説明

繊維及びそれを含む合成シート及び低発塵紙

【課題】本発明は、種々の機器に使用することが可能な、表面からの塵の発生が少ない繊維及びシートを得ることを目的とする。また、均一性に優れるシートを得ることを目的とする。
【解決手段】数平均分子量(Mn)が500〜7500であるワックスを主成分とする繊維を提供する。また、当該繊維からなる合成パルプを提供する。更には、当該繊維又は当該合成パルプからなる発塵抑制材を提供する。また、合成シート、及び、低発塵紙を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワックスを主成分とする繊維に関する。更には、当該繊維を含む合成パルプ及び発塵抑制材並びにそれを用いてなる低発塵紙に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンルーム内でLSI等の電子部品を実装する場合には、例えば金属面や金属メッキ面を有する電子部品用基材に用いる金属薄板を重ね合わせる際に紙が使用され、この電子部品用基材のコアのパターンに合うように紙に穴あけ加工が施される。この加工時には、紙粉、すなわち塵が紙の穴部断面で発生し、この断面積が増加する程、発塵量が多くなる。この塵が電子部品用基材のピンの間に付着すると、製造された電子部品用基材が実際の部品に使用され、電流が流された時に焼き付きが起こり、回路の中でショートする等の問題が生じる。
【0003】
発塵を抑える方法として、樹脂エマルジョンや水溶液を紙に含浸させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、かかる方法は、樹脂を使用するため、オンマシンで樹脂を含浸する(抄紙機内で樹脂を含浸する)場合には生産速度が低くなるので操業性が悪くなり、一方、オフマシンで樹脂を含浸する(抄紙機とは別工程で樹脂を含浸する)場合には抄紙機とは別工程であるため製造コストがアップするという問題がある。
また、LBKP(広葉樹晒しクラフトパルプ)を80重量%配合してなる低発塵紙が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、かかる方法でも、塵の発生が多く、得られるシートが均一性に劣る虞がある。
【0004】
【特許文献1】特開2003−211614号公報
【特許文献2】特開2007−31869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、種々の機器に使用することが可能な、表面からの塵の発生が少ない繊維及びシートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、特定のワックスを主成分とする繊維を用いたシートが表面からの塵の発生が少ないことを見出した。
すなわち、本発明は、以下のようになる。
【0007】
『[1]数平均分子量(Mn)が500〜7500であるワックスを主成分とする繊維。
[2]ワックスがエチレン系重合体ワックスである[1]記載の繊維。
[3]他成分として、エチレン系樹脂を50〜10重量%(但し、ワックス+エチレン系樹脂=100重量%とする)含有する[1]又は[2]記載の繊維。
[4][1]〜[3]のいずれかに記載の繊維からなる合成パルプ。
[5][1]〜[3]のいずれかに記載の繊維又は請求項4記載の合成パルプからなる発塵抑制材。
[6][5]記載の発塵抑制材を含む合成シート。
[7]天然パルプを含有する[6]記載の合成シート。
[8][6]又は[7]記載の合成シートからなる低発塵紙。』
【発明の効果】
【0008】
本発明の繊維を含む合成シートは、表面から塵が発生することが少ない。また、湿式抄紙法によりシート化出来るため均一性に優れる。更に、カレンダ処理のみにより表面から塵の発生を少なくすることが出来るので製造工程が簡素化できる。塵が発生することが少ないので、クリーンルーム内で使用される工程紙、医療現場で使用されるカルテ等に好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
ワックス
本発明に係わるワックスは、天然ワックス、合成ワックスのいずれでもよく、天然ワックスとしては植物系ワックス、石油系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス等が挙げられる。ワックスとして、具体的にはカルナウバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、モンタン誘導ワックス、セレシンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの天然ワックス;ポリエチレンワックスまたはそのカルボキシル変性ワックス、酸化ポリエチレンワックスまたはそのカルボキシル変性ワックス、グリコール変性酸化ポリエチレンワックス等のエチレン系重合体ワックス;ポリプロピレンワックスまたはそのカルボキシル変性ワックス、酸化ポリプロピレンワックスまたはそのカルボキシル変性ワックス、グリコール変性酸化ポリプロピレンワックスなどのプロピレン系重合体ワックス;その他フィッシャートロプシュワックス、アマイドワックス、エチレン−アクリル酸共重合体ワックス等の合成ワックス等が挙げられる。
これらワックスの中でも、エチレン系重合体ワックスあるいはプロピレン系重合体ワックス等のポリオレフィン系ワックスが好ましい。特に、ポリオレフィン系ワックスの中でも、混合する樹脂との相溶性を考慮するとエチレン重合体系ワックスであることが好ましい。
【0010】
本発明に係るワックスは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量(Mn)が500〜7500であり、好ましくは600〜4000、より好ましくは800〜3000の範囲にある。分子量が大きすぎると得られる繊維をカレンダ処理する際に繊維同士の結合が小さくなり、繊維自体が発塵源となる虞がある。
【0011】
エチレン系重合体ワックス
本発明に係るエチレン系重合体ワックスは、エチレンの単独重合体またはエチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンあるいは酢酸ビニル、メタクリル酸メチル等のビニル化合物との共重合体からなる。α−オレフィンとしては、好ましくは炭素原子数3〜10のα−オレフィンであり、より好ましくはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンであり、特に好ましくはプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンである。また、ビニル化合物との共重合体としてはエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体などが挙げられる。
エチレン系共重合体ワックスは、マレイン酸やアクリル酸により変性されていてもよい。
【0012】
本発明に係るエチレン系重合体ワックスは、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が、好ましくは65〜130℃、より好ましくは80〜130℃、さらに好ましくは100〜120℃の範囲にある。融点がこの範囲にあれば湿式抄紙工程における乾燥工程でかかる熱に対して安定なので好ましい。融点が低すぎる場合は、繊維にした際に乾燥工程でドライヤーに貼りつきやすくなる虞がある。
【0013】
本発明に係るエチレン系重合体ワックスは、密度勾配管法で測定した密度が、好ましくは850〜980kg/m3、より好ましくは910〜960kg/m3、さらに好ましくは925〜960kg/m3の範囲にある。密度がこの範囲にあればカレンダ処理による繊維同士の結合が強固になるので好ましい。
【0014】
本発明に係わるエチレン系重合体ワックスは、アセトン抽出分量が、好ましくは0〜20重量%、より好ましくは0〜15重量%の範囲にある。なお、アセトン抽出分量は以下のようにして測定される。ソックスレー抽出器(ガラス製)により、フィルター(ADVANCE社製、No.84)を使用し、ワックス10gをフィルター上にセットして、下段の丸底フラスコ(300ml)にアセトン200mlを装入し70℃の湯浴で5時間抽出を行う。
本発明に係るエチレン系重合体ワックスは、例えば周期表第4族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物および/またはイオン化イオン性化合物とからなる以下のようなメタロセン系触媒を用いて製造することができる
【0015】
繊維
本発明の繊維は、前記ワックスを主成分とする繊維である。主成分とするとは、ワッスクを繊維中に50重量%以上、好ましくは60〜90重量%、更に好ましくは70〜80重量%含んでいることをいう。ワックスに熱可塑性樹脂を10重量%以上混合することにより、ワックスを繊維化することが容易となるので好ましい。
本発明の繊維は、通常、繊維径が0.1〜200μm、好ましくは0.5〜100μmの範囲にある。
【0016】
本発明の繊維は、用途に応じて前記ワックス以外に他の化合物を含有していても良く、その中でも、熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、前記ワックスと混合して繊維化できる限り、種々公知の熱可塑性樹脂を使用し得る。
熱可塑性樹脂の中でも、ワックス、特にワックスとしてポリオレフィン系ワックスを用いる場合は、ポリオレフィンが、ポリオレフィン系ワックスとの分散性がよいので好ましい。ポリオレフィンとしては、炭素数2〜6のα−オレフィンの単独重合体、あるいは相互の共重合体、さらにはこれらと他の共重合性を有する炭素数7以上のα−オレフィン、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル等のビニル化合物との共重合体、さらにはこれら単独重合体や共重合体に不飽和カルボン酸モノマーを過酸化物でグラフト反応させて得られる重合体が挙げられる。特に、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテンまたは4−メチル−1−ブテンの結晶性の重合体および共重合体が好ましく例示される。
それらの中でもエチレン系樹脂であることが好ましく、具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、エチレン−メタクリル酸共重合体、あるいはマレイン酸やアクリル酸による酸変性ポリエチレンが挙げられる。これらのポリオレフィンは、発明の趣旨から明らかなようにどのような製造法で製造されたものであっても良い。
本発明に係る熱可塑性樹脂は、前記ワックスに比べて分子量あるいは溶融粘度が大きい重合体であり、通常、MFR(ASTM D1238、荷重2160g)が100g/10分以下(エチレン系重合体の場合、温度190℃;プロピレン系重合体の場合、230℃)の重合体である。
ワックスに熱可塑性樹脂を10重量%以上混合することにより、ワックスを繊維化することが容易となるので好ましい。
【0017】
本発明の繊維における、前記ワックスと他の化合物との混合比率は、使用する他の化合物の種類や用途に応じて種々選択できる。他の化合物としてエチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂を用いる場合には、ワックスを50〜90重量%、熱可塑性樹脂を50〜10重量%(但し、ワックス+エチレン系樹脂=100重量%とする)で混合することが好ましい。また、その混合比率は用途に応じて種々選択できるが、ワックスと熱可塑性樹脂とが、重量比で通常50:50〜90:10、好ましくは60:40〜80:20である。このような範囲にあれば、例えば合成シートに成形した際に表面から塵が発生しにくく、塵の発生を好まない用途に好適に使用することができる。
【0018】
本発明の繊維は、繊維長さが短い短繊維であっても、連続した長繊維であっても良い。例えば、溶融紡糸した連続繊維、スパンボンド法やメルトブロー法により得られる繊維、連続した繊維を切断したカットファイバー又は分岐状繊維が挙げられる。これらの中でも、繊維同士の絡み合いは合成シートの表面から発塵を抑える効果があるので、分岐状繊維が好ましい。分岐状繊維とは、1本の繊維が多数に枝分かれした構造を有しており、例えば特開2007−77519号公報に示すような形態の繊維である。分岐状繊維は、光学顕微鏡または電子顕微鏡で観察することにより確認することができる。
【0019】
合成パルプ
本発明に係る合成パルプは、前記繊維、好ましくは前記分岐状繊維が、多数集合した繊維の集合体であり、通常、繊維同士が特定方向に整列せず、(分岐した)繊維同士が互いに絡み合ったり、分岐部分が交差したりして入り込んでいる形態を有する。
本発明に係る合成パルプは、1本の繊維の最長部分の平均値(以下、「平均繊維長」という。)が、通常0.05〜50mmであり、0.05〜10mmであるのが好ましく、0.1〜10mmであるのが特に好ましい。平均繊維長がこの範囲にあれば、当該繊維を集合体としたときに適度な嵩高性を有するので好ましい。平均繊維長は、例えば以下の手順で求めることができる。
【0020】
濃度0.02重量%になるように繊維の集合体を水に分散し、フィンランド国のメッツォオートメーション社製自動繊維測定機(製品名;FiberLab-3.5)で一本一本の繊維の長さを測定する。当該測定機では、キャピラリー中を流れる際の繊維にキセノンランプ光を照射してCCD(電荷結合素子)センサーで映像信号を採取し、画像解析する。繊維の長さは0.05mm刻み(級)で、繊維の長さと各繊維の長さに該当する繊維の存在率(%)の両方を測定し、これらをもとに以下の式により平均繊維長を得る。測定は、12000〜13000本の繊維について行う。
【0021】
各級の平均繊維長Lnを求める。
Ln=ΣL/N
L:1つの級における一本一本の実測繊維長
N:1つの級における繊維本数
これらから以下の式により平均繊維長を求める。
平均繊維長(mm)=Σ(Nn×Ln)/Σ(Nn×Ln
Nn:各級の繊維本数
Ln:各級の数平均繊維長(mm)
【0022】
本発明の分岐状繊維は、直径(以下、「繊維径」という)の最小値が0.5μm程度であることが好ましく、その最大値は50μm程度であることが好ましい。繊維径がこの範囲にあれば、当該繊維を集合体としたときに適度な嵩高性を有するので好ましい。繊維径は、1本、1本の繊維を光学顕微鏡あるいは、電子顕微鏡で観察する事で測定することができる。具体的には、例えば、繊維径の最大値および最小値は、次のようにして測定することができる。キーエンス社製デジタルHFマイクロスコープVH8000にて倍率100倍で繊維を観察し、繊維径が10μm以上の部分を無作為に100箇所選択し、選択部分の繊維径を測定し、該測定値のうち最大の値を「繊維径の最大値」とする。日本電子社製走査型電子顕微鏡JSM6480にて倍率3000倍で繊維を観察し、繊維径が10μm未満の部分を無作為に100箇所選択し、選択部分の繊維径を測定し、該測定値の最小の値を「繊維径の最小値」とする。
【0023】
本発明の合成パルプは、本発明の目的を損なわない範囲において他の種々の化合物を含有していても良い。例えば、従来公知の抗菌剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、各種安定剤、酸化防止剤、分散剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、充填剤等が挙げられる。これらのうち、複数の化合物を含有していても良く、その含有量は目的に応じて適宜選択できる。
【0024】
分岐状繊維の製造方法
本発明に係る分岐状繊維及び合成パルプは、種々の方法により得られるが、通常はフラッシュ法で製造することが可能である。フラッシュ法とは、高圧でポリマーを溶媒に溶解したものを減圧下に噴出することによって溶媒を揮散させ、さらに必要に応じワーリング・ブレンダー、ディスクリファイナー等にて繊維を切断および叩解することで短繊維を製造する方法である。特に、特開昭48−44523号公報に記載されている方法により、ワックス及び必要に応じてポリオレフィンを混合した溶液を懸濁剤の存在下、水媒体に分散させたものをフラッシュさせると、繊維状物質が乱雑に分岐した形状を有する本発明の分岐状繊維の集合体である合成パルプが得られる。
フラッシュ法は、具体的には、水と懸濁剤の存在下にワックス及び必要に応じてポリオレフィンを混合した溶液をフラッシュする。最初に、ワックス等を、該ワックス等が溶解可能な溶剤に溶解し、前述した懸濁剤及び水を加えてエマルジョンを得る。
【0025】
溶剤としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素系、ベンゼン、トルエン等の芳香族系、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭素類等の中から、ワックス等を溶解させることができ、且つ、フラッシュ時に揮発して、得られた繊維の集合体に残存しにくいものを適宜選択する。
【0026】
懸濁剤の添加量は、繊維中、懸濁剤が0.1〜5質量%となる量とすることが好ましい。製造過程において、添加した懸濁剤の一部が抜けるような操作をする場合は多めに添加する等、適宜調整し添加する。添加量の目安としては、ワックス等100質量部に対して0.1〜10質量部である。懸濁剤を添加することにより、エマルションを安定化することができるとともに、フラッシュ後の繊維切断を水中で安定的に行うことができる。
【0027】
次に、得られたエマルジョンを、100〜200℃、好ましくは130〜150℃に加熱し、圧力(絶対圧力)0.1〜5MPa、好ましくは圧力0.5〜1.5MPaの加圧状態にし、ノズルより減圧下へ噴出(フラッシュ)すると同時に溶剤を気化させる。減圧の条件は、圧力1kPa〜95kPaとすることが好ましく、噴出先は窒素雰囲気等の不活性雰囲気であることが好ましい。本発明において、「圧力」とは絶対圧力のことを示す。
上記のようにしてフラッシュすることにより、分岐構造を有する不定長の繊維が得られる。この繊維は、さらにワーリング・ブレンダー、ディスクリファイナー等にて切断および叩解して、所望の長さにすることが好ましい。そのとき、繊維を0.5〜5g/リットル濃度の水スラリーの状態にして上記切断・叩解処理を行うことが好ましい。乾燥後、所望によりミキサー等によって開綿してもよい。
【0028】
以上説明した方法によれば、分岐構造を有する繊維、特に本発明に係る分岐状繊維を好ましく製造することができる。尚、分岐状繊維に、前記の添加剤を混合する場合には、エマルジョンの段階で添加することが好ましい。そうすることで、分岐状繊維に成形した後も添加剤の効果を長期間保持することが可能となる。
【0029】
発塵抑制材
本発明の発塵抑制材は、前記ワックスを主成分とする繊維又は当該繊維からなる合成パルプからなる。
本発明の発塵抑制材は、繊維状の物質等種々のものに混合することで出来上がったものの発塵を抑制することができる。本発明の発塵抑制材は、ワックスを主成分とする繊維からなるので、低温で繊維が溶融し、それによって他の繊維等と接着が可能であり加工が容易である。
【0030】
合成シート
本発明の合成シートは、前記の発塵抑制材を含むシートである。本発明の合成シートは、前記のワックスを主成分とする繊維の他に用途に応じて種々の繊維を含有することができる。例えば、NBKP(針葉樹晒しクラフトパルプ)、LBKP(広葉樹晒しクラフトパルプ)の木材パルプに加え、マニラ麻、楮、三椏、雁皮などの非木材パルプ等の天然パルプ、レーヨン、コットン等の天然繊維を用いることができる。この中でも、NBKPを用いるのが合成シートの強度の点で好ましい。
本発明の合成シートは、前記のワックスを主成分とする繊維を5〜50重量%含んでいることが好ましく、更には10〜30重量%含んでいることが好ましい。本発明の低発塵紙としては、ワックスを主成分とする繊維10〜20重量%及びNBKP90〜10重量%とからなることが好ましい。
本発明の合成シートは、上記の繊維の他に、本発明の目的を損なわない範囲で他の成分を含むことができる。例えば、従来公知の耐熱安定剤、耐候安定剤、各種安定剤、酸化防止剤、分散剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、充填剤等が挙げられる。これらは複数使用してもよく、その含有量は、用途に応じて適宜選択できる。
【0031】
低発塵紙
本発明の低発塵紙は、前記合成シートからなる。本発明の低発塵紙は、表面からの塵の発生が少なく種々の用途に使用することができ、精密電子機器、バイオインダストリー、食品製造設備等で使用することができる。例えば、LSI、IC等の半導体産業、精密機械産業、医療・医薬産業、食品産業においては、塵や細菌が極めて少ないクリーンルームにおいて作業が行われるため、本発明の低発塵紙は、このクリーンルームで使用される作業指示書、マニュアル、コピー用紙、メモ帳等に使用される種々の紙としても使用することができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例における評価方法は以下の通りである。
[評価方法]
(発塵性の測定)
JIS B 9923 タンブリング法に準拠して行い、以下のように行った。
試料(20cm×20cm、坪量70g/m)を5枚準備した。クリーンルーム(清浄度:ISOクラス5)中に設置したタンブリング式発塵試験機(CW−HDT−102(株式会社 赤土製作所製)を空運転し、試験機のドラム内が無塵状態であることを確認した。その後、前記試料5枚を当該ドラムに投入し、ドラム回転速度30回転/minで30秒回転させた。その後1分間ずつ、粒子計測器Met One A2400B(Hach Ultra Analytics製)を用いて、速度1立方フィート/minで、直径0.3μm以上の粒子数を5回連続で測定し、その5回のうちの最大値および最小値を除いた3回の測定値の平均値を発塵数(個/ft3)とした。
【0033】
(実施例1)
(1)ポリエチレンワックスを主成分とした繊維の作製
密度950kg/m、分子量900、融点116℃のポリエチレンワックス(三井化学(株)製 ハイワックス100P)70重量%、密度962kg/m、分子量10000、融点135℃の高密度ポリエチレン(三井化学(株)製 ハイゼックス(登録商標)2200J)を30重量%含む混合物を用いて、フラッシュ法で分岐状繊維の集合体からなる合成パルプを製造した。
(2)合成シートの作製
カナダ標準フリーネス(CSF)で350ccに調整したNBKPを得た。このNBKP80重量%と前記合成パルプ20重量%を混合した混合物を、角型手抄きシートマシーンを用いて坪量70g/mの混抄紙を作製し、ロータリードライヤーを用いて温度105℃で乾燥し、さらにカレンダーロールを用いて常温でカレンダ処理(ニップ圧20kN/m、速度2/min)を行って、合成シートを得た。
得られた合成シートの発塵性は830個/ftであった。
【0034】
(実施例2)
ポリエチレンワックスとして、密度920kg/m、分子量1000、融点127℃のポリエチレンワックス(三井化学(株)製 ハイワックス110P)を用いた以外は、実施例1と同様にして合成シートを得た。
得られた合成シートの発塵性は680個/ftであった。
【0035】
(実施例3)
ポリエチレンワックスとして、密度930kg/m、分子量2700、融点107度のマレイン酸変性したポリエチレンワックス(三井化学(株)製 ハイワックス2203A)を用いた以外は、実施例1と同様にして低発塵シートを得た。
得られた合成シートの発塵性は430個/ftであった。
【0036】
(実施例4)
合成シートの作製において、NBKP90質量%と前記合成パルプ10重量%を混合した混合物を、角型手抄きシートマシーンを用いて坪量70g/mの混抄紙を作製した以外は、実施例3と同様にして合成シートを得た。
得られた合成シートの発塵性は430個/ftであった。
【0037】
(実施例5)
ポリエチレンワックスとして、密度920kg/m、分子量7200、融点113度のポリエチレンワックス(三井化学(株)製 ハイワックス720P)を用いた以外は、実施例1と同様にして低発塵シートを得た。
得られた合成シートの発塵性は5000個/ftであった。
【0038】
(比較例1)
(ハンドシートの製法)
カナダ標準フリーネス(CSF)で350ccに調整したNBKPを得た。このNBKP100質量%を角型手抄きシートマシーンを用いて、坪量70g/mの混抄紙を作製し、ロータリードライヤーを用いて温度105℃で乾燥し、さらにカレンダーロールを用いて常温でカレンダ処理(ニップ圧20kN/m、速度2/min)を行ってシートを得た。
得られたシートの発塵性は5500個/ftであった。
【0039】
(比較例2)
ポリエチレンワックスとして、密度970kg/m、分子量8000、融点127度のポリエチレンワックス(三井化学(株)製 ハイワックス800P)を用いた以外は、実施例1と同様にして低発塵シートを得た。
得られた合成シートの発塵性は6000個/ftであった。
【0040】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量(Mn)が500〜7500であるワックスを主成分とする繊維。
【請求項2】
ワックスがエチレン系重合体ワックスである請求項1記載の繊維。
【請求項3】
他成分として、エチレン系樹脂を50〜10重量%(但し、ワックス+エチレン系樹脂=100重量%とする)含有する請求項1又は2記載の繊維。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の繊維からなる合成パルプ。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の繊維又は請求項4記載の合成パルプからなる発塵抑制材。
【請求項6】
請求項5記載の発塵抑制材を含む合成シート。
【請求項7】
天然パルプを含有する請求項6記載の合成シート。
【請求項8】
請求項6又は7記載の合成シートからなる低発塵紙。

【公開番号】特開2008−266831(P2008−266831A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111434(P2007−111434)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】