説明

繊維強化樹脂シートの製造装置及びその製造方法

【課題】熱可塑性樹脂を強化繊維基材に良好に含浸することができる繊維強化樹脂シートの製造方法及びその製造装置を提供する。
【解決手段】シート状の強化繊維基材Fと、熱可塑性樹脂Pとを、一対のロール10,20間に導入し、一対のロールを回転させながら強化繊維基材Fに前記熱可塑性樹脂Pを含浸することにより、繊維強化樹脂シートSを製造する方法であって、一対のロール10,20として、金属製の主ロール10と金属製の押さえロール20とを用い、主ロール10に対して押さえロール20を押圧することにより、押さえロール20の周面が主ロール10の周面形状に倣うように押さえロール20の周面21を変形させながら、熱可塑性樹脂Pを強化繊維基材Fに含浸させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の強化繊維基材と熱可塑性樹脂とを一対のロール間に導入し、強化繊維基材に熱可塑性樹脂を好適に含浸することができる繊維強化樹脂シートの製造装置及び繊維強化樹脂シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱硬化性樹脂、又は熱可塑性樹脂をマトリクス樹脂とする繊維強化複合材料(繊維強化樹脂材料)は、金属材料に比べて軽量かつ高弾性であり、樹脂材料のみに比べて高強度であるので、車両用の部材等の適用に注目されている材料である。
【0003】
強化繊維の本来の特性である、引張に対する高強度及び高弾性の特徴を活かすためには、長繊維などの強化繊維を強化繊維基材とし、この強化繊維基材に予めマトリクス樹脂を含浸、または半含浸して、プリプレグシート(繊維強化樹脂シート)として使用されるのが一般的である。
【0004】
一方、マトリクス樹脂として熱可塑性樹脂を含浸した繊維強化樹脂シートは、熱可塑性樹脂の特徴から、靭性、短時間成形性、貯蔵安定性、リサイクル性などに優れ、付加価値のある材料として注目されている。
【0005】
しかし、熱可塑性樹脂は、一般的に熱硬化性樹脂に比べて高粘度であり、熱可塑性樹脂を成形する際には、これを高温に加熱する必要がある。そして、単に熱可塑性樹脂を均一な厚みのフィルムに成形する場合であっても、その成形は容易にできるものではない。例えば、このような技術として、押出成形機により押し出されたシート状溶融樹脂を、金属製の主ロールと金属製の押さえロールの間に導入して、押さえロールの薄肉外筒を主ロールの周面形状に倣うように変形させながら、これらのロール間で前記樹脂を冷却しながら挟圧して、フィルム状の熱可塑性樹脂を成形する技術などがある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
このように、熱可塑性樹脂をフィルム状に成形するだけでもその成形は容易ではなく、ましてや、熱可塑性樹脂をマトリクス樹脂とした繊維強化樹脂シートを製造することは、熱硬化性樹脂の場合に比べてさらに難しい技術である。そして、これらの技術に対して、様々な研究がなされている(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
例えば、熱可塑性樹脂を強化繊維基材に含浸して、繊維強化樹脂シートを製造する方法として、一対の金属加圧ロールにより、軟化した熱可塑性樹脂フィルムを、強化繊維基材に加圧して含浸する方法(例えば、特許文献2参照)や、金属ロールとゴムロールとを用いて、これらのロール間において熱可塑性樹脂を強化繊維基材に含浸する方法(例えば、特許文献3参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−235747号公報
【特許文献2】特開平7−016936号公報
【特許文献3】特開平7−016835号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】福井工業技術センター 平成12年度研究報告書 No.17「熱可塑性樹脂プリプレグ装置を開発するための熱可塑性樹脂含浸シミュレーション、川邊和正他著
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記非特許文献1に示すように、発明者らは、強化繊維束中に熱可塑性樹脂がどのように含浸されるかの解析を行ってきた。そこでは、熱可塑性樹脂が強化繊維束中に含浸される過程について簡易モデル化を行い、基礎的な含浸理論式が導出されている。この理論式によれば、(1)強化繊維束の厚みが薄く、(2)成形圧力(含浸時の圧力)が高く、(3)熱可塑性樹脂の溶融粘度が低いときに、強化繊維束中への熱可塑性樹脂の含浸時間が短くなる(熱可塑性樹脂を強化繊維基材に含浸させやすい)ことがわかっている。そして、熱可塑性樹脂の場合、熱硬化性樹脂に比べて溶融粘度が高いため、溶融温度、成形圧力、繊維束厚み(基材厚み)、成形時間などの条件によって、樹脂の含浸状態は、熱硬化性樹脂に比べて大きく変化する。
【0011】
このような発明者らの知見から鑑みると、例えば、特許文献2の如く、一対の金属加圧ロールを用いた場合には、ロール間において、熱可塑性樹脂と強化繊維基材とに線圧を作用させることしかできず、圧力が作用する時間も瞬間的であり、充分に熱可塑性樹脂を強化繊維基材に含浸できないことがある。また、線圧を作用させた場合には、ロール幅方向に加圧ムラができ易く、熱可塑性樹脂が強化繊維基材に均一に含浸されないこともある。
【0012】
これに対して、特許文献3の如く、金属ロールとゴムロールとを用いた場合には、ロール間において、熱可塑性樹脂と強化繊維基材とに面圧を作用させることができる。しかしながら、ゴムロールを用いた場合には、ゴムの耐熱温度が200℃程度であるため、熱可塑性樹脂の温度条件が高い状態(粘度がより低い状態)で、強化繊維基材に熱可塑性樹脂を含浸できないことがある。
【0013】
本発明はこのような点に鑑みて成されたものであり、溶融した熱可塑性樹脂を強化繊維基材に良好に含浸することができる繊維強化樹脂シートの製造方法及びその製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決すべく、本発明に係る繊維強化樹脂シートの製造方法は、シート状の強化繊維基材と、熱可塑性樹脂とを、一対のロール間に導入し、該一対のロールを回転させながら前記強化繊維基材に溶融した前記熱可塑性樹脂が含浸されることにより、繊維強化樹脂シートを製造する方法を前提とする。
【0015】
そして、第1の発明の場合には、前記一対のロールとして、金属製の主ロールと金属製の押さえロールとを用い、前記主ロールに対して前記押さえロールを押圧することにより、前記押さえロールの周面が前記主ロールの周面形状に倣うように前記押さえロールの周面を変形させながら、前記熱可塑性樹脂を前記強化繊維基材に含浸させることを特徴とする。一方、第2の発明の場合には、前記一対のロールとして、金属製の主ロールを用い、前記一対のロール同士を押圧することにより、双方のロールの対向する周面を平面状に変形させながら、前記熱可塑性樹脂を前記強化繊維基材に含浸させることを特徴とする。
【0016】
第1の発明によれば、主ロールに対して押さえロールを押圧することにより、押さえロールの周面が主ロールの周面形状に倣うように押さえロールの周面を変形させるので、ロール間にある熱可塑性樹脂と強化繊維基材とに面圧を作用させることができる。第2の発明によれば、前記一対のロール同士を押圧することにより、双方のロールの対向する周面を平面状に変形させるので、同様に、ロール間にある熱可塑性樹脂と強化繊維基材とに面圧を作用させることができる。
【0017】
このように強化繊維基材に作用する圧力は、これまでの単なる剛体の金属ロールを用いた場合に作用する線圧とは異なり面圧となるので、強化繊維基材に過度の応力を作用させることなく、均一かつ安定的に熱可塑性樹脂を強化繊維基材に含浸することができる。また、ロールを回転させながら面圧を作用させることにより、これまでのように含浸時間が瞬時にはならず、さらに含浸時に強化繊維基材の繊維間に介在する空気を好適に脱気しながら、幅方向に段状の筋のない均一な厚みの繊維強化樹脂シートを得ることができる。
【0018】
特に、第2の発明の場合には、双方のロールの対向する周面を平面状に変形させながら、前記熱可塑性樹脂を前記強化繊維基材に含浸するので、熱可塑性樹脂と強化繊維基材との両面に均一な応力を作用させることができる。これにより、均一な厚みの均質な繊維強化樹脂シートを得ることができる。
【0019】
さらに、いずれの発明であっても、前記一対のロールは金属製のロールであるので、熱可塑性樹脂をこれまでのゴムロール使用時よりも高い温度(例えば熱可塑性樹脂が溶融する温度(例えば200℃〜420℃程度))に加熱することができる。この結果、金属ロールとゴムロールを用いた場合に比べて、熱可塑性樹脂をより低い粘度にして、これを加圧して強化繊維基材に含浸することができる。このようにして、熱可塑性樹脂の中でも、含浸温度(成形温度)が高く、溶融粘度が高い熱可塑性樹脂に対しても繊維強化樹脂シートを製造することが可能となる。
【0020】
いずれの発明に対しても、好ましい態様としては、前記一対のロールを加熱し、該加熱された少なくとも一方のロールの周面に前記熱可塑性樹脂を供給することにより、前記熱可塑性樹脂を加熱し、該加熱された熱可塑性樹脂を、前記一対のロールの回転により、前記一対のロール間に向って搬送しながら、溶融した前記熱可塑性樹脂の含浸を行う。
【0021】
この態様によれば、熱可塑性樹脂は、加熱された少なくとも一方のロールの周面に供給され、ロール間に搬送されるまでの間、このロール周面においてロールからの発熱した熱を受熱する。ここで、供給する熱可塑性樹脂が、予め溶融するまで加熱されている場合には、ロールの熱により、ロール間に到達するまでの間、熱可塑性樹脂の温度低下を抑制することができ、これにより熱可塑性樹脂の粘度上昇を抑制する。また、例えば、粉末状の熱可塑性樹脂やフィルム状の熱可塑性樹脂を供給した場合には、ロール間に到達するまでの間に、熱可塑性樹脂を溶融することもできる。
【0022】
ここで、前記一対のロールの配置は、ロール表面に熱可塑性樹脂を供給し、強化繊維基材と共にロール間に供給することができるのであれば、特に限定されるものではない。しかしながら、より好ましくは、前記一対のロールは、水平方向に並んで配置されており、前記熱可塑性樹脂を供給する周面は、ロール上側の周面であってもよい。この態様によれば、ロール上側の周面に熱可塑性樹脂をその自重で供給することができ、ロールが略4分の1回転するまでの間、供給された熱可塑性樹脂はロール表面で加熱され、ロール間に導入することができる。
【0023】
さらに好ましい態様としては、前記強化繊維基材を、前記一対のロールのいずれか一方のロールに巻き付けて、該ロールに巻き付いた強化繊維基材の表面に、前記熱可塑性樹脂を供給するものである。
【0024】
この態様によれば、ロールに巻き付いた強化繊維樹脂基材は、ロールの熱により加熱され、この強化繊維基材に加熱されている熱可塑性樹脂を供給するので、より効率的に、加熱されたロールの熱を利用して、予熱した基材及び樹脂の双方をロール間に供給することができる。
【0025】
第1の発明の押さえロール及び第2の発明において用いる一対のロールは、少なくとも金属材料からなればよく、熱可塑性樹脂と強化繊維基材とに面圧を作用するように変形することができるものであれば、例えば、これらのロールにβ型Ti合金いわゆるゴムメタルなど、一般的な金属材料よりも高弾性変形することができる金属材料を用いてもよい。
【0026】
しかしながら、より好ましい態様としては、第1の発明の押さえロールとして、前記押圧により前記主ロールの周面形状に倣って変形する薄肉金属外筒と、該薄肉金属外筒の内部において筒状空間が形成されるように、前記薄肉金属外筒に内挿された軸芯体と、を少なくとも備えたロールを用いる。一方、第2の発明の一対のロールとして、前記押圧により平面状に倣って変形する薄肉金属外筒と、該薄肉金属外筒の内部において筒状空間が形成されるように、前記薄肉金属外筒に内挿された軸芯体と、を少なくとも備えたロールを用いる。
【0027】
このような構造のロールを用いることにより、熱可塑性樹脂と強化繊維基材とに面圧を作用させることができるばかりでなく、ロール内部に形成された筒状空間を利用して、これらロールそのものを好適に加熱することができる。ここで、より好適なロールの変形を得るためには、変形する部分の薄肉金属外筒の肉厚t、ロール半径(薄肉金属外筒の外径の半径)をrとしたとき、t/r≦0.03の関係を満たしていることが好ましい。
【0028】
これらのロールを加熱する場合、例えば赤外線ヒータ等を用いて、ロール表面を加熱してもよい。しかしながら、好ましい態様としては、上述した薄肉金属外筒と軸芯体との間に形成された筒状空間内に加熱された媒体を供給することにより、第1の発明の場合には押さえロールを、第2の発明の場合には一対のロールの双方を、加熱する。これにより、一対のロール間に導入された熱可塑性樹脂を効率良く加熱することができる。
【0029】
別の好ましい態様としては、前記筒状空間内において前記軸芯体に巻き付くように誘導加熱コイルを配置して、該誘導加熱コイルに交流電流を通電することにより、前記押さえロールを加熱してもよい。この方法であっても、一対のロール間の熱可塑性樹脂を効率良く加熱することができる。また、薄肉金属外筒を磁性材料にし、芯体を導電性材料にすれば、薄肉金属外筒を直接的に、誘導加熱コイルで加熱することができる。
【0030】
また、熱可塑性樹脂を供給する場合には、溶融した熱可塑性樹脂を、シート状に連続して前記一対のロール間に供給することがより好ましい。溶融した熱可塑性樹脂をシート状にして、これを連続的に供給するので、熱可塑性樹脂を強化繊維基材に含浸することができる。
【0031】
このように、第1及び第2の発明いずれも、好適に熱可塑性樹脂を含浸できるのであれば、前記一対のロールの個数は特に限定さるものではない。しかしながらより好ましい態様としては、一対のロールが強化繊維基材の搬送方向に沿って複数配設されており、該複数の一対のロール間に、前記強化繊維基材を順次通過させて、前記強化繊維基材に前記熱可塑性樹脂を含浸させる。このようにして、ロール間において樹脂の含浸を、複数回行うことができるので、より確実に強化繊維基材に熱可塑性樹脂を含浸することができる。
【0032】
特に、第1の発明の場合には、前記複数の一対のロールとして、前記主ロールと前記押さえロールとの搬送方向に沿った配置が交互になるように、配設されたロールを用いて含浸を行えば、含浸時に強化繊維基材が一方向のみに曲げられることがないので、より均質な繊維強化樹脂シートを得ることができる。
【0033】
また、第1の発明の別の態様としては、前記押さえロールが、前記主ロールの周りに複数配置されており、前記強化繊維基材を前記主ロールに巻き付けながら、前記主ロールと各押さえロールとの間に前記強化繊維基材を順次通過させて、前記強化繊維基材に前記熱可塑性樹脂を含浸させることが好ましい。これにより、1つの主ロールを用いてロール間において樹脂の含浸を、複数回行うことができるので、装置のコンパクト化を図ることができる。
【0034】
また、好ましい態様としては、第1及び第2の発明いずれの場合も、一対のロールの表面に、前記熱可塑性樹脂の樹脂に対して離型可能な離型材を配置しながら、前記強化繊維基材に前記熱可塑性樹脂を含浸させる。離型材を用いることにより、溶融して軟化した熱可塑性樹脂がロール表面に付着することなく、繊維強化樹脂シートを製造することができる。
【0035】
本願では、本発明として、上述した第1及び第2の発明に係る製造方法を好適に実施するための製造装置をも開示する。本発明に係る繊維強化樹脂シートの製造装置は、シート状の強化繊維基材と、熱可塑性樹脂とを、一対のロール間に導入し、該一対のロールを回転させながら前記強化繊維基材に溶融した前記熱可塑性樹脂が含浸されることにより、繊維強化樹脂シートを製造する装置であり、該製造装置は、前記一対のロール間に導入される前記強化繊維基材を供給する強化繊維供給部と、前記一対のロール間に導入される前記熱可塑性樹脂を供給する樹脂供給部と、前記一対のロール同士を押圧する押圧部と、を備える装置構成を前提とし、さらに以下の特徴構成を備えている。
【0036】
すなわち、第1の発明に係る製造方法に対応する製造装置(以下、第1の装置発明という)の前記一対のロールが、金属製の主ロールと金属製の押さえロールとからなり、第1の発明に係る製造装置の押さえロールは、前記押圧部の押圧力により、前記押さえロールの周面が前記主ロールの周面形状に倣って変形するように構成されていることを特徴とする。一方、第2の発明に係る製造方法に対応する製造装置(以下、第2の装置発明という)の一対のロールが、金属製のロールであり、前記押圧部の押圧力により、前記双方のロールの対向する周面が平面状に変形するように構成されていることを特徴とする。
【0037】
第1及び第2の装置発明のいずれの場合であっても、一対のロールを回転させながら、ロール間において、熱可塑性樹脂と強化繊維基材とに面圧を作用させ、繊維間の空気を脱気しながら、これまでよりも高温に溶融した熱可塑性樹脂を強化繊維基材に、均一かつ安定的に含浸することができる。
【0038】
これらの発明のより好ましい態様としては、前記製造装置は、前記一対のロールを加熱する加熱部を備えており、前記樹脂供給部は、前記一対のロールの少なくとも一方のロールの周面のうち、前記一対のロールの回転により、前記熱可塑性樹脂が前記一対のロール間に搬送可能な周面に向って、前記熱可塑性樹脂を供給するように配置されている。
【0039】
この態様によれば、熱可塑性樹脂は、加熱された少なくとも一方のロールの周面に向って周面に供給され、ロール間に搬送されるまでの間、このロール周面においてロールからの発熱した熱を受熱し、これを強化繊維基材に含浸することができる。
【0040】
また、前記一対のロールの配置は、ロール表面に熱可塑性樹脂を供給し、強化繊維基材と共にロール間に供給することができるのであれば、特に限定されるものではない。しかしながら、より好ましい態様は、前記一対のロールは、水平方向に並んで配置されており、前記熱可塑性樹脂が供給される周面は、ロール上側の周面である。この態様によれば、上述したように、ロール周面に供給された熱可塑性樹脂をロール表面でより効率的に加熱して、これをロール間に導入することができる。
【0041】
さらに、より好ましい態様としては、前記強化繊維基材を、前記一対のロールのいずれか一方のロールに巻き付けて、該ロールに巻き付いた強化繊維基材の表面に、前記熱可塑性樹脂を供給する。
【0042】
この態様によれば、ロールに巻き付いた強化繊維樹脂基材は、ロールの熱により加熱され、この強化繊維基材に加熱されている熱可塑性樹脂を供給するので、より効率的に、加熱されたロールの熱を利用して、予熱した基材及び樹脂の双方をロール間に供給することができる。
【0043】
また、第1の装置発明に係る押さえロールは、前記押圧部の押圧力により前記主ロールの周面形状に倣って変形する薄肉金属外筒と、該薄肉金属外筒の内部において筒状空間が形成されるように、前記薄肉金属外筒に内挿された軸芯体と、を少なくとも備えることが好ましい。一方、第2の装置発明に係る一対のロールの双方は、前記押圧部の押圧力により前記主ロールの平面状に倣って変形する薄肉金属外筒と、該薄肉金属外筒の内部において筒状空間が形成されるように、前記薄肉金属外筒に内挿された軸芯体と、を少なくとも備えていることが好ましい。これにより、ロール内部に形成された筒状空間を利用して、これらロールそのものを好適に加熱することができる。
【0044】
第1の発明の場合には押さえロールを、第2の発明の場合には一対のロールの双方を加熱する加熱部は、前記筒状空間内に加熱された媒体を供給することが好ましく、別の態様としては、加熱部は、筒状空間内において前記軸芯体に巻きつけた誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルに交流電流を通電する電源と、を少なくとも備えることが好ましい。後者の場合には、薄肉金属外筒を磁性材料にし、芯体を導電性材料にすれば、薄肉金属外筒を直接的に、誘導加熱コイルで加熱することができるのでより好ましい。
【0045】
また、好ましい態様としては、第1及び第2の装置発明に係る前記樹脂供給部は、前記熱可塑性樹脂として、溶融した熱可塑性樹脂をシート状に連続して供給するように構成されており、例えば、押し出し成形機の樹脂吐出部分に、スリット孔を有したダイ、複数の孔が等間隔に一列に形成されたダイ等を用いることにより実現可能である。
【0046】
第1及び第2の装置発明のより好ましい態様は、一対のロールが強化繊維基材の搬送方向に沿って複数配設されている。これにより、該複数の一対のロール間に、前記強化繊維基材を順次通過させることができるので、強化繊維基材への前記熱可塑性樹脂の含浸工程を、複数回継続して行うことができる。
【0047】
特に、第1の発明の場合、前記複数の一対のロールは、前記主ロールと前記押さえロールとの搬送方向に沿った配置が交互になるように、配設されていることが好ましく、これにより均質な繊維強化樹脂シートを得ることができる。
【0048】
このように前記複数の一対のロールを用いた場合、より好ましい態様としては、ロールの回転方向が同じ複数のロールを連結するように、ロール周面に、前記熱可塑性樹脂の樹脂に対して離型可能なベルト材が巻き付けられている。ベルト材を用いることにより、溶融して軟化した熱可塑性樹脂がロール表面に付着することなく、繊維強化樹脂シートを連続的に製造することができる。
【0049】
さらに第1の発明の場合、別の好ましい態様として、押さえロールが、主ロールの周りに複数配置されており、これによりコンパクトな装置構成で均質な繊維強化樹脂シートを得ることができる。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、熱可塑性樹脂を強化繊維基材に良好に含浸することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】第1の発明の第1実施形態に係る繊維強化樹脂シートの製造装置の模式的概念図。
【図2】図1に示す繊維強化樹脂シート製造装置の樹脂含浸部の模式的斜視図。
【図3】図1に示す繊維強化樹脂シート製造装置の一対のロール同士の押圧状態を説明するための模式的概念図であり、(a)は、押圧部により押圧する前の状態、(b)押圧部により押圧した状態を説明するための図。
【図4】図2に示す一対のロールの回転軸を含む、水平方向における模式的断面図。
【図5】図1に示す第1実施形態の変形例に係る繊維強化樹脂シートの製造装置の樹脂含浸部を示した模式的断面図。
【図6】図1に示す第1実施形態の別の変形例に係る繊維強化樹脂シートの製造装置の樹脂含浸部を示した模式的断面図。
【図7】第1の発明の第2実施形態に係る押さえロールの模式的斜視図。
【図8】第1の発明の第3施形態に係る繊維強化樹脂シートの製造装置の樹脂含浸部を示した模式的断面図。
【図9】図8に示す第3実施形態の変形例に係る繊維強化樹脂シートの製造装置の樹脂含浸部を示した模式的断面図。
【図10】図8に示す第3実施形態の別の変形例に係る繊維強化樹脂シートの製造装置の樹脂含浸部を示した模式的断面図。
【図11】第1の発明の第4実施形態に係る繊維強化樹脂シートの製造装置の樹脂含浸部を示した模式的断面図。
【図12】図11に示す第4実施形態の変形例に係る繊維強化樹脂シートの製造装置の樹脂含浸部を示した模式的断面図。
【図13】図11に示す第4実施形態の別の変形例に係る繊維強化樹脂シートの製造装置の樹脂含浸部を示した模式的断面図。
【図14】第2の発明の実施形態に係る繊維強化樹脂シートの製造装置の樹脂含浸部を示した模式的断面図。
【図15】図14の一対のロールの回転軸を含む、水平方向における模式的断面図。
【図16】図14に示す実施形態の変形例に係る繊維強化樹脂シートの製造装置の樹脂含浸部を示した模式的断面図。
【図17】図14に示す実施形態の別の変形例に係る繊維強化樹脂シートの製造装置の樹脂含浸部を示した模式的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下に、図面に基づき、本発明に係る繊維強化樹脂シートの製造方法を好適に実施することができるいくつかの実施形態を説明する。
【0053】
図1は、第1の発明の第1実施形態に係る繊維強化樹脂シートの製造装置の模式的概念図であり、図2は、図1に示す繊維強化樹脂シート製造装置の樹脂含浸部の模式的斜視図である。図3は、図1に示す繊維強化樹脂シート製造装置の一対のロール同士の押圧状態を説明するための模式的概念図であり、(a)は、押圧部により押圧する前の状態、(b)押圧部により押圧した状態を説明するための図である。また、図4は、図2に示す一対のロールの回転軸を含む、水平方向における模式的断面図である。
【0054】
本実施形態に係る繊維強化樹脂シート製造装置1は、繊維強化樹脂シートを製造するための装置である。該製造装置1は、シート状の強化繊維基材Fと、熱可塑性樹脂Pとを、後述する一対のロール間10,20に導入し、一対のロールを回転させながら強化繊維基材Fに熱可塑性樹脂Pが含浸されることにより、繊維強化樹脂シートSを製造することを目的とした装置である。
【0055】
図1に示すように、本実施形態に係る製造装置1は、後述する樹脂含浸部4の一対のロール間に導入される強化繊維基材Fを供給する強化繊維供給部2と、一対のロール間に導入される熱可塑性樹脂Pを供給する樹脂供給部3と、を備えている。
【0056】
強化繊維供給部2は、シート状に連続繊維が一方向に引き揃えられた強化繊維基材Fを供給するものであり、供給前の強化繊維基材Fは、コイル状に巻き付けられた巻体2aとされている。強化繊維供給部2には、この巻体2aから巻き解かれたシート状の強化繊維基材Fが、後述するロール10、20間に導入可能なように、搬送ロール2b,2cが配置されている。
【0057】
一方、樹脂供給部3は、本実施形態では、その一例として、熱可塑性樹脂ペレットPaを軟化点以上に溶融して、樹脂吐出口であるダイ(ノズル)3aを介してシート状の溶融した熱可塑性樹脂Pを連続して成形する2軸押し出し成形装置である。ダイ3aは、一対のロール10,20の上方に配置されており、ダイ3aには、幅方向に沿って複数の孔が等間隔に形成され、この複数の孔を介して溶融した熱可塑性樹脂が押し出されることにより、シート状に連続して押し出される。
【0058】
そして、樹脂供給部3のダイ3aは、図3(a)に示すように、後述する押さえロール20の周面21のうち、一対のロールの回転により、周面にある熱可塑性樹脂が、一対のロール10、20の間に搬送可能な周面に向って、熱可塑性樹脂Pを供給するように配置されている。熱可塑性樹脂Pの供給されるこの周面は、押さえロール20の周面から発熱する熱により、供給された熱可塑性樹脂Pを、ロール間に導入される前の搬送中において、予め加熱することができる位置における周面である。したがって、本実施形態では、後述するように、一対のロール10,20が水平方向に並んで配置されているので、熱可塑性樹脂Pを供給する周面は、押さえロール20の周面21のうち上側の周面21aとしている。
【0059】
このようにして供給され、押さえロール20の周面21において巻き付くように搬送されながら加熱された熱可塑性樹脂Pを、樹脂含浸部4で含浸する。ここで、樹脂含浸部4は、図2及び3に示すように、熱可塑性樹脂Pを強化繊維基材Fの含浸するための一対のロール10,20を備えている。具体的には、一対のロール10,20は、主ロール10と押さえロール20とからなり、これらのロールは水平方向に並んで配置されている。
【0060】
図4に示すように、主ロール10は、押さえロール20に比べてより高い剛性を有した鋼又はアルミニウム等の金属製の剛体ロールであり、その一端側は、カップリング31を介してモータ30に接続されている。また、主ロール10には、その内部に円柱空間S1が形成されている。円柱空間S1には、加熱部40から、シャフト13に形成された媒体導入口13aを介して、加熱された媒体(例えば水など)Mが導入され、主ロール10の内部を通過して排出された媒体Mが循環するように、加熱部40に接続されている。これにより、主ロール10の周面11を加熱することができる。
【0061】
押さえロール20は、主ロール10を押さえるロールであって、一対のロール同士、すなわち主ロール10と押さえロール20とを押圧する押圧部50に連結されている。具体的には、押圧部50は、押さえロール20の両側のシャフト23に連結されたピストン51及びシリンダ52からなり、後述する押圧を行うことができるのであれば、押圧のための作動圧は、空圧または油圧のいずれであってもよい。
【0062】
このような押圧部50の押圧力により、押さえロール20は、押さえロール20の周面21が主ロール10の周面11の形状に倣って変形して、ロール間に供給物が無いときには、これらのロール同士が面圧着するように構成されている。本実施形態の場合には、押さえロール20は、具体的には、押圧部50の押圧力により主ロール10の周面11の形状に倣って変形する薄肉金属外筒24と、薄肉金属外筒24の内部において筒状空間S2が形成されるように、薄肉金属外筒24に内挿された軸芯体27と、を少なくとも備えている。このようにして、主ロール10が押さえロール20よりも、ロール表面において高い剛性を有し、押さえロール20が主ロール10よりも、ロール表面において高い可撓性を有することになる。
【0063】
また、薄肉金属外筒24は、両側がテーパ状となった鋼またはアルミニウムなどの金属製の薄肉円筒であり、両側にはフランジ28が取り付けられて、これらは固着されている。また、フランジ28は、ベアリング29を介して、軸芯体27の両端部に形成されたシャフト23に支承されている。
【0064】
このような構造により、押さえロール20(具体的には、薄肉金属外筒24)は、押圧時に主ロール10に連結されたモータ30の回転によって、主ロール10と共に回転する。しかしながら、ベアリング29を用いずに、シャフト23と共に押さえロール20が主ロール10と同調して回転するように別のモータに連結されていてもよい。
【0065】
ここで、押さえロール20は、主ロール10と対向して変形する胴部のロール径rが、200〜500mm、ロールの有効幅(主ロール10と接触することができる幅)Lが、500mm〜1600mm程度で構成される。主ロール10も略同等である。
【0066】
また、薄肉金属外筒24の肉厚をt、ロール半径をrとしたとき、t/r≦0.03の関係を満たしていることが好ましく、この比率が小さいほど、薄肉金属外筒24の周面部分の可撓性が高まる。例えば、ロール径rを上述した200〜500mmとし、主ロール10のロール径も同等とした場合、図3(b)に示すロール間の接触幅は、2mm〜5mm程度となる。
【0067】
さらに、薄肉金属外筒24と軸芯体27との間において形成された筒状空間S2には、加熱部40から、シャフト23に形成された媒体導入口23aを介して、加熱された媒体M(例えば水など)が導入され、押さえロール20の内部を通過して排出された媒体が循環するように、加熱部40に接続されている。これにより、薄肉金属外筒24(押さえロール20)の周面21を加熱することができる。
【0068】
ここで、加熱部40は、ロール間を通過する熱可塑性樹脂Pの軟化点温度以上のロール表面温度になるように、内部で媒体Mを加熱し、加熱された媒体Mが、主ロール10及び押さえロール20の双方を加熱するように、ポンプ等の装置を用いてロール10,20に圧送されるようになっている。これにより、ロール10,20の間において、上側周面21に供給された熱可塑性樹脂Pが軟化し、この結果、熱可塑性樹脂Pが、強化繊維基材Fに含浸し易くなる。なお、ここでは、軸芯体27は、中実円柱であるが、例えば、既に述べた特許文献1に示すように、円筒状の軸芯体を用いて、シャフトの一方向側から媒体Mを循環させてもよい。
【0069】
さらに、樹脂含浸部4の一対のロール10,20のさらに下流には、複数の搬送ロールが配置されており(図1参照)、装置1は、樹脂含浸部4で得られた繊維強化樹脂シートをさらに巻き取るための巻き取り部5が配置されている。
【0070】
このように構成された製造装置を用いた繊維強化樹脂シートの製造方法を、以下に説明する。まず、強化繊維基材Fとして、連続繊維が一方向に引き揃え、コイル状に巻かれた強化繊維基材を準備する。ここでは、強化繊維基材として、一方向に引き揃えられた基材を用いたが、例えば、シート状の強化繊維基材にすることができるのであれば、引き揃えられていない長繊維、または織布、不織布等の布状繊維であってもよい。織布である場合には、その織り方としては、平織、綾織、朱子織などの織組織いずれであってもよく、シート状であり連続して搬送しながら、後述するロール間において熱可塑性樹脂Pを含浸することができるのであれば、特にその繊維の状態は限定されるものではない。
【0071】
強化繊維は、繊維強化樹脂シートの機械的強度を強化するための樹脂強化用の繊維であり、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、天然繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、スチール繊維、PBO繊維、又は高強度ポリエチレン繊維などの繊維が挙げることができる。
【0072】
一方、熱可塑性樹脂ペレットPaを、樹脂供給部3に導入し、溶融したシート状の熱可塑性樹脂Pを、ダイ3aから吐出する。このような熱可塑性樹脂としては、結晶性熱可塑性樹脂や非結晶性熱可塑性樹脂を使用でき、例えば、ナイロン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、またはABS系樹脂などを挙げることができ、これらよりも、より融点の高い(軟化点の高い)熱可塑性樹脂であってもよい。
【0073】
そして、シート状の強化繊維基材Fと、溶融したシート状の熱可塑性樹脂Pとを、一対のロール間10,20に導入し、モータ30の駆動力により、一対のロール10,20を回転させながら強化繊維基材Fに熱可塑性樹脂Pを含浸することにより、繊維強化樹脂シートを製造する。
【0074】
具体的には、主ロール10に対して押さえロール20を押圧することにより、押さえロール20の周面21が主ロール10の周面11の形状に倣うように押さえロール20の周面21を変形させる(図3(b)参照)。
【0075】
この状態で図4に示すように、加熱ロール40により、円柱空間S1と筒状空間S2に加熱された媒体Mを供給して、主ロール10と押さえロール20を加熱する。そして、押さえロール20の周面に向って熱可塑性樹脂Pを供給することにより、熱可塑性樹脂Pを加熱する。加熱された熱可塑性樹脂Pを一対のロール10,20の回転により、一対のロール10,20間に向って搬送しながら、これらのロール10,20との間において、熱可塑性樹脂Pを加熱し、熱可塑性樹脂Pを前記強化繊維基材Fに含浸させる。
【0076】
このようにして、主ロール10に対して押さえロール20を押圧することにより、押さえロール20の周面21が主ロール10の周面11の形状に倣うように押さえロール20の周面21を変形させるので、熱可塑性樹脂Pと強化繊維基材Fとに面圧を作用させることができる。強化繊維基材Fに作用する圧力は、これまでの単なる剛体の金属ロールを用いた場合に作用する線圧とは異なり面圧となるので、強化繊維基材Fに過度の応力を作用させる必要がない。
【0077】
そして、熱可塑性樹脂Pは、その自重により、加熱された押さえロール10の上側周面21aに供給され、ロール10,20間に搬送されるまで(押さえロール20が略4分の1回転するまで)の間、上側周面21aにおいてロール10からの発熱した熱を受熱する。ここで、供給する熱可塑性樹脂Pは、予め溶融するまで加熱されているので、ロールの熱により、ロール間に到達するまでの間、熱可塑性樹脂の温度低下を抑制することができ、これにより、樹脂の粘度上昇が抑制される。
【0078】
このように、押さえロール20の熱を利用して、ロール間において、溶融した熱可塑性樹脂Pを強化繊維基材Fに均一かつ安定的に含浸することができる。また、一対のロール10,20を回転させながら面圧を作用させることにより、これまでのものに比べて含浸時間をより長く保持することができると共に、含浸時に強化繊維基材Fの繊維間の空気を好適に脱気することができ、さらには、幅方向に段状の筋のない均一な厚みの繊維強化樹脂シートを得ることができる。
【0079】
さらに、一対のロール10,20は金属製のロールであるので、これまでのゴムロールに比べて熱可塑性樹脂Pをより高い温度にまで加熱することができる。この結果、金属ロールとゴムロールを用いた場合に比べて、熱可塑性樹脂Pをより低い粘度にして、これを加圧して強化繊維基材Fに含浸することができる。このようにして、熱可塑性樹脂Pの中でも、含浸温度(成形温度)が高く、溶融粘度が高い熱可塑性樹脂に対しても繊維強化樹脂シートSを製造することが可能となる。
【0080】
そして、このようにして得られた繊維強化樹脂シートSを、搬送ロールを通過させて、巻き取り部5でこれをコイル状に巻き取る。なお、本実施形態では、直接、押さえロール20の上側周面21aに熱可塑性樹脂Pを供給したが、主ロール10の上側周面に熱可塑性樹脂を供給してもよく、これらの両者の上側周面に熱可塑性樹脂Pを供給してもよい。
【0081】
図5及び図6は、図1に示す第1実施形態の変形例に係る繊維強化樹脂シートの製造装置の樹脂含浸部を示した模式的断面図である。図5に示す変形例は、繊維強化基材の巻き付け状態と、ダイの位置が相違し、図6に示す変形例は、ダイの位置が相違し、他の構成は、図1〜4に示す装置構成と同じである。従って、この相違点を以下に説明する。
【0082】
図5に示すように、強化繊維供給部2は、強化繊維基材Fが、主ロール10の半周の周面に巻き付くように、主ロール10の上流側において搬送ロール(不図示)を配置している。さらに、樹脂供給部3のダイ3bは、主ロール10の上側周面11aに向って、溶融したシート状の樹脂が供給できるように、配置されている。従って、強化繊維基材Fが、主ロール10に巻き付いているときは、樹脂供給部3のダイ3bは、強化繊維基材Fの表面に、熱可塑性樹脂Pが供給されるように配置されている。
【0083】
このようにして、主ロール10に巻き付けて、主ロール10との強化繊維基材Fの接触面積を増やすことができるので、強化繊維基材Fは主ロール10の熱によりさらに効率よく加熱される。さらにこの加熱されている強化繊維基材Fに熱可塑性樹脂Pを供給するので、より効率的に、加熱されたロールの熱を利用して、予熱された強化繊維基材Fに熱可塑性樹脂Pをロール10,20の間に供給することができる。
【0084】
また、図6に示すように、樹脂供給部3のダイ3cは、主ロール10と押さえロール20とが接触する部分に向って、溶融したシート状の樹脂が供給できるように、配置されていてもよい。この変形例の場合、より温度の高いシート状樹脂がロール間に供給されるように、ダイ3cをロール間により近づけることが好ましい。
【0085】
図7は、第1の発明の第2実施形態に係る押さえロールの模式的斜視図である。第2実施形態は、第1実施形態に比べて、押さえロールを加熱する構造が異なり、他の部分は同じである。従って、第1実施形態の同じ構成の部材には、同じ符号を付して、以下にこの点の詳細を説明する。
【0086】
図7に示すように、第2実施形態に係る押さえロール20Aの筒状空間S2内には、誘導加熱コイル41が配置されており、その他の構造は同じである。そして、押さえロール20Aを加熱する加熱部40Aは、この誘導加熱コイル41が、筒状空間S2内において、導電性材料からなる軸芯体27に巻きつけられており、誘導加熱コイルの両端には交流電流Iを通電する電源42が接続されている。また、第1実施形態と同様に、軸芯体27は、その両端部の外周で、ベアリングを介して回転自在に薄肉金属外筒24を支持しており、この薄肉金属外筒24は、鉄製の磁性材料からなる。
【0087】
このようにして、誘導加熱コイル41に交流電流を通電することにより、誘導加熱の原理により押さえロールの薄肉金属外筒24を直接的に加熱することができる。また、押さえ時に、薄肉金属外筒24の変形により、薄肉金属外筒24と誘導加熱コイル41との距離が近づくので、この変形部分(すなわち、ロール間の熱可塑性樹脂)が、他の部分に比べてより効率良く加熱される。これにより、より効果的に、熱可塑性樹脂の粘度を下げ、強化繊維基材Fに熱可塑性樹脂Pを含浸することができる。
【0088】
図8は、第1の発明の第3実施形態に係る繊維強化樹脂シートの製造装置の樹脂含浸部を示した模式的断面図である。図9及び図10は、図8に示す第3実施形態の変形例に係る繊維強化樹脂シートの製造装置の樹脂含浸部を示した模式的断面図である。これら第3実施形態が、第1実施形態と相違する点は、一対のロールの個数とその配置状態、及び離型ベルトを用いた点であり、他の構成は、第1実施形態と同じである。従って、第1実施形態の同じ構成の部材には、同じ符号を付して、以下にこの点の詳細を説明する。
【0089】
図8〜図10に示すように、主ロール10と押さえロール20とを対としたロールが強化繊維基材Fの搬送方向に沿って2つ配設されている。また、同一方向に回転する主ロール10と押さえロール20とが、搬送方向に沿って、交互に配置されている。また、複数の一対のロール間には、熱可塑性樹脂を加熱するためのヒータ45が配置されている。
【0090】
さらに、これらのロールのうちロールの回転方向が同じ複数のロールを連結するように、ロール周面には、熱可塑性樹脂Pの樹脂に対して離型可能な離型ベルト61が巻き付けられている。この離型ベルト61は、樹脂含浸時に、強化繊維基材Fと共に、同一回転方向のロール間を移動するように、適切な張力でロールに巻きつけられている。
【0091】
なお、この離型ベルト61は、ポリイミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂ベルトや、紙等のシートの上に、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、或いは、ワックス等の離型材を添加した樹脂等で離型層を積層してベルトとしたもの、或いは、ポリオレフィン系樹脂等のベルトを挙げることができる。
【0092】
なお、図8に示す装置のダイ3aは、図1に示す装置と同じように押さえロール20の上側周面に熱可塑性樹脂Pを供給するように配置されており、変形例である図9に示す装置は、図5に示す装置と同じように、樹脂供給部3のダイ3bが、主ロール10の上側周面11aに向って、主ロール10に巻き付いた強化繊維基材Fに、熱可塑性樹脂Pが供給されるように配置されている。さらに、別の変形例である図10に示す装置は、図6に示す装置と同じように、樹脂供給部3のダイ3cが、主ロール10と押さえロール20とが接触する部分に向って、溶融したシート状の樹脂が供給できるように、配置されている。
【0093】
このような状態で、熱可塑性樹脂Pを主ロール10または押さえロール20のいずれか一方で予め加熱して、加熱した熱可塑性樹脂Pを複数の一対のロール間に、強化繊維基材Fを順次通過させて、強化繊維基材Fに熱可塑性樹脂Pを含浸させる。これにより、ロール間において強化繊維基材Fと熱可塑性樹脂Pとからなるシート材を複数回加圧及び加熱することができるので、より確実に強化繊維基材Fに熱可塑性樹脂Pを含浸することができる。
【0094】
また、ヒータ45により、上流側の一対のロールにより含浸された熱可塑性樹脂を加熱することができるので、下流側の一対のロールに導入される前の熱可塑性樹脂Pの粘度が上昇することを抑制することができる。さらに、主ロール10と押さえロール20との搬送方向に沿った配置が交互になっているので、含浸時に強化繊維基材が一方向のみに曲げられることなく、より均質な繊維強化樹脂シートSを得ることができる。
【0095】
図11は、本発明の第4実施形態に係る繊維強化樹脂シートの製造装置の樹脂含浸部を示した模式的断面図であり、図12及び図13は、図11に示す第4実施形態の変形例に係る繊維強化樹脂シートの製造装置の樹脂含浸部を示した模式的断面図である。これら第4実施形態が、第1実施形態と相違する点は、押さえロールの個数と、含浸時に離型シートを用いた点であり、他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0096】
図11〜図13に示すように、第4実施形態に係る繊維強化樹脂シートの製造装置において、主ロール10を水平方向から挟むように、2つの押さえロール20,20が、主ロールの回りに配置されており、これらの押さえロール20,20のいずれにも、第1実施形態と同様に押圧部50が連結されている。また、押さえロール20,20を加熱する方法も、第1又は第2実施形態と同様である。
【0097】
なお、図11に示す装置のダイ3aは、図1に示す装置と同じように押さえロール20の上側周面に熱可塑性樹脂Pを供給するように配置されており、変形例である図12に示す装置では、図5に示す装置と同じように、樹脂供給部3のダイ3bが、主ロール10の上側周面11aに向って、主ロール10に巻き付いた強化繊維基材Fに、熱可塑性樹脂Pが供給されるように配置されている。さらに、別の変形例である図13に示す装置は、図6に示す装置と同じように、樹脂供給部3のダイ3cが、主ロール10と押さえロール20とが接触する部分に向って、溶融したシート状の樹脂が供給できるように、配置されている。
【0098】
熱可塑性樹脂Pの含浸時には、予めロールの熱により加熱された熱可塑性樹脂Pと強化繊維基材Fとを、離型シート(離型材)62でロール間において挟み込むように、離型シート62を導入する。これにより、各ロール10,20の周面11,21に離型シート62が配置される。なお、この離型シート62の材質は、第3実施形態の離型ベルトの材質と同じである。
【0099】
さらに、強化繊維基材Fを主ロール10に巻き付けながら、主ロール10と各押さえロール20,20との間に強化繊維基材Fを順次通過させて、前記強化繊維基材に前記熱可塑性樹脂を含浸させる。これにより、1つの主ロール10を用いてロール間において熱可塑性樹脂Pの含浸を複数回行うことができるので、第3実施形態に比べて、装置のコンパクト化を図ることができる。
【0100】
なお、本実施形態では、主ロール10の周りに配置する押さえロール20の個数は、限定されるものではなく、含浸条件に応じて、これらの押さえロール20に作用させる押圧力、加熱温度を調整してもよい。
【0101】
図14は、第2の発明の実施形態に係る繊維強化樹脂シートの製造装置の樹脂含浸部を示した模式的断面図であり、図15は、図14の一対のロールの回転軸を含む、水平方向における模式的断面図である。図16及び図17は、図14に示す実施形態の変形例に係る繊維強化樹脂シートの製造装置の樹脂含浸部を示した模式的断面図である。
【0102】
また、本実施形態は、図1の第1の発明の第1実施形態の主ロール10の代わりに、押さえロールを用いた点が相違する。従って、その他の構成は、第1実施形態と同じであり、図14〜17のうち第1実施形態の同じ機能を有する部材には、同じ符号を付して、以下にこの点の詳細を説明する。
【0103】
図14〜17に示すように、本実施形態に係る一対のロール20A,20Bは、第1実施形態に係る押さえロール20と同じ構造の金属製のロールである。各ロール20A,20Bは、押圧部50の押圧力により、双方のロール20A,20Bの対向する周面が平面状に変形して、ロール間に供給物が無いときには面圧着するように構成されている。すなわち、ここでは、一方のロール20A(20B)の薄肉金属外筒24が、押圧部50の押圧力により、他方のロール20B(20A)の周面に対して平面状に変形することになる。
【0104】
なお、図14に示す樹脂供給部のダイ3aは、押さえロール20Aの上側周面に熱可塑性樹脂Pを供給するように配置されており、変形例である図16に示す装置では、樹脂供給部3のダイ3bは、押さえロール20Bの上側周面に向って、押さえロール20Bに巻き付いた強化繊維基材Fに、熱可塑性樹脂Pが供給されるように配置されている。さらに、別の変形例である図17に示す装置は、樹脂供給部3のダイ3cを、押さえロール20A,20B同士が接触する部分に向って、溶融したシート状の樹脂が供給できるように、配置している。
【0105】
このようにして、一対のロール20A,20B同士を押圧することにより、双方のロールの対向する周面21を平面状に変形させるので、同様に、熱可塑性樹脂Pと強化繊維基材Fとに面圧を作用させることができる。これにより、均一かつ安定的に熱可塑性樹脂Pを強化繊維基材Fに含浸することができ、さらには、含浸時に強化繊維基材Fの繊維間の空気を好適に脱気することができる。
【0106】
また、双方のロール20A,20Bの対向する周面21を平面状に変形させながら、熱可塑性樹脂Pを前記強化繊維基材Fに含浸するので、熱可塑性樹脂Pと強化繊維基材Fとの両面に均一な応力を作用させることができる。均一の厚みの均質な繊維強化樹脂シートSを得ることができる。
【0107】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【0108】
例えば、図14〜図17に示す実施形態では、一組の一対のロールを用いたが、第1の発明の第3実施形態の如く、これらが複数配置されてもよく、第1の発明の第4実施形態の如く、1つのロールの周りに、同じ構造のロールを複数配置されてもよい。また、これらのロールを、第1の発明の第2実施形態の如く、誘導加熱を利用して加熱してもよい。
【0109】
また、これら実施形態にかかるダイと、ダイから熱可塑性樹脂が供給されるロールとの距離を、図示よりもさらに接近させてもよい。これにより、溶融した熱可塑性樹脂の温度低下を抑え、ロールの熱により効果的に樹脂を加熱することができる。
【符号の説明】
【0110】
1:繊維強化樹脂シート製造装置、2:強化繊維供給部、2a:巻体、2b,2c:搬送ロール、3:樹脂供給部、3a,3b,3c:ダイ(ノズル)、4:樹脂含浸部、5:巻き取り部、10:主ロール、11:周面、11a:上側周面、20:押さえロール、20A,20B:一対のロール、21周面、21a,21b:上側周面、23:シャフト、24:薄肉金属外筒、27:軸芯体、28:フランジ、29:ベアリング、30:モータ、31:カップリング、40,40A:加熱部、41:誘導加熱コイル、42:電源、50:押圧部、51:ピストン、52:シリンダ、61:離型ベルト、62:離型シート、F:強化繊維基材、M:媒体、P:熱可塑性樹脂、Pa:熱可塑性樹脂ペレット、S:繊維強化樹脂シート、S1:円柱空間、S2:筒状空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の強化繊維基材と、熱可塑性樹脂とを、一対のロール間に導入し、該一対のロールを回転させながら前記強化繊維基材に溶融した前記熱可塑性樹脂が含浸されることにより、繊維強化樹脂シートを製造する方法であって、
前記一対のロールとして、金属製の主ロールと金属製の押さえロールとを用い、
前記主ロールに対して前記押さえロールを押圧することにより、前記押さえロールの周面が前記主ロールの周面形状に倣うように前記押さえロールの周面を変形させながら、前記熱可塑性樹脂を前記強化繊維基材に含浸させることを特徴とする繊維強化樹脂シートの製造方法。
【請求項2】
前記一対のロールを加熱し、
該加熱された少なくとも一方のロールの周面に向って前記熱可塑性樹脂を供給することにより、前記熱可塑性樹脂を加熱し、
該加熱された熱可塑性樹脂を、前記一対のロールの回転により、前記一対のロール間に向って搬送しながら、前記熱可塑性樹脂の含浸を行うことを特徴とする請求項1に記載の繊維強化樹脂シートの製造方法。
【請求項3】
前記強化繊維基材を、前記一対のロールのいずれか一方のロールに巻き付けて、該ロールに巻き付いた強化繊維基材の表面に、前記熱可塑性樹脂を供給することを特徴とする請求項2に記載の繊維強化樹脂シートの製造方法。
【請求項4】
前記押さえロールとして、前記押圧により前記主ロールの周面形状に倣って変形する薄肉金属外筒と、該薄肉金属外筒の内部において筒状空間が形成されるように、前記薄肉金属外筒に内挿された軸芯体と、を少なくとも備えたロールを用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化樹脂シートの製造方法。
【請求項5】
前記筒状空間内において前記軸芯体に巻き付くように誘導加熱コイルを配置して、該誘導加熱コイルに交流電流を通電することにより、前記押さえロールを加熱することを特徴とする請求項4に記載の繊維強化樹脂シートの製造方法。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂として、溶融した熱可塑性樹脂を、シート状に連続して供給することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂シートの製造方法。
【請求項7】
前記一対のロールは、前記主ロールと前記押さえロールとの搬送方向に沿った配置が交互になるように、前記強化繊維基材の搬送方向に沿って複数配設されており、該複数の一対のロール間に、前記強化繊維基材を順次通過させて、前記強化繊維基材に前記熱可塑性樹脂を含浸させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂シートの製造方法。
【請求項8】
前記押さえロールは、前記主ロールの周りに複数配置されており、前記強化繊維基材を前記主ロールに巻き付けながら、前記主ロールと各押さえロールとの間に前記強化繊維基材を順次通過させて、前記強化繊維基材に前記熱可塑性樹脂を含浸させることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂シートの製造方法。
【請求項9】
シート状の強化繊維基材と、熱可塑性樹脂とを、一対のロール間に導入することにより、該一対のロールを回転させながら前記強化繊維基材に熱可塑性樹脂が含浸されることにより、繊維強化樹脂シートを製造する方法であって、
前記一対のロールとして、金属製のロールを用い、
前記一対のロール同士を押圧することにより、双方のロールの対向する周面を平面状に変形させながら、前記熱可塑性樹脂を前記強化繊維基材に含浸させることを特徴とする繊維強化樹脂シートの製造方法。
【請求項10】
前記一対のロールを加熱し、
該加熱された一方のロールの周面に向って前記熱可塑性樹脂を供給することにより、前記熱可塑性樹脂を加熱し、
該加熱された熱可塑性樹脂を、前記一対のロールの回転により、前記一対のロール間に向って搬送しながら、前記熱可塑性樹脂の含浸を行うことを特徴とする請求項9に記載の繊維強化樹脂シートの製造方法。
【請求項11】
シート状の強化繊維基材と、熱可塑性樹脂とを、一対のロール間に導入し、該一対のロールを回転させながら前記強化繊維基材に溶融した前記熱可塑性樹脂が含浸されることにより、繊維強化樹脂シートを製造する装置であって、
該製造装置は、前記一対のロール間に導入される前記強化繊維基材を供給する強化繊維供給部と、前記一対のロール間に導入される前記熱可塑性樹脂を供給する樹脂供給部と、前記一対のロール同士を押圧する押圧部と、を備えており、
前記一対のロールは、金属製の主ロールと金属製の押さえロールとからなり、該押さえロールは、前記押圧部の押圧力により、前記押さえロールの周面が前記主ロールの周面形状に倣って変形するように構成されていることを特徴とする繊維強化樹脂シートの製造装置。
【請求項12】
前記製造装置は、前記一対のロールを加熱する加熱部を備えており、
前記樹脂供給部は、前記一対のロールの少なくとも一方のロールの周面のうち、前記一対のロールの回転により、前記熱可塑性樹脂が前記一対のロール間に搬送可能な周面に向って、前記熱可塑性樹脂を供給するように配置されていることを特徴とする請求項11に記載の繊維強化樹脂シートの製造装置。
【請求項13】
前記押さえロールは、前記押圧部の押圧力により前記主ロールの周面形状に倣って変形する薄肉金属外筒と、該薄肉金属外筒の内部において筒状空間が形成されるように、前記薄肉金属外筒に内挿された軸芯体と、を少なくとも備えることを特徴とする請求項11または12に記載の繊維強化樹脂シートの製造装置。
【請求項14】
前記押えロールを加熱する加熱部として、筒状空間内において前記軸芯体に巻きつけた誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルに交流電流を通電する電源と、を少なくとも備えることを特徴とする請求項13に記載の繊維強化樹脂シートの製造装置。
【請求項15】
前記一対のロールが、前記主ロールと前記押さえロールとの搬送方向に沿った配置が交互になるように、前記強化繊維基材の搬送方向に複数配設されていることを特徴とする請求項11〜14のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂シートの製造装置。
【請求項16】
前記押さえロールは、前記主ロールの周りに複数配置されていることを特徴とする請求項11〜14のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂シートの製造装置。
【請求項17】
シート状の強化繊維基材と、熱可塑性樹脂とを、一対のロール間に導入し、該一対のロールを回転させながら前記強化繊維基材に溶融した前記熱可塑性樹脂が含浸されることにより、繊維強化樹脂シートを製造する装置であって、
該製造装置は、前記一対のロール間に導入される前記強化繊維基材を供給する強化繊維供給部と、前記一対のロール間に導入される熱可塑性樹脂を供給する樹脂供給部と、前記一対のロール同士を押圧する押圧部と、を備えており、
前記一対のロールは、金属製のロールであり、前記押圧部の押圧力により、前記双方のロールの対向する周面が平面状に変形するように構成されていることを特徴とする繊維強化樹脂シートの製造装置。
【請求項18】
前記製造装置は、前記一対のロールを加熱する加熱部を備えており、
前記樹脂供給部は、前記一対のロールの少なくとも一方のロールの周面のうち、前記一対のロールの回転により、前記熱可塑性樹脂が前記一対のロール間に搬送可能な周面に向って、前記熱可塑性樹脂を供給するように配置されていることを特徴とする請求項17に記載の繊維強化樹脂シートの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−110935(P2012−110935A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262066(P2010−262066)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(592029256)福井県 (122)
【出願人】(300046658)株式会社ミツヤ (17)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】