説明

繊維材料を特に吸尽法によって処理するための組成物

吸尽法によってポリエステル材料の難燃仕上げを与えることに役立ち、リン酸のトリエステル、ポリエステルおよびアミンまたはアンモニウム塩ならびに水を含む組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維材料を処理するための組成物に関するものである。
【0002】
たとえば織物のような繊維材料をある種の液体組成物で処理することによって、難燃性をそれらに与えることが公知である。この種の多数の公知組成物は、リン化合物を含有する。これは、とりわけ米国特許第3,374,292号明細書、ドイツ国特許出願公開第25 09 592号公報、ならびにChemical Abstracts中の特開2004−225175号公報および特開2004−225176号公報の抄録(AN 141:175439 CAおよびAN 141:175 440 CA)から明らかである。国際公開第2004/060990号公報、ならびにAN2006−806707によるダーウェント(Derwent)刊行物(特開平18−299,486Aに関する)、国際公開第00/11085号および第99/67326号公報も難燃組成物に関連して列挙するに値する。
【0003】
難燃性にするために繊維材料を処理することは、公知であるとおり、様々な方法に従うことによって実施することができる。いくつかの場合、難燃組成物を吹付けによって適用することができる。しかし、あり得る成分の吹付け能力が問題となり得ること、および吹付けを実施する人々に対する危険性があり得ることのために、吹付けには限界が存在する。
【0004】
より頻繁に用いられる方法は、パディング法によって繊維材料を浴浸する方法である。しかし、パディング法では、パッド液中に存在する難燃剤のいくらかが繊維材料に行き着くに過ぎず、高価な製品のかなりの損失をもたらし得る。
【0005】
吸尽法は、パディング法の上記の短所からほとんどまたは完全に免れる。吸尽法では、繊維材料を、たとえば難燃剤のような活性物質を含有する水溶液で処理し、繊維材料は、これらの活性物質を定量的またはほぼ定量的に吸収するため、その適用の途上で、この液体から、これらの活性物質は枯渇する。合成または混合繊維に様々な等級の難燃性を生じさせるための公知の多数の方法には、様々な短所があり、中でも洗濯に対する耐久性の欠如が最も多く言及される。現在最もよく知られた方法は、表面処理、次いで180〜210℃でのサーモゾル法(thermosoling)に付すことからなる。この目的のために頻用される環状ホスホネートは、固着する前は容易に水溶性であり、サーモゾル法なしでは洗濯に対する耐久性がない。しかし、ポリマー性難燃剤は、表面に留まって、布地にとってより粗い手触りへと導くのが常である。乾式加熱または高温サーモゾル法による繊維表面での固着とは対照的に、吸尽法によって高温の液体から繊維に導入された難燃剤は、一回の操作で同時に染色物と結合することができる。そのような処理のための装置の例は、米国特許第3,922,737号明細書から公知である。しかし、染色物と結合しなくてさえ、そのような処理は、著しい利点、たとえば優れた耐久性をサーモゾル法なしに生じる。
【0006】
しかしながら、問題は、組成物が、水性分散体の形態にあると、吸尽法に特に役立つが、この分散体は高い安定性がないことである。対照的に、パディング法に用いられる水性分散体は、長期間の貯蔵でもそれらの成分に分離しないためには、優れた安定性を保有しなければならない。
【0007】
いくつかの先行技術による組成物は、長期の貯蔵時間後も優れた安定性を有する水性分散体である。そのような分散体は、パディング法には役立つが、吸尽法では有効性が限られている。その理由は、パディング法で最適の結果へと導くには、分散安定性が限られているからである。
【0008】
加えて、先行技術による組成物には、難燃仕上げに用いたときに更なる短所がある。
【0009】
たとえば、先行技術による組成物が許容され得る火炎防護を達成するには、比較的に大量のリン化合物を要することが多い。これは、繊維材料が全面的または主にポリエステルからなるときでさえ該当する。
【0010】
本発明は、全面的または主にポリエステルからなる繊維材料に、優れた難燃仕上げを与えるのを可能にする組成物を提供することをその目的に有するものであって、繊維材料の組成物についての、リン化合物を含む公知の仕上げの場合より少ない付加量で優れた難燃性能が必ず達成され、およびそれが特に吸尽法での使用に非常に適している。更に、本発明は、繊維材料、特にポリエステルで構成される繊維材料を処理して、吸尽液が更に染料および/またはUV吸収剤を含有するときでさえ、処理される繊維材料の部分へ優れた難燃特性をもたらす方法を開発することをその目的に有する。
【0011】
本発明者らは、この目的は、少なくとも成分A、成分B、成分Cおよび成分Dを含む組成物であって、
該成分Aは、リン酸のトリエステルであり、
該成分Bは、アルコールから誘導される単位中にいかなる芳香族の基も含まず、かつ酸から誘導される単位の0〜10%が芳香族の基を含む、ポリエステルであり、
該成分Cは、アミン、好ましくは第二級アミンもしくはポリマー性アミン、またはアンモニウム塩であって、そのアンモニウム塩の陽イオンがNR4+(R基の少なくとも一つは、1〜22個の炭素原子を有するアルキルである)の形態であり、
該成分Dは、水であり、
該成分A、BおよびCは、いずれも、単一の成分A生成物、成分B生成物および成分C生成物のそれぞれに代えて、成分A、BおよびCのそれぞれの二つまたはそれ以上の混合物の形態であってもよい
組成物、ならびに繊維材料を処理する方法であって、好ましくは吸尽法によって、該繊維材料を列挙された種類の組成物に接触させる方法によって達成されることを見出した。
【0012】
本発明の組成物による処理は、優れた難燃特性を繊維材料に与える。この繊維材料は、繊維または紡糸であることができ、好ましくは、織布または不織布の形態をなす織物である。本発明の組成物は、80〜100重量%にわたる範囲までポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートからなる繊維材料に、優れた難燃特性を与えさえする。そのようなポリエステル材料を処理することは、本発明の組成物にとっての好適な用途を構成する。しかし、その他の繊維材料も、難燃性にすることができるのであって、その例は、80重量%未満のポリエステルを含有するウールまたは繊維混合物で構成される繊維材料である。
【0013】
本発明の組成物は、吸尽法での使用に特に適する。それらは、これらの吸尽法が、たとえば60〜100℃の範囲の、比較的低い温度で実施することができる点で、特に追加的な利点を有する。
【0014】
本発明の組成物は、好ましくは、限られた(貯蔵)安定性を有するにすぎず、そのため吸尽法に非常に役立つ水性分散体である。成分Cがこの限られた安定性の原因である。
【0015】
本発明の組成物を調製する好適な方法は、成分A、BおよびDを含むが、成分Cは含まない安定な水性分散体を初めに調製することからなる。この安定な水性分散体は、典型的には、本発明のその後の組成物より少ない水を含有することになる。それは、本発明の組成物のより濃縮された前駆物質であるが、いかなる成分Cも未だ含有しない。この濃縮分散体は、安定であり、長期間貯蔵することができる。繊維材料を処理するためのその使用の直前に、この濃縮分散体を希釈し、成分Cを加えて、吸尽法向けの適切さを改良する。
【0016】
単一の成分A、BまたはCに代えて、本発明の組成物は、成分Aの上記の定義内に属する二つまたはそれ以上の生成物Aを含んでもよく、同じことが成分BおよびCにも該当する。
【0017】
本発明の組成物を調製する好適な方法は、成分A、B、D、および一つまたはそれ以上の分散剤を含む、20〜80重量%の濃度(これは、組成物中の水以外のすべての成分の全部の存在を意味する)を有する水性分散体を初めに調製し、使用直前に水および成分Cを、最終組成物が88〜98重量%、好ましくは93〜97重量%の水、および5〜20g/lの該成分Cを含むような量で加えることにある。本発明の最終組成物中の成分A対成分Bの重量比は、好ましくは0.8:1〜1.5:0.4の範囲内、好ましくは2.0:1〜2.5:1の範囲内にある。
【0018】
本発明の組成物は、繊維材料を処理するのに用いたとき、先行技術による組成物について慣用されるよりも低い、該繊維材料上のリン化合物の付加量レベルで、優れた難燃特性を繊維材料に与えるという特有の利点を有する。このことは、得られる難燃効果が、成分Aを単独で用いるか、または成分Bを単独で用いるかしたときより明確に高いことから、明らかに、本発明の組成物の成分AとBとの相乗効果に起因するといえる。この相乗効果は、特に成分Bを単独で用いたときは、難燃効果が全く得られないため、当業者には予想外であり、驚異的である。成分Aと成分Bとは、ともにハロゲンを含有しない化合物から選ぶことができ、それでも優れた難燃性能が得られることは、本発明の組成物の更なる利点である。対照的に、先行技術から公知のハロゲン含有化合物は、当業者には公知の不都合を生じかねない。
【0019】
本発明の組成物は、少なくとも一つの成分A、少なくとも一つの成分B、少なくとも一つの成分C、および少なくとも一つの成分Dを含む。また、成分Aの下記の定義内に属する化合物の混合物、および/または成分Bの下記の定義内に属する化合物の混合物、および/または成分Cの下記の定義内に属する化合物の混合物を含んでもよい。また、成分Aの定義内にも、成分Bの定義内にも、あるいは成分Cの定義内にも属さない更なる生成物を追加的に含んでもよい。そのような生成物は、たとえば、繊維製品向けの公知の柔軟剤、界面活性剤、キャリヤー、拡散促進剤、染料、UV吸収剤等を包含する。しかし、好ましくは、本発明の組成物は、いかなるハロゲン化合物も、好ましくは成分Bの下記の定義内に属するもの以外のいかなるポリエステルも含まない。
【0020】
本発明の組成物の好ましい実施態様は、該成分A対該成分Bの重量比が0.8:1〜1.5:0.4の範囲内、好ましくは2.0:1〜2.5:1の範囲内にあることを特徴とする。この重量比は、上記の前駆物質の調製の途上で、すなわち成分AおよびB、ならびに適切ならば一つまたはそれ以上の分散剤を含むが、成分Cは未だ含まない安定な水性分散体の調製の途上で設定するのが好都合である。
【0021】
本発明の組成物への上記濃縮前駆物質は、一般的には、個々の成分を、適切ならば多少とも高い温度で、かつ/または機械的均質化のもとで混ぜ合わせることによって、単純な方式で得ることができる。この前駆物質は、水で希釈し、成分Cを加えることによって、本発明の組成物へと更に加工することができる。
【0022】
いくつかの応用のためには、本発明の組成物を、分散させた形態で用いるのが好都合である。この目的のために考えられるのは、特に水性分散体であり、水に分散させるためには、一つまたはそれ以上の分散剤を用いることができる。役立つ分散剤は、たとえば非イオン性エトキシル化化合物が適切であるように、当業者に公知の生成物から選択される。本発明では、エトキシル化アルコールまたはエトキシル化カルボン酸が特に考慮される。非イオン性分散剤に加えて、やはり適切なのは、特に、たとえばカルボン酸のアルカリ金属塩、アルカリ金属硫酸塩またはアルカリ金属スルホン酸塩のような陰イオン性分散剤である。同様に、非イオン性および陰イオン性分散剤の双方を含む混合物を用いることが可能である。本発明の組成物への濃縮前駆物質は、本発明の最終組成物に望まれる分散剤を用いて調製するのが好ましい。
【0023】
本発明の組成物中の成分Aは、オルトリン酸のトリエステルである。すなわち、オルトリン酸O=P(OH)3の3個のヒドロキシル基がすべてアルコール性化合物でエステル化されている。これら3個のアルコール単位は、同じであるか、または異なることができる。好ましくは、3個のアルコール単位は、すべて、一価または二価の芳香族アルコールから選択される。フェノールおよびレゾルシノールは、リン酸トリエステルのアルコール単位として特に役立つ。本発明の組成物の特に好ましい実施態様は、該成分Aが式(I)もしくは式(II):
【0024】
【化1】

【0025】
[式中、Arは、一価の芳香族基、好ましくはフェニルを表す]
で示される化合物、またはこれら二つの化合物の混合物であることを特徴とする。
【0026】
Arがフェニルである式(II)の化合物(以下、「RDP」と呼ぶ)は、商業的に入手可能であり、米国特許第5,457,221号明細書に教示されるとおりに得ることができる。
【0027】
芳香族基を有する列挙された好適なトリエステルに代えてか、または加えて、本発明の組成物は、いかなる芳香族基も含まないオルトリン酸のトリエステルを含んでもよい。例としては、リン酸トリ−n−ブチルを列挙し得る。
【0028】
本発明の組成物中の成分Bは、酸およびアルコールから誘導される単位で構成されたポリエステルである。アルコールから誘導される単位は、いかなる芳香族基も含まないことが非常に重要である。さもなければ、仕上がった織物に最適の難燃性能を達成するのが不可能であり、かつ/またはその他の不都合が生じる。
【0029】
好ましくは、成分Bとして用いられるポリエステルは、芳香族基を全く含まない;すなわち、酸から誘導される単位もまた、芳香族基を含まないのが好ましい。しかし、アルコール単位とは異なり、酸単位は、微量画分の芳香族基を含んでもよい。しかしながら、芳香族基を含む酸単位に起因するポリエステル中の画分は、酸から誘導される単位の総数を基準にして10%を超えてはならない。
【0030】
本発明の組成物の特に好ましい実施態様は、該成分Bが脂肪族α,ω−ジカルボン酸および脂肪族二価または多価アルコールから構成されるポリエステルであり、好ましくは、該二価または多価アルコールの二つの鎖端のそれぞれに、ヒドロキシル基が存在することを特徴とする。
【0031】
4〜10個の炭素原子を有する脂肪族α,ω−ジカルボン酸、特に列挙された種類の非分枝鎖ジカルボン酸は、本明細書中に列挙される好適な実施態様の文脈中の酸として非常に役立つ。特に優れた結果は、成分Bとして用いられるポリエステルをアジピン酸およびアルコールから構成したときに得られる。
【0032】
成分Bとして役立つポリエステルのアルコール部分は、好ましくは、その二つの鎖端のそれぞれにヒドロキシル基を有する脂肪族二価または多価アルコールから誘導される。問題の二価または多価アルコールは、分枝鎖または直鎖の構造であってもよい。ポリエステルに非常に役立つアルコールは、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコールおよび1,6−ヘキサンジオールを包含する。
【0033】
成分Bとして用いられるポリエステルは、既述のとおり、ジカルボン酸および脂肪族二価または多価アルコールから構成することができる。もう一つの可能性は、酸およびアルコール単位が同じ分子中に存在する、ヒドロキシカルボン酸、好ましくはω−ヒドロキシ−1−カルボン酸から誘導されるポリエステルを用いることである。適切なポリエステルの調製は、ω−ヒドロキシ−1−カルボン酸またはそのラクトンから進行することができる。列挙されたポリエステルのうちでも好ましいのは、カプロラクトンから誘導されるそれらである。
【0034】
成分Bとして役立つポリエステルは、一種類のカルボン酸および一種類のアルコールから構成することができる。しかし、それを二つまたはそれ以上の異なる種類のカルボン酸および/もしくはアルコールから構成することもできる。用いられるすべてのカルボン酸、および用いられるすべてのアルコールは、上記の化合物群から選択されることが好ましい。カプロラクトンおよび多価アルコール、たとえばネオペンチルグリコールの混合物から誘導されるポリエステルも、成分Bとして非常に役立つ。その一例は、ダウ(Dow)からのTONE(登録商標)Polyol2241なる製品である。
【0035】
成分Bとして用いられるポリエステルの分子量は、好ましくは、200〜8,000の範囲内にある。500〜4,000の範囲内の分子量を有するポリエステルは、特に役立つ。
【0036】
本発明の組成物中の成分Cは、アミンまたはアンモニウム塩である。アンモニウム塩を成分Cとして用いるときは、その陽イオンは、NR4+の形態のものである。4個のR基の少なくとも一つは、1〜22個の炭素原子を有するアルキル基でなければならず、他の3個のR基の一つまたはそれ以上は、水素、または同様に、列挙された種類のアルキル基であることができる。成分Cとして特に役立つのは、第二級アミンまたはその対応するアンモニウム塩である。本発明では開鎖第二級アミンが、環状の基を有する第二級アミンより優れている。成分Cとして、ポリマー性アミン、たとえばBASFからのLUPAMIN(登録商標)なる製品(ビニルアミンをベースとするポリアミン)を用いることも可能である。ポリマー性アミンを用いるときは、少量の酸、たとえば酢酸または塩酸を加えたときが一連の事例全体で好都合である。特に好ましいアミンは、ポリエチレンイミン、ジエチレントリアミンおよびトリエチレンテトラミンである。適切なアンモニウム塩のためには、たとえばポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドのような塩化物を挙げることが可能である。列挙された化合物の混合物も、成分Cとしての利点とともに用いることができることが正当に評価されよう。成分Cを選ぶときは、列挙された濃縮前駆物質の安定性が成分Cの添加によって確実に低下するよう注意しなければならない。
【0037】
本発明を例示するため、実施例を以下に記載する。
【0038】
実施例
編み物としたポリエステルを、高温浸染容器に導入した。次いで、この容器を、編み物としたポリエステルの重量の20倍である量の下記組成物の液体で満たした。該液体は、
成分Cが下記の助剤Aであるときは、24%の成分C(アミン)、または
成分Cが、請求項1に示したとおり、下記の助剤BまたはDであるときは、32%の成分C(2.5重量%の水溶液として用いる)、
2%の湿潤剤、
8%の緩衝液(pH4.5)、
50%の、難燃剤の33重量%の分散体を含有した。
【0039】
これらの数/量は、乾燥状態の編み物としたポリエステルの重量を基準とする。
【0040】
上記の組成の様々な液体、すなわち「助剤A」または「助剤B」または「助剤D」を成分Cとして含むいずれかの液体を用いた。成分Cを全く含まない液体、すなわち「助剤」A、BまたはDのいずれも含まない液体を(本発明ではない)比較液として用いた。
助剤A=ポリエチレンイミン(BASFからのLUPASOL(登録商標)FC)
助剤B=ジエチレントリアミン
助剤D=トリエチレンテトラミン
【0041】
編み物としたポリエステルをそれぞれの液体で処理するためには、いくつかの試行は高温(HT)法を用いて、その他は90℃での方法を用いて実施した。以下、二つの方法を説明する。
【0042】
高温法:
編み物としたポリエステルを含有する液体を、110分間かけて室温から135℃に加熱し、次いで135℃に60分間保ち、最後に55分間にわたって40℃に冷却した。その後、ポリエステルをすすぎ、1.65g/lの水酸化ナトリウムとの混合物中2g/lの亜ジチオン酸ナトリウム溶液を基剤とする液体で、慣用のとおり還元洗浄し、次いで酢酸(60%)で中和し、乾燥した。
【0043】
90℃での方法:
液体を、20分間かけて室温から90℃に加熱し、次いで90℃に90分間保ち、最後に40分間かけて40℃に冷却した。その後、ポリエステルをすすぎ、亜ジチオン酸ナトリウムで慣用のとおり還元洗浄し、60%酢酸で中和し、乾燥した。
【0044】
難燃剤の分散体は、2.33:1の重量比でのRDPおよびポリカプロラクトン(ダウからのTONE(登録商標)Polyol2241)、ならびに下記に列挙される分散剤で構成した。
【0045】
難燃剤の分散体の調製:
初めに、水、分散剤およびpH制御剤の混合物を、高速撹拌機を用いて調製した。RDPおよびポリマーの有機相を、もう一つの容器内で60〜70℃に加熱し、高速撹拌機を用いて均一に均質化した。次いで、この油状の相を、混合物の形態でか、または清澄な溶液としての水との分散剤の混合物と混合した。次いで、この混合物を高速撹拌機で加工して、プレエマルジョンを形成した。混合工程は、すべて、高い温度、好ましくは60〜70℃で実施するのが好都合である。
【0046】
上記のpH制御剤は、リン酸塩の形態での緩衝液であった。分散剤を下表1に報告する。
【0047】
次いで、得られた水相および油状相のプレエマルジョンを、高圧ホモジナイザーを用いて高圧分散に付した。得られた分散体IまたはIIを、下記に要約する実験に用いた。
【0048】
【表1】

【0049】
織物上の得られた付加量を、各実験について重量%として決定した。加えて、各サンプルを、DIN(ドイツ工業規格)54336により試験して、その燃焼時間を決定した。
【0050】
結果を下表IIに報告する。ここで、「BZ」は、DIN54336に従うことによって決定された、秒で示した後燃え(after-burn)時間を意味する。より高い燃焼時間の値は、より低い/より悪い火炎防護のレベルを示す。
【0051】
【表2】

【0052】
*A=BASF(登録商標)が供給する、数平均分子量が800〜1,000のLUPASOL(登録商標)FCなるポリエチレンイミン。
B=ジエチレントリアミン。
D=トリエチレンテトラミン。
【0053】
これらの結果から引き出すことができる結論は、下記のとおりである:
液体への助剤A、BまたはDの本発明の添加によって、高率の吸尽が達成される。比較的低い温度では、LUPASOL(登録商標)FCは、実験中に列挙されたその他の助剤より効果的であるが、比較的高い温度では、その差はそれほど明確ではない。適切な率の吸尽は、吸尽液中の陰イオン性分散体ばかりでなく非イオン性分散体から構成される本発明の液体によっても確保される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも成分A、成分B、成分Cおよび成分Dを含む、好ましくは水性分散体の形態である組成物であって、
該成分Aは、リン酸のトリエステルであり、
該成分Bは、アルコールから誘導される単位中にいかなる芳香族の基も含まず、かつ酸から誘導される単位の0〜10%が芳香族の基を含む、ポリエステルであり、
該成分Cは、アミン、好ましくは第二級アミンもしくはポリマー性アミン、またはアンモニウム塩であって、そのアンモニウム塩の陽イオンがNR4+(R基の少なくとも一つは、1〜22個の炭素原子を有するアルキルである)の形態であり、
該成分Dは、水であり、
該成分A、BおよびCは、いずれも、単一の成分A生成物、成分B生成物および成分C生成物のそれぞれに代えて、成分A、BおよびCのそれぞれの二つまたはそれ以上の混合物の形態であってもよい
組成物。
【請求項2】
88〜98重量%、好ましくは93〜97重量%の該成分Dを含むことを特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
5〜20g/lの該成分Cを含むことを特徴とする、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
該成分A対該成分Bの重量比が0.8:1〜1.5:0.4の範囲内、好ましくは2.0:1〜2.5:1の範囲内にあることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項5】
該成分Aが、リン酸から誘導される単位、および一価または二価の芳香族アルコールから誘導される単位から構成されるトリエステルであり、該トリエステルが、好ましくは式(I)もしくは式(II):
【化2】


[式中、Arは、一価の芳香族基、好ましくはフェニルを表す]
で示される化合物、またはこれら二つの化合物の混合物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項記載の組成物。
【請求項6】
該成分Bが、脂肪族α,ω−ジカルボン酸および脂肪族二価または多価アルコールから構成されるポリエステルであり、好ましくは、該二価または多価アルコールの二つの鎖端のそれぞれにヒドロキシル基が存在することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項記載の組成物。
【請求項7】
該脂肪族ジカルボン酸が4〜10個の炭素原子を有し、このジカルボン酸が好ましくはアジピン酸であることを特徴とする、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
該脂肪族アルコールがエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコールおよび1,6−ヘキサンジオールから選択されることを特徴とする、請求項6または7記載の組成物。
【請求項9】
該成分Bが、ω−ヒドロキシ−1−カルボン酸またはそのラクトン、好ましくはカプロラクトンから誘導されるポリエステルであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項記載の組成物。
【請求項10】
該成分Bが200〜8,000の範囲内、好ましくは500〜4,000の範囲内の分子量を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項記載の組成物。
【請求項11】
該成分Cがポリエチレンイミン、トリエチレンテトラミンもしくはジエチレントリアミン、またはこれらのアミンの二つもしくは三つを含む混合物であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項記載の組成物。
【請求項12】
該成分Cが、その陰イオンが塩化物イオンであるアンモニウム塩、好ましくはポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドであることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項記載の組成物。
【請求項13】
繊維材料を処理する方法であって、該繊維材料を、好ましくは吸尽法によって、請求項1〜12のいずれか一項記載の組成物に接触させる工程を含む方法。
【請求項14】
60〜100℃の範囲内の温度で実施される吸尽法であることを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
該繊維材料が80〜100重量%にわたる範囲までポリエステルからなることを特徴とする、請求項13または14記載の方法。

【公表番号】特表2011−523984(P2011−523984A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512877(P2011−512877)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【国際出願番号】PCT/EP2009/004036
【国際公開番号】WO2009/149870
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(507324968)ハンツマン・テキスタイル・エフェクツ(ジャーマニー)・ゲーエムベーハー (7)
【氏名又は名称原語表記】HUNTSMAN TEXTILE EFFECTS(GERMANY)GMBH
【Fターム(参考)】