説明

繊維基体中の菌類及びダニを抑制する方法

【課題】カーペット及び他の繊維基体の中で、カビ等の菌類の成長を抑制する有効な方法を提供すること。また、カーペット及び他の繊維基体の中で、イエダニ及び菌類の成長の両方を抑制する方法を提供すること。
【解決手段】繊維材料を、殺菌剤として有効な量の殺菌性化合物と混合することを含む、該繊維材料の中の菌類の成長を抑制する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維(textile)基体(substrate)の中の菌類の成長又は増殖を抑制する方法に関する。本発明は、さらに、繊維基体の中の菌類及びチリダニの両方の成長又は増殖を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
良好な室内の空気の品質及びその健康に対する影響の重要性に対する注目が増し、そして焦点が当てられている。米国環境保護庁(EPA)は、室内の空気汚染を、最も緊急を要する国家の課題として指定している。多くの要因が室内の空気の品質を悪くすることに寄与する一方で、酵母及びカビ等の菌類の有害な影響に対する注目が多く集められるようになった。例えば、1999年に出版された「Mayo Clinic study」では、菌類を、多くの呼吸困難を導く原因、そしてほぼ100%の慢性副鼻腔感染症の要因として同定している。該「Mayo Study」では、多くの人間はまた、アレルギーに加え、菌類に対する異なる免疫システム応答を発現することを示唆している。
【0003】
カビ及び菌類は、少なくとも2種の可能性があるアレルゲン:菌糸体生成酵素、及び菌類胞子を生産する。前者に関して、カビは、腐敗した植物及び動物から養分を得て成育し、そして「菌糸体」と称する糸状体様の伸張部を生産することによって成長する。これらの糸状体は、炭水化物及びたんぱく質を分解しうる酵素を分泌する。これらの酵素は非常に小さく、そして一部の形態で空気中に浮遊する。高濃度では、カビ酵素はアレルゲンとなりうる。後者については、植物が花粉を放出させるのと同様に、多数のカビ胞子を空気中に放出して、カビは繁殖する。浮遊するカビ胞子が有機物上に沈降すると、新しいカビの成長が始まる。たんぱく質はカビ胞子の主要な成分なので、吸い込むとアレルギー反応を引き起こしうる。上記胞子は、2μm(アスペルギルス・フミガーツス,Aspergillus fumigatus)ほどの小ささであり、そして140μmほどの大きさ(アルテルナリア,Alternaria)である。
【0004】
カビ胞子の成長に特に良好な環境は、カーペット、カーペットタイル及び室内装飾品の中に見出される。例えば、菌類は、人間及び動物の日々の往来、カーペット上にこぼされた食品及び飲料、並びに動物及び幼児の廃物を通して、カーペット上に堆積する。さらに、外から運ばれたか、あるいは加熱又は冷却システムを介して運ばれた浮遊菌類及び浮遊胞子は、カーペット及び室内装飾品の上に堆積しうる。カーペットの中の汚れ及び湿気は、菌類が成長するための栄養素を供給しうる。さらに、ある菌胞子は、十分な栄養が供給されるまでの長い期間、カーペット上で、休眠状態のまま生存することができる。
【0005】
カビ胞子に加えて、一般的なイエダニは、アレルギー患者におけるアトピー性皮膚炎の湿疹、鼻炎、ぜんそくの主要源である。例えば、ダニであるダーマトフィゴイデス・プテロニシヌス(Dermatophygoides pteronyssinus)は、ハウスダストアレルゲンの主要源として特定されている。このダニ及び関連するダニ類、D.ファリナエ(D.farinae)、D.マイクロセラス(microceras)及びエウログリフス・マイネイ(Euroglyphus maynei)は、北米、オーストラリア及び他の地域における温帯気候のイエダニとして顕著である。
【0006】
成虫のダニは約300μm(3/10mm)のサイズであり、卵、幼虫(lalval)及び若虫(nymph)の段階を経て、約25日で成長する。成虫は、2〜3.5ヶ月の間生存し、その間に、雌は、約20〜40個の卵を生むことができる。チリダニは光を避け、クッション、マットレス、カーペット、張り椅子及び他の軟らかい材料内の深部で生活している。まさに何百万のダニが、シングルベッド又はラグを妨害しうる。
【0007】
主要なチリダニアレルゲンは、ダニの糞便粒子中に存在する。各ダニは、一日当たり、約20個の糞便粒子を生産し、そしてホコリ1グラム当たり、100,000個超の糞便粒子が存在する。これらの粒子は、カビ胞子のサイズに相当する約10〜40μmのサイズで変化し、そしてベッドメーキング及びカーペットの真空引き等の家庭内活動の際に浮遊しはじめる。
【0008】
カーペット及び張り椅子は、カビ及びチリダニ成長の主要な場所であるが、多くのアレルギー患者は、彼らの家からこれらを撤去することができないか、あるいは、撤去に反対する。通常の真空引きでは、カビ及びチリダニは取り除かれないか、あるいは、カビ及びチリダニアレルゲン濃度は大きくは下がらない。実は、通常の家庭用電気製品を用いてカーペットを真空引きするすると、実際には、浮遊するほこりの量は増加してしまう。しかし、特別なフィルターの使用及び/又はセントラルバキューミングシステムの使用は有益である。やはり、真空引き単体では、全てのダニ又はカビを取り除くことはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、カーペット及び他の繊維基体の中で、カビ等の菌類の成長を抑制する有効な方法を有することが望ましい。また、カーペット及び他の繊維基体の中で、イエダニ及び菌類の成長の両方を抑制する方法を有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、繊維基体及び製品に望ましい殺菌効果を付与する殺菌性化合物の使用に焦点を当てている。驚くべきことに、選択された殺菌性化合物を、人工又は天然繊維から作られた種々の繊維基体に適用し、抗菌活性、そして、ダニ駆除剤と併用した場合の動物及び人間の生活環境において抗チリダニ特性を付与できることが見出された。選択された殺菌性化合物及び/又は上記化合物を含む配合を有する上記繊維基体/製品の処理は、種々の方法(スプレー塗装、ミスティング、アトマイジング、全面散布(broadcasting)、はけ塗り、レーキング(raking)及びフォーミング適用法等)で実施できることが見出された。上記適用は、随意選択的に、真空引き(vacuuming)及び/又は温水抽出ステップと組み合わせて実施される。
【0011】
従って、本発明は、繊維基体の中の菌類の予防、抑制又は減少法に関するものであり、そこには、菌類の発生の可能性がある繊維材料に、菌類の予防、抑制又は減少に有効な量の少なくとも1種の殺菌性化合物を供給することが含まれる。本発明は、繊維基体の中の菌類及びチリダニの両方の予防、抑制又は減少法をさらに提供し、そこには、予防薬又はダニ駆除剤として(acaricidally)有効な量の好適なダニ駆除剤と、予防薬又は殺菌剤として(fungicidally)有効な量の少なくとも1種の殺菌性化合物とを、菌類及びチリダニ発生の可能性がある繊維材料に併せて適用することを含む。
【0012】
さらに具体的には、本発明は、菌類(特に、アレルギー性、毒素原性及び免疫原性の菌類)の予防、抑制又は減少法を提供する。それは、カーペット等の繊維基体の中の上記菌類の管理に特に好適である。本発明の方法は、処理すべき繊維基体を、予防薬又は殺菌剤として(そして随意選択的に、ダニ駆除剤として)有効な量の農薬組成物であって、殺菌剤としての有効成分と、繊維に許容できるキャリア又は希釈剤と共に、随意選択的なダニ駆除剤とを含むものに接触させることを含んでいる。本発明はまた、カーペット等の繊維基体への適用に好適な上記農薬組成物に関する。
【0013】
本発明は、さらに、繊維基体の中の菌類およびチリダニ個体群と、アレルゲン、毒素原(toxinogen)及び/又はイムノゲンとの予防、抑制又は減少法(本発明に従う農薬組成物を用いることによって、それらから得られる)に関する。本発明はまた、該組成物を用いて処理された繊維材料に関する。
【0014】
菌類及びチリダニによって生産されたアレルゲン、毒素原及び/又はイムノゲンの濃度は、本発明に従う農薬組成物を、ダニ及びカビを含むか、又は含む可能性がある繊維基体(カーペット等)の表面上に、あるいは、好ましくは基体の下に適用することで、本発明の方法に従って抑制又は減少できる。そのようにして、該ダニ及びカビを殺傷又は抑制し、そしてそれにより、さらなるアレルゲン、毒素原及び/又はイムノゲンの生産が減少する。本発明の方法は、好ましくは、除去された物質が、実質的にその場の大気中に放出されない条件の下で、随意選択的に、真空引きの使用及び/又は温水抽出によって、カビ、菌糸体及びそれらの胞子を含む菌類、生きた又は死んだダニ、並びにそれらの糞便物質を除去するステップを含むことが有利である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施形態の一つでは、本発明の方法は、次の各ステップ;
(1)下記を含む繊維処理組成物を準備するステップ、
(i)殺菌性化合物、及び
(ii)随意選択的な、ダニ駆除剤;
(2)菌類の発生(及び、随意選択的なチリダニの発生)の可能性がある繊維基体を準備するステップ;そして
(3)該繊維材料を、予防薬又は殺菌剤として(そして、随意選択的に、ダニ駆除剤として)有効な量の処理組成物と接触させるステップ:
を含む。
実施形態の一つでは、該方法は、次の各ステップ;
(4)該繊維基体を好適な時間乾燥させるステップ、そして
(5)好ましくは、除去された物質が、実質的にその場の大気中に放出されない条件の下で、真空引き装置の使用及び/又は温水抽出によって、随意選択的に、カビ、菌糸体及びそれらの胞子を含む菌類、生きた又は死んだダニ、並びにそれらの糞便物質を除去するステップ:
をさらに含む。
別の実施形態では、真空引き及び/又は温水抽出ステップは、ステップ(1)の前に実施される。この順番は、予防量の組成物が用いられる方法に特に適合する。
【0016】
本明細書で用いるように、用語「殺菌性化合物」は、アレルギー性、毒素原性及び免疫原性菌類(それらに限定されるものではない)を含む菌類を殺すか、あるいは、成長、増殖、分裂、繁殖又は拡散を物質的に抑制する物質を意味するものとする。本明細書で用いるように、該殺菌性化合物に関して、用語「予防薬又は殺菌剤として有効な量」又は「菌類を減少又は抑制するのに有効な量」は、ターゲット繊維基体の中の大量の菌類(カビ等)、そして特に、それらのアレルギー性、毒素原性の又は免疫原性種を殺すか、あるいは、成長、増殖、分裂、繁殖又は拡散を物質的に抑制する量である。
【0017】
殺菌性化合物の種類には、ストロビルリン系殺菌剤、ピロール系殺菌剤、アニリド系殺菌剤、コナゾール系(conazole)殺菌剤、例えば、イミダゾール及びトリアゾール、チアゾール系殺菌剤及びピリミジン系殺菌剤、並びにそれらの混合物が含まれることが好ましい。
【0018】
種々の殺菌剤の生化学的作用様式が、抵抗性管理用に選択されうる。実施形態の一つでは、異なる生化学的作用様式を有する殺菌剤の混合物が、該繊維基体に適用される。実施形態の一つでは、次の殺菌剤の適用には、前の用途に用いられる殺菌剤にと異なる生化学的作用様式を有する殺菌剤が含まれる。必要であれば、次の適用のタイミングは、該殺菌剤の効力、及び該繊維基体中に存在する菌類の濃度によって変わりうる。
【0019】
本発明の方法に有用なストロビルリン系殺菌剤には、例えば、アゾキシストロビン、ジモキシストロビン、フルオキサストロビン、ピコキシストロビン及びピラクロストロビンが含まれるのが好適である。
【0020】
実施形態の一つでは、本発明の方法で用いられるストロビルリン系殺菌剤は、アゾキシストロビンである。
アゾキシストロビンは、式(1):
【化1】

で表される。
【0021】
この化合物の合成並びにその殺菌特性は、米国特許第5,395,837号明細書に記載されている(参照により、本明細書に組み入れる)。
本発明の方法に有用なピロール系殺菌剤には、例えば、フルジオキソニルが含まれることが好適である。
【0022】
実施形態の一つでは、本発明の方法に用いられる該ピロール系殺菌剤は、フルジオキソニルである。
フルジオキソニルは、式(II):
【化2】

によって表される。
【0023】
この化合物の合成並びにその殺菌特性は、米国特許第4,705,800号明細書に記載されている(参照により、本明細書に組み入れる)。
本発明の方法に有用なアニリド系殺菌剤には、ボスカリドが含まれることが好適である。
本発明の方法に有用なコナゾール系殺菌剤には、ジフェノコナゾール、プロピコナゾール、テブコナゾール、エポキシコナゾール、フルシラゾール及びメトコナゾールが含まれることが好適である。
【0024】
本発明の方法に有用なチアゾール系殺菌剤には、チアベンダゾール(thiabendazofe)が含まれることが好適である。
本発明の方法に有用なピリミジン系殺菌剤には、シプロジニル及びピリメタニルが含まれることが好適である。
本発明の方法に有用な殺菌剤には、該ストロビルリン系及びピロール系殺菌剤が含まれることが好ましい。
【0025】
実施形態の一つでは、本発明に従う方法は、繊維材料(室内のカーペット等)において、菌類(カビ等、特にそれらのアレルギー性、毒素原性の又は免疫原性の変種)の管理、予防又は抑制に用いられる。次の菌類の属:例えば、アルテルナリア(alternaria)spp.、例えば、A.アルテルナタ(alternata)、A.テヌイス(tenuis);クラドスポリウム(Cladosporium)spp.、例えば、C.クラドスポリオイデス(cladosporioides)、C.ヘルバルム(herbarum);ペニシリウム(Penicillium)spp.、例えば、P.クリソゲヌム(chrysogenum)、P.ブレビカウレ(brevicaule)、P.ブレビコンパクツム(brevicompactum)、P.グラウクム(glaucum)及びP.ピノフィルム(pinophilum);アスペルギルス(Aspergillus)spp.、例えば、A.ベルジコロル(versicolor)、A.フミガツス(fumigatus)、A.フラブス(flavus)、A.エウスティス(eustis)、A.ニゲル(niger)及びA.テレウス(terreus);メムノニエラ(memnoniella)spp.;スタチボトリス(stachybotris)spp.;アウレオバシジウム(Aureobasidium)SPP.、例えば、A.プルランス(pullulans);チャエトミウム(Chaetomium)spp.、例えば、C.グロボスム(globosum)、C.フニコラ(funicola);アクレモニウム(Acremonium)spp.、例えば、A.ストリクツム(strictum);ウロクラジウム(Ulocladium)spp.、例えば、U.チャルタルム(chartarum);ピソミセス(Pithomyces)spp.;クリソニラ(Chrysonilla)spp.;ムコル(Mucor)spp.;コニオフォラ(Coniophora)spp.、例えば、C.プテアナ(puteana);グリオクラジウム(Gliocladium)spp.、例えば、G.ビレンス(virens);レンチヌス(Lentinus)spp.、例えば、L.チグリヌス(tigrinus);パエシロミセス(Paecilomyses)spp.、例えば、P.バリオチ(varioti);ポリポルス(Polyporus)spp.、例えば、P.ベルシコロル(versicolor);スクレロフォマ(Sclerophoma)spp.、例えば、S.ピチオフィラ(pityophila);ストレプトベルティシリウム(Streptoverticillium)spp.、例えば、S.レチクルム(reticulum)が、例として示されるが、何らかの制限をかけるものではない。
【0026】
本明細書で用いるように、用語「ダニ駆除剤」は、チリダニ、例えば、デルマトフィゴイデス・プテロニシヌス(Dermatophigoides pteronyssinus)、D.ファリナエ(farinae)、D.ミクロセラス(microceras)及びエウログリフィス・マイネイ(Euroglyphus maynei)を含むコナダニ(それらに限定されるものではない)を殺すか、あるいは、成長、増殖、分裂、繁殖又は拡散を物質的に抑制する物質を意味するものとする。「予防薬又はダニ駆除剤として有効な量」のダニ駆除剤は、ターゲット繊維基体中で、大量のコナダニを殺すか、あるいは、成長、増殖、分裂、繁殖又は拡散を物質的に抑制する量である。
【0027】
本発明の方法に従う殺菌剤と組み合わせて用いることができる好適なダニ駆除剤には、例えば、ベンジルベンゾエート、八ホウ酸二ナトリウム四水和物、ジアフェンチウロン、ピリミホスメチル(primiphos−methyl)、ピリダベン、昆虫成長調節物質、例えば、メトプレン及びハイドロプレン、ピレスロイド化合物、例えば、シハロトリン、γ−シハロトリン、λ−シハロトリン、レスメスリン、フェノトリン、ペルメトリン、アレスリン、テトラメトリン、フラメトリン、フェンバレラート、テラレトリン、エンペントリン、ピレトリン及び天然ピレトリンとしての一般名称の下で知られる化合物;1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル−2,2−ジメチル−3−3−(2,2−ジクロロビニル)−シクロプロパン−1−カルボキシレート、1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパン−1−カルボキシレート、α−シアノ−3−フェノキシベンジル−2,2−ジメチル−3−(2,2,3−トリブロムエチル)−シクロプロパン−1−カルボキシレート;スピノサッド、p−アニスアルデヒド、アバメクチン、エマメクチン及びそれらのエステル、例えば、エマメクチンベンゾエート、イベルメクチン、及びミルベマイシンが含まれる。ペルメトリンが、好ましいダニ駆除剤である。
【0028】
用語「(一若しくは複数の)活性成分」、「(一若しくは複数の)活性化合物」又は「(一若しくは複数の)有効成分(a.i.)」は、本発明の方法に従って、ターゲット繊維基体、材料、又は表面に適用するために、他の材料との配合又は直接に用いられうるケースのように、殺菌剤化合物、化合物の混合物又はダニ駆除剤(ペルメトリン等)との混合物を示すために本明細書で用いられている。
【0029】
本発明に従う活性成分、あるいは、薬剤、濃縮物又は一般的にそれらと調製された配合物のスペクトル及び活性が増加し、適切な場合には、他の抗菌剤として活性な物質、殺菌剤、殺虫剤又は他の活性な化合物が、活性化合物のスペクトルを広げるため、又は特異的な効果(カビ、菌糸体及びそれらの胞子を含む死んだ菌類、ダニ及びそれらの物質を破壊する変性剤、あるいは、バクテリア、ウイルス及び原生動物等の微生物の成長を阻害、無力化、又は破壊することによって殺菌する殺菌剤)を得るために添加される。好適な変性剤には、タンニン酸又は酵素が含まれる。
【0030】
実施形態の一つでは、該活性成分は、例えば、分散性濃縮物、乳化性濃縮物、懸濁性濃縮物、マイクロエマルジョン性濃縮物、可溶性液体、マイクロエマルション、サスポエマルション(suspoemulsion)、直接噴霧可能又は希釈可能溶液、希釈エマルション、エアロゾル、粉末、ダスト、顆粒又はポリマー物質中のカプセル化(少なくとも1種の活性成分を含む)として処方された組成物を与えるような公知の様式を用いて処理される。
【0031】
上記の組成物は、例えば、該活性化合物を、溶媒、あるいは、希釈剤、乳化剤、分散剤、界面活性剤及び/若しくはバインダー又は固定剤、適切な場合には、乾燥剤及びUV安定剤そして適切な場合には、着色剤及び顔料並びに他の処理助剤と混合することによって、それ自体は公知の様式において調製される。
【0032】
好適な溶媒又は希釈剤は、有機化学溶媒、例えば、芳香族系炭化水素、特に、C8〜C12の分画、例えば、キシレン混合物又は置換ナフタレン、フタル酸エステル、例えば、ジブチル又はジオクチルフタレート、脂肪族系炭化水素、例えば、シクロヘキサン又はパラフィン、アルコール及びグリコール、並びにそれらのエーテル及びエステル、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレン、プロピレン又はブチレンカーボネート、ケトン、例えば、シクロヘキサノン、高極性溶媒、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド又はジメチルホルムアミド、そして適切な場合には、エポキシ化植物性油脂又は大豆油;あるいは、水又は溶媒混合物である。
【0033】
好適な溶媒又は希釈剤には、水及びテトラヒドロフルフリルアルコール(適切な場合には、習慣的に用いられている、1種又は複数種の溶媒又は希釈剤、乳化剤及び分散剤との混合物として)が含まれることが好ましい。
【0034】
界面活性化合物は、処方すべき活性成分の性質にもよるが、良好な乳化、分散及び湿潤特性を有する、非イオン性、カチオン性及び/又はアニオン性界面活性剤であることが好ましい。界面活性剤はまた、界面活性剤の混合物を意味するものとして理解されうる。
【0035】
処方技術中で習慣的に用いられる界面活性剤は、とりわけ、次の出版物;
「McCutcheon’s Detergents and Emulsifiers Annual」、MC Publishing Corp.,Glen Rock,N.J.,1988;及び
M.and J.Ash,「Encyclopedia of Surfactants」、Vol.I〜III.Chemical Publishing Co.,New York,1980〜1981:
に記載される。
【0036】
好適な界面活性剤の中で、例えば、ポリアクリル酸塩、リグノスルホン酸塩、フェノールスルホン酸塩又は(モノ若しくはジアルキル)ナフタレンスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩、リグノスルホン酸塩とエチレンオキシドの重縮合物、脂肪アルコール若しくは脂肪酸又は脂肪アミンとのエチレンオキシドの重縮合物、置換フェノール(特に、アルキルフェノール又はアリールフェノール、例えば、モノ−及びジ−(ポリオキシアルキレンアルキルフェノール)ホスフェート、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールカルボキシレート又はポリオキシアルキレンアルキルフェノールスルフェート)、スルホコハク酸エステルの塩、タウリン誘導体(特にアルキルタウリド)、ホスフェート化トリスチリルフェノールとエチレンオキシドの重縮合物及びアルコール又はフェノールのリン酸エステルとエチレンオキシドの重縮合物が言及される。少なくとも1種の界面活性剤の存在が必要となる。というのは、該活性物質及び/又は不活性ビヒクルは水溶性ではなく、そして該適用向けのキャリア剤は水だからである。
【0037】
実施形態の一つでは、市販の製品は、液体濃縮物として処方されることが好ましく、一方、最終使用者は、通常、希釈配合を用いうる。
上記液状濃縮物の処方では、活性成分の化合物の濃度は、該処方の質量に基づいて、通常は0.001質量%〜70質量%であり、特に1質量%〜40質量%である。実施形態の一つでは、該活性成分は、2%〜20%で存在する。
【0038】
溶媒を除く、さらなる添加成分(分散剤又は界面活性剤等)の量は、好ましくは0.1質量%〜40質量%、特に1質量%〜30質量%、又は5質量%〜20質量%であり、各量は、液状濃縮物の処方の質量に基づいている。
使用前に、上述の液状濃縮物処方をほぼ任意の割合に希釈することができる。
【0039】
複数の活性成分(殺菌剤:ダニ駆除剤)を用いる場合には、該活性成分の有利な混合比は、1:50〜50:1、1:10〜10:1、1:5〜5:1である。実施形態の一つでは、1:1の混合比が好ましい。
従って、これらの範囲内で、当業者は、一般的な一連の知識、及び適切な場合には少々の実験に基づいて、処理すべき繊維基体にダメージを与えず、そして人間及び動物の生活環境に用いるのに好適であり、しかし殺菌性及びダニ駆除の観点から有効な一回量を選択するであろう。該活性成分は、概して、希釈、可溶化、乳化、又は分散形態で水性処方として添加される。適用は、そのようにして調製された該処方を、スプレー、ミスティング、アトマイジング、全面散布、はけ塗り、レーキング又はフォーミングすることでなしうる。
【0040】
実施形態の一つでは、該繊維基体の中又は基体の上に残る該活性成分の少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも75質量%、さらに好ましくは少なくとも90質量%が、該繊維基体の上面(top surface)より下に存在するような様式で該活性成分を適用する。
【0041】
実施形態の一つでは、該繊維基体はカーペットであり、そして平均して、処理されたカーペットの領域に広がる、該繊維基体の中又は基体の上に残る活性成分の少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも75質量%、さらに好ましくは少なくとも90質量%が、パイルの下半分からバッキング下を含む範囲内にあるような様式で該活性成分を適用する。
【0042】
特に好適な組成物の一つには、ペルメトリン及びアゾキシストロビンが含まれる。別の特に好適な組成物には、ペルメトリン及びフルジオキソニルが含まれる。さらに別の特に好適な組成物には3種の活性成分:アゾキシストロビン、フルジオキソニル及びペルメトリンが含まれる。さらに別の望ましい組成物には、変性剤、例えば、タンニン酸又は好適な酵素がさらに含まれる。
【0043】
例えば、実施形態の一つでは、本発明の方法は、次の通り;
(1)好適な量の液状濃縮物の処方を水で希釈し、約100〜約10,000ppmの活性成分濃度を有する希釈水性処方を準備するステップ;
具体例として、2,000ppmの希釈溶液が準備される、
(2)菌類発生(及び、随意選択的に、チリダニ発生)の可能性があるカーペットを準備するステップ;
(3)該カーペットを、1ガロン(G)/100平方フィート(sq.ft.)〜約1G/2000sq.ft.の割合で、100〜約10,000ppmの希釈処方を用いて処理するステップ;
具体例として、2000ppmの溶液を、1G/800sq.ft.の割合で該カーペットに適用する(すなわち、100mg(a.i.)/m2の適用率)、
(4)該カーペットを約0〜約8時間乾燥させるステップ;そして
(5)除去された物質が、実質的にその場の大気中に放出されない様式で、好ましくは、真空引き及び/又は温水抽出によって、該カーペットから菌類(カビ、菌糸体及びそれらの胞子を含む菌類、生きた又は死んだダニ、並びにそれらの糞便物質を含む)を除去するステップ:
このステップは、該カーペットをスプレーする前に実施することができ、その場合、乾燥ステップは随意選択的である(処理後に人間又は動物が立ち入るため)、
で実行される。
【0044】
ダニ駆除剤に関し、カーペット等の繊維表面に対する好適な適用の割合は、10mg〜500mg(a.i.)/m2、特に、30mg〜200mg(a.i.)/m2の範囲にわたる。具体例として、1,000ppmのペルメトリンを含む処方が、1G/800sq.ft.(100mg(a.i.)/m2)の割合で適用される。
【0045】
本発明の方法に従って処理されうる繊維基体は、例えば、天然又は合成ポリアミド(羊毛、絹、ナイロン等)、ポリウレタン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル並びに全ての種のセルロース含有繊維材料、例えば、天然セルロース繊維、例えば、綿、リネン、ジュート及び麻、及びビスコースレーヨンステイプル繊維及び再生セルロース;並びに上記繊維材料のブレンド、例えば、ポリアクリロニトリル/ポリエステル、ポリアミド/ポリエステル、ポリエステル/綿、ポリエステル/ビスコースレーヨン及びポリエステル/羊毛を含む材料である。
【0046】
好適な繊維材料及び表面材(カーペット等)はまた、羊毛、合成ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びセルロース含有繊維材料、綿又は羊毛を含むものを含む。繊維材料には、合成ポリアミド繊維、例えば、ナイロン6及びナイロン6,6を含むカーペットが含まれることが好ましい。
【0047】
該繊維材料は、織物又は編物のような、あるいはピースグッズ、例えば、ニット製品、不織布の繊維、カーペット、ヤーン又はステイプル繊維のような、種々の形態の提示が存在しうる。不織布繊維材料、そして特に、壁装材(wall covering)及びカーペットを含む繊維表面材が好ましい。
【0048】
非常に多くの最終用途製品が、処理された材料から作成された製品又は処理された布帛に由来する。例には、カーペット及びラグ、クッションケース、ベッドライニング、ベッドシート、マットレス及びマットレス布団地(ticking)、カーテン、羽毛布団及び羽毛布団ケース、室内装飾品、靴下及び衣服が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
実施形態の一つでは、主な活性成分はストロビルリン又はピロールであり、そしてアゾキシストロビン及び/又はフルジオキソニルが好ましく、単独又はピレスロイド等のダニ駆除剤と組み合わせて用いられる。上記活性成分の抗菌特性は、作物保護用途に周知であり、そして多くの農業構成物の基礎を形成する。本発明は、上記活性成分が、多くの家庭環境に一般的である繊維材料の中の菌類(カビ等)の抑制に有用であることを驚くべきことに見出したことに関する。
【0050】
しかし、最も重要なことは、特に、アゾキシストロビン又はフルジオキソニルが用いられた場合に、カビ等の菌類(ペルメトリン(又は別の好適なダニ駆除剤)が用いられた場合には、チリダニ)の個体群を減らすことにより、該活性化合物が家庭環境を向上することを見出した。それは、処理された繊維基体を含む環境内で生活する人間及び動物の健康にプラスの作用を有しうる。特定の理論と結び付けることを望まないが、それは、該活性成分が、増殖から菌類、カビ及びダニを減少及び/又は抑制し、それによって、上記菌類、カビ及びダニから放出される(eminate)アレルギー性、毒素原性及び/又は免疫原性の粒子の減少をもたらしうると考えられる。
【0051】
要約すると、本発明は、繊維材料の処理方法を提供することが理解される。特許請求の範囲によって規定される、本発明の範囲から外れることなく、割合、手順及び材料の変形がなされうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維材料を、殺菌剤として有効な量の殺菌性化合物と混合することを含む、繊維材料の中の菌類の成長を抑制する方法。
【請求項2】
前記殺菌性化合物が、ストロビルリン系殺菌剤、ピロール系殺菌剤、アニリド系殺菌剤、コナゾール系殺菌剤、チアゾール系殺菌剤及びピリミジン系殺菌剤から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記殺菌性化合物が、ストロビルリン及びピロールから成る群から選択される少なくとも1つの要素を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記繊維材料がポリアクリロニトリルを含み、そして前記殺菌性化合物が、アゾキシストロビン及びフルジオキソニルから成る群に由来する少なくとも1つの要素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記繊維材料がポリアミドを含み、そして前記殺菌性化合物が、アゾキシストロビン及びフルジオキソニルから成る群に由来する少なくとも1つの要素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記繊維材料がポリエステルを含み、そして前記殺菌性化合物が、アゾキシストロビン及びフルジオキソニルから成る群に由来する少なくとも1つの要素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記繊維材料が合成ポリアミドを含み、そして前記殺菌性化合物が、ダニ駆除剤と混合される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記合成ポリアミドがカーペット内に形成され、そして前記殺菌性化合物が、少なくとも約10mg/m2の濃度で前記カーペットに適用される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記殺菌性化合物が、少なくとも約30mg/m2の濃度で前記カーペットに適用される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ダニ駆除剤がペルメトリンである、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記表面を、殺菌剤として有効な量の殺菌性化合物を含む組成物と接触させることを含む、前記繊維基体上の菌類の成長を抑制する方法。
【請求項12】
前記殺菌性化合物が、ストロビルリン系殺菌剤、ピロール系殺菌剤、アニリド系殺菌剤、コナゾール系殺菌剤、チアゾール系殺菌剤及びピリミジン系殺菌剤から成る群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記殺菌性化合物が、ストロビルリン及びピロールから成る群から選択される少なくとも1つの要素を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ストロビルリンがアゾキシストロビンであり、そして前記ピロールがフルジオキソニルである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記繊維基体がカーペットを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記殺菌性化合物がダニ駆除剤と混合される、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記繊維基体の中又は基体上に残る前記殺菌性化合物と、用いられる場合にはダニ駆除剤との少なくとも50質量%が、前記基体の上面の下部に存在する、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記基体がカーペットであり、そして前記繊維基体の中又は基体上に残る前記殺菌性化合物と、用いられる場合にはダニ駆除剤との少なくとも50質量%が、パイルの下半分からバッキング下を含む領域内にある、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
繊維基体の中に存在する菌類の成長の抑制方法であって、
所望の順において、次の各ステップ;
(1)カビ、菌糸体及びそれらの胞子を含む菌類、生きた又は死んだダニ、並びにそれらの糞便物質を除去するステップ;そして
(2)前記表面に、殺菌剤として有効な量の、殺菌性化合物を含む組成物を適用するステップ:
を含む前記抑制方法。
【請求項20】
前記殺菌性化合物が、ストロビルリン系殺菌剤、ピロール系殺菌剤、アニリド系殺菌剤、コナゾール系殺菌剤、チアゾール系殺菌剤及びピリミジン系殺菌剤から成る群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記殺菌性化合物が、ストロビルリン及びピロールから成る群から選択される少なくとも一つの要素を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物がダニ駆除剤を含み、そして前記基体に、ダニ駆除剤として有効な量のダニ駆除剤を適用することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記ダニ駆除剤がペルメトリンである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ステップ(1)が、除去された物質が、実質的にその場の大気中に放出されない条件の下で、真空引き及び/又は温水抽出装置を用いて実施される、請求項19に記載の方法。

【公開番号】特開2011−63605(P2011−63605A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−253023(P2010−253023)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【分割の表示】特願2006−541666(P2006−541666)の分割
【原出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)
【Fターム(参考)】