説明

繊維基材と、この繊維基材の製造方法と、その使用

本発明はストリップ(strip)、ラップまたはブレード(braids)の形にすることができる繊維基材、例えば織布、フェルト、不織布に関するものである。本発明基材にはカーボンナノチューブ(CNT)を含む有機ポリマーまたは有機ポリマーの混合物を予備含浸する。本発明の別の対象はこの基材の製造方法と、三次元機械的部品の製造でのその使用にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維基材(fibrous substrate)と、この繊維基材の製造方法と、その使用とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
「繊維基材」とはファブリック、フェルトまたは不織布を意味し、ストリップ、ラップ (laps)、ブレード (braids)、ロック (locks) またはピース (pieces) の形を有することができる。
繊維基材は一種または複数の繊維を合わせたもの(組立体)から成る。繊維が長い場合、上記組立体はファブリックとなり、繊維が短い場合、上記組立体はフェルトまたは不織布タイプの基材となる。
【0003】
繊維基材を構成する繊維は炭素繊維、ガラス繊維、ポリマーベースの繊維または植物繊維単独か、これらの混合物にすることができる。ポリマーベースの繊維の中では有機ポリマー繊維、例えば熱可塑性ポリマー繊維または熱硬化性ポリマー繊維が挙げられる。
【0004】
本発明の対象は、三次元構造を有する機械的強度および耐熱性優れ、静電荷を放散可能な特性、すなわち、機械分野、航空機分野および船舶分野の部品の製造に適した特性を有する部品の製造での軽量複合材料にある。
【0005】
高温に曝される機械的装置の耐熱性を確実にするために樹脂を予備含浸した耐火ファブリックを用いて断熱性マトリクスにすることは航空機または自動車の分野では公知である。
【0006】
特許文献1(欧州特許第0 398 787号公報)には、ラムジェットエンジン燃焼室のシュラウドを保護するために、耐火ファブリックを含む熱保護層が記載されている。この熱保護層の製造は複雑でるだけでなく、熱保護層に埋め込まれる耐火ファブリックが果たす機能は遮熱機能だけである。
【0007】
最近では航空機または自動車の種々の部品の製造でも複合繊維が用いられている。この複合繊維は優れた熱機械強度と耐薬品性を有し、応力を分散させ(引張強度、曲げ強度または圧縮強度を与え)、場合によっては材料に耐薬品性を与え、形状を与える、骨格を形成するフィラメント強化材から形成される。
【0008】
例えば、特許文献2(フランス国特許出願第07/04620号公報)(2009年1月2日公開)には熱可塑性ポリマーを含む複合ポリマーマトリクスを長繊維に含浸する方法が記載されている。この複合材料部品は種々の方法、例えば接触成形、吹付け成形、オートクレーブドレープ成形または低圧成形で被覆した繊維から製造される。
【0009】
フィラメントワインディングとして知られる方法は中空部品を製造する方法の一つで、この方法では乾燥繊維に樹脂を含浸し、骨格を形成する被製造部品に適した形状を有するマンドレル上にこの繊維を巻き付ける。次いで、巻き付けて得られた部品を熱硬化する。プレートや船体を製造する別の方法はファブリックに繊維を含浸した後、得られた積層複合材料を金型内でプレスして固化させる。
【0010】
繊維へ含浸するのに十分な液体で、しかも、浴から繊維を取り出したときに流動しないように含浸樹脂の組成を最適化する研究がなされている。
【0011】
高温(40〜150℃)でニュートン挙動をする含浸組成物が提案されている。この含浸組成物は熱硬化性樹脂(例えば、エポキシド樹脂、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテルに硬化剤を組合せたもの)とこの熱硬化性樹脂と混和可能な特定レオロジー制御剤とを組み合わせたものである。レオロジー制御剤は熱硬化性樹脂と相溶性のある少なくとも一種のブロックを含むブロックポリマー、例えばメチルメタクリレートのホモポリマーまたはメチルメタクリレートのコポリマーと、ジメチルアクリルアミドと、特に、熱硬化性樹脂と相溶性のないブロック、例えば1,4−ブタジエンまたはn−ブチルアクリレートモノマーから成るブロックとから成るのが好ましく、必要に応じてポリスチレンブロックを含むことができる。このレオロジー制御剤の変形例では熱硬化性樹脂および相互に相溶性のない2つのブロック、例えばポリスチレンブロックとポリ(1,4−ブタジエン)ブロックとを含むことができる。
【0012】
この解決方法で得られる組成物は高温被覆に適したニュートン特性および粘性を有し、低温では偽塑性特性を有するので、従来法の上記欠点を効果的に解決することができるが、この解決方法は熱硬化樹脂をベースにした組成物の製造に限定される。
【0013】
別の解決方法は、熱可塑性被覆組成物、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ(フェニレンスルフィド)(PPS)またはポリフェニルスルホン(PPSU)で繊維を被覆するものである。
【0014】
この方法では、複合ポリマーマトリクスを含浸した長繊維、すなわちCNTを含む熱可塑性ポリマーで被覆した繊維を得ることができる。この含浸繊維は直接または含浸繊維の二次元網から形成されたファブリックの形で使用できる。この繊維は複合板の組成に含まれるファブリックの製造で使用できる。
【0015】
モータを軽量化すると同時に、金属製の構造用部品を用いて得られる機械的強度と同等な機械強度をモータに与え、および/または、熱保護を確実し、および/または、静電荷の除去を確実にすることが求められているが、モータ、特に可動モータの構造用部品を製造する金属の代替物として使用可能なものは予備含浸(場合によっては含浸後に織られた)繊維から製造される材料で、それ以外の材料は現在のところ提案されていない。
【0016】
しかし、任意の三次元機械構造物、特に自動車、航空機または船舶の分野の構造物を生産するために、金属と同等な機械的強度を有し、製造された機械的部品の電気抵抗および/または耐熱性を高くし熱および/または静電荷の除去を確実にする軽材料に対するニーズがある。
【0017】
特許文献3(フランス国特許第2 562 46号公報)には、ポリアミド6の微粉末をコアに含浸しポリアミド12のフレキシブルシースを有する繊維、特にガラス繊維のロックの被覆による複合材料の製造が記載されている。この被覆は押出成形で予備成形された後、周囲空気中で乾燥される。しかし、この文献では、導電性粉末、例えばカーボンナノチューブの粉末を添加して、複合材料をベースにした機械的部品の機械的および/または熱的および/または電気的特性を改善することは想定されていない。
【0018】
特許文献4(国際特許第WO 2007/044 889号公報)には、ニードルド不織布繊維マットと、樹脂マトリクスと、摩擦特性を改善するためにごく少量導入されるカーボンナノチューブとを含む摩擦複合材料が記載されている。この材料は摩擦部品、例えばブレーキパッドまたはクラッチプレートの部品の用途に用いられる。CNTはこの摩擦複合材料の容量の約0.004〜0.08重量部を占める。ポリマーの重量に対するCNTの重量含有量に関する情報は記載または提案されていない。これは、ニードルド不織布繊維のマット、すなわち、樹脂を含浸し且つCNTを導入した摩擦部品の製造に適合させた特殊な技術によって得られる不織布で、ポリマーに対する含有量の情報は記載がない。
【0019】
本発明に最も近い従来技術と考えられる特許文献5(国際特許第WO 2009/007 617号公報)には、熱可塑性ポリマーとカーボンナノチューブとを含む複合ポリマーマトリクスを長繊維に含浸する方法が記載されている。この方法は長繊維の含浸方法に関係するもので、繊維は一方向に揃えた糸の形、または、スピニング段階後の繊維を二方向に揃えたファブリックの形をしている。
【0020】
しかし、上記の文献にはストリップ、ラップ、ブレード、ロックまたはピースの形にした一つまたは複数の長繊維の組立体または短繊維の組立体、例えばフェルトおよび不織布にカーボンナノチューブ(CNT)を含む有機ポリマーまたは有機ポリマーの混合物を予備含浸して繊維基材を製造することで、基材内のCNTの分散/分布をより良くし、それによって物理化学的特性の均一性をより良くし、従って、最終生成物の特性全体をより良くすることができるということは記載も示唆もない。
【0021】
また、上記文献にはカーボンナノチューブを含む有機ポリマーまたはポリマーの混合物を含浸したフェルトまたは不織布を構成する繊維基材は記載がなく、カーボンナノチューブが有機ポリマーまたはこの混合物の重量の0.1%〜30%、好ましくは0.3%〜15%であることも記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】欧州特許第0 398 787号公報
【特許文献2】フランス国特許出願第07/04620号公報
【特許文献3】フランス国特許第2 562 467号公報
【特許文献4】国際特許第WO 2007/044 889号公報
【特許文献5】国際特許第WO 2009/007 617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明者は、航空機が大気圏に突入時に求められる熱シールド(遮熱)材の役目をし、しかも、好ましくは軽量で機械的に強く、静電荷の除去するのに適した材料を単純な製造プロセスを求めて来た。
【0024】
本発明の提案する解決策は上記の全ての基準(クライテリア)を満足し、三次元構造を有する部品、特に飛行機のウイング、飛行機の胴体、船体、自動車のサイドレールまたはスポイラー、ブレーキディスク、プランジャーシリンダー本体、ステアリングホイル本体を容易に製造できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、一つまたは複数の長繊維の組立体または短繊維の組立体、例えばフェルトおよび不織布から成る、ストリップ、ラップ、ブレード、ロックまたはピースの形にすることができる、繊維基材の製造方法において、下記(1)および(2)を主として特徴とする製造方法を提案する:
(1)カーボンナノチューブ(CNT)を含む有機ポリマーまたは有機ポリマーの混合物を繊維基材に含浸し、次いで
(2)この含浸繊維基材をポリマーの軟化点まで加熱し、この加熱はマイクロ波照射加熱または誘導加熱によって行う。
【発明を実施するための形態】
【0026】
驚くべきことに、本発明者は、マイクロ波照射加熱または誘導加熱による加熱は含浸させた基材内に導電性充填材、例えばカーボンナノチューブが存在する場合に特に適しているということを見出した。すなわち、それによって、基材内でのCNTの分散/分布がより良くなり、その結果、物理化学的特性の均一性がより良くなり、最終生成物の特性全体がより良くなる。
【0027】
本発明の別の対象は、本発明の方法によって得られる、カーボンナノチューブ(CNT)を含む有機ポリマーまたは有機ポリマーの混合物を予備含浸した、ストリップ、ラップ、ブレードまたはロックの形にすることができる、一つまたは複数の長繊維の組立体、例えばファブリックまたは短繊維の組立体、例えばフェルトまたは不織布から成る繊維基材にある。
【0028】
本発明方法は、短繊維から形成される基材の製造に特に適している。
本発明の別の対象は、カーボンナノチューブ(CNT)を含む有機ポリマーまたは有機ポリマーの混合物を予備含浸し、カーボンナノチューブが有機ポリマーまたは有機ポリマーの混合物の重量の0.1%〜30%、好ましくは0.3%〜15%である、ストリップ、ラップ、ブレード、ロックまたはピースの形にすることができるフェルトまたは不織布を構成する一つまたは複数の繊維の組立体を含む繊維基材にある。
【0029】
繊維基材の含浸は、カーボンナノチューブを含む流体有機ポリマーの浴中に繊維基材を漬けて行うことができる。
【0030】
本発明で「流体」とはそれ自体の重みで流れ、(固体とは違って)固有の形状を有していない媒体、例えば多少粘性がある液体か、一般に「流動床」とよばれる気体(例えば空気)中に懸濁した粉末を意味する。
【0031】
「有機ポリマー」とは熱可塑性ポリマーおよび熱硬化性ポリマーを意味する。
本発明の繊維基材は二次元または三次元部品の製造に、好ましくは三次元部品の製造に特に適している。
【0032】
三次元部品の製造での繊維基材の使用は例えば下記段階を含むことができる:
(1)有機ポリマー(熱可塑性または熱硬化性)または有機ポリマーの混合物とCNTとを含む組成物で繊維基材を予備含浸し、
(2)ポリマーとCNTを予備含浸した上記繊維基材を、所望の厚さが得られるまで少なくとも一部が重なるように、プリフォーム上にジグザグに配置し、
(3)組立体をポリマーの軟化点まで加熱し、
(4)冷却してプリフォームを取り出す。
繊維基材は例えばロボットを用いて配置できる。
【0033】
本発明の変形例では、本発明の繊維基材は例えば下記の周知な方法の一つを用いて三次元部品の製造に使用できる:
(1)低圧射出(樹脂トランスファー成形、RTM)、
(2)引抜き成形法、または
(3)プル−ワインディング法。
【0034】
本発明の別の対象は、三次元機械的部品の製造、特に飛行機のウイング、飛行機の胴体、船体、自動車のサイドレールまたはスポイラーまたはブレーキディスクまたはプランジャーシリンダーまたはステアリングホイールのボディの製造での上記の繊維基材の使用にある。
本発明の上記以外の特徴および利点は以下の説明からより良く理解できよう。本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0035】
繊維基材を構成する繊維
繊維基材を構成する繊維は炭素繊維、ガラス繊維、ポリマーベースの繊維または植物繊維の単独または混合物にすることができ、例えば下記にすることができる:
(1)下記(i)〜(xi)をベースにした合成ポリマー繊維:
(i)ポリ(ビニルアルコール)、
(ii)ポリアミド、例えばポリアミド6(PA-6)、ポリアミド11(PA-11)、ポリアミド12(PA-12)、ポリアミド6/6(PA-6/6)、ポリアミド4/6(PA-4/6)、ポリアミド6/10(PA-6/10)およびポリアミド6/12(PA/6.12)、芳香族ポリアミド、特にポリフタルアミド、およびアラミド、およびブロックコポリマー、特にポリアミド/ポリエーテル、
(iii)ポリオレフィン、例えば高密度ポリエチレン、ポリプロピレンおよびエチレンおよび/またはプロピレンのコポリマー、
(iv)ポリエステル、例えばポリヒドロキシアルカノエート、
(v)ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)およびポリエーテルケトンケトン(PEKK)、
(vi)下記(a)および(b)の中から選択されるフルオロポリマー:
(a)式(I)の少なくとも一つのフルオロモノマーを少なくとも50モル%含むフルオロポリマー:
CFX1=CX23 (I)
(ここで、X1、X2およびX3はそれぞれ独立して水素またはハロゲン原子、特に弗素または塩素原子を表す)、例えばポリ(ビニリデンフルオライド)(PVDF)好ましくはα形、ポリ(三フッ化エチレン)(PVF3)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレン(HFP)または三フッ化エチレン(VF3)またはテトラフルオロエチレン(TFE)またはクロロトリフルオロエチレン(CTFE)とのコポリマー、フルオロエチレン/プロピレン(FEP)コポリマーまたはエチレンとフルオロエチレン/プロピレン(FEP)またはテトラフルオロエチレン(TFE)またはクロロトリフルオロエチレン(CTFE)とのコポリマー、
(b)式(II)の少なくとも一つのモノマーを少なくとも50モル%含むフルオロポリマー:
R−O−CH=CH2 (II)
(ここで、Rはパーハロゲノ(特にパーフルオロ)アルキル基を表す)、例えばペルフルオロプロピル・ビニールエーテル(PPVE)、ペルフルオロエチルビニールエーテル(PEVE)およびエチレンとペルフルオロメチルビニールエーテルのコポリマー(PMVE)、
(vii)熱可塑性ポリウレタン(TPU)、
(viii)ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレート、
(ix)ポリビニルクロライド、
(x)フェノキシポリマー(または樹脂)
(xi)不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ビニルエステル、フェノール樹脂、ポリウレタン、シアノアクリレートおよびポリイミド、例えばビス−マレイミド樹脂、アミノプラスト(アミン、例えばメラミンとアルデヒド、例えばグリオキサルまたはホルムアルデヒドとを反応させて得る)およびこれらの混合物。
(2)炭素繊維、
(3)ガラス繊維、特にタイプE、RまたはS2のガラス、
(4)硼素繊維、
(5)シリカ繊維、
(6)天然繊維、例えば亜麻、大麻、サイザルまたは絹、
(7)上記の混合物、例えばガラス繊維、炭素繊維およびアラミド繊維の混合物。
【0036】
本発明では、「カーボンナノチューブ」とは、長さ/直径比が1以上、特に10以上で、直径が1ミクロン以下である長い中空粒子(中実粒子であるナノ繊維とは異なる)を意味する。このナノチューブは最大直径の軸線に沿って同軸状に配置された一つまたは複数の円筒壁を含む。
【0037】
カーボンナノチューブ
本発明で使用可能なカーボンナノチューブは単一壁または二重壁または多重壁のタイプのグラファイトのシートにすることができる。二重壁のナノチューブは特に下記文献に記載の方法で製造できる。
【非特許文献1】Flahaut et al. in Chem. Commun. (2003), 1442
【0038】
多重壁のナノチューブは下記文献に記載の方法で調製できる。
【特許文献6】国際特許第WO 03/02456号公報
【0039】
カーボンナノチューブは一般に0.1〜200 nm、好ましくは0.1〜100 nm、より好ましくは0.4〜50 nm、さらに好ましくは1〜30 nmの平均径を有し、0.1〜10μmの長さを有するのが有利である。また、その長さ/直径比は10以上、一般には100以上であるのが好ましい。その比表面積は例えば100〜300m2/gであり、その嵩密度は0.05〜0.5g/cm3であり、好ましくは0.1〜0.2g/cm3である。多重壁ナノチューブは例えば5〜15の壁、好ましくは7〜10の壁から成ることができる。
【0040】
このカーボンナノチューブは粗カーボンナノチューブでも、特に親水性にするために表面処理したカーボンナノチューブでもよい。従って、このナノチューブは、本発明方法で使用する前に精製および/または処理(例えば酸化処理)および/または粉砕および/または官能化できる。
【0041】
粗カーボンナノチューブは例えばアルケマ(Arkerna)社からグラフィストレングス(Graphistrength、登録商標)C100の商品名で市販されている。
有機ポリマーまたは有機ポリマーの混合物は熱可塑性ポリマーおよび熱硬化性ポリマーから選択される。
【0042】
混合物
混合物すなわち熱可塑性ポリマー組成物または熱可塑性ポリマーは下記の中から選択される:
(1)ポリアミド、例えばポリアミド6(PA-6)、ポリアミド11(PA-11)、ポリアミド12(PA-12)、ポリアミド6/6(PA-6/6)、ポリアミド4/6(PA-4/6)、ポリアミド6/10(PA-6/10)およびポリアミド6/12(PA/6.12)並びにアミド・モノマーと、他のモノマー、例えばポリテトラメチレン・グリコール(PTMG)を含むコポリマー、特にブロックコポリマー、
(2)芳香族ポリアミド、例えばポリフタルアミド、
(3)下記(i)および(ii)の中から選択されるフルオロポリマー:
(i)少なくとも一つのフルオロモノマー、好ましくは式(I)のモノマーから形成されるものを少なくとも50モル%有するフルオロポリマー:
CFX1=CX23 (I)
(ここで、X1、X2およびX3はそれぞれ独立して水素またはハロゲン原子、特に弗素または塩素原子を表す)、
例えばポリ(ビニリデンフルオライド)(PVDF)好ましくはα形、
ポリ(三フッ化エチレン)(PVF3)、
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレン(HFP)または
三フッ化エチレン(VF3)または
テトラフルオロエチレン(TFE)または
クロロトリフルオロエチレン(CTFE)とのコポリマー、フルオロエチレン/プロピレン(FEP)コポリマーまたは
エチレンとフルオロエチレン/プロピレン(FEP)またはテトラフルオロエチレン(TFE)または
クロルトリフルオロエチレン(CTFE)とのコポリマー、
(ii)少なくとも一つのモノマー、好ましくは式(II)のモノマーから形成されるものを少なくとも50モル%含むフルオロポリマー:
R−O−CH=CH2 (II)
(ここで、Rはパーハロゲノ(特にパーフルオロ)アルキル基を表す)、例えばペルフルオロプロピル・ビニールエーテル(PPVE)、
ペルフルオロエチルビニールエーテル(PEVE)およびエチレンとペルフルオロメチルビニールエーテルのコポリマー(PMVE)
(4)ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)およびポリエーテルケトンケトン(PEKK)、
(5)ポリエーテルイミド(PEI)、
(6)ポリフェニレンスルフィド(PPS)、
(7)ポリオレフィン、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)およびエチレンとプロピレンのコポリマー(PE/PP)(これらは酸基または無水物基で官能化されていてもよい)
(8)熱可塑性ポリウレタン(TPU)、
(9)ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレート、
(10)ポリ(ビニルクロライド)、
(11)C1〜C8のアルキルを有するポリアルキル(メタ)アクリレート、例えばメチル、エチル、ブチルまたは2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、
(12)ポリ(メタ)アクリル酸、
(13)ポリカーボネート、
(14)シリコーンポリマ、
(15)フェノキシポリマー(樹脂)、および
(16)上記の混合物またはコポリマー。
【0043】
熱可塑性ポリマーは下記の中から選択するのが好ましい:
少なくとも50%のVDFを含むフルオロポリマーまたはコポリマー、ポリアミドまたはコポリアミド、ポリアリールエーテル、例えばPEKK、またはポリビニルアルコールおよびPVCさらにはPEIまたはPPS。
【0044】
混合物
混合物すなわち熱硬化性ポリマー組成物または熱硬化性ポリマーは下記の中から選択される:
(1)不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ビニルエステル、フェノール樹脂、ポリウレタン、シアノアクリレートおよびポリイミド、例えばビス−マレイミド樹脂、アミノプラスト(アミン、例えばメラミンとアルデヒド、例えばグリオキサルまたはホルムアルデヒドとを反応させて得る)およびこれらの混合物。
【0045】
「熱硬化性ポリマー」または「熱硬化性樹脂」とは、一般に室温で液体で、融点が低く、一般に硬化剤の存在下で、熱、触媒または両者の組合せの作用下で硬化して熱硬化性樹脂が得られる材料を意味する。この樹脂は共有結合で結合した各種長さのポリマー鎖を含む材料から形成さ、三次元網状構造を形成する。この熱硬化性樹脂は溶融できず且つ不溶である。この熱硬化性樹脂はガラス遷移温度(Tg)以上に加熱することで軟化できるが、一旦、形状が与えられると、その後に加熱によって再形成することはできない。
【0046】
本発明の熱硬化性繊維の構造に含まれる熱硬化性ポリマー(または樹脂)は下記の中から選択される:不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ビニルエステル、フェノール樹脂、ポリウレタン、シアノアクリレートおよびポリイミド、例えばビス−マレイミド樹脂、アミノプラスト(アミン、例えばメラミンとアルデヒド、例えばグリオキサルまたはホルムアルデヒドとを反応させて得る)、およびこれらの混合物。
【0047】
不飽和ポリエステルは、不飽和化合物(例えば無水マレイン酸またはフマル酸)を含むジカルボン酸とグリコール、例えばプロピレングリコールの縮合重合で得られる。これは一般に、反応性モノマー、例えばスチレンに希釈して硬化させた後、過酸化物または触媒を用いて、重金属塩またはアミンの存在下で、あるいは、光開始剤、電離放射またはこれらの各種技術を組合せて用いて、後者とこのポリエステル上に存在する不飽和物とを反応させて得られる。
【0048】
ビニルエステルはエポキシドと(メタ)アクリル酸との反応の生成物を含む。この生成物は(ポリエステル樹脂と同様な方法で)スチレンに溶解するか、または、有機過酸化物を用いて硬化させることができる。
【0049】
エポキシ樹脂は、1分子当たり一つまたは複数のオキシラン基、例えば2〜4のオキシラン官能基を含む材料から形成できる。エポキシ樹脂が多官能性の場合、この樹脂はエポキシ末端基を有するか、主鎖にエポキシ基を有するか、主鎖にエポキシ側基を有する直鎖ポリマーから形成できる。この樹脂は一般に、硬化剤として、酸無水物またはアミンを必要とする。
【0050】
エポキシ樹脂はエピクロロヒドリンとビスフェノール、例えばビスフェノールAとの反応で得ることができる。変形例では、エポキシ樹脂はアルキルおよび/またはアルケニルグリシジルエーテルまたはエステル;モノ−およびポリフェノールの置換されていてもよいポリグリシジルエーテル、特にビスフェノールAポリグリシジルエーテル;ポリオールのポリグリシジルエーテル;脂肪族または芳香族ポリカルボン酸のポリグリシジルエーテル;ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル;ノボラックポリグリシジルエーテルにすることができる。
【0051】
本発明の別の変形例では、エポキシ樹脂はエピクロロヒドリンと芳香族モノ−またはジアミンの芳香族アミンまたはグリシジル誘導体との反応の生成物にすることができる。本発明では、脂環式エポキシド、好ましくはビスフェノールA(BADGE)、FまたはA/Fのジグリシジルエーテルを用いることもできる。
【0052】
硬化剤または架橋剤は、官能性ジアミンまたはトリアミン型化合物を1〜5%の含有量で用いることができる。
本発明では、予備含浸繊維基材は2D構造または3D構造の機械的部品の製造に用いられる。
【0053】
使用の第1実施例
有機ポリマー(熱可塑性または熱硬化性)または有機ポリマーとCNTとの混合物を含む組成物で繊維基材を予備含浸し、
(1)ポリマーとCNTで予備含浸した繊維基材をプリフォーム上に、所望の厚さが得られるまで少なくとも一部が重なるように、ジグザグに配置し、繊維基材を必要に応じてさらにポリマーの軟化点まで予備加熱し、例えばロボットを用いて配置する。
【0054】
加熱はレーザーで実施でき、これによってプリフォームに対する繊維基材の位置を調整できる。
(1)この組立体を次いで室温まで放冷し、
(2)ポリマーの種類に応じて昇温または照射のいずれかによるアニーリングすることができる。次いで、プリフォームを取り出す。
【0055】
第2実施例
ここでは低圧射出成形(樹脂トランスファー成形、RTM)を用いる。この場合には、CNTを含むポリマー、例えばポリアミド、フェノキシ樹脂またはPEI、PPS等の組合せを用いて繊維基材を金型に入れ、熱硬化性プレポリマー、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステルまたはビニルエステルを射出し、次いで、従来技術に従って加熱する。ポリマーをCNTと一緒に射出し、加熱する。ポリマーとしてはポリアミド、フェノキシ樹脂、またはPEIまたはPPSを使用できる。
【0056】
第3実施例
ここでは引抜き成形法を用いる。この場合には一方向に揃えた糸の形またはファブリックのストリップの形をした繊維基材を熱硬化性樹脂の浴中に通した後、加熱したダイに通す。成形と架橋(硬化)を行う。
【0057】
第4実施例
ここではプル−ワインディング法を用いる。この場合には繊維基材を浴中で連続含浸した後、例えばドラム上に巻き付け、オートクレーブに入れて重合して部品にする。
【0058】
いずれの場合でも、含浸前にCNTを含む有機ポリマー(熱可塑性または熱硬化性ポリマー)の塗膜をオンラインで形成できる。有機ポリマーはそのレオロジー特性から熱可塑性ポリマーのような挙動をする。
【0059】
二次元または三次元の構造を有する部品、例えば飛行機のウイング、飛行機の胴体、船体、自動車のサイドレールまたはスポイラーまたはブレーキディスクまたはプランジャーシリンダーまたはステアリングホイールのボディを製造できる。
【0060】
実際には、基材の加熱はレーザー加熱、プラズマトーチ加熱、窒素トーチ加熱または赤外線加熱炉を用いるか、マイクロ波照射加熱または誘導加熱によって実施できる。本発明では、この加熱は誘導加熱またはマイクロ波照射加熱によって有利に行うことができる。
【0061】
電気導電性が用いられ、コアへの硬化に寄与し、繊維基材のより良い均一性に寄与するので、予備含浸基材の導電特性は誘導加熱またはマイクロ波照射加熱による加熱と組合せるのが有利である。この加熱によっ予備含浸した繊維基材中に存在する充填材の熱伝導もコアへの硬化に寄与し、基材の均一性を改善する。
【0062】
誘導加熱は高周波装置を用いて例えば650kHz〜1MHzの交流電磁場に基材を曝して行う。
マイクロ波照射加熱は極超短波発生器を用いて例えば2〜3GHzの極超短波電磁場に基材を曝して行う。
【0063】
含浸段階
繊維基材の含浸段階は種々の方法で行うことができ、用いる熱可塑性または熱硬化性ポリマーまたはポリマー混合物の物理的形状(微粉状または多少液状)に応じて行うことができる。
繊維基材の含浸はCNTを含む液体ポリマーの浴中で実施できる。繊維基材がストリップまたはラップの形をしている場合、CNTを含む流体、例えば液体のポリマーの浴中で繊維基材を循環させることができる。この液体浴はポリマーまたはポリマー混合物単独の形または有機溶剤中または水中に分散した形、例えばラテックス形で含むことができる。
【0064】
繊維基材の含浸は、ポリマー組成物すなわちCNTを含むポリマーまたはポリマー混合物が粉末形をした流動床での含浸方法で実施することもできる。この場合には、CNT充填ポリマー粒子の流動床の形をした含浸浴中に基材を浸した後に、含浸材料を必要に応じて乾燥させ、加熱することで、繊維またはファブリック上にポリマーを含浸させ、必要に応じてカレンダー加工する。上記特許文献3(フランス国特許第2 562 467号公報)または下記特許文献7(欧州特許第0 394 900号公報)に記載されているように、微粉状ポリマーおよびCNTは繊維ファブリック上に塗布することもできる。
【特許文献7】欧州特許第0 394 900号公報
【0065】
さらに、有機CNT粉末とポリマーとの混合物を振動支持体上に平らに置かれた繊維基材上に直接塗布して、粉末を基材一面に分散することもできる。
【0066】
本発明の別の変形例では、CNT充填有機ポリマー流を、ラップまたはストリップまたはブレードの形をした繊維基材上に直接押し出し、カレンダー加工する。
【0067】
本発明では、ナノチューブは有機ポリマーまたは有機ポリマーの混合物中に0.1〜30重量%、好ましくは0.3〜15重量%で存在するのが有利である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)と(2)を有する、ストリップ、ラップ、ブレード、ロックまたはピースの形にすることができる一種または複数の長繊維の組立体または短繊維の組立体を含む繊維基材、例えばフェルトおよび不織布の製造方法:
(1)繊維基材にカーボンナノチューブ(CNT)を含む有機ポリマーまたは有機ポリマーの混合物を含浸し、次いで
(2)含浸した繊維基材をポリマーの軟化点まで加熱し、この加熱をマイクロ波照射加熱または誘導加熱によって行う。
【請求項2】
誘導加熱を650kHz〜1MHzの高周波装置を用いて交流電磁場に基材を曝して行う請求項1に記載の繊維基材の製造方法。
【請求項3】
マイクロ波照射加熱を2〜3GHzの極超短波発生器を用いて極超短波電磁場に基材を曝して行う請求項1に記載の繊維基材の製造方法。
【請求項4】
カーボンナノチューブCNTを含む流体有機ポリマーの浴中に繊維基材を入れて含浸する請求項1に記載の繊維基材の製造方法。
【請求項5】
ポリマー組成物すなわちCNTを含むポリマー混合物が粉末の形をしており、繊維基材を流動床に入れて含浸する請求項1に記載の繊維基材の製造方法。
【請求項6】
粉末を基材の表面上に分散できるようにするために振動支持体上に平らに置かれた繊維基材にCNT粉末と有機ポリマーとの混合物を直接塗布して含浸を行う請求項1に記載の繊維基材の製造方法。
【請求項7】
ラップまたはストリップまたはブレードの形をした繊維基材上にカレンダー加工によってCNTを入れた有機ポリマー流を直接押し出して含浸を行う請求項1に記載の繊維基材の製造方法。
【請求項8】
カーボンナノチューブ(CNT)を含む有機ポリマーまたは有機ポリマーの混合物を予備含浸した、ストリップ、ラップ、ブレード、ロックまたはピースの形にすることができる、フェルトまたは不織布を構成する一種または複数の繊維の組立体を含む繊維基材において、
上記のカーボンナノチューブが有機ポリマーまたは有機ポリマーの混合物の重量の0.1%〜30%、好ましくは0.3%〜15%であることを特徴とする繊維基材。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法によって得られる、カーボンナノチューブ(CNT)を含む有機ポリマーまたは有機ポリマーの混合物を予備含浸した、ストリップ、ラップ、ブレード、ロックまたはピースの形にすることができる、一つまたは複数の長繊維の組立体、例えばファブリックまたは短繊維の組立体、例えばフェルトまたは不織布を含む繊維基材。
【請求項10】
有機ポリマーを熱可塑性ポリマーおよび熱硬化性ポリマーの中から選択する請求項8または9に記載の一つまたは複数の繊維の組立体を含む繊維基材。
【請求項11】
熱可塑性ポリマーを下記の中から選択する請求項10に記載の繊維基材:
(1)ポリアミド、例えばポリアミド6(PA-6)、ポリアミド11(PA-11)、ポリアミド12(PA-12)、ポリアミド6/6(PA-6/6)、ポリアミド4/6(PA-4/6)、ポリアミド6.10(PA-6/10)およびポリアミド6/12(PA/6.12)並びにアミド・モノマーと他のモノマー、例えばポリテトラメチレン・グリコール(PTMG)を含むコポリマー、特にブロックコポリマー、
(2)芳香族ポリアミド、例えばポリフタルアミド、
(3)下記(i)および(ii)の中から選択されるフルオロポリマー:
(i)下記のような少なくとも一つのフルオロモノマー、好ましくは式(I)のモノマーから形成されるものを少なくとも50モル%有するフルオロポリマー:
CFX1=CX23 (I)
(ここで、X1、X2およびX3はそれぞれ独立して水素またはハロゲン原子、特に弗素または塩素原子を表す)
ポリ(ビニリデンフルオライド)(PVDF)、好ましくはα形、
ポリ(三フッ化エチレン)(PVF3)、
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、
ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレン(HFP)または
三フッ化エチレン(VF3)または
テトラフルオロエチレン(TFE)または
クロロトリフルオロエチレン(CTFE)とのコポリマー、
フルオロエチレン/プロピレン(FEP)コポリマー、
エチレンとフルオロエチレン/プロピレン(FEP)またはテトラフルオロエチレン(TFE)または
クロルトリフルオロエチレン(CTFE)とのコポリマー、
(ii)下記のような少なくとも一つのモノマー、好ましくは式(II)のモノマーから形成されるものを少なくとも50モル%含むフルオロポリマー:
R−O−CH=CH2 (II)
(ここで、Rはパーハロゲノ(特にパーフルオロ)アルキル基)
ペルフルオロプロピル・ビニールエーテル(PPVE)、
ペルフルオロエチルビニールエーテル(PEVE)およびエチレンとペルフルオロメチルビニールエーテルのコポリマー(PMVE)
ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)およびポリエーテルケトンケトン(PEKK)、
ポリエーテルイミド(PEI)、
ポリフェニレンスルフィド(PPS)
ポリオレフィン、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)およびエチレンとプロピレンのコポリマー(PE/PP)(これらは酸または無水物基で官能化されていてもよい)
熱可塑性ポリウレタン(TPU)、
ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレート、
ポリビニルクロライド、
C1〜C8のアルキルを有するポリアルキル(メタ)アクリレート、例えばメチル、エチル、ブチルまたは2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、
ポリ(メタ)アクリル酸、
ポリカーボネート、
シリコーンポリマー、
フェノキシポリマー(樹脂)、
および上記の混合物またはコポリマー。
【請求項12】
熱可塑性ポリマーを、少なくとも50%のVDFを含むフルオロポリマーまたはコポリマー、ポリアミドまたはコポリアミド、ポリアリールエーテル、例えばPEKKまたはポリビニルアルコールおよびPVCさらにはPEIまたはPPSの中から選択する請求項10に記載の繊維基材。
【請求項13】
熱硬化性ポリマーを、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ビニルエステル、フェノール樹脂、ポリウレタン、シアノアクリレートおよびポリイミド、例えばビス−マレイミド樹脂、アミノプラスト(アミン、例えばメラミンとアルデヒド、例えばグリオキサルまたはホルムアルデヒドとを反応させて得る)およびこれらの混合物の中から選択する請求項10に記載の繊維基材。
【請求項14】
不飽和ポリエステルが、不飽和化合物(例えば無水マレイン酸またはフマル酸)を含むジカルボン酸とグリコール、例えばプロピレングリコールとを縮合重合し、反応性モノマー、例えばスチレンに希釈して硬化させ、その後、過酸化物または触媒を用いて、重金属塩またはアミンの存在下で、あるいは、光開始剤、電離放射またはこれらの各種技術を組合せて用いて、後者とポリエステル上に存在する不飽和物とを反応させて得られる請求項13に記載の繊維基材。
【請求項15】
ビニルエステルが、エポキシドと(メタ)アクリル酸との反応生成物から成り、この反生成物は(ポリエステル樹脂と同様な方法で)スチレンに溶解するか、または、有機過酸化物を用いて硬化する請求項13に記載の繊維基材。
【請求項16】
エポキシ樹脂が、1分子当たり一つまたは複数のオキシラン基、例えば2〜4のオキシラン官能基を含む材料から形成される請求項13に記載の繊維基材。
【請求項17】
エポキシ樹脂が多官能性の場合、この樹脂をエポキシ末端基を有するかまたは主鎖にエポキシ基を有するか、あるいは、主鎖にエポキシ側基を有する直鎖ポリマーから形成し、硬化剤、例えば酸無水物またはアミンを用いる請求項16に記載の繊維基材。
【請求項18】
官能性ジアミンまたはトリアミン型の生成物を硬化剤または架橋剤中で1〜5%の含有量で用いる請求項17に記載の繊維基材。
【請求項19】
エポキシ樹脂をエピクロロヒドリンとビスフェノール、例えばビスフェノールAとの反応で得る請求項16に記載の繊維基材。
【請求項20】
エポキシ樹脂を、アルキルおよび/またはアルケニルグリシジルエーテルまたはエステル;モノ−およびポリフェノールの置換されていてもよいポリグリシジルエーテル、特にビスフェノールAポリグリシジルエーテル;ポリオールのポリグリシジルエーテル;脂肪族または芳香族ポリカルボン酸のポリグリシジルエーテル;ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル;ノボラックポリグリシジルエーテルとの反応で得る請求項16に記載の繊維基材:。
【請求項21】
エポキシ樹脂がエピクロロヒドリンと芳香族モノ−またはジアミンの芳香族アミンまたはグリシジル誘導体との反応の生成物である請求項16に記載の繊維基材。
【請求項22】
脂環式エポキシド、好ましくはビスフェノールA(BADGE)、FまたはA/Fのジグリシジルエーテルを用いる請求項16に記載の繊維基材。
【請求項23】
基材の繊維が炭素繊維、ガラス繊維、ポリマーベースの繊維または植物繊維か、これらの混合物である請求項8または9に記載の繊維基材。
【請求項24】
繊維基材を構成する繊維を下記の中から選択する請求項23に記載の繊維基材:
(1)下記(i)〜(xi)をベースにした合成ポリマー繊維:
(i)ポリ(ビニルアルコール)、
(ii)ポリアミド、例えばポリアミド6(PA-6)、ポリアミド11(PA-11)、ポリアミド12(PA-12)、ポリアミド6/6(PA-6/6)、ポリアミド4/6(PA-4/6)、ポリアミド6/10(PA-6/10)およびポリアミド6/12(PA-6.12)、芳香族ポリアミド、特にポリフタルアミド、およびアラミド、およびブロックコポリマー、特にポリアミド/ポリエーテル、
(iii)ポリオレフィン、例えば高密度ポリエチレン、ポリプロピレンおよびエチレンおよび/またはプロピレンのコポリマー、
(iv)ポリエステル、例えばポリヒドロキシアルカノエート、
(v)ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)およびポリエーテルケトンケトン(PEKK)、
(vi)下記(a)および(b)の中から選択されるフルオロポリマー:
(a)少なくとも50モル%の少なくとも一つのフルオロモノマー、好ましくは式(I)のモノマーで構成されるもの:
CFX1=CX23 (I)
(ここで、X1、X2およびX3はそれぞれ独立して水素またはハロゲン原子、特に弗素または塩素原子を表す)、例えばポリ(ビニリデンフルオライド)(PVDF)好ましくはα形、ポリ(三フッ化エチレン)(PVF3)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレン(HFP)または三フッ化エチレン(VF3)またはテトラフルオロエチレン(TFE)またはクロロトリフルオロエチレン(CTFE)とのコポリマー、フルオロエチレン/プロピレン(FEP)コポリマーまたはエチレンとフルオロエチレン/プロピレン(FEP)またはテトラフルオロエチレン(TFE)またはクロルトリフルオロエチレン(CTFE)とのコポリマー、
(b)少なくとも50モル%の少なくとも一つのモノマー、好ましくは式(II)のモノマーで構成されるもの:
R−O−CH=CH2 (II)
(ここで、Rはパーハロゲノ(特にパーフルオロ)アルキル基)、例えばペルフルオロプロピル・ビニールエーテル(PPVE)、ペルフルオロエチルビニールエーテル(PEVE)およびエチレンとペルフルオロメチルビニールエーテルのコポリマー(PMVE)、
(vii)熱可塑性ポリウレタン(TPU)、
(viii)ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレート、
(ix)ポリビニルクロライド、
(x)フェノキシポリマー(または樹脂)
(xi)不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ビニルエステル、フェノール樹脂、ポリウレタン、シアノアクリレートおよびポリイミド、例えばビス−マレイミド樹脂、アミノプラスト(アミン、例えばメラミンとアルデヒド、例えばグリオキサルまたはホルムアルデヒドとを反応させて得る)およびこれらの混合物。
(2)炭素繊維、
(3)ガラス繊維、特にタイプE、RまたはS2のガラス、
(4)硼素繊維、
(5)シリカ繊維、
(6)天然繊維、例えば亜麻、大麻、絹またはサイザル、
(7)上記の混合物、例えばガラス繊維、炭素繊維およびアラミド繊維の混合物。
【請求項25】
カーボンナノチューブが単一壁または二重壁または多重壁のナノチューブである請求項8または9に記載の繊維基材。
【請求項26】
ナノチューブが有機ポリマーまたは有機ポリマーの混合物の重量の0.1%〜30%、好ましくは0.3%〜15%である請求項9に記載の繊維基材。
【請求項27】
三次元部品の製造での請求項8〜26のいずれか一項に記載の繊維基材の使用であって、ポリマーおよびCNTを予備含浸した繊維基材を、所望の厚さが得られるまで少なくとも一部が重なるように、プリフォーム上にジグザグに配置することを特徴とする使用。
【請求項28】
下記の周知な方法の一つを含む三次元部品の製造での請求項8〜26のいずれか一項に記載の繊維基材の使用:
(1)低圧射出(樹脂トランスファー成形、RTM)、
(2)引抜き成形法、または
(3)プル−ワインディング法。
【請求項29】
三次元機械的部品の製造、特に飛行機のウイング、飛行機の胴体、船体、自動車のサイドレールまたはスポイラー、ブレーキディスクまたはプランジャーシリンダーまたはステアリングホイールのボディの製造での請求項8〜26のいずれか一項に記載の繊維基材の使用。

【公表番号】特表2012−526885(P2012−526885A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510336(P2012−510336)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050892
【国際公開番号】WO2010/130930
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】