説明

繊維品の深色化方法及びこの方法により深色化された繊維品

【課題】少ない工程で、水を使用せず、しかも繊維品の風合いや強力を損ねることなく、深色性とその耐洗濯性に優れた繊維品を提供する。
【解決手段】大気圧下の窒素又は空気の雰囲気中でグロー放電或いはアーク放電を行ってプラズマ化ガスを生成した後、このプラズマ化ガスにケイ素化合物をキャリアガスとともに気体状態で混入して複合プラズマ化ガスを生成し、この複合プラズマ化ガスを着色された繊維品20に対して照射するプラズマ処理を行うことにより上記繊維品の表面にケイ素酸化物Bの被膜を形成して、繊維品を深色化する方法。上記ケイ素化合物が1分子中にケイ素を1原子又は2原子含む化合物であり、上記プラズマ処理がプラズマ処理面積1m2当たりケイ素20mモル以上120mモル以下の量のケイ素化合物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワタ、糸、織布、編布又は不織布、縫製品などの形態からなる、着色された天然繊維を少なくとも一部に有する繊維品の深色化方法及びこの方法により深色化された繊維品に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した繊維品は、染料等の着色剤によって着色されるが、礼服などに見られる極めて濃色な着色の要求に対しては、染料等の着色剤の利用のみでは対応することができず、光の屈折を利用した深色化が行われている。その深色化方法として、1つには低屈折率の皮膜を繊維表面に設ける方法がある(例えば、特許文献1〜3参照。)。この方法は、ケイ素やフッ素化合物の水分散液中に繊維品を浸してから乾燥することで行うが、多量な水と乾燥のための多大なエネルギーを消費しており、排水の負荷も大きい。また、繊維品中の繊維どうしが接着する可能性も大きく、そのために風合いが変化しやすいといった欠点がある。他の方法として、繊維表面にくぼみを設け、繊維表面の凹凸により光を乱反射させる方法がある(例えば、特許文献4〜6参照。)。この方法は、例えばポリエステル繊維品の場合は強アルカリ性溶液による繊維表面の部分溶解で行われるが、天然繊維の場合は不可能である。最近は、ポリエステル繊維等の合成繊維ではコロナ放電処理やプラズマ処理により表面をエッチングすることで行う方法も提案されている(例えば、特許文献7〜9参照。)。しかし、これらの方法も天然繊維の場合は、もともと表面が滑らかではないために効果が得られない。
【特許文献1】特開2003−227073
【特許文献2】特開平02−191773
【特許文献3】特開2002―285475
【特許文献4】特開平05−132855
【特許文献5】特開平05−311506
【特許文献6】特開平06−184927
【特許文献7】特開平05−186962
【特許文献8】特開平06−123064
【特許文献9】特開昭63―256767
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、少ない工程で、水を使用せず、しかも繊維品の風合いや強度を損ねることなく、深色性とその耐洗濯性に優れた繊維品を得る、繊維品の深色化方法を提供することにある。本発明の別の目的は、この方法により深色化した繊維品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願請求項1に係る発明は、大気圧下の窒素又は空気の雰囲気中でグロー放電或いはアーク放電を行ってプラズマ化ガスを生成した後、このプラズマ化ガスにケイ素化合物をキャリアガスとともに気体状態で混入して複合プラズマ化ガスを生成し、この複合プラズマ化ガスを着色された繊維品に対して照射するプラズマ処理を行うことにより前記繊維品の表面にケイ素酸化物の被膜を形成して、繊維品を深色化する方法である。その特徴ある点は、上記ケイ素化合物が1分子中にケイ素を1原子又は2原子含む化合物であり、上記プラズマ処理がプラズマ処理面積1m2当たりケイ素20mモル以上120mモル以下の量のケイ素化合物を含むことにある。
【0005】
また本願請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、ケイ素化合物のキャリアガスがプラズマ化ガスを生成するときの雰囲気ガスと同一である繊維品の深色化方法である。
【0006】
また本願請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明であって、ケイ素化合物がヘキサメチルジシロキサン又はテトラエトキシシランである繊維品の深色化方法である。
【0007】
更に本願請求項4に係る発明は、請求項1ないし3いずれか1項に記載の方法により深色化した繊維品である。
【発明の効果】
【0008】
本願請求項1に係る発明によれば、着色繊維品にプラズマ処理面積1m2当たりケイ素20mモル以上120mモル以下の量のケイ素化合物を含む複合プラズマ化ガスを照射することのプラズマ処理を行うことにより、繊維表面にケイ素酸化物の被膜を形成し、この皮膜により光の屈折効果を発揮させる。このプラズマ処理がプラズマ処理面積1m2当たりケイ素20mモル以上120mモル以下の量のケイ素化合物を含むので、深色性に優れ、風合い及び強力を保持した繊維品が得られる。この方法は、乾式法であるので、湿式法のような水を使用せず、また乾燥用の熱エネルギーを必要としない。
【0009】
本願請求項2に係る発明によれば、プラズマ化ガスを生成するときの雰囲気ガスとケイ素化合物のキャリアガスを同一にすることにより、ケイ素化合物がより均一に混入した複合プラズマ化ガスを生成することができる。
【0010】
本願請求項3に係る発明によれば、ケイ素化合物として1分子中にケイ素2原子を含むヘキサメチルジシロキサン又は1分子中にケイ素1原子を含むテトラエトキシシランは、プラズマ化ガスに混入すると容易に分解し、繊維品の表面にケイ素酸化物の形態で固形状の皮膜を形成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次の本発明の実施の形態について述べる。本発明の繊維品は、天然繊維を少なくとも一部に含む。この天然繊維としては、コットン、リネン、ラミー、ジュート、ヘンプ、ケナフ、カポックなどの植物系天然繊維、又は羊毛、アルパカ、カシミア、モヘヤ、アンゴラ、カシミア、絹などの動物系天然繊維である。また、本発明の着色された天然繊維を少なくとも一部に含む繊維品とは、前記着色された天然繊維を一部に含んだ繊維素材又は全体が着色された天然繊維で構成された繊維素材の繊維品である。本発明の繊維品は、これらの繊維素材を構造原料としたワタ、紡績糸、織布、編布、不織布又は縫製品の形態をなす。また、この繊維品の構成は、着色された天然繊維を少なくとも一部含まれていることによって成立し、その条件を満たすものであれば構成素材の中に合成繊維や無機繊維などの天然繊維以外の繊維が含まれていても良い。なお、上記合成繊維には、ポリエステル、ナイロン、アクリル、アセテート、レーヨン、ポリノジック、ポリプロピレン、プロミックス、ポリウレタンなどが例示される。また上記無機繊維には、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維などが例示される。
【0012】
着色の方法としては、浸染及び捺染を応用した染料染色法や顔料染色法が挙げられる。別の着色の方法としては、染料や顔料の色剤をバインダーによって繊維品に結合させる方法などが挙げられる。本発明の対象とする繊維品は、着色された天然繊維を少なくとも一部に有する繊維品であり、例えば織布においては、着色された天然繊維を合成繊維に予め複合して織った場合でも、着色されていない天然繊維と複合して織物を作製した後に天然繊維の少なくとも一部が着色するように全体或いは一部を着色しても良い。合成繊維の着色部分が含まれる場合は、プラズマ処理により、合成繊維の着色部分も深色化の効果が及ぶと考えられるが、このことに関しては本発明とは関係しない。また、繊維品の全てが天然繊維で構成されている場合も含まれ、少なくともその一部が着色されていればよい。更に、着色は、表裏の一方であっても両面であっても良い。
【0013】
本発明のプラズマ処理は、図1に示される大気圧プラズマジェットと称される装置を用いて行われる。このプラズマ処理装置10はノズル管11を備える。ノズル管11の内部には管壁に沿ってアース電極12が設けられ、管中心にはライブ電極13が設けられる。両電極12と13には6kHzのパルス電源14が接続される。ノズル管11の先端には、被処理物である繊維品20に向けた照射ノズル16が設けられる。ノズル管11には第1導入管17を介して窒素又は空気Aが導入される。具体的にはノズル管11の上部及び照射ノズル16には導入管17から分岐した分岐管17a及び17bがそれぞれ接続される。分岐管17aの途中にはケイ素化合物Bを導入するための第2導入管18が接続される。第2導入管18の途中には導入管を加熱してケイ素化合物を気化させるための加熱器19が設けられる。
【0014】
このプラズマ装置10を用いて繊維品20を深色化するには、電極12と13に電源14のパルス電圧を印加して、ノズル管11の内部にグロー放電又はアーク放電を生じさせる。この状態で、第1導入管17より分岐管17aを介してノズル管の上部から窒素又は空気Aを送り込むとともに、分岐管17bを介して照射ノズル16から窒素又は空気Aを放出する。この結果、ノズル管11内の雰囲気が窒素又は空気Aに置換され、上記グロー放電又はアーク放電で窒素又は空気Aがプラズマ化しプラズマ化ガス21を生成する。
【0015】
次いで、導入管18にケイ素化合物Bを導入し、加熱器19で40〜200℃に加熱して、ケイ素化合物Bを気化させる。気化したケイ素化合物Bは分岐管17bのキャリアガスとしての窒素又は空気とともに照射ノズル16に至る。照射ノズル16において、ノズル管内で生じたプラズマ化ガスとケイ素化合物Bが混合して複合プラズマ化ガス22を生じ、照射ノズル16から噴射するようになる。照射ノズル16の下方に繊維品20を配置し、この繊維品20に複合プラズマ化ガス22を照射させる。これにより繊維品20の表面にケイ素酸化物の被膜が形成される。プラズマ化ガスの原料に窒素又は空気を用いることにより、ケイ素酸化物の被膜が繊維品の繊維表面に良好に形成できる。その理由は明確ではないが、窒素を含んだプラズマ化ガスにケイ素化合物を混合すると、窒素はケイ素化合物を好都合に活性化させ、繊維品の繊維表面に付着し、ケイ素酸化物の被膜が繊維品の表面に良好に形成されると推測される。
【0016】
本発明の方法により、被膜形成物質(プリカーサ)のケイ素酸化物を気体状態で繊維品に照射させてケイ素酸化物を付着させることで、従来のケイ素化合物の溶液又は分散液に浸漬して付着させる方法に比べて、非常に細かい状態で繊維品に付着することになり、そうしてできた被膜が光の乱反射を引き起こし、先に記載した光の屈折効果に相乗して、非常に高い深色性が発揮されていると推測される。
【0017】
本発明のケイ素化合物は、市販されている多種多様なものが適用されるが、大気圧でのプラズマ化ガスに気体状態で混入することを実現するには、大気圧下において加熱等で容易に気化するものがよく、沸点が40℃以上200℃未満のものが適している。このケイ素化合物は1分子中にケイ素を1原子又は2原子含む化合物である。また複合プラズマ化ガスをプラズマ処理面積1m2当たりケイ素20mモル以上120mモル以下の量のケイ素化合物を含むように繊維品に照射する。ケイ素化合物中の原子の数及び単位面積当りのプラズマ処理するケイ素のモル数を上記範囲にすることにより、ケイ素化合物をプラズマ化ガスに混入することで容易に分解され、繊維品の表面に対してケイ素酸化物の状態で固形状被膜を形成する。それに適したケイ素化合物として、ヘキサメチルジシロキサン(以下、「HMDSO」という。)とテトラエトキシシラン(以下、「TEOS」という。)が挙げられる。照射する複合プラズマ化ガス中のケイ素化合物のケイ素量がプラズマ処理面積1m2当たり20mモル未満であると、深色化がほとんど得られないか、又は、濃淡ムラが生じる。また、120mモルを超えると、酸化ケイ素などの被膜形成物質が過剰に付着し、表面が白化するほか、洗濯や摩擦によって被膜が剥がれやすくなる。この場合に、プラズマ処理後に水等によって表面を洗い流すことで被膜形成物質の過剰分を取り除き、それによって適度な品質を得ることも可能ではあるが、本発明の課題である水やエネルギーの消費を抑えることにそぐわない。
【0018】
以下に、本発明の具体的方法を記す。プラズマ装置として、図1に示すプラズマトリート(株)のプラズマトリーターを利用した場合、ノズル管の上部から送り込まれる窒素又は空気は40リットル/分の流量で用いられ、この条件において、複合プラズマ化気流が放出する照射ノズル先端部分と繊維品との距離、ケイ素化合物の混入量すなわち繊維品へのケイ素化合物の照射量、処理スピードの3つの値を適度に制御する必要がある。この装置では、混入されたケイ素化合物の全てが複合プラズマ化ガスに紛れて繊維品に照射される。距離や処理スピードが小さい場合は、繊維品表面に高温のガスがあたることによる黄変及び強度低下が生じ、距離や処理スピードが大きい場合は、単位時間当たりの処理面積は大きくなるが、ケイ素化合物の混入量が少ないと被膜が形成されず、深色化が発揮されない。ノズル先端部分と繊維品との距離は20mm以上25mm以下が適当で、好ましくは25mmがよい。また、ケイ素化合物の混入量が多すぎる場合は、ケイ素やその化合物の付着が過剰になり、白化する。
【0019】
例えば、照射ノズルのガス放出口と繊維品との距離を25mm、このときの照射幅が5mm(ノズル径は4mm)、処理スピードを200mm/秒としたとき、1時間当たりの処理面積は3.6m2になる。本発明のプラズマ処理面積1m2当りケイ素20mモル以上120mモル以下のケイ素化合物量を含む複合プラズマ化ガスを照射条件を満たすには、混入するケイ素化合物に含むケイ素量は72mモル/時間以上432mモル/時間未満となり、ケイ素化合物にHMDSOを使用する場合は1分子中にケイ素を2原子含むので、36mモル/時間以上216mモル/時間未満になり、グラム重量での混入量は6g/時間以上36g/時間未満に設定するとよく、このとき、処理面積当たりのHMDSOの混入量は1.7g/m2以上10g/m2未満となる。
【実施例】
【0020】
次に、以下の深色化処理の実施例により本発明を詳細に説明する。
<実施例1>
メリノ羊毛繊維のスケール除去処理を行った羊毛織物(60番手双糸の綾織り、目付250g/m2)を用い、クロム媒染染料で浸染にて全体を黒色に染色することにより200mm×200mmのサイズの繊維品を得た。プラズマ処理を行うための装置として、大気圧プラズマジェット装置(日本プラズマトリート(株)製、プラズマトリーター)を用い、処理スピードは、0.2m/秒、プラズマ化ガスが放出するノズル孔は直径4mm、ノズル孔から繊維品までの距離を25mmにし、照射幅を5mmにした。
【0021】
この条件において、大気圧プラズマジェット装置のノズル内を40リットル/分の流量の窒素で置換し、ノズル先端にHMDSO(ケイ素原子の数=2)を200℃で気化させた気体を混入することで複合プラズマ化ガスを放出させ、上記繊維品の表側表面に5mm間隔で平行に照射することで、プラズマ処理面積1m2当りケイ素70mモルのケイ素化合物を含む複合プラズマ化ガスを照射することのプラズマ処理を行った。処理を施した部分の処理前後の色濃度を測定するとともに、その洗濯耐久性を評価した。
<実施例2>
実施例1と同じ条件において、大気圧プラズマジェット装置のノズル内を40リットル/分の流量の窒素で置換し、ノズル先端にTEOS(ケイ素原子の数=1)を200℃で気化させた気体を混入することで複合プラズマ化ガスを放出させ、実施例1の方法で得た繊維品の表側表面に5mm間隔で平行に照射することで、プラズマ処理面積1m2当りケイ素20mモルのケイ素化合物を含む複合プラズマ化ガスを照射することのプラズマ処理を行った。処理を施した部分の処理前後の色濃度を測定するとともに、その洗濯耐久性を評価した。
<実施例3>
実施例1と同じ条件において、大気圧プラズマジェット装置のノズル内を40リットル/分の流量の空気で置換し、ノズル先端にHMDSO(ケイ素原子の数=2)を200℃で気化させた気体を混入することで複合プラズマ化ガスを放出させ、実施例1の方法で得た繊維品の表側表面に5mm間隔で平行に照射することで、プラズマ処理面積1m2当りケイ素70mモルのケイ素化合物を含む複合プラズマ化ガスを照射することのプラズマ処理を行った。処理を施した部分の処理前後の色濃度を測定するとともに、その洗濯耐久性を評価した。
<実施例4>
実施例1と同じ条件において、大気圧プラズマジェット装置のノズル内を40リットル/分の流量の空気で置換し、ノズル先端にTEOSを200℃で気化させた気体を混入することで複合プラズマ化ガスを放出させ、実施例1の方法で得た繊維品の表側表面に5mm間隔で平行に照射することで、プラズマ処理面積1m2当りケイ素20mモルのケイ素化合物を含む複合プラズマ化ガスを照射することのプラズマ処理を行った。処理を施した部分の処理前後の色濃度を測定するとともに、その洗濯耐久性を評価した。
<実施例5>
実施例1と同じ条件において、大気圧プラズマジェット装置のノズル内を40リットル/分の流量の空気で置換し、ノズル先端にHMDSOを200℃で気化させた気体を混入することで複合プラズマ化ガスを放出させ、実施例1の方法で得た繊維品の表側表面に5mm間隔で平行に照射することで、プラズマ処理面積1m2当りケイ素35mモルのケイ素化合物を含む複合プラズマ化ガスを照射することのプラズマ処理を行った。処理を施した部分の処理前後の色濃度を測定するとともに、その洗濯耐久性を評価した。
<実施例6>
実施例1と同じ条件において、大気圧プラズマジェット装置のノズル内を40リットル/分の流量の空気で置換し、ノズル先端にHMDSOを200℃で気化させた気体を混入することで複合プラズマ化ガスを放出させ、実施例1の方法で得た繊維品の表側表面に5mm間隔で平行に照射することで、プラズマ処理面積1m2当りケイ素120mモルのケイ素化合物を含む複合プラズマ化ガスを照射することのプラズマ処理を行った。処理を施した部分の処理前後の色濃度を測定するとともに、その洗濯耐久性を評価した。
<比較例1>
実施例1と同じ条件において、大気圧プラズマジェット装置のノズル内を40リットル/分の流量のアルゴンで置換し、ノズル先端にHMDSOを200℃で気化させた気体を20g/時の流量にて注入することで複合プラズマ化ガスを放出させ、実施例1の方法で得た繊維品の表側表面に5mm間隔で平行に照射することで、プラズマ処理面積1m2当りケイ素70mモルのケイ素化合物を含む複合プラズマ化ガスを照射することのプラズマ処理を行った。処理を施した部分の処理前後の色濃度を測定するとともに、その洗濯耐久性を評価した。
<比較例2>
実施例1と同じ条件において、大気圧プラズマジェット装置のノズル内を40リットル/分の流量のアルゴンで置換し、ノズル先端にTEOSを200℃で気化させた気体を混入することで複合プラズマ化ガスを放出させ、実施例1の方法で得た繊維品の表側表面に5mm間隔で平行に照射することで、プラズマ処理面積1m2当りケイ素20mモルのケイ素化合物を含む複合プラズマ化ガスを照射することのプラズマ処理を行った。処理を施した部分の処理前後の色濃度を測定するとともに、その洗濯耐久性を評価した。
<比較例3>
実施例1と同じ条件において、大気圧プラズマジェット装置のノズル内を40リットル/分の流量の空気で置換し、ノズル先端にHMDSOを200℃で気化させた気体を混入することで複合プラズマ化ガスを放出させ、実施例1の方法で得た繊維品の表側表面に5mm間隔で平行に照射することで、プラズマ処理面積1m2当りケイ素17mモルのケイ素化合物を含む複合プラズマ化ガスを照射することのプラズマ処理を行った。処理を施した部分の処理前後の色濃度を測定するとともに、その洗濯耐久性を評価した。
<比較例4>
実施例1と同じ条件において、大気圧プラズマジェット装置のノズル内を40リットル/分の流量の空気で置換し、ノズル先端にHMDSOを200℃で気化させた気体を混入することで複合プラズマ化ガスを放出させ、実施例1の方法で得た繊維品の表側表面に5mm間隔で平行に照射することで、プラズマ処理面積1m2当りケイ素130mモルのケイ素化合物を含む複合プラズマ化ガスを照射することのプラズマ処理を行った。処理を施した部分の処理前後の色濃度を測定するとともに、その洗濯耐久性を評価した。
<比較例5>
実施例1と同じ方法で得た繊維品に対して、ケイ素化合物の水溶液(コタニ化学製、クインセットSIスーパー)をパディング法にて絞り率65%でしみ込ませて乾燥し、色濃度を測定するとともに、その洗濯耐久性を評価した。
<比較例6>
実施例1と同じ方法で得た繊維品に対して、加工を行わずにそのままの状態で、色濃度を測定した。
<評価>
深色化効果は、深色化処理した繊維品表面の色濃度の変化を調べることで行った。色濃度の測定は,コニカミノルタセンシング(株)の分光測色計CM−508dを用いて、試料表側の400nm〜640nmの波長における反射率を測定することで行い、Kubelka−Munkの式から導かれる最大K/Sの値を色濃度とした。更に,CIE三色刺激値から導かれたCIE1976L,a,b標色系の空間座標からL値を測定した。このK/S値は数値が大きいほど色濃度が濃く、L値は数値が小さいほど色濃度が濃い。洗濯耐久性は、繊維品の深色化処理した部分についてパークレン溶剤による商業ドライ洗濯(10分×5回)を行い、洗濯後の色濃度を測定することにより行った。
実施例1〜6及び比較例1〜6のこれらの結果を、表1に示す。表1から明らかなように、洗濯前の色濃度K/Sに関して、比較例1〜5では35〜45と未加工の比較例6の35と同程度に低くかったのに対し、実施例1〜6では46〜61と高かった。また洗濯後の色濃度K/Sに関して、比較例1,2,3,5では35〜39と低くかったのに対し、実施例1〜6では43〜52と高かった。また洗濯前の色濃度Lに関して、比較例1〜5では10.4〜13.2と未加工の比較例6の12.1と同程度に高かったのに対し、実施例1〜6では7.7〜10.4と低かった。また洗濯後の色濃度Lに関して、比較例1、2,3,5では11.1〜12.2と高かったのに対し、実施例1〜6では8.8〜10.6と低かった。なお、比較例4は洗濯後の色濃度K/Sが54、色濃度Lが8.8と実施例1〜6と並んで高い深色化効果を示したが、洗濯前のプラズマ処理段階では過剰なケイ素酸化物の付着によって繊維品表面が白化したために色濃度が低くなるといった不具合が見られた。以上の結果から、実施例1〜6は深色化度及びその洗濯耐久性が高いことが判った。
【0022】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本発明のプラズマ処理装置の構成図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧下の窒素又は空気の雰囲気中でグロー放電或いはアーク放電を行ってプラズマ化ガスを生成した後、前記プラズマ化ガスにケイ素化合物をキャリアガスとともに気体状態で混入して複合プラズマ化ガスを生成し、前記複合プラズマ化ガスを着色された繊維品に対して照射するプラズマ処理を行うことにより前記繊維品の表面にケイ素酸化物の被膜を形成して、繊維品を深色化する方法であって、
前記ケイ素化合物が1分子中にケイ素を1原子又は2原子含む化合物であり、前記プラズマ処理がプラズマ処理面積1m2当たりケイ素20mモル以上120mモル以下の量のケイ素化合物を含むことを特徴とする繊維品の深色化方法。
【請求項2】
ケイ素化合物のキャリアガスがプラズマ化ガスを生成するときの雰囲気ガスと同一である請求項1記載の方法。
【請求項3】
ケイ素化合物がヘキサメチルジシロキサン又はテトラエトキシシランである請求項1記載の方法。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項に記載の方法により深色化した繊維品。

【図1】
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【公開番号】特開2010−100953(P2010−100953A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271941(P2008−271941)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(391058598)艶金興業株式会社 (5)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】