説明

繊維構造体の梱包方法および梱包体

【課題】繊維構造体の容積を減少させることができるため運搬における積載効率が向上し、かつ開梱した後において繊維構造体の回復性が良好な、繊維構造体の梱包方法および該梱包方法で得られた梱包体を提供する。
【解決手段】非弾性捲縮短繊維と、該非弾性捲縮短繊維を構成するポリマーよりも40℃以上低い融点を有するポリマーが、熱融着成分としてその表面に配された熱接着性複合短繊維とが重量比率で90/10〜10/90となるように混綿され、該熱接着性複合短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点および該熱接着性複合短繊維と該非弾性捲縮短繊維とが交差した状態で熱融着された固着点とが散在してなる繊維構造体であって、該繊維構造体の厚さ方向に対して平行に配列されている繊維の総本数を(B)とし、繊維構造体の厚さ方向に対して垂直に配列されている繊維の総本数を(A)とするとき、B/Aが1.5以上である繊維構造体を袋内に収納した後、該袋内の空気を排出することにより前記繊維構造体の容積を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維構造体の梱包方法および梱包体に関するものである。さらに詳しくは、繊維構造体の容積を減少させることができるため運搬における積載効率が向上し、かつ開梱した後において繊維構造体の回復性が良好な、繊維構造体の梱包方法および該梱包方法で得られた梱包体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱融着性複合短繊維により繊維間が熱接着された不織布や樹脂加工により製造された不織布などの繊維構造体が、断熱材や吸音材などとして使用される際、通常、長尺のロール状に巻き取られたり、多層に積層されることにより、圧縮応力が加わった状態で保管される。そして、かかる繊維構造体を運搬・流通・保管した後に開梱すると、繊維構造体の圧縮応力が充分に回復せず、製造時に設定した厚さや密度が変化するという問題があった。さらには、ロールの中心部の方が外周部よりも圧縮応力が高いために、開梱された繊維構造体の長尺方向に厚さや密度のバラツキが生じやすいという問題があった。
【0003】
このような問題を解決する方法として、繊維構造体をロール状に巻き取る際の巻き取り量を少なくすることが考えられるが、生産工程におけるロール交換の回数増により生産性が低下したり、圧縮梱包できないため、運搬・流通・保管時のコストが増大するという問題があった。また、ロール中心部の変形を抑えるために、シート状に裁断する方法では、最下層の繊維構造体の厚みがヘタリ、梱包枚数を少なくしての運搬が必要であり、運搬における積載効率が低下するという問題があった。また、例えば特許文献1では、薄層不織布の表層部の繊維集束密度を内層部より高くすることが提案されているが、厚みが厚い不織布には適用が難しく、また、表面が硬くなる等の問題があった。
【0004】
他方、ふとんを真空包装することによりふとんの容積を減少させることは従来知られている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、クロスレイ後のシートを重ね合わせた通常の不織布からなる繊維構造体をかかる方法により梱包すると、繊維構造体の容積を減少させることは可能であるものの、開梱後に繊維構造体の圧縮応力が充分に回復せず、製造時に設定した厚さや密度が変化するという問題があった。
なお、繊維が厚さ方向に配列した繊維構造体は、例えば特許文献3などにより提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−11763号公報
【特許文献2】特開平3−200515号公報
【特許文献3】特開2007−308831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、繊維構造体の容積を減少させることができるため運搬における積載効率が向上し、かつ開梱した後において繊維構造体の回復性が良好な、繊維構造体の梱包方法および該梱包方法で得られた梱包体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を達成するため鋭意検討した結果、非弾性捲縮短繊維と熱接着性複合短繊維とで構成され、熱接着性複合短繊維の熱融着により固着点が形成され、かつ繊維が厚さ方向に配列した繊維構造体を袋内に収納した後、該袋内の空気を排出することにより前記繊維構造体の容積を減少させると、開梱した後において繊維構造体の回復性が良好であることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして、本発明によれば「繊維構造体を袋内に収納した後、該袋内の空気を排出することにより前記繊維構造体の容積を減少させる繊維構造体の梱包方法であって、前記繊維構造体が、非弾性捲縮短繊維と、該非弾性捲縮短繊維を構成するポリマーよりも40℃以上低い融点を有するポリマーが、熱融着成分としてその表面に配された熱接着性複合短繊維とが重量比率で90/10〜10/90となるように混綿され、該熱接着性複合短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点および該熱接着性複合短繊維と該非弾性捲縮短繊維とが交差した状態で熱融着された固着点とが散在してなる繊維構造体であって、該繊維構造体の厚さ方向に対して平行に配列されている繊維の総本数を(B)とし、繊維構造体の厚さ方向に対して垂直に配列されている繊維の総本数を(A)とするとき、B/Aが1.5以上である繊維構造体であることを特徴とする繊維構造体の梱包方法。」が提供される。
【0009】
その際、前記非弾性捲縮短繊維が非弾性ポリエステル系捲縮短繊維であることが好ましい。また、前記熱接着性複合短繊維の熱融着成分が熱可塑性エラストマーであることが好ましい。該熱可塑性エラストマーとしてはポリエステル系エラストマーが好ましい。また、前記熱接着性複合短繊維の熱融着成分が非弾性ポリエステル系ポリマーであることが好ましい。該非弾性ポリエステル系ポリマーとしては共重合ポリエステルであることが好ましい。また、前記繊維構造体が、非弾性捲縮短繊維と熱接着性複合短繊維とを混綿し、ローラーカードによりウェッブとして紡出した後、該ウェッブをアコーディオン状に折りたたみながら加熱処理し、熱融着による固着点を形成させたものであることが好ましい。
【0010】
本発明の繊維構造体の梱包方法において、袋内に収納する前の繊維構造体の厚さが1mm以上であることが好ましい。また、袋内に収納する前の繊維構造体において、繊維構造体の平均密度が、5〜100kg/mの範囲内であることが好ましい。また、繊維構造体がロール状に巻かれていることが好ましい。また、下記式で定義する、空気を排出した後の減容率が10〜80%の範囲内であることが好ましい。
減容率(%)=((空気排出前の繊維構造体容積)−(空気排出後の繊維構造体容積))/(空気排出前の繊維構造体容積)×100
【0011】
また、本発明によれば、前記の繊維構造体の梱包方法により得られた梱包体が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、繊維構造体の容積を減少させることができるため運搬における積載効率が向上し、かつ開梱した後において繊維構造体の回復性が良好な、繊維構造体の梱包方法および該梱包方法で得られた梱包体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明で使用する非弾性捲縮短繊維としては、ガラス繊維、アラミド繊維、カーボン繊維などの耐熱繊維も使用可能であるが、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−ジメチルシクロヘキサンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリピバロラクトン、ポリ乳酸(PLA)、ステレオコンプレックスポリ乳酸、ポリオレフィン、またはこれらの共重合体からなる短繊維ないしそれら短繊維の混綿体、または上記ポリマー成分のうちの2種類以上からなる複合短繊維等を挙げることができる。かかるポリマー中には、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分岐剤、着色剤、艶消し剤、その他各種の改良剤等も必要に応じて配合されていても良い。これら短繊維のうち、繊維形成性等の観点からポリエチレンテレフタレートからなる短繊維が特に好ましい。
【0014】
ここで、前記非弾性捲縮短繊維において、単繊維径が7〜100μmの範囲内であることが好ましい。該単繊維径が7μmよりも小さいと充分な剛性が得られず取り扱いが難しくなるおそれがある。逆に該単繊維径100μmよりも大きいと、繊維構造体の容積を十分に減少させることができないおそれがある。また、断熱材及び吸音材としての性能も低いものである。なお、ポリエチレンテレフタレートの場合、単糸繊度としては、1〜90dtexの範囲内であることが好ましい。
【0015】
前記非弾性捲縮短繊維の単繊維横断面形状は、通常の丸断面でもよいし、三角、四角、扁平、中空などの異型断面であってもよい。なお、単繊維横断面形状が異型の場合、前記単繊維径はその外接円の直径を使用するものとする。さらに、丸中空断面の場合は外径寸法を測定するものとする。
【0016】
前記非弾性捲縮短繊維の繊維長としては30〜100mmの範囲内であることが好ましい。該繊維長が30mmよりも小さいと充分な剛性が得られないおそれがある。逆に該繊維長が100mmよりも大きいと工程安定性が損われるおそれがある。
【0017】
この場合の、捲縮付与方法としては、熱収縮率の異なるポリマーをサイドバイサイド型に張り合わせた複合繊維を用いてスパイラル状捲縮を付与、異方冷却によりスパイラル状捲縮を付与、捲縮数が3〜40個/2.54cm(好ましくは7〜15個/2.54cm)となるように通常の押し込みクリンパー方式による機械捲縮を付与など、種々の方法を用いればよいが、嵩高性、製造コスト等の面から機械捲縮を付与するのが最適である。
【0018】
次に、熱接着性複合短繊維の熱融着成分は、上記の非弾性捲縮短繊維を構成するポリマー成分より、40℃以上低い融点を有することが必要である。この温度が40℃未満では接着が不十分となる上、腰のない取り扱いにくい繊維構造体となり、本発明の目的が達せられない。
【0019】
ここで、熱融着成分として配されるポリマーとしては、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、非弾性ポリエステル系ポリマー及びその共重合物、ポリオレフィン系ポリマー及びその共重合物、ポリビニルアルコ−ル系ポリマー等を挙げることができ、ポリウレタン系エラストマーとしては、分子量が500〜6000程度の低融点ポリオール、例えばジヒドロキシポリエーテル、ジヒドロキシポリエステル、ジヒドロキシポリカーボネート、ジヒドロキシポリエステルアミド等と、分子量500以下の有機ジイソシアネート、例えばp,p’−ジフェニールメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート水素化ジフェニールメタンイソシアネート、キシリレンイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、ヘキサメチレンジイソシアネート等と、分子量500以下の鎖伸長剤、例えばグリコールアミノアルコールあるいはトリオールとの反応により得られるポリマーである。
【0020】
これらのポリマーのうちで、特に好ましいのはポリオールとしてはポリテトラメチレングリコール、またはポリ−ε−カプロラクタムあるいはポリブチレンアジペートを用いたポリウレタンである。この場合の有機ジイソシアネートとしてはp,p’−ビスヒドロキシエトキシベンゼンおよび1,4−ブタンジオールを挙げることができる。
【0021】
また、ポリエステル系エラストマーとしては熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールをソフトセグメントとして共重合してなるポリエーテルエステル共重合体、より具体的にはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジカルボン酸の少なくとも1種と、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオールあるいは1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンメタノール等の脂環式ジオール、またはこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジオール成分の少なくとも1種、および平均分子量が約400〜5000程度のポリエチレングリコール、ポリ(1,2−および1,3−ポリプロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体等のポリ(アルキレンオキサイド)クリコールのうち少なくとも1種から構成される三元共重合体を挙げることができる。
【0022】
特に、接着性や温度特性、強度の面からすればポリブチレン系テレフタレートをハード成分とし、ポリオキシブチレングリコールをソフトセグメントとするブロック共重合ポリエーテルエステルが好ましい。この場合、ハードセグメントを構成するポリエステル部分は、主たる酸成分がテレフタル酸、主たるジオール成分がブチレングリコール成分であるポリブチレンテレフタレートである。むろん、この酸成分の一部(通常30モル%以下)は他のジカルボン酸成分やオキシカルボン酸成分で置換されていても良く、同様にグリコール成分の一部(通常30モル%以下)はブチレングリコール成分以外のジオキシ成分で置換されていても良い。また、ソフトセグメントを構成するポリエーテル部分はブチレングリコール以外のジオキシ成分で置換されたポリエーテルであってよい。
【0023】
共重合ポリエステル系ポリマーとしては、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸類および/またはヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂環式ジカルボン酸類と、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、パラキシレングリコールなどの脂肪族や脂環式ジオール類とを所定数含有し、所望に応じてパラヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類を添加した共重合エステル等を挙げることができ、例えばテレフタル酸とエチレングリコールとにおいてイソフタル酸および1,6−ヘキサンジオールを添加共重合させたポリエステル等が使用できる。
【0024】
また、ポリオレフィンポリマーとしては、例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等を挙げることができる。
上記の熱融着成分の中でも、共重合ポリエステル系ポリマーや熱可塑性ポリエステル系エラストマーが好ましく、良好な消音性能を有することからポリエステル系エラストマーを用いることがより好ましい。
なお、上述のポリマー中には、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分岐剤、艶消し剤、着色剤、その他各種の改良剤等も必要に応じて配合されていても良い。
【0025】
一方、熱接着性複合短繊維において、熱融着成分の相手側成分としては非弾性ポリエステルが好まして例示される。その際、熱融着成分が、少なくとも1/2の表面積を占めるものが好ましい。重量割合は、熱融着成分と非弾性ポリエステルが、複合比率で30/70〜70/30の範囲にあるのが適当である。熱接着性複合短繊維の形態としては、特に限定されないが、熱融着成分と非弾性ポリエステルとが、サイドバイサイド、芯鞘型であるのが好ましく、より好ましくは芯鞘型である。この芯鞘型の熱接着性複合短繊維では、非弾性ポリエステルが芯部となり、熱可塑性エラストマーが鞘部となるが、この芯部は同心円状、若しくは、偏心状にあってもよい。
【0026】
かかる熱接着性複合短繊維において、単繊維径としては10〜70μmの範囲内であることが好ましい。単糸繊度としては、2〜40dtexの範囲内であることが好ましい。かかる熱接着性複合短繊維は、繊維長が3〜100mmに裁断されていることが好ましい。
【0027】
本発明においては、上記の非弾性捲縮短繊維と、上記の熱接着性複合短繊維を混綿させ、加熱処理することにより、該熱接着性複合短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点及び該熱接着性複合短繊維と該非弾性捲縮短繊維とが交差した状態で熱融着された固着点とが散在してなる繊維構造体が形成される。
【0028】
この際、非弾性捲縮短繊維と熱接着複合短繊維との重量比率は90/10〜10/90である必要がある。熱接着複合短繊維の比率がこの範囲より少ない場合は、固着点が極端に少なくなり、繊維構造体の腰がなく、成型性が不良となる。一方、熱接着複合短繊維の比率がこの範囲より多い場合は、接着点が多くなり過ぎ、熱処理工程での取り扱い性、成型性などが低下する。
【0029】
さらに、本発明においては、特に重要な点は、繊維構造体の厚さ方向に繊維が配列していることである。このように、繊維が厚さ方向に配列していると、厚さ方向、すなわち圧縮方向の反発性が高いため、梱包後しばらくした後に開梱し元の厚みに戻ることが可能となる。具体的には、上記繊維構造体の該繊維構造体の厚さ方向に対して平行に配列されている繊維の総本数を(B)とし、繊維構造体の厚さ方向に対して垂直に配列されている繊維の総本数を(A)とするとき、B/Aが1.5以上であることが肝要である。B/Aが1.5未満の場合、すなわち、従来のクロスレイ、ランダムカードによる繊維構造体では、開梱後の厚みが戻らなく、製品価値が劣った物となり好ましくない。
【0030】
このような繊維構造体を製造する方法には特に限定はなく、従来公知の方法を任意に採用すれば良いが、例えば非弾性捲縮短繊維と熱接着性複合短繊維とを混綿し、ローラーカードにより均一なウェッブとして紡出した後、特開2007−025044号公報の図1に示すような熱処理機を用いて、ウェッブをアコーディオン状に折りたたみながら加熱処理し、熱融着による固着点を形成させる方法などが好ましく例示される。例えば特表2002−516932号公報に示された装置(市販のものでは、例えばStruto社製Struto設備など)などを使用するとよい。
【0031】
かくして得られた繊維構造体において、その厚さとしては、制限はないが、1mm以上(好ましくは5mm以上、より好ましくは10〜50mm)であることが、断熱材及び吸音材の用途に好ましい。なお、これらの繊維構造体を接着剤等を使用し2枚以上貼り合わせたものでもよい。
【0032】
また、かかる繊維構造体の平均密度は5〜100kg/mの範囲にあることが好ましい。該密度が5kg/m未満では、低密度のため取り扱いが難しく逆に平均密度が100kg/mを越えると板状となり、梱包時の圧縮処理が難しい。
【0033】
また、必要に応じ、かかる繊維構造体を、厚み方向に対してほぼ垂直または、必要に応じてやや斜めにスライサー設備等によりスライスしたものを使用しても良い。また、2枚以上、接着剤等により貼り合わせた物を使用しても良い。さらに、他の厚みの薄いシート状物、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布や、フィルム等を貼り合わせた物も、本特許の効果を大きく低下しないようであれば、使用可能である。
【0034】
次に得られた、繊維構造体をロール状にしてまたはシート状で、通気性の低い袋状のフィルム等により梱包する。好ましいのはロール状である。例えば、袋状のフィルムに繊維構造体を入れた後、フィルム等の方より、吸引装置を使用し袋の中の空気を排気することで、繊維構造体の容積が減少する。その際、下記式で定義する、空気を排出した後の減容率が10〜80%(より好ましくは20〜70%)の範囲内であることが好ましい。
減容率(%)=((空気排出前の繊維構造体容積)−(空気排出後の繊維構造体容積))/(空気排出前の繊維構造体容積)×100
【0035】
ここで、減容率が10%未満では、運搬時の積載効率が上がらす、また、80%を超える場合は、厚みが回復しない状態となる。なお、ここで使用するフィルムは、作業中、運搬、保管中に空気が抜けて、元の形状にならないような物でポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム等の通気性の低いものであれば何でも良い。形状としては、1端のみが開放された袋状のものが、取り扱いが容易である。
次に、吸引後の袋の端部を締めることで、梱包体が完成する。さらに、形状を安定化させるために、袋を2重、3重にして、各種バンドで梱包体を締めた状態にしてもよい。
【実施例】
【0036】
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
(1)融点
Du Pont社製 熱示差分析計990型を使用し、昇温20℃/分で測定し、融解ピークをもとめた。融解温度が明確に観測されない場合には、微量融点測定装置(柳本製作所製)を用い、ポリマーが軟化して流動を始めた温度(軟化点)を融点とする。なお、n数5でその平均値を求めた。
(2)捲縮数
JIS L 1015 7.12に記載の方法により測定した。なお、n数5でその平均値を求めた。
(3)B/A
図1に示すように、繊維構造体を厚さ方向に切断し、その断面において、厚さ方向に対して平行に配列されている繊維(図2において0°≦θ≦45°)の総本数を(B)とし、繊維構造体の厚さ方向に対して垂直に配列されている繊維(図2において45°<θ≦90°)の総本数を(A)としてB/Aを算出した。なお、本数の測定は、任意の10ヶ所について各々30本の繊維を透過型光学顕微鏡で観察し、その数を数えた。
(4)厚さ、目付け、密度
JIS K6400により測定した。
(5)減容率
下記式により算出した。
減容率(%)=((空気排出前の繊維構造体容積)−(空気排出後の繊維構造体容積))/(空気排出前の繊維構造体容積)×100
【0037】
[実施例1]
融点が110℃の共重合ポリエステルを鞘成分に配し、融点が256℃のポリエチレンテレフタレートを芯成分に配した、単糸繊度2.2dtex、繊維長51mmの芯鞘型熱接着性複合短繊維(芯成分:鞘成分が重量比で50:50、)30重量%と、機械捲縮(捲縮数9ケ/2.54cm)を付与した、融点が256℃のポリエチレンテレフタレートからなる、単糸繊度2.2dtex、繊維長51mmのポリエチレンテレフタレート短繊維(非弾性捲縮短繊維)70重量%とを用いてブレンド、カーデイング、クロスレイアー、カーデイングし、次いでStruto社製Struto設備(特表2002−516932号公報に示された装置と同様のもの)を使用し、駆動ローラにより、温度が170℃に設定された熱風サクション式熱処理機内へ押し込むことで、図2に示すようにウエブをアコーデオン状に折り畳み繊維を厚さ方向に配列させ、加熱処理を施し、目付け180gr/m、厚さ16mm、平均密度11Kg/mの幅150cm、長さ20mの繊維構造体のロールを作成した。なお、該繊維構造体において、B/Aが4.7であり、熱接着性複合短繊維と非弾性捲縮短繊維とが繊維構造体の厚さ方向に配列していた。また、熱接着性複合短繊維の単繊維径は15μm、非弾性捲縮短繊維の単繊維径は15μmであった。
次いで、20μのポリエチレンの袋に前記ロールを入れて、吸引装置により袋の片側より脱気した。さらに、脱気後のロール直径と同様なポリエチレンの袋を使用し、2重とした。その後、7日間常温でロールを放置した後、開梱し寸法を測定した結果を表1に示す。
【0038】
[実施例2]
融点154℃の熱可塑性ポリエーテルエステル型エラストマーを鞘成分に用い、融点256℃ポリエチレンテレフタレートを芯成分に用いた単糸繊度6.6dtex、繊維長51mmの芯/鞘型熱接着性複合短繊維A(芯/鞘比=60/40:重量比)と、単糸繊度6.6dtex、繊維長64mmの中空ポリエチレンテレフタレート繊維を50:50の重量比率で混綿し、ローラーカード、クロスレイ、ローラーカードの順に通し、次にStruto社製Struto設備を使用し、図2に示すようにウエブをヒダ折りし大部分の繊維を厚み方向に配列(B/A=3.9)させた後、温度200℃の熱処理炉にて繊維間を熱接着処理することで加熱処理を施し、目付け420gr/m、厚さ25mm、平均密度17Kg/mの幅150cm、長さ20mのロールを作成した。なお、該繊維構造体において、B/Aが3.9であり、熱接着性複合短繊維と非弾性捲縮短繊維とが繊維構造体の厚さ方向に配列していた。また、熱接着性複合短繊維の単繊維径は26μm、非弾性捲縮短繊維の単繊維径は26μmであった。
次いで、実施例1と同様にロールを梱包した。その後、7日間常温でロールを放置した後、開梱し寸法を測定した結果を表1に示す。
【0039】
[比較例1]
実施例1において、クロスレイ後のシートを重ね合わせ、目付け180g/m、厚さ15.5mmの不織布状繊維構造体を得た後、実施例1と同様のロールを作成し、梱包、放置、開梱を実施し寸法を測定した結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、繊維構造体の容積を減少させることができるため運搬における積載効率が向上し、かつ開梱した後において繊維構造体の回復性が良好な、繊維構造体の梱包方法および該梱包方法で得られた梱包体が得られ、その工業的価値は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】B/Aの測定方法を説明するための模式図である。
【図2】ウエブをヒダ折りにしている様子を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1:熱接着性複合短繊維または非弾性捲縮短繊維
2:繊維構造体の厚さ方向
3:熱接着性複合短繊維または非弾性捲縮短繊維の配列方向
4:繊維構造体
5:ウエブの山

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維構造体を袋内に収納した後、該袋内の空気を排出することにより前記繊維構造体の容積を減少させる繊維構造体の梱包方法であって、前記繊維構造体が、
非弾性捲縮短繊維と、該非弾性捲縮短繊維を構成するポリマーよりも40℃以上低い融点を有するポリマーが、熱融着成分としてその表面に配された熱接着性複合短繊維とが重量比率で90/10〜10/90となるように混綿され、該熱接着性複合短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点および該熱接着性複合短繊維と該非弾性捲縮短繊維とが交差した状態で熱融着された固着点とが散在してなる繊維構造体であって、該繊維構造体の厚さ方向に対して平行に配列されている繊維の総本数を(B)とし、繊維構造体の厚さ方向に対して垂直に配列されている繊維の総本数を(A)とするとき、B/Aが1.5以上である繊維構造体であることを特徴とする繊維構造体の梱包方法。
【請求項2】
前記非弾性捲縮短繊維が非弾性ポリエステル系捲縮短繊維である、請求項1に記載の繊維構造体の梱包方法。
【請求項3】
前記熱接着性複合短繊維の熱融着成分が熱可塑性エラストマーである、請求項1または請求項2に記載の繊維構造体の梱包方法。
【請求項4】
前記熱可塑性エラストマーがポリエステル系エラストマーである、請求項3に記載の繊維構造体の梱包方法。
【請求項5】
前記熱接着性複合短繊維の熱融着成分が非弾性ポリエステル系ポリマーである、請求項1または請求項2に記載の繊維構造体の梱包方法。
【請求項6】
前記非弾性ポリエステル系ポリマーが共重合ポリエステルである、請求項5に記載の繊維構造体の梱包方法。
【請求項7】
前記繊維構造体が、非弾性捲縮短繊維と熱接着性複合短繊維とを混綿し、ローラーカードによりウェッブとして紡出した後、該ウェッブをアコーディオン状に折りたたみながら加熱処理し、熱融着による固着点を形成させたものである、請求項1〜6のいずれかに記載の繊維構造体の梱包方法。
【請求項8】
袋内に収納する前の繊維構造体において、繊維構造体の厚さが1mm以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の繊維構造体の梱包方法。
【請求項9】
袋内に収納する前の繊維構造体において、繊維構造体の平均密度が、5〜100kg/mの範囲内である、請求項1〜8のいずれかに記載の繊維構造体の梱包方法。
【請求項10】
繊維構造体がロール状に巻かれている、請求項1〜9のいずれかに記載の繊維構造体の梱包方法。
【請求項11】
下記式で定義する、空気を排出した後の減容率が10〜80%の範囲内である、請求項1〜10のいずれかに記載の繊維構造体の梱包方法。
減容率(%)=((空気排出前の繊維構造体容積)−(空気排出後の繊維構造体容積))/(空気排出前の繊維構造体容積)×100
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載の繊維構造体の梱包方法により得られた梱包体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−214909(P2009−214909A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60790(P2008−60790)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】