説明

繊維構造物

【課題】 優れた抗菌性能を有する繊維構造物を提供する。
【解決手段】 プロポリス原塊粉砕物を抽出し、有効成分を取り出した残渣から得られる抗菌性能を有する抽出物を繊維に付着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性能を有する繊維構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康・衛生・環境に関する消費者の関心の高まりに伴い、消臭、抗菌など衛生的機能を有する繊維製品に対するニーズが非常に高まっており、これら機能を有するものが多数提案されている。しかしながら、健康・環境を目的とするにもかかわらず、これら衛生機能を発揮させる加工剤として化学合成剤が使用されていることが多く見られる。
【0003】
天然系物質を用いたものとしては、抗菌効果を有する植物系物質、動物系物質の粉体、該抽出エキスから選ばれた少なくとも1種が繊維表面に付着された繊維構造物が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
一方、従来より天然の抗菌性物質としてプロポリスが知られており、プロポリスの持つ特徴を繊維へ適用するための開発もなされてきており、プロポリスを紙に付着したメチシリン耐性黄色ブドウ球菌増殖抑制用の抗菌シートも提案されている(特許文献2)。
【0005】
プロポリスについては、ミツバチが巣の保全のために作る濃緑色〜茶褐色の粘着性物質であり、ミツバチが樹木より採取したガム質・樹液・植物色素系物質・香油等の集合体に自身の分泌物・蜜蝋等を混合して作られる。該プロポリスについては、抗腫瘍活性、抗酸化活性、抗炎症活性、抗菌活性などの様々な生活活性が報告されていた。
【0006】
【特許文献1】特開2003−96664号公報
【特許文献2】特公平7−51487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1及び2に記載の繊維構造物、抗菌シートはいずれも主に使い捨て用途に用いられるものとして提案されているものであって、繰り返し使用する場合には、洗濯等により抗菌剤が洗い出されて抗菌性を消失することが考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため鋭意研究の結果、本発明者は、プロポリス原塊粉砕物を抽出し、有効成分を取り出した残渣(以下、リーズということもある)から抽出された抽出物を繊維表面に付着させた場合、天然物由来の抗菌性能を有する繊維構造物を得られることを見いだすと共に、その繊維構造物を用いた繊維製品においても抗菌性能及び洗濯耐久性を有することを見いだし、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、繊維表面にプロポリス原塊粉砕物の残渣から抽出された抗菌剤が付着している繊維構造物である。また、リーズから抽出された抗菌剤がバインダー樹脂により繊維表面に付着していることにより、洗濯耐久性が向上し、好ましい。
【0010】
以下において、本発明について項目毎に具体的に説明する。
【発明の効果】
【0011】
本発明による繊維構造物は、プロポリス原塊粉砕物の残渣から抽出された抽出物の有することにより、優れた抗菌性能を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明で用いられるプロポリス原塊粉砕物の抽出残渣は、有用な天然物由来の活性酸素消去剤が残存すること、かつ、その剤が人体に対して安全であることもつきとめられており、例えば、特開2005−336137号公報記載の方法にて提供される。ここで得られた抽出残渣を繊維構造物に付着させるために加工液にするとよい。具体的には、加工液は、リーズ100gを70〜80℃の熱水にて約7日間浸漬した抽出液を得た上で、この抽出液を水で薄め、乳化剤を含有したバインダー樹脂を加えることにより得ることができる。前記抽出液にバインダー樹脂を加えずに、繊維構造物の加工時にバインダー樹脂を加えることも可能であるが、加工する際の作業手間を減らし、得られる繊維構造物の品質安定のためにも予め前記抽出液にバインダー樹脂を加えておくことが好ましい。
【0013】
本発明の繊維構造物において、用いられる繊維材料は、特に限定されないが、好ましくは、原綿、糸、織編物、不織布等が挙げられる。また、その繊維素材としても、特に限定されないが、好ましくは、コットン、麻、キュプラ、高強度再生セルロース(例えば、商品名「テンセル」)等のセルロース繊維、羊毛等の天然繊維。ビスコース、レーヨン、低弾性率レーヨン繊維(例えば、商品名「ポリノジック」)等の半合成繊維、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン、ポリオレフィン等の合成繊維、或いはこれらの繊維を二種以上組み合わせた混紡繊維等が挙げられる。特に、コットンを50質量%以上含む織編物であると風合いも柔らかくなり好ましい。
【0014】
本発明の繊維構造物は、種々の用途の繊維製品に用いることができ、繊維製品においても抗菌性能を有する。繊維製品としては、例えば、下着類、シャツ類、タオル、靴下、手袋、パジャマ、帽子等の衣料製品、カーテン、カバン、靴、インテリア等の資材織物製品、寝装製品等に用いることができる。特に、直接肌に接触する布団カバー、枕カバー等の寝装製品や下着類に用いることが好ましい。
【0015】
本発明において、繊維構造物へのプロポリス原塊粉砕物の残渣から抽出された抗菌剤の付着方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、この抗菌剤を含む加工液を繊維構造物に含浸させ乾燥させればよく、パッドドライ法、パッドドライキュア法、ドラム染色機を用いた浸漬脱水乾燥法などが挙げられる。作業性やコストの面でテンターを用いたパッドドライ法が好ましい。
【0016】
パッドドライ法とは、繊維に、薬剤又は加工剤を付与するパッド(マングル処理)、すなわち布帛を薬剤に浸漬し均一に絞る工程と、次に乾燥を行う工程とを実施する方法である。一般に、これらの工程を備えた加工機を用いて行うことができる。絞り率は50〜150%、乾燥条件は、例えば、100〜160℃で30秒〜3分が好ましい。
【0017】
また、本発明でのプロポリス原塊粉砕物の残渣から抽出された抗菌剤を含む加工液は、独特の臭いを有することがあり、その臭いを軽減するためにソーピング工程を通しても良いし、改めて乾燥工程を通しても良い。
【0018】
別の付着方法としては、プロポリス原塊粉砕物の残渣から抽出された抗菌剤を含む液を繊維構造物に塗布やスプレー等により直接付与し、その後に乾燥させる方法でも良い。
【0019】
プロポリス原塊粉砕物の残渣から抽出された抗菌剤を繊維構造物へ付着させる際には、バインダー樹脂を使用することができる。例えば、シリコンアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等を使用する。又、風合い調整のために柔軟剤、平滑剤、硬化剤等を併用してもよいし、消臭等別の機能を有する加工剤を併用してもよい。中でも、ポリエステル系樹脂を使用することにより洗濯耐久性が向上し、好ましい。
【0020】
プロポリス原塊粉砕物の残渣から抽出された抗菌剤の繊維構造物への付着については、一種類のバインダー樹脂を使用することができるし、二種以上のバインダー樹脂を使用してもよい。
【実施例】
【0021】
本発明を以下の実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、実施例中での抗菌試験は次の方法を用いた。
[抗菌試験]
JIS−L1092 定量試験(菌液吸収法)により静菌活性値を測定し、抗菌性能を評価した。評価にあたっては、試験菌株として黄色ぶどう状球菌を用いた。
【0022】
[風合い]
実験者が触感にて、(○:柔らかい、△:中間、×:固い)の三段階にて評価した。
【0023】
[供試布]
糊抜精練晒処理を施したコットン100%、200本ブロード(経密度:130本/inch、緯密度:70本/inch)を供試布とした。
【0024】
(加工液1の調整)
リーズ100g(日本プロポリス株式会社製)を70〜80℃の熱水にて約7日間浸漬した抽出液を得、この抽出液を水で薄め、乳化剤を含有したアクリル系樹脂(バインダー樹脂)(大日本インキ化学工業株式会社製)を水で薄めた抽出液に対して5%を加えることにより得られた加工剤を5%に薄めることにより加工液1を得た。
【0025】
(加工液2の調整)
リーズ100g(日本プロポリス株式会社製)を70〜80℃の熱水にて約7日間浸漬した抽出液を得、この抽出液を水で薄め、乳化剤を含有したシリコンアクリル系樹脂(バインダー樹脂)(高松油脂株式会社製)を水で薄めた抽出液に対して5%加えることにより得られた加工剤を5%に薄めることにより加工液2を得た。
【0026】
(加工液3の調整)
リーズ100g(日本プロポリス株式会社製)を70〜80℃の熱水にて約7日間浸漬した抽出液を得、この抽出液を水で薄め、乳化剤を含有したポリエステル系樹脂(バインダー樹脂)(高松油脂株式会社製)を水で薄めた抽出液に対して5%加えることにより得られた加工剤を5%に薄めることにより加工液3を得た。
【0027】
(実施例1)
供試布を加工液1中に浸漬し、マングルにて絞り率80%に絞り、130℃で乾燥処理した。JISL0217(103法)により洗濯乾燥を繰り返した。
【0028】
(実施例2)
供試布を加工液2中に浸漬し、マングルにて絞り率80%に絞り、130℃で乾燥処理した。JISL0217(103法)により洗濯乾燥を繰り返した。
【0029】
(実施例3)
供試布を加工液3中に浸漬し、マングルにて絞り率80%に絞り、130℃で乾燥処理した。JISL0217(103法)により洗濯乾燥を繰り返した。
【0030】
(比較例1)
供試布を加工液1〜3を使用せず水のみに浸漬した後、マングルにて絞り率80%に絞り、130℃で乾燥処理した。JISL0217(103法)により洗濯乾燥を繰り返した。
【0031】
[静菌活性値]
洗濯0回 洗濯10回
実施例1 2.9 2.8
実施例2 3.8 2.9
実施例3 4.0 4.0
比較例1 0.1 0.1
【0032】
[風合い]
洗濯0回 洗濯10回
実施例1 △ △
実施例2 ○ ○
実施例3 ○ ○
【0033】
実施例1〜3の繊維構造物は、合格基準をクリアする静菌活性値(合格基準:静菌活性値2.2以上)を確認することができ、それが洗濯10回を経ても持続していることが確認できた。一方、比較例1の静菌活性値は合格基準をクリアすることができなかった。また、バインダー樹脂による風合いの違いを確認することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維表面にプロポリス原塊粉砕物の残渣から抽出された抗菌剤が付着している繊維構造物。
【請求項2】
前記抗菌剤がバインダー樹脂により付着している請求項1に記載の繊維構造物。
【請求項3】
前記バインダー樹脂がポリエステル系樹脂である請求項2に記載の繊維構造物。
【請求項4】
前記繊維構造物がコットン繊維を含む織編物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維構造物。

【公開番号】特開2008−248409(P2008−248409A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88517(P2007−88517)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000002923)大和紡績株式会社 (173)
【出願人】(306024078)ダイワボウノイ株式会社 (11)
【Fターム(参考)】