説明

繊維強化された積層構造体におけるしわを検出する方法並びに繊維強化された積層構造体の熱スキャンを実施するための補助装置

【課題】繊維強化された積層体構造におけるしわを検出する有利な方法を提供する。
【解決手段】繊維強化された積層構造体(1)におけるしわ(3)を検出する方法であって、積層構造体(1)を局部的に加熱又は冷却し、この際に加熱箇所又は冷却箇所を、規定された経路(7)に沿って移動させ、積層構造体(1)の温度を、加熱箇所又は冷却箇所とは異なった測定箇所において測定し、測定箇所を、加熱箇所又は冷却箇所と同じ経路(7)に沿って移動させ、しわ(3)を、規定された経路(7)に沿って発見された温度の異常から検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化された積層構造体におけるしわを検出する方法であって、しわを、積層構造体において発見された温度の異常から検出する方法に関する。さらに本発明はまた、繊維強化された積層構造体の熱スキャンを実施するための補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化された積層構造体の構造上の特性は通常、強化繊維の量、型式及び配向によって決定される。一般的に、負荷が縦長の繊維方向において生じる場合に限って、繊維の剛性及び強度を考慮することができる。従って従来の設計は、完成した積層体の繊維が、型に配置された場合における繊維の方向と同じ方向に方向付けられるということを前提にする。しかしながら幾つかのケースでは、繊維層におけるしわが、製造プロセスの結果として生じることがある。このような場合にはしわのある繊維は、もはや所望の方向付けを有しておらず、結果として積層体の過負荷の生じることがある。
【0003】
しわは、幾つかの理由によって生じることがある。硬化中における積層体の熱膨張は、型の熱膨張を上回ることがあり、このような場合には積層体は、マトリックス材料、典型的には熱可塑性又は熱硬化性の材料が、繊維の所望の方向付けを維持するのに十分に硬化される前に、圧縮圧下になることがある。積層体の下における平坦でない構造体、もしくは積層体が形成される表面における波状起伏もまた、しわの原因となる。
【0004】
繊維強化された積層体におけるしわは、典型的には、配置の組合せによって防止される。積層体の厚さは、発熱を最小にするために、一定のリミットよりも下に保たれている。積層体が成形される型又はその他の表面は、高品質に保たれる。硬化は、熱膨張における差異を最小にするように、注意深く制御された温度勾配で実施される。
【0005】
繊維層におけるしわを回避する別の方法では、例えば、繊維層の間にしわ防止材料の層が設けられている。しわ防止材料は、該材料が通常の繊維材料よりも剛性であるように製造される。このような材料が例えばガラス繊維マットの層の間に配置されると、マットの繊維におけるしわの発生は、ほとんど防止される。それというのは、マットはしわ防止材料によってフラットに保たれるからである。このような方法は、例えばEP2113373A1及び該明細書において引用された文献に記載されている。しわ防止材料は、早期硬化される固体、穿孔されたメッシュ状の積層体又は固体、積層体以外の例えば木又は金属のような穿孔された又はメッシュ状の材料であってよい。
【0006】
予防措置にもかかわらず、繊維強化された積層体においてしわが発生した場合には、しわにおける剛性及び/又は強度の低下はしばしば現実的な安全域を越えてしまうので、積層体の修理又は排除が通常要求される。
【0007】
構造体における欠陥を非破壊式に検出する様々な方法は、例えばEP0304708A2に基づいて公知である。特に、この文献には、管を加熱又は冷却し、(壁の内側における)異物の堆積部に対応する管の外側表面、又は減じられた管厚さに対応する管の外側表面の1部分と、堆積した異物のない通常の壁厚さに対応する外側表面の1部分との間において生じた温度差を測定することによって、管の内側における欠陥部分を検出することが記載されている。
【0008】
風力タービンロータ翼を検査するための加熱冷却試験法はまた、例えばWO03/069324A1に基づいて公知である。当該文献には、繊維強化されたポリマから成る翼ハウジングと、流体又は粘性の硬化性ポリマ化合物が供給される領域とを有する風力タービンロータ翼の品質を検査する方法及び装置が開示されている。この風力タービンロータ翼は、高温又は低温にさらされ、温度変化が、風力タービンロータ翼の表面領域にわたって測定される。この領域の、ポリマが十分に存在していない部分は、十分なポリマを有する部分に対して異なった温度によって検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】EP2113373A1
【特許文献2】EP0304708A2
【特許文献3】WO03/069324A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ゆえに本発明の課題は、上に述べた先行技術を出発点として、繊維強化された積層体構造におけるしわを検出する有利な方法を提供することである。さらに別の課題は、繊維強化された積層体構造を検出するのに使用するための補助装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の課題を解決するために本発明の方法では、請求項1記載のように、繊維強化された積層構造体におけるしわを検出する方法において、
−積層構造体を局部的に加熱又は冷却し、この際に加熱箇所又は冷却箇所を、規定された経路に沿って移動させ、
−積層構造体の温度を、加熱箇所又は冷却箇所とは異なった測定箇所において測定し、測定箇所を、加熱箇所又は冷却箇所と同じ経路に沿って移動させ、
−しわを、規定された経路に沿って発見された温度の異常から検出するようにした。
【0012】
第2の課題を解決するために本発明の構成では、請求項8記載のように、繊維強化された積層構造体の熱スキャンを実施する補助装置において、該補助装置は、レールとサーマルトランスミッタとサーマルレシーバとから成っていて、該サーマルトランスミッタとサーマルレシーバとは、互いに対して間隔をおいてレールに沿って可動であり、さらに、熱スキャンが実施される繊維強化された積層構造体にレールを固定するための固定手段が設けられている。
【0013】
従属請求項には、本発明の有利な態様が記載されている。
【発明の効果】
【0014】
繊維強化された積層構造体におけるしわを検出する本発明の方法では、積層構造体は、規定された経路に沿って移動させられる加熱箇所又は冷却箇所を用いて、局部的に加熱又は冷却される。加熱又は冷却は、特に、構造体の外側から行われる。有利には、加熱装置又は冷却装置と加熱又は冷却される表面との間の間隔は、規定された経路に沿った運動中に一定に保たれる。構造体の温度は、加熱箇所又は冷却箇所とは異なった測定箇所において測定される。測定箇所は、加熱箇所又は冷却箇所と同じ経路に沿って移動させられる。加熱又は冷却と同様に、積層構造体の温度の測定も、特に、積層構造体の外側から行われる。しわは、測定箇所が移動させられる経路に沿って発見された温度異常から検出される。
【0015】
本発明は、次の認識、すなわち繊維積層体が、十分に規定された特定の時間の間、加熱又は冷却された場合に、材料が達する温度は、熱伝導率のような材料特性に依存しており、また同様に、材料が周囲温度に戻るのに要する時間も熱伝導率のような材料特性に依存している、という認識に基づいている。従って、積層体の材料特性における変化は、例えば表面を加熱又は冷却した後で、特定の時間経過後に、経路に沿って表面温度を測定することによって、測定することができる。
【0016】
ゆえに、加熱箇所又は冷却箇所とは異なった箇所において温度を測定すること、及び同じ経路に沿って両方の箇所を移動させることによって、特に、測定箇所が、加熱箇所又は冷却箇所に対して固定された距離を保って移動させられる場合に、構造体の表面の温度分布における異常を容易に検出することができる。さらに、加熱箇所又は冷却箇所及び/又は測定箇所を、一定の速度で移動させると有利である。一定の速度で移動させると、熱の影響は経路の各箇所において同じである。加熱箇所又は冷却箇所と測定箇所との間の距離が一定に保たれていると、測定装置に対する温度源の影響もまた絶えず同じである。特に、距離が固定されていて、移動速度が一定である場合には、温度測定は経路の各箇所において同じ条件下で行われるということを、保証することができる。この場合、測定の設定によってアーチファクト(artefacts)は、最小にすることができる。さらに、繊維強化された材料のパラメータ、例えば熱伝導率、熱係数などのようなパラメータの正確な知識は、不要である。加熱装置又は冷却装置と測定装置との間における固定された距離及び一定の速度によって、経路のすべての箇所における測定が、熱の影響と測定との間において経過した時間と、特定の箇所が受けた熱の影響の量とを顧慮することなしに、直接的に比較可能である。それというのは、これら2つのパラメータは各測定箇所に対して同じだからである。
【0017】
その結果、本発明の方法は、積層構造体の極めて正確なスキャニングを可能にする。さらに測定の結果は再現可能である。繊維強化された材料の熱特性が知られている場合には、しわの長さもしくは広がりを検出することも可能である。
【0018】
しわを検出するのみならず、しわの長さをも検出するために、加熱箇所又は冷却箇所及び測定箇所を、少なくとも2つの異なった経路に沿って移動させることができる。少なくとも2つの経路に沿って見付けられた温度の異常に基づいて、しわの長さを測定することができる。経路の数と複数の経路の間における距離とは、しわの長さを検出するために達成されるべき空間分解能に依存して設定することができる。特に、すべての経路は互いに平行であってよい。
【0019】
加熱箇所又は冷却箇所及び測定箇所がそれに沿って移動させられる、少なくとも2つの経路が使用される場合に、2つ以上の加熱装置又は冷却装置と2つ以上の測定装置とが存在しているか又は、加熱装置又は冷却装置と測定装置とが1つのラインに沿って同時に加熱又は冷却及び同時に測定を可能にする場合には、前記複数の経路は相前後して通過されても又は同時に通過されてもよい。
【0020】
本発明による補助装置、つまり繊維強化された積層構造体の熱スキャンを実施する補助装置は、レールとサーマルトランスミッタとサーマルレシーバとから成っていて、該サーマルトランスミッタとサーマルレシーバとは、互いに対して間隔をおいてレールに沿って可動であり、本発明による補助装置はさらに、熱スキャンが実施される繊維強化された積層構造体にレールを固定するための固定手段を有している。このような補助装置を使用すると、本発明による方法を実施するために、サーマルトランスミッタ及びサーマルレシーバを正確に、規定された同じ経路に沿って簡単に移動させることが可能になる。
【0021】
サーマルトランスミッタとサーマルレシーバとの間における固定された距離は、サーマルトランスミッタとサーマルレシーバとが、レールに沿って可動である共通のキャリアに固定されていると、簡単に得られる。特に、サーマルトランスミッタとサーマルレシーバとの間の距離は、検査される構造体の特異性に距離を適合させることができるように設定可能であってよい。
【0022】
固定手段に対するレールの位置及び/又は方向付けが設定可能であると、補助装置は、構造体からの装置の取外し及び異なったポジションにおける再取付けの必要なしに、異なった経路に沿ったスキャニングを可能にする。設定可能な位置及び/又は方向付けは、例えば、固定手段が足部を有していて、レールが第1の端部と第2の端部とを有していて、各端部に少なくとも1つの足部が設けられていると、得ることができる。この場合各端部における少なくとも1つの足部は、少なくとも1つの可動のアームによって各端部に結合されている。従ってレールの位置及び/又は方向付けは、アームを移動させることによって設定することができる。特に、各端部における少なくとも1つの足部は、少なくとも2つの可動のアームによって各端部に結合されていることができ、これらの可動のアームは、レールの1つの区分及び足部の1つの区分と一緒に4節リンクを形成している。
【0023】
検査される構造体に対する補助装置の取付け及び取外しを容易にするために、各足部は少なくとも1つの吸盤を有していてよい。
【0024】
補助装置において使用されるサーマルトランスミッタは、例えば冷気ブロワ、COノズル等のようなガスノズルであっても、例えば暖気ブロワ、加熱ランプ等のような熱源であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】積層構造体内にしわを有する風力タービンロータ翼を、しわの存在を検出するために使用される例示された2つの経路と共に示す図である。
【図2】本発明による方法をどのように実施するかを概略的に示す図である。
【図3】本発明の方法によって得られる測定結果を概略的に示す線図である。
【図4】本発明の方法を実施するために使用される本発明による補助装置を示す斜視図である。
【図5】風力タービンロータ翼に固定された、図4に示した補助装置と第1の検査経路とを示す図である。
【図6】図5に示した、補助装置と第2の検査経路とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0027】
以下において、本発明による方法については図1〜図3を参照して記載し、方法を実施するために使用される補助装置については、図4〜図6を参照して記載する。
【0028】
図1には、繊維強化された積層構造体から成る風力タービンロータ翼1が示されている。このロータ翼は、積層構造体内におけるしわの有無を検査されねばならない。ロータ翼1がその肩部5を有している領域にしわ3が存在すると、仮定する。
【0029】
生じ得るしわを検出するために、ロータ翼は少なくとも、しわの形成されやすいことが知られている積層構造体の領域において、検査される。しわは典型的には、図3に示されているように縦長に延びているので、ロータ翼は、しわと交差する1つの経路に沿って検査されるだけで十分である。しかしながら、しわを見落とさないようにするために、2つ又は3つ以上の経路に沿ってロータ翼を検査することが望ましいこともあり、これらの経路は、しわを見落とさないことを保証するために互いに十分に近接して位置している。図1には、1例として2つの検査経路7A,7Bが破線で示されている。有利には互いに平行に位置する、十分な数の検査経路7を使用すると、しわの長手方向長さをも測定することができる。しわの長さを測定することができる分解能は、検査経路7間における間隔と、測定装置の空間分解能とに依存する。本発明の方法によれば、検査経路7A,7Bのうちの少なくとも1つと交差するしわ3が、検出される。
【0030】
本発明の方法によれば、サーマルトランスミッタ9が、ロータ翼の表面11の上を検査経路7に沿って移動させられる(図2参照)。この移動は、積層体表面11の上方においてサーマルトランスミッタ9の一定の速度vでかつ一定の高さhで実施される。サーマルトランスミッタ9は積層体13を加熱しても又は冷却してもよい。図示の実施形態ではサーマルトランスミッタ9は、積層体を加熱するためのフィラメントランプである。しかしながらフィラメントランプの代わりに、例えば暖気ブロワのような別の加熱手段を使用することも可能である。他方では、サーマルトランスミッタは必ずしも積層体を加熱する必要はない。積層体を冷却することも可能である。冷却する場合には、サーマルトランスミッタは例えば、積層体表面11に冷却されたガスを吹き付ける冷気ブロワ又はCOノズルである。
【0031】
サーマルトランスミッタ9に対して一定の距離dをおいてサーマルレシーバ15が、サーマルトランスミッタ9と同じ検査経路7に沿って、積層体表面11の上を移動させられる。図示の実施形態では一定の距離dを保って行われる連結された運動は、単に、サーマルトランスミッタ9とサーマルレシーバ15とが同じキャリア17に装着されていることによって、達成されている。キャリア17は例えば、後で説明するように、補助装置のレールに沿って可動であってよい。
【0032】
サーマルトランスミッタ9と同じ検査経路7に沿って移動するサーマルレシーバ15は、該検査経路7に沿って積層体表面11の温度を測定する。サーマルレシーバ15は、シングルスポット式又は空間分解能を有する空間分解式(spacially resolving)の高温計のような、どのような高温計によっても実現することができる。サーマルレシーバ15によって測定された温度データは、処理されて、例えばコンピュータ19のモニタに表示される。
【0033】
しわを検出するための温度データの分析は、極めて簡単に維持することができる。例えばサーマルレシーバ15として使用されるシングルスポット式の高温計の場合には、図3に示すような、検査経路7に沿った温度分布が得られるであろう。図3に示した線図において、横軸は、検査経路の開始点からの温度測定箇所の距離を示し、縦軸は、各箇所において測定された温度を示している。線図の上には、積層体の構造が検査経路に沿った断面図で略示されている。積層体はしわ3を有している。図3の上側部分に示されているように、積層体13は積層材料であり、この積層材料は、風力タービンロータ翼の場合には典型的には、ある種の樹脂によって互いに接合されたガラス繊維マットから成る複合層を形成している。検査経路7がしわ3と交差する箇所において、しわのない周囲の積層体に比べて偏差を有する温度の異常が生じる。図示の例では、この異常は、サーマルレシーバ15によって測定された温度におけるピークであり、すなわちこの測定温度は、しわのない箇所において測定された温度よりも高い。
【0034】
図3の上側部分から直観的に分かるように、繊維層の間における樹脂の量がしわのある領域では増大している。樹脂材料の熱的性質は一般的には、ガラス繊維マットの熱的性質と異なっているので、しわのある箇所におけるようにガラス繊維に対する樹脂の比率が変化すると、積層体の熱的性質は変化してしまう。従って、しわのある箇所における熱の異常が観察される。
【0035】
本発明は、積層体13が単位面積当たり適宜に所定の時間加熱又は冷却された場合に、材料が達する温度は、熱伝導性や熱容量のような材料の熱的性質に依存するという事実に基づいている。同様に、材料が周囲温度に戻るために要する時間もまた前記パラメータに依存する。その結果、上記のようにしわによって導入された変化のような、積層体の材料特性における変化は、積層体の加熱又は冷却後の所定時間に加熱又は冷却の経路に沿って積層体表面の温度を測定することによって、検出することができる。これに関連して、検査経路に沿った温度測定において見ることができる実際の信号は、検査される積層体の熱的性質、及び加熱又は冷却のいずれが使用されるかに依存している、ということに注意しなくてはならない。従って、サーマルレシーバ15によって測定された熱の異常は、温度におけるピークではなく降下であることもできる。例えば、しわが温度においてピークを形成するか又は降下を形成するかは、積層体がしわのない領域において又はしわのある領域においてゆっくりと冷えるか又は早く冷えるかに依存する。
【0036】
本発明の方法では、サーマルトランスミッタ9とサーマルレシーバ15とが検査経路に沿って一定の速度で移動させられることによって、積層体は検査経路の各セクションにおいて同じ熱の影響を受ける。またサーマルトランスミッタ9とサーマルレシーバ15との間における距離が固定されていることによって、熱的影響と温度測定との間における通過時間もまた一定である。その結果、同じ温度が同じ構造から測定されるのに対して、変化する構造は、検査経路の隣接した区分において測定された温度とはかなり異なった温度よって検知される。
【0037】
図3に示された温度は、任意の単位で示されている。これは、検査経路に沿って測定される温度の間における比較からしわを検出することができることに基づいて、しわを検出するためには十分である。しかしながら、材料の熱的性質が分かっている場合には、検出されたしわの物理的性質に関する情報を導き出すこともできる。
【0038】
図示の実施形態ではサーマルトランスミッタ9とサーマルレシーバ15とは同じキャリア17に装着されているが、このような構成は必ずしも必要ではない。サーマルトランスミッタ9とサーマルレシーバ15とが検査経路に沿って移動する間中、両者の間の距離が一定に保たれるように、サーマルトランスミッタ9の運動とサーマルレシーバ15の運動とを互いに別個に制御することも可能である。
【0039】
さらにまた、シングルスポット式の高温計を使用する代わりに、規定されたラインに沿って温度を測定する高温計のような空間分解能を有する高温計を使用することも可能である。測定ラインが検査経路内を延びている場合には、検査経路に沿った積層体の温度を検出することだけが可能なのではなく、時間の経過に伴う温度変化をも検出することができる。それというのは、検出ラインの前端部は、熱影響の箇所を、検出ラインの後端部よりも早期に通過するからである。他方において、検出ラインが、検査経路に沿った運動方向に対して垂直に方向付けられている場合には、1つの検査経路によって大きな領域を検査することが可能になる。例えば赤外線カメラのような、二次元で分解する熱検出器が使用されると、時間の経過に伴う温度変化を、1つの検査経路に沿ったスキャンによって大きな領域にわたって測定することができる。
【0040】
本発明の第2の態様によれば、補助装置が設けられており、この補助装置は、本発明による熱スキャンを実施するために使用することができる。このような補助装置は図4〜図6に示されている。補助装置は、2つの足部23を備えたレール又はブーム21から成っており、両足部23はそれぞれレール21の反対側の端部に配置されている。足部23は吸盤25を備えており、かつレール21の端部を形成するブラケット27に、互いに平行な2つのアーム29を用いて結合されている。アーム29は、各ブラケット27の互いに間隔をおいた2つの箇所に旋回可能に結合され、かつ各足部23の互いに間隔をおいた2つの箇所に旋回可能に結合されている。これにより、足部23、ブラケット27及び2つのアーム29は一緒に、4節リンク、特に平行四辺形リンクを形成している。このような4節リンクの使用は、位置の変化を可能にし、かつさらにブラケット27がレール又はブーム21に対して枢着結合されている場合には、検査される構造体に対して補助装置が取り付けられたままでも、構造体に対するレールの方向付けを変化させることができる。
【0041】
レール21には保持アーム31が、該レールに沿って移動できるように可動に取り付けられている。保持レール31には、図2に示されているようにキャリア17が装着されている(図4〜図6には図示せず)。従って、検査される風力タービンロータ翼に装着されている場合には、補助装置のレール21は、サーマルトランスミッタ9及びサーマルレシーバ15のための検査経路を規定する。レールに沿って保持アーム31を移動させるためには、電動機(図示せず)が設けられており、この電動機は、保持アーム31をレール21に沿って一定の速度で移動させる。
【0042】
本発明の方法を実施するために、補助装置は、検査すべきロータ翼に吸盤25を用いて固定される。次いでレール21の方向付けが、4節リンクと足部23の特定ポジションとの間において作動する制御レバー33を使用して、4節リンクを調整することによって決定される。制御レバー33に配置された固定手段によってセットポジションにレール21を固定した後で、保持アーム31に取り付けられたサーマルトランスミッタ9及びサーマルレシーバ15を用いて、検査経路に沿ったスキャンが行われる。スキャンが同じ領域において別の検査経路に沿って実施される場合には、レール21の位置及び/又は方向付けが、再び制御レバー33を使用して4節リンクのポジションを操作することによって変更される。
【0043】
図5には、風力タービンロータ翼1に固定された補助装置が、レール21が第1のポジションに配置された状態で示されている。なお、図5においてレールは図示されておらず、単に破線35によって略示されている。図6には、図5の補助装置が、レール(ここでも破線35によって略示)が異なった位置で、かつ第1の位置におけるレールに対して平行に方向付けられた状態で示されている。レール21の両端部が枢着結合によってブラケット27に結合されている場合には、第1のポジションにおけるレールに対して第2のポジションにおけるレールの方向付けを変化させることも可能である。従って、補助装置をローラ翼1から取り外してロータ翼1に再取付けする必要なしに、補助装置によって、検査経路を決定するための高レベルのフレキシビリティを得ることができる。
【0044】
さらに付言すれば、保持アームへのサーマルトランスミッタ及びサーマルレシーバの装着は、補助装置がロータ翼に取り付けられた後でも取り付けられる前でも、可能である。
【0045】
図4〜図6を参照して記載した補助装置は、工場の作業場においても、現場においても使用することができる。現場において使用される場合、補助装置は、風力タービンのナセルに設置されたナセルクレーンを用いて、風力タービンに既に設置されたロータ翼へと持ち上げることができる。従って、本発明による補助装置を使用すると、本発明による方法を、検査すべきロータ翼をロータハブから取り外すことなしに、現場において、つまり既に風力タービンに設置されたロータ翼において実施することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 風力タービンロータ翼、 3 しわ、 5 肩部、 7,7A,7B 検査経路、 9 サーマルトランスミッタ、 11 表面、 13 積層体、 17 キャリア、 19 モニタ、 21 レール、 23 足部、 25 吸盤、 27 ブラケット、 29 アーム、 31 保持アーム、 33 制御レバー、 35 破線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化された積層構造体(1)におけるしわ(3)を検出する方法であって、
積層構造体(1)を局部的に加熱又は冷却し、この際に加熱箇所又は冷却箇所を、規定された経路(7)に沿って移動させ、
積層構造体(1)の温度を、加熱箇所又は冷却箇所とは異なった測定箇所において測定し、測定箇所を、加熱箇所又は冷却箇所と同じ経路(7)に沿って移動させ、
しわ(3)を、規定された経路(7)に沿って発見された温度の異常から検出する
ことを特徴とする、繊維強化された積層構造体(1)におけるしわ(3)を検出する方法。
【請求項2】
測定箇所を、加熱箇所又は冷却箇所と同じ経路(7)に沿って、加熱箇所又は冷却箇所に対して固定された距離を保って、移動させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
加熱箇所又は冷却箇所及び/又は測定箇所を、一定の速度で移動させる、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
加熱箇所又は冷却箇所及び測定箇所を、少なくとも2つの規定された経路(7A,7B)に沿って移動させる、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
少なくとも2つの経路(7A,7B)を相前後して通過する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
少なくとも2つの経路(7A,7B)を同時に通過する、請求項4記載の方法。
【請求項7】
積層構造体(1)を局部的に加熱又は冷却し、かつ/又は積層構造体(1)の温度を該積層構造体(1)の外側から測定する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
繊維強化された積層構造体(1)の熱スキャンを実施する補助装置であって、該補助装置は、レール(21)とサーマルトランスミッタ(9)とサーマルレシーバ(15)とから成っていて、該サーマルトランスミッタ(9)とサーマルレシーバ(15)とは、互いに対して間隔をおいてレール(21)に沿って可動であり、さらに、熱スキャンが実施される繊維強化された積層構造体(1)にレール(21)を固定するための固定手段(23,25,29)が設けられていることを特徴とする、繊維強化された積層構造体の熱スキャンを実施する補助装置。
【請求項9】
サーマルトランスミッタ(9)とサーマルレシーバ(15)とは、レール(21)に沿って可動である共通のキャリア(17)に固定されている、請求項8記載の補助装置。
【請求項10】
固定手段(23,25,29)に対するレール(21)の位置及び/又は方向付けが設定可能である、請求項8又は9記載の補助装置。
【請求項11】
固定手段は足部(23)を有していて、
レール(21)は第1の端部と第2の端部とを有していて、各端部に少なくとも1つの足部(23)が設けられており、
各端部における少なくとも1つの足部(23)が、少なくとも1つの可動のアーム(29)によって各端部に結合されている、請求項10記載の補助装置。
【請求項12】
各端部における少なくとも1つの足部(23)が、少なくとも2つの可動のアーム(29)によって各端部に結合されていて、該可動のアーム(29)は4節リンクを形成している、請求項11記載の補助装置。
【請求項13】
各足部(23)が少なくとも1つの吸盤(25)を有している、請求項11又は12記載の補助装置。
【請求項14】
サーマルトランスミッタ(9)がガスノズルである、請求項8から13までのいずれか1項記載の補助装置。
【請求項15】
サーマルトランスミッタ(9)が熱源である、請求項8から14までのいずれか1項記載の補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−181194(P2012−181194A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−42137(P2012−42137)
【出願日】平成24年2月28日(2012.2.28)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】