説明

繊維強化セメント板を用いたトンネルの補強方法

【課題】施工に要する工数を大幅に削減するとともに、補強パネル接合部の接合部材の剥落による応力伝達不良等が生じない、品質と安全性に優れた、埋設型枠による既設トンネルの覆工コンクリート補強方法等を提供する。
【解決手段】補強パネルに取付金具を設け、前記取付金具が既設コンクリート表面の取付部位に接するように前記補強パネルを配置し、所定の位置にアンカーを打設して前記補強パネルを前記既設コンクリートに固定し、前記補強パネルと前記既設コンクリートとの間隙にモルタルを充填し、コンクリート構造物の補強をおこなう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設トンネルの補強工事において、現場での工数を削減でき、品質・安全性に優れた埋設型枠を用いた内巻補強工法およびこれに使用する部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
既設トンネルの覆工コンクリートは、種々の要因によって経年劣化が発生し、コンクリート片が剥落したり、覆工コンクリートの耐荷力低下によって構造的に不安定となるなど、トンネルの供用に支障をきたしている事例が増加している。そのため、既設トンネルの変状対策として、内巻補強工などによる各種補強が行なわれる。
【0003】
内巻補強工は、既設トンネルの覆工コンクリートの内側にモルタルやコンクリートなどを増し厚して、部材厚を大きくすることによって耐荷力を補強するものであり、吹き付け工法、場所打ち工法、プレキャスト工法、埋設型枠工法などがある。特に埋設型枠工法は、省力化、耐久性等の観点から採用される。
【0004】
埋設型枠工法は、既設トンネルの覆工コンクリートの内側に間隙を設けて埋設型枠を設置し、覆工コンクリートと埋設型枠の間にモルタルを充填して、覆工コンクリートとの一体化を図るものである。埋設型枠の設置方法としては、道路や鉄道などの供用している既設トンネルの用途に応じて、作業エリアや作業時間に制限があるため、覆工コンクリートにアンカーボルトを用いて埋設型枠を固定する方法が一般的である。
【0005】
埋設型枠工法については、埋設型枠として、18cmスパンで25mm以上の撓みを有する高靭性セメントボードを、アンカーにより既設構造物へ固定し、ボード間を繊維シートで接着する補強工法がある(特許文献1)。
【0006】
また、埋設型枠として繊維補強ボードを、アンカーにより覆工コンクリートに固定し、補強効果を高めるため、覆工コンクリートと埋設型枠の間に不織布マットを予め配置し、さらに不織布マットの端部に切欠き段部を設けて、応力伝達を可能とした補強方法がある(特許文献2)。
【0007】
また、埋設型枠として炭素繊維シート内蔵セメントモルタル複合板を用い、複合板に設けた挿通孔に、事前に既設コンクリートに設置したボルトを挿嵌させて固定するとともに、複合板間をシート材で被覆し、シート材外面を早強性セメントモルタルで仕上る補強方法がある(特許文献3)。
【特許文献1】特開2004−52310号公報
【特許文献2】特開2003−49544号公報
【特許文献3】特開2000−220304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の方法では、埋設型枠として用いる事ができる高靭性セメントボードは、その要求される撓み量から、板厚6mm程度までに限定される。このため、モルタル充填時における側圧に対抗するために、ボードを固定するアンカー打設間隔を狭くする必要がある。よって、アンカー本数が多くなるとともに、より補強効果を高めるためには、既設構造物と埋設型枠の間に鉄筋等の補強鋼材を配置する必要があり、工程と労力が増大するという問題がある。また、ボード間を接着する繊維シートが剥落すると、ボード間の応力伝達不良が生じるという問題がある。
【0009】
また、特許文献2に記載の方法では、埋設型枠を設置する前に、予め不織布マットを配置する必要があり、工程と労力が増大するという問題がある。
【0010】
また、特許文献3に記載の方法では、事前に設置したボルト位置と複合板のボルト挿通孔の位置が合わない場合があり、工程の手戻りが発生するという問題がある。また、複合板間のシート材が剥落し、応力伝達不良が生じるという問題がある。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、施工に要する工数を大幅に削減するとともに、補強パネル接合部の接合部材の剥落による応力伝達不良等が生じない、品質と安全性に優れた、埋設型枠による既設トンネルの覆工コンクリート補強方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、既設コンクリートの取付部位に補強パネルを配置する工程(a)と、アンカーを打設し前記補強パネルを前記既設コンクリートに固定する工程(b)と、前記補強パネルと前記既設コンクリートとの間隙にモルタルを充填する工程(c)と、を有することを特徴とするコンクリート構造物の補強方法である。
【0013】
前記工程(a)の前に、前記補強パネルに取付金具を設ける工程(d)をさらに有し、前記工程(a)において、前記取付金具が既設コンクリート表面の取付部位に接するように、前記補強パネルを配置してもよい。
【0014】
前記補強パネルが、繊維強化セメント板の積層構造を有してもよく、前記繊維強化セメント板の間にさらにシート状繊維織物を挟んだ積層構造を有してもよい。また、前記工程(d)において、繊維強化セメントボルトおよび繊維強化セメントナットを用いて、補強パネルに取付金具を設けても良く、前記工程(b)の後に、前記補強パネルと前記既設コンクリートとの間隙を調整する工程(e)をさらに有してもよい。
【0015】
第1の発明によれば、施工に要する工数を大幅に削減するとともに、補強パネル接合部の接合部材の剥落による応力伝達不良等が生じない、品質と安全性に優れた、埋設型枠による既設トンネルの覆工コンクリート補強方法を提供することができる。
【0016】
第2の発明は、コンクリート構造物の補強に用いられる補強パネルであって、2枚以上の繊維強化セメント板と前記繊維強化セメント板間にシート状繊維織物を貼り合せた積層構造を有し、前記繊維強化セメント板が、端部をずらして積層されることを特徴とする補強パネルである。
【0017】
前記補強パネルにおいて積層される2枚以上の前記繊維強化セメント板の側面が、前記繊維強化セメント板表面に対して垂直ではなく斜面部を有していてもよい。
【0018】
第2の発明によれば、補強パネルの積層数を増すことで簡易に高強度の補強パネルを得る事ができ、このため固定アンカー本数を削減する事ができるため、施工工数を削減することができる。また、補強パネル端部は繊維強化セメント板がずれて積層されるため、補強パネル同士の接合に別途シート等の接合部材を要しないので、接合部材の剥落による応力伝達不良を生じる事が無く、更に、充填モルタルが接合部より漏洩する事が無い、品質・安全性に優れた補強パネルを提供する事ができる。
【0019】
第3の発明は、第1の接合面と、第2の接合面と、前記第1の接合面と前記第2の接合面とを連結する連結部と、前記第1の接合面に設けられた第1の穴部と、前記第2の接合面に設けられた第2の穴部と、を有し、前記第1の接合面と前記第2の接合面が平行であり、かつ、前記第2の穴部が、前記第2の穴部の軸方向から見て、前記第1の接合面と重なり合わない位置に設けられることを特徴とする補強パネル取付金具である。
【0020】
接合面と、接触面と、前記接合面と前記接触面とを連結する連結部と、前記接合面に設けられた第1の穴部と、前記接合面に設けられた第2の穴部と、を有し、前記接合面と前記接触面が平行であり、かつ、第1の穴部と、前記第2の穴部が、前記接合面上にて重なり合わない位置に設けられてもよい。
【0021】
第3の発明によれば、補強パネルを既設コンクリートに固定する際、アンカー取付位置が補強パネル取付位置と重ならないため、補強パネルを設置位置に配置した後に、現場合わせでアンカーを打設する事ができるため、予めアンカーを配置しておく必要が無く、ボルト穴位置のずれによる手戻り工数を削減する事が出来る。
【0022】
第4の発明は、セメント40〜85%、補強繊維1〜15%、混和材料0〜59%からなる繊維強化セメントボルトである。
【0023】
第4の発明によれば、防錆処置を施さなくとも錆びる事が無く、接着性に優れ、切断時に火花等の発生もなく容易に切断可能な、高強度・高靭性の繊維強化セメントボルトを提供する事ができる。
【0024】
第5の発明は、セメント40〜85%、補強繊維1〜15%、混和材料0〜59%からなる繊維強化セメントナットである。
【0025】
第5の発明によれば、防錆処置を施さなくとも錆びる事が無く、接着性に優れ、切断時に火花等の発生もなく容易に切断可能な、高強度・高靭性の繊維強化セメントナットを提供する事ができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、施工に要する工数を大幅に削減するとともに、補強パネル接合部の接合部材の剥落による応力伝達不良等が生じない、品質と安全性に優れた、埋設型枠による既設トンネルの覆工コンクリート補強方法等を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本実施の形態に係る補強パネル1の積層構造を示した図である。補強パネル1は、2枚の繊維強化セメント板3a、3bとシート状繊維織物5から構成され、繊維強化セメント板3a、3bの間にシート状繊維織物5を挟み、それらを接着剤7で接着した積層構造を有する。なお、接着剤7は特定しないが、例えばエポキシ樹脂が使用できる。
【0028】
本願における繊維強化セメント板3としては、例えばJISA5430に規定されたフレキシブル板が好適に使用される。フレキシブル板等の繊維補強セメント板は、セメント、補強繊維(木質パルプ、合成繊維等、但し石綿を除く)、混和材料(炭酸カルシウム、ウォラストナイト、マイカ、繊維補強セメント板の粉砕粉等)を主原料とし、これらの原料を湿式混合して原料スラリーとし、原料スラリーを抄造法(丸網抄造法、フローオン抄造法等)を用いて生板(グリーンシート)に成形し、生板を高圧プレスした後、養生硬化することにより製造される。抄造法は、繊維強化セメント板の平面方向に対する繊維の配向性を高くする製造方法であるから、補強繊維の補強性能が十分に発揮されるので、高強度の繊維強化セメント板を得ることができるが、比較的厚さが薄い繊維強化セメント板の製造に適している。従って、厚さが厚い繊維強化セメント板を必要とするときは、複数の繊維強化セメント板を積層して接着する方法が使用される。なお、繊維強化セメント板3としては、曲げ強度28N/mm以上、圧縮強度80N/mm以上、引張強度15N/mm以上が望ましい。
【0029】
繊維強化セメント板3の厚みは、必要に応じて自由に選択できるが、あまり厚すぎると加工時に繊維強化セメント板自体の表面剥離等が生じる恐れがあるため、20mm程度までが望ましい。なお、より厚い補強パネルが必要であれば、繊維強化セメント板3の積層枚数を増やせば、自由に厚みを調整する事ができる。
【0030】
補強パネル1に使用されるシート状繊維織物5は、特に限定されないが、炭素繊維シートやアラミド繊維メッシュ等が使用できる。特に、鉄道におけるトンネル等では、非導電性、非磁性であり、また引張強度が高く取り扱いも容易な、アラミド繊維メッシュを使用する事が望ましい。使用するアラミド繊維メッシュとしては、必要に応じて種々選択できるが、例えば、目付180g/m、引張強度100kN/m程度のものを選択する事ができる。なお、特に強度上問題が無ければ、シート状繊維織物5を用いず、繊維強化セメント板3のみの積層構造とすることも可能である。
【0031】
ここで、埋設型枠工法にてトンネル補強を行なうと、埋設型枠の外側(既設コンクリート側)には圧縮応力、埋設型枠の内側(トンネル内部空間側)には引張応力が生じる事が知られている。よって、効率よく補強パネル1の強度を得るためには、補強パネル1の外側には主に圧縮応力に優れる厚めの繊維強化セメント板3bを使用し、補強パネル1の内側には、引張強度に優れるシート状繊維織物5を配置する事が望ましい。すなわち、引張応力の生じる部位に厚みのある繊維強化セメント板3を使用しても強度の向上への寄与が少ないが、係る部位にシート状繊維織物5を配置すれば、単純に繊維強化セメント板3の板厚を厚くするよりも効率よく、高強度の補強パネル1を得る事ができる。
【0032】
なお、耐候性、不燃性を確保する為には、シート状繊維織物5をトンネル内面に露出させることは望ましくない。よって、補強パネル1の内側には、厚さの薄い繊維強化セメント板3aを積層する事が望ましく、この場合、耐候性や不燃性に優れる補強パネル1を得ることができる。
【0033】
次に、補強パネル1の端部構造について説明する。図2(a)は、積層された補強パネル1の端部の構造を示す図であり、図2(b)は、補強パネル1a、1bとが嵌合した状態を示す図である。
【0034】
補強パネル1は、図2に示すように、積層される繊維強化セメント板3a、3bの端部をそろえず、意図的にずれて積層されているため、端部が階段状の形状となる。補強パネル1を設置する際は、隣接する補強パネル同士のずれた繊維強化セメント板の積層部を嵌合させることで容易に接合する事ができる。接合部は、エポキシ樹脂等の接着剤により接合しても良く、また、後述するようにボルト等により接合しても良い。なお、繊維強化セメント板3a、3bのずれ量は特定しないが、嵌合部で効率よく応力を伝達するためには、10cm以上のずれ量とする事が望ましい。
【0035】
以上説明したように、本実施の形態にかかる補強パネル1によれば、繊維強化セメント板3とシート状繊維織物5との積層構造を有するため、軽量かつ強度・靭性に優れ、優れた耐候性、不燃性を有する補強パネル1を得る事ができる。また、補強パネル1の強度は、繊維強化セメント板3の積層数やシート状繊維織物5の目付の変更で、容易に調整する事ができる。補強パネル1の強度を向上すると、補強パネル1を固定するアンカー打設間隔を大きく取れるため、アンカー本数を減らすことができ、設置工数も削減できる。
【0036】
また、端部は繊維強化セメント板3がずれて積層されるため、補強パネル1同士の接合において、新たな繊維シートなどの接合部材を要しない。このため、接合部材の剥落による応力伝達不良が生じず、また、補強パネル1と既設コンクリート間のモルタル充填時に、補強パネル1の接合部からのモルタルの漏洩も対策できる。さらに、補強パネル1の設置位置への配置時においても、特別な仮止めを要さなくても、繊維強化セメント板3のずれ部が嵌合されて自立するため、補強パネル1の倒れやはずれなどが生じにくく作業性に優れる。
【0037】
次に、補強パネルについて他の実施の形態を説明する。図3(a)は、補強パネル11の端部を示した図である。以下の実施の形態において、図2に示す補強パネル1と同一の機能を果たす構成要素には、図2と同一番号を付し、重複した説明を避ける。
【0038】
補強パネル11は、積層される繊維強化セメント板4の側面が、繊維強化セメント板4の表面に対して垂直ではなく、斜面6を有する。すなわち、補強パネル11の端部は、繊維強化セメント板4がずれて積層されるため、斜面6を有する階段状である。補強パネル11を設置する際は、隣接する補強パネル11の斜面6を含むフレキスブルボード4のずれた積層部を互いに勘合させて接合する。なお、斜面6の角度としては、30〜60°程度が望ましい。特に望ましくは、略45°とする事が望ましい。
【0039】
補強パネル11によれば、補強パネル1と同様の効果を奏する。また、嵌合部に斜面6を有するため、補強パネル11同士の接合部において、引張応力、圧縮応力のみではなく、せん断応力や曲げ応力についても効率よく応力伝達する事ができる。
【0040】
図3(b)は、補強パネル13の端部を示した図である。補強パネル13は、繊維強化セメント板3a、3b、3cと、繊維強化セメント板3a、3b間にシート状繊維織物5を積層した構造を有する。
【0041】
前述の通り、補強パネルの外側は圧縮応力が生じるため、圧縮強度に優れる繊維強化セメント板を厚くする事が、補強パネル全体の強度アップに有効である。しかし、繊維強化セメント板の厚みは製造上、または品質上ある程度の限界がある。例えば、前述の通り20mmを越える厚みの繊維強化セメント板の使用は、表面剥離等の問題があるため望ましくない。しかし、繊維強化セメント板の積層数を増せば、繊維強化セメント板の全厚を増したのと同様の効果を得る事ができる。
【0042】
補強パネル13によれば、補強パネル1と同様の効果を奏する。また、積層数を増すことで、より厚く高強度な補強パネル13を簡易に得る事ができる。更に、端部形状が、繊維強化セメント板3がずれて積層されるため、補強パネル13同士の接合方向に凸または凹形状となり、嵌合時に、より確実に応力伝達を行う事ができる。
【0043】
図3(c)は、補強パネル15の端部を示した図である。補強パネル15は、端部に斜面6を有する繊維強化セメント板4a、4b、4cと、繊維強化セメント板4a、4b間にシート状繊維織物5を積層した構造を有する。
【0044】
補強パネル15によれば、補強パネル1と同様の効果を奏する。また、積層数を増すことで、より厚く高強度な補強パネル13を簡易に得る事ができる。更に、端部は繊維強化セメント板3がずれて積層されるため、補強パネル13同士の接合方向に階段形状となり、かつ斜面6を有するため、より確実に応力伝達を行う事ができる。
【0045】
次に、取付金具について詳細を説明する。図4(a)は、取付金具20の斜視図であり、図4(b)は、取付金具20を補強パネル1に接合した状態を示す斜視図である。
【0046】
取付金具20は、板状部材を屈曲させてなる部材であり、補強パネル接合面21とコンクリート接合面23が互いに平行に位置し、二つの面を垂直に連結する連結部25a、25bとから構成される。補強パネル接合面21の略中央には、補強パネル取付穴27が設けられる。コンクリート接合面23上には、補強パネル取付穴27の軸方向から見て、補強パネル接合面21と重ならない位置に、コンクリート取付穴29が設けられる。なお、取付金具20の材質は特定しないが、鋼板、アルミ等が使用できる。
【0047】
取付金具20は、補強パネル接合面21に補強パネル1を接触させ、事前に穴加工された補強パネル1と補強パネル取付穴27を挿嵌するボルト等で接合される。また、コンクリート接合面23を既設コンクリートに接触させ、コンクリート取付穴29位置にアンカーを打設し、固定する。なお、補強パネル1の取付方法について、詳細は後述する。
【0048】
図4(b)は、取付金具20を補強パネル1に接合した状態を示す斜視図である。取付金具20に補強パネル1を接合した状態においても、コンクリート取付穴29が補強パネル1の後ろに隠れない。
【0049】
このため、本実施の形態に係る、取付金具20によれば、補強パネル1をコンクリートに接合する際、補強パネル1の固定のためのアンカー打設を、補強パネル1の設置位置へ配置後に行う事ができる。よって、予め補強パネル1の設置位置にアンカーを打設する必要が無いため、穴位置のずれによる手戻り等が生じる事が無い。すなわち、補強パネル1の設置工数を削減する事ができる。
【0050】
次に、取付金具について他の実施の形態を説明する。図5(a)は、取付金具33を示した斜視図である。以下の実施の形態において、図4(a)に示す取付金具20と同一の機能を果たす構成要素には、図4(a)と同一番号を付し、重複した説明を避ける。
【0051】
取付金具33は、補強パネル接合面21とコンクリート接合面23が互いに平行に位置し、二つの面を垂直に連結する一つの連結部25とから構成される。すなわち、取付金具20の連結部25bを除した構造を有する。このため、取付金具33は取付金具20と比較し、強度は劣る。
【0052】
しかし、取付金具33は、補強パネル1設置後のモルタル充填時に、補強パネル1をコンクリートに固定するためのみの役割を持つ。すなわち、モルタル充填後は、モルタルとコンクリートおよび補強パネルとの接着力で固定される。よって、モルタル充填時の側圧に耐えうる強度さえ有すれば、モルタル充填後には強度を要しない。
【0053】
取付金具33によれば、取付金具20と同様の効果を奏する。また、構造が取付金具20と比較して簡易であるため、金具コスト等を削減する事ができる。
【0054】
図5(b)は、取付金具35を示す斜視図である。取付金具35は、補強パネル接合面21とコンクリート接合面23が互いに平行に位置し、二つの面を垂直に連結する一つの連結部25とから構成される。連結部25は、補強パネル接合面21とコンクリート接合面23とを斜めに連結する。すなわち、取付金具33の連結部25の形状を簡略化した構造を有する。このため、取付金具35は取付金具33と比較し、強度は劣る。
【0055】
しかし、前述の通り、取付金具35は、モルタル充填時の側圧に耐えうる強度さえ有すれば、モルタル充填後には強度を要しない。このため取付金具35によれば、取付金具20と同様の効果を奏する。また、構造が取付金具20と比較して簡易であるため、金具コスト等を削減する事ができる。
【0056】
図5(c)は、取付金具37を示す斜視図である。取付金具37は、補強パネル接合面21とコンクリート接合面23が互いに平行に位置し、二つの面を水平方向に垂直に連結する一つの連結部25とから構成される。すなわち、取付金具37は、階段状の構造を有する。
【0057】
取付金具37は、1枚の角板を屈曲させることで得る事ができるため、非常に簡易に作成する事ができる。強度は、取付金具20等と比較して劣るが、前述の通りモルタル充填時の側圧に耐えうる強度さえ有すれば、モルタル充填後には強度を要しない。このため取付金具37によれば、取付金具20と同様の効果を奏する。また、構造が取付金具20と比較して簡易であるため、金具コスト等を削減する事ができる。
【0058】
図5(d)は、取付金具39を示す斜視図である。取付金具39は、補強パネルおよびコンクリートとの接合面24と、接合面24と垂直方向に設けられた連結部25a、25bと、さらに接合面24と平行かつ連結部25a、25bと垂直外方に設けられたコンクリート接触面38a、38bから構成される。すなわち、取付金具39は、凸形状の頂上部に補強パネルおよびコンクリートとの接合面24を有する構造からなる。接合面24には、軸方向から見て互いに重ならない位置に、補強パネル取付穴27と、コンクリート取付穴29が設けられる。
【0059】
取付金具39は、補強パネル1を接合面24に接合した状態であっても、コンクリート接合穴29が補強パネル1の裏側へ隠れないため、取付金具20と同様の効果を奏する。また、1枚の角板を屈曲させることで得る事ができるため、非常に簡易に作成する事ができる。また、強度も、取付金具37と比較しても優れる。
【0060】
次に、繊維強化セメントボルト、およびナットについて詳細を説明する。図6は、繊維強化セメントボルト45の製造工程を示した図であり、図6(a)は、元材の繊維強化セメント板40より棒状部材を切り出す工程を示した斜視図である。なお、繊維強化セメント板40は、前述した繊維強化セメント板3と同様であるが、繊維強化セメントボルトおよびナットを製造する場合の原料配合は、セメント40〜85%、補強繊維1〜15%、および必要に応じて混和材料0〜59%を含む。上記配合割合は、強度およびコストにより決定され、例えばセメント40%以下では強度が得られず、85%以上ではコストが高くなる。また、混和材料は、コストダウンのため必要に応じて任意に添加されるが、59%以上(セメント+補強繊維が41%未満)では強度が得られない。
【0061】
まず、繊維強化セメント板40より、繊維強化セメントボルト45のサイズに応じた棒状部材41を切り出す。この際、繊維強化セメント板40は、一般に強度の異方性を有するため、強軸方向が棒状部材41の長手方向となるように切り出す。図6(a)において、A方向は、繊維強化セメント板40の強軸方向を示す。
【0062】
次に、棒状部材41にダイスを用いて雄ねじ加工を施し、繊維強化セメントボルト45を得る(図6(c))。ダイスを用いた雄ねじ加工は、棒状部材41の長手方向全長に施してもよく、必要に応じて、必要部位のみとしても良い。なお、図6(c)において、A方向は、元材の繊維強化セメント板40の強軸方向であり、前述の通り、繊維強化セメントボルト45の軸方向と一致する。
【0063】
図7は、繊維強化セメントナット53の製造工程を示した図であり、図7(a)は、元材の繊維強化セメント板40より小片47を切り出す工程を示した斜視図である。なお、繊維強化セメント板40は、図6と同様のものである。
【0064】
まず、繊維強化セメント板40より、繊維強化セメントナット53のサイズに応じた小片47を切り出す。
【0065】
次に、小片47の中央を加工し、穴49を空ける(図7(b))。さらに、穴49内面にタップを用いて雌ねじ加工を施し、繊維強化セメントナット53を得る(図7(c))。
【0066】
繊維強化セメントボルト45は、軸方向が元材である繊維強化セメント板40の強軸方向と一致するため、繊維強化セメント板と同様の優れた強度、靭性を有する。
【0067】
また、繊維強化セメントボルト45、および繊維強化セメントナット53は、錆びが発生する事が無い。よって、例えば繊維強化セメントボルト45、および繊維強化セメントナット53を補強パネルの接合に用いても、錆びによるナット等の脱落がなく、またこれによる補強パネルの剥落も無い。また、万が一繊維強化セメントナット53が脱落しても、元材である繊維強化セメント板40の密度は約1.7g/cmと、鉄(約7.9g/cm)と比較しても軽いため、落下物による第三者への影響が小さい。
【0068】
また、補強パネル設置時に、突出したボルトの一部を切断する工程があるが、繊維強化セメントボルト45は、高速カッターなどで容易に切断ができ、また切断時にも、金属性のボルトを切断する場合のような火花が生じない。よって、より安全に作業を行う事ができる。
【0069】
さらに、繊維強化セメントボルト45、および繊維強化セメントナット53の元材である繊維強化セメント板40は、接着性に優れるため、繊維強化セメントボルト45、および繊維強化セメントナット53の接合部に接着を施せば、より強固に固定をする事ができる。
【0070】
次に、既設トンネルの第1の実施の形態に係る覆工コンクリート補強方法について詳細を説明する。図8は、既設トンネルの覆工コンクリート補強工程を示したフローチャートである。
【0071】
まず最初に、繊維強化セメント板とシート状繊維織物を積層して、補強パネルを作成する(ステップ101)。補強パネルは、繊維強化セメント板の片表面に接着剤を塗布し、その面にシート状繊維織物を張り合わせる。次に、その面にさらに接着剤を塗布し、繊維強化セメント板を積層する(図1)。この際、補強パネルの端部は、前述の通りずらして積層する(図2)。
【0072】
本実施の形態に係る補強パネル1において、効率良く耐荷力を得られる構成として、補強パネル1の外側には、厚さ20mmの繊維強化セメント板を使用し、厚さ1mmのアラミド繊維メッシュを挟み、補強パネル1の内側には厚さ4mmの繊維強化セメント板を使用した積層構造とし、幅900mm(弱軸方向)、長さ600mm(強軸方向)の補強パネル1とする。
【0073】
次に、補強パネル1aに取付金具を接合する(ステップ102)。補強パネル1aには、取付金具20aの取り付け位置等に予め穴61を施しておく。取付金具20と補強パネル1の接合には、繊維強化セメントボルト45、および繊維強化セメントナット53を使用する。図9は、補強パネル1に取付金具20aを取り付けた状態を示す斜視図である。なお、本実施の形態にかかる補強パネル1aにおいては、強軸方向のアンカーは600mmピッチ、弱軸方向のアンカーは450mmピッチで打設すれば、モルタル充填時の側圧に耐える事ができる。よって、取付金具20aは、補強パネル1aの幅方向に3箇所、長さ方向に1箇所設置すればよい。
【0074】
次に、取付金具20aが既設コンクリート表面の取付部位に接するように補強パネルを配置する(ステップ103)。図10は、取付金具20aを既設のコンクリート63表面の設置位置に接するように補強パネル1aを配置した状態を示す側面図である。なお、補強パネル1a配置前に、事前に既設コンクリート63表面を、ウォータージェット等により清掃し、劣化部を除去し、目荒らししておく事が望ましい。
【0075】
次に、所定の位置にアンカーを打設して、取付金具20aをコンクリート63に固定する(ステップ104)。図11は、アンカー打設方法を示す図である。まず、コンクリート接合穴29の位置に、アンカー下穴67を施工する(図11(a))。次いで、アンカー下穴67にアンカー69を打設する(図11(b))。
【0076】
アンカー69の打設は、前述の通り補強パネル1aを設置位置に配置した後になされるため、穴位置がずれることがなく、これによる手戻り工程が生じない。
【0077】
次に、繊維強化セメントナット53a、53bを調整し、補強パネル1aと既設コンクリート63との間隙65を調整する(ステップ105)。間隙65は、必要なモルタル厚さに応じて決められる。一般的な間隙65は10cm以下である。
【0078】
次に、補強パネル1aとコンクリート63との間隙65へモルタル71を充填する(ステップ106)。図12は、間隙65へモルタル71を充填した状態を表す側面図である。なお、モルタル71の充填は、補強パネル1の設置1段ごとに行っても良く、または、数段の補強パネル1を設置後に一度に行なっても良い。また、モルタル71は、補強パネル1aの上方から充填してもよく、また、補強パネル1aに別途モルタル充填孔を設けて、モルタル充填金具を用いて充填しても良い。
【0079】
なお、補強パネル1のモルタル71との接触面には、予め凹凸処理やブラスト処理などを施すことも可能である。しかし、繊維強化セメント板の場合、表面に何も処理を施さ無い方が、モルタル71との付着力が最も強いため、処理は施さない方が望ましい。また、モルタル71は特定しないが、圧縮強度、引張強度が設計値以上であるとともに、狭い間隙65へ効率よく充填するため、流動性、自己充填性に優れ、さらに付着力、無収縮性、ノンブリージングなどに優れることが望ましい。モルタル71に代えて、コンクリート、セメントミルク、接着剤等を使用することもできる。
【0080】
次に、隣接する補強パネル1a、1bの端部における、繊維強化セメント板の端部のずれ部同士を嵌合させて接合する(ステップ107)。図13は、補強パネル1aと補強パネル1bが接合された状態を示す側面図である。
【0081】
補強パネル1bを設置するためには、まず、繊維強化セメントナット53aをはずし、接合面に接着剤を塗布して、補強パネル1bに予め設けられた穴61へ繊維強化セメントボルト45aを挿嵌する。次に、補強パネル1a、1bを外面より繊維強化セメントナット53aを締め付け、補強パネル1bと補強パネル1aを接合する。
【0082】
その後、補強パネル1bについて、ステップ103に戻り、補強パネル1aと同様にアンカー打設を行い、補強パネルを施工する。以上の工程を、既設トンネルの覆工コンクリート補強の施工が修了するまで繰り返す(ステップ108)。図14は、既設トンネルに、補強パネル1を埋設型枠としてモルタル71を充填し、トンネルの周方向全体に補強工事が完了した状態を示す図である。
【0083】
なお、補強パネル1の設置は、本実施の形態のように上方向へ延長してもよく(順巻)、下方向へ延長しても良い(逆巻)。また、トンネル周方向は特に強度が必要なため、補強パネル1の強軸方向をトンネル周方向とする事が望ましい。
【0084】
トンネル長手方向に隣接する補強パネル1同士の接合は、トンネル周方向の接合と同様に、積層された繊維強化セメント板の端部のずれを嵌合する事により行なっても良く、また、隣接する取付金具20の連結部25同士を接合しても良い。取付金具のみでトンネル長手方向の補強パネルを接合した場合、トンネル長手方向には補強パネル1の応力伝達はほとんど望めないが、トンネル補強の場合は、トンネル周方向の応力伝達が十分なされれば、トンネル長手方向への応力伝達はほとんど必要が無いため問題が無い。また、隣接する取付金具20同士を接合する場合は、アンカー打設の一部を省略することも可能である。
【0085】
以上説明してきたように、本実施の形態によれば、補強パネル1に繊維強化セメント板3とアラミド繊維メッシュを積層させるため、高強度、高靭性の補強パネル1を得る事ができる。補強パネル1の強度が向上するため、モルタル71充填時の側圧にも十分対抗でき、補強パネル1をコンクリート63へ固定するためのアンカー69の打設間隔を大きくする事ができる。このため、アンカー本数を削減でき、アンカー打設工数も削減する事ができる。
【0086】
また、補強パネル1の端部は、積層される繊維強化セメント板3のずれ部により嵌合されるため、応力伝達がよく、充填するモルタル71の漏洩もない。
【0087】
また、繊維強化セメント板3は、乾燥して硬化する前の状態では、曲げ加工枠の上に置いて、重石などで加圧することにより容易に曲げ加工する事ができるため、トンネル形状に合致した形状の補強パネル1を得る事ができる。さらに、補強パネル1は、必要に応じて、表面に撥水材等のコーティングや、塗装を施すことも可能である。この場合、これら処理を事前に工場で行う事ができるため、現場作業を削減する事ができる。
【0088】
また、取付金具20は、補強パネル1を配置した後にアンカー69を打設する事ができる。このため、事前にアンカー打設をしておく必要が無く、アンカー打設位置を現物に合わせて行なう事ができる。よって、アンカー位置とパネルの穴位置がずれることによる、再度のアンカー打設や穴位置の修正といった手戻り工程が生じず、現場での作業工数を削減する事ができる。
【0089】
また、補強パネル1と取付金具20との接合には、繊維強化セメントボルト45および繊維強化セメントナット53を使用するため、錆びの発生が無く、錆びによるナットの脱落等が生じない。このため、ナット脱落による補強パネル1同士の接合不良による応力伝達不良が生じない。また、繊維強化セメントナット53は密度が鉄等と比較して小さいため、万が一脱落した場合の第三者への影響を最小限とする事ができる。更に、設置後に突出した繊維強化セメントボルト45の切断を行なう際に、火花等の発生が無く容易に切断する事ができるため、安全に作業を行う事ができる。
【0090】
次に、第2の実施の形態に係る既設トンネルの覆工コンクリート補強方法について説明する。以下の実施の形態において、図8〜図14で示した第1の実施の形態にかかるコンクリート補強方法と同一の機能を果たす構成要素には、図8から図14におけるものと同一番号を付し、重複した説明を避ける。
【0091】
本実施の形態においては、取付金具20を使用しない。すなわち、第1の実施の形態とは、図8に示す工程中ステップ102〜ステップ104が異なる。図15は、本実施の形態に係る補強パネル1の設置方法を示す図である。
【0092】
まず、補強パネル1を作成後、補強パネル1を直接既設コンクリートの取付部位に配置する(図15(a))。次いで、補強パネル1の穴61の位置に長ドリルでアンカー下穴67を設け、アンカー69を設置する(図15(b))。次に、ボルト、ナットを配置し、補強パネル1を固定する(図15(c))。以下の工程は、第1の実施の形態におけるステップ105以降と同様である。
【0093】
第2の実施の形態による既設トンネルの覆工コンクリート補強方法は、第1の実施の形態に係る覆工コンクリート補強方法と同様の効果を奏する。また、取付金具20を用いないため、工程が簡略化し、部品点数を減らすこともできるため、工数およびコストの削減が可能である。
【0094】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本実施の形態に係る補強パネル1の積層構造を示した図。
【図2】(a)は積層された補強パネル1の端部の構造を示す図、(b)は補強パネル1a、1bとが嵌合した状態を示す図。
【図3】(a)は補強パネル11の端部を示した図、(b)は補強パネル13の端部を示した図、(c)は補強パネル15の端部を示した図。
【図4】(a)は取付金具20の斜視図であり、(b)は取付金具20を補強パネル1に接合した状態を示す斜視図。
【図5】(a)は取付金具33示した斜視図、(b)は取付金具35を示す斜視図、(c)は取付金具37を示す斜視図、(d)は取付金具39を示す斜視図。
【図6】繊維強化セメントボルト45の製造工程を示した図。
【図7】繊維強化セメントナット53の製造工程を示した図。
【図8】既設トンネルの覆工コンクリート補強工程を示したフローチャート。
【図9】補強パネル1に取付金具20aを取り付けた状態を示す斜視図。
【図10】取付金具20aを既設のコンクリート63表面の設置位置に接するように補強パネル1aを配置した状態を示す側面図。
【図11】アンカー打設方法を示す図。
【図12】間隙65へモルタル71を充填した状態を表す側面図。
【図13】補強パネル1aと補強パネル1bが接合された状態を示す側面図。
【図14】既設トンネルに、補強パネル1を埋設型枠としてモルタル71を充填し、トンネルの周方向全体に補強工事が完了した状態を示す図。
【図15】第2の実施の形態に係る補強パネル1の設置方法を示す図。
【符号の説明】
【0096】
1………補強パネル
3、4………繊維強化セメント板
5………シート状繊維織物
6………斜面部
7………接着剤
11、13、15………補強パネル
20………取付金具
21………補強パネル接合面
23………コンクリート接合面
24………接合面
25………連結部
27………補強パネル取付穴
29………コンクリート取付穴
31………ナット
33、35、37、39………取付金具
38………コンクリート接触面
40………繊維強化セメント板
41………棒状部材
45………繊維強化セメントボルト
47………小片
49………穴
51………タップ
53………繊維強化セメントナット
61………穴
63………コンクリート
65………間隙
67………アンカー下穴
69………アンカー
71………モルタル
80………トンネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設コンクリートの取付部位に補強パネルを配置する工程(a)と、
アンカーを打設し前記補強パネルを前記既設コンクリートに固定する工程(b)と、
前記補強パネルと前記既設コンクリートとの間隙にモルタルを充填する工程(c)と、
を有することを特徴とするコンクリート構造物の補強方法。
【請求項2】
前記工程(a)の前に、前記補強パネルに取付金具を設ける工程(d)をさらに有し、
前記工程(a)において、前記取付金具が既設コンクリート表面の取付部位に接するように、前記補強パネルを配置する事を特徴とする請求項1記載のコンクリート構造物の補強方法。
【請求項3】
前記補強パネルが、繊維強化セメント板の積層構造を有することを特徴とする請求項1記載のコンクリート構造物の補強方法。
【請求項4】
前記繊維強化セメント板の間にさらにシート状繊維織物を挟んだ積層構造を有することを特徴とする請求項3記載のコンクリート構造物の補強方法。
【請求項5】
前記工程(d)において、繊維強化セメントボルトおよび繊維強化セメントナットを用いて、補強パネルに取付金具を設けることを特徴とする請求項2記載のコンクリート構造物の補強方法。
【請求項6】
前記工程(b)の後に、前記補強パネルと前記既設コンクリートとの間隙を調整する工程(e)をさらに有することを特徴とする請求項1記載のコンクリート構造物の補強方法。
【請求項7】
コンクリート構造物の補強に用いられる補強パネルであって、
2枚以上の繊維強化セメント板と前記繊維強化セメント板間にシート状繊維織物を貼り合せた積層構造を有し、
前記繊維強化セメント板が、端部をずらして積層されることを特徴とする補強パネル。
【請求項8】
前記補強パネルにおいて積層される2枚以上の前記繊維強化セメント板の側面が、前記繊維強化セメント板表面に対して垂直ではなく斜面部を有することを特徴とする、請求項7記載の補強パネル。
【請求項9】
第1の接合面と、
第2の接合面と、
前記第1の接合面と前記第2の接合面とを連結する連結部と、
前記第1の接合面に設けられた第1の穴部と、
前記第2の接合面に設けられた第2の穴部と、
を有し、前記第1の接合面と前記第2の接合面が平行であり、かつ、前記第2の穴部が、前記第2の穴部の軸方向から見て、前記第1の接合面と重なり合わない位置に設けられることを特徴とする補強パネル取付金具。
【請求項10】
接合面と、
接触面と、
前記接合面と前記接触面とを連結する連結部と、
前記接合面に設けられた第1の穴部と、
前記接合面に設けられた第2の穴部と、
を有し、前記接合面と前記接触面が平行であり、かつ、第1の穴部と、前記第2の穴部が、前記接合面上にて重なり合わない位置に設けられることを特徴とする補強パネル取付金具。
【請求項11】
セメント40〜85%、補強繊維1〜15%、混和材料0〜59%からなる繊維強化セメントボルト。
【請求項12】
セメント40〜85%、補強繊維1〜15%、混和材料0〜59%からなる繊維強化セメントナット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−223335(P2008−223335A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63328(P2007−63328)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000126609)株式会社エーアンドエーマテリアル (99)
【出願人】(598072180)ファイベックス株式会社 (24)
【Fターム(参考)】