説明

繊維助剤用の添加組成物

【課題】寸法安定化のための熱処理を行った後でも、満足のいく染色性および均染性を保持することのできる繊維助剤用添加組成物、および当該組成物を用いた、繊維製品(ヤーン、織物または編物など)の処理方法を提供する。
【解決手段】本発明の組成物は、水溶液またはエマルション形態の組成物であり、(a)一般式:NX(C2nOH)で表される1種以上のヒドロキシアルキルアミン(式中、XおよびXは、互いに独立して、水素またはヒドロキシアルキル基であり、nは2〜6の整数である)と、(b)1種以上のアニオン性界面活性剤とを含み、さらに(c)1種以上のチオ尿素(チオカルバミド)、および/または(d)1種以上の凍結防止剤と組合された1種以上のジアルキルスルホサクシネートとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維助剤用の添加組成物に関する。本発明は、特に、繊維の染色性を向上させる繊維助剤用の添加組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維から形成された衣服に対し、使用にかなう寸法安定性を付与するために、しばしばヒートセット処理を実施することが必要になる。エラスタン(スパンデックス)繊維をオプションとして含む合成繊維編物の場合には、特にそうである。
【0003】
そのため、ポリアミド繊維の編物は、エラスタンの含有量に応じて、170〜200℃の温度、さらにはそれ以上の温度で処理される。エラスタンの含有量が多ければ多いほど、所望の寸法安定性を得るためのヒートセット温度も高温になる。
【0004】
しかしながら、ヒートセットには、ヤーンの機械的特性を劣化させるという副作用もあり、特に、ポリアミド繊維の場合に顕著である。機械的特性の劣化自体も望ましくないばかりか、工場や研究室での欠陥品検査により、機械的特性の劣化が、繊維の染色性の低下および均染性の問題とシステマテックに相関関係にあることが判明した。
【0005】
そのため、後続の染色工程において、同一色および所望の色強度を備えた編物を得ることが困難になる。
【0006】
一般的に、熱処理温度の上昇は、機械的特性および染色性の著しい劣化につながる。しかしながら、その劣化の程度は、繊維製品バッチによって大きく異なる。
【0007】
また、同じ欠陥バッチから、様々なタイプの染色欠陥(すじ、色の薄い部分、極めて色の薄い部分(十分に染色されていない))がよく見つかる。
【0008】
この現象はランダムに生じるばかりでなく、染色工程が終わってからでしか確認することができない。均一に染色されていない編物や色が淡すぎる編物は、濃い色で修正するか、または再度染色しなければならないので、格下げ品となる場合が多く、経済損失の主な要因になる。
【0009】
繊維製品業界では、均染剤がよく使用される。均染剤は、染料を染浴中に良好に分散させたり、繊維との親和性によりまたは染料との親和性により効果を発揮したりする。
【0010】
均染剤として、例えば、エトキシ化脂肪族アルコール類、エトキシ化または非エトキシ化脂肪酸類、エトキシ化脂肪族アミン、アルキルフェノール類、脂肪族メルカプタン類などの非イオン性界面活性剤や、重硫酸塩アニオンを含む製品、第四級アンモニウム化合物などが挙げられる。
【0011】
これらの化合物には、取り除くことの難しいものや、生分解性に乏しいものや、さらには有毒なものが含まれるが、それとは別に、これらの化合物は、熱処理後のポリアミド繊維の染色性の低下とか染色むらに対してこれをシステマテックに相殺することはないという欠点を有する。
【0012】
熱処理後の染色性の低下を解決することを目的とした商品の一部には、例えば、N−メチルピロリドン、ヒドロキシルアミン、ポリグリコールエーテル、ブチルジグリコールなどを配合したものが見受けられる。しかしながら、これらの商品の効果はシステマテックでなく、かつ、繊維製品バッチによっても大きく変動する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、寸法安定化のための熱処理後でも、満足のいく染色性および均染性を与えることのできる繊維助剤用添加物が望まれている。特に、出発材料繊維の特性に関係なく、そして、あらゆる熱処理温度域にわたって、特に、実際に利用される180℃を超える、約190℃、約195℃、約200℃以上の温度で、上記の効果が従来以上により一層システマテックに得られる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
驚くべきことに、例えば、湿潤剤や凍結防止剤のような、従来から知られた機能を有する成分のうち、いくつかの特定の成分は、組み合わせて使用されると、相乗効果を示し、170〜210℃(好ましくは170〜200℃)の間で変化する温度で、寸法安定化のための熱処理が施される繊維(例えば、ポリアミド繊維)の機械的特性、染色性および均染性を保持できることが判明した。
【0015】
本発明は、水溶液またはエマルションの形態の組成物に関するものであり、当該組成物は、
(a)一般式:NX(C2nOH)で表される1種以上のヒドロキシアルキルアミン(式中、XおよびXは、互いに独立して、水素またはヒドロキシアルキル基であり、Xの前記ヒドロキシアルキル基は一般式:C(n1)2(n1)OHで表され、Xの前記ヒドロキシアルキル基は一般式:C(n2)2(n2)OHで表され、n,n1およびn2は2〜6の整数である)と、
(b)アルキルサルフェート(alkyl sulfates);アルキルスルホネート(alkyl sulfonates)(パラフィンスルホネート);アルキルアリールスルホネート(alkylaryl sulfonates) ;アルキルエーテルホスフェート(phosphates d’alkylether);およびアルキルカルボキシレート(carboxylates d’alkyle);から選択される1種以上のアニオン性界面活性剤と、を含み、
さらに、下記(c)および/または(d)の化合物の少なくとも1つ含んでいる。
(c)一般式:RN(CS)NR(式中、R,R,R,Rは、互いに独立して、水素または炭素数1〜5の炭化水素基である)で表される1種以上のチオ尿素(チオカルバミド)。
(d)メタノール;イソプロパノール;グリコール類(好ましくは、グリセロール)、エチレングリコール、プロピレングリコール;またはグリコールエーテル類(好ましくは、エチレングリコールエーテル、プロピレングリコールエーテル)から選択される1種以上の凍結防止剤と組合された、1種以上のジアルキルスルホサクシネート(sulfosuccinates de dialkyl)。
【0016】
この組成物は、例えば、ポリアミドなどの繊維の種類に関係なく、高温で熱処理されても、従来の繊維助剤よりも良好に、繊維の機械的特性および染色性を、システマテックに保持することができる。
【0017】
特定の理論に頼るまでもなく、熱処理後の繊維(例えば、ポリアミド繊維)に見られる機械的特性の劣化現象、染色性の低下や均染性の欠如は、繊維の表面酸化現象に関係しているものと考えられる。
【0018】
本発明によれば、熱処理後も染色性を常に安定して保持することができるので、従来の方法における不確実性の問題が解消される。
【0019】
また、染色性を確実に保持できるだけでなく、均染性の向上も図ることができる。
【0020】
本発明にかかる繊維助剤用添加組成物は、水溶液またはエマルションの形態なので、作業者は、危険にさらされることなく、これを取り扱うことができる。また、本発明にかかる組成物は、最少毒性であるので、環境に対してニュートラルであり、そのため、容易に処分でき、かつ、生分解性にも優れている。
【0021】
さらに、本発明にかかる組成物は、ポリアミド繊維に対して優れた濡れ性を有する。
【0022】
また、本発明にかかる組成物は、その組成、特に、ヒドロキシアルキルアミンや金属イオン封鎖剤により、活性成分の沈殿を生じることなく0℃以下の温度で簡単に保存することができる。
【0023】
好ましくは、本発明にかかる組成物において、成分(a)は1〜15重量%、好ましくは2〜10重量%、さらに好ましくは6〜9重量%、成分(b)は10〜50重量%、好ましくは15〜40重量%、さらに好ましくは25〜35重量%、成分(c)および/または成分(d)は3〜15重量%、水は組成物の75重量%未満、好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは50〜60重量%含まれる。
【0024】
好ましくは、本発明にかかる組成物において、金属イオン封鎖剤(agents sequestrants)は0.2〜2重量%含まれる。
【0025】
好ましくは、本発明にかかる組成物において、1種以上のヒドロキシアルキルアミン(a)は、XおよびXが水素を表し、nが2〜6の整数を表す化合物である。
【0026】
好ましくは、1種以上のヒドロキシアルキルアミン(a)は、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンまたはトリエタノールアミンから選択される。
【0027】
好ましくは、本発明にかかる組成物において、アニオン性界面活性剤(b)のアルキル基の炭素数が8〜22、好ましくは10〜18である。
【0028】
好ましくは、本発明にかかる組成物において、チオ尿素(c)は、R,R,RおよびRの少なくとも1つが水素を表す化合物、好ましくは、R,R,RおよびRの全てが水素を表す化合物である。
【0029】
好ましくは、本発明にかかる組成物において、化合物(d)のジアルキルスルホサクシネートのアルキル基の炭素数は8〜22、好ましくは8〜12である。
【0030】
好ましくは、本発明にかかる組成物において、化合物(d)のジアルキルスルホサクシネートは、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選択され、好ましくはナトリウム塩であり、さらに好ましくはジオクチルスルホサクシネートのナトリウム塩である。
【0031】
好ましくは、本発明にかかる組成物において、組成物(d)のグリコールエーテル類は、一般式:R−O−(CH−CH(X))(n3)−O−R’(式中、Xは水素原子またはCH基を表し、RおよびR’は、互いに独立して炭素数1〜5の炭素鎖を有し、n3は1〜10の整数、好ましくは1〜5の整数、さらに好ましくは1である)で表される。
【0032】
好ましい一実施形態において、本発明にかかる組成物は、化合物(a)、(b)、(c)と、金属イオン封鎖剤とを含むか、または化合物(a)、(b)と(d)とを含む。
【0033】
本発明は、さらに、本発明にかかる組成物を水で希釈することで得られる繊維助剤に関する。
【0034】
好ましくは、上記繊維助剤において、水の総含有量は、75重量%を超え、好ましくは95〜99重量%である。
【0035】
さらに好ましくは、上記繊維助剤において、化合物(a)、(b)、(c)および/または(d)で構成される活性成分の総含有量は、0.2重量%から25重量%、好ましくは1〜5重量%である。
【0036】
本発明のさらなる主題は、熱処理され、ついで染色がオプションとして行われることがあるヤーン、織物または編物の処理方法であり、当該処理方法は、熱処理工程の前に、本発明にかかる繊維助剤を含むパッド浴に上記ヤーン、織物または編物を浸漬する前処理工程を具備している。
【0037】
前処理時において、上記織物または編物はローラで絞られ、パッド・マングル処理された織物または編物は、活性成分(a)+(b)+(c)および/または(d)によって被覆され、当該活性成分の量は、ヤーン、織物または編物の乾燥状態の重量に対し、0.1〜5%、好ましくは1〜4%、さらに好ましくは2〜4%である。
【0038】
繊維は、繊維の製造から染色後の最終形態の編物または織物製品に加工されるまでに、紡績、捲糸、編成、製織、寸法安定化処理、染色などの工程において、数多くの様々な処理およびコンディショニングを受ける。
【0039】
したがって、繊維は、多数の添加剤、例えば、湿潤剤、洗浄剤、潤滑剤、帯電防止剤、防腐剤(biocide)、殺菌剤、金属イオン封鎖剤、過酸化水素安定剤、サイズ剤、分散剤、pH安定剤、消泡剤、均染剤、染料、染色促進剤などと接触することとなる。
【0040】
本発明にかかる組成物は、一連の繊維処理工程で用いられる通常の添加剤と共に使用しても特に影響のないことが証明されている。したがって、本発明にかかる組成物を用いた処理工程を、連続する処理工程の群に新たに追加しても、上流の工程や下流の工程を妨げるようなことは全く起きない。
【0041】
本発明にかかる組成物は、染色工程よりも前に実施される寸法安定化のためのヒートセット処理よりも前に、編物および織物の処理ラインに、処理条件を特に変更することなく、投入することができる。
【0042】
本発明にかかる組成物は、水溶液または水性エマルションの形態なので、ヒートセット装置よりも上流のパッド浴中で直接希釈される。
【0043】
本発明は、さらに、熱処理される繊維、および該繊維で形成されたヤーンの破断強度および伸度を保持するための上記繊維助剤の使用に関する。
【0044】
本発明のさらなる主題は、熱処理される繊維、および該繊維で形成されたヤーン、織物または編物の染色性を保持するための上記繊維助剤の使用である。
【0045】
本発明は、さらに、繊維、および繊維で構成されたヤーン、編物または織物のための、上記繊維助剤の均染剤としての使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0046】
[ヒドロキシアルキルアミン(a)]
本発明にかかる組成物に含まれるヒドロキシアルキルアミンは、一般式:NX(C2nOH)(式中、XおよびXは、互いに独立して、水素またはヒドロキシアルキル基であり、Xのヒドロキシアルキル基は一般式:C(n1)2(n1)OHで表され、Xのヒドロキシアルキル基は一般式:C(n2)2(n2)OHで表され、n,n1およびn2は2〜6の整数である)で表される。
【0047】
この化合物は、本発明にかかる添加組成物に低温安定性を付与する。これにより、本発明にかかる添加組成物は、水溶液中に各種化合物の沈殿を生じることなく低温で保存可能となる。また、このヒドロキシアルキルアミンは、本発明にかかる添加組成物および繊維助剤の酸化防止性を強化するので、繊維の染色性保持能力および機械的特性を向上させることができる。
【0048】
上記のドロキシアルキルアミン化合物は、水溶液に加えられることのできるものでなければならない。したがって、好ましくは、アルキル基の炭素数が5以下、すなわち、nが2〜5、さらに好ましくは2または3、任意で、n1および/またはn2も、nが2〜5、さらに好ましくは2または3とされる。
【0049】
上記の化合物として、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが好ましい。
【0050】
好ましくは、本発明にかかる添加組成物は、1種以上のヒドロキシアルキルアミンを、1〜15重量%、2〜15重量%、または3〜10重量%、より好ましくは5〜10重量%、さらに好ましくは6〜9重量%含む。
【0051】
[アニオン性界面活性剤(b)]
アニオン性界面活性剤は、様々な繊維処理工程(洗浄、マーセル加工、漂白など)でとくに使用される湿潤剤であり、
−繊維材料に十分な「濡れ性付与」、
−親油性不純物のエマルジョン化、
−不溶性物質および各種分解物の分散、
などを行う。
【0052】
本発明にかかるアニオン性界面活性剤(b)は、ヒドロキシアルキルアミン(a)と同様に、本発明にかかる添加組成物および繊維助剤に耐酸化特性に寄与する。
【0053】
本発明にかかるアニオン性界面活性剤(b)は、アルキルサルフェート;アルキルスルホネート;アルキルアリールスルホネート;アルキルエーテルホスフェート;およびアルキルカルボキシレート;から選択される。
【0054】
好ましくは、アニオン性界面活性剤(b)のアルキル基の炭素数は8〜22、より好ましくは8〜18、さらに好ましくは10〜18である。また、好ましくは、アニオン性界面活性剤(b)はパラフィン系である。パラフィンサルフェート、パラフィンスルホネート、特に、ラウリル基を有するものが好ましい。
【0055】
好ましくは、アニオン性界面活性剤(b)は、アルカリ金属塩、またはアルカリ土類金属塩、特に、ナトリウム塩またはマグネシウム塩である。
【0056】
本発明にかかる組成物は、1種以上のアニオン性界面活性剤(b)を、10〜50重量%、好ましくは15〜40重量%、より好ましくは20〜40重量%、さらに好ましくは25〜35重量%含む。
【0057】
[化合物(c)]
本発明にかかるチオ尿素は、一般式:RN(CS)NR(式中、R,R,R,Rは、互いに独立して、水素または炭化水素基である)で表され、酸化作用の防止に寄与し得る。本発明にかかる組成物が水溶液に適用される場合、好ましくは、このチオ尿素のR,R,R,Rは互いに独立して水素を表すか、または炭素数1〜5の炭化水素基であり、より好ましくは、式HN(CS)NHで表わされるチオ尿素ある。
【0058】
このチオ尿素を、水溶液中、特に、低温の水溶液中で安定させるには、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、NTA(ニトリロ三酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、ホスホン酸、グルコン酸、ホスホネート、グルコネート、ポリアクリレートなどの金属イオン封鎖剤(agents sequestrants)が必要になる。EDTA、NTA、DTPAなどが特に好ましい。
【0059】
金属イオン封鎖剤が含まれる場合には、当該金属イオン封鎖剤は、組成物(c)の一部を形成する。
【0060】
本発明にかかる組成物において、化合物(c)は2〜10重量%、好ましくは3〜7重量%、さらに好ましくは4〜5重量%含まれる。
【0061】
なお、組成物(c)に含まれるチオ尿素の種類に応じて、金属イオン封鎖剤とチオ尿素との割合は変化させてもよい。好ましくは、金属イオン封鎖剤は、本発明にかかる添加組成物に約0.2〜約2%含まれる。
【0062】
また、毒性の懸念、環境に対する配慮、規制の遵守などを考慮した場合、上記チオ尿素の一部または全体を、湿潤剤および凍結防止剤として機能する化合物(d)と置き換えてもよい。
【0063】
[化合物(d)]
組成物(d)に含まれる湿潤剤は、以下の一般式で表されるジアルキルスルホサクシネートである。
【0064】
【化1】

(式中、RおよびRは、互いに独立して、炭素数6〜22、好ましくは炭素数6〜12のアルキル基を表す。)
【0065】
好ましくは、上記化合物は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩であることが好ましく、さらに好ましくはナトリウム塩である。
【0066】
好ましくは、ジヘキシル、ジヘプチル、ジオクチル、ジノニルスルホサクシネートのナトリウム塩が使用される。
【0067】
組成物(d)に含まれる凍結防止剤は、メタノール、イソプロパノールなどのアルコール;グリセロールなどのグリコール;またはエチレングリコールエーテル、プロピレングリコールエーテルなどのグリコールエーテル;である。
【0068】
組成物(d)のグリコールエーテルは、一般式:R−O−(CH−CH(X))(n3)−O−R’(式中、Xは水素原子またはCH基を表し、RおよびR’は、互いに独立して炭素数1〜5の炭素鎖を有し、n3は1〜10の整数、好ましくは1〜5の整数、さらに好ましくは1である。)で表わされる。
【0069】
グリコールエーテルの中でも、モノエチレングリコールエーテル、モノプロピレングリコールエーテルが好ましい。
【0070】
本発明にかかる組成物において、組成物(d)は、1〜15重量%、好ましくは2〜12重量%、さらに好ましくは3〜5重量%含まれる。
【0071】
酸化防止剤としても機能し得る組成物(d)において、ジアルキルスルホサクシネートと凍結防止剤との比率は、適宜に設定されてよい。好ましくは、本発明にかかる添加組成物に含まれるこれらの化合物の重量%は互いに同一である。
【0072】
[活性成分と、水溶液またはエマルション]
本発明にかかる組成物は、活性成分として、化合物(a)、(b)、(c)および/または(d)を含む。本発明にかかる組成物は、水以外に、当該組成物の用途に適した添加剤として、任意の化合物、例えば、消泡剤などを含んでいてもよい。
【0073】
本発明にかかる組成物は、水溶液または水性エマルションの形態で使用される。本発明にかかる組成物に、水溶性の化合物を配合すること好ましい。
【0074】
本発明にかかる組成物は、水で少し希釈された、活性成分の濃縮物である。この濃縮物は、例えば、水を75重量%未満、好ましくは10〜70重量%、より好ましくは50〜60重量%、さらに好ましくは55〜60重量%含む。
【0075】
[繊維助剤]
本発明にかかる繊維助剤は、例えば、前述した活性成分の濃縮物を水で希釈することによって調製される。例えば、繊維助剤における水の総含有量が75重量%を超えるように、好ましくは95〜99重量%になるように、濃縮物を希釈してもよい。
【0076】
また、本発明にかかる繊維助剤において、化合物(a)、(b)、(c)および/または(d)で構成される活性成分の総含有量は、0.2重量%から25重量%、好ましくは1〜5重量%である。
【0077】
上述の繊維助剤は、均染剤として使用されるか、繊維、または繊維で構成されたヤーン、織物もしくは編物の機械的特性および染色性を保持するために使用される。
【0078】
[均染剤としての使用]
均染剤は、当業者にとって周知のカテゴリーの繊維助剤であり、その機能は、繊維内に染料を均一に分布させることである。均染性が十分でないと、例えば、染色された織物または編物製品において、ばらばらの色強度を有する部分、まだら、すじなどが発生する。不均一かつ粗雑な染色製品には、商品としての価値がなく、また、修正も困難である。
【0079】
しかし、本発明にかかる助剤で処理した繊維製品を視認したところ、どの製品の均染性も優れており、上記のような欠陥部位が全く見られなかった。
【0080】
[熱処理時の機械的特性の保持]
我々が注目している機械的特性は破断強度と極限伸度であり、これらの特性については、後述の実施例で詳しく取り扱うことにする。実施例では、熱処理時の破断強度および極限伸度の低下が、染色の欠陥につながることが判明した。なお、破断強度および極限伸度は、UNI EN ISO 2026規格に準拠して、ヤーンについて測定した。
【0081】
本発明にかかる繊維助剤で前処理されたヤーンの機械的特性は、熱処理、特に、温度が約170℃から約210℃の熱処理、好ましくは温度が約180℃から約200℃の熱処理による影響を受けない。
【0082】
[熱処理時の染色性を保持するための使用]
繊維の染色性が低いと、所望の色調よりも色が薄いヤーン、布帛または編物に仕上がってしまう。
【0083】
本発明にかかる繊維助剤で前処理された繊維で構成される繊維、ヤーン、布帛、編物などの染色性は、熱処理、特に、温度が約170℃から約210℃の熱処理、好ましくは温度が約180℃から約200℃の熱処理による影響を受けない。
【0084】
[繊維]
繊維は、天然植物由来の繊維、例えば、亜麻、綿、黄麻(ジュート)、大麻(ヘンプ)、または動物由来の繊維、例えば、アルパカ、アンゴラ、カシミア、ウール、シルクなどでもよい。
【0085】
繊維は、人造繊維であってもよい。人造繊維は、天然の材料を化学処理(溶解そして凝固)することで得られる。そのような天然の材料として、例えば、ラニタール(lanital)に用いられる乳カゼイン、ビスコースに用いられる各種植物(松樹皮、竹、大豆、樺など)のセルロースなどが挙げられる。このカテゴリーの繊維には、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、ビスコースなどが含まれる。
【0086】
最後に、合成繊維が使用されてもよい。合成繊維は、結晶性ポリマーであり、ダイを通して得られる。例えば、炭化水素または澱粉由来のポリマー顆粒を押出すことで得られる。例えば、ポリ乳酸ポリマー繊維、アクリルポリマー繊維、ポリアミド繊維、アラミド(芳香族ポリアミド)繊維、PVCから得られる含塩素繊維、ポリウレタン繊維、ポリウレタン誘導体由来のエラスタン繊維(ライクラ)、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリフェノール系繊維などが挙げられる。
【0087】
本発明にかかる繊維助剤は、長繊維およびヤーン、特に、合成繊維、より具体的には、加熱下で機械的特性および染色性の劣化問題が生じる合成繊維に対して使用される。
【0088】
特に好ましくは、ポリアミドまたはポリアミド誘導体(例えば、アラミド誘導体)の長繊維もしくはヤーンに対して使用される。
【0089】
ポリアミド(PA)とは、「アミド」基:N−H−C=Oを有するあらゆるポリマーのことを指す。アミド基は、アミンと酸とを反応させることで得られる。
【0090】
脂肪族ポリアミドは、一般的に、ポリマーの繰り返し単位に含まれる炭素原子の数(炭素数)で表される。
【0091】
例えば、PA6、PA11、PA12は、それぞれ、炭素数6、11、12のアミノ酸またはラクタムの繰り返し単位を重合して得られたポリアミドを指す。また、PA66、PA46、PA6・10、PA6・12は、二塩基酸とジアミンとを重縮合して得られたポリアミドを指す。後者の場合、最初の数字がジアミンの炭素数に相当し、次の数字が二塩基酸の炭素数に相当する。一方、芳香族ポリアミドについては、正確なルールの表記では表記されず、例えば、PAA(ポリアリールアミド)、PPA(ポリフタルアミド)などと表記される。
【0092】
主なポリアミド繊維として、ナイロン、すなわち、ポリヘキサメチレンアジパミド、PA66繊維が含まれる。
【0093】
「アラミド」とは、芳香族ポリアミドから製造される合成繊維のカテゴリーを指す。ポリ−p−フェニレンジアミンから得られるもの(例えば、ケブラー(登録商標)やトワロン(登録商標)など)が最もよく知られている。他の種類のアラミド繊維、例えば、ポリ−m−フェニレンジアミンから得られる繊維なども知られている。
【0094】
[ヤーン]
約40mmから約80mmの長さの天然繊維は、紡績によりヤーンに加工される。合成繊維の場合、ポリマーがダイから直接押出されてヤーンになる。
【0095】
ダイから出たヤーンは、そのまま使用されるか、あるいは、天然繊維と同様に適当な繊維長に切断してから混ぜ合わせることにより、同じ、または異なる材料で構成されたロービング糸となる。このロービング糸を引き伸ばすことにより、織物または編物を製造するための連続ヤーンが得られる。
【0096】
また、数本の連続ヤーン(互いに異なる種類のヤーンを含み得る)を組み合わせて、最終的に衣服、例えば、織物または編物を製造するためのヤーンとしてもよい。
【0097】
したがって、ヤーンには、前述した様々な材料で構成されたヤーン、特に、様々な合成繊維で構成されたヤーン、例えば、弾性を付与するためのエラスタン繊維とポリアミド繊維とを組み合わせたヤーンも含まれる。一般的に、エラスタンの重量比は、ヤーン、織物または編物の0.1〜40重量%である。
【0098】
本発明にかかる繊維助剤の使用は、特に、エラスタンを含むヤーンで構成された、寸法固定化のための熱処理を必要とする繊維製品に適している。一般的に、本発明にかかる使用は、エラスタンを40重量%まで、好ましくは25重量%まで含む繊維製品に適している。
【0099】
繊維製品とは、広義には、ヤーンから製作されたもの、例えば、織物、編物、不織物などをいう。
【0100】
[織物]
織物は、同一平面上において縦方向に配置されたヤーンと縦方向に直交する方向に配置されたヤーンとを互いに交叉させて製織することで得られる。
【0101】
[編物]
編物(tricot;maille)は、複数のループが互いに交わった伸縮性の布帛のことをいう。編物は、横方向のヤーンと縦方向のヤーンとで一般的に構成される他の繊維製品とは異なり、単一のヤーンから構成され、編み針でループを形成しながら巻きつけることで得られる。どの種類の繊維も編物にすることができる。なお、メリヤス(bonneterie)は、ある一部の編物を指す用語である。
【0102】
本発明にかかる繊維助剤の使用は、特に編物に適している。というのも、編物は伸縮性を有しており、かつ、寸法を固定するための熱処理を必要とするからである。また、本発明にかかる繊維助剤の使用は、エラスタンを含む編物になおいっそう適している。
【0103】
さらに、本発明にかかる繊維助剤の使用は、ポリアミドおよびエラスタンの組合せを含む編物、特に、エラスタンを0.1〜25%含む編物に大いに適している。
【0104】
[ヤーン、織物または編物の前処理方法]
本発明は、さらに、本発明に係る前述の繊維助剤を用いた、ヤーン、織物または編物の処理方法、より厳密には、前処理方法に関する。
【0105】
本発明に係る方法の目的は、繊維で構成された編物もしくは織物の均染性を向上させたり、そのような編物もしくは織物の機械的特性もしくは染色性を、熱処理において保持したりすることである。
【0106】
この前処理方法の主な特徴として、熱処理工程(例えば、寸法安定化のためのヒートセット)及び染色工程の前に実施される点が挙げられる。
【0107】
本発明の処理方法は、
・本発明にかかる繊維助剤を含む処理浴(パッド浴と称される)中での浸漬工程と、
・ヤーン、織物または編物の表面に、(a)+(b)+(c)および/または(d)で構成される活性成分の所望の量を付着させるパッド・マングル(ローラで絞る)工程と、を含む。
【0108】
好ましくは、(a)+(b)+(c)および/または(d)で構成される、活性成分の量は、ヤーン、織物または編物の乾燥状態の重量に対し、0.1〜5重量%、好ましくは1〜4重量%、さらに好ましくは2〜4重量%である。
【0109】
また、前記パッド・マングル工程は、ヤーンもしくは衣服の乾燥状態の重量に対する、絞り出される繊維助剤の重量%、またはそれに対応して、ヤーンもしくは衣服の乾燥状態の重量に対する、絞り出されずに残った繊維助剤の重量%を示すピックアップ%の表記で特徴づけることができる。
【0110】
この方法は、バッチ式でも、生産工程向きの連続式のどちらでもよい。
【0111】
連続式の方法の場合、ヤーン、織物、または編物は、一般的に、槽内において約1から約20m/分の速度でパッド浴を通過するか、または約数秒から約数十秒、一般的に、1分間未満浸漬される。
【0112】
パッド・マングル工程は、2本の絞りローラの離間距離を、ヤーン、織物および編物に所望の量の活性成分が付着するように調節して行なわれる。
【0113】
このようにして、前処理された繊維、織物または編物は、熱処理され、オプションとして染色される。
【0114】
本発明にかかる前処理方法は、従来の処理方法を妨げるものではなく、かつ、特に変更を必要とするものでもない。
【実施例】
【0115】
[実施例1:寸法安定化のためのヒートセット処理後のポリアミドヤーンの機械的特性の劣化と、染色性低下との相関関係]
12本のフィラメント糸で構成され、44decitex(44グラム/10000メートル)の長さ単位あたり重量を有するポリアミドヤーン(ナイロン6)編物の数個のバッチを検討した。
【0116】
各バッチの編物を、寸法安定化のための185℃の熱処理にかけた後、含金属染料で染色した。
【0117】
各バッチの編物について、主な染色欠陥を有する部分(色の薄い部位)と、所望の色の濃さを有する部分(標準の濃さを有する部分)とを別々にした後、これら2つの部分をほどき、それぞれの対応するポリアミドヤーンの機械的特性(破断強度および伸度)を測定した。
【0118】
破断強度および極限伸度は、計測装置(Hounsfield H5KS)を用いて、UNI EN ISO 2026規格に準拠して測定する。
【0119】
ヤーンの破断強度は、そのヤーンを破断するのに必要な力に相当し、cN/tex(1tex=1000メートル)で表される。
伸度は、破断強度と同時に測定し、破断直前の相対的な伸びを表す。その単位は、lf−li/lfであり、lfは破断直前の最大長さを表し、liは測定前の初期長さを表す。測定結果を以下の表1にまとめた。
【0120】
【表1】

【0121】
ヤーンのdecitex値が熱処理の影響を受けていないことは明らかである。バッチ間の僅かな違いは、方法の再現性および製造プロセス上の変動によるものである。
【0122】
その一方、各バッチを同一の染色条件下で染色した結果、「薄い」色のヤーン部分の破断強度および伸度は、どのバッチでもシステマテック(系統的)に低いことが判明した。
【0123】
詳細には、各バッチ1、2、3、4、5の「標準」のヤーンの破断強度は、対応する「薄い」ヤーンの破断強度よりも、それぞれ、4%、13%、15%、15.5%、19%高くなっている。
【0124】
同様に、各バッチ1、2、3、4、5の「標準」のヤーンの伸度は、対応する「薄い」ヤーンの伸度よりも、それぞれ、11%、10.5%、14.5%、26%、33%高くなっている。
【0125】
つまり、熱処理されたバッチのある部分における染色性の低下は、破断強度および伸度が低い部分にシステマテックに(規則的に)見受けられた。
【0126】
[実施例2:本発明にかかる前処理が機械的特性および染色性に及ぼす影響]
(前処理を施さなかい場合)
48本のフィラメント糸で構成された、44decitexのPA66ポリアミドヤーン編物のバッチを検討した。このヤーンは、3本のフィラメント糸で構成されたエラスタンヤーンと交編されて、20%エラスタンを含む編物を形成している(バッチ6)。
【0127】
このバッチの編物は、染色欠陥を理由に顧客から返品されたものである。使用された染料は濃い紫色の酸性染料であった。この染料は、熱処理されたポリアミド製編物に適用する場合、持続的な均一な染色をすることが特に難しいとされている染料である。
【0128】
顧客が返品した品物(バッチ6)における問題の部分は、以下の工程を経たものであった。
【0129】
(熱処理)
この編物は、水のみを含むパッド浴に通され、2本の絞りローラでマングル処理された。
【0130】
次に、しわ防止のためにピン止めされた状態で、ヒートセット装置に188℃で約30秒間通された。
【0131】
(染色)
次に、この編物は、ジェット装置を用いて染色された。
【0132】
以上の処理を経たバッチ6の部分には、染色の不均一性が認められた。また、全体的に、所望の色の濃さよりも薄い色に染色されていた。詳細には、この編物は、次の3種類の部分を有していた:
・ 色の極めて薄い部分、
・ 「すじ」を有する、中程度に色の薄い部分、および
・ 色の極めて淡い部位と色の濃い部位との両方(すじ)を有する部分
【0133】
これら各部分をほどいて取り出したポリアミドヤーンについて、それぞれのdecitex値、伸度および破断強度を、UNI EN ISO 2026規格に準拠して測定した。測定結果を以下の表2にまとめた。
【0134】
【表2】

【0135】
(上流での前処理)
顧客からの返品後のものに加えて、熱処理および染色のいずれも施されていない、バッチ6の同じ編物の残りの部分について、追加の試験を実施した。
【0136】
この残りの部分に対し、前述したものと同じ条件で前処理および染色を施した。ただし、この試験では、本発明にかかる組成物C1をパッド浴の水に対して10重量%添加した。この組成物C1は、以下の組成であった。
(a)8重量%のトリエタノールアミン、
(b)30重量%のパラフィンスルホネート、
(c)8重量%のチオ尿素および1重量%のEDTA、
ならびに、必要量の水。
【0137】
パッド浴の下流に配置された絞りローラの間隔は、ピックアップ率が約60%になるように、すなわち、活性成分(水を除く)が編物に、約3.5g/100g(乾燥編物)付着するように調節された。
【0138】
このように処理されたサンプルは、工業的スケールの大きさであり、約500Kgのヤーンが処理された。染色後のサンプルの色は、全体として、均一な外観および所望の色調(標準の色濃度)を示した。
【0139】
ほどいて取り出したポリアミドヤーンについて、伸度および破断強度を、UNI EN ISO 2026規格に準拠して測定した。測定結果を以下の表3にまとめた。
【0140】
【表3】

【0141】
この測定結果から、本発明にかかる前処理を施したヤーンの機械的特性が、表2に挙げた前処理を施していないヤーンの機械的特性よりもシステマテックに(系統的に)優れており、詳細には、色の薄い部分および極めて色の薄い部分の機械的特性よりも遥かに優れている(伸度は13%、18%高くなり、破断強度は8%、11%高くなっている)ことが分かる。
【0142】
前処理の効果は、均染性および色の深さの向上から視認することができた。
したがって、本発明にかかる組成物を用いた前処理は、繊維の染色性の保持を可能にし、かつ、均染性を向上させることもできる。
【0143】
(本発明にかかる組成物を用いた下流での処理)
バッチ6と全く同一の、48本のフィラメント糸で構成された、44decitexのPA66ポリアミドヤーン編物を、バッチ6の場合と同じ条件で前処理および染色を行った。
【0144】
この編物(バッチ7)は、バッチ6と同じスプールからのポリアミドヤーンを用いて製作された編物であるが、バッチ6のヤーンとは異なり、成形(テクスチュアリング)時に予め熱処理が施されている。
【0145】
染色結果は、下記の通りであった。この編物の色濃度は、本発明にかかる組成物を用いて処理をしたにもかかわらず、非常に薄い色を示した(「極めて色の薄い」に相当)。なお、この本発明にかかる組成物を用いた処理は、前記成形時の熱処理後で、寸法安定化のためのヒートセット前に実施された。
【0146】
ほどいて取り出したポリアミドヤーンについて、破断強度および極限伸度を、UNI EN ISO 2026規格に準拠して測定した。測定結果を以下の表5にまとめた。
【0147】
【表5】

【0148】
この測定結果から、バッチ7の機械的特性は、バッチ6の「極めて色の薄い」部分の機械的特性と同程度に乏しいことが分かる。おそらく、上流での成形時での温度上昇が繊維を酸化させたことにより、機械的特性および染色性が劣化したものと考えられる。
【0149】
したがって、本発明にかかる組成物は、既に熱処理が施されたポリアミド繊維については、その機械的特性および染色性を復元することはできない。本発明にかかる組成物を用いた処理は、熱処理前に、前処理の形態で適用される必要がある。
【0150】
[実施例3:前処理液の種類]
実施例2の前処理を、本発明にかかる組成物C2を用いて再現した。この組成物C2は、以下の組成であった:
(a)12重量%のトリエタノールアミン、
(b)25重量%のパラフィンスルホネート、
(d)8重量%のスルホサクシネートおよび6重量%のプロピレングリコールエーテル、
ならびに、必要量の水。
【0151】
本発明にかかる組成物C2を用いた前処理を施したヤーンは、組成物C1を用いた場合と同じく、その機械的特性に向上が見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液またはエマルション形態の組成物であって、
(a)一般式:NX(C2nOH)で表される1種以上のヒドロキシアルキルアミン(式中、XおよびXは、互いに独立して、水素またはヒドロキシアルキル基であり、Xの前記ヒドロキシアルキル基は一般式:C(n1)2(n1)OHで表され、Xの前記ヒドロキシアルキル基は一般式:C(n2)2(n2)OHで表され、n,n1およびn2は2〜6の整数である)と、
(b)アルキルサルフェート;アルキルスルホネート(パラフィンスルホネートなど);アルキルアリールスルホネート;アルキルエーテルホスフェート;およびアルキルカルボキシレート;から選択される1種以上のアニオン性界面活性剤と、を含み、
さらに、下記(c)および/または(d)の少なくとも1つの化合物を含む、組成物。
(c)一般式:RN(CS)NR(式中、R,R,R,Rは、互いに独立して、水素または炭素数1〜5の炭化水素基である)で表される1種以上のチオ尿素(チオカルバミド)。
(d)メタノール;イソプロパノール;グリコール類(好ましくは、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール);またはグリコールエーテル類(好ましくは、エチレングリコールエーテル、プロピレングリコールエーテル);から選択される1種以上の凍結防止剤と組合された、1種以上のジアルキルスルホサクシネート。
【請求項2】
請求項1において、化合物(c)が、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、NTA(ニトリロ三酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、ホスホン酸、グルコン酸、ホスホネート、グルコネート、およびポリアクリレートから選択される(好ましくは、EDTA、NTAまたはDTPAである)、1種以上の金属イオン封鎖剤を含む、組成物。
【請求項3】
請求項1または2において、成分(a)を1〜15重量%(好ましくは2〜10重量%、さらに好ましくは6〜9重量%)、成分(b)を10〜50重量%(好ましくは15〜40重量%、さらに好ましくは25〜35重量%)、成分(c)および/または成分(d)を3〜15重量%、水を75重量%未満(好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは50〜60重量%)含む、組成物。
【請求項4】
請求項2または3において、1種以上の金属イオン封鎖剤を組成物中に0.2〜2重量%含む、組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項において、1種以上のヒドロキシアルキルアミン(a)が、XおよびXが水素を表し、nが2〜6の整数を表す化合物である、組成物。
【請求項6】
請求項5において、1種以上のヒドロキシアルキルアミン(a)が、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンまたはトリエタノールアミンから選択される、組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項において、アニオン性界面活性剤(b)のアルキル基の炭素数が8〜22(好ましくは10〜18)である、組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項において、チオ尿素化合物(c)における、R,R,RおよびRの少なくとも1つが水素を表している(好ましくは、R,R,RおよびRの全てが水素を表している)、組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項において、化合物(d)のジアルキルスルホサクシネートのアルキル基は、炭素数が8〜22(好ましくは8〜12)を含んでいる、組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項において、化合物(d)は、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選択された化合物(好ましくはナトリウム塩、さらに好ましくはジオクチルスルホサクシネートのナトリウム塩)である、組成物。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項において、組成物(d)のグリコールエーテル類が、一般式:R−O−(CH−CH(X))(n3)−O−R’[式中、Xは水素原子またはCH基を表し、RおよびR’は、互いに独立して炭素数1〜5の炭素鎖を有し、n3は1〜10の整数(好ましくは1〜5の整数、さらに好ましくは1)である]で表される、組成物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項において、成分(a)と、成分(b)と、成分(c)と、金属イオン封鎖剤とを含む、組成物。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項において、成分(a)と、成分(b)と、成分(d)とを含む、組成物。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物を水で希釈した繊維助剤。
【請求項15】
請求項14において、水の総含有量が、75重量%を超えている(好ましくは95〜99重量%である)繊維助剤。
【請求項16】
請求項15において、化合物(a)、(b)、(c)および/または(d)で構成される活性成分の総含有量が、0.2重量%から25重量%(好ましくは1〜5重量%)である、繊維助剤。
【請求項17】
請求項14から16のいずれか一項に記載の繊維助剤の使用であって、熱処理される繊維および前記熱処理繊維で構成されたヤーンの破断強度および極限伸度を保持するための使用。
【請求項18】
請求項14から16のいずれか一項に記載の繊維助剤の使用であって、熱処理される繊維、または熱処理される繊維で形成されたヤーン、織物もしくは編物の染色性を保持するための使用。
【請求項19】
請求項14から16のいずれか一項に記載の繊維助剤の使用であって、繊維、または繊維で形成されたヤーン、編物もしくは織物の均染剤としての使用。
【請求項20】
請求項17から19において、繊維が合成繊維(好ましくはポリアミド繊維またはアラミド繊維)である、使用。
【請求項21】
請求項17から19において、ヤーン、織物または編物が、エラスタン繊維を、他の繊維と共に含んでいる、使用。
【請求項22】
請求項17または18において、熱処理が170〜210℃(好ましくは180〜200℃)で行われる、使用。
【請求項23】
請求項22において、熱処理が、ヤーン、織物または編物の寸法安定化のために行われる処理である、使用。
【請求項24】
ヤーン、織物または編物の処理方法であって、
請求項14から16のいずれか一項に記載の繊維助剤に、ヤーン、織物または編物を浸漬する前処理工程と、ついで、ヤーン、織物または編物の寸法安定性を確保するための熱処理を行う工程と、を含み、
さらに、熱処理後のオプションとして、染色工程を含む、ヤーン、織物または編物の処理方法。
【請求項25】
請求項24において、前処理の後に、織物または編物を、パッド・マングル処理する工程、を含み、処理された織物または編物は、(a)+(b)+(c)および/または(d)とから構成される活性成分によって被覆され、前記活性成分の量は、前記織物または編物の乾燥状態の重量に対し、0.1〜5%(好ましくは1〜4%、さらに好ましくは2〜4%)である、ヤーン、織物または編物の処理方法。

【公表番号】特表2011−521115(P2011−521115A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509029(P2011−509029)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【国際出願番号】PCT/IB2009/005570
【国際公開番号】WO2009/138851
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(505036674)トータル・ラフィナージュ・マーケティング (39)
【Fターム(参考)】