説明

繊維強化樹脂成形品用樹脂組成物、樹脂含浸補強繊維材および繊維強化樹脂成形品

【課題】蓄光機能を有し、強度および残光輝度が高い繊維強化樹脂成形品、該繊維強化樹脂成形品を得るための繊維強化樹脂成形品用樹脂組成物および樹脂含浸補強繊維材を提供する。
【解決手段】ウレタンアクリレート樹脂(A)と、ビニルエステル樹脂および/または不飽和ポリエステル樹脂(B)と、共重合性単量体(C)と、有機過酸化物(D)と、蓄光顔料(E)とを含有し、(A)成分と(B)成分との比((A)/(B))が、4/6〜6/4(質量比)であり、(E)成分の含有量が、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、5〜30質量部である繊維強化樹脂成形品用樹脂組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂成形品用樹脂組成物、樹脂含浸補強繊維材および繊維強化樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄光顔料を含有する蓄光性樹脂成形品は、停電時、夜間等に非常口等へ誘導するための案内標識等として利用されている。蓄光性樹脂成形品の樹脂としては、硬質または軟質の熱可塑性樹脂が用いられている(たとえば、特許文献1等参照)。
【0003】
しかし、硬質の熱可塑性樹脂を用いた蓄光性樹脂成形品は、強度が低く、割れやすいため、該成形品の用途は制限される。軟質の熱可塑性樹脂を用いた蓄光性樹脂成形品は、透明性が低いため、残光輝度が低い。
【0004】
強度の高い成形品としては、繊維強化樹脂成形品が知られている。しかし、繊維強化樹脂成形品は、体積収縮を抑えるための充填材が多く含まれており、透明性が低いため、単に繊維強化樹脂成形品に蓄光顔料を添加しただけでは、残光輝度が低く、実用的ではない。そのため、表面に蓄光顔料を含む樹脂層を別途設けた繊維強化樹脂成形品が提案されている(特許文献2)。
【0005】
しかし、該繊維強化樹脂成形品は、表面の樹脂層のみに蓄光顔料を含有させているため、蓄光顔料の量に制限があり、残光輝度が低い。
なお、透明性の高い繊維強化樹脂成形品が、特許文献3に開示されている。しかし、特許文献3には、繊維強化樹脂成形品に蓄光顔料を含有させることについての記載はない。
【特許文献1】特開平11−080476号公報
【特許文献2】特開平08−258164号公報
【特許文献3】特開平11−106452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、蓄光機能を有し、強度および残光輝度が高い繊維強化樹脂成形品、該繊維強化樹脂成形品を得るための繊維強化樹脂成形品用樹脂組成物および樹脂含浸補強繊維材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の繊維強化樹脂成形品用樹脂組成物は、ウレタンアクリレート樹脂(A)と、ビニルエステル樹脂および/または不飽和ポリエステル樹脂(B)と、共重合性単量体(C)と、有機過酸化物(D)と、蓄光顔料(E)とを含有し、前記(A)成分と前記(B)成分との比((A)/(B))が、4/6〜6/4(質量比)であり、前記(E)成分の含有量が、前記(A)成分と前記(B)成分との合計100質量部に対して、1〜40質量部であることを特徴とする。
【0008】
本発明の樹脂含浸補強繊維材は、本発明の繊維強化樹脂成形品用樹脂組成物を、補強繊維材に含浸させたものである。
本発明の繊維強化樹脂成形品は、本発明の繊維強化樹脂成形品用樹脂組成物からなる硬化樹脂および補強繊維材を含むことを特徴とする。
本発明の繊維強化樹脂成形品は、本発明の繊維強化樹脂成形品用樹脂組成物からなる硬化樹脂および補強繊維材を含む層と、白色顔料を含む層とを有するものであってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の繊維強化樹脂成形品用樹脂組成物によれば、蓄光機能を有し、強度および残光輝度が高い繊維強化樹脂成形品を得ることができる。
本発明の樹脂含浸補強繊維材によれば、蓄光機能を有し、強度および残光輝度が高い繊維強化樹脂成形品を得ることができる。
本発明の繊維強化樹脂成形品は、蓄光機能を有し、強度および残光輝度が高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<繊維強化樹脂成形品用樹脂組成物>
本発明の繊維強化樹脂成形品用樹脂組成物は、ウレタンアクリレート樹脂(A)(以下、(A)成分と記す。)と、ビニルエステル樹脂および/または不飽和ポリエステル樹脂(B)(以下、(B)成分と記す。)と、共重合性単量体(C)(以下、(C)成分と記す。)と、有機過酸化物(D)(以下、(D)成分と記す。)と、蓄光顔料(E)(以下、(E)成分と記す。)とを含有する組成物である。
【0011】
((A)成分)
(A)成分は、ポリマー鎖中にウレタン結合を有し、ポリマー末端に(メタ)アクリロイル基を有する樹脂である。(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を意味する。
(A)成分は、一分子中にヒドロキシル基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a1)と、一分子中に2個以上のヒドロキシル基を有する化合物(a2)と、一分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物(a3)とを、公知の方法により反応させて合成できる。
【0012】
化合物(a1)としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリレートは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
【0013】
化合物(a2)としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラエチレングリコール、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとの共重合体等のポリアルキレングリコール;テトラヒドロフランとエチレンオキシドとの共重合体;ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ポリアルキレングリコール等のグリコール類と、アジピン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の飽和多塩基酸との縮合反応から得られるポリエステルポリオール等が挙げられ、弾性率を低くする点から、ポリアルキレングリコールが好ましい。
化合物(a2)の数平均分子量は、繊維強化樹脂成形品の耐クラック性がより良好となる点から、1000以上が好ましい。
【0014】
化合物(a3)としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0015】
((B)成分)
ビニルエステル樹脂は、一分子中に共重合性の不飽和基を2個以上有する樹脂であり、ビニルエステル樹脂またはエポキシアクリレート樹脂が挙げられる。
エポキシアクリレート樹脂は、たとえば、公知のエステル化触媒および重合禁止剤の存在下、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを90〜130℃の温度で反応させることにより合成できる。
【0016】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等の液状エポキシ樹脂;該エポキシ樹脂をビスフェノールAまたはビスフェノールFによって分子成長させた固形のエポキシ樹脂;水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0017】
不飽和ポリエステル樹脂は、グリコール類と、飽和多塩基酸と、不飽和二塩基酸との縮合反応によって得られる樹脂である。
グリコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。
【0018】
飽和多塩基酸としては、アジピン酸、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等が挙げられる。
不飽和二塩基酸としては、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0019】
(A)成分と(B)成分との比((A)/(B))は、4/6〜6/4(質量比)である。(A)/(B)を4/6以上とすることにより、繊維強化樹脂成形品に発生するクラックが抑えられ、透明性が良好となる。(A)/(B)を6/4以下とすることにより、繊維強化樹脂成形品の強度が充分高くなる。
【0020】
((C)成分)
(C)成分は、(A)成分および(B)成分と共重合し得る単量体である。
(C)成分としては、スチレン、クロロスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、アルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。(C)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
(C)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、10〜200質量部が好ましく、10〜100質量部がより好ましい。(C)成分の含有量を10質量部以上とすることにより、各成分の配合時の作業性および繊維強化樹脂成形品用樹脂組成物の取扱性がよくなる。(C)成分の含有量を200質量部以下とすることにより、繊維強化樹脂成形品の強度が良好となり、また、硬化樹脂と補強繊維材との密着性が良好となる。
【0022】
((D)成分)
(D)成分は、有機過酸化物である。
有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーベンゾエート、メチルエチルケトンパーオキシド、ジクミルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、パーオキシケタール等が挙げられる。有機過酸化物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
(D)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。(D)成分の含有量を0.01質量部以上とすることにより、硬化がスムーズに進む。(D)成分の含有量を10質量部以下とすることにより、硬化樹脂の分子量が充分高くなり、繊維強化樹脂成形品の強度が充分高くなる。
【0024】
((E)成分)
(E)成分は、光の照射後に暗所にて数時間以上発光する機能を有する顔料である。
(E)成分としては、MAl24:Eu,Dy、M4Al1425:Eu,Dy、MAl24:Eu,Nd、ZnS:Cu等が挙げられる。ただし、Mは、Sr、Ca、またはBaである。蓄光顔料としては、長期間安定して高い残光輝度が得られる点から、SrAl24:Eu,Dy(緑色発光)、Sr4Al1425:Eu,Dy(青緑色発光)、CaAl24:Eu,Nd(紫色発光)が好ましい。蓄光顔料の市販品としては、根本特殊化学社製の「N夜光(ルミノーバ)(登録商標)」シリーズ等が挙げられる。
【0025】
(E)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、1〜40質量部であり、10〜20質量部が好ましい。(E)成分の含有量を1質量部以上とすることにより、残光輝度が充分に高くなる。(E)成分の含有量を40質量部以下とすることにより、繊維強化樹脂成形品の強度が充分高くなる。
【0026】
(他の成分)
繊維強化樹脂成形品用樹脂組成物には、必要に応じて、促進剤、離型剤、充填材、着色剤等を添加してもよい。
促進剤は、有機過酸化物の分解を促進する成分であり、ナフテン酸コバルト等の有機金属塩が挙げられる。
離型剤としては、ステアリン酸亜鉛、燐酸エステル、フッ素系化合物等が挙げられる。
充填材としては、水酸化アルミニウム、ガラスバルーン、ガラスフレーク等が挙げられる。ただし、充填材の添加量は、本発明の効果を損なわない範囲とする必要がある。
【0027】
<樹脂含浸補強繊維材>
本発明の樹脂含浸補強繊維材は、本発明の繊維強化樹脂成形品用樹脂組成物を、補強繊維材に含浸させた中間基材である。
補強繊維材は、補強繊維からなる部材であり、形態としては、ロービング、ロービングクロス、コンテイニアスストランドマット、サーフェシングマット、チョップドストランドマット等が挙げられる。
【0028】
補強繊維としては、ガラス繊維;炭素繊維;金属繊維;アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、窒化ケイ素等のセラミック繊維;アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、ビニロン等の合成樹脂繊維等が挙げられる。これらのうち、透明性、強度、製造コスト、成形性等の点から、ガラス繊維が好ましい。
【0029】
ガラス繊維としては、連続繊維(長繊維)が好ましく、E−ガラス繊維等からなるヤーン、モノフィラメント、ロービングがより好ましく、フィラメント径6〜30μm(好ましくは11〜27μm)、ストランド番手1000〜5000texのガラスロービングが特に好ましい。
【0030】
補強繊維材の含有率は、樹脂含浸補強繊維材(100体積%)中、50〜70体積%が好ましい。補強繊維材の含有率を50体積%以上とすることにより、繊維強化樹脂成形品の強度が充分高くなる。補強繊維材の含有率を70体積%以下とすることにより、繊維強化樹脂成形品の透明性が良好となり、残光輝度が充分に高くなる。
【0031】
<繊維強化樹脂成形品>
本発明の繊維強化樹脂成形品は、本発明の繊維強化樹脂成形品用樹脂組成物からなる硬化樹脂および補強繊維材を含む成形品である。
補強繊維材の含有率は、繊維強化樹脂成形品(100体積%)中、50〜70体積%が好ましい。
【0032】
本発明の繊維強化樹脂成形品は、本発明の繊維強化樹脂成形品用樹脂組成物からなる硬化樹脂および補強繊維材とを含む成形品を蓄光層とし、該蓄光層の背面側に白色顔料を含む層(以下、白色層と記す。)を有するものであってもよい。
白色層を蓄光層の背面に設けることにより、白色層の反射効果によって、白色層がない場合に比べ、蓄光層側の残光輝度が約4倍高くなる。
【0033】
白色層としては、前記(A)〜(D)成分を含有する樹脂組成物からなる硬化樹脂と、補強繊維材と、白色顔料とを含む層;白色塗料からなる層等が挙げられる。
白色顔料としては、酸化チタン、酸化鉛、酸化亜鉛等が挙げられる。
白色顔料の含有率は、白色層(100質量%)中、2〜5質量%が好ましい。
【0034】
繊維強化樹脂成形品は、繊維強化樹脂成形品用樹脂組成物を補強繊維材に含浸させ、所望の形状に成形し、繊維強化樹脂成形品用樹脂組成物を硬化させる成形法により製造できる。
成形法としては、ハンドレイアップ成形法、レジンインジェクション成形法、フィラメントワインディング成形法、BMC成形法、引き抜き成形法、SMC成形法等が挙げられ、連続的に繊維強化樹脂成形品を製造できる点から、引き抜き成形法が好ましい。
【0035】
引き抜き成形法は、樹脂含浸補強繊維材を所望の形状の金型に通しながら硬化させ、該金型から連続的に成形品を引き抜く成形法である。
白色層の形成方法としては、本発明の樹脂含浸補強繊維材とともに、白色顔料を含む樹脂含浸補強繊維材を金型に通しながら硬化させ、該金型から連続的に繊維強化樹脂成形品を引き抜く方法;本発明の樹脂含浸補強繊維材からなる繊維強化樹脂成形品を得た後、該成形品の背面に白色塗料を塗布し、乾燥させる方法等が挙げられる。
【0036】
本発明の繊維強化樹脂成形品が管状の場合、管の内側への白色層の形成方法としては、以下の方法が挙げられる。
(i)プリフォームド・プルトルージョン法。
(ii)インターナル・スプレイアップ法。
(iii)ブロー・ペインティング法。
(iv)ワイプ・ペインティング法。
【0037】
(i)の方法は、同心円上に配置されたインナーマンドレルとアウターマンドレルとの間の空隙に、本発明の樹脂含浸補強繊維材と白色顔料を含む樹脂含浸補強繊維材とを、白色顔料を含む樹脂含浸補強繊維材がインナーマンドレル側となるように通しながら硬化させ、該マンドレル間の空隙から管状の繊維強化樹脂成形品を連続的に引き抜く方法である。
【0038】
(ii)の方法は、同心円上に配置されたインナーマンドレルとアウターマンドレルとの間の空隙に、本発明の樹脂含浸補強繊維材を通しながら硬化させ、該マンドレル間の空隙から管状の繊維強化樹脂成形品を連続的に引き抜いた直後、インナーマンドレル内を通り、インナーマンドレルの先端から噴出口が突出した塗料ラインから白色塗料を繊維強化樹脂成形品の内側に吹き付ける方法である。
【0039】
(iii)の方法は、所定の長さに切断された管状の繊維強化樹脂成形品の一端に塗料ラインを接続し、該成形品の他端から吸引を行いながら塗料ラインから白色塗料を噴霧し、ついで、該成形品の他端から吸引を行いながら塗料ラインから圧縮空気を導入して、余分な白色塗料を吹き飛ばす方法である。
【0040】
(iv)の方法は、所定の長さに切断された管状の繊維強化樹脂成形品の一端から、白色塗料が吸収されたスポンジ、ブラシ等が装着された治具ロッドを挿入し、治具ロッドを回転させながら該成形品内でレシプロ運動させ、白色塗料を該成形品の内側に塗布する方法である。
【0041】
以上説明した本発明の繊維強化樹脂成形品用樹脂組成物にあっては、繊維強化樹脂成形品に可とう性(伸び)を付与する(A)成分と、繊維強化樹脂成形品に強度(曲げ強度、引張強度、弾性率等。)を付与する(B)成分とを含有し、かつ(A)/(B)が、4/6〜6/4(質量比)であるため、クラックの発生が抑えられ、その結果、透明性および強度が高い繊維強化樹脂成形品を得ることができる。また、繊維強化樹脂成形品は、透明性が高い上に、(E)成分を、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して1〜40質量部含有するため、残光輝度が高くなる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0043】
〔例1〕
(A)成分のウレタンアクリレート樹脂(日本ユピカ社製、8932)50質量部および(B)成分のビニルエステル樹脂(日本ユピカ社製、8250H)50質量部に、(C)成分のスチレンモノマー5質量部を添加し、これに(E)成分の蓄光顔料(根本特殊化学社製、N夜光(登録商標)GLL−300M)10質量部、離型剤としてPS−125(小桜商会社製)1.5質量部、(D)成分の有機過酸化物としてパーヘキサTMH(日本油脂社製)1.5質量部を加え、これらを混合して、繊維強化樹脂成形品用樹脂組成物(1)を調製した。
【0044】
繊維強化樹脂成形品用樹脂組成物(1)をガラスロービング(旭ファイバーグラス社製、 ER2220、フィラメント径10μm、ストランド番手2220tex)に含浸させ、ガラス繊維含有率が50体積%の樹脂含浸補強繊維材(1)を得た。
幅40mm×厚さ6mmのスリットを有する金型を140℃に加熱し、該金型に樹脂含浸補強繊維材(1)を通しながら硬化させ、該金型から連続的に平板を引き抜き速度20cm/分で引き抜いた。
該平板について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0045】
(成形性)
得られた平板の硬化状態を調べ、樹脂のカスおよび欠けがないものを○とし、カスまたは欠けがあるものを×とした。
【0046】
(クラック)
得られた平板を目視で調べ、クラックが認められる(ガラス繊維に沿って白くなる)ものを×とし、クラックが認められないものを○とした。
【0047】
(引張強度)
得られた平板から、JIS K 7054に準拠する方法にて供試体を切り出し、曲げ試験を実施した。
【0048】
(残光輝度)
得られた平板について、JIS K 7054に準拠する方法にて、残光輝度を測定した。
【0049】
〔例2〕
セラミックコート社製、W−200を専用シンナー20%にて希釈して白色塗料を調製した。
該白色塗料を、例1で得られた平板の片面に乾燥膜厚が30μmとなるように塗布し、 60℃で180分間乾燥させ、白色層を有する平板を得た。該平板について、例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0050】
〔例3〕
例1の繊維強化樹脂成形品用樹脂組成物(1)をガラス繊維のチョップドストランドマット(旭ファイバーグラス社製、CM455)に含浸させ、ガラス繊維含有率が50体積%の樹脂含浸補強繊維材(2)を得た。
樹脂未含浸の補強繊維材(3)として、コンテニュアスストランドマット(旭ファイバーグラス社製、M8624 #450)を用意した。
【0051】
外径28mmのインナーマンドレルと内径34mmのアウターマンドレルとが同心円上に配置された二重管構造の金型を140℃に加熱し、該金型のインナーマンドレルとアウターマンドレルとの間の空隙に、例1の樹脂含浸補強繊維材(1)、例3の樹脂含浸補強繊維材(2)および例3の補強繊維材(3)を、インナーマンドレル側から順に、樹脂含浸補強繊維材(2)、樹脂含浸補強繊維材(1)、補強繊維材(3)((2)/(1)/(3)=25/50/25(質量比)。)となるように通しながら、樹脂を硬化させ、該金型から連続的に管状成形品を引き抜き速度20cm/分で引き抜いた。
該管状成形品について、例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0052】
〔例4〕
ビニルエステル樹脂(日本ユピカ社製、8250H)100質量部に、白色顔料を5質量部添加し、均一になるまで、攪拌、混合して、白色樹脂組成物を調製した。
該白色樹脂組成物を、ガラス繊維のチョップドストランドマット(旭ファイバーグラス社製、CM455)に含浸させ、ガラス繊維含有率が50体積%の樹脂含浸補強繊維材(4)を得た。
【0053】
例3の二重管構造の金型を140℃に加熱し、該金型のインナーマンドレルとアウターマンドレルとの間の空隙に、例1の樹脂含浸補強繊維材(1)、例3の樹脂含浸補強繊維材(2)、例3の補強繊維材(3)および例4の樹脂含浸補強繊維材(4)を、インナーマンドレル側から順に、樹脂含浸補強繊維材(4)、樹脂含浸補強繊維材(2)、樹脂含浸補強繊維材(1)、補強繊維材(3)((4)/(2)/(1)/(3)=20/15/50/15(質量比)。)となるように通しながら、樹脂を硬化させ、該金型から連続的に管状成形品を引き抜き速度20cm/分で引き抜いた。
該管状成形品について、例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0054】
〔例5〕
(A)成分を40質量部、(B)成分を60質量部に変更した以外は、例1と同様にして平板を得た。
該平板について、例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0055】
〔例6〕
(A)成分を60質量部、(B)成分を40質量部に変更した以外は、例1と同様にして平板を得た。
該平板について、例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0056】
〔例7〕
(E)成分を1質量部に変更した以外は、例1と同様にして平板を得た。
該平板について、例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0057】
〔例8〕
(E)成分を40質量部に変更した以外は、例1と同様にして平板を得た。
該平板について、例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0058】
〔例9〕
(B)成分を不飽和ポリエステル樹脂(日本ユピカ社製、7596)に変更した以外は、例1と同様にして平板を得た。
該平板について、例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0059】
〔例10(比較例)〕
(A)成分を100質量部、(B)成分を0質量部に変更した以外は、例1と同様にして平板を得た。
該平板について、例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0060】
〔例11(比較例)〕
(A)成分を0質量部、(B)成分を100質量部に変更した以外は、例1と同様にして平板を得た。
該平板について、例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0061】
〔例12(比較例)〕
(B)成分を不飽和ポリエステル樹脂(日本ユピカ社製、7596)に変更した以外は、例11と同様にして平板を得た。
該平板について、例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の繊維強化樹脂成形品は、蓄光機能を有し、強度および残光輝度が高いため、停電時、夜間等に発光する案内標識、手摺り、床材、照明器具の傘・フレーム等として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンアクリレート樹脂(A)と、
ビニルエステル樹脂および/または不飽和ポリエステル樹脂(B)と、
共重合性単量体(C)と、
有機過酸化物(D)と、
蓄光顔料(E)とを含有し、
前記(A)成分と前記(B)成分との比((A)/(B))が、4/6〜6/4(質量比)であり、
前記(E)成分の含有量が、前記(A)成分と前記(B)成分との合計100質量部に対して、1〜40質量部である、繊維強化樹脂成形品用樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の繊維強化樹脂成形品用樹脂組成物を、補強繊維材に含浸させた、樹脂含浸補強繊維材。
【請求項3】
請求項1に記載の繊維強化樹脂成形品用樹脂組成物からなる硬化樹脂および補強繊維材を含む、繊維強化樹脂成形品。
【請求項4】
請求項1に記載の繊維強化樹脂成形品用樹脂組成物からなる硬化樹脂および補強繊維材を含む層と、
白色顔料を含む層と
を有する、繊維強化樹脂成形品。

【公開番号】特開2007−291269(P2007−291269A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−121970(P2006−121970)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(000207595)AGCマテックス株式会社 (26)
【Fターム(参考)】