説明

繊維構造物

本発明の各実施形態は、フッ素系耐油剤を用いずに、耐油性・耐水性を有し、繊維構造基材を容易にリサイクルするための繊維構造物に関する。ある実施形態の繊維構造物(Ts1)では、平面状の繊維構造基材(T)と、塗料固形分が10%〜60%の範囲内でポリエステル系樹脂を含んだ塗料が繊維構造基材の片面又は両面に塗工されて形成されたポリエステル系樹脂層(R1)とを備えている。このポリエステル系樹脂層は、リサイクル時に繊維構造基材Tから容易に分離可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、紙又はセルロースからなる繊維構造物に係り、特に、フッ素系耐油剤を用いずに、耐水性及び耐油性を向上し得る繊維構造物に関する。
【背景技術】
従来、紙などの繊維構造物に耐油性・耐水性を付与する方法としては、長年にわたり、フッ素系耐油剤が用いられている。フッ素系耐油剤は、紙表面に塗布されると、紙の表層繊維の表面張力を、一般的な油脂や水などの液体の表面張力より低く改質する。すなわち、フッ素系耐油剤は、液体をはじかせて濡れにくくすることで、紙の繊維中に液体が浸透することを抑えている。
しかしながら、最近の研究により、一部のフッ素系耐油剤は、生物に蓄積性のある化学物質であることが懸念されている。このため、フッ素系耐油剤は、製造を見直す動きが大手メーカーの数社に出てきている。
一方、フッ素系耐油剤を用いずに耐油性・耐水性を付与する技術としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のプラスチックフィルムを紙に貼り合わせてなる耐油紙がある(例えば、実開平6−32027号公報を参照。)。
しかしながら、以上のようなポリエチレン等を貼り合わせた耐油紙は、コストが安いものの、紙としてリサイクルすることが困難となっている。
本発明の目的は、フッ素系耐油剤を用いずに、耐油性・耐水性を有し、繊維構造基材を容易にリサイクルし得る繊維構造物を提供することである。
【発明の開示】
上記目的を達成するために、本発明の繊維構造物は下記の如く構成されている。
本発明の第1の局面(aspect)は、平面状の繊維構造基材を有する繊維構造物であって、塗料固形分が10%〜60%の範囲内でポリエステル系樹脂を含んだ塗料が前記繊維構造基材の片面又は両面に塗工されて形成されたポリエステル系樹脂層を備えた繊維構造物である。
このように本発明の第1の局面は、従来とは異なり、リサイクル時に繊維構造基材から容易に分離可能なポリエステル系樹脂層を繊維構造基材の片面又は両面に形成した構成により、フッ素系耐油剤を用いずに、耐油性・耐水牲を有し、繊維構造基材を容易にリサイクルできる繊維構造物を提供することができる。
本発明の第2の局面は、第1の局面において、前記ポリエステル系樹脂層としては、鎖式炭化水素の疎水基により修飾されている繊維構造物である。
これにより、本発明の第2の局面は、第1の局面の作用に加え、ポリエステル系樹脂層が疎水基(親油基)をもつので耐水性を向上させることができる。
本発明の第3の局面は、第2の局面において、前記疎水基の炭素数が8〜24の範囲内にある繊維構造物である。
これにより、本発明の第3の局面は、第2の局面の作用に加え、粘性の高い油などの侵入を抑制することができる。
本発明の第4の局面は、第1〜第3の各局面において、前記ポリエステル系樹脂層としては、ガラス転移点(JIS K7121)が25℃〜15℃の範囲内にある繊維構造物である。
これにより、本発明の第4の局面は、第1〜第3の各局面の作用に加え、耐油性・耐水性をより向上させることができる。
本発明の第5の局面は、第1〜第4の各局面において、前記ポリエステル系樹脂層としては、ガラス転移点(JIS K7121)が10℃〜−40℃の範囲内にあるラテックス系樹脂がグラフト又は混合されている繊維構造物である。
これにより、本発明の第5の局面は、第1〜第4の各局面の作用に加え、ラテックス系樹脂により柔軟性を付与することができる。
本発明の第6の局面は、第1〜第5の各局面において、前記ポリエステル系樹脂層としては、無機剤が混合されている繊維構造物である。
これにより、本発明の第6の局面は、第1〜第5の各局面の作用に加え、無機剤の作用により、接着剤の接着性の向上及び油の吸着性の向上を図ることができる。
本発明の第7の局面は、第6の局面において、前記無機剤が0.1重量%〜10重量%の範囲内で混合されている繊維構造物である。
これにより、本発明の第7の局面は、第6の局面の作用に加え、無機剤により形成されるピンホールを問題の無い範囲に抑制することができる。
本発明の第8の局面は、第1〜第7の局面のいずれかにおいて、前記繊維構造基材のコッブ吸水度(JIS 8140)が当該繊維構造基材の秤量(g/m)未満の値であり、且つ前記ポリエステル系樹脂層の塗布量が1g/m〜30g/mの範囲内にある繊維構造物である。
これにより、本発明の第8の局面は、第1〜第7の各局面の作用に加え、秤量未満のコッブ吸水度をもつ繊維構造基材に関し、塗布量の最適化を図ることができる。
本発明の第9の局面は、第1〜第7の各局面において、前記繊維構造基材のコッブ吸水度(JIS P8140)が当該繊維構造基材の秤量(g/m)以上の値であり、且つ前記ポリエステル系樹脂層の塗布量が3g/m〜30g/mの範囲内にある繊維構造物である。
これにより、本発明の第9の局面は、第1〜第7の各局面の作用に加え、秤量以上のコッブ吸水度をもつ繊維構造基材に関し、塗布量の最適化を図ることができる。
本発明の第10の局面は、第1〜第9の各局面において、コッブ吸水度(JIS P8140)が10g/m以下である繊維構造物である。
これにより、本発明の第10の局面は、第1〜第9の各局面の作用に加え、コッブ吸水度を規定したので、優れた耐水性を保証することができる。
本発明の第11の局面は、第1〜第10の各局面において、撥水度(JIS P8137)がR8以上である繊維構造物である。
これにより、本発明の第10の局面は、第1〜第9の各局面の作用に加え、撥水度を規定したので、優れた撥水性を保証することができる。
本発明の第12の局面は、平面状の繊維構造基材と、前記繊維構造基材上に形成されたSBR系ラテックス系樹脂層と、前記SBR系ラテックス系樹脂層上に形成されたポリエステル系樹脂層と、を備えた繊維構造物である。
このように本発明の第12の局面は、従来とは異なり、リサイクル時に繊維構造基材から容易に分離可能なSBR系ラテックス系樹脂層及びポリエステル系樹脂層を繊維構造基材上に形成した構成により、フッ素系耐油剤を用いずに、耐油性・耐水性を有し、繊維構造基材を容易にリサイクルできる繊維構造物を提供することができる。また、本発明の第12の局面は、SBR系ラテックス系樹脂層を備えた構成により、柔軟性を向上させることができる。
本発明の第13の局面は、第12の局面において、前記ポリエステル系樹脂層としては、鎖式炭化水素の疎水基により修飾されている繊維構造物である。
これにより、本発明の第13の局面は、第12の局面の作用に加え、ポリエステル系樹脂層が疎水基(親油基)をもつので耐水性を向上させることができる。
本発明の第14の局面は、第13の局面において、前記疎水基の炭素数が8〜24の範囲内にある繊維構造物である。
これにより、本発明の第14の局面は、第13の局面の作用に加え、粘性の高い油などの侵入を抑制することができる。
本発明の第15の局面は、第12〜第14の各局面において、前記ポリエステル系樹脂層としては、ガラス転移点(JIS K7121)が25℃〜15℃の範囲内にある繊維構造物である。
これにより、本発明の第15の局面は、第12〜第14の各局面の作用に加え、耐油性・耐水性をより向上させることができる。
本発明の第16の局面は、第12〜第15の各局面において、前記SBR系ラテックス系樹脂層としては、ガラス転移点(JIS K7121)が10℃〜−40℃の範囲内にある繊維構造物である。
これにより、本発明の第16の局面は、第12〜第15の各局面の作用に加え、ラテックス系樹脂により柔軟性を付与することができる。
本発明の第17の局面は、平面状の下記A繊維構造基材と、
予めポリエステル系樹脂とラテックス系樹脂とを混合した塗工液を前記A繊維構造基材の片面又は両面に塗工し乾燥させて形成した混合樹脂層と、を備えた繊維構造物である。
A:前記塗工液が塗工される面の表面粗さ(JIS B01001)が最大高さ(Rmax)で30〜5μmの範囲内にあり、且つ前記塗工液が塗工される面をコッブ吸水度(JIS P8140(1976))の試験方法における蒸留水との接触時間を10秒間として試験した場合、得られる吸水度が100〜10[g/m・10秒]の範囲内にある繊維構造基材。
このように本発明の第17の局面は、従来とは異なり、ポリエステル系樹脂とラテックス系樹脂との混合樹脂層を繊維構造基材上に形成した構成により、前述した第5の局面と同様の作用効果を得ることができる。また、本発明の第17の局面は、繊維構造基材の塗工面の表面粗さとコッブ吸水度とを規定した構成により、必要最小限の塗工量で済むので、プラスチックの使用量の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明の第1の実施形態に係る繊維構造物の断面構成を示す模式図である。
図2〜図4は同実施形態の包装体の一例を説明するための模式図である。
図5は同実施形態の繊維構造物の変形構成を示す模式図である。
図6は本発明の第2の実施形態に係る繊維構造物の断面構成を示す模式図である。
図7は本発明の第3の実施形態に係る繊維構造物の断面構成を示す模式図である。
図8は同実施形態の繊維構造物の変形構成を示す模式図である。
図9は本発明の第4の実施形態に係る繊維構造物の断面構成を示す模式図である。
図10は同実施形態の繊維構造物の変形構成を示す模式図である。
図11は本発明の第5の実施形態に係る繊維構造物の断面構成を示す模式図である。
図12は本発明の第6の実施形態に係る繊維構造物の断面構成を示す模式図である。
図13は同実施形態の繊維構造物の変形構成を示す模式図である。
図14は本発明の第7の実施形態に係る繊維構造物の断面構成を示す模式図である。
図15は同実施形態の繊維構造物の変形構成を示す模式図である。
図16は本発明の第9の実施形態に係る繊維構造物を説明するための模式図である。
図17は本発明の第10の実施形態に係る繊維構造物の断面構成を示す模式図である。
図18〜図28は、同実施形態の繊維構造物の変形構成を示す模式図である。
図29は本発明の第17の実施形態に係る繊維構造物の断面構成を示す模式図である。
図30は同実施形態の繊維構造物の変形構成を示す模式図である。
図31は本発明の第18の実施形態に係る繊維構造物の断面構成を示す模式図である。
図32は同実施形態の繊維構造物の変形構成を示す模式図である。
図33は本発明の第19の実施形態に係る繊維構造物の断面構成を示す模式図である。
図34は同実施形態の繊維構造物の変形構成を示す模式図である。
図35は本発明の第21の実施形態に係る繊維構造物を説明するための模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、第1〜第16,第23の実施形態は、繊維構造基材T上にポリエステル系樹脂層R1を備えた構成に関する。第17〜第22の実施形態は、さらに、繊維構造基材Tとポリエステル系樹脂層R1との間にSBRラテックス樹脂層R0を備えた構成に関する。
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る繊維構造物の断面構成を示す模式図である。この繊維構造物Ts1は、平面状の繊維構造基材Tと、この繊維構造基材Tの片面に塗工により形成されたポリエステル系樹脂層R1とを備えている。
ここで、繊維構造基材Tは、紙又はセルロース構造物であり、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ等の化学パルプ、GP(ground pulp:砕木パルプ)、RGP(refiner ground pulp:リファイナー砕木パルプ)、TMP(thermomechanical pulp:サーモメカニカルパルプ)等の機械パルプ、又はこれらを原料とした原紙が使用可能となっている。この原紙の定義は、公知の長網多筒型抄紙機、長網ヤンキー型抄紙機、円網抄紙機等で抄造される上質紙、中質紙、片艷紙及びクラフト紙等の酸性紙、中性紙、アルカリ性紙を包含している。これらの原紙は、紙力増強剤、サイズ剤、填料、歩留向上剤等の抄紙補助薬品が含まれていてもよい。
具体的には、繊維構造基材Tが紙の場合、例として、上質紙、模造紙、クラフト紙などの薄紙や、板紙、段ボール、不織布などが挙げられる。また、繊維構造基材Tがセルロース構造物の場合、例として、パルプモールド等、セルロース繊維を主体とした構造物が挙げられる。
ポリエステル系樹脂層R1は、繊維構造基材Tに耐水性及び耐油性を付与するための樹脂層であり、塗料固形分10%〜60%の範囲内でポリエステル樹脂が水分散された塗料が塗工されて形成されている。
ここで、耐水性について述べる。一般的に水酸基(OH)をもつセルロースを主体とした紙や、パルプモールド体のような繊維構造基材Tは、セルロース繊維同士が強固な水素結合で結ばれて形状を保っている。このため、水蒸気や液体の水が浸透した際には、水酸基が緩み、繊維構造基材Tに形態の変化や千切れ等の破損を生じさせる。従って、耐水性は、このような破損の防止に加え、水の浸透による外観の変化(しみ)の防止をも含んでいる。
耐油性は、一般的には次の2つの意味を持つ。(1)外観の変化(しみ)を防ぐ(包装製品の衛生、安全性、商品イメージの保護)。(2)油が繊維表面にしみ込んで裏面に突き抜けて服や手などに付着する可能性を少なくするために、油が繊維に浸透する速度を遅くする旨(フッ素系耐油紙)、又は油の繊維への浸透を完全に防止する旨(PEラミネート)をいう。
なお、ここでは耐油性は、油が浸透した場合に、繊維構造基材Tに強度の劣化や形態の変化などを生じさせない旨をいい、逆に、繊維構造基材Tの空隙を高分子が埋めて剛直にする場合を含む。
耐油性に優れる樹脂は、ポリエステル樹脂の他に、アクリル/スチレン系樹脂、ラテックス(SBR)、又はそれらに油の吸着剤として無機剤(炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、カオリン、又はタルク等)を添加した樹脂がある。但し、本実施形態では、ポリエステル系樹脂を主剤とする材料を固形分10%〜60%で分散させた塗料を繊維構造基材Tに塗布し乾燥させることにより、耐油性をもつポリエステル樹脂層R1を繊維構造基材Tの表面に形成した。
ここで、固形分10%未満の場合、溶媒を揮発、揮散させるための乾燥エネルギーが過剰になり生産の観点から好ましくない。一方、固形分70%以上の場合、溶媒が揮発、揮散させるための必要乾燥エネルギーが低くなり、逆に塗工時に版上で早乾し、版詰まり等を生じ易いので、生産の観点から好ましくない。また、固形分61%〜69%の範囲は、使用可能であるが、本実施形態では、固形分70%以上の場合から離す趣旨で使用しなかった。
また、塗工方法としては、繊維構造基材Tの表面を樹脂で塗らし、繊維の空隙を埋めて樹脂層(樹脂皮膜)を作成する方法であれば、いずれの方法を選択してもよく、また異なる方法と適宜組み合わせても良い。具体的な塗工方法は、ロールコート、グラビアコート、カーテンコート、スプレーコート、ブレードコート、ロッドバーコート、コンマコート、エアブレードコート、ダイコート、キャストコートなど、ほとんど全ての塗工方法が使用可能となっている。また、最近、改良開発が進んでいるスプレーコート法にも良好に使用できる。
以上のような繊維構造物Ts1は、例えば、印刷・情報用紙、包装用紙、衛生用紙、工業用紙などの用途に使用可能となっている。但し、これらの用紙に限らず、繊維構造物Ts1は、紙容器、袋、合成樹脂フィルムと組合せた複合容器などといった包装体としても使用可能となっている。
図2〜図4は繊維構造物を用いた包装体Pの一例を説明するための模式図である。この包装体Pは、ポリエステル系樹脂層R1が内側にあり、繊維構造基材Tが外側にあるように製造される。
詳しくは、図2に示す如き、展開した状態から繊維構造物Ts1の側部のa〜e面に接する罫線部(折り曲げ部)f1を折り曲げた後、側部のb面とe面を接着する。また、底部のa1面とb1・c1面を接着し、側部のd面とa2面を互いに接着する。しかる後、破線の罫線部f1を外部から谷折りすることにより、図3に示すように、折り畳み状態に製造される。
この折り畳み状態は、例えば食品販売店への輸送時や保管時に対応しており、使用時には、図4に示す如き、箱型の状態に容易に組み立て可能となっている。
なお、繊維構造物Ts1は、包装体Pに用いられる場合、図5に示すように、ポリエステル系樹脂層R1を繊維構造基材Tに選択的に塗工し、露出させた繊維構造基材Tに糊層(接着剤層)Adhを形成してもよい。
また、いずれにしても、以上のような包装体Pは、後述する繊維構造物Ts2〜Ts7,Ts1x〜Ts7xでも同様に適用可能となっている。さらに、包装体Pは、図4に示す構成に限らず、例えば他の箱型形状又は袋型形状をもつ構成といった任意の構成が適用可能であることは言うまでもない。
例えば包装体Pは、図3に例示したような折り畳み状態をもつ必要はなく、例えば底部が蓋部よりも小さい形状に設計して積み重ね可能に実現してもよい。但し、この種の積み重ね可能な構成も一例であり、包装体Pに必須ではない。すなわち、包装体Pとしては、例示した折り畳み状態や積み重ね可能といった省スペース化を図る構成は必須ではない。
次に、以上のように構成された繊維構造物及び包装体の作用について説明する。
(製造時)
始めに、ポリエステル系樹脂を主剤とする材料を固形分10%〜60%の範囲内で分散させた塗料を準備する。また、この塗料を塗工する繊維構造基材Tを準備する。
続いて、図1に示すように、繊維構造基材Tの片面に塗料を塗工し、乾燥させることにより、ポリエステル系樹脂層R1を繊維構造基材Tの表層に形成する。これにより、繊維構造物Ts1の製造が完了する。
次に、この繊維構造物Ts1は、図2に示す如き、罫線部f1が形成された展開状態に裁断される。しかる後、罫線部f1が折り曲げられ、側部及び底部の重なる面が接着されることにより、図3に示す如き、折り畳み状態の包装体Pに加工される。
(使用時)
包装体Pは、通常、この折り畳み状態で食品販売店に輸送されて保管される。しかる後、販売した食品の包装時に、図4に示す如き、箱型の状態に組み立てられる。
そして、包装体Pは、例えば、から揚げ等の油物の食品を収容した状態で、利用者に渡される。
このとき、包装体Pの内側では、例えば繊維構造物Ts1のポリエステル系樹脂層R1の表層に接触した水もしくは油が浸透し難いため、表層に塗れ広がる。但し、利用者は、油が包装体Pの外側に浸み出すまでには、包装体Pから食品を取出して食べるので、手を汚すことが無い。
(リサイクル時)
使用後の包装体Pは、ゴミとして廃棄される。廃棄された包装体Pは、リサイクル時に、ポリエステル系樹脂層R1と、繊維構造基材Tの素材とが容易に分離される。得られた繊維構造基材Tの素材は、例えば紙としてリサイクルされる。
上述したように本実施形態によれば、従来とは異なり、リサイクル時に繊維構造基材Tから容易に分離可能なポリエステル系樹脂層R1を繊維構造基材の片面又は両面に形成した構成により、フッ素系耐油剤を用いずに、耐油性・耐水性を有し、繊維構造基材を容易にリサイクルできる繊維構造物を提供することができる。
特に、優れた耐油性を平面部、罫線部(折り曲げ部)にも付与した紙又はセルロース構造物を提供することができる。
次に、以上のような第1の実施形態の変形例として第2〜第7の実施形態を説明する。第2〜第7の実施形態は、ポリエステル系樹脂層R1を備えた構成をもつ点で共通し、ポリエステル系樹脂層R1の備え方(片面・両面・全域)や、平滑性を向上させるクレー層の備え方(有り;片面・両面・全域、無し)といった付加的な構成が異なる点が相違している。以下、順に説明する。
(第2の実施形態)
図6は本発明の第2の実施形態に係る繊維構造物の断面構成を示す模式図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその詳しい説明を省略し、ここでは異なる部分について主に述べる。なお、以下の各実施形態も同様にして重複した説明を省略する。
本実施形態は、第1の実施形態の変形例であり、図6に示すように、繊維構造物Ts2が繊維構造基材Tの両面にポリエステル系樹脂層R1を備えている。
ここで、両面のポリエステル系樹脂層R1は、抄紙時にサイズプレスにより、1回の工程で繊維構造基材Tの両面に微塗工されて形成されている。但し、これに限らず、2回の工程で両面に形成してもよい。
繊維構造基材Tとしては、薄紙又は厚紙(カップ)と、一般紙との2通りの原紙種類を個別に用いた。なお、薄紙又は厚紙(カップ)は、コッブ吸水度(JIS P8140)が40[g/m・2分]以下のもの(撥水性の高いもの)を用いた。また、一般紙は、コッブ吸水度が紙秤量と同じもの(撥水性の低いもの)を用いた。また、ベック平滑度(JIS P8119)は、薄紙又は厚紙(カップ)と一般紙との両者ともに、3〜10秒程度と低いもの(粗いもの)を用いた。
次に、以上のように構成された繊維構造物の作用について述べる。
繊維構造物Ts2は、各繊維構造基材Tに関し、抄紙時にサイズプレスにより、図6に示すように、ポリエステル系樹脂層R1が繊維構造基材Tの両面に微塗工されて形成される。これにより、繊維構造物Ts2の製造が完了する。
このように得られた繊維構造物Ts2は、次のような特性を有していた。
繊維構造基材Tが薄紙又は厚紙(カップ)の場合、ポリエステル系樹脂層R1を塗布量4g/mで形成した場合と6g/mで形成した場合とでは、平面部の耐油性は共に低いものの、塗布量を多くした方が若干、耐油性が向上した。また、罫線部の耐油性は若干低く、平面部の撥水性もR3〜R4と低かった。
一方、繊維構造基材Tが一般紙の場合、ポリエステル系樹脂層R1を塗布量4g/mで塗布した場合と6g/mで塗布した場合とでは、平面部の耐油性は共に低かった。また、罫線部の耐油性は低く、平面部の撥水性もR3〜R4と低かった。
また、リサイクルの容易性は、繊維構造基材Tの原紙種類とは無関係に得ることができたことは言うまでもない。
上述したように本実施形態によれば、繊維構造基材Tが薄紙又は厚紙(カップ)の場合、第1の実施形態の効果のうち、平面部の耐油性とリサイクルの容易性とが得られるものの、微塗工のためか、罫線部の耐油性が見られなかった。
また、繊維構造基材Tが一般紙の場合、第1の実施形態の効果のうち、リサイクルの容易性が得られるものの、平面部及び罫線部の耐油性が見られなかった。
従って、本実施形態のように微塗工の場合、繊維構造基材Tのうちのコッブ吸水度が高いものは不向きであることが分かる。また、本実施形態のように微塗工の場合、折り曲げ部を有する包装体Pには不向きであるので、業務用紙や中敷き紙等といった折り曲げ部の無い用途に用いることが好ましいと考えられる。
(第3の実施形態)
図7は本発明の第3の実施形態に係る繊維構造物の断面構成を示す模式図である。この繊維構造物Ts3は、片面にクレー層Cを有する平面状の繊維構造基材Tと、クレー層Cとは反対側の繊維構造基材Tの片面(ノーコート面)に塗工により形成されたポリエステル系樹脂層R1とを備えている。但し、これに限らず、前述同様に図8に示すように、繊維構造基材T上に部分的に糊層Adhを形成してもよい。
ここで、繊維構造基材Tとしては、厚紙(カップ)、厚紙(アイボリー)、厚紙(カード、コートボール)の3通りの紙を個別に用いた。なお、各厚紙は、コッブ吸水度が紙の秤量以下のものを用いており、具体的には、コッブ吸水度が100[g/m・2分]以下のもの(撥水性の高いもの)を用いた。
次に、以上のように構成された繊維構造物の作用について述べる。
繊維構造物Ts3は、クレー層Cを有する繊維構造基材Tに対し、前述したポリエステル系樹脂からなる塗料が繊維構造基材Tのノーコート面に塗工され乾燥されて、図6に示すように、ポリエステル系樹脂層R1が形成される。これにより、繊維構造物Ts3の製造が完了する。
このように得られた繊維構造物Ts3は、次のような特性を有していた。
繊維構造物Ts3は、ポリエステル系樹脂層R1を塗布量4g/mで形成した場合と6g/mで形成した場合とでは、両者共に平面部の耐油性が良好なものの、罫線部の耐油性が若干低かった。また、平面部及び罫線部の撥水性はR10と高かった。また、リサイクルの容易性は前述同様に得ることができた。
上述したように本実施形態によれば、クレー層Cを片面に有する繊維構造基材Tにポリエステル系樹脂層R1を形成した構成としても、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
(第4の実施形態)
図9は本発明の第4の実施形態に係る繊維構造物の断面構成を示す模式図である。この繊維構造物Ts4は、両面にクレー層Cを有する平面状の繊維構造基材Tと、この繊維構造基材Tの片面(片方のクレー層C表面)に塗工により形成されたポリエステル系樹脂層R1とを備えている。但し、これに限らず、前述同様に図10に示すように、繊維構造基材Tの片面のクレー層C上に部分的に糊層Adhを形成してもよい。
ここで、繊維構造基材Tとしては、厚紙(カップ)、厚紙(アイボリー)、厚紙(カード、コートボール)の3通りの紙を個別に用いた。なお、各厚紙は、コッブ吸水度が70[g/m・2分]以下のもの(撥水性の高いもの)を用いた。また、各厚紙は、ベック平滑度が200秒以下のもの(平滑性の高いもの)を用いた。
次に、以上のように構成された繊維構造物の作用について述べる。
繊維構造物Ts4は、クレー層Cを両面に有する繊維構造基材Tに対し、前述したポリエステル系樹脂からなる塗料が繊維構造基材Tの一方のクレー面に塗工され乾燥されて、図9に示すように、ポリエステル系樹脂層R1が形成される。これにより、繊維構造物Ts4の製造が完了する。
このように得られた繊維構造物Ts4は、次のような特性を有していた。
繊維構造物Ts4は、ポリエステル系樹脂層R1を塗布量4g/mで形成した場合と6g/mで形成した場合とでは、両者共に平面部の耐油性が優れていたものの、罫線部の耐油性が若干低かった。また、平面部及び罫線部の撥水性はR10と高かった。また、リサイクルの容易性は前述同様に得ることができた。
上述したように本実施形態によれば、クレー層Cを両面に有する繊維構造基材Tにポリエステル系樹脂層R1を形成した構成としても、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
また、本実施形態は、クレー層Cを両面に有する構成のため、第3の実施形態に比べ、平面部の耐油性を向上させることができる。
(第5の実施形態)
図11は本発明の第5の実施形態に係る繊維構造物の断面構成を示す模式図である。この繊維構造物Ts5は、平面状の繊維構造基材Tと、この繊維構造基材Tの片面に印刷されたインキ層Ikと、このインキ層Ik上に塗工により形成されたポリエステル系樹脂層R1とを備えている。
以上のような構成としても、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができ、さらに、インキ層1kにより美観を向上させることができる。
(第6の実施形態)
図12は本発明の第6の実施形態に係る繊維構造物の断面構成を示す模式図である。この繊維構造物Ts6は、クレー層Cを片面に有する平面状の繊維構造基材Tと、この繊維構造基材Tのノーコート面に印刷されたインキ層Ikと、このインキ層Ik上に塗工により形成されたポリエステル系樹脂層R1とを備えている。但し、これに限らず、前述同様に図13に示すように、繊維構造基材Tのノーコート面上に部分的に糊層Adhを形成してもよい。
ここで、繊維構造基材Tとしては、厚紙(カップ)、厚紙(アイボリー)、厚紙(カード、コートボール)の3通りの紙を個別に用いた。なお、各厚紙は、コッブ吸水度が20[g/m・2分]以下のもの(撥水性の高いもの)を用いた。
次に、以上のように構成された繊維構造物の作用について述べる。
繊維構造物Ts6は、クレー層Cを片面に有する繊維構造基材Tに対し、繊維構造基材Tのノーコート面にインキ層Ikが印刷された後、前述したポリエステル系樹脂からなる塗料がインキ層Ik上に塗工され乾燥されて、図12に示すように、ポリエステル系樹脂層R1が形成される。これにより、繊維構造物Ts6の製造が完了する。
このように得られた繊維構造物Ts6は、次のような特性を有していた。
繊維構造物Ts6は、ポリエステル系樹脂層R1を塗布量4g/mで形成した場合と6g/mで形成した場合とでは、両者共に平面部の耐油性が優れていたものの、罫線部の耐油性が若干低かった。また、平面部及び罫線部の撥水性はR10と高かった。また、リサイクルの容易性は前述同様に得ることができた。
上述したように本実施形態によれば、クレー層Cを片面に有する繊維構造基材Tにインキ層Ikを介してポリエステル系樹脂層R1を形成した構成としても、第1及び第3の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
(第7の実施形態)
図14は本発明の第7の実施形態に係る繊維構造物の断面構成を示す模式図である。この繊維構造物Ts7は、両面にクレー層Cを有する平面状の繊維構造基材Tと、この繊維構造基材Tの片方のクレー面上にインキ層Ikが印刷形成され、このインキ層Ik上に塗工により形成されたポリエステル系樹脂層R1とを備えている。但し、これに限らず、前述同様に図15に示すように、繊維構造基材Tの片方のクレー層C上に部分的に糊層Adhを形成してもよい。
ここで、繊維構造基材Tとしては、第6の実施形態と同一仕様の3通りの厚紙を用いた。すなわち、各厚紙のコッブ吸水度などの特性は第6の実施形態と同じである。
次に、以上のように構成された繊維構造物の作用について述べる。
繊維構造物Ts7は、クレー層Cを両面に有する繊維構造基材Tに対し、インキ層Ikが印刷により形成され、このインキ層Ik上に前述したポリエステル系樹脂からなる塗料が塗工され乾燥され、図14に示すように、ポリエステル系樹脂層R1が形成される。これにより、繊維構造物Ts7の製造が完了する。
このように得られた繊維構造物Ts7は、第6の実施形態と同様の耐油性(平面部、罫線部)、撥水性、及びリサイクルの容易性を有していた。
上述したように本実施形態によれば、クレー層Cを両面に有する繊維構造基材Tの片面上にインキ層Ikを介してポリエステル系樹脂層R1を形成した構成としても、第1及び第6の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
(第8の実施形態)
次に、本発明の第8の実施形態に係る繊維構造物について説明する。本実施形態は、第1〜第7の実施形態の変形例であり、ポリエステル系樹脂層R1の耐水性の向上を図るものである。
具体的には、ポリエステル系樹脂層R1は、鎖式炭化水素の疎水基により修飾されて構成されている。詳しくは、ポリエステル系樹脂層R1は、疎水基(親油基)を有することにより耐水性が向上される。また、塗料の際には水を溶媒にして分散されるために親水基が樹脂を修飾し、溶液(水分散)の時には安定した分散体となっている。
また、疎水基としての鎖式炭化水素の構造が油の炭化水素基と形態が似ておりこの構造から水と油の関係で互いに濡れないことから耐水性を付与できる。また炭素、水素からなる構造であるので、高い安全性を有している。
上述したように本実施形態によれば、第1〜第7の各実施形態の作用効果に加え、ポリエステル系樹脂層R1が疎水基(親油基)をもつので耐水性を向上させることができる。
(第9の実施形態)
次に、本発明の第9の実施形態に係る繊維構造物について説明する。本実施形態は、第8の実施形態の変形例であり、疎水基の炭素数が8〜24の範囲内にある構成である。
これにより、水をはじかせ、油を紙に浸透させないために、図16に示す如き、炭化水素基を疎水基にもつポリエステル系樹脂層R1で繊維構造基材Tを被膜化する構成により、電気化学的及び構造的に耐水性と耐油性を発現させている。
図示するように、疎水基は、繊維表面に規則正しく縦に配列させた方が、疎水性を向上させることができる。
また、配列した疎水基は、油などの粘性の高い油が繊維表面に侵入しにくくする観点から、炭化水素の炭素数を8〜24の範囲内とし、より望ましくは炭素数を12〜18の範囲内とした構成が好ましい。
但し、樹脂製造の際に、疎水基の炭素数を揃えることは製造収率の観点から限界がある。炭化水素は飽和、不飽和共に構わないが飽和である方が安定である。
上述したように本実施形態によれば、第8の実施形態の作用効果に加え、疎水基の炭素数を規定したことにより、粘性の高い油などの侵入を抑制することができる。
(第10の実施形態)
図17は本発明の第10の実施形態に係る繊維構造物の断面構成を示す模式図である。本実施形態は、第1の実施形態の変形例であり、図1に示したポリエステル系樹脂層R1に代えて、図17に示すように、ガラス転移点(Tg)が25℃〜15℃の範囲内にあるポリエステル系樹脂と、ガラス転移点(Tg)が10℃〜−40℃の範囲内にあるラテックス系樹脂とがグラフト又は混合されてなる混合樹脂層R1xを備えている。但し、これに限らず、前述同様に図18に示すように、繊維構造基材Tの片面上に部分的に糊層Adhを形成してもよい。
ここで、2つのガラス転移点(Tg)は、各々次の特性を混合樹脂層R1に付与している。第1のガラス転移点(Tg;25℃〜15℃)は、ポリエステル系樹脂に耐油性・耐水性を向上させている。
第2のガラス転移点(Tg;10〜−40℃)は、ラテックス系樹脂に柔軟性を付与し、ひいては混合樹脂層R1xに柔軟性を付与して、繊維の変形に対応可能としている。なお、ガラス転移点は、JIS K7121におけるDSC(示差走査熱分析)法により測定されている。
ここで、ラテックス系樹脂が10℃以下のガラス転移点Tgを持つことで、耐油性・耐水性が悪くなる傾向にあるが、ポリエステル系樹脂とラテックス系樹脂との配合量により耐油性・耐水性を問題無いものにしている。なお、配合量は、ポリエステル系樹脂をラテックス系樹脂よりも多くすることが必要であり、ここでは、ポリエステル系樹脂を90固形重量部とし、ラテックス系樹脂を10固形重量部としている。
なお、柔軟性が不要な用途(折り曲げ部の無い用途、例、下敷き紙など)の場合、柔軟性を付与する必要がない。このため、ラテックス系樹脂は省略しても良い。また、必要な柔軟性にも幅がある。本実施形態では、箱などの包装体Pの折り曲げ部(罫線部)への柔軟性付与(膜の欠損をおこさない)を想定するが、包装体Pの箱によっても必要な柔軟性に幅がある。
例えば、段ボールライナ等の使用されたピザ配送箱が包装体Pの場合、罫線の幅が広く、罫線の高さも紙の厚みに対して高くないので、柔軟性が低くてもよい。
一方、例えば、一般的なチョコ菓子に使用されるカートンが包装体Pの場合、罫線の幅が0.7mm〜1.0mmと狭く、罫線の高さ(100〜200μm)も紙の厚み(330μm)に対して高いので、高い柔軟性が要求される。この場合には、要求される柔軟性に比例してラテックス系樹脂の配合量を増加させればよい。
上述したように本実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加え、ポリエステル系樹脂のガラス転移点を25℃〜15℃の範囲内にしたので、耐油性・耐水性をより向上させることができる。また、ガラス転移点が10℃〜−40℃の範囲内にあるラテックス系樹脂をグラフト又は混合したので、ラテックス系樹脂により柔軟性を付与することができる。
なお、本実施形態の混合樹脂層R1xは、第1の実施形態の変形例に限らず、図19〜図28に示すように、第2〜第7の各実施形態にも組合せることができ、組合せた実施形態と本実施形態との効果を得ることができる。また、本実施形態は、図示しないが、第8〜第9の実施形態にも組合せることができ、組合せた実施形態と本実施形態との効果を得ることができる。
(第11の実施形態)
次に、本発明の第11の実施形態に係る繊維構造物について説明する。
本実施形態は、第1〜第10の各実施形態の変形例であり、前述したポリエステル系樹脂層R1又は混合樹脂層R1xとしては、無機剤が混合されたものとなっている。
ここで、無機剤は、次の観点(i)〜(ii)から、例えばカオリン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、カオリン、又はタルク等が使用可能となっている。
(i) 樹脂層R1,R1xと、無機剤との乾燥時の収縮の差を利用し、樹脂層R1,R1xへの微細な空隙を形成する。
(ii) 無機剤により、油の吸着性を向上させる。
次に、以上のように構成された繊維構造物の作用を説明する。
第1の観点(i)により、繊維構造基材Tは、接着剤の接着性を向上でき、箱などの包装体Pに加工する際の糊を選定し易くすることができる。理由は、無機剤の混合により繊維に生じた空隙に接着剤が入り込むので、接着力を向上できるからである。
第2の観点(ii)により、無機剤のもつ多孔性により油を吸着して保持するので、微細なピンホールに油が進入した際にも多大な性能劣化を引き起こす心配を解消することができる。
上述したように本実施形態によれば、第1〜第10の各実施形態の効果に加え、無機剤の作用により、接着剤の接着性の向上及び油の吸着性の向上を図ることができる。
(第12の実施形態)
次に、本発明の第12の実施形態に係る繊維構造物について説明する。
本実施形態は、第11の実施形態の変形例であり、前述した無機剤としては、0.1重量%〜10重量%の範囲内で混合されている構成である。
ここで、無機剤の配合量を規定した趣旨は、無機剤にてピンホールを形成させる際に、無機剤の量が過剰な場合、樹脂層R1,R1xに多数のピンホールを生じさせ、耐油性・耐水性の劣化を引き起こしてしまうからである。
しかしながら、ここでは、無機剤の配合量を0.1重量%〜10重量%の範囲内に規定するので、無機剤により形成されるピンホールを問題の無い範囲に抑制することができる。
上述したように本実施形態によれば、無機剤により形成されるピンホールを問題の無い範囲に抑制し、耐油性・耐水性の劣化を阻止することができる。
(第13の実施形態)
次に、本発明の第13の実施形態に係る繊維構造物について説明する。
本実施形態は、第1〜第12の各実施形態の変形例であり、繊維構造基材Tのコッブ吸水度が当該繊維構造基材Tの秤量(g/m)未満の値であり、且つ樹脂層R1,R1xとなる塗料の塗布量が1g/m〜30g/mの範囲内にある構成となっている。
補足すると、樹脂層R1,R1xとなる塗料の塗布量と、樹脂層R1,R1xの厚さとは相関関係があり、また、樹脂層R1,R1xの厚さ、耐水性・耐油性を保証する安定性(膜の欠損箇所の多い、少ない)に関係してくる。
概して塗布量の多い方が安定性が高いが、薄紙(例、坪量20g/m〜200g/m※明確な規定は無い)は塗布量が多いと、湿潤強度がそれほど強くないため、加工の際に基材にかかる引っ張りテンションにより千切れ等を引き起こし易い。また、塗布量を増やすと、材料コストの増加と、乾燥性の低下に伴う生産スピードの低下による加工コストの増加とを招く。但し、パルプモールド体のように空隙の大きい繊維構造基材Tに樹脂層R1,R1xを形成する場合、スプレーコート等でかなりの量の塗料を載せなくてはピンホールフリーにならない場合もある。
このため、本実施形態は、コッブ吸水度と繊維構造基材Tとの関係から、樹脂層R1,R1xとなる塗料の塗布量を規定したことにより、耐油性・耐水性と加工コストとをバランス良く設計した繊維構造物Ts1〜Ts7,Ts1x〜Ts7xを実現している。
上述したように本実施形態によれば、第1〜第12の各実施形態の効果に加え、秤量未満のコッブ吸水度をもつ繊維構造基材Tに関し、塗布量の最適化を図ることができる。
(第14の実施形態)
次に、本発明の第14の実施形態に係る繊維構造物について説明する。
本実施形態は、第13の実施形態(又は第1〜第12の各実施形態)の変形例であり、繊維構造基材Tのコッブ吸水度が当該繊維構造基材Tの秤量(g/m)以上の値であり、且つ樹脂層R1,R1xとなる塗料の塗布量が3g/m〜30g/mの範囲内にある構成となっている。
以上のような構成によれば、第1〜第12の各実施形態の効果に加え、秤量以上のコッブ吸水度をもつ繊維構造基材Tに関し、塗布量の最適化を図ることができる。
(第15の実施形態)
次に、本発明の第15の実施形態に係る繊維構造物について説明する。
本実施形態は、第1〜第14の各実施形態の変形例であり、コッブ吸水度(JIS P8140)が10g/m以下である繊維構造物Ts1〜Ts7,Ts1x〜Ts7xである。
補足すると、コッブ法により、各実施形態の繊維構造物Ts1〜Ts7,Ts1x〜Ts7xを測定した所、10g/m以下の良好な耐水性を得ることができた。逆にいうと、コッブ吸水度が10g/m以下であると、優れた耐水性を保証できると考えられる。
なお、コッブ法を改案した形でも罫線部の破損を観察してみた。
12.5cm×12.5cmの繊維構造物Ts1〜Ts7,Ts1x〜Ts7xの評価サンプルに対し、それぞれ罫線巾0.7mm、罫線高さ200μmなる罫線を中央に1本入れた。
しかる後、コッブ法により吸水度試験を行った。仮に樹脂層R1,R1xが破壊されている場合には、破壊された箇所から水がしみこみ重量変化を起こすはずであり、その平米換算した値では百g/mオーダーでの増加が確認されるはずであり、またしみ込みが目視で黒点として確認されるはずである。
しかしながら、コッブ法による吸水度試験の結果、コッブ吸水度に変化(増加)が見受けられず、また目視での黒点も発生が皆無であった。
上述したように本実施形態によれば、第1〜第14の各実施形態の効果に加え、コッブ吸水度を規定したので、優れた耐水性を保証することができる。
(第16の実施形態)
次に、本発明の第16の実施形態に係る繊維構造物について説明する。
本実施形態は、第1〜第15の各実施形態の変形例であり、撥水度(JIS P8137)がR8以上である繊維構造物Ts1〜Ts7,Ts1x〜Ts7xである。
補足すると、JIS P8137の試験法により、各実施形態の繊維構造物Ts1〜Ts7,Ts1x〜Ts7xを測定した所、R8以上の良好な撥水度を得ることができた。逆にいうと、撥水度がR8以上であると、優れた撥水性を保証できると考えられる。
なお、繊維構造基材Tは、炭化水素基を疎水基にもつ場合、フッ素系、シリコン系のものと水に対する性質が似通っている。なお、この性質は、ポリエステル系樹脂、ラテックス系樹脂、無機剤の割合によって変化するが、撥水度がR8以上であれば問題ないと考えられる。
上述したように本実施形態によれば、第1〜第15の各実施形態の効果に加え、撥水度を規定したので、優れた撥水性を保証することができる。
(第17の実施形態)
図29は本発明の第17の実施形態に係る繊維構造物の断面構成を示す模式図である。この繊維構造物Ts11は、平面状の繊維構造基材Tと、この繊維構造基材T上に形成されたSBRラテックス樹脂層R0と、このSBRラテックス樹脂層R0上に形成されたポリエステル系樹脂層R1とを備えている。
ここで、繊維構造基材Tは、紙又はセルロース構造物であり、例えば、第1の実施形態で述べた原紙が使用可能となっている。
SBR系ラテックス系樹脂R0は、優れた耐油性と柔軟性とを有しており、繊維構造物Ts11を折り曲げた際にも、折り曲げ部の耐油性を維持させるためのものである。
ポリエステル系樹脂層R1は、繊維構造基材Tに耐水性及び耐油性を付与するための樹脂層であり、例えば第1の実施形態と同様の塗料を用いて同様に形成されている。但し、図29中のポリエステル系樹脂層R1は、前述したポリエステル系樹脂とラテックス系樹脂との混合樹脂層Rx1に置換可能である。ポリエステル系樹脂層R1が混合樹脂層Rx1に置換可能な旨は、後述する図30〜図35でも同様である。
また、耐油性の意味は前述した通りである。耐水性は、水を吸水しない旨を意味している。また、塗工方法は、第1の実施形態と同様の方法が使用可能となっている。
以上のような繊維構造物Ts11は、第1の実施形態と同様の用途に使用可能となっており、例えば図2〜図4に示した包装体Pとしてもよい。
なお、繊維構造物Ts11は、包装体Pに用いられる場合、図30に示すように、各樹脂層R0,R1を繊維構造基材Tに選択的に塗工し、露出させた繊維構造基材Tに糊層(接着剤層)Adhを形成してもよい。
また、いずれにしても、以上のような包装体Pは、後述する繊維構造物Ts12〜Ts13でも同様に適用可能となっている。さらに、包装体Pは、図4に示す構成に限らず、任意の構成が適用可能であることは言うまでもない。
次に、以上のように構成された繊維構造物及び包装体の作用について説明する。
(製造時)
始めに、SBRラテックス樹脂を主剤とする材料を例えば固形分50%で水分散させた第1塗料を準備する。同様に、ポリエステル系樹脂を主剤とする材料を例えば固形分10%〜60%の範囲内で分散させた第2塗料を準備する。また、これら塗料を塗工する繊維構造基材Tを準備する。
続いて、繊維構造基材Tの片面に第1塗料を塗工し、乾燥させることにより、SBRラテックス樹脂層R0を繊維構造基材Tの表層に形成する。続いて、このSBRラテックス樹脂層R0上に第2塗料を塗工し、乾燥させることにより、ポリエステル系樹脂層R1をSBRラテックス樹脂層R0の表面に形成する。
これにより、図29に示すように、繊維構造基材T上にSBRラテックス樹脂層R0及びポリエステル系樹脂層R1を順次積層させた繊維構造物Ts11の製造が完了する。
次に、この繊維構造物Ts11は、第1の実施形態と同様に、図3に示す如き、折り畳み状態の包装体Pに加工される。
(使用時)
包装体Pは、第1の実施形態と同様に、例えば油物の食品を収容した状態で利用者に渡される。
このとき、包装体Pの内側では、例えば繊維構造物Ts11のポリエステル系樹脂層R1の表層に接触した水もしくは油が浸透し難いため、表層に塗れ広がる。但し、利用者は、第1の実施形態と同様に、手を汚すことが無い。
(リサイクル時)
使用後の包装体Pは、第1の実施形態と同様に、リサイクル時に、各樹脂層R0〜R1と、繊維構造基材Tの素材とが容易に分離される。得られた繊維構造基材Tの素材は、例えば紙としてリサイクルされる。
上述したように本実施形態によれば、従来とは異なり、リサイクル時に繊維構造基材Tから容易に分離可能なSBRラテックス樹脂層R0及びポリエステル系樹脂層R1を繊維構造基材T上に形成した構成により、フッ素系耐油剤を用いずに、耐油性・耐水性を有し、繊維構造基材を容易にリサイクルできる繊維構造物を提供することができる。
また、SBRラテックス樹脂層R0を備えた構成により、柔軟性を向上させることができる。すなわち、優れた耐油性を平面部、罫線部(折り曲げ部)にも付与した紙又はセルロース構造物を提供することができる。
次に、以上のような第17の実施形態の変形例として第18〜第19の実施形態を説明する。第18〜第19の実施形態は、各樹脂層R0,R1を備えた構成をもつ点で共通し、平滑性を向上させるクレー層の備え方(片面・両面・全域)といった付加的な構成が異なる点が相違している。以下、順に説明する。
(第18の実施形態)
図31は本発明の第18の実施形態に係る繊維構造物の断面構成を示す模式図である。この繊維構造物Ts12は、片面にクレー層Cを有する平面状の繊維構造基材Tと、クレー層Cとは反対側の繊維構造基材Tの片面(ノーコート面)に塗工により形成されたSBRラテックス樹脂層R0及びポリエステル系樹脂層R1の積層構造とを備えている。但し、これに限らず、前述同様に図32に示すように、繊維構造基材T上に部分的に糊層Adhを形成してもよい。
ここで、繊維構造基材Tとしては、厚紙(カップ)、厚紙(アイボリー)、厚紙(カード、コートボール)の3通りの紙を個別に用いた。なお、各厚紙は、コッブ吸水度が紙の秤量以下のものを用いており、具体的には、コッブ吸水度が50[g/m・2分]以下のもの(撥水性の高いもの)を用いた。
次に、以上のように構成された繊維構造物の作用について述べる。
繊維構造物Ts12は、クレー層Cを有する繊維構造基材Tのノーコート面に、前述したSBRラテックス樹脂からなる第1塗料が塗工され乾燥されて、SBRラテックス樹脂層R0が形成される。続いて、SBRラテックス樹脂層R0上に、ポリエステル系樹脂からなる第2塗料が塗工され乾燥されて、ポリエステル系樹脂層R1が形成される。
これにより、図31に示すように、繊維構造物Ts12の製造が完了する。
このように得られた繊維構造物Ts12は、次のような特性を有していた。
繊維構造物Ts12は、ポリエステル系樹脂層R1を塗布量4g/mで形成した場合と6g/mで形成した場合とでは、両者共に平面部の耐油性が優れており、罫線部の耐油性が良好であった。また、平面部及び罫線部の撥水性はR10と高かった。また、リサイクルの容易性は前述同様に得ることができた。
上述したように本実施形態によれば、クレー層Cを片面に有する繊維構造基材TにSBRラテックス樹脂層R0及びポリエステル系樹脂層R1を形成した構成としても、第17の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
(第19の実施形態)
図33は本発明の第19の実施形態に係る繊維構造物の断面構成を示す模式図である。この繊維構造物Ts13は、両面にクレー層Cを有する平面状の繊維構造基材Tと、この繊維構造基材Tの片面(片方のクレー層C表面)に塗工により形成されたSBRラテックス樹脂層R0及びポリエステル系樹脂層R1の積層構造とを備えている。但し、これに限らず、前述同様に図34に示すように、繊維構造基材Tの片面のクレー層C上に部分的に糊層Adhを形成してもよい。
ここで、繊維構造基材Tとしては、厚紙(カップ)、厚紙(アイボリー)、厚紙(カード、コートボール)の3通りの紙を個別に用いた。なお、各厚紙は、コッブ吸水度が20[g/m・2分]以下のもの(撥水性の高いもの)を用いた。
次に、以上のように構成された繊維構造物の作用について述べる。
繊維構造物Ts13は、クレー層Cを両面に有する繊維構造基材Tの片面上に、前述したSBRラテックス樹脂からなる第1塗料が塗工され乾燥されて、SBRラテックス樹脂層R0が形成される。続いて、SBRラテックス樹脂層R0上に、ポリエステル系樹脂からなる第2塗料が塗工され乾燥されて、ポリエステル系樹脂層R1が形成される。
これにより、図33に示すように、繊維構造物Ts13の製造が完了する。
このように得られた繊維構造物Ts13は、次のような特性を有していた。
繊維構造物Ts13は、ポリエステル系樹脂層R1を塗布量4g/mで形成した場合と6g/mで形成した場合とでは、両者共に平面部の耐油性と罫線部の耐油性とが優れていた。また、平面部及び罫線部の撥水性はR10と高かった。また、リサイクルの容易性は前述同様に得ることができた。
上述したように本実施形態によれば、クレー層Cを両面に有する繊維構造基材TにSBRラテックス樹脂層R0及びポリエステル系樹脂層R1を形成した構成としても、第17の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
また、本実施形態は、クレー層Cを両面に有する構成のため、第18の実施形態に比べ、罫線部の耐油性を向上させることができる。
(第20の実施形態)
次に、本発明の第20の実施形態に係る繊維構造物について説明する。本実施形態は、第17〜第19の実施形態の変形例であり、ポリエステル系樹脂層R1の耐水性の向上を図るものである。
具体的には、ポリエステル系樹脂層R1は、鎖式炭化水素の疎水基により修飾されて構成されている。詳しくは、ポリエステル系樹脂層R1は、疎水基(親油基)を有することにより耐水性が向上される。また、塗料の際には水を溶媒にして分散されるために親水基が樹脂を修飾し、溶液(水分散)の時には安定した分散体となっている。
また、疎水基としての鎖式炭化水素の構造が油の炭化水素基と形態が似ておりこの構造から水と油の関係で互いに濡れないことから耐水性を付与できる。また炭素、水素からなる構造であるので、高い安全性を有している。
上述したように本実施形態によれば、第17〜第19の各実施形態の作用効果に加え、ポリエステル系樹脂層R1が疎水基(親油基)をもつので耐水性を向上させることができる。
(第21の実施形態)
次に、本発明の第21の実施形態に係る繊維構造物について説明する。本実施形態は、第20の実施形態の変形例であり、疎水基の炭素数が8〜24の範囲内にある構成である。
これにより、水をはじかせ、油を紙に浸透させないために、図35に示す如き、炭化水素基を疎水基にもつポリエステル系樹脂層R1で繊維構造基材Tを被膜化する構成により、電気化学的及び構造的に耐水性と耐油性を発現させている。
図示するように、疎水基は、繊維表面に規則正しく縦に配列させた方が、疎水性を向上させることができる。
また、配列した疎水基は、油などの粘性の高い油が繊維表面に侵入しにくくする観点から、炭化水素の炭素数を8〜24の範囲内とし、より望ましくは炭素数を12〜18の範囲内とした構成が好ましい。
但し、樹脂製造の際に、疎水基の炭素数を揃えることは製造収率の観点から限界がある。炭化水素は飽和、不飽和共に構わないが飽和である方が安定である。
上述したように本実施形態によれば、第20の実施形態の作用効果に加え、疎水基の炭素数を規定したことにより、粘性の高い油などの侵入を抑制することができる。
(第22の実施形態)
次に、本発明の第22の実施形態に係る繊維構造物について説明する。
本実施形態は、第17〜第21の各実施形態の変形例であり、SBRラテックス樹脂層R0及びポリエステル系樹脂層R1の各々のガラス転移点を規定した構成となっている。
ここで、SBRラテックス樹脂層R0は、柔軟性をより向上させる観点から、ガラス転移点(Tg)が10℃〜−40℃の範囲内にあるものを用いる。
ポリエステル系樹脂層R1は、耐油性・耐水性をより向上させる観点から、ガラス転移点(Tg)が25℃〜15℃の範囲内にあるものを用いる。
なお、柔軟性が不要な用途(折り曲げ部の無い用途、例、下敷き紙など)の場合、柔軟性を向上する必要がない。この場合、SBRラテックス樹脂層R0のガラス転移点を10℃〜−40℃の範囲内に調整しなくても良い。
上述したように本実施形態によれば、第17〜第21の各実施形態の効果に加え、SBRラテックス樹脂層R0のガラス転移点を10℃〜−40℃の範囲内にしたので、柔軟性をより向上させることができる。また、ポリエステル系樹脂層R1のガラス転移点を25℃〜15℃の範囲内にしたので、耐油性・耐水性をより向上させることができる。
(第23の実施形態)
次に、本発明の第22の実施形態に係る繊維構造物について図17〜図21のうち、図17を代表例に挙げて説明する。
本実施形態は、混合樹脂層となる塗工液を繊維構造基材Tに均一に塗布するため、繊維構造基材Tの塗工面の表面粗さ及びコッブ吸水度を規定した構成となっている。以下、具体的に述べる。
本実施形態に係る繊維構造物Ts1xは、平面状の繊維構造基材Tと、予めポリエステル系樹脂とラテックス系樹脂とを混合した塗工液を繊維構造基材Tの片面又は両面に塗工し乾燥させて形成した混合樹脂層R1xと、を備えている。
ここで、繊維構造基材Tは、塗工液が塗工される面が次の特性(c1)(c2)を有するように調整されている。
(c1)表面粗さ(JIS B01001)が最大高さ(Rmax)で30〜5μmの範囲内にある。
(c2)コッブ吸水度(JIS P8140(1976))の試験方法における蒸留水との接触時間を10秒間として試験した場合、得られる吸水度が100〜10[g/m・10秒]の範囲内にある。
このような繊維構造基材Tは、製紙用天然繊維を主体として周知の方法により作成可能となっている。例えば、繊維構造基材Tの表面粗さの調整には、原料叩解度(CSF)やウェットプレス圧の制御、ヤンキードライヤの使用、顔料のプレコート、カレンダー処理などが適用可能である。また、繊維構造基材Tのコッブ吸水度の調整には、酸性サイズ剤又は中性サイズ剤の内添、サイズプレスによる表面サイズコーティング等が適用可能となっている。
次に、表面粗さとコッブ吸水度の範囲について述べる。
繊維構造基材Tの表面粗さ(Rmax)が30μmを越えると、表面の凹凸の大きさが塗工膜の厚さより大きくなるため、凸部での塗工膜が極端に薄くなって機能低下が大きくなる。従って、繊維構造基材Tの表面粗さは、30[μm]以下が望ましい。
また、繊維構造基材Tの表面粗さ(Rmax)を5μm未満にするには、過度のプレス、カレンダー処理の強化などを必要とすることから、繊維構造基材Tが潰されて繊密になり、薄くなって剛度が低下しているので、トレーや容器に不適となる。従って、繊維構造基材Tの表面粗さは、5[μm]以上が望ましい。
一方、繊維構造基材Tの吸水度が100[g/m・10秒]より高い場合、塗工液が多量に浸透して表面の塗工膜が不均一となるため、ピンホールができ易く、不十分な品質となる。
これを補うには、過剰の塗布量を用いるか、又は乾燥炉までの到達時間を短縮する(生産速度を上げる)ことが必要となる。但し、乾燥炉が固定長であることから、生産速度を上げると、乾燥不足が生じて混合樹脂層R1xの品質を低下させる心配がある。従って、繊維構造基材Tの吸水度は、100[g/m・10秒]以下が望ましい。
また、繊維構造基材Tの吸水度が10[g/m・10秒]未満の場合、繊維構造基材Tへのエマルジョンの浸透が少なく、混合樹脂層R1xと繊維構造基材Tとの結合、いわゆるアンカー効果が弱くなり、折り曲げ加工時に混合樹脂層R1xが繊維構造基材Tから剥離し易くなる。従って、繊維構造基材Tの吸水度は、10[g/m・10秒]以上が望ましい。
以上のような構成によれば、ポリエステル系樹脂とラテックス系樹脂との混合樹脂層R1xを繊維構造基材T上に形成した構成により、前述した第10の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
また、本実施形態によれば、繊維構造基材Tの塗工面の表面粗さRmaxとコッブ吸水度とを規定した構成により、塗工液を極端に薄くせずに略均一に塗布しつつ、アンカー効果を発現できる。このため、塗工液が必要最小限の塗工量で済むので、プラスチックの使用量の低減を図ることができる。
なお、本願発明は、上記各実施形態に限定されるものでなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合、組み合わされた効果が得られる。さらに、上記各実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が省略されることで発明が抽出された場合には、その抽出された発明を実施する場合には省略部分が周知慣用技術で適宜補われるものである。
その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【実施例】
以下、各実施例により説明する。なお、以下の各実施例に記載のガラス転移点Tg[℃]は、JIS K7121におけるDSC(differential scanning calorimetry:示差走査熱分析)法により測定された値である。また、各実施例でいうTgは、Tgmを意味している。
【実施例1】
実施例1は、第1の実施形態に対応している。実施例1は、以下の条件により、塗料の塗布量と固形分、耐油耐水性の結果を調べた。その結果を表1に示す。
(実施例1の条件)
樹脂;ポリエステル系樹脂
Tg;20℃
固形分;表1の通り
分散溶媒;水
疎水基;炭化水素の炭素数10以上
繊維構造基材T;260g/mコートカード紙
ポリエステル系樹脂を含む塗料はノーコート面に塗布し、オーブンにて100℃1分の乾燥条件で乾燥させた。

実施例1によれば、固形分10%以上の塗料から一般的な塗工加工を行え、且つ十分な耐油性・耐水性を得ることができた。
【実施例2】
実施例2は、第9の実施形態に対応している。実施例2は、以下の条件により、疎水基の性能を調べた。その結果を表2に示す。
(実施例2の条件)
樹脂;ポリエステル系樹脂
Tg;20℃
疎水基;炭化水素の炭素数nは表2の通り
固形分;50%
分散溶媒;水
繊維構造基材T;260g/mコートカード紙
塗布量;4g/m・dry

実施例2によれば、ポリエステル系樹脂に修飾した疎水基は炭素数が8以上であれば、良好な撥水性を発現させることができた。
【実施例3】
実施例3は、第10の実施形態に対応している。実施例3は、以下の条件により、混合樹脂層R1xの柔軟性とタックの有無を調べた。その結果を表3に示す。
(実施例3の条件)
第1樹脂;ポリエステル系樹脂
Tg;20℃
分散溶媒;水
疎水基;炭化水素の炭素数10以上
第2樹脂;SBRラテックス
Tg;−30℃
分散溶媒;水
第1樹脂及び第2樹脂を固形分50%/水になるよう分散。
割合は第1樹脂/第2樹脂=90固形重量部/10固形重量部
繊維構造基材T;260g/mコートカード紙
塗布量;10g/m・dry
評価法…混合樹脂層R1xの塗工面を内側に折り曲げた後、ひまし油を滴下して目視で黒点の有無を見ることにより、ピンホールの有無を見る。なお、折り曲げ線上に沿って全て黒点になった場合を×とし、数点の黒点が見られた場合を△とし、全く黒点が見られなかった場合を○とする。なお、試験長さは20cmである。
タック…指の表面を塗工面に付け、張りついた場合を×とし、抵抗を感じた場合を△とし、抵抗を感じない場合を○とする。

評価結果は、柔軟性/タック=○/○で表した。
なお、罫線などを入れない用途、又は部分的に耐油性が必要な場合は、柔軟性は不要である。
実施例3によれば、折り曲げ用途の場合、ポリエステル系樹脂のガラス転移点が25℃〜15℃の範囲内で、且つ、ラテックス系樹脂のガラス転移点が10℃〜−40℃の範囲内であれば良いことが分かる。
なお、非折り曲げ用途の場合、ポリエステル系樹脂のガラス転移点が40℃〜15℃の範囲内であれば良いことが分かるが、折り曲げ用途で良好だった範囲のガラス転移点25℃〜15℃を用いてもよい。
【実施例4】
実施例4は、第12の実施形態に対応している。実施例4は、以下の条件により、無機剤を添加した場合のタック性の改善を調べた。その結果を表4に示す。
(実施例4の条件)
第1樹脂;ポリエステル系樹脂
Tg;20℃,15℃
分散溶媒;水
疎水基;炭化水素C数10以上
第2樹脂;SBRラテックス
Tg;−30℃
分散溶媒;水
無機材;粒径10μmの炭酸カルシウム
第1樹脂、第2樹脂及び無機剤を固形分50%/水になるよう分散
割合は、第1樹脂/第2樹脂(10)/無機剤(X)=(90−X)固形重量部/10固形重量部/X固形重量部
無機剤の量;表4の通り
繊維構造基材T;260g/mコートカード紙
塗布量;10g/m・dry

実施例4によれば、無機剤を0.1重量%〜10重量%の範囲内とするとピンホールを発生させずに、タックを防止できることを確認できた。
【実施例5】
実施例5は、第13及び第14の実施形態に対応している。実施例5は、以下の条件により、塗布量を変えた場合の耐油性を調べた。その結果を表5に示す。
(実施例5の条件)
第1樹脂;ポリエステル系樹脂
Tg;20℃
分散溶媒;水
疎水基;炭化水素の炭素数10以上
第2樹脂;SBRラテックス
Tg;−30℃
分散溶媒;水
第1樹脂、第2樹脂、無機剤を固形分50%/水になるよう分散。
無機材;粒径10μmの炭酸カルシウム
第1樹脂/第2樹脂/無機剤=90/9.5/0.5
塗布量;表5の通り
基材;表5の原紙2種類
樹脂塗工面;ノーコート面

評価結果は、平面部耐油性/折曲部耐油性=○/△などで記述した。
○…塗工面にひまし油滴下で60℃×3ヶ月で浸透の有無を確認し変化(しみ込みによる黒点)がない場合。
△…ピンホール程度の欠損(黒点)がある場合。
×…大きな欠損(黒点)がある場合。
実施例5によれば、コッブ吸水度が紙の秤量以上の場合には塗布量が3〜30g/mの範囲内にあればよく、コッブ吸水度が紙の秤量未満の場合には塗布量が1〜30g/mの範囲内にあればよいことが分かった。
【実施例6】
実施例6は、実施例5にて、コッブ吸水℃と撥水度を調べたものである。その結果を表6に示す。

実施例6によれば、コッブ吸水度が10g/m以下の場合に耐水性が保証され、撥水度がR8以上の場合に撥水度が保証されるように、混合樹脂層R1xが形成されていることが分かる。
【実施例7】
実施例7は、次の条件により、実施例6の混合樹脂層R1xの耐油性を確認した。その結果を表7に示す。
(実施例7の条件)
実施例6のコッブ吸水試験ジグを用い、水の代わりにひまし油を使用して、60℃×3ヶ月放置して表面の状態を観察した。
試験サンプルには、実施例6のコッブ吸水度10g/mなるサンプルを使用した。

実施例7によれば、実施例6で耐水性及び撥水性が良好なものが耐油性も良好なことを確認できた。
【実施例8】
実施例8は、第13の実施形態に対応している。実施例8は、以下の条件により、パルプモールド体のように空隙の大きい繊維構造基材Tに樹脂層R1を形成できることを確認するものである。
(実施例8の条件)
樹脂;ポリエステル系樹脂
Tg;20℃
分散溶媒;水
疎水基;炭化水素の炭素数10以上
ポリエステル系樹脂を容量200ccになるようなパルプモールドトレーにスプレーコートによりドライで30g/m塗布して100℃1分で乾燥した。
実施例8によれば、繊維構造基材Tの表面が十分埋められ、液体の浸透を完全にブロックしたピンホールフリーのバリア容器を形成することができた。
【実施例9】
実施例9は、第17の実施形態に対応している。実施例9は、以下の条件により、塗料の塗布量と固形分、耐油耐水性の結果を調べた。その結果を表8に示す。
(実施例9の条件)
第1塗料;SBRラテックス樹脂を主剤
Tg;−20℃
固形分;50%
分散溶媒;水
第2塗料;ポリエステル系樹脂を主剤
Tg;20℃
固形分;40%
分散溶媒;水
疎水基;炭化水素の炭素数10以上
繊維構造基材T;260g/mコートカード紙
第1塗料をノーコート面に塗布し、オーブンにて100℃1分の乾燥条件で乾燥させた。続いて同様に、第2塗料をSBRラテックス樹脂層R0上に塗布し、オーブンにて100℃1分の乾燥条件で乾燥させた。

実施例9によれば、塗布量2g以上のものから実用に耐えうる耐油性を示すものが得られた。また、実施例9によれば、ファーストフードのポテト用カートン等のように短時間の耐油性が必要なものから、バターやチョコ菓子用カートンなど長期の耐油性が必要なものまで、要求される耐油性に応じて塗布量を増やせれば良い旨が確認できた。
【実施例10】
実施例10は、第21の実施形態に対応している。実施例10は、以下の条件により、疎水基の性能を調べた。その結果を表9に示す。
(実施例10の条件)
第1塗料;SBRラテックス樹脂を主剤
Tg;−20℃
固形分;50%
分散溶媒;水
第2塗料;ポリエステル系樹脂を主剤
Tg;20℃
疎水基;炭化水素の炭素数nは表9の通り
固形分;50%
分散溶媒;水
繊維構造基材T;260g/mコートカード紙
塗布量;4g/m・dry

実施例10によれば、ポリエステル系樹脂に修飾した疎水基は炭素数が8以上であれば、良好な撥水性を発現させることができた。例えば、冷蔵庫にて保管されるバターカートンを室温の部屋に戻した際、結露水がカートン表面で玉になることで、軽く払うだけで水玉を表面から落とすことができる。また、結露水の影響でカートンを湿らせることがない。
【実施例11】
【実施例11】
実施例11は、第22の実施形態に対応している。実施例11は、以下の条件により、箱組みする際の折り曲げ部の柔軟性とタックの有無を調べた。その結果を表10に示す。
(実施例11の条件)
OC(over coating)樹脂;ポリエステル系樹脂
Tg;20℃
分散溶媒;水
疎水基;炭化水素の炭素数10以上
固形分40%
塗布量16g/m
AC(anchor coating)樹脂;SBRラテックス
Tg;−30℃
分散溶媒;水
固形分50%
塗布量4g/m
繊維構造基材T;260g/mコートカード紙
柔軟性…各樹脂層R0,R1の塗工面を内側に折り曲げた後、ひまし油を滴下して目視で黒点の有無を見ることにより、ピンホールの有無を見る。なお、折り曲げ線上に沿って全て黒点になった場合を×とし、数点の黒点が見られた場合を△とし、全く黒点が見られなかった場合を○とする。なお、試験長さは20cmである。
タック…指の表面を塗工面に付けて張りついた場合や抵抗を感じた場合には、柔軟性の評価結果(○,△又は×)の右側に“/タック”と併記する。

実施例11によれば、折り曲げ用途の場合、ポリエステル系樹脂のガラス転移点が25℃〜15℃の範囲内で、且つ、ラテックス系樹脂のガラス転移点が10℃〜−40℃の範囲内であれば良いことが分かる。
【実施例12】
実施例12は、第21及び第22の実施形態に対応している。実施例12は、以下の条件により、パルプモールド体のように空隙の大きい繊維構造基材Tに樹脂層R0,R1を形成できることを確認するものである。
(実施例12の条件)
OC樹脂;ポリエステル系樹脂
Tg;20℃
分散溶媒;水
疎水基;炭化水素の炭素数10以上
AC樹脂;SBRラテックス
Tg;−30℃
分散溶媒;水
固形分50%
SBRラテックス樹脂を容量200ccになるようなパルプモールドトレーにスプレーコートによりドライで30g/m塗布して100℃1分で乾燥した。その後、ポリエステル系樹脂をSBRラテックス樹脂層にスプレーコートによりドライで30g/m塗布して100℃1分で乾燥した。
実施例12によれば、繊維構造基材Tの表面が十分埋められ、液体の浸透を完全にブロックしたピンホールフリーのバリア容器を形成することができた。
【実施例13】
実施例13は、第23の実施形態に対応している。実施例13では、以下の条件下で、繊維構造基材Tの表面粗さ(JIS B01001)及びコッブ吸水度(JIS P8149(1976)、但し接触時間は10秒間)を変えた場合に耐油性の有無を調べた。結果を表11に示す。
(実施例13の条件)
第1樹脂;ポリエステル系樹脂
分散溶媒;水
第2樹脂;SBRラテックス
分散溶媒;水
第1樹脂及び第2樹脂を固形分40%/水になるよう分散して塗工液を作成。樹脂の割合は第1樹脂/第2樹脂=20固形重量部/20固形重量部
繊維構造基材T;260g/mのカード紙
塗工面の表面粗さRmax;5〜28μm
塗工面のコッブ吸水度;10〜100g/m・10秒
塗布方法;塗工液を繊維構造基材Tの塗工面に塗布し、熱風乾燥した。
塗布量の測定;塗工前の繊維構造基材Tと、塗工後の繊維構造物Ts1xとを120℃×6時間乾燥オーブンに入れ、乾燥状態にした。その後、デシケータの中で30分かけて温度を室温に戻し、両者の重量差を測定した。得られた重量差(g)から塗布量(g/m)を算出した。

耐油性;キット法、サラダ油、ひまし油の3通りの試験方法の油で評価した。
キット法;JAPAN TAPPI No.41(キット法)による。処理紙表面に各種キット番号の試験液を1滴落とし、15秒後、試験液をティッシュペーパーで拭き取り、しみ込みの有無を評価した。
サラダ油(高温);180℃に加熱したサラダ油(市販品)を20ccだけ試料に滴下し、24時間放置した後、裏面への突き抜けの有無を評価した。
ひまし油(低粘度、常温);常温のひまし油(関東化学製、鹿一級)を20ccだけ試料に滴下し、室温下で1ヶ月放置した後、裏面への突き抜けの有無を評価した。
評価結果は、表11に○、△、×で記述した。
スクラッチ耐性;樹脂層表面を爪で10回往復しながら引っ掻いた後、密着性(剥離の有無)を評価した。評価結果は、表11に○、△、×で記述した。
実施例13によれば、塗工前に、塗工面の表面粗さRmaxが5〜28[μm]の範囲内にあり、且つ塗工面のコッブ吸水度が10〜100[g/m・10秒]の範囲内にあれば、塗工後の耐油性に問題ないことが分かった。
【産業上の利用可能性】
本発明によれば、フッ素系耐油剤を用いずに、耐油性・耐水性を有し、繊維構造基材を容易にリサイクルし得る繊維構造物を提供できる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】

【図31】

【図32】

【図33】

【図34】

【図35】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状の繊維構造基材(T)を有する繊維構造物(Ts1)であって、
塗料固形分が10%〜60%の範囲内でポリエステル系樹脂を含んだ塗料が前記繊維構造基材の片面又は両面に塗工されて形成されたポリエステル系樹脂層(R1)を備えたことを特徴とする繊維構造物。
【請求項2】
請求項1に記載の繊維構造物において、
前記ポリエステル系樹脂層(R1)は、鎖式炭化水素の疎水基により修飾されていることを特徴とする繊維構造物。
【請求項3】
請求項2に記載の繊維構造物において、
前記疎水基の炭素数が8〜24の範囲内にあることを特徴とする繊維構造物。
【請求項4】
請求項1に記載の繊維構造物において、
前記ポリエステル系樹脂層(R1)は、ガラス転移点(JIS K7121;Tg)が25℃〜15℃の範囲内にあることを特徴とする繊維構造物。
【請求項5】
請求項1に記載の繊維構造物において、
前記ポリエステル系樹脂層(R1x)は、ガラス転移点(JIS K7121)が10℃〜−40℃の範囲内にあるラテックス系樹脂がグラフト又は混合されていることを特徴とする繊維構造物。
【請求項6】
請求項1に記載の繊維構造物において、
前記ポリエステル系樹脂層(R1)は、無機剤が混合されていることを特徴とする繊維構造物。
【請求項7】
請求項6に記載の繊維構造物において、
前記無機剤は、0.1重量%〜10重量%の範囲内で混合されていることを特徴とする繊維構造物。
【請求項8】
請求項1に記載の繊維構造物において、
前記繊維構造基材(T)のコッブ吸水度(JIS 8140)が当該繊維構造基材の秤量(g/m)未満の値であり、且つ前記ポリエステル系樹脂層(R1)の塗布量が1g/m〜30g/mの範囲内にあることを特徴とする繊維構造物。
【請求項9】
請求項1に記載の繊維構造物において、
前記繊維構造基材(T)のコッブ吸水度(JIS P8140)が当該繊維構造基材の秤量(g/m)以上の値であり、且つ前記ポリエステル系樹脂層(R1)の塗布量が3g/m〜30g/mの範囲内にあることを特徴とする繊維構造物。
【請求項10】
請求項1に記載の繊維構造物において、
コッブ吸水度(JIS P8140)が15g/m以下であることを特徴とする繊維構造物。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の繊維構造物において、
撥水度(JIS P8137)がR6以上であることを特徴とする繊維構造物。
【請求項12】
平面状の繊維構造基材(T)と、
前記繊維構造基材上に形成されたSBR系ラテックス系樹脂層(R0)と、
前記SBR系ラテックス系樹脂層上に形成されたポリエステル系樹脂層(R1)と、
を備えたことを特徴とする繊維構造物(Ts11)。
【請求項13】
請求項12に記載の繊維構造物において、
前記ポリエステル系樹脂層(R1)は、鎖式炭化水素の疎水基により修飾されていることを特徴とする繊維構造物。
【請求項14】
請求項13に記載の繊維構造物において、
前記疎水基の炭素数が8〜24の範囲内にあることを特徴とする繊維構造物。
【請求項15】
請求項12に記載の繊維構造物において、
前記ポリエステル系樹脂層(R1)は、ガラス転移点(JIS K7121)が25℃〜15℃の範囲内にあることを特徴とする繊維構造物。
【請求項16】
請求項12乃至請求項15のいずれか1項に記載の繊維構造物において、
前記SBR系ラテックス系樹脂層(R0)は、ガラス転移点(JIS K7121)が10℃〜−40℃の範囲内にあることを特徴とする繊維構造物。
【請求項17】
平面状の下記A繊維構造基材と、
予めポリエステル系樹脂とラテックス系樹脂とを混合した塗工液を前記A繊維構造基材の片面又は両面に塗工し乾燥させて形成した混合樹脂層と、
を備えたことを特徴とする繊維構造物。
A:前記塗工液が塗工される面の表面粗さ(JIS B01001)が最大高さ(Rmax)で30〜5μmの範囲内にあり、且つ前記塗工液が塗工される面をコッブ吸水度(JIS P8140(1976))の試験方法における蒸留水との接触時間を10秒間として試験した場合、得られる吸水度が100〜10[g/m・10秒]の範囲内にある繊維構造基材。

【国際公開番号】WO2004/083521
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【発行日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503753(P2005−503753)
【国際出願番号】PCT/JP2004/003732
【国際出願日】平成16年3月19日(2004.3.19)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】