説明

繊維成形体

【課題】反応活性部位たるアミノ基を表面に多く有する脂肪族ポリエステル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】脂肪族ポリエステル100重量部と、NH−X−CO−Y−Zで示される分子0.01〜20重量部を含有する樹脂組成物。ここで、Xは炭素数1〜10の2価の炭化水素基、Yは両末端に酸素原子を有するポリアルキレンオキシドから導かれる2価の基、Zは炭素数1〜24の炭化水素基または−CO−R、Rは炭素数1〜23の炭化水素基である。
この樹脂組成物は、例えば静電紡糸をすることにより、アミノ基を表面に多く有する脂肪族ポリエステル樹脂組成物とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族ポリエステルと両親媒性分子からなり、両親媒性分子由来のアミノ基が表面に多く存在している樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大きく損傷した、ないし失われた生体組織と臓器の治療法として、細胞の分化、増殖能を利用し、元の生体組織および臓器に再構築する再生医療の研究が活発になってきている。生体内において細胞が分化・増殖する場合、細胞外マトリックスが足場として機能し、組織の構築を行っているが、組織が大きく損傷・欠損している場合、細胞自身がマトリックスを産生するまで人工もしくは天然材料で補う必要がある。つまり足場材料は組織構築の上で最適な環境を与える重要なファクターである。この足場材料に求められる特性としては、1)生体吸収性、2)接着性(細胞及びタンパク質)、3)多孔質性、4)力学強度などが挙げられる。これらの特性を満足する材料を創生することを目的として、合成高分子(ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトンなど)(例えば非特許文献1、2)、天然高分子(コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、ヒアルロン酸、アルギン酸、キトサンなど)(例えば非特許文献3、4)、無機材料(ハイドロキシアパタイト、β−リン酸三カルシウム)(例えば非特許文献5)、およびこれらの複合体などがこれまで検討されている。
【0003】
合成高分子の中でも脂肪族ポリエステルを繊維に加工した成形体は、縫合糸や生体吸収性シートなど様々な応用がなされている。また、エレクトロスピニング法(静電紡糸法、電界紡糸法ともいう)で作製されるナノファイバーは、従来の成形方法よりも繊維径の細い糸を簡便に作成できるメリットがあり、繊維成形体の表面積を大きくすることで細胞との接着性を高めることができるため、近年、細胞培養用の担体や再生医療のための足場材料などへの応用が検討されている。
【0004】
ところが、脂肪族ポリエステル、特にポリ乳酸やポリ乳酸とポリグリコール酸の共重合体は主鎖に反応性官能基を有していないため、足場材料の改質や生体活性成分の導入などの点で制約されている。そこで、このような制約を克服するために、ポリマー主鎖中にペプチド等の活性成分を導入して反応活性を有するポリマーを構成し、この反応活性部分に薬物、タンパク質、ペプチドまたはDNAを共有結合またはイオン結合して定着させることで、足場材料に求められる接着性を改質することが考えられている。
【0005】
例えば、ペプチド部位をポリ乳酸の一次構造に導入するために、保護されたアミノ基とヒドロキシル基を有する化合物の開環重合を行った後、脱保護することでアミノ末端を有するポリ乳酸を製造する方法やヒドロキシル末端ポリ乳酸と保護されたアミノ基を有するアミノ酸と縮合剤によりカップリングした後、アミノ基を脱保護することでアミノ末端を有するポリ乳酸を製造する方法が知られている。
【0006】
しかしながら、いずれの方法においてもポリ乳酸の一次構造にアミノ基を導入するに当たって、アミノ基を保護しておく必要があり、合成は非常に煩雑なものとなるだけでなく、ポリ乳酸本来の諸物性も大きく変化してしまうといった問題を有していた(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−56079号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Y. Ikada, H. Tsuji, Macromol. Rapid. Commun., 21, 117 (2000)
【非特許文献2】J. Mayer, E. Karamuk, T. Akaike, E. Wintermantal, J. Control. Release., 4, 81 (2000)
【非特許文献3】Weinberg. C. B, Bell. E, Science., 231, 397 (1986)
【非特許文献4】Aigner. J, Tegeler. J. A, Hutzler. P, Campoccia. D, Naumann. A,. J. Biomed. Mater. Res., 42, 172 (1998)
【非特許文献5】Laffargue. P. H, Marchandise. X, Bone., 25 (2S), 55S (1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、その表面に反応活性部位たるアミノ基が多く存在する脂肪族ポリエステル樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討した結果、脂肪族ポリエステルと特定の構造を有する両親媒性分子からなる樹脂組成物において、表面にアミノ基が多く存在する脂肪族ポリエステル樹脂組成物が簡便に得られることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明は、脂肪族ポリエステル100重量部に対して、下記式(1)で示される両親媒性分子を0.01〜20重量部含有していることを特徴とする樹脂組成物である。
NH−X−CO−Y−Z(1)
式(1)中、Xは炭素数1〜10の2価の炭化水素基であり、Yは両末端に酸素原子を有する、ポリアルキレンオキシドから導かれる2価の基であり、Zは炭素数1〜24の炭化水素基または−CO−Rである(ここで、Rは炭素数1〜23の炭化水素基である)。
【発明の効果】
【0012】
本発明の樹脂組成物は、簡単な工程で表面にアミノ基を多く有する樹脂組成物とすることができるため、薬物、ペプチド、タンパク質またはDNA等を定着させることができ、材料の改質や生体活性成分の導入に有用である。
ここで「表面」とは、樹脂組成物の最表面から10nmの深さまでの領域をいい、「表面にアミノ基を多く有する」とは、上記表面に位置づけられる領域における単位体積あたりのアミノ基の量が、表面以外の領域における単位体積あたりのアミノ基の量より多いことを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の樹脂組成物は、下記式(1)で示される両親媒性分子をポリマー重量に対して0.01〜20重量%含有する樹脂組成物である。
NH−X−CO−Y−Z(1)
式(1)中、Xは炭素数1〜10の2価の炭化水素基であり、Yは両末端に酸素原子を有する、ポリアルキレンオキシドから導かれる2価の基であり、Zは炭素数1〜24の炭化水素基または−CO−Rである(ここで、Rは炭素数1〜23の炭化水素基である)。
【0014】
式(1)で示される両親媒性分子の含有量が0.01重量%より少ないと、樹脂組成物表面における反応活性部位としてのアミノ基量が十分に得られず好ましくない。また、20重量%よりも多いと、樹脂組成物自体の耐久性が低下し好ましくない。好ましい含有量は、0.02〜15重量%であり、さらに好ましくは、0.05〜10重量%である。
【0015】
式(c)中のXは、炭素数1〜10の2価の炭化水素基である。具体的には、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基などが挙げられる。好ましくはメチレン基である。
【0016】
Yは、両末端に酸素原子を有する、ポリアルキレンオキシドから導かれる2価の基である。ポリアルキレンオキシドとは、具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどで例示されるポリアルキレンエーテル類をいう。両末端に酸素原子を有するとは、ポリアルキレンオキシドの両末端の水酸基から水素原子を除去したものが隣接する基との結合に関与している構造をいう。具体的には、−(O−CH−CH(CH)−)−O−で表される1,2−ポリプロピレングリコール類、−(O−CH−CH−CH−)−O−で表される1,3−ポリプロピレングリコール類、−(O−CH−CH−)−O−で表されるポリエチレングリコール類などから導かれる基が挙げられる。また、上記ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合体、例えばPEO−PPOなどで表される共重合体から導かれる基であってもよい。ここでnは繰り返し単位数を表す。
【0017】
かかる繰り返し単位数nは、好ましくは2〜100がよく、さらに好ましくは3〜70である。また、ポリアルキレンオキシドにおけるアルキレン基は、炭素数が2〜4であることが好ましい。
【0018】
Zは、炭素数1から24の炭化水素基または、−CO−Rであり、Rは炭素数1〜23の炭化水素基である。
Zの炭素数1から24の炭化水素基としては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、ラウリル基、ステアリル基などの直鎖状アルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシルノニル基、コレステリル基などの環状構造を有するアルキル基、オレイル基などの不飽和アルキル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基などの芳香族炭化水素基が例示できる。これらの中ではステアリル基、オレイル基などが好ましい。
【0019】
Rは、炭素数1〜23の炭化水素基である。Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、ヘプタデカニル基、ヘプタデセニル基、ラウリル基、ステアリル基などの直鎖状アルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシルノニル基、コレステリル基などの環状構造を有するアルキル基、オレイル基などの不飽和アルキル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基などの芳香族炭化水素基が例示できる。これらの中ではヘプタデカニル基、ヘプタデセニル基などが好ましい。
【0020】
Rが脂肪族アルキル基の場合、Zの−CO−Rは、脂肪酸に由来するアシル基となる。かかるアシル基の好ましい具体例としては、ラウロイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オレオイル基が挙げられる。一方、Rが芳香族基のときは、Zの−CO−Rは、芳香族脂肪酸に由来するアシル基となる。その好ましい具体例としては、ベンゾイル基、ナフトイル基を例示することができる。これらの中では、ステアロイル基、オレオイル基が好ましく用いられる。
【0021】
式(1)中のアミノ基は、適切な酸類と塩を形成しても遊離のアミノ基であってもよく、特に制限はない。式(1)で示される両親媒性分子は、好ましくは以下の反応により製造することができる。
反応1):
A−NH−X−COOH + H−Y−Z → A−NH−X−CO−Y−Z
反応2):
A−NH−X−CO−Y−Z → HN−X−CO−Y−Z
【0022】
反応1)は、A−NH−X−COOHで表されるアミノ基が保護されたアミノ酸誘導体と、H−Y−Zの構造を有する片末端が水酸基の化合物とのカップリング反応である。反応にはエステル結合を形成させる縮合剤を用いることが好ましく、カルボジイミド類などの縮合剤が好ましく用いられる。好ましい具体例として、ジシクロヘキシルカルボジイミドを挙げることができる。
アミノ基の保護基Aとしては、具体的にはベンジル基、t−ブチルオキシカルボニル基(Boc基)などの公知の保護基を用いることができる。これらの中でもBoc基が好ましい。
【0023】
反応1)により得られる、A−NH−X−CO−Y−Zは、上記カップリング反応(反応1)に限定されず、公知のあらゆる合成方法を利用できる。例えば、アミノ基が保護されカルボキシル基が活性エステルになっているアミノ酸誘導体と、H−Y−Zの構造を有する片末端が水酸基の化合物とのエステル交換反応で合成してもよい。
【0024】
反応2)はアミノ基の脱保護反応であり、通常のペプチド合成で用いられる公知の反応であれば、いずれの反応も用いることができる。AがBoc基の場合は、酸を用いた脱保護反応がよく、トリフルオロ酢酸などの酸が好ましく利用される。反応物の精製方法も特に限定されないが、所望に応じてクロマトグラフィーによる分離精製を行ってもよい。
上記反応1)と2)は、液相合成でも固相合成でもよく、反応方法や精製方法は特に制限されない。
【0025】
本発明において使用される脂肪族ポリエステルは、生体吸収性(生分解性)ポリマーであることが好ましい。生体吸収性のポリマーとしては、具体的には、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸−ポリグリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、ポリグリセロールセバシン酸、ポリヒドロキシアルカン酸、ポリブチレンサクシネートなどや、これらの誘導体が例示できる。
【0026】
これらの中でも、好ましくはポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、およびそれらの共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、最も好ましいのはポリ乳酸、ポリ乳酸−グリコール酸共重合体である。
【0027】
このとき、ポリ乳酸の共重合体は、伸縮性を付与するモノマー成分が少ないほうが好ましい。ここで伸縮性を付与するモノマー成分とは、カプロラクトンモノマーや、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリアルキレンカーボネートジオール、ポリエチレングリコールユニットなどの軟質成分が例示できる。これらの軟質成分はポリマー重量比で20%未満であることが好ましい。これよりも軟質成分が多いと自己支持性を失いやすく、やわらかすぎて取り扱いにくい繊維成形体になる。
【0028】
ポリ乳酸におけるポリマーを構成するモノマーにはL−乳酸およびD−乳酸があるが、特に制限はない。またポリマーの光学純度や分子量、L体とD体の組成比、配列には特に制限はないが、好ましくはL体の多いポリマーである。ポリL乳酸とポリD乳酸のステレオコンプレックスを用いることも問題ない。
【0029】
また、ポリマーの分子量としては、1×10〜5×10であり、好ましくは1×10〜1×10、より好ましくは5×10〜5×10である。また、ポリマーの末端構造やポリマーを重合する触媒は任意に選択できる。
【0030】
本発明の繊維成形体においては、その目的を損なわない範囲で、他のポリマーや他の化合物を併用してもよい。例えば、ポリマー共重合、ポリマーブレンド、化合物混合である。
【0031】
ポリマーは高純度であることが好ましく、とりわけポリマー中に含まれる添加剤や可塑剤、残存触媒、残存モノマー、成形加工や後加工に用いた残留溶媒などの残留物は、少ないほうが好ましい。特に、医療に用いる場合は、安全性の基準値未満に抑える必要があることはいうまでもない。
【0032】
本発明の樹脂組成物は、脂肪族ポリエステル、両親媒性分子以外の第3成分をさらに含有してもよい。該成分には、例えばFGF(繊維芽細胞増殖因子)、EGF(上皮増殖因子)、PDGF(血小板由来増殖因子)、TGF−β(β型形質転換増殖因子)、NGF(神経増殖因子)、HGF(肝細胞増殖因子)、BMP(骨形成因子)などの細胞増殖因子などが挙げられる。
【0033】
本発明における樹脂組成物の製造方法は、特に限定はされないが、脂肪族ポリエステル溶液と両親媒性分子溶液の状態でブレンドすることが良好に両親媒性分子が分散するため好ましい。
【0034】
例えば
工程(1)脂肪族ポリエステル溶液と両親媒性分子溶液を溶液ブレンドし、
工程(2)所望の形に成形し、
工程(3)溶媒を除去することによって得られる。
【0035】
工程(1)において、得られる脂肪族ポリエステルと両親媒性分子のブレンド溶液は均一な混合溶液として得られる。また、脂肪族ポリエステル溶液と両親媒性分子溶液のブレンド溶液に使用される溶媒としては、上記の脂肪族ポリエステルおよび両親媒性分子を溶解および分散させることができる溶媒を使用することができ、これらの溶媒は2種以上の混合溶媒として使用することも可能であり、特に制限されることはない。成形上、脂肪族ポリエステル溶液と両親媒性分子溶液に使用される溶媒は同一であることが好ましい。
【0036】
また、ブレンド溶液中における脂肪族ポリエステルと両親媒性分子の割合としては、樹脂組成物と同様に、脂肪族ポリエステル100重量部に対して両親媒性分子は脂肪族ポリエステルに換算して0.01〜20重量部であることが好ましい。
また、ブレンド溶液のポリマー濃度、すなわち脂肪族ポリエステルと両親媒性分子の合計の濃度は0.1〜30重量%、より好ましくは1〜30重量%である。
【0037】
工程(2)、(3)において工程(1)で得られたブレンド溶液を用いて、湿式法もしくは乾式法により繊維・フィルムに成形し、溶媒を除去することにより、本発明の樹脂組成物およびそれからなる成形体を製造することができる。また、エレクトロスピニング法などのように工程(2)および(3)を同時に行うことで本発明の樹脂組成物およびそれからなる成形体を製造することができる。さらには、得られた成形体を延伸または、熱処理することも可能である。
【0038】
本発明において、樹脂組成物から得られる成形体の中でも、繊維成形体が好ましく、以下詳細に説明する。
繊維成形体とは、得られた一本または複数本の繊維が積層され、織り、編まれ、もしくはその他の手法により形成された3次元の成形体を指す。具体的な繊維成形体の形態としては、例えば不織布が挙げられる。さらに、それをもとに加工したチューブ、メッシュなども再生医療分野において好ましく用いることができ、繊維成形体に含まれる。
【0039】
本発明の繊維成形体の平均繊維径は0.05〜50μmである。平均繊維径が、0.05μmよりも小さいと、該繊維成形体の強度が保てないため好ましくない。また平均繊維径が50μmよりも大きいと、繊維の比表面積が小さく生着する細胞数が少なくなるため好ましくない。さらに好ましくは、平均繊維径が0.2〜20μmである。なお、繊維径とは繊維断面の直径を表す。繊維断面の形状は円形に限らず、楕円形や異形になることもありうる。この場合の繊維径とは、該楕円形の長軸方向の長さと短軸方向の長さの平均をその繊維径として算出する。また、繊維断面が円形でも楕円形でもないときには円または楕円に近似して繊維径を算出する。
【0040】
樹脂組成物及びそれからなる成形体の表面組成を分析する手段として、X線光電子分光(略称XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)またはESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis))、飛行時間二次イオン質量分析計(Time-of-flight secondary ion mass spectrometer: TOF-SIMS)、透過型電子顕微鏡(TEM)等を使用することができ、特に限定されるものではないが、本発明において該繊維成形体の表面組成分析手段としてTOF−SIMSを使用した。TOF−SIMSの検出深さは、一般的には1〜2nm程度といわれており、XPS以上に表面感度の高い手法である。また、TOF−SIMSは、測定物質の構造によってイオン化率が異なり、さらにフラグメンテーションのパターンも変化することから、イオン強度だけから定量評価をすることは困難なことが知られている。ただし、ほぼ同一組成であれば、試料間での相対比較は可能であることが知られている。よって、本明細書においては、スペクトルからNH(一次イオンの金イオンを照射した際に、添加剤が部分的に破壊され、アミン成分にプロトンが付加しイオン化されたものである)フラグメントピーク強度を脂肪族ポリエステル由来のフラグメントピーク強度で規格化した値を比較することにより、繊維表面上のアミノ基量局在の度合いを評価した。なお、例えば検出深さ1〜2nm程度の領域においてアミノ基量の局在が確認できれば、本発明にいう「表面」である樹脂組成物の最表面から10nmの深さまでの領域において、アミノ基を多く有するものと判断できる。
【0041】
その結果、驚くべきことに該繊維成形体中に含まれる両親媒性分子の含有量が極めて少ないにもかかわらず、両親媒性分子を構成する反応活性基であるアミノ基が繊維成形体の繊維表面に多く存在していることを見出した。
この現象は、脂肪族ポリエステルと両親媒性分子からなる繊維成形体の繊維表面において、アミノ基を有する両親媒性分子の占有率が高くなっているためであると考えられる。
【0042】
本発明の繊維成形体は長繊維よりなる。長繊維とは、具体的には紡糸から繊維成形体への加工に至る工程の中で、繊維を切断する工程を加えずに形成される繊維成形体のことをいい、エレクトロスピニング法、スパンボンド法、メルトブロー法などで形成することができるが、エレクトロスピニング法が好ましく用いられる。ここで、エレクトロスピニング法とは、静電紡糸法、エレクトロスプレー法などともよばれる方法も原理的には同じであり、これらも本発明でいうエレクトロスピニング法に含まれる。
【0043】
エレクトロスピニング法は、ポリマーを溶媒に溶解させた溶液に高電圧を印加することで、電極上に繊維成形体を得る方法である。工程としては、高分子を溶媒に溶解させて溶液を製造する工程と、該溶液に高電圧を印加させる工程と、該溶液を噴出させる工程と、噴出させた溶液から溶媒を蒸発させて繊維成形体を形成させる工程と、任意に実施しうる工程として形成された繊維成形体の電荷を消失させる工程と、電荷消失によって繊維成形体を累積させる工程を含む。
繊維成形体の全体の厚みに関しては、特に制限はないが、好ましくは25μm〜200μm、さらに好ましくは50〜100μmである。
【0044】
エレクトロスピニング法における、ポリマーを溶媒に溶解させて溶液を製造する段階について説明する。本発明の製造方法における溶液中の溶媒に対する脂肪族ポリエステルの濃度は1〜30重量%であることが好ましい。脂肪族ポリエステルの濃度が1重量%より小さいと、濃度が低すぎるため繊維成形体を形成することが困難となり好ましくない。また、30重量%より大きいと、得られる繊維成形体の繊維径が大きくなり好ましくない。より好ましい溶液中の溶媒に対する脂肪族ポリエステルの濃度は2〜20重量%である。
【0045】
溶媒は一種を単独で用いてもよく、複数の溶媒を組み合わせてもよい。前記溶媒としては、脂肪族ポリエステルと両親媒性分子を溶解可能で、かつ紡糸する段階で蒸発し、繊維を形成可能なものであれば特に限定されず、例えば、アセトン、クロロホルム、エタノール、2−プロパノール、メタノール、トルエン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、ベンジルアルコール、1,4−ジオキサン、1−プロパノール、ジクロロメタン、四塩化炭素、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、フェノール、ピリジン、トリクロロエタン、酢酸、蟻酸、ヘキサフルオロ−2−プロパノール、ヘキサフルオロアセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、N−メチル−2−ピロリジノン、N−メチルモルホリン−N−オキシド、1,3−ジオキソラン、メチルエチルケトン、上記溶媒の混合溶媒等が挙げられる。
これらのうち、取り扱い性や物性などから、ジクロロメタン、エタノールを用いることが好ましい。
【0046】
次に、溶液に高電圧を印加させる段階と、溶液を噴出させる段階と、噴出された溶液から溶媒を蒸発させて繊維成形体を形成させる段階について説明する。
本発明の繊維成形体の製造方法においては、脂肪族ポリエステルと両親媒性分子を溶解した溶液を噴出させ、繊維成形体を形成させるために、溶液に高電圧を印加させる必要がある。電圧を印加させる方法については、該溶液を噴出させ、繊維成形体が形成されるものであれば特に限定されないが、溶液に電極を挿入して電圧を印加させる方法や、溶液噴出ノズルに対して電圧を印加させる方法などがある。
【0047】
また、溶液に印加させる電極とは別に補助電極を設けることも可能である。また、印加電圧の値については、前記繊維成形体が形成されれば特に限定されないが、通常は5〜50kVの範囲が好ましい。印加電圧が5kVより小さい場合は、溶液が噴出されずに繊維成形体が形成されないため好ましくなく、印加電圧が50kVより大きい場合は、電極からアース電極に向かって放電が起きるために好ましくない。より好ましくは10〜30kVの範囲である。所望の電位は従来公知の任意の適切な方法で作ればよい。
【0048】
こうすることで、脂肪族ポリエステルと両親媒性分子を溶解した溶液を噴出させた直後に溶解するのに使用した溶媒が揮発して繊維成形体が形成される。通常の紡糸は大気下、室温で行われるが、揮発が不十分である場合には陰圧下で行うことや、高温の雰囲気下で行うことも可能である。また、紡糸する温度は溶媒の蒸発挙動や紡糸液の粘度に依存するが、通常は0〜50℃の範囲である。エレクトロスピニング法で繊維成形体を作製する場合、水が繊維表面に影響を与えることから、平滑な表面の繊維を得るために、紡糸する際の雰囲気を低湿度に設定することが好ましい。具体的には、25%以下、さらに好ましくは20%以下である。
【0049】
次に、形成された繊維成形体の電荷を消失させる段階について説明する。前記繊維成形体の電荷を消失させる方法は特に限定はされないが、好ましい方法として、イオナイザーにより電荷を消失させる方法が挙げられる。イオナイザーとは、内蔵のイオン発生装置によりイオンを発生させ、前記イオンを帯電物に放出させることにより前記帯電物の電荷を消失させうる装置である。本発明の繊維成形体の製造方法で用いられるイオナイザーを構成する好ましいイオン発生装置として、内蔵の放電針に高電圧を印加させることによりイオンを発生する装置が挙げられる。
【0050】
次に、前記電荷消失によって繊維成形体を累積させる段階について説明する。前記電荷消失によって繊維成形体を累積させる方法は、特に限定はされないが、通常の方法として、電荷消失により繊維成形体の静電力を失わせ、自重により落下、累積させる方法が挙げられる。また必要に応じて、静電力を消失させた繊維成形体を吸引してメッシュ上に累積させる方法、装置内の空気を対流させてメッシュ上に累積させる方法などを行ってもよい。
【0051】
本発明の繊維成形体の表面に、さらに綿状の繊維構造物を積層することや、綿状構造物を本発明の繊維成形体ではさんでサンドイッチ構造にするなどの加工は、本発明の目的を損ねない範囲で任意に実施しうる。
【0052】
医療応用においては、さらに抗血栓性を付与するためのコーティング処理、抗体や生理活性物質で表面をコーティングすることも任意に実施できる。このときのコーティング方法や処理条件、その処理に用いる化学薬品は、繊維の構造を極端に破壊せず、本発明の目的を損なわない範囲で任意に選択できる。
【0053】
本発明の繊維成形体の繊維内部にも任意に薬剤を含ませることができる。エレクトロスピニング法で成形する場合は、揮発性溶媒に可溶であり、溶解によりその生理活性を損なわないものであれば、使用する薬剤に特に制限はない。
【0054】
かかる薬剤の具体例としては、タクロリムスもしくはその類縁体、スタチン系、またはタキサン系抗癌剤が例示できる。
また、上記薬剤は、揮発性溶媒中において活性を維持することが可能であればタンパク質製剤、核酸医薬であってもよい。また薬剤以外のものも含んでよく、金属、多糖、脂肪酸、界面活性剤、揮発性溶媒耐性微生物であってもよい。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明の実施の形態を説明するが、これらは本発明の範囲を制限するものではない。
【0056】
1.平均繊維径:
得られた繊維成形体の表面を走査型電子顕微鏡(キーエンス株式会社:商品名「VE8800」)により、倍率2000倍で撮影して得た写真から無作為に20箇所を選んで繊維の径を測定し、すべての繊維径の平均値を求めて、平均繊維径とした。n=20である。
【0057】
2.平均厚:
高精度デジタル測長機(株式会社ミツトヨ:商品名「ライトマチックVL−50」)を用いて測長力0.01Nによりn=10にて繊維成形体の膜厚を測定した平均値を算出した。なお、本測定においては測定機器が使用可能な最小の測定力で測定を行った。
【0058】
3.繊維表面組成分析:
飛行時間二次イオン質量分析計としてアルバック・ファイ社製TRIFT IV、一次イオンとしてAu1(30kV)を使用して、アパーチャー100μm、測定範囲0.5〜1850amu、測定面積300μm、測定時間10分、測定モードをバンチングモード(質量分解能重視)で検出した。得られたスペクトルからNHフラグメントピーク強度を脂肪族ポリエステル由来のフラグメントピーク強度で規格化し、さらに両親媒性分子のモルl数で除した値で比較した。
【0059】
[合成例1]
N−CH−CO−(O−CHCH−O−C1835の合成
オレイルアルコールポリエチレングリコールエーテル(H−(O−CHCH−O−C1835、和光純薬(株)製)1ミリモルに対し、N−ブチルオキシカルボニルグリシン(Boc−Gly−OH、和光純薬(株)製)1ミリモルをジクロロメタンに溶解し、縮合剤として、ジシクロヘキシルカルボジイミド(和光純薬(株)製)1ミリモルを含むジクロロメタン溶液を室温で滴下した。反応液をろ過して副生成物であるジシクロヘキシルウレアを取り除き、濃縮、乾燥させ、アミノ基が保護された中間体(Boc−NH−CH−CO−(O−CHCH−O−C1835)を得た。
この中間体に、1〜2ml程度のトリフルオロ酢酸(和光純薬(株)製)を加え、酸処理による脱Boc反応を室温で2時間行った。反応の進行はTLCで確認した。反応液を減圧濃縮し、過剰のトリフルオロ酢酸を取り除き、目的物であるアミン化合物のトリフルオロ酢酸塩を得た。生成物は、H−NMRで確認した。
【0060】
[合成例2]
N−CH−CO−O−C1835の合成
オレイルアルコール(HO−C1835、和光純薬(株)製)5ミリモルに対し、N−ブチルオキシカルボニルグリシン(Boc−Gly−OH、和光純薬(株)製)5ミリモルをジクロロメタン(30ml)に溶解し、縮合剤として、ジシクロヘキシルカルボジイミド(和光純薬(株)製)5ミリモルを含むジクロロメタン溶液(30ml)を室温で滴下した。反応液をろ過して副生成物であるジシクロヘキシルウレアを取り除き、濃縮、乾燥させ、アミノ基が保護された中間体(Boc−NH−CH−CO−O−C1835)を得た。
この中間体に、1〜2ml程度のトリフルオロ酢酸(和光純薬(株)製)を加え、酸処理による脱Boc反応を室温で2時間行った。反応の進行はTLCで確認した。反応液を減圧濃縮し、過剰のトリフルオロ酢酸を取り除き、目的物であるアミン化合物のトリフルオロ酢酸塩を得た。生成物は、H−NMRで確認した。
【0061】
[合成例3]
N−CH−CO−O−C1837の合成
オクタデカノール(HO−C1837、和光純薬(株)製)5ミリモルに対し、N−ブチルオキシカルボニルグリシン(Boc−Gly−OH、和光純薬(株)製)5ミリモルをジクロロメタン(30ml)に溶解し、縮合剤として、ジシクロヘキシルカルボジイミド(和光純薬(株)製)5ミリモルを含むジクロロメタン溶液(30ml)を室温で滴下した。反応液をろ過して副生成物であるジシクロヘキシルウレアを取り除き、濃縮、乾燥させ、アミノ基が保護された中間体(Boc−NH−CH−CO−O−C1837)を得た。
この中間体に、1〜2ml程度のトリフルオロ酢酸(和光純薬(株)製)を加え、酸処理による脱Boc反応を室温で2時間行った。反応の進行はTLCで確認した。反応液を減圧濃縮し、過剰のトリフルオロ酢酸を取り除き、目的物であるアミン化合物のトリフルオロ酢酸塩を得た。生成物は、H−NMRで確認した。
【0062】
[合成例4]
N−CH−CO−(O−CHCH10−O−CO−C1735の合成
ポリエチレングリコールモノステアレート(10E.O.)(H−(O−CHCH10−O−CO−C1735、和光純薬(株)製)5ミリモルに対し、N−ブチルオキシカルボニルグリシン(Boc−Gly−OH、和光純薬(株)製)5ミリモルをジクロロメタン(30ml)に溶解し、縮合剤として、ジシクロヘキシルカルボジイミド(和光純薬(株)製)5ミリモルを含むジクロロメタン溶液(30ml)を室温で滴下した。反応液をろ過して副生成物であるジシクロヘキシルウレアを取り除き、濃縮、乾燥させ、アミノ基が保護された中間体(Boc−NH−CH−CO−(O−CHCH10−O−CO−C1735)を得た。
この中間体に、1〜2ml程度のトリフルオロ酢酸(和光純薬(株)製)を加え、酸処理による脱Boc反応を室温で2時間行った。反応の進行はTLCで確認した。反応液を減圧濃縮し、過剰のトリフルオロ酢酸を取り除き、目的物であるアミン化合物のトリフルオロ酢酸塩を得た。生成物は、H−NMRで確認した。
【0063】
[実施例1]
合成例1で合成した両親媒性分子0.044重量部とポリ乳酸(PL18、Purac社製)11重量部をジクロロメタン88重量部およびエタノール11重量部で溶解し、均一な溶液を調製した。湿度25%以下でエレクトロスピニング法により40分間紡糸を行い、シート状の繊維成形体を得た。噴出ノズルの内径は0.8mm、電圧は8.5kV、噴出ノズルから平板までの距離は25cmであった。上記平板は、紡糸時は陰極として用いた。得られた繊維成形体の平均繊維径は2〜4μmであり、厚さは82μmであった。繊維表面組成分析の結果、グリシンのNHピーク強度をポリ乳酸由来フラグメント(二量体C(m/z=145))で規格化し、両親媒性分子のモル数で除した値は0.41であった。これによりアミノ基が繊維表面に多く存在していることがわかった。
【0064】
[比較例1]
合成例2で合成した両親媒性分子0.044重量部とポリ乳酸(PL18、Purac社製)11重量部をジクロロメタン88重量部およびエタノール11重量部で溶解し、均一な溶液を調製した。湿度25%以下でエレクトロスピニング法により40分間紡糸を行い、シート状の繊維成形体を得た。噴出ノズルの内径は0.8mm、電圧は8.5kV、噴出ノズルから平板までの距離は25cmであった。上記平板は、紡糸時は陰極として用いた。得られた繊維成形体の平均繊維径は2.5μmであり、厚さは71μmであった。繊維表面組成分析の結果、グリシンのNHピーク強度をポリ乳酸由来フラグメント(二量体C(m/z=145))で規格化し、両親媒性分子のモル数で除した値は0.05であった。
【0065】
[比較例2]
合成例3で合成した両親媒性分子0.044重量部とポリ乳酸(PL18、Purac社製)11重量部をジクロロメタン88重量部及びエタノール11重量部で溶解し、均一な溶液を調製した。湿度25%以下でエレクトロスピニング法により40分紡糸を行い、シート状の繊維成形体を得た。噴出ノズルの内径は0.8mm、電圧は8.5kV、噴出ノズルから平板までの距離は25cmであった。上記平板は、紡糸時は陰極として用いた。得られた繊維成形体の平均繊維径は2.6μmであり、厚さは84μmであった。繊維表面組成分析の結果、グリシンのNHピーク強度をポリ乳酸由来フラグメント(二量体C(m/z=145))で規格化し、両親媒性分子のモル数で除した値は0.04であった。
【0066】
[実施例2]
合成例4で合成した両親媒性分子0.044重量部とポリ乳酸(PL18、Purac社製)11重量部をジクロロメタン88重量部及びエタノール11重量部で溶解し、均一な溶液を調製した。湿度25%以下でエレクトロスピニング法により40分間紡糸を行い、シート状の繊維成形体を得た。噴出ノズルの内径は0.8mm、電圧は8.5kV、噴出ノズルから平板までの距離は25cmであった。上記平板は、紡糸時は陰極として用いた。得られた繊維成形体の平均繊維径は2.5μmであり、厚さは79μmであった。繊維表面組成分析の結果、グリシンのNHピーク強度をポリ乳酸由来フラグメント(二量体C(m/z=145))で規格化し、両親媒性分子のモル数で除した値は0.11であった。これによりアミノ基が繊維表面に多く存在していることがわかった。
【0067】
[比較例3]
両親媒性分子を含まない以外は、実施例1と同様に繊維成形体を調製した。得られた繊維構造物を構成する繊維成形体の平均径は5.4μmであり、厚さは95μmであった。繊維表面組成分析の結果、アミノ基由来のイオンピークは観察されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の樹脂組成物は、例えば静電紡糸をすることにより、反応活性部位たるアミノ基を表面に多く有する樹脂組成物とすることができるため、医療用品、とりわけ臓器表面や創傷部位の保護材、被覆材、シール材、人工硬膜、癒着防止材、止血材などに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリエステル100重量部に対して、下記式(1)で示される両親媒性分子を0.01〜20重量部含有していることを特徴とする樹脂組成物。
NH−X−CO−Y−Z(1)
式(1)中、Xは炭素数1〜10の2価の炭化水素基であり、Yは両末端に酸素原子を有する、ポリアルキレンオキシドから導かれる2価の基であり、Zは炭素数1〜24の炭化水素基または−CO−Rである(ここで、Rは炭素数1〜23の炭化水素基である)。
【請求項2】
Yのポリアルキレンオキシドの繰り返し単位が2〜100である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
脂肪族ポリエステルが、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、およびそれらの共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1または請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物からなる、平均繊維径が0.05〜50μmであり、アミノ基が繊維表面に多く存在していることを特徴とする繊維成形体。
【請求項5】
エレクトロスピニング法にて作製された請求項4に記載の繊維成形体。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の樹脂組成物を含有する医療用材料。
【請求項7】
請求項4または請求項5に記載の繊維成形体を含有する医療用材料。

【公開番号】特開2011−246524(P2011−246524A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118380(P2010−118380)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】