説明

繊維機械のための加圧ローラ

加圧ローラは溝玉軸受(3)を有し、この溝玉軸受(3)はその回転軸線(R)に対して垂直な傾動軸線(K)を中心に旋回可能に支承されており、加圧ローラは支持ピン(2)を有し、この支持ピン(2)は傾動軸線(K)に対して直交して配置されており、溝玉軸受(3)は揺動スリーブ(9)を介して支持ピン(2)に連結されている。傾動軸線(K)は揺動スリーブ(9)の支持ピン(2)との直接的な協働により実現されており、揺動スリーブ(9)は2つのスリーブ半部(10,11)を有しており、スリーブ半部(10,11)は夫々、外被区分(12)とこの外被区分(12)に不動に結合されているピン(17)とを有しており、このピン(17)はスリーブ半部(10,11)に一体成形されており、支持ピン(2)における孔(18)内に係合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載した、特に繊維機械に適した加圧ローラに関する。
【0002】
発明の背景
上位概念部に記載の加圧ローラは、例えばドイツ連邦共和国特許第19781721号明細書において公知になっている。この加圧ローラは、特にテクスチャード加工機において使用するために設けられており、介在スリーブを介在させて支持スリーブに配置されているカバーを有している。この支持スリーブは溝玉軸受を介して、支持ピン(上記明細書においては支持軸と称呼)に対して回動可能に支承されている。溝玉軸受は、支持ピンの長手方向軸線に対して横方向に、揺動装置を介して支持ピンに対し傾動可能に支承されている。
【0003】
発明の目的
本発明の目的は、先行技術に対応する機能性を有しつつ、極めて簡単に構成されていてかつ効率よく組付け可能である、繊維機械に適した加圧ローラを提供することである。
【0004】
発明の要約
本発明によれば上記目的は、請求項1の特徴を備えた加圧ローラにより達成される。加圧ローラは溝玉軸受を有しており、この溝玉軸受は、その回転軸線に対して垂直な傾動軸線を中心に旋回可能に支承されている。同様に加圧ローラの一部分である支持ピンは、傾動軸線に対して直交して配置されている。溝玉軸受は揺動スリーブを介して支持ピンに旋回可能に連結されている。傾動軸線は、溝玉軸受の半径方向内側に配置されている揺動スリーブの、支持ピンとの直接的な協働により実現されている。したがって溝玉軸受全体が制限されて傾動可能に枢着されている支持ピンに対して、及び揺動スリーブ対して付加的に、傾動軸線を形成するための別個の部品は必要とならない。
【0005】
支持スリーブは、夫々外被区分、及びこの外被区分に不動に結合されている、支持ピンにおける孔内に係合するピンを有する2つのスリーブ半部を有している。支持スリーブを形成する2つのスリーブ半部は、必ずしも互いに結合されていない。むしろ特に簡単な構成においては、スリーブ半部の間に間隙が形成されていてよい。この間隙は、場合によっては傾動軸線に対する法平面(normale Ebene)に位置する。有利には2つのスリーブ半部は同一に成形されている。
【0006】
スリーブ半部は、プラスチック射出成形法において効率的に製造可能であり、ピンは各スリーブ半部に一体に成形されていて、有利には中空である。択一的にはスリーブ半部は、金属部材としても製造可能であるか、又は種々異なる材料を同時に使用して、特に二成分射出成形法において製造可能である。
【0007】
有利な構成により、各スリーブ半部はその内側において、傾動軸線及び支持ピンに対して垂直な軸線を中心に、支持スリーブが傾動しないようにするために、支持ピンと協働する案内面を有する。
【0008】
別の有利な構成によれば、各スリーブ半部は、支持スリーブ、ひいては溝玉軸受全体の、傾動軸線を中心とした傾動を制限するために、支持ピンと協働する2つの制限面を有している。
【0009】
さらに別の有利な構成において、支持スリーブはほぼカップ状に形成されている。各スリーブ半部は、外被区分に接続している底部区分を有している。この底部区分と外被区分との間に、有利にはスリーブ半部の外面において、溝玉軸受の内輪に対して支持スリーブを軸線方向に固定する止め輪の係合のための溝が形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】加圧ローラの第1の断面図である。
【図2】図1に示した加圧ローラの別の断面図である。
【図3】支持ピン、及びこの支持ピンと協働する加圧ローラの揺動スリーブを部分的に示す図である。
【図4】支持ピン、及びこの支持ピンと協働する加圧ローラの揺動スリーブを部分的に示す図である。
【図5】加圧ローラの揺動スリーブの断面図である。
【0011】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づき説明し、図面においては部分的に簡略化して示す。
【0012】
図面の詳細な説明
全体を通じて符号1で記した加圧ローラは支持ピン2を有している。加圧ローラ1の基本的な機能に関しては、冒頭で述べた先行技術において指摘した通りである。支持ピン2には転がり軸受、つまり溝玉軸受3が傾動可能に支承されている。この溝玉軸受3は、プラスチック又はゴムから成るカバー4によって取り囲まれている。このカバー4は繊維機械、特にテクスチャード加工機において、糸を送りドラム(図示せず)に押し付ける。
【0013】
カバー4は介在スリーブ5を取り囲み、この介在スリーブ5はまた、非切削加工により変形加工された金属薄板部分として形成されているスリーブ6を取り囲む。このスリーブ6内には溝玉軸受3の外輪7が保持されている。溝玉軸受3に設けられている内輪8は、揺動スリーブ9を収容する。この揺動スリーブ9は所望の角運動性を確保しつつ、支持ピン2に対して結合している構成部材である。傾動軸線は符号Kでもって示されており、この傾動軸線Kを中心として、溝玉軸受3が支持ピン2に対して相対的に傾動可能である。溝玉軸受3の回転軸線は符号Rでもって示されており、加圧ローラ1の各状態において傾動軸線Kに対して直角を成す。図1に示すように溝玉軸受3が傾動していない限りは、回転軸線Rは支持ピン2の長手方向軸線に一致する。
【0014】
揺動スリーブ9は2つの同一のスリーブ半部10,11により形成されている。これらのスリーブ半部10,11は夫々、内輪8の内壁部に当接している外被区分12と、ほぼ半円形状の底部区分13とを有している。底部区分13から外被区分12への移行部に、スリーブ半部10,11の外面に沿って、周方向に延在する溝14が形成されている。この溝14内に内輪8に当接する止め輪15が係合する。底部区分13とは反対のスリーブ半部10,11の側に、スリーブ半部10,11はフランジ区分16を有している。このフランジ区分16は同様に内輪8に当接していて、ひいては揺動スリーブ9と溝玉軸受3との、軸線方向における(回転軸線Rに対する)止め部である。
【0015】
外被区分12の内側において外被区分12から、図示の実施の形態において中実なピン17が突出している。このピン17は傾動軸線Kに対して同心的に配置されており、支持ピン2における孔18内に突入する。この実施の形態において孔18は貫通孔として形成されている。この貫通孔はスリーブ半部10,11の2つのピン17を収容する。この実施の形態とは異なり、支持ピン2に、袋孔として形成されている別の孔18が各ピン17のために設けられていてもよい。図2から分かるように、加圧ローラ1が完全に組み付けられた状態において、これらのピン17の間に、外被区分12と外被区分12との間の間隙よりも大きな間隙が形成されていると、製造及び組付け技術的に有利であることが分かった。2つのスリーブ半部10,11は、この2つの部分に一体成形されている結合手段により互いに連結されていない。
【0016】
支持ピン2と直接的に協働する揺動スリーブ9は、傾動軸線Kを中心とした制限された旋回運動を可能にするという役割だけを有しているのではなく、同時に溝玉軸受3の他の不都合な傾動運動を最小限に抑える。この目的のために、スリーブ半部10,11は、外被区分12の内面においてピン17に続き、支持ピン2の長手方向に沿って延在する案内面19を有している。傾動軸線Kを中心とした溝玉軸受3の旋回運動は、フランジ区分16の内面に形成されていて、支持ピン2に衝突することがある制限面20により制限される。付加的に又は択一的に、傾動軸線Kを中心とした溝玉軸受3の旋回運動は、支持ピン2に載着されているディスク21により制限されていてよい。このディスク21は同時に、支持ピン2がスリーブ6から突出している側において溝玉軸受3の覆いを成す。溝玉軸受3の反対側において溝玉軸受3は、スリーブ6と共に回転するディスク区分22により覆われている。
【符号の説明】
【0017】
1 加圧ローラ
2 支持ピン
3 溝玉軸受
4 カバー
5 介在スリーブ
6 スリーブ
7 外輪
8 内輪
9 揺動スリーブ
10 スリーブ半部
11 スリーブ半部
12 外被区分
13 底部区分
14 溝
15 止め輪
16 フランジ区分
17 ピン
18 孔
19 案内面
20 制限面
21 ディスク
22 ディスク区分
K 傾動軸線
R 回転軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧ローラであって、該加圧ローラは溝玉軸受(3)を有し、該溝玉軸受(3)の回転軸線(R)に対して垂直な傾動軸線(K)を中心に旋回可能に前記溝球軸受(3)は支承されており、前記加圧ローラは支持ピン(2)を有し、該支持ピン(2)は前記傾動軸線(K)に対して直交して配置されており、前記溝玉軸受(3)は揺動スリーブ(9)を介して前記支持ピン(2)に連結されている、加圧ローラにおいて、
前記傾動軸線(K)は、前記揺動スリーブ(9)と前記支持ピン(2)との直接的な協働により実現されており、前記揺動スリーブ(9)は2つのスリーブ半部(10,11)を有しており、該スリーブ半部(10,11)は夫々、外被区分(12)と該外被区分(12)に不動に結合されているピン(17)とを有しており、該ピン(17)は前記スリーブ半部(10,11)に一体成形されており、前記支持ピン(2)における孔(18)内に係合することを特徴とする、加圧ローラ。
【請求項2】
前記2つのスリーブ半部(10,11)は同一に成形されていることを特徴とする、請求項1記載の加圧ローラ。
【請求項3】
前記スリーブ半部(10,11)はプラスチック射出成形部材として形成されていることを特徴とする、請求項1記載の加圧ローラ。
【請求項4】
各スリーブ半部(10,11)は、前記傾動軸線(K)及び前記支持ピン(2)に対して垂直な軸線を中心とした前記支持スリーブ(9)の傾動を防止するために、前記支持ピン(2)と協働する案内面(19)を有していることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項記載の加圧ローラ。
【請求項5】
各スリーブ半部(10,11)は、前記傾動軸線(K)を中心とする前記支持スリーブ(9)の傾動を制限するために、前記支持ピン(2)と協働する2つの制限面(20)を有していることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項記載の加圧ローラ。
【請求項6】
前記スリーブ半部(10,11)は前記外被区分(12)に接続する底部区分(13)を有していることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項記載の加圧ローラ。
【請求項7】
前記スリーブ半部(10,11)の外面において、前記底部区分(13)と前記外被区分(12)との間に溝(14)が形成されていることを特徴とする、請求項6記載の加圧ローラ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2013−508634(P2013−508634A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534607(P2012−534607)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064256
【国際公開番号】WO2011/047934
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(512006239)シェフラー テクノロジーズ アクチエンゲゼルシャフト ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (59)
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1−3, D−91074 Herzogenaurach, Germany
【Fターム(参考)】