説明

繊維材料を処理する方法

【課題】ペルオキシド及びマンガン触媒を含む洗濯液での移行染料の再沈殿を防止する方法を提供すること。
【解決手段】洗濯液中へ移行した染料の再沈殿を防止する方法であって、式(1):


(式中、nは、0、1、2又は3;mは、1、2又は3;Aは、アニオン;Yは、アルキレン基、1,2−シクロヘキシレン、1,2−アリーレン基など;R及びRは、互いに独立して、シアノ、ハロゲン、ニトロ、C1−C4アルキルなど;R2及びR3は、互いに独立して、水素、C1−C4アルキル又はアリールなど)の1種以上の化合物を、過酸化物含有洗剤を含む洗濯液1リットル当たり0.5〜150mg加えること含むことを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペルオキシド及びマンガン触媒を含む洗濯液での移行染料の再沈殿を防止する方法、この方法に適切なマンガン触媒、及びこれらの触媒を含む洗剤配合物に関する。
【0002】
サレン(salen)タイプのマンガン錯体のいくつかが、過酸素化合物での酸化、特に洗濯工程の部分として、適切な触媒であることは既に知られている。含まれているサレン錯体は、すべて対称形である。マンガン錯体のあるものが、洗濯液中で汚れ及び染料に対して顕著な漂白効果を有することは以前に記載されている。
【0003】
サレンタイプの非対称マンガン錯体のいくつかが、染料又は繊維を顕著に損傷することなく洗濯液中の移行染料の再沈殿を防止するための触媒として大きな特定の効果を示すことが今見出された。錯体類は、それらが二つの異なる改質されたサリシルアルデヒド又はo−ヒドロキシフェニルケトンの2モルと、エチレンジアミン又は他の改質されたジアミン構成部品の1モルとの反応によりもたらされ、それにより二つの異なる置換された芳香族基を有する。
【0004】
したがって、本発明は、洗濯液中へ移行した染料の再沈殿を防止する方法であって、式(1):
【0005】
【化12】

【0006】
(式中、
nは、0、1、2又は3であり、
mは、1、2又は3であり、
Aは、アニオンであり;
Yは、直鎖若しくは分岐鎖の式−〔C(R5)2−(ここで、rは、1〜8の整数であり、そしてR5基は、互いに独立して、水素又はC1−C4アルキルである)のアルキレン基、−CX=CX−(ここで、Xは、シアノ、直鎖若しくは分岐鎖のC1−C8アルキル又はジ(直鎖若しくは分岐鎖のC1−C8アルキル)−アミノである)、−(CH2)q−NR4−(CH2)q−(ここで、R4は、水素又は直鎖若しくは分岐鎖のC1−C4アルキルであり、そしてqは、1、2、3又は4である)であるか、又は下記式:
【0007】
【化13】

【0008】
の1,2−シクロヘキシレン基のいずれか、又は下記式:
【0009】
【化14】

【0010】
(上記式中、
9は、SO3H、CH2OH又はCH2NH2である)
の1,2−アリーレン基のいずれかであり、
R及びRは、互いに独立して、シアノ、ハロゲン、OR5若しくはCOOR5(ここで、R5は、水素又は直鎖若しくは分岐鎖のC1−C4アルキルである)、又はニトロ、直鎖若しくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖若しくは分岐鎖の、かつ部分的にフルオロ若しくはペルフルオロ化C1−C8アルキル、NHR6若しくはNR67(ここで、R6及びR7は、同一若しくは異なり、かつそれぞれ直鎖若しくは分岐鎖のC1−C12アルキルであるか、又はR6とR7は、それらに結合する窒素原子と一緒になって、5−、6−若しくは7−員環(それらは、ヘテロ原子を更に含んでいてもよい)を形成する)、又は直鎖若しくは分岐鎖のC1−C8アルキル−R8(ここで、R8は、上記の意味を有する、OR5、COOR5若しくはNR67、又はNH2である)、又は−N+467(ここで、R4、R6及びR7は、上記と同義である)であり、
2及びR3は、互いに独立して、水素、直鎖若しくは分岐鎖のC1−C4アルキル又は非置換アリール、あるいはシアノ、ハロゲン、OR5若しくはCOOR5(ここで、R5は、水素又は直鎖若しくは分岐鎖のC1−C4アルキルである)、又はニトロ、直鎖若しくは分岐鎖のC1−C8アルキル、NHR6若しくはNR67(ここで、R6及びR7は、同一若しくは異なり、かつ上記と同義である)、又は直鎖若しくは分岐鎖のC1−C8アルキル−R8(ここで、R8は、上記の意味を有する、OR5、COOR5若しくはNR67、又はNH2である)、又は−N+467(ここで、R4、R6及びR7は、上記と同義である)で置換されているアリールであるが、ただし
n及びmが同一であるならば、R及びR1は、同じ意味を有さない)で示される1種以上の化合物を、過酸化物含有洗剤を含む洗濯液1リットル当たり0.5〜150mg加えること含むことを特徴とする方法を提供する。
【0011】
nが2又は3である式(1)の化合物のうちで、基Rは、同一又は異なることができる。基R1に関して、同様なことが、mが2又は3である式(1)の化合物に適用される。
【0012】
Yが、1,2−シクロヘキシレン基であるとき、その立体異性体シス/トランス形態のそれぞれが存在することができる。
【0013】
好適には、Yは、式−(CH2)r−(ここで、rは、1〜8の整数である)又は式−C(R5)2−(CH2)p−C(R5)2−(ここで、pは、0〜6の数であり、そしてR5は、水素又はC1−C4アルキルである)の基である。
【0014】
式(1)の特に好適な化合物において、Yは、式−(CH2)r−(ここで、rは、1〜4の整数である)又は式−C(R5)2−C(R5)2−(ここで、R5は、それぞれの場合に独立して、水素又はメチルである)の基である。
【0015】
ハロゲンは、好適には塩素、臭素又はフッ素、特に好適には塩素である。
【0016】
n又はmが、1であるならば、基R及びR1は、R又はR1がそれぞれニトロ又はCOOR5であるときを除いて、それぞれベンゼン環の4位にある。この(ニトロ又はCOOR5である)場合、基R又はR1は、それぞれ好適には5位にある。
【0017】
n又はmが、1であるならば、二つのR基又はR1基は、R又はR1が、それぞれニトロ又はCOOR5であるときを除いて、好適にはそれぞれベンゼン環の4及び6位にある。この(ニトロ又はCOOR5である)場合、二つのR基又はR1基は、それぞれ好適には3及び5位にある。
【0018】
R又はR1が、ジ(C1−C12アルキル)アミノであるならば、アルキル基は、直鎖又は分岐鎖であることができる。それは、好適には1〜8、特に1〜4、特別に1又は2個の炭素原子を含む。
【0019】
基R又はR1は、好適には、水素、ニトロ、OR5、COOR5又はN(R5)2(ここで、R5は、水素又はC1−C4アルキル、特に、メチル又はエチルである)である。
【0020】
基R2及びR3は、特に水素、メチル、エチル又は非置換フェニルである。
【0021】
アリールは、例えばナフチル又は特にフェニルである。
【0022】
6及びR3がそれらと結合する窒素原子と一緒になって5−、6−又は7−員環を形成するならば、その環は、特にピロリジン、ピペリジン、モルホリン又はピペラジン環である。ピペラジン環は、例えばフェニル環に結合していない窒素原子上に、アルキルにより置換されていることができる。
【0023】
適切なアニオンの例は、クロリドのようなハライド、ペルクロラート、スルファート、ニトラート、ヒドロキシド、BF4-、PF6-、カルボキシラート、トリフラート及びトシラートである。それらのうちで好適なものは、クロリド、アセタート及びカルボキシラートである。
【0024】
本発明は、式(1a):
【0025】
【化15】

【0026】
(式中、
nは、0、1、2又は3であり、
mは、1、2又は3であり、
Aは、アニオンであり;
Yは、直鎖若しくは分岐鎖の式−〔C(R5)2−(ここで、rは、1〜8の整数であり、そしてR5基は、互いに独立して、水素又はC1−C4アルキルである)のアルキレン基、−CX=CX−(ここで、Xは、シアノ、直鎖若しくは分岐鎖のC1−C8アルキル又はジ(直鎖若しくは分岐鎖のC1−C8アルキル)−アミノである)、−(CH2)q−NR4−(CH2)q−(ここで、R4は、上記と同義であり、そしてqは、1、2、3又は4である)であるか、又は下記式:
【0027】
【化16】

【0028】
の1,2−シクロヘキシレン基のいずれか、又は下記式:
【0029】
【化17】

【0030】
(上記式中、
9は、SO3H、CH2OH又はCH2NH2である)
の1,2−アリーレン基のいずれかであり、
R及びRは、互いに独立して、シアノ、ハロゲン、OR5若しくはCOOR5(ここで、R5は、水素又は直鎖若しくは分岐鎖のC1−C4アルキルである)、又はニトロ、直鎖若しくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖若しくは分岐鎖の、かつ部分的にフルオロ若しくはペルフルオロ化C1−C8アルキル、NHR6若しくはNR67(ここで、R6及びR7は、同一若しくは異なり、かつそれぞれ直鎖若しくは分岐鎖のC1−C12アルキルであるか、又はR6とR7は、それらと結合する窒素原子と一緒になって、5−、6−若しくは7−員環(それらは、ヘテロ原子を更に含んでいてもよい)を形成する)、又は直鎖若しくは分岐鎖のC1−C8アルキル−R8(ここで、R8は、上記の意味を有する、OR5、COOR5若しくはNR67、又はNH2である)、又は−N+467(ここで、R4、R6及びR7は、上記と同義である)であり、
2及びR3は、互いに独立して、水素、直鎖若しくは分岐鎖のC1−C4アルキル又は非置換アリール、あるいはシアノ、ハロゲン、OR5若しくはCOOR5(ここで、R5は、水素又は直鎖若しくは分岐鎖のC1−C4アルキルである)、又はニトロ、直鎖若しくは分岐鎖のC1−C8アルキル、NHR6若しくはNR67(ここで、R6及びR7は、同一若しくは異なり、かつそれぞれ直鎖若しくは分岐鎖のC1−C12アルキルであるか、又はR6とR7は、それらに結合する窒素原子と一緒になって、5−、6−若しくは7−員環(それらは、ヘテロ原子を更に含んでいてもよい)を形成する)、又は直鎖若しくは分岐鎖のC1−C8アルキル−R8(ここで、R8は、上記の意味を有する、OR5、COOR5若しくはNR67、又はNH2である)、又は−N+467(ここで、R4、R6及びR7は、上記と同義である)で置換されているアリールであるが、ただし
n及びmが同一であり、かつR2及びR3が両方水素であるならば、R及びR1は、同じ意味を有さず、かつR2及びR3のうち、一方が水素であり、他方がフェニルである場合はない)で示される化合物を提供する。
【0031】
n、m、Y、A、R、R1、R2及びR3に対しての式(1)のマンガン錯体に示された好適な定義的は、式(1a)の化合物にも好適である。
【0032】
式(1)及び(1a)の化合物は、例えば相当する配位子とマンガン化合物から慣用の方法により調製される。この種の調製方法は、例えばUSP5,281,578及び4,066,459に記載されている。しかしながら、ここで述べたマンガン錯体のすべては、対称的に置換された配位子を持っている。驚くべきことに、非対称配位子を有する本発明のマンガン錯体は、ペルオキシドでの酸化の触媒として増強された特定の効果を特徴とする。
【0033】
式(2):
【0034】
【化18】

【0035】
(式中、
R、R1、R2、R3、Y、n及びmは、式(1a)と同義である)で示される配位子は、同様に新規である。
【0036】
これらは、例えばまず式H2N−Y−NH2のジアミンを、式(3):
【0037】
【化19】

【0038】
のアルデヒド又はケトンと反応させ、次いで式(4):
【0039】
【化20】

【0040】
のアルデヒド又はケトンと反応させることによる、慣用の方法により製造される。
【0041】
式(3)及び(4)において、R、R1、R2、R3、n及びmは、式(1)と同義であるが、ただしR及びR1は、n及びmが同一ならば、同一の意味を有さない。
【0042】
本発明の方法で用いるための特に興味のあるものは、式(1A):
【0043】
【化21】

【0044】
の化合物及び式(1B):
【0045】
【化22】

【0046】
の化合物である。
【0047】
式(1)の化合物を、相当する類似の対称マンガン錯体、すなわち(R)n及び(R1)mが同一である式(1)の化合物と一緒に用いることもできる。そのような混合物は、例えば式H2N−Y−NH2のジアミンと、式(2)の配位子の上記の調製において式(3)の二つの異なる化合物の混合物と反応させ、次いで式(2)の1個の非対称及び2個の対称配位子の混合物を相当するMn錯体へ変換することにより得られる。
【0048】
本発明は、更に、
1)アニオン界面活性剤A)及び/又は非イオン界面活性剤B)5〜90%、
2)ビルダー物質C)5〜70%、
3)過酸化物D)0.1〜30%及び
4)請求項1記載の式(1)の化合物E)0.005〜2%(ここで、パーセントは、洗剤の全重量に基づいての重量%である)を含む洗剤を提供する。
【0049】
洗剤は、固体、又は例えば水5重量%未満、好適には0〜1重量%を含む非水液としての液体形態として存在することができ、例えばGB−A−2,158,454に記載されているように、その基材は、非イオン性界面活性剤中にビルダー物質の懸濁液を有してもよい。
【0050】
しかしながら、好適には、洗剤は、粉末又は粒状形態である。
【0051】
この洗剤は、例えばまずD)及びE)を除く上記の全成分をのすべてを含むスラーを噴霧乾燥により初めの粉末を調製し、次いで乾燥成分D)及びE)を加え、次いで全成分を互いに混合することにより製造することができる。
【0052】
別の方法として、成分E)を、成分A)、B)及びC)を含む水性スラリーに加え、噴霧乾燥し、後に成分D)を乾燥塊と一緒に混合することにより製造することができる。
【0053】
別の方法は、成分A)及びC)を含み、成分B)をまったく含まない水性スラリーから出発することである。このスラリーを噴霧乾燥し、次いで成分E)を成分B)と共に混合し、続いて成分D)を乾燥形態で混合する。
【0054】
アニオン界面活性剤A)は、例えばスルファート、スルホナート又はカルボキシラート界面活性剤又はその混合物であることができる。
【0055】
好適なスルファート類は、アルキル基中に12〜22個の炭素原子を有するそれら単独、又はアルキル基が10〜20個の炭素原子を有するアルキルエトキシ−界面活性剤との組み合わせである。
【0056】
好適なスルホナート類は、例えばアルキル基に9〜15個の炭素原子を有するアルキルベンゼンスルホナート類である。
【0057】
アニオン界面活性剤のカチオンは、好適には金属カチオン、特にナトリウムである。
【0058】
好適なカルボキシラート類は、式R−CO−N(R1)−CH2COOM1(ここで、Rは、アルキル又はアルケニル基中に8〜18個の炭素原子を有するアルキル又はアルケニルであり、R1は、C1−C4アルキルであり、そしてM1は、アルカリ金属である)のアルカリ金属サルコシナート類である。
【0059】
非イオン性界面活性剤B)は、例えばエチレンオキシド3〜8モルと9〜15個の炭素原子を有する第1級アルコール1モルとの縮合生成物である。
【0060】
適切なビルダー物質C)の例は、アルカリ金属ホスファート類、特にトリポリホスファート類、カルボナート類若しくはバイカルボナート類、特にそれらのナトリウム塩類、シリカート類、アルミニウムシリカート類、ポリカルボキシラート類、ポリカルボン酸類、有機ホスファート類、アミノアルキレンポリ(アルキレンホスホナート類)又はそれらの化合物の混合物である。
【0061】
特に好適なシリカート類は、式NaHSit2t+1pH2O又はNa2Sit2t+1pH2O(ここで、tは、1.9〜4の数であり、そしてpは、0〜20の数である)の結晶のナトリウム塩類である。
【0062】
アルミニウムシリカート類のうち、好適なものは、ゼオライトA、B、X及びHSの名前で商業的に得られるそれら、及びそれらの成分の2種又は3種以上を含む混合物である。
【0063】
ポリカルボキシラート類のうちで、好適なものは、ポリヒドロキシカルボキシラート類、特にシトラート類、及びアクリラート類並びにマレイン酸無水物とのそれらのコポリマー類である。
【0064】
好適なポリカルボン酸類は、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、及びエチレンジアミンジサクシナート(ラセミ形態及びエナンチオ的に純粋なS,S形態の両方)である。
【0065】
特に適切なホスホナート類又はアミノアルキレンポリ(アルキレンホスホナート類)は、1−ヒドロキシエタン−1,1−ホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸及びジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸のアルカリ金属塩類である。
【0066】
適切なペルオキシドD)は、例えば文献記載の、商業的に入手し得る有機及び無機ペルオキシド類(これらは、慣用の洗濯温度、例えば10〜95℃で繊維材料を漂白する)である。
【0067】
有機ペルオキシド類は、例えばモノ−又はポリペルオキシド類、特に有機過酸類又はその塩類、例えばフタルイミド過カプロン酸、過安息香酸、ジペルオキシドデカン二酸、ジペルオキシノナン二酸、ジペルオキシデカン二酸、ジペルオキシフタル酸、又はその塩類である。
【0068】
しかしながら、無機過酸類、例えば過硫酸塩類、過ホウ酸塩類、過炭酸塩類及び過珪酸塩類を用いることが好適である。もちろん、無機及び/又は有機ペルオキシドの混合物を用いることもできる。ペルオキシド類は、異なる結晶形態、かつ異なる含水量で存在することができ、貯蔵中でのそれらの安定性を増強するために、他の有機又は無機化合物と一緒に用いることもできる。
【0069】
洗剤へのペルオキシドの添加は、好適には例えばスクリュウ計量システム及び/又は流動床ミキサーの助けにより成分を混合することにより行う。
【0070】
本発明の組み合わせに加えて、洗剤は、例えばビストリアジニルアミノスチルベンジスルホン酸、ビストリゾリルスチルベンジスルホン酸、ビススチリルビフェニル若しくはビスベンゾフリル又はビスベンゾキサリル誘導体、ビスベンズイミダリル誘導体、クマリン誘導体若しくはピラゾリン誘導体の組からの蛍光白化剤の1種又は2種以上を含むことができる。
【0071】
更に、洗剤は、防汚剤、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、pH調節剤、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属シリカート、泡調整剤、例えば石鹸、噴霧乾燥及び粒状特性調整剤、例えば硫酸ナトリウム、香料、及び所望ならば帯電防止剤及び繊維柔軟化剤、酵素、例えばアミラーゼ、漂白剤、顔料及び/又は色相剤(shading agent)を含むことができる。これらの構成物は、もちろん、用いられている漂白剤に安定であるべきである。
【0072】
本発明の洗剤への更に好適な添加物は、繊維を洗濯するとき、洗濯条件で繊維から離れる洗濯液中の染料のための汚れを防止するポリマーである。これらは、好適には非改質の、又はアニオン性若しくはカチオン性物質の導入により改質されたポリビニルピロリドン、特に5,000〜60,000の範囲、特に10,000〜50,000の分子量を有するそれらである。それらのポリマーは、洗剤の全重量に基づいて、好適には0.05〜5重量%、特に0.2〜1.7%重量の量で用いられる。
【0073】
更に、本発明の洗剤は、例えばTAED又はTAGUのような過ホウ酸塩活性剤として知られているものを含むことができる。好適なものは、TAEDであり、洗剤の全重量に基づいて、好適には0.05〜5重量%、特に0.2〜1.7%重量の量で用いられる。
【実施例】
【0074】
本発明を以下の実施例により説明するが、これらの実施例に発明の範囲を限定するものではない。部及びパーセントは、特に断らない限り、重量による。
【0075】
実施例1:
N−モノ〔4−(ジエチルアミノ)サリシリデン〕−2−メチルプロパン−1,2−ジアミン
【0076】
【化23】

【0077】
エタノール50mlに溶解した1,2−ジアミノ−2−メチルプロパン4.56g(0.0517mol)の溶液を反応容器に入れ、エタノール50mlに溶解した4−N−ジエチルアミノサリシルアルデヒド10.0g(0.0517mol)の溶液を、室温で2時間かけて撹拌しながら滴下した。2時間撹拌して反応を完結させ〔TLCモニター、展開溶媒:アセトニトリル/水(9:1)〕、反応溶液を注意しながら濃縮して残渣を高真空下に乾燥した。暗赤色油状物質として得られた粗生成物13.6gを、更に精製することなく次の反応に使用した。
【0078】
実施例2:
N−モノ〔4−(ジメチルアミノ)サリシリデン〕−2−メチルプロパン−1,2−ジアミン
【0079】
【化24】

【0080】
1,2−ジアミノ−2−メチルプロパン6.4ml(5.3g、60.5mmol)に、エタノール100mlに溶解した4−N−ジメチルアミノサリシルアルデヒド10.0g(60.5mmol)の溶液を室温で2時間かけて撹拌しながら滴下した。室温で2時間撹拌して反応を完結させ〔TLCモニター、展開溶媒:アセトニトリル/水(9:1)〕、反応溶液を注意しながら濃縮して残渣を高真空下に乾燥した。暗赤色油状物質として得られた粗生成物14gを、更に精製することなく次の反応に使用した。
【0081】
実施例3:
N−1−〔4−(ジエチルアミノ)サリシリデン〕−N′−2−(4−メトキシサリシリデン)−2−メチルプロパン−1,2−ジアミン(構造式I)及びN−2−〔4−(ジエチルアミノ)サリシリデン〕−N′−1−(4−メトキシサリシリデン)−2−メチルプロパン−1,2−ジアミン(構造式II)
【0082】
【化25】

【0083】
実施例1で得られたN−モノ〔4−(ジエチルアミノ)サリシリデン〕−2−メチルプロパン−1,2−ジアミン13.6g(0.0517mol)をエタノール50mlに懸濁し、透明な溶液が得られるまで50℃で撹拌加熱した。固体の4−メトキシサリシルアルデヒド7.87g(0.0517mol)を加え、この混合物を2時間還流加熱して反応を完結させた〔TLCモニター、展開溶媒:酢酸エチル/メタノール(9:1)〕。次いで、反応溶液を注意しながら濃縮して残渣を高真空下に乾燥し、徐々に固化する暗赤色油状物質として粗生成物20gを得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー〔溶出溶媒:酢酸エチル/メタノール(9:1)〕に付して精製し、非対称に置換したサレン誘導体をジアステレオマー混合物(構造式I及びII)として単離した。収量:7g、帯赤色油状物質(34%)。1H及び13CのNMR分光法によって生成物を確認した。
13C NMR (CDCl3): δ= 12.7 (CH3CH2N), 25.3, 25.4 ((CH3)2C-), 44.5 (NCH2CH3), 55.3 (OCH3), 58.5, 59.3 (quat C, (CH3)2C-), 68.7, 69.3 (NCH2), 98.0, 98.5, 101.2, 101.5, 103.0, 103.1, 106.2, 106.3, 133.0, 133.1 (tert アリール-C), 108.3, 108.4, 112.1, 112.3, 151.6, 151.9, 163.7, 163.9, 166.0, 166.7, 167.4, 168.4, (quat アリール-C), 159.2, 160.2, 164.8, 165.5 (C=N).
MS (EI-MS) m/z: 397.3 (M)+, 205, 192 (異性体 I), 233 (異性体 II)
【0084】
実施例4:
N−1−〔4−(ジエチルアミノ)サリシリデン〕−N′−2−(4−ヒドロキシサリシリデン)−2−メチルプロパン−1,2−ジアミン(構造式I)及びN−2−〔4−(ジエチルアミノ)サリシリデン〕−N′−1−(4−ヒドロキシサリシリデン)−2−メチルプロパン−1,2−ジアミン(構造式II)
【0085】
【化26】

【0086】
実施例1で得られたN−モノ〔4−(ジエチルアミノ)サリシリデン〕−2−メチルプロパン−1,2−ジアミン1.36g(5.17mmol)をエタノール5mlに溶解し、4−ヒドロキシサリシルアルデヒド715mg(5.17mmol)と混合し、この混合液を60℃で3時間加熱した。反応完結後〔TLCモニター、展開溶媒:酢酸エチル/メタノール(9:1)〕、反応混合物を注意しながら濃縮して残渣をカラムクロマトグラフィー〔固定相:シリカゲル250g、溶出溶媒:酢酸エチル/メタノール(9:1)〕に付して精製した。収量:244mg(12%)、異性体混合物。
13C NMR (CD3OD): δ = 12.3 (CH3CH2N), 24.1, 24.5 ((CH3)2C-), 44.6 (NCH2CH3), 57.3, 58.6 (quat C), 63.0, 66.3 (=NCH2), 98.9, 99.4, 100.1, 104.1, 104.3, 107.7, 134.6, 135.2, 135.8 (tert アリール-C), 108.2, 111.3, 111.6, 154.6, 155.1, 164.2, 165.0, 173.9, 175.9 (quat アリール-C), 158.3, 161.4, 163.5, 166.6 (C=N).
【0087】
実施例5:
N−1−〔4−(ジエチルアミノ)サリシリデン〕−N′−2−(サリシリデン)−2−メチルプロパン−1,2−ジアミン(構造式I)及びN−2−〔4−(ジエチルアミノ)サリシリデン〕−N′−1−(サリシリデン)−2−メチルプロパン−1,2−ジアミン(構造式II)
【0088】
【化27】

【0089】
実施例1で得られたN−モノ〔4−(ジエチルアミノ)サリシリデン〕−2−メチルプロパン−1,2−ジアミン13.62g(0.0517mol)をエタノール50mlに溶解して50℃に加熱し、サリシルアルデヒド5.5ml(6.31g、0.0517mol)を3分間かけて滴下した。滴下の間、反応溶液の温度は5℃上昇した。3時間還流してから放冷し、ロータリエバポレーターを用いて濃縮した。二つのジアステレオマー(I)及び(II)よりなる粗製の混合物19.31gを得、カラムクロマトグラフィー〔溶出溶媒:酢酸エチル/メタノール(9:1)〕に付して分別した。収量:(I)の4.01g(21%)、淡褐色固体;(II)の1.55g(8%)、淡褐色油状物質。
NMR データ I
13C NMR (CD3OD): δ = 12.2 (CH3CH2N), 23.9 ((CH3)2C), 44.5 (NCH2CH3), 60.1 (quat C(CH3)2), 62.0 (=NCH2), 99.4, 104.3, 117.0, 118.6, 132.4, 132.8, 135.6 (tert アリール-C), 108.3, 119.1, 155.2, 162.2 (quat アリール-C), 162.8, 163.5 (C=N).
II
13C NMR (CD3OD): δ= 12.2 (CH3CH2N), 24.7 ((CH3)2C-), 44.5 (NCH2CH3), 57.1 (quat C(CH3)2), 69.3 (=NCH2), 99.6, 104.1, 116.8, 118.9, 132.2, 132.8, 135.9 (tert アリール-C), 108.1, 119.1, 155.4, 161.4, 177.0 (quat アリール-C), 158.0, 168.4 (C=N).
【0090】
実施例6:
N−〔4−(ジメチルアミノ)サリシリデン〕−N′−(サリシリデン)−1,2−エチレンジアミン
【0091】
【化28】

【0092】
4−(ジメチルアミノ)サリシルアルデヒド5.83g(35.3mmol)及びサリシルアルデヒド4.36g(35.3mmol)をエタノール30mlに溶解して50℃に加熱し、エチレンジアミン2.27ml(2.03g、33.6mmol)を2分間かけて加えた。添加の間、反応温度は約15℃上昇した。生成した懸濁液を65℃で4時間加熱した。放冷却後、反応混合物を固化させ暗褐色固体14.2gを生成させた。この固体に酢酸エチル/メタノール(9:1)の100mlを加えて2時間撹拌した。固形物を濾取し、2回、再懸濁した。残留する固体を濾去し、濾液を濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー〔固定相:シリカゲル450g、溶出溶媒:酢酸エチル/メタノール(9:1)〕に付して精製した。収量:1.3g(12%)
13C NMR (CD3OD): δ= 39.0 (NCH3), 53.3, 60.7 (=NCH2), 104.3, 117.0, 131.9, 132.1, 132.8, 132.9, 135.0, 135.2, 163.7, 167.3 (tert アリール-C), 118.5, 157.3, 161.6, 162.3 (quat アリール-C), 163.0, 168.0 (C=N).
【0093】
実施例7:
N−1−〔4−(ジメチルアミノ)サリシリデン〕−N′−2−(サリシリデン)−2−メチルプロパン−1,2−ジアミン(構造式I)及びN−2−〔4−(ジメチルアミノ)サリシリデン〕−N′−1−(サリシリデン)−2−メチルプロパン−1,2−ジアミン(構造式II)
【0094】
【化29】

【0095】
実施例2で得られたN−モノ〔4−(ジメチルアミノ)サリシリデン〕−2−メチルプロパン−1,2−ジアミン7.67g(30.3mmol)をエタノール50mlに溶解して50℃に加熱した。この温度で、サリシルアルデヒド3.70g(30.3mmol)を滴下し、反応溶液を1時間還流加熱した。暗褐色の懸濁液を濃縮して粗生成物10.3gを得、カラムクロマトグラフィー〔固定相:シリカゲル1kg、溶出溶媒:酢酸エチル/メタノール(9:1)〕に付して精製した。収量:(I)の1.7g(16%)、帯黄色固体;(II)の0.81g(8%)、帯褐色固体。 同時に、異性体混合物2.8g(28%)を単離した〔1HNMRに基づく組成:(I)の1.75g、(II)の1.17g〕。
異性体構造式(I):
1H NMR (CDCl3): δ= 1.40 (s, 6H, CH3), 3.00 (s, 6H, NCH3), 3.60 (m, 2H, =NCH2), 6.12, 6.18, 6.83, 6.90, 6.98, 7.21, 7.25 (m, それぞれ 1H, tert アリール-H), 8.03, 8.32 (s, それぞれ 1H, CH=N).
13C NMR (CDCl3): δ= 25.0 ((CH3)2C-), 40.0 (NCH3), 60.2 (quat C(CH3)2), 68.9 (=NCH2), 98.8, 103.5, 117.1, 131.4-132.1 (tert アリール-C), 108.8, 153.7 (quat アリール-C), 118.8 (tert アリール-C および quat アリール-C), 161.3 (C=N および quat アリール-C), 165.0 (C=N および quat アリール-C).
異性体構造式(II):
13C NMR (CDCl3): δ= 25.5 ((CH3)2C), 40.1 (NCH3), 58.8 (quat C), 70.7 (NCH2), 99.2, 103.4, 117.0, 118.6, 131.6, 132.3, 132.9 (tert アリール-C), 108.9, 154.0, 161.6 (quat アリール-C), 159.5, 166.5 (C=N).
【0096】
実施例8:
N−1−〔4−(ジメチルアミノ)サリシリデン〕−N′−2−(4−ヒドロキシサリシリデン)−2−メチルプロパン−1,2−ジアミン(構造式I)及びN−2−〔4−(ジメチルアミノ)サリシリデン〕−N′−1−(4−ヒドロキシサリシリデン)−2−メチルプロパン−1,2−ジアミン(構造式II)
【0097】
【化30】

【0098】
実施例2で得られたN−モノ〔4−(ジメチルアミノ)サリシリデン〕−2−メチルプロパン−1,2−ジアミン7.67g(30.3mmol)をエタノール50mlに溶解して55℃に加熱し、この温度で、固体の2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド4.18g(30.3mmol)を加えた。次いで、原料が消失するまで反応混合物を還流加熱した〔TLCモニター、展開溶媒:酢酸エチル/メタノール(9:1)〕。灰褐色の懸濁液を濃縮し、残渣を高真空下に乾燥して粗生成物10.8gを得た。この粗生成物を酢酸エチル/メタノール(9:1)の50mlに懸濁して濾過し、濾液を濃縮し(粗生成物1.38g)、カラムクロマトグラフィー〔溶出溶媒:酢酸エチル/メタノール(9:1)〕に付して分離した。収量:290mg(3%)、化合物(I及びII)の異性体混合物。
13C NMR (DMSO-d6): δ= 26.0, 26.1 ((CH3)2C-), 40.3 (NCH3), 59.2, 59.7 (quat C, C(CH3)2), 68.6, 68.9 (NCH2), 99.0, 99.2, 103.4, 103.6, 104.1, 104.3, 107.4, 107.7, 133.6, 134.0, 134.3, 134.6 (tert アリール-C), 109.2, 109.4, 112.1, 154.4, 154.5, 162.7, 165.2, 165.5 (quat アリール-C), 161.3, 162.0, 166.3, 166.7 (C=N).
【0099】
実施例9:
N−1−〔4−(ジメチルアミノ)サリシリデン〕−N′−2−(4−メトキシサリシリデン)−2−メチルプロパン−1,2−ジアミン(構造式I)及びN−2−〔4−(ジメチルアミノ)サリシリデン〕−N′−1−(4−メトキシサリシリデン)−2−メチルプロパン−1,2−ジアミン(構造式II)
【0100】
【化31】

【0101】
実施例2で得られたN−モノ〔4−(ジメチルアミノ)サリシリデン〕−2−メチルプロパン−1,2−ジアミン7.67g(30.27mmol)をエタノール50mlに溶解して50℃に加熱し、この温度で、4−メトキシサリシルアルデヒド4.6g(30.27mmol)を加えた。この混合物を2時間還流し、冷却して濃縮した。得られた褐色の固体(12.2g)をカラムクロマトグラフィー〔固定相:シリカゲル1kg、溶出溶媒:酢酸エチル/メタノール(9:1)〕に付して精製した。収量:4.69g(42%)、異性体混合物。
13C NMR (CDCl3): δ= 25.3 ((CH3)2C), 40.3 (NCH3), 55.3 (OCH3), 58.6, 59.2 (quat C, C(CH3)2), 68.8, 69.2 (=NCH2), 98.8, 99.2, 101.2, 101.4, 103.4, 103.5, 106.2, 106.4, 132.8, 133.1 (tert アリール-C), 108.7, 108.8, 112.1, 112.3, 153.8, 154.1, 163.7, 164.0, 166.8, 167.5 (quat アリール-C), 159.5, 160.2, 165.0, 165.5 (C=N).
【0102】
実施例10:
N−〔4−(ジメチルアミノ)サリシリデン〕−N′−(4−メトキシサリシリデン)−1,2−エチレンジアミン
【0103】
【化32】

【0104】
エチレンジアミン3.87g(0.0644mol)をエタノール300mlに溶解して反応容器に入れ、エタノール60mlに溶解した4−N−(ジエチルアミノ)サリシルアルデヒド12.45g(0.0644mol)の溶液を、室温で撹拌しながらゆっくり滴下した。この混合物を2時間還流加熱し、室温に冷やした後、エタノール25mlに溶解した4−メトキシサリシルアルデヒド9.8g(0.0644mol)の溶液をゆっくり滴下した。次いで、反応混合物を1時間還流加熱し、徐々に放冷して室温で8時間撹拌した。得られた黄色の懸濁液を減圧下に濃縮し、濃縮液をカラムクロマトグラフィー〔固定相:シリカゲル、溶出溶媒:酢酸エチル/メタノール(9:1)〕に付して精製し、非対称の配位子を橙色油状物質として単離した。収量:4.00g(17%)。
13C NMR (CDCl3): δ = 12.7 (CH3CH2N), 44.4 (NCH2CH3), 55.3 (OCH3), 58.1, 58.7 (NCH2), 98.0, 101.2, 103.1, 106.3, 132.9, 133.0 (tert アリール-C), 108.3, 112.3, 151.5, 163.5 (quat アリール-C), 164.5, 165.4 (C=N).
【0105】
実施例11:
N−〔4−(ジエチルアミノ)サリシリデン〕−N′−(4−ヒドロキシサリシリデン)−1,2−エチレンジアミン
【0106】
【化33】

【0107】
4−N−(ジエチルアミノ)サリシルアルデヒド6.09g(31.5mmol)及び2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド4.35g(31.5mmol)をエタノール30mlに加え、この混合物を50℃に加熱し、エチレンジアミン2ml(1.80g、30mmol)を2分間かけて加えた。この添加の間、反応温度は約10℃上昇した。反応混合物を65℃に4時間加熱し、冷却後、濃縮して暗褐色油状物質14.2gを得た。この油状物質を酢酸エチル/メタノール(9:1)混液100mlと混合し、得られた混合物を2時間撹拌した。懸濁液を濾過して濾液を濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー〔固定相:シリカゲル450g、溶出溶媒:酢酸エチル/メタノール(9:1)〕に付して精製した。収量:1.18g(11%)、橙色油状物質。
13C NMR (DMSO-d6): δ = 13.4 (CH3CH2N), 44.6 (NCH2CH3), 57.9, 58.6 (=NCH2), 98.2, 103.5, 103.7, 107.8, 134.0, 134.3 (tert アリール-C), 108.6, 112.0, 126.3, 152.0, 162.8, 166.2 (quat アリール-C), 165.7, 166.6 (C=N).
【0108】
実施例12:
N−〔4−(ジエチルアミノ)サリシリデン〕−N′−(サリシリデン)−1,2−エチレンジアミン
【0109】
【化34】

【0110】
4−N−ジエチルアミノサリシルアルデヒド10g(51.7mmol)及びサリシルアルデヒド6.31g(51.7mmol)をエタノール50mlに溶解し、室温でエチレンジアミン3.1g(51.7mmol)を加えた。この添加の間、溶液は約40℃昇温した。反応溶液を70℃に3時間加熱してから放冷して濃縮し、赤味がかった褐色油状物質21.6gを得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー〔固定相:シリカゲル1kg、溶出溶媒:酢酸エチル/メタノール(20:1)〕に付して精製した。収量:1.5g(8.5%)。
13C NMR (CD3OD): δ = 13.5 (CH3CH2N), 46.0 (NCH2CH3), 53.3, 60.7 (=NCH2), 100.5, 105.7, 118.5, 120,3, 132.8, 133.5, 137.0 (tert アリール-C), 109.6, 156.6, 164.5, 177.2 (quat 芳香族), 163.0, 169.5 (C=N).
【0111】
実施例13:
(R,R)−N−〔4−(ジエチルアミノ)サリシリデン〕−N′−(サリシリデン)−1,2−シクロヘキサンジアミン
【0112】
【化35】

【0113】
Tetrahedron Letters 39, 4199-4202 (1998)に記載の方法に準じて製した(R,R)−N−モノ(サリシリデン)−1,2−シクロヘキサンジアミン0.2g(0.916mmol)をエタノール20mlに溶解して製造した透明な黄色溶液に、エタノール20mlに溶解した4−N−(ジエチルアミノ)サリシルアルデヒド177mg(0.916mmol)の溶液を室温で滴下した。暗赤色の反応溶液を60℃で4時間加熱してから室温まで放冷し、ロータリエバポレーターを用いて注意しながら濃縮した。赤色固体として得られた粗生成物386mgをカラムクロマトグラフィー(固定相:シリカゲル30g、溶出溶媒:酢酸エチル)に付して精製した。収量:124.0mg(34%)、蜂蜜色の蜂の巣様結晶。
13C NMR (CDCl3): δ = 12.7 (CH3CH2N), 24.2, 24.4, 33.2, (シクリル CH2), 44.4 (CH3CH2N), 70.9, 72.9 (tert シクリル CH), 97.9, 103.0, 116.7, 118.5, 131.5, 132.0, 132.9 (tert アリール-C), 108.2, 118.8, 151.3, 164.6, 165.3 (quat アリール-C), 161.1, 162.8 (C=N).
【0114】
実施例14:
(R,R)−N−〔4−(ジメチルアミノ)サリシリデン〕−N′−(サリシリデン)−1,2−シクロヘキサンジアミン
【0115】
【化36】

【0116】
上記の実施例の方法に準じ、(R,R)−N−モノ(サリシリデン)−1,2−シクロヘキサンジアミン0.5g(2.29mmol)を4−N−(ジメチルアミノ)サリシルアルデヒド0.378g(2.29mmol)と反応させた。同様な後処理を行って粗生成物(829mg)を得、カラムクロマトグラフィー〔固定相:シリカゲル、溶出溶媒:酢酸エチル/メタノール(9:1)〕に付して分離精製した。収量:318mg、淡黄色固体。
13C NMR (CDCl3): δ = 24.2, 24.4, 33.2, (シクリル CH2), 40.0 (N-CH3), 71.1, 72.9 (tert シクリル CH), 98.7, 103.4, 116.7, 118.5, 131.5, 132.0, 132.6 (tert アリール-C), 108.7, 118.7, 153.6, 161.1 (quat アリール-C), 163.2, 164.7 (C=N).
【0117】
実施例15:
(R,R)−N−(2−ヒドロキシアセトフェノン)−N′−(サリシルアルデヒド)−1,2−シクロヘキサンジアミン
【0118】
【化37】

【0119】
(R,R)−N−モノ(サリシリデン)−1,2−シクロヘキサンジアミン0.5g(2.29mmol)をエタノール50mlに溶解し、エタノール50mlに溶解した2−ヒドロキシアセトフェノン0.32g(2.29mmol)の溶液を滴下した。この混合物を8時間還流加熱した。反応混合物を冷却して濃縮し、褐色の固体714mgを得た。この粗生成物をカラムクロマトグラフィー〔溶出溶媒:トルエン/酢酸エチル(3:1)〕に付して精製した。収量:215.6mg(28%)、黄色シロップ。
13C NMR (CDCl3): δ = 14.7 (CH3), 24.2, 24.3, 32.3, 33.1 (シクリル CH2), 62.3, 73.7 (tert シクリル CH), 116.8, 117.1, 118.6, 118.7, 128.3, 131.6, 132.3, 132.4 (tert アリール-C), 119.2, 160.9, 163.9, 170.8 (quat アリール-C), 164.8 (C=N).
【0120】
実施例16:
(R,R)−N−モノ〔4−(ジエチルアミノ)サリシリデン〕−1,2−シクロヘキサンジアミン
【0121】
【化38】

【0122】
トランス−1,2−ジアミノヘキサン3.95g(34.55mmol)をクロロホルム770mlに溶解し、モレキュラーシーブ(4Å)の50gと混ぜて−3℃に冷やした。この温度で、クロロホルム250mlに溶解した4−N−(ジエチルアミノ)サリシルアルデヒド6.68g(34.55mmol)の溶液を5時間かけて滴下した。添加後、反応溶液を室温まで昇温させて8時間撹拌し、反応の経過をTLC〔展開溶媒:酢酸エチル/メタノール(8:1)〕でモニターした。反応終了後、反応溶液を濾過して濃縮し、粗生成物9.9g(100%)を得、更に精製することなく次の反応に使用した。
【0123】
実施例17:
(R,R)−N−〔4−(ジエチルアミノ)サリシリデン〕−N′−(4−ヒドロキシサリシリデン)−1,2−シクロヘキサンジアミン
【0124】
【化39】

【0125】
(R,R)−N−モノ〔4−(ジエチルアミノ)サリシリデン〕−1,2−シクロヘキサンジアミン2.5g(8.64mmol)をエタノール200mlに懸濁し、2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド1.19g(8.64mmol)の溶液を45分かけて室温で滴下した。この懸濁液を60℃で4時間加熱した後、室温に冷やし、生成した帯褐色の橙色溶液を濃縮乾固した。粗生成物(3.5g)をカラムクロマトグラフィー〔溶出溶媒:酢酸エチル/メタノール(9:1)〕に付して分割した。収量:570mg(16%)、黄橙色固体。
13C NMR (CDCl3): δ = 12.4(CH3CH2N), 23.8, 32.7, 32.8 (シクリル-CH2), 43.7 (CH3CH2), 70.2, 70.6 (tert シクリル CH), 97.1, 102.3, 102.7, 106.7, 132.8, 133.1 (tert アリール-C), 107.6, 111.1, 150.7, 161.4, 163.9 (quat アリール-C), 163.1, 163.8 (C=N).
【0126】
実施例18:
(R,R)−N−〔4−(ジエチルアミノ)サリシリデン〕−N′−(4−メトキシサリシリデン)−1,2−シクロヘキサンジアミン
【0127】
【化40】

【0128】
(R,R)−N−モノ〔4−(ジエチルアミノ)サリシリデン〕−1,2−シクロヘキサンジアミン2.5g(8.64mmol)をエタノール200mlに懸濁し、エタノール200mlに溶解した4−メトキシサリシルアルデヒド1.3g(8.64mmol)の溶液を45分かけて室温で滴下した。反応溶液を60℃で4時間加熱し、室温に冷やした後、濃縮乾固した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー〔溶出溶媒:酢酸エチル/メタノール(9:1)〕に付して精製した。収量:500mg(14%)、徐々に結晶化する帯赤色橙色油状物質。
13C NMR (CDCl3): δ = 12.7 (CH3CH2N), 24.3, 33.2 (シクリル-CH2), 44.4 (CH3CH2N), 55.3 (OCH3), 70.9, 71.5, 71.6 (tert シクリル CH), 98.0, 101.1, 103.0, 106.1, 106.2, 132.9 (tert アリール-C), 108.2, 112.3, 151.3, 165.5 (quat アリール-C), 162.9, 163.7 (C=N).
【0129】
マンガン錯体の合成:
実施例19:
〔N−〔4−(ジエチルアミノ)サリシリデン〕−N′−(4−メトキシサリシリデン)−1,2−エチレンジアミナト〕マンガン(III)−クロリド
【0130】
【化41】

【0131】
実施例10で得られた配位子200mg(0.541mmol)をエタノール11mlに溶解し、透明な橙色溶液に酢酸マンガン(II)4水和物133mg(0.541mmol)を加えた。溶液の色調は暗赤色に変化し、沈殿物を形成した。この混合物を70℃で4時間加熱して沈殿物を溶解した。次いで、ロータリエバポレーターを用いて反応溶液を濃縮乾固した。得られた固体306mgを蒸留水11mlに溶解し、塩化ナトリウム0.54gを加えて生成物を沈殿させ、10分間撹拌し、濾取して真空下に50℃で乾燥した。収量:220mg(89%)、帯赤色黒色固体。
【0132】
実施例20:
〔N−2−〔4−(ジエチルアミノ)サリシリデン〕−N′−1−(サリシリデン)−2−メチルプロパン−1,2−ジアミナト〕マンガン(III)−クロリド
【0133】
【化42】

【0134】
実施例5で得られた配位子(II)の1.2g(3.25mmol)をエタノール65mlに溶解し、この黄橙色溶液に酢酸マンガン(II)4水和物0.80g(3.25mmol)を室温で加えた。溶液の色調は赤色に変化した。反応混合物を65〜70℃で4時間加熱して濃縮乾固した。残渣を蒸留水65mlに溶解し、塩化ナトリウム3.25gを加えて錯体を沈殿させ、濾取して単離し、恒量になるまで高真空下に50℃で乾燥した。収量:1.1g(74%)、赤味がかった褐色固体。
【0135】
実施例21:
〔N−1−〔4−(ジメチルアミノ)サリシリデン〕−N′−2−(サリシリデン)−2−メチルプロパン−1,2−ジアミナト〕マンガン(III)−クロリド
【0136】
【化43】

【0137】
実施例7で得られた配位子(I)の1g(2.95mmol)をエタノール60mlに懸濁し、酢酸マンガン(II)4水和物0.72g(2.95mmol)を加えた。実施例20の方法に準じ、反応及び後処理を行った(塩化ナトリウム6gを加えて沈殿させた)。収量:924mg(73%)、帯赤色褐色固体。
【0138】
実施例22:
〔N−2−〔4−(ジメチルアミノ)サリシリデン〕−N′−1−(サリシリデン)−2−メチルプロパン−1,2−ジアミナト〕マンガン(III)−クロリド
【0139】
【化44】

【0140】
実施例7で得られた配位子(II)の529mg(1.56mmol)をエタノール30mlに溶解し、酢酸マンガン(II)4水和物380mg(1.56mmol)と反応させ、実施例20の方法に準じ、塩化ナトリウム3.1gを加えて生成物を沈殿させた。収量:929mg。この金属錯体は塩化ナトリウムを含んでいたが、更に精製することなく使用した。
【0141】
実施例23:
〔N−〔4−(ジエチルアミノ)サリシリデン〕−N′−(4−ヒドロキシサリシリデン)−1,2−エチレンジアミナト〕マンガン(III)−クロリド
【0142】
【化45】

【0143】
実施例11で得られた配位子300mg(0.844mmol)をエタノール17mlに懸濁し、この懸濁液に酢酸マンガン(II)4水和物207mg(0.844mmol)を加えた。赤色への色調変化があった。反応混合物を30分間還流加熱してから65〜70℃に3時間保持した。この溶液を濃縮して生成させた固形物419mgを蒸留水17mlに溶解し、塩化ナトリウム0.84gを加えて錯体を沈殿させ、濾取して乾燥した。収量:314mg(84%)、暗赤色固体。
【0144】
実施例24:
〔N−1−〔4−(ジエチルアミノ)サリシリデン〕−N′−2−(4−メトキシサリシリデン)−2−メチルプロパン−1,2−ジアミナト〕マンガン(III)−クロリド(構造式I)及び〔N−2−〔4−(ジエチルアミノ)サリシリデン〕−N′−1−(4−メトキシサリシリデン)−2−メチルプロパン−1,2−ジアミナト〕マンガン(III)−クロリド(構造式II)
【0145】
【化46】

【0146】
実施例3で得られた配位子(異性体の混合物)の3g(7.5mmol)をエタノール150mlに溶解し、この淡褐色溶液(高レベルの希釈度では黄色)に酢酸マンガン(II)4水和物1.85g(7.5mmol)を加えた。色調は直ちに赤色に変化した。透明な溶液を65〜70℃に4時間加熱し、冷却後、濃縮した。得られた暗赤色油状物質(4.33g)を蒸留水150mlに溶解し、塩化ナトリウム7.5gを加えて錯体を沈殿させ、濾過して単離し、乾燥した。収量:2.68g(73%)、暗赤色固体、異性体の混合物。
【0147】
実施例25:
〔N−〔4−(ジエチルアミノ)サリシリデン〕−N′−(サリシリデン)−1,2−エチレンジアミナト〕マンガン(III)−クロリド
【0148】
【化47】

【0149】
実施例12で得られた配位子194mg(0.57mmol)をエタノール10mlに溶解し、酢酸マンガン(II)4水和物140mg(0.57mmol)を加えた。帯赤色褐色から血赤色への色調変化があった。反応溶液を3時間還流下に沸騰させ、一夜撹拌しながら放置し、更に3時間加熱した。冷却後、反応溶液を濃縮乾固して残渣を蒸留水10mlに溶解し、塩化ナトリウム1.5gを加えて生成物を沈殿させ、濾過して単離し、高真空下に乾燥した。この生成物は塩化ナトリウムを含んでいたが、更に精製することなしに使用した。
【0150】
実施例26:
〔N−1−〔4−(ジエチルアミノ)サリシリデン〕−N′−2−(サリシリデン)−2−メチルプロパン−1,2−エチレンジアミナト〕マンガン(III)−クロリド
【0151】
【化48】

【0152】
実施例5で得られた配位子(I)の1.5g(4.08mmol)をエタノール80mlに溶解し、酢酸マンガン(II)4水和物1.0g(4.08mmol)を加えた。得られた溶液を65℃で2時間加熱した。冷却後、反応溶液を濃縮乾固して残渣を蒸留水80mlに溶解し、塩化ナトリウム4.1gを加えて生成物を沈殿させ、濾過して単離し、高真空下に乾燥した。収量:1.51g(81%)。
【0153】
実施例27:
〔N−〔4−(ジメチルアミノ)サリシリデン〕−N′−(サリシリデン)−1,2−エチレンジアミナト〕マンガン(III)−クロリド
【0154】
【化49】

【0155】
実施例6で得られた配位子110mg(0.353mmol)をエタノール5mlに溶解し、酢酸マンガン(II)4水和物86.5mg(0.353mmol)を加えた。得られた赤褐色の溶液を65℃で2時間加熱した。冷却後、反応溶液を濃縮乾固して残渣を蒸留水5mlに溶解し、塩化ナトリウム200mgを加えて生成物を沈殿させ、濾過して単離し、高真空下に乾燥した。収量:61mg(43%)。
【0156】
実施例28:
(R,R)−N−〔4−(ジメチルアミノ)サリシリデン〕−N′−(4−ヒドロキシサリシリデン)−1,2−シクロヘキサンジアミン
【0157】
【化50】

【0158】
(R,R)−N−モノ(4−ジメチルアミノサリシリデン)−1,2−シクロヘキサンジアミン2.5g(9.56mmol)をエタノール225mlに溶解し、エタノール225mlに溶解した2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド1.321g(9.56mmol)の溶液を室温で45分かけて滴下した。反応溶液を60℃で4時間加熱し、冷却後、生成した赤味を帯びた褐色溶液を濃縮乾固した。粗生成物(約5g)をカラムクロマトグラフィー〔溶出溶媒:酢酸エチル/メタノール(9:1)〕に付して分割した。収量:1.09g(30%)、黄橙色固体。
13C NMR (DMSO-d6): δ = 23.7, 32.7, 32.8 (シクリル CH2), 40.0 (NCH3), 70.3, 70.7 (tert. シクリル CH), 97.9, 102.3, 103.2, 106.7, 132.5, 133.1 (tert. アリール-C), 108.1, 111.1, 153.1, 161.4 (quart. アリール-C), 163.4, 163.9 (C=N).
【0159】
実施例29:
(R,R)−N−〔4−(ジメチルアミノ)サリシルアルデヒド〕−N′−(2−ヒドロキシアセトフェノン)−1,2−シクロヘキサンジイミン
【0160】
【化51】

【0161】
(R,R)−N−モノ(4−ジメチルアミノサリシリデン)−1,2−シクロヘキサンジアミン2.5g(9.56mmol)をエタノール225mlに溶解し、エタノール225mlに溶解した2−ヒドロキシアセトフェノン1.30g(9.56mmol)の溶液を滴下した。反応溶液を60℃で8時間加熱した。生成した赤味を帯びた褐色の透明な溶液を室温で、更に4時間撹拌し、高真空下に濃縮乾固した。粗生成物(3.6g、暗赤色油状物質)をカラムクロマトグラフィー〔溶出溶媒:酢酸エチル/メタノール(9:1)〕に付して分割した。収量:1.60g(44%)、帯赤色橙色泡状物質。
13C NMR (CDCl3): δ = 14.7 (CH3), 24.2, 24.3, 32.4, 33.2 (シクリル CH2), 40.0 (NCH3), 62.3, 72.2 (tert. シクリル CH), 98.6, 103.4, 116.8, 118.6, 128.3, 132.3, 132.7 (tert. アリール-C), 108.6, 119.1, 153.6, 164.3, 170.9 (quart. アリール-C), 163.2 (C=N).
C23H29N3O2 (379.5)
【0162】
実施例30:
N−モノ〔4−(ジエチルアミノ)サリシリデン〕−1,2−フェニレンジアミン
【0163】
【化52】

【0164】
1,2−フェニレンジアミン1.927g(17.64mmol)をエタノール18mlに溶解し、4−(N,N−ジエチルアミノ)サリシルアルデヒド3.479g(17.64mmol)を少しずつ5℃で加え、温度を10℃以下に保持した。生成した暗赤色の懸濁液を室温で8時間撹拌して、減圧下に濃縮乾固した。粗生成物(6.34g)をカラムクロマトグラフィー〔溶出溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル(65:35)〕に付して分離した。収量:1.27g(26%)、黄金色の黄色結晶。
13C NMR (CDCl3): δ = 12.7 (CH3), 44.6 (CH2), 97.6, 103.7, 115.4, 118.2, 118.8, 126.6, 133.7 (tert. アリール-C), 109.3, 136.4, 140.4, 151.6, 163.2 (quart. アリール-C), 160.9 (C=N).
【0165】
実施例31:
N−〔4−(ジエチルアミノ)サリシリデン〕−N′−(サリシリデン)−1,2−フェニレンジアミン
【0166】
【化53】

【0167】
実施例30で得られたN−モノ〔4−(ジエチルアミノ)サリシリデン〕−1,2−フェニレンジアミン0.3g(1.06mmol)をエタノール2mlに懸濁した黄褐色の懸濁液に、サリシルアルデヒド129mg(112μl、1.06mmol)を60℃で滴下した。反応溶液を75℃で5時間撹拌し、室温に冷やして濃縮乾固した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー〔溶出溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル(65:35)〕に付して分離した。収量:139mg(34%)、無色油状物質。
13C NMR (CDCl3): δ= 11.7 (CH3CH2N), 44.4 (CH3CH2N), 97.0, 102.4 (tert. アリール-H), 116.5-119.0, 125.1, 126.6, 130.0-132.0 (tert. アリール-C), 108.3, 118.3, 141.1, 141.4, 151.2, 160.3 (quart. アリール-C), 159.5, 162.4 (C=N).
C24H25N3O2 (387.5)
【0168】
実施例32:
非対称及び対称のマンガン(III)−サレン錯体混合物の製造
記載の非対称サレン錯体は、複雑な精製をすることなく、異なる金属錯体の混合物として使用することができる。
実施例5で得られた粗製の混合物4.74gをエタノール250mlに溶解して透明な褐色の溶液とし、酢酸マンガン(II)4水和物3.17g(12.9mmol)を加えた。反応液の色調は赤に変化した。反応混合物を65〜70℃で4時間加熱してから濃縮乾固した。生成した固体を蒸留水250mlに溶解し、塩化ナトリウム26gを加えて塩析して真空下に乾燥した。この粗製混合物は、実施例20及び26で得られた非対称の金属錯体及び構造式:
【0169】
【化54】

【0170】
の対称配位子の金属錯体を含んでいた。
【0171】
実施例33:
触媒の有効性を調べるために、DTI効率を測定した。DTI(Dye transfer inhibition;染料移動阻害)効率aは、以下のパーセントとして定義される:
a=(〔Y(E)−Y(A)〕/〔Y(W)−Y(A)〕)*100
式中、Y(W)、Y(A)及びY(E)は、その順に、白色材料、触媒を添加せずに処理した材料及び触媒を添加して処理した材料のCIE明度である。a=0は、洗濯液への添加が染料移動を制御しない完全に無効な製品の特性を表す。一方、a=100%は、白色の生地の染色を完全に抑制する完全な触媒に相当する。
【0172】
試験データは、次の試験系を用いて決定した:白色綿織物7.5gを洗濯液80ml中で処理する。この洗濯液は、7.5g/lの濃度で標準の洗剤ECEリン酸なし(456 IEC)EMPA(スイス)、H22の8.6mmol/l及び試験染料溶液を含んでいる。洗濯の方法は、LINITEST装置の計量カップ中、40℃で30分間行う。このテストで、触媒は所定の濃度で標準通りに用いた。
【0173】
試験染料として、以下の市販で得られる染料を使用した:
染料1 (F1) Direct Brown 172
染料4 (F4) Reactive Blue 238
染料6 (F6) Reactive Black 5
染料8 (F8) Direct Blue 71
染料9 (F9) Direct Black 22
染料10 (F10) Anionic Blue 113
染料13 (F13) Disperse Violet 1
染料14 (F14) Reactive Blue 19
【0174】
試料の反射スペクトルは、SPECTRAFLASH 2000(Mn錯体)を用いて測定し、CIEの標準法によって明度(D65/10)に変換した。
【0175】
下記の表は実施例24で得られた触媒(Mn錯体)を用いた結果を示した。表は、上記の実施条件下で触媒濃度の関数としてDTI効果(a)を示している。
【0176】
【表1】

【0177】
下記の表は、実施例24で得られた触媒は、各種クラスの染料の再沈殿を非常に有効に防止することを示す。ここに記載する数値は、50μmol/lの触媒濃度及び上記と同じ実験条件に関連している。
【0178】
【表2】

【0179】
触媒は、20℃のみの実施温度でさえも、40℃で見られた保護作用の大多数が保持されるもう一つの特徴を有している。
【0180】
【表3】

【0181】
触媒は、着色された洗濯物に関して許容される損傷の均衡を特徴とする。染料損傷に関しては、高度に感受性であることが知られている染料を用いる場合にも、分解はTAED−活性化漂白系で見られるのと同程度の量に過ぎない。酸素漂白剤の領域で、従来、後者は許容される損傷/利益の均衡を有すると考えられている。上記のように用いられる場合、以下の染料損失百分率は5回の処理後に見られる。
【0182】
【表4】

【0183】
染色された材料に及ぼす繊維損傷に関して、触媒は引用したTAED系よりも優れた均衡を示す。上記のように用いられる場合、以下の相対的DP低下は、5回の処理後に見られる。
【0184】
【表5】

【0185】
実施例34:
以下の単離された配位子を用いて実施したDTIスクリーニングは、本来の方法によってスクリーニングする直前にマンガン錯体に変換され、表6に示す結果を与えた。
【0186】
【表6】

【0187】
表7に、単離されたMn錯体を用いてDTIスクリーニングを実施した場合に得られた結果を示した。
【0188】
【表7】

【0189】
実施例35:
記載された非対称のサレン錯体は、過酸化物濃度を減少した場合にも優れた作用を呈する。過酸化物濃度を8.6mMから0.17mMに減らした場合にも、DTI効果は十分に維持されている。以下の表8に、過酸化物量を減らした場合、実施例20で得られた金属錯体の効果を示した。
【0190】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯液中へ移行した染料の再沈殿を防止する方法であって、
式(1):
【化1】


(式中、
nは、0、1、2又は3であり、
mは、1、2又は3であり、
Aは、アニオンであり;
Yは、直鎖若しくは分岐鎖の式−〔C(R5)2−(ここで、rは、1〜8の整数であり、そしてR5基は、互いに独立して、水素又はC1−C4アルキルである)のアルキレン基、−CX=CX−(ここで、Xは、シアノ、直鎖若しくは分岐鎖のC1−C8アルキル又はジ(直鎖若しくは分岐鎖のC1−C8アルキル)−アミノである)、−(CH2)q−NR4−(CH2)q−(ここで、R4は、水素又は直鎖若しくは分岐鎖のC1−C4アルキルであり、そしてqは、1、2、3又は4である)であるか、又は下記式:
【化2】


の1,2−シクロヘキシレン基のいずれか、又は下記式:
【化3】


(上記式中、
9は、SO3H、CH2OH又はCH2NH2である)
の1,2−アリーレン基のいずれかであり、
R及びRは、互いに独立して、シアノ、ハロゲン、OR5若しくはCOOR5(ここで、R5は、水素又は直鎖若しくは分岐鎖のC1−C4アルキルである)、又はニトロ、直鎖若しくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖若しくは分岐鎖の、かつ部分的にフルオロ若しくはペルフルオロ化C1−C8アルキル、NHR6若しくはNR67(ここで、R6及びR7は、同一若しくは異なり、かつそれぞれ直鎖若しくは分岐鎖のC1−C12アルキルであるか、又はR6とR7は、それらを結合する窒素原子と一緒になって、5−、6−若しくは7−員環(それらは、ヘテロ原子を更に含んでいてもよい)を形成する)、又は直鎖若しくは分岐鎖のC1−C8アルキル−R8(ここで、R8は、上記の意味を有する、OR5、COOR5若しくはNR67、又はNH2である)、又は−N+467(ここで、R4、R6及びR7は、上記と同義である)であり、
2及びR3は、互いに独立して、水素、直鎖若しくは分岐鎖のC1−C4アルキル又は非置換アリール、あるいはシアノ、ハロゲン、OR5若しくはCOOR5(ここで、R5は、水素又は直鎖若しくは分岐鎖のC1−C4アルキルである)、又はニトロ、直鎖若しくは分岐鎖のC1−C8アルキル、NHR6若しくはNR67(ここで、R6及びR7は、同一若しくは異なり、かつ上記と同義である)、又は直鎖若しくは分岐鎖のC1−C8アルキル−R8(ここで、R8は、上記の意味を有する、OR5、COOR5若しくはNR67、又はNH2である)、又は−N+467(ここで、R4、R6及びR7は、上記と同義である)で置換されているアリールであるが、ただし
n及びmが同一であるならば、R及びR1は、同じ意味を有さない)で示される1種以上の化合物を、過酸化物含有洗剤を含む洗濯液1リットル当たり0.5〜150mg加えること含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
洗濯液1リットル当り、1種以上の式(1)の化合物1.5〜75mgを加える、請求項1記載の方法。
【請求項3】
洗濯液1リットル当り、1種以上の式(1)の化合物7.5〜40mgを加える、請求項2記載の方法。
【請求項4】
アニオンAが、ハライド、ペルクロラート、スルファート、ニトラート、ヒドロキシド、BF4-、PF6-、カルボキシラート、トリフラート又はトシラートである、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
アニオンAが、クロリド又はアセタートである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
Yが、式−(CH2)r−(ここで、rは、1〜8の整数である)又は式−C(R5)2−(CH2)p−C(R5)2−(ここで、pは、0〜6の数であり、そしてR5は、水素又はC1−C4アルキルである)の基である、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
Yが、式−(CH2)r−(ここで、rは、1〜4の整数である)又は式−C(R5)2−C(R5)2−(ここで、R5は、それぞれの場合に独立して、水素又はメチルである)の基である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
ハロゲンが、塩素、臭素又はフッ素、特に塩素である、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
n及び/又はmが、1であり、そしてR及び/又はR1が、ニトロ及びCOOR5を除いて上記と同義であり、かつそれぞれのベンゼン環の4位に位置している、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
n及び/又はmが、1であり、そしてR及び/又はR1が、ニトロ又はCOOR5であり、かつそれぞれのベンゼン環の5位に位置し、そしてR5が、水素又は直鎖若しくは分岐鎖のC1−C4アルキルである、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
n及び/又はmが、2であり、そしてR及び/又はR1が、ニトロ及びCOOR5を除いて上記と同義であり、かつそれぞれのベンゼン環の4位及び6位に位置している、請求項1〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
n及び/又はmが、2であり、そしてR及び/又はR1が、ニトロ又はCOOR5であり、かつそれぞれのベンゼン環の3位及び5位に位置している、請求項1〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
R及びR1が、ニトロ、OR5、COOR5又はN(R52(ここで、R5は、水素又はC1−C4アルキル、特に、メチル又はエチルである)である、請求項1〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
式(1a):
【化4】


(式中、
nは、0、1、2又は3であり、
mは、1、2又は3であり、
Aは、アニオンであり;
Yは、直鎖若しくは分岐鎖の式−〔C(R5)2−(ここで、rは、1〜8の整数であり、そしてR5基は、互いに独立して、水素又はC1−C4アルキルである)のアルキレン基、−CX=CX−(ここで、Xは、シアノ、直鎖若しくは分岐鎖のC1−C8アルキル又はジ(直鎖若しくは分岐鎖のC1−C8アルキル)−アミノである)、−(CH2)q−NR4−(CH2)q−(ここで、R4は、上記と同義であり、そしてqは、1、2、3又は4である)であるか、又は下記式:
【化5】


の1,2−シクロヘキシレン基のいずれか、又は下記式:
【化6】


(上記式中、
9は、SO3H、CH2OH又はCH2NH2である)
の1,2−アリーレン基のいずれかであり、
R及びRは、互いに独立して、シアノ、ハロゲン、OR5若しくはCOOR5(ここで、R5は、水素又は直鎖若しくは分岐鎖のC1−C4アルキルである)、又はニトロ、直鎖若しくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖若しくは分岐鎖の、かつ部分的にフルオロ若しくはペルフルオロ化C1−C8アルキル、NHR6若しくはNR67(ここで、R6及びR7は、同一若しくは異なり、かつそれぞれ直鎖若しくは分岐鎖のC1−C12アルキルであるか、又はR6とR7は、それらと結合する窒素原子と一緒になって、5−、6−若しくは7−員環(それらは、ヘテロ原子を更に含んでいてもよい)を形成する)、又は直鎖若しくは分岐鎖のC1−C8アルキル−R8(ここで、R8は、上記の意味を有する、OR5、COOR5若しくはNR67、又はNH2である)、又は−N+467(ここで、R4、R6及びR7は、上記と同義である)であり、
2及びR3は、互いに独立して、水素、直鎖若しくは分岐鎖のC1−C4アルキル又は非置換アリール、あるいはシアノ、ハロゲン、OR5若しくはCOOR5(ここで、R5は、水素又は直鎖若しくは分岐鎖のC1−C4アルキルである)、又はニトロ、直鎖若しくは分岐鎖のC1−C8アルキル、NHR6若しくはNR67(ここで、R6及びR7は、同一若しくは異なり、かつそれぞれ直鎖若しくは分岐鎖のC1−C12アルキルであるか、又はR6とR7は、それらに結合する窒素原子と一緒になって、5−、6−若しくは7−員環(それらは、ヘテロ原子を更に含んでいてもよい)を形成する)、又は直鎖若しくは分岐鎖のC1−C8アルキル−R8(ここで、R8は、上記の意味を有する、OR5、COOR5若しくはNR67、又はNH2である)、又は−N+467(ここで、R4、R6及びR7は、上記と同義である)で置換されているアリールであるが、ただし
n及びmが同一であり、かつR2及びR3が両方水素であるならば、R及びR1は、同じ意味を有さず、かつR2及びR3のうち、一方が水素であり、他方がフェニルである場合はない)で示される化合物。
【請求項15】
n及びmが、それぞれの場合に互いに独立して、1、2又は3であり、Aが、クロリド、アセタート、トリフラート又はトシラートであり、Yが、式−(CH2)r−(ここで、rは、1〜8の整数である)又は式−C(R5)2−(CH2)p−C(R5)2−(ここで、pは、0〜6の数であり、そしてR5は、水素又はC1−C4アルキルである)の基であり、R及びR1が、ニトロ、OR5、COOR5又はN(R5)2(ここで、R5は、水素又はC1−C4アルキル、特に、メチル又はエチルである)である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
式(2):
【化7】


(式中、
R、R1、R2、R3、Y、n及びmは、式(1a)と同義である)で示される化合物。
【請求項17】
請求項16記載の式(2)の化合物を製造する方法であって、
まず、式H2N−Y−NH2のジアミンを、式(3):
【化8】


のアルデヒド又はケトンと反応させ、次いで式(4):
【化9】


(上記式中、
R、R1、R2、R3、n及びmは、式(1a)と同義である)のアルデヒド又はケトンと反応させることを特徴とする方法。
【請求項18】
下記式:
【化10】


の化合物又は下記式:
【化11】


の化合物。
【請求項19】
1)アニオン界面活性剤A)及び/又は非イオン界面活性剤B)5〜90%、2)ビルダー物質C)5〜70%、3)過酸化物D)0.1〜30%及び4)請求項1記載の式(1)の化合物E)0.005〜2%(ここで、パーセントは、洗剤の全重量に基づいての重量%である)を含む洗剤。
【請求項20】
1)アニオン界面活性剤A)及び/又は非イオン界面活性剤B)5〜70%、2)ビルダー物質C)5〜50%、3)過酸化物D)1〜12%及び4)請求項1記載の式(1)の化合物E)0.02〜1%(ここで、パーセントは、洗剤の全重量に基づいての重量%である)を含む、請求項19の洗剤。
【請求項21】
1)アニオン界面活性剤A)及び/又は非イオン界面活性剤B)5〜70%、2)ビルダー物質C)5〜40%、3)過酸化物D)1〜12%及び4)請求項1記載の式(1)の化合物E)0.1〜0.5%(ここで、パーセントは、洗剤の全重量に基づいての重量%である)を含む洗剤。
【請求項22】
ポリビニルピロリドン0.05〜5重量%、特に0.2〜1.7重量%を、更に含む、請求項19〜21のいずれか1項記載の洗剤。
【請求項23】
TAED0.05〜5重量%、特に0.2〜1.7重量%を、更に含む、請求項19〜22のいずれか1項記載の洗剤。
【請求項24】
式(1)の化合物を、相当する類似の対称マンガン錯体、すなわち(R)n及び(R1)mが同一である式(1)の化合物と一緒に用いる、請求項1記載の方法。

【公開番号】特開2009−67796(P2009−67796A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−242113(P2008−242113)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【分割の表示】特願平11−87332の分割
【原出願日】平成11年3月30日(1999.3.30)
【出願人】(396023948)チバ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Holding Inc.
【Fターム(参考)】