説明

繊維加工用エマルジョン、繊維加工用エマルジョンで加工した加工糸、加工繊維及び加工編織物

【課題】香醋を利用することによって、安価に、繊維製品に優れたスキンケア機能を付与でき、更には、洗濯耐久性の向上も図ることができ、よりシルキータッチの風合いが得られる、優れた繊維加工用エマルジョンの提供。
【解決手段】香醋と、エポキシシリコン成分と、アミノシリコン成分とを界面活性剤で乳化してなる繊維加工用エマルジョン、該繊維加工用エマルジョンで加工した加工糸、加工繊維及び加工編織物を、課題を解決するための手段とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な繊維加工用エマルジョン、及び該繊維加工用エマルジョンにより加工した加工糸、加工繊維並びに加工編織物製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康志向の高まりを背景として、中華人民共和国等で長年に亘って製造されている香醋が、食品業界において着目されている。香醋は主として糯米を原料とするものであり、良質のものは何年もの熟成期間を経て製造される。
例えば、日本恒順株式会社販売の恒順香醋(商品名)は、糯米に麹菌を加えて醗酵させ、得られた液を籾殻と攪拌し、長期間熟成させることで製造される。
【0003】
ところで、本発明者らは、繊維業界において、より美肌効果の高いスキンケア用の繊維の開発を行っており、例えば、肌の酸化や変色を防止する生理活性物質として食品・化粧品・医療品等の業界で広く知られているフェルラ酸を用いたものとして、a.フェルラ酸エチル、フェルラ酸へキシル、フェルラ酸ウンデシル及びフェルラ酸2−エチル−1−ヘキシルからなる群から選ばれるフェルラ酸誘導体の少なくとも一種と、b.アミノ酸類、セラミド、甘草エキスのグリチルリチン酸類、ラズベリー類、ラベンダー、ローズマリー、ユーカリ、ヒノキチオール、竹エキス、アロエエキス、グレープフルーツ、レモン、ホホバ油、オリーブ油、柑橘油、海藻エキス、スクワラン類、コラーゲン、ソルビトール及びブドウ糖類からなる群から撰ばれる少なくとも一種とを、重量比率で1:2〜2:1の割合で併含することを特徴とする繊維製品にスキンケア効果を付与する薬剤(例えば、特許文献1参照。)を提供するに至っている。
【0004】
また、本出願人は、多層構造形態のエマルジョン系柔軟剤として、オイル成分、エポキシシリコン成分、アミノシリコン成分、界面活性剤を主成分としてなる繊維用エマルジョン等(例えば、特許文献2参照。)を開発し、従来のエマルジョン系柔軟剤では出せない、洗濯耐久性に富んだ、シルキータッチの風合いが得られる、多層構造体系エマルジョンを用いた繊維化応用エマルジョン、並びにそれを用いた繊維製品を提供するに至っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4217104号公報
【特許文献2】特開2008−81875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上に示した特許文献1は肌の酸化や変色を防止する生理活性物質であるフェルラ酸を用いたスキンケア効果に優れたものであり、特許文献2はシルキータッチを有する多層構造形態のエマルジョン系柔軟剤について洗濯耐久性を備えたものであった。これらはいずれも当初の目的を達成している点で優れたものである。
【0007】
しかしながら、市場では、より安価で、スキンケア効果に優れ、併せて洗濯耐久性にも優れた、繊維加工用エマルジョン、及び、該繊維加工用エマルジョンで処理された編織物製品が求められている。
【0008】
上記事情から、本発明者らは、種々の新規な繊維加工エマルジョンの有効成分として鋭意研究した結果、前記香醋の有効性を見出した。ところが、香醋は有機成分を含有するものの、繊維に塗布しても洗濯によって剥がれやすく、また、香醋が有色を呈するため繊維の色合いに影響を与えるおそれがあった。
【0009】
本発明者らは、上記香醋の欠点を解消して、この香醋を利用することによって、繊維製品にスキンケア機能を付与でき、そして繊維加工エマルジョン及びその繊維加工がされた製品を安価で提供でき、更には、洗濯耐久性の向上も図ることができ、従来よりもよりシルキータッチの風合いが得られる、優れた繊維加工用エマルジョン、及び該繊維加工用エマルジョンで加工した織編物等の繊維製品の提供を、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、香醋と、エポキシシリコン成分と、アミノシリコン成分とを界面活性剤で乳化してなる繊維加工用エマルジョンを、課題を解決するための手段とする。尚、本発明における香醋は糯米を原料として製造されるものであり、原料である糯米は国内種の糯米に限らず、外国種の糯米を利用することができる。
【0011】
また本発明は、上記繊維加工用エマルジョンを含浸した加工糸、若しくは、上記繊維加工用エマルジョンを含浸した加工繊維、更にはこれらを用いて製造される編織物製品を、課題を解決するための手段とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、香醋と、エポキシシリコン成分と、アミノシリコン成分とを界面活性剤で乳化してなる繊維加工用エマルジョンとし、繊維加工に適しない香醋を、エポキシシリコン成分及びアミノシリコン成分でコーティングして、繊維加工用エマルジョンとしたことから、エポキシシリコン成分及びアミノシリコン成分でのコーティングにより洗濯耐久性の向上を実現するとともに、当該香醋に含まれるアミノ酸と酢酸を利用することにより、長期間に亘って、前記アミノ酸及び酢酸を保持させて、酢酸による殺菌作用とアミノ酸による肌に対する美白効果を同時に発揮させ、速やかなスキンケア性能を発揮することができる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、上記請求項1に係る発明において、香醋、エポキシシリコンオイル、アミノシリコンオイル、界面活性剤の配合比率が、香醋5重量部、エポキシシリコンオイル5重量部から30重量部、アミノシリコン5重量部から30重量部、界面活性剤3重量部から15重量部として含有することで、上記請求項1に記載した作用効果を、特に有効に発揮させることができる。
【0014】
また、請求項3若しくは請求項4に係る発明によれば、香醋と、エポキシシリコン成分と、アミノシリコン成分とを界面活性剤で乳化してなる繊維加工用エマルジョンを糸若しくは繊維に対して含浸させることにより、繊維に塗布しても洗濯によって剥がれやすく、また香醋が有色を呈するため繊維の色合いに影響を与えるおそれのある香醋を、色彩に対する影響を与えない範囲で糸若しくは繊維に対して定着させることができ、上記香醋の優れたスキンケア効果を、繰り返し洗濯がなされる状況下において、長期に亘り、発揮させる加工糸若しくは加工繊維とすることができる。
【0015】
そして請求項5若しくは請求項6に係る発明によれば、上記請求項3に係る加工糸若しくは請求項4に係る加工繊維によって、編織物を編成若しくは織成することにより、上記請求項1若しくは請求項2に係る効果、即ち、洗濯耐久性の向上を実現するとともに、当該香醋に含まれるアミノ酸と酢酸を利用することにより、長期間に亘って、前記アミノ酸及び酢酸を保持させて、酢酸による殺菌作用とアミノ酸による肌に対する美白効果を同時に発揮させ、速やかなスキンケア性能を発揮することができる編織物製品を実現できる。
【0016】
更に、請求項7に係る発明によれば、香醋と、エポキシシリコン成分と、アミノシリコン成分とを界面活性剤で乳化してなる繊維加工用エマルジョンを編織物製品に対して直接含浸させて、編織物の編目若しくは織目内に繊維加工用エマルジョンを浸透させることによって、請求項5若しくは請求項6に係る発明と同様に、繊維に塗布しても洗濯によって剥がれやすく、また香醋が有色を呈するため繊維の色合いに影響を与えるおそれのある香醋を、色彩に対する影響を与えない範囲で繊維に対して定着させることができ、上記香醋の優れたスキンケア効果を、繰り返し洗濯がなされる状況下において、長期に亘って発揮させる優れた編織物製品を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、香醋と、エポキシシリコン成分と、アミノシリコン成分とを界面活性剤で乳化してなる繊維加工用エマルジョンとしたことにより、香醋に含まれるアミノ酸及び酢酸を前記エポキシシリコン成分及びアミノシリコン成分でコーティングして、従来よりも優れたシルキータッチの風合いを有することができ、長期間に亘って、前記アミノ酸及び酢酸を保持させることで、肌に対して、酢酸による殺菌作用とアミノ酸による美白効果を同時に発揮させ、速やかなスキンケア機能を発揮する、繊維加工用エマルジョン、繊維加工用エマルジョンにより加工した繊維並びに編織物製品を実現した。
【0018】
本発明における繊維加工用エマルジョンにおける香醋(A)、エポキシシリコンオイル(B)、アミノシリコンオイル(C)、界面活性剤(D)の配合比率が、香醋(A)5重量部、エポキシシリコンオイル(B)5重量部から30重量部、アミノシリコン(C)5重量部から30重量部、界面活性剤(D)3重量部から15重量部として含有させ、水または湯を加え100重量部とする配合割合が好適である。
尚、香醋(A)5重量部に対して、エポキシシリコンオイル(B)が5重量部未満であると、乳化状態が悪く、加工された布帛にシルキーな風合いが得られない傾向が生じ、30重量部を超えると良好な乳化状態が得られない。
また、アミノシリコンオイル(C)が、香醋(A)5重量部に対して、5重量部未満であると繊維加工した布帛に酸臭が発生し、アミノシリコンオイル(C)が、香醋(A)5重量部に対して30重量部を超えると、良好な乳化状態が得られない。
また、界面活性剤(D)が、香醋(A)5重量部に対して、3重量部未満であると、良好な乳化状態が得られず、15重量部を超えると、加工された布帛にシルキーな風合いが得られず、好ましくない。
【0019】
本発明におけるエポキシシリコンオイル(B)は、官能基当量450〜6000、粘度30〜20000の範囲で好適であり、特には、官能基当量450〜2000、粘度30〜200の範囲が、本発明の目的を達成するためには好ましい。尚、エポキシシリコンオイル(B)の官能基当量が450未満の場合、加工された布帛にシルキーな風合いが得られない。また、エポキシシリコンオイル(B)の官能基当量が6000を超える場合には、乳化が困難となる。
【0020】
本発明におけるアミノシリコンオイル(C)は官能基当量450〜20000、粘度60〜35000の範囲で好適である。尚、アミノシリコンオイル(C)の官能基当量が450未満の場合、加工された布帛にヌメリ感のある風合いが得られず、好ましくない。また、アミノシリコンオイル(C)の官能基当量が20000を超える場合には、乳化が困難となる。
【0021】
本発明における界面活性剤(D)としては、特に限定するものではないが、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンセカンダリーアルコールエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル、アルキルサルフェート・ナトリウム塩、アルキルエーテルサルフェート・ナトリウム塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、2,2−ジエチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等とすることができる。
【0022】
またこれらの補助としては、例えば、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(プルロニック非イオン界面活性剤)、ソルビトール、マンニトール、マンノース、キシリトール、トレハロース、マルチトール、オリゴ糖アルコール、レシチン、イソフラボン、ウンデシレン酸、ウンデシレン酸モノグリセライド等を添加できる。
【0023】
エマルジョン加工剤は、木綿、ウール、シルク、麻などの天然繊維、あるいは、レーヨンならびに、ポリエステル、ナイロン、アクリルなどの合成繊維、さらにはそれらの混合物に適宜適用が可能である。
【0024】
その際の加工方法としては、上述の加工剤1〜10%、好ましくは3〜4%と水を混合し、加工液とする。この加工液に木綿等の繊維を浸漬し、パッディング処理をしてマングルで絞り、その後100〜120℃で乾燥後、130〜180℃で1〜3分間熱処理する、いわゆるパッドードライ・キュア方法を行い、さらに、上述の加工剤を繊維の重さの2〜10%分に水を加え100%にする。これを加工液とし、この加工液にデニム等の繊維あるいは繊維布帛、繊維製品を浸漬し、加工浴を撹拌しつつ、30〜80℃、望ましくは30〜50℃まで昇温し5〜30分間浸漬処理を行う。その後、遠心脱水を行いタンブルドライで乾燥を行う。
【0025】
上記加工の際に、本発明の繊維加工用エマルジョン加工剤と必要に応じて各種バインダー、架橋剤などを水に混合し、加工液とし、上記したパッドードライ・キュア法、あるいは、浸漬法、液中処理法、さらには、スプレー法、コーティング法で加工を施すこともできる。
【0026】
繊維製品としては、特に限定するものではないが、例えば、布帛製品、マスク、手袋、靴下、サポーター、肌着、紳士衣料、婦人衣料、帽子、マフラー、室内着、スポーツウェア、ハンカチ、スカーフ、膝掛け、ガーゼ、包帯、シーツ、枕カバー、布団カバー、おむつカバー等が挙げられる。
【実施例1】
【0027】
以下に本発明の実施例1に係る繊維加工用エマルジョンとして、繊維用香醋シリコンエマルジョン加工剤について説明する。
【0028】
本実施例に係る繊維加工用エマルジョン(以下、繊維用香醋シリコンエマルジョン加工剤)は、香醋5重量部、アミノシリコン10重量部、エポキシシリコン10重量部、乳化剤(可溶化剤を含む)10.5重量部、オイル(スクワラン)5重量部、防腐剤0.1重量部を含有する繊維用香醋シリコンエマルジョン加工剤である。
【0029】
本実施例1に係る繊維用香醋シリコンエマルジョン加工剤に用いる香醋は、日本恒順株式会社販売の恒順香醋(商品名)としている。香醋は澱を含有するものであっても使用することができる。
当該香醋は、アミノ酸として、グリシン、プロリン、グルタミン酸、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、リジン、セリン、ロイシン、バリン、メチオニン、スレオニン、フェニルアラニン、イソロイシン、ヒスチジン、チロシン、シスチンを含有する。
尚、本実施例に係る香醋100g中の各種アミノ酸の含有量(恒順香醋(商品名) 日本恒順株式会社 公表値。財団法人食品環境検査協会分析試験結果による。)について、以下表1に例示する。
【表1】

【0030】
本実施例1においては、繊維用香醋シリコンエマルジョン加工剤を用いて、繊維、繊維布帛、繊維製品を加工することにより、従来のシリコンエマルジョン型柔軟剤を用いたものに比べ、シルキーな風合いの加工品を得ることができる。
以下、本発明の実施例1に係る繊維用香醋シリコンエマルジョン加工剤と繊維製品(布帛)の製造方法について説明する。
【0031】
スクワランオイルを5重量部、エポキシシリコンオイルを10重量部、アミノシリコンオイルを10重量部、ポリオキシエチレンセカンダリーアルコールを8重量部、1,3−ブタンジオールを2部、香醋を5重量部、水又は湯を少量ずつ加え、O/W型の乳化物を調製する。
【0032】
調製した加工剤を4重量部、アクリル・シリコン系バインダー(パラゾールGH−S:大原パラヂウム化學株式会社製)2重量部に水を加えて100重量部とした加工液に、綿100%からなる梳毛調織物を含浸し、マングルでピックアップが100%となるように絞った後、110℃で3分間乾燥させる。次いで、該布帛を160℃で1分間、テンター型のベーキングマシンで熱処理を施し、加工製品とする。このようにして得られた加工布帛は、ヌメリ感のある、シルキーな風合いとなった。また、本処方によれば、香醋の添加率によって、香醋の有する色彩が布帛の色彩に影響を与えないものであった。
【0033】
スクワランオイルに対して、アミノシリコン、乳化剤、香醋中のアミノ酸が添加されることによって、ナノサイズ粒子のエマルジョンとなり、シルキータッチを実現する繊維加工用エマルジョンとなる。ここで、香醋中のアミノ酸は、乳化補助剤(可溶化剤)として作用し、乳化剤、アミノシリコンのみではスクワランオイルを含有した状態で十分な乳化が困難であるところ、当該香醋中のアミノ酸が、スクワランオイルのナノ粒子化を促進させ、本実施例1に係る優れた繊維用香醋シリコンエマルジョン加工剤となると考えられる。
【0034】
(比較例1)
アミノシリコンオイル15重量部、エポキシシリコンオイル10重量部、ポリオキシエチレンセカンダリーアルコールエーテル10重量部、アルキルサルフェート・ナトリウム塩を1.2重量部に90%酢酸を0.2重量部滴下後、水又は湯を複数回に分けて加え、乳化した。
【0035】
尚、この乳化して得られた加工剤の場合、本実施例1に係る繊維用香醋シリコンエマルジョン加工剤と同様に、乳化粒子構造は単層となる。得られた加工剤を、本実施例1の加工方法における加工剤に代替して用い、本実施例1の加工方法と同様に綿100%布帛に加工した。
この結果、加工された布帛は、シルキーな風合いを得ることができなかった。
【0036】
(比較例2)
スクワランオイルを5重量部、エポキシシリコンオイルを10重量部、アミノシリコンオイルを10重量部、ポリオキシエチレンセカンダリーアルコールエーテルを8重量部、香醋を15重量部混合し、水又は湯を少量ずつ加え、O/W型の乳化物を調製した。この場合、繊維加工した生地に酸臭が発生し、実用に適しないことが判明した。
【実施例2】
【0037】
また、本発明は、実施例2の処方例として、以下に示す処方で、シルキーな風合いを有する繊維加工用エマルジョンを実現した。本実施例2は単体では多層構造を有するオレンジラフィーオイルを用いるものである。しかしながら、オレンジラフィーオイルは香醋に含有されるアミノ酸によってナノ粒子化されるため、実施例2に係る繊維加工用エマルジョンは、多層構造のマイクロサイズエマルジョンとはならず、実施例1と同様に、より細粒子化された、ナノサイズエマルジョンとなる。
【0038】
本実施例2に係る繊維用香醋シリコンエマルジョン加工剤の製造方法は、オレンジラフィルオイルを5重量部、エポキシシリコンオイルを10重量部、アミノシリコンオイルを10重量部、ポリオキシエチレンセカンダリーアルコールを8重量部、香醋を5重量部混合し、水又は湯を少量ずつ加え、O/W型の乳化物とする。
【0039】
実施例1と同様に、調製した繊維用香醋シリコンエマルジョン加工剤を、4重量部、アクリル・シリコン系バインダー(パラゾールGH−S:大原パラヂウム化學株式会社製)2重量部に水を加えて100重量部とした加工液に、綿100%からなる梳毛調織物を含浸し、マングルでピックアップが100%となるように絞った後、110℃で3分間乾燥した。次いで、該布帛を160℃で1分間、テンター型のベーキングマシンで熱処理を施し、加工製品とした。
【0040】
以上の処方で得られた繊維用香醋シリコンエマルジョン加工剤は、実施例1と同様にナノサイズエマルジョンでありながら、その加工製品は、実施例1に係る加工製品と同様に、ヌメリ感のある、シルキーな風合いとなった。また、本処方によれば、香醋の添加率によって、香醋の有する色彩が布帛の色彩に影響を与えない範囲として、洗濯耐久性に優れ、ヌメリ感のある、シルキーな風合いを実現できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
香醋と、エポキシシリコン成分と、アミノシリコン成分とを界面活性剤で乳化してなる繊維加工用エマルジョン。
【請求項2】
香醋、エポキシシリコンオイル、アミノシリコンオイル、界面活性剤の配合比率が、香醋5重量部に対して、エポキシシリコンオイル5重量部から30重量部、アミノシリコン5重量部から30重量部、界面活性剤3重量部から15重量部として含有することを特徴とする請求項1記載の繊維加工用エマルジョン。
【請求項3】
請求項1又は2記載の繊維加工用エマルジョンでコーティングしてなる加工糸。
【請求項4】
請求項1又は2記載の繊維加工用エマルジョンでコーティングしてなる加工繊維。
【請求項5】
請求項3記載のエマルジョン加工糸によって編成若しくは織成されてなることを特徴とする編織物製品。
【請求項6】
請求項4記載のエマルジョン加工繊維を編成若しくは織成してなる編織物製品。
【請求項7】
請求項1又は2記載の繊維加工用エマルジョンを編織物製品に含浸させてなることを特徴とする加工編織物製品。

【公開番号】特開2011−226012(P2011−226012A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95359(P2010−95359)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(391000232)清川株式会社 (2)
【出願人】(391034938)大原パラヂウム化学株式会社 (19)
【Fターム(参考)】