繊維強化樹脂シートに貫通孔を形成する方法
【課題】繊維強化樹脂シートに繊維を孔部にて掻き分けた貫通孔を孔の周縁部が強固に補強され態様に形成する。
【解決手段】孔となる部分の繊維を孔の両側に掻き分けるとき、掻き分けの度合が所望の孔の大きさに合わせた最小限度より幾分大きくされても、繊維掻き分け後の応力集中による繊維強化樹脂シートの強度低下に大差はなく、それよりも繊維の掻き分け度を幾分大きくし、余裕部に新たに繊維強化された樹脂の層を付加する方が貫通孔の強度増大により有効であるとの認識に基づき、繊維強化樹脂シートの貫通孔用繊維掻き分けの余裕部に孔の周縁部強化に有効な環状構造体を組み込む。
【解決手段】孔となる部分の繊維を孔の両側に掻き分けるとき、掻き分けの度合が所望の孔の大きさに合わせた最小限度より幾分大きくされても、繊維掻き分け後の応力集中による繊維強化樹脂シートの強度低下に大差はなく、それよりも繊維の掻き分け度を幾分大きくし、余裕部に新たに繊維強化された樹脂の層を付加する方が貫通孔の強度増大により有効であるとの認識に基づき、繊維強化樹脂シートの貫通孔用繊維掻き分けの余裕部に孔の周縁部強化に有効な環状構造体を組み込む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂シートに貫通孔を形成する方法に係る。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂シートに貫通孔を形成する方法として、下記の特許文献1には、連続した強化繊維と熱可塑性樹脂のマトリックスとからなる繊維強化樹脂材に対して、加熱されて先端の尖った加工部材により、強化繊維を押し分けるように加工部材の周縁に移動させながら、熱可塑性樹脂のマトリックスを溶融させて穿孔することを特徴とする繊維強化樹脂材の孔明け加工法方が記載されている。また同じく繊維強化樹脂シートに貫通孔を形成する方法として、下記の特許文献2には、扁平で実質的に撚りがない強化繊維マルチフィラメント糸を織糸とする補強織物に円錐状の治具を差し込むことにより織糸を局部的に目ずれさせて開孔を形成し、その補強織物に樹脂を含浸させた後硬化させることを特徴とする孔を有するFRP(繊維強化プラスチック)の製造方法が記載されている。
【特許文献1】特開平7-186100
【特許文献2】特開平7-242756
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の特許文献1および2に記載されている如く、繊維強化樹脂シートに孔を開けるに当って、孔となる部分に於ける繊維を切断することなく、孔の両側に掻き分けておくことにより、孔開けによって繊維が切断された場合に繊維が切断された孔の部分から始まって繊維強化樹脂シートの破損が進行することによる繊維強化樹脂シートの強度の著しい劣化を回避することができる。
【0004】
しかし、繊維強化樹脂シートに限らず、シート状の物体に孔が開けられると、シートに沿って力が作用したとき孔の周りに応力集中が生ずるので、孔の部分にてシート状物体の強度が低下することは避けられない。かかる孔開けによるシート状物体の孔の部分に於ける強度低下は、上記特許文献1および2に記載されている如く、繊維強化樹脂シートに孔を開けるに当って、繊維を切断しない工夫が施されても本質的には不可避である。
【0005】
ところで、繊維強化樹脂シートに貫通孔を形成するに当たって、孔となる部分に於ける繊維を切断することなく、孔の両側に掻き分けるとなれば、それは繊維の本来の分布を乱すことになるので、当然のことながら、その掻き分けの度合はできるだけ小さいことが望ましく、上記の特許文献1および2に記載の方法に於いても、孔を形成するための繊維の掻き分けの度合は、所望の孔の大きさに合わせて該孔を形成するに必要な最小限度とされている。しかし、孔を形成するために繊維をどうせ掻き分けるのであれば、その度合が孔の形成に必要な最小限度より幾分大きくされても、繊維の局部的掻き分け後の応力集中による繊維強化樹脂シートの強度低下に大差はなく、それよりも繊維の掻き分け度に幾分かの余裕を持たせ、その余裕部に新たに繊維強化された樹脂の層を付加すれば、それによって孔開けによる繊維強化樹脂シートの強度低下を補い、或いは相殺し、或いは寧ろ孔の部分に於ける繊維強化樹脂シートの強度を孔のない部分に於ける強度よりも高めることすら可能であると考えられる。特に、シート状物体の強度がそこに孔が開けられることにより低下するのは、孔の周縁部に亀裂が発生することによるものであり、孔の周縁部が亀裂の発生に対し強化されれば、孔開けによるシート状物体の強度低下は大幅に回避される筈である。
【0006】
本発明は、上記の事情に着目し、繊維強化樹脂シートに繊維と樹脂を掻き分けて貫通孔を開けるとき、掻き分けの度合を孔の形成に必要な最小限度には限らずそれより幾分大きくし、それによって得られる繊維掻き分けの余裕部に亀裂の発生に対し強固な環状構造体を組み込むことにより、貫通孔の部分にて繊維強化樹脂シートがよりよく補強されるように貫通孔を形成する方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するものとして、本発明は、繊維強化樹脂シートに貫通孔を形成する方法にして、該繊維強化樹脂シートの該貫通孔となる部分およびその周縁に沿った環状帯域に存在する繊維および樹脂を周りに掻き分けることにより該貫通孔を前記環状帯域分だけ拡大した拡大貫通孔を形成し、前記拡大貫通孔の前記環状帯域の部分に該環状帯域の環に沿って延在する繊維と樹脂よりなる縁取りリングを組み込むことを特徴とする方法を提案するものである。
【0008】
この場合、前記繊維強化樹脂シートの樹脂と前記縁取りリングの樹脂との融合により前記拡大貫通孔内にて前記繊維強化樹脂シートに対し前記縁取りリングが固定されてよい。
【0009】
前記縁取りリングはその環に沿って延在する繊維と樹脂を含み該縁取りリングの厚みの複数倍またはそれ以上の長さを有する筒状体からの切り出しにより形成されてよい。
【0010】
前記縁取りリングにはその半径方向幅の中間部を横切る小孔が形成され、前記環状帯域の環に沿って延在する繊維のうちの前記小孔より半径方向内側にある繊維が該小孔を通る線材により束ねられてよい。前記線材により該小孔より半径方向内側にある繊維を束ねることは前記縁取りリングの環に沿った複数の箇所にて行われてよい。
【0011】
前記縁取りリングにその半径方向幅の中間部を横切る小孔が形成されるとき、該縁取りリングがその環に沿って延在する繊維と樹脂を含み該縁取りリングの厚みの複数倍またはそれ以上の長さを有する筒状体からの切り出しにより形成されるときには、前記小孔は該縁取りリングが切り出される前の前記筒状体の状態にある時点で形成されてよい。この場合、前記筒状体は、前記小孔より半径方向内側にある筒状部がまず形成され、次いで前記小孔となるべき部分に棒状体が設置され、その上から前記小孔より半径方向外側にある筒状部が形成され、その後前記棒状体が除去されることにより前記小孔となる空隙を含む筒状体として形成されてよい。
【0012】
前記拡大貫通孔は尖った先端より該拡大貫通孔の断面輪郭まで横断面が拡大する錐体を前記繊維強化樹脂シートの樹脂が流動可能な状態にあるとき該先端より始まって該繊維強化樹脂シートに貫通させることにより形成されてよい。
【発明の効果】
【0013】
上記の如く、繊維強化樹脂シートに貫通孔を形成するに当って、該繊維強化樹脂シートの該貫通孔となる部分およびその周縁に沿った環状帯域に存在する繊維および樹脂を周りに掻き分けることにより該貫通孔を前記環状帯域分だけ拡大した拡大貫通孔を形成し、前記拡大貫通孔の前記環状帯域の部分に該環状帯域の環に沿って延在する繊維と樹脂よりなる縁取りリングを組み込むようにしておけば、貫通孔の形成のための繊維の掻き分けの度合を貫通孔の大きさより僅かに大きくしておくことにより、所望の大きさの貫通孔をその周縁部が別途に追加された縁取りリングにより補強された構造として形成することができ、しかも縁取りリングが環状帯域の環に沿って延在する繊維と樹脂よりなることにより、貫通孔の周縁部をそれに沿って延在する繊維により補強し、形成された孔を亀裂の発生に対し高い抵抗性を有するものとすることができる。
【0014】
この場合に、前記繊維強化樹脂シートの樹脂と前記縁取りリングの樹脂との融合により前記拡大貫通孔内にて前記繊維強化樹脂シートに対し前記縁取りリングが固定されれば、繊維強化樹脂シート側の樹脂と縁取りリング側の樹脂の融合による両者の結合によって、繊維強化樹脂シートの拡大貫通孔周縁に沿って縁取りリングをより強固に取り付けることができる。
【0015】
前記縁取りリングがその環に沿って延在する繊維と樹脂を含み該縁取りリングの厚みの複数倍またはそれ以上の長さを有する筒状体からの切り出しにより形成されれば、拡大貫通孔に組み込まれたとき貫通孔の周縁に沿って延在する繊維を備えた縁取りリングを効率よく製造することができる。
【0016】
前記縁取りリングにその半径方向幅の中間部を横切る小孔が形成され、前記環状帯域の環に沿って延在する繊維のうちの前記小孔より半径方向内側にある繊維が該小孔を通る線材により束ねられれば、繊維強化樹脂シートの拡大貫通孔内に縁取りリングが取り付けられた後からでも、貫通孔の周縁に沿って延在する繊維のうち特に半径方向内周部にあって貫通孔に係合する他部材より及ぼされる外力によりほつれやすい繊維が互いに束ねられることにより、ほつれに対し強固に保持される。このように線材により小孔より半径方向内側にある繊維を束ねることが縁取りリングの環に沿った複数の箇所にて行われれば、それだけ貫通孔の周縁に沿って半径方向内周部に延在する繊維のほつれに対する保持をより強固にすることができる。
【0017】
前記縁取りリングがその環に沿って延在する繊維と樹脂を含み該縁取りリングの厚みの複数倍またはそれ以上の長さを有する筒状体からの切り出しにより形成され、前記縁取りリングにその半径方向幅の中間部を横切る小孔が形成されるとき、前記小孔が縁取りリングの切り出し前の前記筒状体の状態にある時点で形成されれば、多数の縁取りリングに小孔を効率よく形成することができる。この場合、前記筒状体が、小孔より半径方向内側にある筒状部がまず形成され、次いで小孔となるべき部分に棒状体が設置され、その上から小孔より半径方向外側にある筒状部が形成され、その後棒状体が除去されることにより前記小孔となる空隙を含む筒状体として形成されれば、多数の縁取りリングに対する小孔の形成がより一層効率よく行われる。
【0018】
前記拡大貫通孔が尖った先端より該拡大貫通孔の断面輪郭まで横断面が拡大する錐体を繊維強化樹脂シートの樹脂が流動可能な状態にあるとき該先端より始まって該繊維強化樹脂シートに貫通させることにより形成されれば、繊維強化樹脂シートに所望の貫通孔を所定の環状帯域分だけ拡大した拡大貫通孔を形成することを容易に達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
まず、図1〜6を参照して、本発明による繊維強化樹脂シートに貫通孔を形成する方法に使用される縁取りリングを準備することを一つの実施の形態に於いて説明する。
【0020】
図1に於いて、10は図には示されていない回転駆動機構により軸線12の周りに矢印14にて示す方向に回転駆動される円筒体である。円筒体10にはその一つの母線に沿って溝16が半径方向に切り込まれており、この溝内に先端部を差し込まれることにより先端部を円筒体に固定された状態に複数の繊維18が並列に並べられ、これらの繊維が適当な張力をかけられて引き張り状態に保たれつつ円筒体が矢印14にて示す方向に回転駆動され、並列の繊維が円筒体10の周りに層状に巻き重ねられる。
【0021】
巻き重ねられた繊維層20の厚みが図2に示す如き所定の値に達すると、円筒体10の回転が一時停止され、ここでそれまでに形成された繊維層20の外周面に丁度整合する環状位置に配列された複数の棒状体22を環状体24にて保持する如き工具26を用いて、図3に示す如くそれまでに形成された繊維層20の外周面上に母線に沿って棒状体22が設置される。図示の例では、棒状体22は円環状に均等に配列された12本の棒状体である。
【0022】
次いで、円筒体10の回転が再開され、図4に示す如く繊維層20と棒状体22の上に並列の繊維が更に層状に巻き重ねられる。繊維層20と棒状体22の上に巻き重ねられた繊維層28厚みが所定の値に達すると、円筒体10の回転が停止され、並列の繊維の、繊維層28として巻かれた部分の終端部を、接着テープ等の適当な固定手段により繊維層28上に保持させるともに、該終端部以降の繊維が切り離される。こうして円筒体10上に形成された繊維層20と28の重合体は、工具26を保持したまま円筒体10より引き抜かれ、そのまま溶融した樹脂層に浸されるか、または粉末にされた樹脂を噴きつけられることにより、樹脂層中に繊維が埋設された繊維強化樹脂の層構造を有する筒状体とされ、いずれにしてもその樹脂層が固化した後、これより工具26が引き抜かれると、図5に示す如く繊維層20と28との接合により一体に形成された樹脂の円筒層30内にその周に沿う方向に並列に配置された繊維18を含み、円筒層30の厚みの中間部に円筒の母線に沿って貫通する小孔32を備えた円筒体34が得られる。
【0023】
そしてこの筒状体34が所定の軸方向長さ毎に切断されれば、図6に36として示す如く、一時に複数個のリング状物体が得られ、これが本発明による繊維強化樹脂シートの貫通孔形成方法に使用される縁取りリングとして使用できるものとなる。図1〜図4に示した製造過程より明らかとおり、筒状体34が縁取りリング36の形に切断されても、繊維18のいずれにも切断は生じず、繊維による樹脂の複合補強構造自体は変わらず、また円筒層30の厚みの中間部に円筒の母線に沿って貫通する小孔32を備える構造も変わらない。
【0024】
縁取りリング36は、図7にそのいくつかの例を示す如く、円筒の環に沿って延在する繊維のうちの小孔32より半径方向内側にある繊維18が小孔32を通る線材38により束ねられる処置が施される。このように小孔32を通る線材38により小孔32より半径方向内側にある繊維18を束ねることは、縁取りリング36が後述の要領にて繊維強化樹脂シートに形成された拡大貫通孔内に組み込まれた後に於いてもできるので、図7に於いては、単独の状態にある縁取りリング36について線材38による束ね処置が施され手いるが、小孔32より半径方向内側にある繊維18を束ねる処置は、縁取りリング36が繊維強化樹脂シートに形成された拡大貫通孔内に組み込まれた後に施されてもよい。
【0025】
図7のAに示す例に於いては、各小孔32を通る線材38により該小孔より半径方向内側にある繊維が各小孔の近傍部毎に束ねられている。図7のBに示す例に於いては、周方向に隣接する小孔32を順次通る線材38により小孔より半径方向内側にある繊維が隣接する小孔間に於いて束ねられている。更に、図7のCおよびDに示す例に於いては、各小孔32を通る線材38により該小孔より半径方向内側にある繊維がそれぞれ図AおよびBに示す要領にて束ねられると共に、小孔より半径方向外側にある繊維も各小孔32を通る線材38により各小孔の近傍部毎に束ねられている。ただ、これらの図7のCおよびDに示す例では、小孔32より半径方向外側にある繊維を束ねる処置は、縁取りリング36が繊維強化樹脂シートに形成された拡大貫通孔内に組み込まれる前にしか実行できない。
【0026】
図8は、図1〜7に示した縁取りリングの準備とは別に、本発明により繊維強化樹脂シートに貫通孔を形成する方法に於ける主要な一つの段階として、繊維強化樹脂シートに貫通孔を開ける要領を一つの実施の形態について示す、孔開け用錐体と繊維強化樹脂シートの側面図であり、図9は図8の線9−9による孔開け用錐体の断面とその下方に位置する繊維強化樹脂シートの表面を示す図である。
【0027】
図示の例に於いては、繊維強化樹脂シート40は、図9で見て水平方向に並列に配置された繊維42−1、42−3、42−5、42−7等と、これに直交する図9で見て垂直方向に並列に配置された繊維42−2、42−4、42−6等と、これらの繊維層間に充填された樹脂層44とを含んでいる。
【0028】
孔開け用錐体46は、先端より繊維強化樹脂シート40に開けられるべき拡大貫通孔48の断面輪郭まで横断面が拡大する円錐状の作動部50を有し、この円錐状の作動部にてその先端から始まって繊維強化樹脂シート40に押しつけられ、該先端が当接する位置より両側にある繊維42−1〜42−7等を両側に掻き分けて繊維強化樹脂シート内へ侵入し且つこれを貫通するよう、図8でみて繊維強化樹脂シート40に対し下方へ駆動されるようになっている。拡大貫通孔48とは、縁取りリング36を組み込むための該縁取りリングの外径に相当する径の貫通孔であり、繊維強化樹脂シート40に製品として形成されるべき貫通孔52に対しその周縁に沿って縁取りリングの半径方向幅に相当する幅の環状帯域だけ拡大された貫通孔である。尚、図8および9には示されていないが、繊維強化樹脂シート40は、錐体46を受け入れる適当な孔を備えた支持台上に載置されている。
【0029】
図10は、上に説明した要領にて錐体46が繊維強化樹脂シート40にその最終成型位置まで貫通され、繊維強化樹脂シート40に貫通孔48が形成された状態を、錐体46についてはその断面にて、また繊維強化樹脂シート40についてはその上面にて示す平面図である。
【0030】
樹脂が熱可塑性樹脂であるときにも熱硬化性樹脂であるときにも、図10に示す状態に樹脂が固化している状態が得られた後、錐体46が繊維強化樹脂シート40より引き抜かれ、形成された拡大貫通孔48に図7に例示した如く準備された縁取りリング36が組み込まれる。図11は縁取りリング36として図7のAに示した縁取りリングが用いられた例を示す貫通孔形成後の繊維強化樹脂シート40の平面図であり、図12はその貫通孔中心部を通る断面図である。そして繊維強化樹脂シート40の樹脂と縁取りリングの樹脂とが熱溶融性樹脂であれば、図示の如く縁取りリングを組み込まれた繊維強化樹脂シート、特にその縁取りリングの組み込み部を適当な温度に加熱することにより、繊維強化樹脂シートの樹脂と縁取りリングの樹脂とを少なくともその接合部にて融合させ、かかる樹脂層間の融合により、繊維強化樹脂シートに対し縁取りリングを強固に固定することができる。
【0031】
以上に於いては本発明をいくつかの実施の形態について詳細に説明したが、これらの実施の形態について本発明の範囲内にて種々の変更が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による繊維強化樹脂シートに貫通孔を形成する方法に使用される縁取りリングを準備する一つの実施の形態をその第一の段階にて示す斜視図。
【図2】図1に続く第二の段階を示す斜視図。
【図3】図2に続く第三の段階を示す斜視図。
【図4】図3に続く第四の段階を示す斜視図。
【図5】上記の第一〜第四の段階を経て得られた繊維と樹脂の複合円筒体を示す斜視図。
【図6】図5に示す繊維と樹脂の複合円筒体より縁取りリングとなる環状体が切り出された状態を示す斜視図。
【図7】縁取りリングとなる環状体に小孔を通る線材による束ね処置が施された例を示す斜視図。
【図8】本発明により繊維強化樹脂シートに貫通孔を形成する方法に於いて繊維強化樹脂シートに貫通孔を開ける要領を一つの実施の形態について示す孔開け用錐体と繊維強化樹脂シートの側面図。
【図9】図8の線9−9による孔開け用錐体の断面とその下方に位置する繊維強化樹脂シートの表面を示す図。
【図10】錐体46が繊維強化樹脂シート40にその最終成型位置まで貫通され、繊維強化樹脂シート40に貫通孔48が形成された状態を、錐体46についてはその断面にて、繊維強化樹脂シート40についてはその上面にて示す平面図。
【図11】縁取りリング36として図7のAに示した縁取りリングが用いられた例を示す貫通孔形成後の繊維強化樹脂シート40の平面図。
【図12】図11に示す貫通孔形成後の繊維強化樹脂シート40の貫通孔中心部を通る断面図。
【符号の説明】
【0033】
10…円筒体、12…軸線、14…矢印、16…溝、18…繊維、20…繊維層、22…棒状体、24…環状体、26…工具、28…繊維層、30…円筒層、32…小孔、34…筒状体、36…縁取りリング、38…線材、40…繊維強化樹脂シート、42−1〜42−7…繊維、44…樹脂層、46…孔開け用錐体、48…拡大貫通孔、50…円錐状作動部、52…繊維強化樹脂シート40に製品として形成されるべき貫通孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂シートに貫通孔を形成する方法に係る。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂シートに貫通孔を形成する方法として、下記の特許文献1には、連続した強化繊維と熱可塑性樹脂のマトリックスとからなる繊維強化樹脂材に対して、加熱されて先端の尖った加工部材により、強化繊維を押し分けるように加工部材の周縁に移動させながら、熱可塑性樹脂のマトリックスを溶融させて穿孔することを特徴とする繊維強化樹脂材の孔明け加工法方が記載されている。また同じく繊維強化樹脂シートに貫通孔を形成する方法として、下記の特許文献2には、扁平で実質的に撚りがない強化繊維マルチフィラメント糸を織糸とする補強織物に円錐状の治具を差し込むことにより織糸を局部的に目ずれさせて開孔を形成し、その補強織物に樹脂を含浸させた後硬化させることを特徴とする孔を有するFRP(繊維強化プラスチック)の製造方法が記載されている。
【特許文献1】特開平7-186100
【特許文献2】特開平7-242756
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の特許文献1および2に記載されている如く、繊維強化樹脂シートに孔を開けるに当って、孔となる部分に於ける繊維を切断することなく、孔の両側に掻き分けておくことにより、孔開けによって繊維が切断された場合に繊維が切断された孔の部分から始まって繊維強化樹脂シートの破損が進行することによる繊維強化樹脂シートの強度の著しい劣化を回避することができる。
【0004】
しかし、繊維強化樹脂シートに限らず、シート状の物体に孔が開けられると、シートに沿って力が作用したとき孔の周りに応力集中が生ずるので、孔の部分にてシート状物体の強度が低下することは避けられない。かかる孔開けによるシート状物体の孔の部分に於ける強度低下は、上記特許文献1および2に記載されている如く、繊維強化樹脂シートに孔を開けるに当って、繊維を切断しない工夫が施されても本質的には不可避である。
【0005】
ところで、繊維強化樹脂シートに貫通孔を形成するに当たって、孔となる部分に於ける繊維を切断することなく、孔の両側に掻き分けるとなれば、それは繊維の本来の分布を乱すことになるので、当然のことながら、その掻き分けの度合はできるだけ小さいことが望ましく、上記の特許文献1および2に記載の方法に於いても、孔を形成するための繊維の掻き分けの度合は、所望の孔の大きさに合わせて該孔を形成するに必要な最小限度とされている。しかし、孔を形成するために繊維をどうせ掻き分けるのであれば、その度合が孔の形成に必要な最小限度より幾分大きくされても、繊維の局部的掻き分け後の応力集中による繊維強化樹脂シートの強度低下に大差はなく、それよりも繊維の掻き分け度に幾分かの余裕を持たせ、その余裕部に新たに繊維強化された樹脂の層を付加すれば、それによって孔開けによる繊維強化樹脂シートの強度低下を補い、或いは相殺し、或いは寧ろ孔の部分に於ける繊維強化樹脂シートの強度を孔のない部分に於ける強度よりも高めることすら可能であると考えられる。特に、シート状物体の強度がそこに孔が開けられることにより低下するのは、孔の周縁部に亀裂が発生することによるものであり、孔の周縁部が亀裂の発生に対し強化されれば、孔開けによるシート状物体の強度低下は大幅に回避される筈である。
【0006】
本発明は、上記の事情に着目し、繊維強化樹脂シートに繊維と樹脂を掻き分けて貫通孔を開けるとき、掻き分けの度合を孔の形成に必要な最小限度には限らずそれより幾分大きくし、それによって得られる繊維掻き分けの余裕部に亀裂の発生に対し強固な環状構造体を組み込むことにより、貫通孔の部分にて繊維強化樹脂シートがよりよく補強されるように貫通孔を形成する方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するものとして、本発明は、繊維強化樹脂シートに貫通孔を形成する方法にして、該繊維強化樹脂シートの該貫通孔となる部分およびその周縁に沿った環状帯域に存在する繊維および樹脂を周りに掻き分けることにより該貫通孔を前記環状帯域分だけ拡大した拡大貫通孔を形成し、前記拡大貫通孔の前記環状帯域の部分に該環状帯域の環に沿って延在する繊維と樹脂よりなる縁取りリングを組み込むことを特徴とする方法を提案するものである。
【0008】
この場合、前記繊維強化樹脂シートの樹脂と前記縁取りリングの樹脂との融合により前記拡大貫通孔内にて前記繊維強化樹脂シートに対し前記縁取りリングが固定されてよい。
【0009】
前記縁取りリングはその環に沿って延在する繊維と樹脂を含み該縁取りリングの厚みの複数倍またはそれ以上の長さを有する筒状体からの切り出しにより形成されてよい。
【0010】
前記縁取りリングにはその半径方向幅の中間部を横切る小孔が形成され、前記環状帯域の環に沿って延在する繊維のうちの前記小孔より半径方向内側にある繊維が該小孔を通る線材により束ねられてよい。前記線材により該小孔より半径方向内側にある繊維を束ねることは前記縁取りリングの環に沿った複数の箇所にて行われてよい。
【0011】
前記縁取りリングにその半径方向幅の中間部を横切る小孔が形成されるとき、該縁取りリングがその環に沿って延在する繊維と樹脂を含み該縁取りリングの厚みの複数倍またはそれ以上の長さを有する筒状体からの切り出しにより形成されるときには、前記小孔は該縁取りリングが切り出される前の前記筒状体の状態にある時点で形成されてよい。この場合、前記筒状体は、前記小孔より半径方向内側にある筒状部がまず形成され、次いで前記小孔となるべき部分に棒状体が設置され、その上から前記小孔より半径方向外側にある筒状部が形成され、その後前記棒状体が除去されることにより前記小孔となる空隙を含む筒状体として形成されてよい。
【0012】
前記拡大貫通孔は尖った先端より該拡大貫通孔の断面輪郭まで横断面が拡大する錐体を前記繊維強化樹脂シートの樹脂が流動可能な状態にあるとき該先端より始まって該繊維強化樹脂シートに貫通させることにより形成されてよい。
【発明の効果】
【0013】
上記の如く、繊維強化樹脂シートに貫通孔を形成するに当って、該繊維強化樹脂シートの該貫通孔となる部分およびその周縁に沿った環状帯域に存在する繊維および樹脂を周りに掻き分けることにより該貫通孔を前記環状帯域分だけ拡大した拡大貫通孔を形成し、前記拡大貫通孔の前記環状帯域の部分に該環状帯域の環に沿って延在する繊維と樹脂よりなる縁取りリングを組み込むようにしておけば、貫通孔の形成のための繊維の掻き分けの度合を貫通孔の大きさより僅かに大きくしておくことにより、所望の大きさの貫通孔をその周縁部が別途に追加された縁取りリングにより補強された構造として形成することができ、しかも縁取りリングが環状帯域の環に沿って延在する繊維と樹脂よりなることにより、貫通孔の周縁部をそれに沿って延在する繊維により補強し、形成された孔を亀裂の発生に対し高い抵抗性を有するものとすることができる。
【0014】
この場合に、前記繊維強化樹脂シートの樹脂と前記縁取りリングの樹脂との融合により前記拡大貫通孔内にて前記繊維強化樹脂シートに対し前記縁取りリングが固定されれば、繊維強化樹脂シート側の樹脂と縁取りリング側の樹脂の融合による両者の結合によって、繊維強化樹脂シートの拡大貫通孔周縁に沿って縁取りリングをより強固に取り付けることができる。
【0015】
前記縁取りリングがその環に沿って延在する繊維と樹脂を含み該縁取りリングの厚みの複数倍またはそれ以上の長さを有する筒状体からの切り出しにより形成されれば、拡大貫通孔に組み込まれたとき貫通孔の周縁に沿って延在する繊維を備えた縁取りリングを効率よく製造することができる。
【0016】
前記縁取りリングにその半径方向幅の中間部を横切る小孔が形成され、前記環状帯域の環に沿って延在する繊維のうちの前記小孔より半径方向内側にある繊維が該小孔を通る線材により束ねられれば、繊維強化樹脂シートの拡大貫通孔内に縁取りリングが取り付けられた後からでも、貫通孔の周縁に沿って延在する繊維のうち特に半径方向内周部にあって貫通孔に係合する他部材より及ぼされる外力によりほつれやすい繊維が互いに束ねられることにより、ほつれに対し強固に保持される。このように線材により小孔より半径方向内側にある繊維を束ねることが縁取りリングの環に沿った複数の箇所にて行われれば、それだけ貫通孔の周縁に沿って半径方向内周部に延在する繊維のほつれに対する保持をより強固にすることができる。
【0017】
前記縁取りリングがその環に沿って延在する繊維と樹脂を含み該縁取りリングの厚みの複数倍またはそれ以上の長さを有する筒状体からの切り出しにより形成され、前記縁取りリングにその半径方向幅の中間部を横切る小孔が形成されるとき、前記小孔が縁取りリングの切り出し前の前記筒状体の状態にある時点で形成されれば、多数の縁取りリングに小孔を効率よく形成することができる。この場合、前記筒状体が、小孔より半径方向内側にある筒状部がまず形成され、次いで小孔となるべき部分に棒状体が設置され、その上から小孔より半径方向外側にある筒状部が形成され、その後棒状体が除去されることにより前記小孔となる空隙を含む筒状体として形成されれば、多数の縁取りリングに対する小孔の形成がより一層効率よく行われる。
【0018】
前記拡大貫通孔が尖った先端より該拡大貫通孔の断面輪郭まで横断面が拡大する錐体を繊維強化樹脂シートの樹脂が流動可能な状態にあるとき該先端より始まって該繊維強化樹脂シートに貫通させることにより形成されれば、繊維強化樹脂シートに所望の貫通孔を所定の環状帯域分だけ拡大した拡大貫通孔を形成することを容易に達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
まず、図1〜6を参照して、本発明による繊維強化樹脂シートに貫通孔を形成する方法に使用される縁取りリングを準備することを一つの実施の形態に於いて説明する。
【0020】
図1に於いて、10は図には示されていない回転駆動機構により軸線12の周りに矢印14にて示す方向に回転駆動される円筒体である。円筒体10にはその一つの母線に沿って溝16が半径方向に切り込まれており、この溝内に先端部を差し込まれることにより先端部を円筒体に固定された状態に複数の繊維18が並列に並べられ、これらの繊維が適当な張力をかけられて引き張り状態に保たれつつ円筒体が矢印14にて示す方向に回転駆動され、並列の繊維が円筒体10の周りに層状に巻き重ねられる。
【0021】
巻き重ねられた繊維層20の厚みが図2に示す如き所定の値に達すると、円筒体10の回転が一時停止され、ここでそれまでに形成された繊維層20の外周面に丁度整合する環状位置に配列された複数の棒状体22を環状体24にて保持する如き工具26を用いて、図3に示す如くそれまでに形成された繊維層20の外周面上に母線に沿って棒状体22が設置される。図示の例では、棒状体22は円環状に均等に配列された12本の棒状体である。
【0022】
次いで、円筒体10の回転が再開され、図4に示す如く繊維層20と棒状体22の上に並列の繊維が更に層状に巻き重ねられる。繊維層20と棒状体22の上に巻き重ねられた繊維層28厚みが所定の値に達すると、円筒体10の回転が停止され、並列の繊維の、繊維層28として巻かれた部分の終端部を、接着テープ等の適当な固定手段により繊維層28上に保持させるともに、該終端部以降の繊維が切り離される。こうして円筒体10上に形成された繊維層20と28の重合体は、工具26を保持したまま円筒体10より引き抜かれ、そのまま溶融した樹脂層に浸されるか、または粉末にされた樹脂を噴きつけられることにより、樹脂層中に繊維が埋設された繊維強化樹脂の層構造を有する筒状体とされ、いずれにしてもその樹脂層が固化した後、これより工具26が引き抜かれると、図5に示す如く繊維層20と28との接合により一体に形成された樹脂の円筒層30内にその周に沿う方向に並列に配置された繊維18を含み、円筒層30の厚みの中間部に円筒の母線に沿って貫通する小孔32を備えた円筒体34が得られる。
【0023】
そしてこの筒状体34が所定の軸方向長さ毎に切断されれば、図6に36として示す如く、一時に複数個のリング状物体が得られ、これが本発明による繊維強化樹脂シートの貫通孔形成方法に使用される縁取りリングとして使用できるものとなる。図1〜図4に示した製造過程より明らかとおり、筒状体34が縁取りリング36の形に切断されても、繊維18のいずれにも切断は生じず、繊維による樹脂の複合補強構造自体は変わらず、また円筒層30の厚みの中間部に円筒の母線に沿って貫通する小孔32を備える構造も変わらない。
【0024】
縁取りリング36は、図7にそのいくつかの例を示す如く、円筒の環に沿って延在する繊維のうちの小孔32より半径方向内側にある繊維18が小孔32を通る線材38により束ねられる処置が施される。このように小孔32を通る線材38により小孔32より半径方向内側にある繊維18を束ねることは、縁取りリング36が後述の要領にて繊維強化樹脂シートに形成された拡大貫通孔内に組み込まれた後に於いてもできるので、図7に於いては、単独の状態にある縁取りリング36について線材38による束ね処置が施され手いるが、小孔32より半径方向内側にある繊維18を束ねる処置は、縁取りリング36が繊維強化樹脂シートに形成された拡大貫通孔内に組み込まれた後に施されてもよい。
【0025】
図7のAに示す例に於いては、各小孔32を通る線材38により該小孔より半径方向内側にある繊維が各小孔の近傍部毎に束ねられている。図7のBに示す例に於いては、周方向に隣接する小孔32を順次通る線材38により小孔より半径方向内側にある繊維が隣接する小孔間に於いて束ねられている。更に、図7のCおよびDに示す例に於いては、各小孔32を通る線材38により該小孔より半径方向内側にある繊維がそれぞれ図AおよびBに示す要領にて束ねられると共に、小孔より半径方向外側にある繊維も各小孔32を通る線材38により各小孔の近傍部毎に束ねられている。ただ、これらの図7のCおよびDに示す例では、小孔32より半径方向外側にある繊維を束ねる処置は、縁取りリング36が繊維強化樹脂シートに形成された拡大貫通孔内に組み込まれる前にしか実行できない。
【0026】
図8は、図1〜7に示した縁取りリングの準備とは別に、本発明により繊維強化樹脂シートに貫通孔を形成する方法に於ける主要な一つの段階として、繊維強化樹脂シートに貫通孔を開ける要領を一つの実施の形態について示す、孔開け用錐体と繊維強化樹脂シートの側面図であり、図9は図8の線9−9による孔開け用錐体の断面とその下方に位置する繊維強化樹脂シートの表面を示す図である。
【0027】
図示の例に於いては、繊維強化樹脂シート40は、図9で見て水平方向に並列に配置された繊維42−1、42−3、42−5、42−7等と、これに直交する図9で見て垂直方向に並列に配置された繊維42−2、42−4、42−6等と、これらの繊維層間に充填された樹脂層44とを含んでいる。
【0028】
孔開け用錐体46は、先端より繊維強化樹脂シート40に開けられるべき拡大貫通孔48の断面輪郭まで横断面が拡大する円錐状の作動部50を有し、この円錐状の作動部にてその先端から始まって繊維強化樹脂シート40に押しつけられ、該先端が当接する位置より両側にある繊維42−1〜42−7等を両側に掻き分けて繊維強化樹脂シート内へ侵入し且つこれを貫通するよう、図8でみて繊維強化樹脂シート40に対し下方へ駆動されるようになっている。拡大貫通孔48とは、縁取りリング36を組み込むための該縁取りリングの外径に相当する径の貫通孔であり、繊維強化樹脂シート40に製品として形成されるべき貫通孔52に対しその周縁に沿って縁取りリングの半径方向幅に相当する幅の環状帯域だけ拡大された貫通孔である。尚、図8および9には示されていないが、繊維強化樹脂シート40は、錐体46を受け入れる適当な孔を備えた支持台上に載置されている。
【0029】
図10は、上に説明した要領にて錐体46が繊維強化樹脂シート40にその最終成型位置まで貫通され、繊維強化樹脂シート40に貫通孔48が形成された状態を、錐体46についてはその断面にて、また繊維強化樹脂シート40についてはその上面にて示す平面図である。
【0030】
樹脂が熱可塑性樹脂であるときにも熱硬化性樹脂であるときにも、図10に示す状態に樹脂が固化している状態が得られた後、錐体46が繊維強化樹脂シート40より引き抜かれ、形成された拡大貫通孔48に図7に例示した如く準備された縁取りリング36が組み込まれる。図11は縁取りリング36として図7のAに示した縁取りリングが用いられた例を示す貫通孔形成後の繊維強化樹脂シート40の平面図であり、図12はその貫通孔中心部を通る断面図である。そして繊維強化樹脂シート40の樹脂と縁取りリングの樹脂とが熱溶融性樹脂であれば、図示の如く縁取りリングを組み込まれた繊維強化樹脂シート、特にその縁取りリングの組み込み部を適当な温度に加熱することにより、繊維強化樹脂シートの樹脂と縁取りリングの樹脂とを少なくともその接合部にて融合させ、かかる樹脂層間の融合により、繊維強化樹脂シートに対し縁取りリングを強固に固定することができる。
【0031】
以上に於いては本発明をいくつかの実施の形態について詳細に説明したが、これらの実施の形態について本発明の範囲内にて種々の変更が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による繊維強化樹脂シートに貫通孔を形成する方法に使用される縁取りリングを準備する一つの実施の形態をその第一の段階にて示す斜視図。
【図2】図1に続く第二の段階を示す斜視図。
【図3】図2に続く第三の段階を示す斜視図。
【図4】図3に続く第四の段階を示す斜視図。
【図5】上記の第一〜第四の段階を経て得られた繊維と樹脂の複合円筒体を示す斜視図。
【図6】図5に示す繊維と樹脂の複合円筒体より縁取りリングとなる環状体が切り出された状態を示す斜視図。
【図7】縁取りリングとなる環状体に小孔を通る線材による束ね処置が施された例を示す斜視図。
【図8】本発明により繊維強化樹脂シートに貫通孔を形成する方法に於いて繊維強化樹脂シートに貫通孔を開ける要領を一つの実施の形態について示す孔開け用錐体と繊維強化樹脂シートの側面図。
【図9】図8の線9−9による孔開け用錐体の断面とその下方に位置する繊維強化樹脂シートの表面を示す図。
【図10】錐体46が繊維強化樹脂シート40にその最終成型位置まで貫通され、繊維強化樹脂シート40に貫通孔48が形成された状態を、錐体46についてはその断面にて、繊維強化樹脂シート40についてはその上面にて示す平面図。
【図11】縁取りリング36として図7のAに示した縁取りリングが用いられた例を示す貫通孔形成後の繊維強化樹脂シート40の平面図。
【図12】図11に示す貫通孔形成後の繊維強化樹脂シート40の貫通孔中心部を通る断面図。
【符号の説明】
【0033】
10…円筒体、12…軸線、14…矢印、16…溝、18…繊維、20…繊維層、22…棒状体、24…環状体、26…工具、28…繊維層、30…円筒層、32…小孔、34…筒状体、36…縁取りリング、38…線材、40…繊維強化樹脂シート、42−1〜42−7…繊維、44…樹脂層、46…孔開け用錐体、48…拡大貫通孔、50…円錐状作動部、52…繊維強化樹脂シート40に製品として形成されるべき貫通孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化樹脂シートに貫通孔を形成する方法にして、該繊維強化樹脂シートの該貫通孔となる部分およびその周縁に沿った環状帯域に存在する繊維および樹脂を周りに掻き分けることにより該貫通孔を前記環状帯域分だけ拡大した拡大貫通孔を形成し、前記拡大貫通孔の前記環状帯域の部分に該環状帯域の環に沿って延在する繊維と樹脂よりなる縁取りリングを組み込むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記繊維強化樹脂シートの樹脂と前記縁取りリングの樹脂との融合により前記拡大貫通孔内にて前記繊維強化樹脂シートに対し前記縁取りリングが固定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記縁取りリングはその環に沿って延在する繊維と樹脂を含み該縁取りリングの厚みの複数倍またはそれ以上の長さを有する筒状体からの切り出しにより形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記縁取りリングにはその半径方向幅の中間部を横切る小孔が形成され、前記環状帯域の環に沿って延在する繊維のうちの前記小孔より半径方向内側にある繊維が該小孔を通る線材により束ねられることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記線材により前記小孔より半径方向内側にある繊維を束ねることは前記縁取りリングの環に沿った複数の箇所にて行われることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記縁取りリングにはその半径方向幅の中間部を横切る小孔が形成され、前記小孔は前記縁取りリングが切り出される前の前記筒状体の状態にある時点で形成されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記筒状体は、前記小孔より半径方向内側にある筒状部がまず形成され、次いで前記小孔となるべき部分に棒状体が設置され、その上から前記小孔より半径方向外側にある筒状部が形成され、その後前記棒状体が除去されることにより前記小孔となる空隙を含む筒状体として形成されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記拡大貫通孔は尖った先端より該拡大貫通孔の断面輪郭まで横断面が拡大する錐体を前記繊維強化樹脂シートの樹脂が流動可能な状態にあるとき該先端より始まって該繊維強化樹脂シートに貫通させることにより形成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項1】
繊維強化樹脂シートに貫通孔を形成する方法にして、該繊維強化樹脂シートの該貫通孔となる部分およびその周縁に沿った環状帯域に存在する繊維および樹脂を周りに掻き分けることにより該貫通孔を前記環状帯域分だけ拡大した拡大貫通孔を形成し、前記拡大貫通孔の前記環状帯域の部分に該環状帯域の環に沿って延在する繊維と樹脂よりなる縁取りリングを組み込むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記繊維強化樹脂シートの樹脂と前記縁取りリングの樹脂との融合により前記拡大貫通孔内にて前記繊維強化樹脂シートに対し前記縁取りリングが固定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記縁取りリングはその環に沿って延在する繊維と樹脂を含み該縁取りリングの厚みの複数倍またはそれ以上の長さを有する筒状体からの切り出しにより形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記縁取りリングにはその半径方向幅の中間部を横切る小孔が形成され、前記環状帯域の環に沿って延在する繊維のうちの前記小孔より半径方向内側にある繊維が該小孔を通る線材により束ねられることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記線材により前記小孔より半径方向内側にある繊維を束ねることは前記縁取りリングの環に沿った複数の箇所にて行われることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記縁取りリングにはその半径方向幅の中間部を横切る小孔が形成され、前記小孔は前記縁取りリングが切り出される前の前記筒状体の状態にある時点で形成されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記筒状体は、前記小孔より半径方向内側にある筒状部がまず形成され、次いで前記小孔となるべき部分に棒状体が設置され、その上から前記小孔より半径方向外側にある筒状部が形成され、その後前記棒状体が除去されることにより前記小孔となる空隙を含む筒状体として形成されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記拡大貫通孔は尖った先端より該拡大貫通孔の断面輪郭まで横断面が拡大する錐体を前記繊維強化樹脂シートの樹脂が流動可能な状態にあるとき該先端より始まって該繊維強化樹脂シートに貫通させることにより形成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−290269(P2008−290269A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135443(P2007−135443)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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