1の壁セクションに設けられるのが好ましい。
【0014】
水の流路の第1の偏向部位の下流に、特に、圧力分配チャンバに位置する、追加の、第2の偏向部位を設けることもできて、簡単な実施態様では、圧力分配チャンバの壁セクションに形成されるのが好ましい。同様に、この第2の偏向部位は、それに付随する壁セクションの全表面にわたる。水は、2つの偏向部位を流れ過ぎた後でのみノズル・ストリップのノズル孔に到る。
【0015】
偏向表面は、1つあるいは複数の平面表面部を有してよい。曲がっているように、例えば、凹面か凸面の偏向表面を構成することもできる。偏向表面は、角がないことが好ましい。
【0016】
流入チャンバおよび少なくとも一つの連通チャネルは、インジェクタ本体に設けられてもよい。その際、インジェクタ本体は、出口開口を備えたインジェクタ・ベースに連結されるのが好ましい。インジェクタの好ましい実施態様では、インジェクタ・ベースと同様にインジェクタ本体が、圧力分配チャンバを区切り、当該チャンバは、したがって、インジェクタ本体とインジェクタ・ベースとの間の空間により形成される。このような実施態様により、圧力分配チャンバを簡単に構成できる。この場合、第1の偏向部位の第1の偏向表面は、インジェクタ・ベースに設けられてよい。第1の偏向部位の第2の偏向表面は、インジェクタ本体に設けられてよい。従って、2つの偏向表面は、インジェクタ・ベースあるいはインジェクタ本体の製造に際し、非常に容易に形成されうる。この実施例では、第2の変更部位の第1の偏向表面はインジェクタ本体に設けることができ、第2の偏向部位の第2の偏向表面はインジェクタ・ベースに設けてもよい。さらに、別の実施例では、それは、インジェクタ本体に第1の偏向部位の第1の偏向表面を設けて、インジェクタ・ベースに第1の偏向部位の第2の偏向表面を設けることができる。
【0017】
特殊な応用例では、連通チャネルを流入チャンバの長さ方向の中心平面に対して90°に等しくない角度で配置できる。そして、長手方向の中心平面の一方の側に連通チャネルの入力口を配置して、長手方向の中心平面の他方の側に連通チャネルの出力口を配置できる。連通チャネルの縦中心軸が入力口の領域にある流入チャンバの長手方向の中心平面を横切り、そして連通チャネルの出力口が流入チャンバの長手方向の中心平面から距離をおいて配置されることもできる。このような配置の場合、入力口は、流体技術の観点から有利な楕円外周をもつ。
【0018】
有利な実施態様および更なる本発明の特徴は、特許請求の範囲の従属項および記載から明らかである。図面は、補助的な参照のために使用されるものである。以下、本発明の実施例は、添付図面を参照して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】インジェクタの第1の実施例の、図2aの断面線I−Iに沿った、概略縦断面図。
【図2a】図1のインジェクタの、図1の断面線II−IIに沿った、横断面図。
【図2b】図2aの第1偏向部位の概略断面図。
【図3】図1、図2aおよび図2bのインジェクタの変形実施例の概略断面図。
【図4】2つの列の長さ方向に伸びる連通チャネルを備えたインジェクタの別の実施例の概略断面図。
【図5】図4のインジェクタの変形実施例の概略断面図。
【図6】図4または5の断面線III−IIIに沿った、連通チャネルの2つの列を備えた実施例の流入チャンバの詳細の縦断面図。
【図7】図6の連通チャネルの2つの列の配置の変形実施例の図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、フリース素材の生産のために使用される繊維加工機械のインジェクタ10の第1の実施例を示す。インジェクタ10には、互いに連結された、インジェクタ本体11およびインジェクタ・ベース12が具備されている。インジェクタ本体11の内部には、流入口14を介して圧力源15と連通する流入チャンバ13がある。本実施例では、流入チャンバ13は円筒シリンダの形状をもつ。流入口14は、流入チャンバ13の長手方向軸について同軸で設けられた穴である。流入口14の反対側の長手方向の端側面に、流入チャンバ13は、インジェクタ本体11のねじ込みキャップ16により、液密に閉じられる。その際、リングシール17を、キャップ16とキャップのシートの間に設けてもよい。
【0021】
さらにまた、インジェクタ10は、インジェクタ本体11とインジェクタ・ベース12との間の領域に、長さ方向Lに伸びる圧力分配チャンバ18を備える。従って、圧力分配チャンバ18は、インジェクタ本体11およびインジェクタ・ベース12を合わせて作成される。そこで、インジェクタ・ベース12は、インジェクタ本体11に向かって開いた凹所19を有する。対応して、インジェクタ・ベース12に向かって開く凹所20が、インジェクタ本体11に設ける。インジェクタ本体11とインジェクタ・ベース12を連結した後、2つの凹所19、20は合わせて圧力分配チャンバ18を形成する。インジェクタ本体11とインジェクタ・ベース12の間を液密にするために、図面に特に示してはいない、1以上の密封装置を設けることもできる。
【0022】
流入チャンバ13と圧力分配チャンバ18は、複数の連通チャネル23の助けにより流体連通の状態にある。連通チャネル23は、流入チャンバ13の入力口24と圧力分配チャンバ18の出力口25との間に延びる。好ましい実施例では、連通チャネル23は、インジェクタ本体11の円筒形の穴である。連通チャネル23の縦軸26は、インジェクタ10の長さ方向Lに対し基本的に直角に伸びる。従って、出力口25は、インジェクタ本体11によって、区切られた圧力(分配)チャンバ18の部分を形成する凹所20にある。
【0023】
出口開口30は、インジェクタ・ベース12に設けられている。当該出口開口(30)は、長さ方向Lに延びて、圧力分配チャンバ18と流体連通している。圧力分配チャンバ18に隣接して、出口開口30は、円錐部分32に隣接したスリットの形をした区間31を有する。図2aの横断面で見たときに、出口開口30は全体として漏斗形の形状を有する。インジェクタ本体11から離れた側のインジェクタ・ベース12の側面は、インジェクタ10の出口側面33を形成する。出口開口30の円錐部分32は、出口側面33の方に向かって開いている。長手方向の中心平面34は、出口開口30を中心で分ける。好ましい実施例では、出口開口30は、長手方向の中心平面34について対称形である。
【0024】
ノズル・フォイル36の受口35が、圧力分配チャンバ18と出口開口30との間の移行領域に設けられている。ノズル・フォイル36は、特に、長さ方向Lに一定間隔に配置された、複数のノズル孔37を有する。ノズル孔37の1つあるいは多数の列が、長さ方向Lにノズル・ストリップ36に互いに隣り合わせて配置されてもよい。ノズル孔37は、ノズル・フォイル36を通って完全に延びる。ノズル・フォイル36が受口35に挿入されたとき、ノズル孔37は、圧力分配チャンバ18と出口開口30との間に位置する。圧力分配チャンバ18において、利用できる加圧媒体、例えば本実施例では水、はノズル孔37を通って流れ、そして、しかるべく、図1の点線に概略的に示されるように、微細な、針のようなジェット38、すなわちジェット水流に変化する。受口35は、ノズル・フォイル36のための弁座であって、ノズル・フォイル周辺に流れるのを妨げるための、環状のシール29を収容するものを備える。従って、水は、ノズル孔37を通って流れるよう強制される。
【0025】
実施例の連通チャネル23は、出口開口30の長手方向の中心平面34の、完全に外側で延びる。連通チャネル23の縦軸26は、長手方向の中心平面34に平行に、そこから離れた出口開口30を通って伸びる。ここで記載されたインジェクタ10の好ましい実施例では、入力口24は、流入チャンバ13を通る長手方向の中心平面39に対し長さ方向Lについて横方向に、横にオフセットされるように配置される(図2a)。
【0026】
入力口24と出口開口30との間で、連通チャネル23および圧力分配チャンバ18は、流入チャンバ13と出口開口30との間に流れる水の流路40を定める。この流路40には、水の流れ方向が変わる第1の偏向部位41がある。これは、入力口24と出口開口30との間にまっすぐな流路ができるのを防いでいる。
【0027】
第1の偏向部位41は、圧力分配チャンバ18の、第1の偏向表面46および第2の偏向表面61からなる第1の壁セクション45である。この第1の偏向表面46は、出力口25に対する下流側に位置し、そして、出力口25からの媒体の流れの流れ方向に対し斜めに、または横断方向に、少なくとも区間において、延びる。偏向表面46は、連通チャネル23の外側に配置される。本実施例では、第1の偏向表面46は、インジェクタ・ベース12に設けられ、そして、したがって、インジェクタ・ベース12に設けられた凹所19の1つの壁セクションである。第1の偏向表面46は、圧力分配チャンバ18に沿って長さ方向Lに延びる。当該後者の偏向表面は、凹面であるように長さ方向Lに伸びる軸周りに曲がっている。曲率半径は、インジェクタ10の空間的な状況の関数として決定されうる。流れ方向において、第1の偏向部位41の第2の偏向表面61は、第1の偏向表面45に放射状に対向するように配置される。この第2の偏向表面61は、連通チャネル23の縦軸26に対して鋭角に配置された真っ直ぐな平面の形となるよう、そして、圧力分配チャンバ18に沿って長さ方向Lにおいて、延びるように、構成される。媒体の流れ方向は、第1の偏向表面46と第2の偏向表面61の交互作用によって、定まる。
【0028】
図示の実施例に代わるものとして、第1の偏向表面46は、1つ以上の平面表面部を有するかまたは一つ以上の平面表面部により形成されることもできる。第2の偏向表面61は、例えば、凹面であるか、凸面であるように曲がっていてもよい。2つの偏向表面46、61は、角を有しないのが好ましい。
【0029】
第1の偏向部位41は、連通チャネル23の軸の延長上に位置する。連通チャネル23の縦軸26は、第1の偏向部位41の第1の壁セクション45の第1の偏向表面46と交差する。第1の偏向表面46は、追加部品により形成されるのではなく、圧力分配チャンバ18が形成されるときに、形成される。インジェクタは、インジェクタ本体11およびインジェクタ・ベース12のみから成る。偏向表面46を有する、追加の、別の部品は必要ではない。
【0030】
第1の偏向部位41の下流に、例えば、流路40は、第2の偏向部位49を有する。第2の偏向部位49は、圧力分配チャンバ18の第2の壁セクション50であり、当該壁セクションは、第1の偏向表面51と第2の偏向表面62とを備える。第2の偏向部位49の第1の偏向表面51は、インジェクタ本体11にある。当該第1の偏向表面は、インジェクタ本体11に設けられた凹所20の部分である。ここに記載されている実施例では、第1の偏向表面51は、凹面であるように曲がっていて、圧力分配チャンバ18の長さ方向Lに伸びる。第1の偏向表面51は、第1の偏向部位41の第1の偏向表面46に対して横にオフセットされる。出口開口30を通る長手方向の中心平面34は、第1の偏向表面51と交差してもよい。ここで示された実施態様では、第1の偏向表面51は、長手方向の中心平面34に直接隣接する。第2の偏向部位49の第2の偏向表面62は、イジェクタ・ベース12に設けられていて、インジェクタ・ベース12の凹所19の部分である。第2の偏向表面62は、ストレートな平面で、圧力分配チャンバ18の長さ方向Lに沿って延びる。第一および第二の偏向表面51、62は、ノズル・ストリップ36の受口35より上に配置される。媒体の流れ方向は、第1の偏向表面51および第2の偏向表面62の交互作用によって、決まる。
【0031】
第1の偏向表面46、51両方は、長さ方向Lに伸びる溝の形を有する。
【0032】
流路40に沿った水流は、したがって、第一のうちは連通チャネル23を通って第1の偏向部位41までストレートである。そこで、流れは横に、連通チャネル23の縦軸26の横方向に、そして、長さ方向Lに対して横方向に、偏向する。さらに下流に、ノズル・ストリップ36の方へ出口開口30の方向に向かった水を偏向させる第2の偏向部位49がある。この結果として、第2の偏向部位49の後、およそジェット水流38の出口開口に平行にまたは出口開口30を通る長手方向の中心平面34に平行に延びる流れ方向が、達成される。従って、流路40は、基本的に段階状である。
【0033】
凸凹部分52が、特に、連通チャネル23のおよび/または圧力分配チャンバ18の壁または壁セクションに、流路40に規則正しく分布するように、配置されてもよい。このような凹凸部分52は、くぼんだへこみおよび/またはふくらんだビードでもよい。第1の偏向部位41の実施例について図2bに概略的に示されるように、このような凸凹部分52は、少なくとも圧力分配チャンバ18の壁セクションに、特に偏向表面46、61、51、62の1つ以上に設けられるのが好ましい。
【0034】
図3は、図1および2に比較して変形された、インジェクタ10の実施例を示す。本質的な差異は、流入チャンバ13を通る長手方向の中心平面39が出口開口30を通る長手方向の中心平面34と共通平面を形成することである。従って、出口開口30は、流入チャンバ13に対して中心におかれるように配置される。それ以外については、図1および2の第1の実施例の記載を参照されたい。
【0035】
図4は、インジェクタ10の別の実施例を示す。前述の実施例と異なり、連通チャネル23はこの場合長さ方向Lに一列には配置されず、間隔を置いた2つの列55で配置される(図6および7)。両方の列55は、流入チャンバ13を通る長手方向の中心平面39から横に距離があり、連通チャネル23の縦軸26は、長手方向の中心平面39から距離をもって、それに平行に延びる。この場合、流入チャンバ13を通る長手方向の中心平面39は、インジェクタ本体11を2つの部分に分け、そこで、2つの部分の各々は、連通チャネル23の列55を有する。従って、連通チャネル23は、流入チャンバ13を通る長手方向の中心平面39の両側に配置される。
【0036】
この際、連通チャネル23のうちの1つを通って圧力分配チャンバ18へ至る流路40は、前記のコースをとる。また、この場合、圧力分配チャンバ18内で各連通チャネル23が接続すると共に、第2の偏向部位49と同様に第1の偏向部位41がそこにあり、圧力分配チャンバ18への水の流れは、ノズル・ストリップ36または出口開口30に到達する前に、各流路40に沿って二回偏向する。これに関しては、前記記載を参照されたい。連通チャネル23の2列配置では、第1の列55からの流れが他の列55からの流れと出会う合流が圧力分配チャンバ18である。第1の列55からの水流の流れ方向は他の列55からの水流の流れ方向とは異なる。
【0037】
図6および図7に概略的に示すように、連通チャネル23の2つの列55は、流入チャンバ13の長手方向の中心平面39に関して、対称的に配置されてもよい。この場合、連通チャネル23は、対で配置され、1つの対56の一方の連通チャネル23は長手方向の中心平面39の1方側に配置されて、この対56の他方の連通チャネル23は長手方向の中心平面39の他の側面に、それぞれ配置される(図6)。対による対称形の配置では、連通チャネル23の1つの対56の水の2つの流れを圧力分配チャンバ18内で交差させるか、当該流れを互いに対し直接向き合わせることにより水の良い混合を達成できる。
【0038】
図7は、連通チャネル23の2つの列55を配置する代替選択肢を示す。図6の実施態様の選択肢と異なり、長さ方向Lから見て、2つの列55は互いにオフセットされている。連通チャネル23の2つの列55を通って圧力分配チャンバ18に入る流れは、長さ方向Lに対し直角に延びる共通平面に於いて交差しない。水流は、圧力分配チャンバ18に長さ方向Lにオフセットされて流れる。この結果、個々の流れの水は、圧力分配チャンバ18内でそれぞれの流れ方向の横方向に、よく広がることができる。
【0039】
インジェクタ10の図1乃至図4の実施例では、ノズル・ストリップ36の受口35は、長手方向の両側面にスリット状の凹所60を有するので、挿入されたノズル・フォイル36の長手方向の両側面は、凹所60と係合する。ノズル・フォイル36を設置するために、当該フォイルは、インジェクタ10に長さ方向Lに挿入されうる。図5の実施例では、このような凹所60はない。受口35は、長方形の横断面をもつ溝により形成される。シール29に対してノズル・フォイル36を押圧するための保持手段または締め付け手段が、設けられてもよいが、それらは図面には特に示されない。
【0040】
本発明はフリース素材製造のための繊維加工機械用のインジェクタに関する。流入チャンバ13は、インジェクタ本体11内部に設けられており、当該流入チャンバにおいて、加圧媒体が利用できる。いくつかの連通チャネル23を通して、当該流入チャンバは、圧力分配チャンバ18と流体連通にある。連通チャネル23は、インジェクタ本体11に設けられた円筒状の穴である。連通チャネル23は、流入チャンバ13の長手方向の中心平面39に対してオフセットされるように、1列あるいは2列に配列される。連通チャネル23に接続された圧力分配チャンバ18は、第1の偏向表面46を形成する第1の壁セクション45を備える。この偏向表面46は、少なくとも一部において、連通チャネル23の縦軸26に対して、斜めに、あるいは横断方向に、延びる。連通チャネル23から出た媒体の流れは、第1の偏向表面46によって、偏向するので、その当該媒体は、下流のノズル・ストリップ36のノズル孔37に到達する前に、その方向を変える。従って、流入チャンバ13からノズル孔37に向かう直接のストレートな流れはできない。ノズル孔37を通ってジェット水流38が形成され、当該ジェット水流は出口開口30を経てインジェクタ10により噴射される。
【符号の説明】
【0041】
10 インジェクタ
11 インジェクタ本体
12 インジェクタ・ベース
13 流入チャンバ
14 流入口
15 圧力源
16 キャップ
17 リングシール
18 圧力分配チャンバ
19 12の凹所
20 11の凹所
23 連通チャネル
24 入力口
25 出力口
26 23の縦軸
29 環状のシール
30 出口開口
31 スリット形をした区間
32 円錐部
33 出口側
34 30の長手方向中央平面
35 受口
36 ノズル・ストリップ、ノズル・フォイル
37 ノズル孔
38 ジェット、ジェット水流
39 13の縦の平面
40 流路
41 第1の偏向部位
45 18の第1の壁セクション
46 41の第1の偏向表面
49 第2の偏向部位
50 18の第2の壁セクション
51 49の第1の偏向表面
52 凹凸部分
55 連通チャネルの列
56 一対の連通チャネル
60 凹部
61 41の第2の偏向表面
62 49の第2の偏向表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力源(15)に接続された流入チャンバ(13)と、
入力口(24)で流入チャンバ(13)につながり、そして出力口(25)で圧力分配チャンバ(18)につながる、少なくとも1つの連通チャネル(23)と、
圧力分配チャンバ(18)と流体連通した出口開口(30)と、
ジェット(38)の形成のための複数のノズル孔(37)を有するノズル・フォイル(36)のための受口(35)であって、当該受口に挿入されるノズル・フォイル(36)は、インジェクタ(20)の出口開口(30)を通って出るジェット(38)を形成するもの、
からなり、
当該連通チャネル(23)および当該圧力分配チャンバ(18)によってあらかじめ特定される、当該流入チャンバ(13)と当該出口開口(30)との間の流路(40)は、通過する水流がその流れ方向を変える少なくとも1つの偏向部位(41)を備える、
繊維加工機械用のインジェクタ。
【請求項2】
少なくとも一つの前記連通チャネル(23)は、特に、円筒状の穴である、ことを特徴とする請求項1に記載のインジェクタ。
【請求項3】
少なくとも一つの前記連通チャネル(23)が、前記出口開口(30)の長手方向の中心平面(34)の外側に延びる、ことを特徴とする請求項1に記載のインジェクタ。
【請求項4】
いくつかの前記連通チャネル(23)が設けられており、前記出口開口(30)を通る長前記手方向の中心平面(34)の各側に、前記連通チャネル(23)のうちの少なくとも1つが、前記長手方向の中心平面(34)から離れて配置される、ことを特徴とする請求項1に記載のインジェクタ。
【請求項5】
前記圧力分配チャンバ(18)の前記出力口(25)の下流に、第1の偏向表面(46)が、第1の変更部位(41)に設けられ、当該第1の偏向表面(46)は、前記出力口(25)から流れる媒体の流出方向に対して、斜めに、または横断方向に、配置される、ことを特徴とする請求項1に記載のインジェクタ。
【請求項6】
前記第1の偏向表面(46)は、前記圧力分配チャンバ(18)の第1の壁セクション(45)に形成される、ことを特徴とする請求項5に記載のインジェクタ。
【請求項7】
前記第1の偏向表面(46)は、流れの偏向方向を決める曲率を有する、ことを特徴とする請求項5に記載のインジェクタ。
【請求項8】
前記流路(40)の前記第1の変更部位(41)の下流に、別の、第2の変更部位(49)が設けられ、当該第2の変更部位は前記圧力分配チャンバ(18)に位置する、ことを特徴とする請求項1に記載のインジェクタ。
【請求項9】
前記流入チャンバ(13)および少なくとも一つの前記連通チャネル(23)は、インジェクタ本体(11)に設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載のインジェクタ。
【請求項10】
前記出口開口(30)を有するインジェクタ・ベース(12)が、前記インジェクタ本体(11)に接続している、ことを特徴とする請求項9に記載のインジェクタ。
【請求項11】
前記圧力分配チャンバ(18)は、前記インジェクタ・ベース(12)と前記インジェクタ本体(11)とによって、区切られる、ことを特徴とする請求項10に記載のインジェクタ。
【請求項12】
前記第1の変更部位(41)は、第1の偏向表面(45)によって、そして第2の偏向表面(61)により形成される、ことを特徴とする請求項1に記載のインジェクタ。
【請求項13】
前記第1の変更部位(41)の前記第1の偏向表面(46)は、前記インジェクタ・ベース(12)に設けられ、前記第1の変更部位(41)の前記第2の偏向表面(61)は、前記インジェクタ本体(11)に設けられる、ことを特徴とする請求項12に記載のインジェクタ。
【請求項14】
前記第2の変更部位(49)は、第1の偏向表面(51)および第2の偏向表面(62)から形成される、ことを特徴とする請求項8に記載のインジェクタ。
【請求項15】
前記第2の変更部位(49)で、前記第1の偏向表面(51)は、前記インジェクタ本体(11)に設けられる、ことを特徴とする請求項9を加えた請求項14に記載のインジェクタ。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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