説明

繊維束の監視装置

【課題】走行する繊維束の重量バラツキをオンラインで検知し、品質異常品の流出を防止すること。
【解決手段】[A]ローラーまたは固定ガイドに接して繊維束を走行させる位置決め手段、[B]走行する前記繊維束に対してレーザー光を照射する出力手段、[C]受光体にて前記レーザー光の前記繊維束の幅方向の各点における反射光を受光する入力手段、[D]前記繊維束の幅方向の各点において前記照射光の照射と前記反射光の受光角度の変化量を検出する検出手段、[E](i)前記角度の変化量から求められる前記ローラーまたは前記固定ガイドを基準面とした前記繊維束の幅方向の各点における繊維束の厚さから、前記繊維束の断面積を求める第1のデータ処理手段、または、(ii)(i)の第1のデータ処理手段、および第1のデータ処理手段により得た断面積のバラツキを求める第2のデータ処理手段を有する繊維束の監視装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維束を製造するための繊維製造工程において、走行する繊維束の断面積および/またはそのバラツキを実質的に連続で測定し、その変動を監視する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
合成繊維束は、ナイロンやポリエステルなどの衣料資材だけでなく、産業資材に広く使用されている。高強度のベルトやタイヤコードに用いられるアラミド繊維や、スポーツおよび自動車・船舶・土木建築などの分野に用いられる炭素繊維の製造に供されるポリアクリロニトリルプリカーサなども広く知られている。
【0003】
また、このプリカーサを焼成して得られた炭素繊維は、スポーツおよび自動車・船舶・土木建築などの分野に用いられる高機能繊維束として知られている。
【0004】
このような繊維束は高い性能を求められる一方で、ユーザーからの需要に応えるべく、生産設備の大型化や生産スピードの向上、単位生産機あたりの総繊維数を増やすことでコストダウンを図り、その適用分野を大きく広げている。
【0005】
しかし、一般に繊維の生産設備を大型化し、生産スピードを上げると品質バラツキが大きくなることが知られている。例えば、製造工程の張力変動により毛羽や毛玉が突発的に発生する。その結果、単位時間あたりの熱処理量が少なくなり、変形余裕が減少し、得られた繊維の強度や伸度のバラツキや、重量や繊度バラツキが増大することがある。このようなバラツキの中で、特に繊維重量や太さ(以下繊度)のバラツキは、その高機能繊維を使用するユーザーが、産業資材製品へ加工した際の重量バラツキを増大する一因になることがあり、さらには産業資材製品の品質のムラを増大させることもあるため管理すべき重要な項目である。
【0006】
例えば、炭素繊維の製造に供されるポリアクリロニトリルプリカーサの製法では、一般的に用いている紡糸工程、延伸工程、水洗工程、薬液付与工程、乾燥工程、熱処理工程などのそれぞれのバラツキが累積して発生するものと考えられているが、この主たる原因はポリマーの吐出バラツキと、各熱処理や延伸工程でのバラツキと考えられており、これを改善するためいくつかの提案がなされている。例えば、製造工程における繊維束の張力変動を低減する方法がある(特許文献1参照)。
【0007】
本特許文献によれば、繊維束を湿式紡糸法で製造する際、加圧スチーム延伸工程において、該延伸装置直前に設置される加熱ローラーによる延伸倍率と加圧スチームによる延伸倍率は時間とともに変動するが、双方の延伸を全く同一時間に行うことができないために、これら2種類の延伸の配分が断続的に変動することが繊維束の長手方向の繊度バラツキを招くと指摘している。そして、このバラツキを抑制するために、加熱ローラーによる延伸倍率を抑え、加圧スチームの圧力変動を小さくすることにより、延伸時の繊維束にかかる張力の変動を少なくすることが重要であると開示されている。さらに、かかる延伸方法で得られた繊維束は、追加工(焼成)して得られる繊維束の長手方向の繊度バラツキすなわち重量バラツキが少なくなると開示されている。
【0008】
また、延伸工程のバラツキを抑制し、繊度の均一化を図るべく、加圧スチームを用いた延伸性能を向上させる提案もある(特許文献2参照)。
【0009】
本特許文献に開示された方法によれば、延伸工程を予熱状態と加熱状態に分割し、それぞれに異なった圧力の加圧スチームを供給する方法であり、該方法は湿式、乾湿式法などの紡糸法によらず効果があると開示されている。また、例えば紡績糸では、繊度斑評価値としてU%が広く知られているが、このU%は一定空間における静電容量の変化を検出するものである。
【0010】
しかし、上記いずれの方法も、その重量バラツキを測定するためには製品からサンプルを抜き取り、そのサンプルの重量バラツキを測定することによってのみでしか工程データを得ることができない。さらに、静電容量式のセンサーでは、繊維束の製造工程にオンラインで設置した場合、製造工程の湿度、温度の変化の影響が大きく、さらにはその繊維束自体の水分率が変動や加工油剤の付着量により値が大きく変動し、正確な値が得られなかった。
【0011】
高速で連続生産している繊維束の製造工程の工程不良を発見する方法として、レーザー光束を照射し、毛羽欠点を検出する方法や(特許文献3および4)、繊維束の欠点をカメラで連続撮像し検出する方法が広く用いている(特許文献5参照)。
【0012】
しかし、毛羽欠点の発生率と重量バラツキにはほとんど相関がなく、工程不良により発生した重量バラツキ不良品が、大量に発生流通して始めて工程が悪化していることがわかる場合が多かった。このため、繊維束の製造工程における重量バラツキについて良、不良をオンラインで判断する簡易な手法や、このバラツキの改善効果を連続して測定や監視する方法が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2000/005440号パンフレット
【特許文献2】特開平5−263313号公報
【特許文献3】特開2006−56697号公報
【特許文献4】特開2004−250837号公報
【特許文献5】特開2005−264405公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、かかる従来技術の問題点に鑑み、繊維束を製造する工程中に生じる異常をいち早く検知し、これにより繊維束の品質を良好に管理することができる監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
ここに前記課題を解決するための手段として、下記の(1)〜(5)に記載の装置が提供される。
【0016】
(1)走行する繊維束の断面積および/またはそのバラツキを監視する装置であって、下記[A]〜[E]の手段を有する繊維束の監視装置。
[A]ローラーまたは固定ガイドに接して繊維束を走行させる位置決め手段
[B]走行する前記繊維束に対してレーザー光を照射する出力手段
[C]受光体にて前記レーザー光の前記繊維束の幅方向の各点における反射光を受光する入力手段
[D]前記繊維束の幅方向の各点において前記照射光の照射と前記反射光の受光角度の変化量を検出する検出手段
[E](i)前記角度の変化量から求められる前記ローラーまたは前記固定ガイドを基準面とした前記繊維束の幅方向の各点における繊維束の厚さから、前記繊維束の断面積を求める第1のデータ処理手段、または、(ii)(i)の第1のデータ処理手段、および第1のデータ処理手段により得た断面積のバラツキを求める第2のデータ処理手段。
【0017】
(2)さらに、[F]前記断面積および/または前記断面積のバラツキを予め設定した閾値と比較して、該閾値を越えた場合に警報を発する警報手段、
を有する、(1)に記載の繊維束の監視装置。
【0018】
(3)さらに、[G]前記断面積および/または前記断面積のバラツキを記録する記録手段、
を有する、(1)または(2)に記載の繊維束の監視装置。
【0019】
(4)前記走行する繊維束がポリアクリロニトリル繊維束である、(1)〜(3)のいずれかに記載の繊維束の監視装置。
【0020】
(5)前記走行する繊維束が炭素繊維束である、(1)〜(3)のいずれかに記載の繊維束の監視装置。
【0021】
(6)前記走行する繊維束が1000本以上である、(1)〜(5)のいずれかに記載の繊維束の監視装置。
【0022】
すなわち、本発明に係る繊維束の監視装置によれば、検出対象となる繊維束が、ローラーまたは固定ガイドに支持されて、その断面積および/またはそのバラツキが監視される。
【0023】
そして、本発明に係る繊維束の監視装置は、ローラーまたは固定ガイドからなる基準面と前記繊維束に対して、例えば矩形のレーザー光を照射し、前記ローラーまたは固定ガイドを基準高さとして、走行する繊維束の厚みを基準高さからの変位として入力手段である検出素子に受光し、この変位を走行糸の幅方向に、例えば0.1〜10μmのピッチで、実質的に同時に測定することにより非接触で基準位置からの高さを計測し、第1のデータ処理手段により、その高さから算出された断面積を合算することにより、繊維束の断面積として算出される。
【0024】
また、本発明に係る繊維束の監視装置は、この第1のデータ処理手段により得られた断面積の値を、第2のデータ処理手段によって断面積の変動(バラツキ)を監視しても良く、さらにこれらの値を記録しても良い。この断面積の変動(バラツキ)は、一定の張力条件下で走行している繊維束について、単位長さあたりの重量斑と良く一致する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、巻き取られる繊維束の断面積(すなわち重量)のバラツキを精度良く監視し、該バラツキの悪化原因の早期究明と不良繊維束のユーザーへの流出を防止でき、繊維束の品質管理を良好に実施するものである。
【0026】
また、本発明は、非接触式のレーザー光が用いられるため、繊維束の水分率の変動や付着油剤の変動などの影響を受けにくく、精度良く、断面積の変動を連続的に測定できる。さらに、投光部と受光部を走行する繊維束から離れた位置に設置できるため、通糸作業などの妨げにならないほか、微細な油滴による照射部や受光部の汚れなどの影響を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の検出対象となる繊維束の走行方向の断面図である。
【図2】本発明の検出対象となる繊維束の走行方向の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について、発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0029】
本発明の検出対象となる繊維束は、複数フィラメントから構成される繊維束である。繊維束の種類は、特に限定されないが、具体的な例としては、ポリアクリル繊維束、ポリエステル繊維束、ナイロン系繊維束、アラミド繊維束、アリレート繊維束などの合成繊維束、または炭素繊維束などを好ましく挙げることができる。
【0030】
ここで繊維束とは、少なくとも1000本以上の繊維の総称である。繊維束を構成するフィラメントの本数が1000本以上のものを検出対象として用いることにより、基準面に対して走行する繊維束の高さの変位を有意なものとでき、断面積を精度良く検出することができる。
【0031】
ローラーまたは固定ガイドに接して繊維束を走行させる位置決め手段とは、少なくとも走行する繊維束の両側に糸のない実質的に平面部分を有するローラーまたは固定ガイドである。前記位置決め手段の表面形態は、測定精度に影響するため、0.8S以下の鏡面仕上げが好ましく、測定の精度を高めるためには、走行している繊維束と明度が異なる表面色であることがより好ましい。たとえば、走行する白色や黄白色の繊維束の断面積を測定する場合、黒色の位置決め手段であれば良いが、この限りではない。
【0032】
前記位置決め手段は、振動や振れが小さいものがより好ましい。例えば前記ローラーであれば、外形公差が0.03mm以内、真円度や円筒度が0.03mm以内、さらには、たわみなどがないことが好ましい。なお、レーザー受光部の素子やCPUユニットなどからなる第1のデータ処理手段によって前記ローラーや固定ガイドの振れを補正する機能を有していることも好ましく、かかる機能を有している場合、かかる機能を有していない場合に比べ、位置決め手段の振動、振れ、たわみの程度を考慮する必要がなく、装置設計の自由度を高めることができる。また、測定される範囲で、実質的に平面であるために、そのローラー直径は100mmを越えるものがより好ましい。また、前記位置決め手段の素材は特に限定されるものではないが、耐摩耗性に優れた、SUS材料やプラスチック材料であれば良い。
【0033】
測定対象となる繊維束は、所定の糸道を走行することにより、良好に断面積の測定ができる。そのため測定される走行繊維束には0.05cN/dtex以上の張力を付与することが好ましく、より好ましくは0.10cN/dtex以上である。0.05cN/dtex以上の張力を付与することにより、単糸の蛇行や数本のモノフィラメントからなる単糸束が繊維束から外れることを防止できる。ただし、レーザー受光部の素子やCPUユニットなどからなる第1のデータ処理手段によって繊維束の蛇行を追尾し補正する機能を有していることも好ましく、かかる機能を有している場合、かかる機能を有していない場合に比べ、張力の程度を考慮する必要がなく、繊維束の製造条件の自由度を高めることができる。
【0034】
以下、走行する繊維束にレーザー光を照射する出力手段について詳述する。
【0035】
前記レーザー光は600〜1000nmのレーザー光であれば良く、レーザー光の波長は特に限定されるものではないが、本発明の繊維束の測定には600〜700nmであれば、可視赤色光のため測定範囲を容易に肉眼で視認できるため、好適に用いることができる。また前記レーザー光が照射される範囲は、繊維の各点を測定できる矩形を好適に用いることができる。矩形レーザーの長辺長さは、4〜100mmであれば、走行する繊維束の少なくとも1糸条を測定範囲におさめることができることから、好適に用いることができる。短辺長さは特に限定されるものではないが、25〜170μmであればよい。
【0036】
繊維束の断面積測定は、基準高さを正確に算出するために、図1に示すように走行する繊維束幅に対して、両側に少なくとも繊維束糸幅の5%以上の長さを有する繊維束が走行しない平面を測定範囲に設置することが好ましい。かかる設置をすることにより、繊維束の両側にある繊維束の走行しない平面高さを基準高さとし、その2点の基準高さを結ぶ水平線に対して、繊維束の高さとして算出することができる。さらには、水平線から高さの変位が生じた領域を繊維束が走行する幅(糸幅)とし、この糸幅の間に測定された高さを乗じることにより繊維束の断面積を得ることができる。
【0037】
精度良く断面積の値を採取するためには、レーザー照射角度が走行繊維束および前記位置決め手段に対して垂直であることが好ましく、より好ましくは90°±5°である。この角度とすると、断面積測定値が、真値と良く一致し、第2のデータ処理時に得られる断面積バラツキが最小化できる。また、測定される繊維束の厚みは250mm以下であることが好ましい。250mm以下であれば、受光素子が小型化できレーザー出力機を工程のいずれの場所にも設置できる。
【0038】
本発明で規定される、繊維束の幅方向の各点とは、繊維束と基準面を含む測定範囲を0.1μm〜10μmのピッチで測定することである。このピッチ内であれば、走行する繊維束と基準面から構成される水平線との高さの差を精度良く素子上に読みとれる。
【0039】
反射光を受光する入力手段は、公知のCMOSと呼ばれる受光素子で画像処理をするものが好ましく、投光部と別に取り付けても良いが、受光レーザーを精度良く検出するためには、投光部と一体型であることがより好ましい。断面積測定のデータサンプリング間隔は、短いほど精度良く検出できるが、本発明者が検討したところ、1.0〜20.0msの範囲で有れば、1〜2000m/分程度で走行する繊維束を測定することができる。
【0040】
また、第1のデータ処理手段であるCPUユニットでは、所定のサンプリング間隔をN等分して得られたN個のデータ群を平均化したり、または積算することによってデータを平滑化したりすることにより、測定のノイズを減少させることもできる。さらに、公知のデータ平滑化手段を用いることにより、製造工程での誤検出を最小化できる。
【0041】
前述の方法によって、照射されたレーザー光は受光素子により検出され、第1のデータ処理手段により、繊維束の断面積の値として実質的に連続して算出される。ここで説明される「実質的に連続」とは、少なくとも1.0ms〜20.0msの測定間隔で500点以上を測定することであると定義する。さらに、CPUなどを搭載したインターフェース手段を介して、パーソナルコンピュータなどで構成される第2のデータ処理装置へデジタルまたはアナログ情報として出力される。
【0042】
第2のデータ処理手段に取り込まれた断面積の出力値は、短周期および長周期の断面積変動データとして記録、監視される。この断面積の変動データ管理には、データの標準偏差をデータ平均値で除した値をパーセント表示した、変動係数(以下CV値)を好適に用いることができる。
【0043】
これらのデータ処理手段により得られた断面積変動値が予め定められた判定基準値(以下閾値)を越えるレベルで検出された場合は、工程中になんらかの異常が発生しているため、警報を発する警報装置を備えていることが好ましい。警報を発することにより、巻き取られた製品をパッケージ単位で区分することができ、ユーザーへの流出を防ぎ、品質管理において好ましい。
【0044】
警報装置としては、警報音、光を点滅させる警報灯、あるいは有線、無線などの通信機器を用いて警報信号をオペレータに伝える手段などを好適に用いることができる。
【0045】
また、これらの処理装置と、自動カッターや吸引装置などと組み合わせることにより、閾値を連続して超えた場合については、ただちに走行糸を切断し、ユーザーへの異常糸流出を早期に防止することもできる。
【0046】
さらには、断面積変動値を走行糸条別や走行時間毎に記録することも好ましい実施形態である。かかる実施形態によれば、パッケージ中に存在する断面積の変動を正確に把握でき、ユーザー側で何らかの問題が発生した場合、それらのデータを解析することによって、原因を特定し、閾値の見直しなどに用いることができる。閾値については、ユーザー種類や製造工程・品種毎に随時設定することができるが、あまりに小さな値であると誤検出が多くなることから、たとえば短周期のCV値であれば0.2%以上を好適に用いることができる。
【実施例】
【0047】
以下実施例によって本発明について説明する。
【0048】
(実施例1)
検出する対象の繊維束として、12000本からなるポリアクリロニトリル繊維束(単繊維繊度0.9dtex)を用いて。この繊維束を、製造工程の巻き取り直前で駆動回転する黒色ローラードライブステーション(表面粗度0.5S、直径200mm)に繊維束の走行速度を100m/分、300m/分、500m/分、700m/分の水準で走行させ、測定部の張力は引き取り側の駆動速度を調整して、0.5cN/dtexにした。
【0049】
レーザー光束を照射および検出する手段として、照射部と受光部が一体になったキーエンス(株)製の2次元センサーを使用した。具体的には、センサーヘッド部形式:LJG−030、第1のデータ処理手段として、LJ−G5000を使用し、第2のデータ処理手段であるNEC社製パーソナルコンピュータとUSBコードを介してオンラインで接続し、記録・監視と異常検出ができるようにした。
【0050】
センサーヘッドからは620nmからなる矩形状の赤色可視光レーザーを発信し、走行繊維束に対し90°になるように設置し、投光部分から30mmの距離を取った。測定精度を向上させるため、断面積既知の金属製角棒(SUS304製、表面仕上げ0.5S、高さ10mm×幅10mm×奥行き10mm)を用いてゼロ点補正を実施した。
【0051】
ローラー上を走行する糸条の幅が100mmであったため、基準面として走行糸の両側に5mmの基準面測定領域を設定し、10ms毎で500点の連続測定を行った。
【0052】
本発明者の検討によると、短周期の断面積変動値は、およそ500点のデータを蓄積することにより、CV値が良好な再現性を示した。測定データ数が500点を下回ると、同一のサンプルであっても、断面積のCV値が測定毎に大きく異なる場合があった。
【0053】
平均化回数10回で断面積のCV値を算出した。いずれの走行速度の場合にも、0.65%〜0.70%となり、同サンプルの切断法(1mあたりの重量×100点)により得た重量CV値0.65%と良く一致した。
【0054】
このパーソナルコンピュータには一定のサンプリング時間で採取されたデータから前述の方法で得られた短周期および長周期の断面積データをリアルタイムで記録および出力させるためのロギングプログラムを作成して、付設されたハードディスクに記録させた。
【0055】
また、長周期変動値の監視では、これらの500点データを記録し、その値の変動を日中および夜間さらには、季節間について監視した。
【0056】
(実施例2)
測定する繊維束と測定方法は実施例1に準じて、100m/分で走行する複数糸条を測定した。
【0057】
パーソナルコンピュータに、10ms毎に採取したデータから前述の方法で得られた短周期および長周期の断面積データをリアルタイムで記録および出力させるためのロギングプログラムを作成した。重量CV値の閾値(以下PHとする)を1.00%に設定し、各糸条のCV値がこのPHを超えた場合にPLC(運転管理画面)に異常警報を発するプログラムとした。
【0058】
並行して走行する16本についてプログラムを作動させたところ、スチーム流量や圧力が通常の運転状態と異なった場合にPHを越え、異常警報によって直ちに原因対応が可能となった。
【0059】
(実施例3)
実施例1に準じて12000本からなる炭素繊維(東レ株式会社製 T700SC−12K)を測定した。走行繊維束に対し90°になるようにレーザー発信装置を設置し、投光部分から30mmの距離を取った。
【0060】
測定精度を向上させるため、炭素繊維は黒色のため、位置決め手段であるローラーと固定ガイドは明度差のある白色とし、断面積既知の金属製角棒(SUS304製、表面仕上げ0.5S、高さ10mm×幅10mm×奥行き10mm)を用いてゼロ点補正を実施した。ドライブステーション速度は5m/分とした。
【0061】
センサーヘッドからは620nmからなる矩形状の赤色可視光レーザーを発信した、
ローラー上を走行する糸条の幅が7mmになるようにボビンからの引き出し張力を調整し、基準面として走行糸の両側に5mmの基準面測定領域を設定した。
10ms毎で500点の連続測定を行い、平均化回数10回で断面積のCV値を算出した。いずれの走行速度の場合にも、0.80%〜2.00%となり、同サンプルの切断法(1mあたりの重量×100点)により得た重量CV値1.50%と良く一致した。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明により、繊維束を製造する工程中に生じる異常をいち早く検知し、これにより繊維束の品質を良好に管理することができる。
【符号の説明】
【0063】
1:モノフィラメント
2:基準板
3:基準面の測定領域(5%)
4:基準面から得た水平線
5:繊維束高さ測定範囲
6:レーザー照射領域
7:赤色レーザー
8:レーザー光を照射する出力手段
9:反射光を受光する入力手段
10:高さ変位検出素子(CMOS)
11:第1のデータ処理手段(含CPU)
12:第2のデータ処理手段
13:製造工程(警報装置等)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する繊維束の断面積および/またはそのバラツキを監視する装置であって、下記[A]〜[E]の手段を有する繊維束の監視装置。
[A]ローラーまたは固定ガイドに接して繊維束を走行させる位置決め手段
[B]走行する前記繊維束に対してレーザー光を照射する出力手段
[C]受光体にて前記レーザー光の前記繊維束の幅方向の各点における反射光を受光する入力手段
[D]前記繊維束の幅方向の各点において前記照射光の照射と前記反射光の受光角度の変化量を検出する検出手段
[E](i)前記角度の変化量から求められる前記ローラーまたは前記固定ガイドを基準面とした前記繊維束の幅方向の各点における繊維束の厚さから、前記繊維束の断面積を求める第1のデータ処理手段、または、(ii)(i)の第1のデータ処理手段、および第1のデータ処理手段により得た断面積のバラツキを求める第2のデータ処理手段
【請求項2】
さらに、[F]前記断面積および/または前記断面積のバラツキを予め設定した閾値と比較して、該閾値を越えた場合に警報を発する警報手段を有する、請求項1に記載の繊維束の監視装置。
【請求項3】
さらに、[G]前記断面積および/または前記断面積のバラツキを記録する記録手段を有する、請求項1または2に記載の繊維束の監視装置。
【請求項4】
前記走行する繊維束がポリアクリロニトリル繊維束である、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維束の監視装置。
【請求項5】
前記走行する繊維束が炭素繊維束である、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維束の監視装置。
【請求項6】
前記走行する繊維束が1000本以上のフィラメントである、請求項1〜5のいずれかに記載の繊維束の監視装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−122167(P2012−122167A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274332(P2010−274332)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】