説明

繊維強化樹脂複合材料

【課題】優れた強度及び耐衝撃性、振動減衰特性を兼ね備えた繊維強化樹脂複合材料を提供することにある。
【解決手段】有機繊維からなる繊維構造体と、無機繊維からなる繊維構造体とが積層され、これらに樹脂が含浸されてなる繊維強化樹脂複合材料であって、該繊維強化樹脂複合材料全体における有機繊維:無機繊維の体積比が10:90〜50:50であり、該繊維強化樹脂複合材料の少なくとも一方の表面から、該繊維強化樹脂複合材料の厚みの1/3に相当する外層部分には、有機繊維からなる繊維構造体のみ、もしくは、無機繊維からなる繊維構造体および有機繊維からなる繊維構造体が配されており、該外層部分に含まれる有機繊維の体積比率が、該外層部分に含まれる有機繊維および無機繊維の全体積を基準として10%以上であることを特徴とする繊維強化樹脂複合材料とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂複合材料に関し、例えば自動車、電車、船舶、航空機などの輸送機械における天井、床、側壁、ボンネット、その他スポーツ用品や日用品等に適した、耐衝撃性、制振性と剛性を兼ね備えた繊維強化樹脂複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維や炭素繊維などの強化繊維で強化した繊維強化樹脂複合材料は、軽量で剛性が高く、また強度も優れているので、スポーツ用品、自動車産業、航空機産業、建材などにおいて幅広く使用されている。例えば、テニスラケットにおいては重量当たりの面積を大きくできることから、またゴルフクラブシャフトにおいては軽量でありかつシャフトの剛性設計自由度が大きく、ゴルファーのレベルに合わせたしなり具合の設計ができるため、このような繊維強化樹脂複合材料が好んで用いられている。また、以前から軽量・高剛性のメリットが大きい航空機構造材料や人工衛星やロケットの構造部材としても使用されている。
【0003】
最近では用途展開が拡がるにつれ、剛性・強度といった特性だけでなく、軽量かつ耐衝撃性、更には制振性を高めた材料が求められている。しかしながら、ガラス繊維強化樹脂複合材料は、無機繊維の中でも比較的高重量であるため大型化には限界があり、衝撃に対して脆くクラック伝播をおこして完全破壊に到りやすい。また、炭素繊維強化樹脂複合材料は、強化繊維の弾性が高いため材料が割れ易く、破壊に至った際に材料が飛散する等の問題点がある。
【0004】
かかる事情より、耐衝撃性を改良した繊維強化樹脂複合材料として、ハニカム構造体の両面に繊維強化複合材を配置した積層構造体(特許文献1)や、金属板と繊維強化樹脂組成物が発泡樹脂組成物を介して接合されている金属樹脂複合構造体(特許文献2)が提案されているが、これら手法によれば耐衝撃性の一定の改善が認められるものの、その性能は十分ではない。
【0005】
また、制振性を改良した繊維強化樹脂複合材料として、エポキシ樹脂にポリエチレングリコールや液状ゴム等の可とう性付与剤を充填した制振フィルム層を繊維強化樹脂複合材料層の領域に挿入する手法(例えば、特許文献3)や、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和エステル共重合体またはそのアイオノマーを繊維強化樹脂複合材料層の領域に挿入するいわゆるインターリーフ材として用い、繊維強化樹脂複合材料積層板の振動制御を行う手法(例えば、特許文献4)が知られており、これら手法によれば制振性の一定の改善が認められるものの、強度や剛性を引き出すにはその性能は十分ではなかった。
【0006】
一方、芳香族ポリアミド繊維や超高分子量ポリエチレン繊維などの高強度、高弾性率の有機高分子繊維を補強材とする繊維強化樹脂複合材料は、耐衝撃性、制振性が優れているものの、剛性が不足しており、用途が著しく限定されている。そこで、有機繊維にガラス繊維を併用した複合材料を用いることが考えられるが、それでも、有機繊維の持つ軽量性の特徴が生かされず、剛性も低下することになる。よって、軽量性を保持し、耐衝撃性、制振性と剛性と兼ね備えた繊維強化樹脂複合材料が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−215328号公報
【特許文献2】特開2007−196545号公報
【特許文献3】特開平05−58395号公報
【特許文献4】特開平11−34230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述した従来技術における問題点に鑑み、耐衝撃性、制振性と剛性とを兼ね備えた繊維強化樹脂複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、繊維強化樹脂複合材料において表面近くに有機繊維からなる層を配することによって、強化樹脂複合材料耐衝撃性を著しく向上できることを見出し本発明に至った。
【0010】
かくして、本発明によれば、有機繊維からなる繊維構造体と、無機繊維からなる繊維構造体とが積層され、これらに樹脂が含浸されてなる繊維強化樹脂複合材料であって、該繊維強化樹脂複合材料全体における有機繊維:無機繊維の体積比が10:90〜50:50であり、該繊維強化樹脂複合材料の少なくとも一方の表面から、該繊維強化樹脂複合材料の厚みの1/3に相当する外層部分には、有機繊維からなる繊維構造体のみ、もしくは、無機繊維からなる繊維構造体および有機繊維からなる繊維構造体が配されており、該外層部分に含まれる有機繊維の体積比率が、該外層部分に含まれる有機繊維および無機繊維の全体積を基準として10%以上であることを特徴とする繊維強化樹脂複合材料が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の繊維強化樹脂複合材料は、有機繊維からなる層と無機繊維からなる層を表層部分および全体において特定割合で積層していることによって、損失係数が高い外層が形成されており、かつ、全体としてバランスの取れており、耐衝撃性、制振性、さらには剛性を同時に兼ね備えている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の繊維強化樹脂複合材料は、有機繊維からなる繊維構造体と、無機繊維からなる繊維構造体とが積層され、これらに樹脂が含浸されてなる繊維強化樹脂複合材料である。
【0013】
本発明で用いる有機繊維としては、全芳香族ポリエステル繊維、ポリアリレート繊維、全芳香族ポリアミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリイミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾール繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維などがあり、特に、芳香族ポリアミド繊維が好ましい。芳香族ポリアミド繊維は、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジアミン、芳香族アミノカルボン酸などを、カルボキシル基とアミノ基とが略等モルとなる割合で重縮合して得られるもので、かつ延鎖結合が共軸又は平行であり且つ反対方向に向いているポリアミドである。本発明においては、パラ型全芳香族ポリアミド繊維が好ましく、さらに具体的には、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維等を例示することができ、特に共重合型である後者は、複合材料とした時の機械的強度、特に衝撃強度が高く好ましい。
【0014】
一方、本発明で用いる無機繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、炭化珪素繊維、チタン酸カリ繊維、ステンレス繊維、PBO繊維などが例示される。これら繊維素材は単独、もしくは2種以上の繊維を混合して使用することも可能である。
【0015】
本発明で用いられる有機繊維および無機繊維は、その強度を活用するために長繊維フィラメントとして用いることが好ましく、さらには無撚のマルチフィラメントとして用いることが好ましいが、補強形態によっては短繊維として用いることも好ましい。なお、有機繊維と無機繊維の形態は、同じであっても異なっていても良い。
【0016】
また、有機繊維からなる繊維構造体、無機繊維からなる繊維構造体は、それぞれの繊維補強の形態は特に制限されるものではないが、織物、編物、乾式不織布、湿式不織布(紙を含む)、一方向に引き揃えられた長繊維集合体などの繊維構造体であることが好ましい。また、有機繊維からなる繊維構造体と、無機繊維からなる繊維構造体における、それぞれの繊維の補強形態は同じであっても異なっていてもよい。
【0017】
上記の繊維構造体の厚みは、特に限定されるものではなく、通常0.1〜2mmである。また繊維構造体の目付については100g/m未満のものを用いた場合は、必要な剛性を持たせるために積層枚数を多くしなければならず、そのため工程数が多くなって作業性が悪くなる。一方、繊維構造体の目付が500g/mを越える場合は、嵩高くなって樹脂含浸性が悪くなる。したがって、上記繊維構造体の目付は100〜500g/mの範囲のものが好ましい。なお、有機繊維からなる繊維構造体と、無機繊維からなる繊維構造体の目付は同じであっても異なっていてもよい。
【0018】
本発明においては、上記繊維強化樹脂複合材料全体における有機繊維:無機繊維の体積比が10:90〜50:50であり、該繊維強化樹脂複合材料の少なくとも一方の表面から厚みの1/3に相当する外層部分には、有機繊維からなる繊維構造体のみ、もしくは、無機繊維からなる繊維構造体および有機繊維からなる繊維構造体が配されており、該外層部分に含まれる有機繊維の体積比率が、該外層部分に含まれる有機繊維および無機繊維の全体積を基準として10%以上であることが肝要である。
【0019】
すなわち、本発明においては、繊維強化樹脂複合材料全体において、有機繊維:無機繊維の体積比が10:90〜50:50である必要があり、好ましくは11:89〜50:50である。有機繊維の体積比が少ないと制振性や耐衝撃性が低下し、無機繊維の体積比が少ないと、強度や剛性が低下するので好ましくない。
【0020】
また、本発明者が検討したところ、繊維強化樹脂複合材料の少なくとも衝撃を受ける一方の表面から厚みの1/3に相当する外層部分の、温度25℃、周波数20Hzで測定した損失係数ηを0.004以上とすることが重要であり、これにより衝撃を受けた際、振動エネルギーを効率よく減衰できることがわかった。一方、振動エネルギーの減衰の観点からは損失係数は大きい方が好ましいが、1.5を超える領域では剛性の低下が大きくなるため、損失係数は1.5以下、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.95以下が設計上の制約が少なくなることから望ましい。
【0021】
さらに、本発明者は、上記外層部分に、有機繊維からなる繊維構造体のみ、もしくは、無機繊維からなる繊維構造体および有機繊維からなる繊維構造体を配し、該外層部分に含まれる有機繊維の体積比率を、該外層部分に含まれる有機繊維および無機繊維の全体積を基準として10%以上とすることによって、該外層部分の損失係数を実現することができ、外部からの衝撃を吸収し、内層へのダメージを軽減させ、強度の維持が可能であることを見出した。
したがって、外層部分に含まれる有機繊維の体積比率が10%未満では十分な制振性、耐衝撃性が得られない。
【0022】
一方、外層部分に含まれる有機繊維の体積比率を100%、すなわち、外層部分全部が有機繊維からなる繊維構造体のみで構成されていてもよいが、次に述べる構成がより好ましい。すなわち、該繊維強化樹脂複合材料の少なくとも一方の表面から、無機繊維からなる繊維構造体、有機繊維からなる繊維構造体の順に、繊維構造体が配されており、外層部分に含まれる有機繊維の体積比率が、該外層部分に含まれる有機繊維と無機繊維の全体積を基準として体積比で10〜70%であることが望ましい。このように、無機繊維からなる繊維構造体を表面に配し、その内側に有機繊維からなる繊維構造体を配することで、繊維強化樹脂複合材料の剛性を維持しつつ、内部において耐衝撃性を発揮させることができ、好ましい。
【0023】
本発明においては、上記外層部分以外の部分、つまり繊維強化樹脂複合材料の厚みの2/3に相当する内層部分に含まれる有機繊維の体積比率が、該内層部分に含まれる有機繊維と無機繊維の全体積を基準として50〜100%とするのが好ましい。つまり、本発明においては、内層部分が全て無機繊維からなる繊維強化樹脂複合材料であっても、外層部分で衝撃を吸収し、優れた耐衝撃性を発揮することができる。一方で、内層部分における無機繊維の体積比を50%以上とすることで、十分な強度や剛性を得やすくなる。
【0024】
さらに本発明においては、上記内層部分において、繊維強化樹脂複合材料の他方の表面となる部分も無機繊維からなる繊維構造体が配されていることが好まく、外層部分の表面と内層部分の表面、すなわち、繊維強化樹脂複合材料の両表面が、いずれも無機繊維からなる繊維構造体で構成されていることがさらに望ましい。これにより、本発明の繊維強化樹脂複合材料の強度や剛性をさらに向上させることができる。
【0025】
本発明に用いる樹脂は熱硬化樹脂であっても熱可塑性樹脂であってもよい。熱硬化性樹脂としては特に制限はなく、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、ウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらは共重合体、変性体、あるいは2種以上の樹脂を混合した樹脂であってもよい。
【0026】
熱可塑性樹脂においても特に制限はなく、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素系樹脂、上記のエラストマー樹脂等が挙げられる。これらは同様に共重合体、変性体、あるいは2種以上の樹脂を混合した樹脂であってもよい。また、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を複合してもよい。あるいは樹脂中に、難燃剤、耐光剤、紫外線吸収剤、平滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、離型剤、可塑剤、着色剤、抗菌剤、顔料、導電剤、シランカップリング剤、無機系コーティング剤など機能剤を包含していても良い。
【0027】
本発明の繊維強化複合材料は、たとえば、次の方法で製造することができる。先ず、有機繊維を含むプリプレグAからなる繊維構造体と無機繊維からなる繊維構造体にそれぞれ樹脂を含浸して複数のプリプレグAと複数のプリプレグBとする。
【0028】
それぞれ1以上の有機繊維を含むプリプレグAと無機繊維を含むプリプレグBとを用い、繊維強化複合材料の厚みの1/3の外層部分を、有機繊維の体積比率が、該外層部分に含まれる有機繊維と無機繊維の全体積を基準として15%以上となるように積層し、次いで、繊維強化複合材料の厚みの2/3の内層部分を、無機繊維の体積比率が、例えば、該内層部分に含まれる有機繊維と無機繊維の全体積を基準として50〜100%となるように積層し、繊維強化複合材料全体として、有機繊維:無機繊維の体積比が10:90〜50:50となるように設計し、これらを接合して繊維強化樹脂複合材料を製造することができる。
【0029】
上記プリプレグとしては、たとえば、有機繊維または無機繊維からなる、織物、編物、不織布、または、一方向に引き揃えられた長繊維集合体といった繊維構造体に、前記樹脂を含浸、塗布またはラミネートしたシート状のプリプレグを用いることができる。
【0030】
繊維を一方向に引き揃えた長繊維集合体を用いる場合は、プリプレグ内部に含まれる強化繊維の向きが互いに直交するようにして積層することが好ましい。
具体的には、熱硬化性樹脂の場合、前記強化繊維に熱硬化性樹脂を溶剤に溶解した樹脂組成物を調製し、それを含浸または塗布後、バーコーターやクリアランスロールなどを用いて余分な樹脂組成物を掻き取ってプリプレグを作製することができる。
【0031】
複数のプリプレグを積層した後、これらを接合する方法としては、圧縮成形法など公知の方法を採用することができ、目的とする形状や、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂といった樹脂の種類に応じて最適な成形方法を適用すれば良い。特に圧縮成形法が好ましく、繊維表面に付着した接着剤成分との化学結合を促進させ、繊維、特に前記の繊維構造体と樹脂との接着性向上をより効果的に発現させることができる。
【0032】
熱可塑性樹脂の場合、強化繊維と熱可塑性樹脂フィルムとを交互に複数枚重ね合わせて加熱、加圧する圧縮成形法や、樹脂を予め溶融しておき、その樹脂を強化繊維に付着させる方法も採用することができる。また、熱硬化樹脂の場合、ハンドレイアップ法を採用することができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例で用いた評価方法は下記の通りである。
(1)繊維強化樹脂複合材料の曲げ強度、弾性率
JIS K 7171に準拠し、厚さ2mm、長さ60mm、幅15mmの試験片を用いて、支点間距離48mmでの3点曲げにて測定した。
(2)繊維強化樹脂複合材料の衝撃強度
JIS K 7111に準拠し、厚さ2mm、長さ80mm、幅10mmの試験片を用いて測定した。
(3)繊維強化樹脂複合材料の振動減衰率
JIS G 0602に準拠し、片端固定定常加振法により評価した。内部摩擦等同時測定装置EG−HT(日本テクノプラス株式会社製)を用いて、25℃、共振周波数20Hz、振幅歪を100×10−6として損失係数を測定した。
【0034】
[実施例1]
単糸繊度16dtex、単繊維本数1000本であるコポリパラフェニレン−3.4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人テクノプロダクツ(株)製「テクノーラT241J」、比重1.76)(繊維A)を用い、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とポリアミン系硬化剤を混合して塗付した離型紙(樹脂目付40g/m)をあらかじめ巻きつけておいたドラムワインダーに、繊維目付が95g/mとなるように巻きつけた。さらに繊維の上から前記エポキシ樹脂を塗布した離型紙を貼り合せて一方向引き揃えシート(以下、UDシート)を作製し、このUDシートを真空下、温度90℃、圧力5kg/cmで5分間加熱加圧加工を行い、プリプレグシートAとした。一方、単繊維繊度0.67dtex、単繊維本数12000本である炭素繊維(東邦テナックス(株)製、「HTS40−12K」)(繊維B)を用い、前記と同様の手法にて繊維目付125g/mのプリプレグシートBを作製した。
【0035】
また、プリプレグシートA及びプリプレグシートBの繊維目付を上記のようにとすることで、プリプレグシートAの1枚に含まれる繊維Aの体積と、プリプレグシートBの1枚に含まれる繊維Bの体積とが同じになるようにした。
前記プリプレグシート表裏面の離型紙を剥離した後、所定の大きさにカットし、表面から1/3の厚みを構成する外層部分は、プリプレグシートBを1枚、プリプレグシートAを2枚、プリプレグシートBを3枚、この順で積層し、これを外層部分とした。
外層部分における繊維Aの体積比率は、該外層部分の繊維Aおよび繊維Bの全体積を基準として、33.3%(=2層(プリプレグシートA)/6層(プリプレグシートA+プリプレグシートB))であった。
【0036】
さらに、上記外層部分となる積層体に、内層部分となるプリプレグシートBを12枚積層し、計18枚の積層体とし、真空下、温度130℃、圧力5kg/cmで2時間加熱加圧加工を行い、厚さ2mm、Vf60%の繊維強化樹脂複合材料を得た。
繊維強化樹脂複合材料における繊維A:繊維Bの体積比は、11.1:88.9(=2層(外層部分のプリプレグシートA):18層(外層部分のプリプレグシートB+内層部分のプリプレグシートB))であった。
この繊維強化樹脂複合材料について、前記(1)〜(3)に示した諸特性は、表1に示すとおりであった。なお、外層部分の損失係数は、前記外層部分の6層からなる積層体を、上記と同様条件で加熱加圧加工を行い得られたサンプルを用いて前記(3)の損失係数の測定を行った。この際、該外層部分の6層からなる積層部分の厚みを測定したところ、全体の厚みの1/3である0.67mm(=2mm×1/3)となっていた。
【0037】
[実施例2]
外層部分の構成を、表面からプリプレグシートBを3枚、プリプレグシートAを3枚の計6枚とした以外は実施例1と同様に実施し、繊維強化樹脂複合材料を得た。結果を表1に示す。
【0038】
[実施例3]
外層部分として、表面から、プリプレグシートB、プリプレグシートA、プリプレグシートB、プリプレグシートA、・・・の順で計6枚を積層した。また、内層部分としてこれに続いて、プリプレグシートA、プリプレグシートB、プリプレグシートA、プリプレグシートB、・・・の順で計12枚を積層した。これ以外は実施例1と同様し、繊維強化樹脂複合材料を得た。結果を表1に示す。
【0039】
[実施例4]
外層部分の構成を、表面からプリプレグシートBを2枚、プリプレグシートAを4枚の計6枚とした以外は実施例1と同様に実施し、繊維強化樹脂複合材料を得た。結果を表1に示す。
【0040】
[実施例5]
外層部分として、表面から、プリプレグシートBを1枚、プリプレグシートAを2枚、プリプレグシートBを1枚、プリプレグシートAを2枚の順で計6枚積層した。また、内層部分として、これに続いて、プリプレグシートBを6枚、プリプレグシートAを2枚、プリプレグシートBを1枚、プリプレグシートAを2枚、プリプレグシートBを1枚の順で計12枚積層した。これ以外は実施例1と同様し、繊維強化樹脂複合材料を得た。結果を表1に示す。
【0041】
[実施例6]
外層部分として、表面から、プリプレグシートBを2枚、プリプレグシートAを1枚、プリプレグシートBを3枚の順で計6枚積層した。また、内層部分として、これに続いて、プリプレグシートBを2枚、プリプレグシートAを1枚、プリプレグシートBを3枚、プリプレグシートBを2枚、プリプレグシートAを1枚、プリプレグシートBを3枚の順で計12枚積層した。これ以外は実施例1と同様し、繊維強化樹脂複合材料を得た。結果を表1に示す。
【0042】
[比較例1]
外層部分の構成を、プリプレグシートBを6枚とした以外は実施例1と同様に実施し、繊維強化樹脂複合材料を得た。結果を表1に示す。
【0043】
[比較例2]
外層部分の構成を、プリプレグシートAを6枚とした以外は実施例1と同様に実施し、繊維強化樹脂複合材料を得た。結果を表1に示す。
【0044】
[比較例3]
外層部分として、表面から、プリプレグシートBを2枚、プリプレグシートAを4の順で計6枚積層した。また、内層部分として、これに続いて、プリプレグシートBを2枚、プリプレグシートAを4枚、プリプレグシートBを2枚、プリプレグシートBを4枚の順で計12枚積層した。これ以外は実施例1と同様し、繊維強化樹脂複合材料を得た。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の繊維強化樹脂複合材料は、高い強度と優れた耐衝撃性、制振性とを兼備し、例えば自動車、電車、船舶、航空機などの輸送機械における天井、床、側壁、ボンネット、翼構造体などの耐衝撃性制振材として、また、建築用、土木用、農業用などの各種産業機械、また、住宅やビル、工場などの天井、床、側壁などの制振材として、その他洗濯機や掃除機などの家電製品、ステレオやビデオ再生機などの音響機器、ビデオカメラなどの精密機器、コンピュータ、プリンターなどの電子機器、その他スポーツ用品や日用品など広範な用途に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機繊維からなる繊維構造体と、無機繊維からなる繊維構造体とが積層され、これらに樹脂が含浸されてなる繊維強化樹脂複合材料であって、該繊維強化樹脂複合材料全体における有機繊維:無機繊維の体積比が10:90〜50:50であり、該繊維強化樹脂複合材料の少なくとも一方の表面から、該繊維強化樹脂複合材料の厚みの1/3に相当する外層部分には、有機繊維からなる繊維構造体のみ、もしくは、無機繊維からなる繊維構造体および有機繊維からなる繊維構造体が配されており、該外層部分に含まれる有機繊維の体積比率が、該外層部分に含まれる有機繊維および無機繊維の全体積を基準として10%以上であることを特徴とする繊維強化樹脂複合材料。
【請求項2】
繊維強化樹脂複合材料の外層部分において、該繊維強化樹脂複合材料の少なくとも一方の表面から、無機繊維からなる繊維構造体、有機繊維からなる繊維構造体の順に繊維構造体が配されており、該外層部分に含まれる有機繊維の体積比率が、該外層部分に含まれる有機繊維および無機繊維の全体積を基準として10〜70%である請求項1記載の繊維強化樹脂複合材料。
【請求項3】
繊維強化樹脂複合材料の両方の表面にそれぞれ無機繊維からなる繊維構造体が配されている請求項1記載の繊維強化樹脂複合材料。
【請求項4】
外層部分の、温度25℃、周波数20Hzで測定した損失係数ηが0.004以上である請求項1に記載の繊維強化樹脂複合材料。
【請求項5】
有機繊維からなる繊維構造体および/または無機繊維からなる繊維構造体が、織物、編物、不織布、または、一方向に引き揃えられた長繊維集合体である請求項1に記載の繊維強化樹脂複合材料。
【請求項6】
有機繊維が、芳香族ポリアミド繊維である請求項1に記載の繊維強化樹脂複合材料。
【請求項7】
芳香族ポリアミド繊維が、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維である請求項6に記載の繊維強化樹脂複合材料。
【請求項8】
無機繊維が、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、炭化珪素繊維、チタン酸カリ繊維、ステンレス繊維からなる群の少なくとも1種である請求項1に記載の繊維強化樹脂複合材料。

【公開番号】特開2012−139841(P2012−139841A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292555(P2010−292555)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】