説明

繊維機械用のエンクロージャ

【課題】冷却のために必要となる供給空気が、フィルタの汚れによって減少しないようにする。
【解決手段】供給空気用の開口2と、排空気用の開口3と、供給空気用の開口2を通じてエンクロージャ1内に供給空気を強制圧送するための通風機4と、供給空気を清浄化するためのフィルタスクリーン5とを有し、フィルタスクリーン5は、1つの円筒状のアッセンブリ6の外周面として形成されており、供給空気用の開口2は、円筒状のアッセンブリ6の上面の範囲に配置されており、通風機4は、供給空気用の開口2の範囲に、通風機4がフィルタスクリーン5を通じてエンクロージャ1内へ空気を押し込むように配置されかつ構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的なコンポーネントを収容する繊維機械用のエンクロージャ(配電盤キャビネット)に関する。エンクロージャは、供給空気用の開口と、排空気用の開口と、前記供給空気用の開口を通じてエンクロージャ内に供給空気を強制圧送するための通風機と、供給空気を清浄化するためのフィルタスクリーン(篩)とを有する。
【背景技術】
【0002】
繊維機械の分野において、エンクロージャおよびエンクロージャ内に配置された作動手段、たとえば電子コンポーネントは、その他の使用に比べて特別な要求にさらされている。繊維機械室内の空気には、比較的多くのフライ(風綿)が混入されている。フライは、繊維機械において放出される繊維、繊維束、糸残分、ダストおよびその他の、長時間空気中を浮遊したままの繊維残分によって形成される。空気中に多量のフライを放出するような繊維機械は、たとえばカード、ドラフト、フライヤ、精紡機、コーミング機、織機、撚糸機または巻取り機である。
【0003】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第19915235号明細書には、このような形式のエンクロージャが開示されている。この公知のエンクロージャは、エンクロージャもしくはエンクロージャ内に配置された電気的なコンポーネントを冷却する通気装置を備えている。冷却は、電気的なコンポーネントの損失熱を排出するために必要となる。上で説明したように、繊維機械室内の空気はフライによって著しく汚染されているので、冷却のために必要となる、エンクロージャ内またはエンクロージャの少なくとも一部内に流入する供給空気は濾過される。こうして、たしかに、エンクロージャ内に配置された電気的なコンポーネントが汚染されること、または改善された排熱のために設けられた冷却体がフライによって目詰まりしてしまうことを阻止することができるが、しかしフィルタのスクリーン(篩)自体がフライによって目詰まりしてしまうことを回避することはできない。繊維とダストとから成る被膜により、供給空気流は妨げられ、低減された冷却を招いてしまう。すなわち、フィルタスクリーンの規則的なクリーニングが必要不可欠となる。
【0004】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第19915235号明細書には、フィルタの自動化されたクリーニングのための装置が開示されている。このためには、供給空気用の開口にノズルが設けられており、このノズルはこの開口の内側で供給空気の流れ方向とは反対の方向でフィルタに向けられている。この場合、空気はタイミング制御されて圧縮空気源からフィルタの内側に向かって導かれる。これにより、開口の外部に付着したフライクッションが除去される。自動化されたクリーニングにより、たしかにクリーニングインターバルを短縮させ、ひいては汚れを減少させることができるが、しかしクリーニングインターバルを任意に短縮させることはできない。なぜならば、このクリーニングノズルは供給空気流とは逆向きに作用して供給空気流を妨げるので、これによって供給空気をも同じく減少させてしまうからである。すなわち、この公知の解決手段を用いても、ある程度の汚れや、ひいては供給空気の減少を阻止することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第19915235号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、冷却のために必要となる供給空気が、フィルタの汚れによって減少しないような繊維機械用のエンクロージャを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために本発明のエンクロージャの構成では、前記フィルタスクリーンが、1つの円筒状のアッセンブリの外周面として形成されており、前記供給空気用の開口が、前記円筒状のアッセンブリの上面の範囲に配置されており、前記通風機は、前記供給空気用の開口の範囲に、前記通風機が前記フィルタスクリーンを通じてエンクロージャ内へ空気を押し込むように配置されかつ構成されているようにした。
【0008】
請求項2〜請求項8には、本発明によるエンクロージャの有利な改良形が記載されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるエンクロージャは、請求項9に記載の本発明による取付けエレメントと、公知のエンクロージャエレメントとを有することができる。この場合、取付けエレメントはエンクロージャに結合される。上記課題を解決するために、フィルタスクリーンは1つの円筒状のアッセンブリの外周面として形成されている。供給空気用の開口は、この円筒状のアッセンブリの上面の範囲に配置されており、通風機は供給空気用の開口の範囲に、前記通風機が前記フィルタスクリーンを通じてエンクロージャ内へ空気を押し込むように配置されかつ構成されている。供給空気はこの場合、円筒状のアッセンブリの内部からフィルタを通じて搬送される。
【0010】
本発明における配置により、空気が円筒状のアッセンブリ内部で回転することが達成される。これによって空気は円筒状のフィルタ面に直角に衝突するのではなく、接線方向で衝突する。それにもかかわらず、空気はスムーズにフィルタを通過することができる。フィルタは、空気中に存在しかつフィルタに衝突したフライがエンクロージャ内部に侵入することを阻止する。しかし、公知先行技術とは異なり、フィルタスクリーンに衝突したフライが、フィルタスクリーンに押し付けられたり、スクリーンに引っ掛かったままとなるのではなく、フライは回転する空気によって連行される。通風機のブロー空気によって、フライは円筒状のアッセンブリの、通風機とは反対の側に位置する端部にまで到達する。すなわち、フィルタスクリーンは回転する供給空気によって常時クリーニングされるわけである。フィルタの汚れは全く生じ得ない。これによって、汚れが原因で供給空気流が減少させられることも起こらない。前記の自己クリーニング効果に基づき、フィルタをクリーニングするための付加的な装置も必要とならない。
【0011】
慣用のフィルタアッセンブリの場合、フィルタが汚染されると、通風機の出力消費が増大し、これにより通風機は、一貫した運転を可能にするために十分な出力マージンを備えていなければならない。本発明におけるフィルタはもはや汚染されないので、通風機の出力マージンはもはや必要とならない。したがって、通風機を、より小さな出力に合わせて設計することができる。
【0012】
本発明の有利な実施態様では、フィルタスクリーンはエンクロージャ内に、円筒状のアッセンブリの軸線がエンクロージャの運転位置において垂直に延びかつ通風機が円筒状のアッセンブリの上端部に位置決めされるように配置されている。
【0013】
このような配置形式では、フライの導出が重力によってアシストされ、フライは必然的に、円筒状のアッセンブリの、上面もしくは通風機とは反対の側に位置する底面の方向へ落下する。
【0014】
円筒状のアッセンブリの底面は、少なくとも部分的に開いていると有利である。こうして、フィルタの範囲から汚れや繊維を搬出することができる。
【0015】
好ましくは、円筒状のアッセンブリの、少なくとも部分的に開いた底面に、フライを収容する室が隣接している。円筒状のアッセンブリの軸線が垂直方向に延びている場合には、閉鎖可能な前記室がフィルタの下方に位置している。
【0016】
前記室は閉鎖可能な開口を有し、この閉鎖可能な開口により、所定の時間毎に前記室からフライを除去することが容易に可能となる。
【0017】
さらに別の有利な実施態様では、エンクロージャが、電気的なコンポーネントを収容するエンクロージャエレメントと、該エンクロージャエレメントの側壁に組み付けられている取付けエレメントとを有し、該取付けエレメント内に、フィルタスクリーンと通風機とが配置されている。
【0018】
排空気用の開口は、好ましくは前記エンクロージャエレメントの範囲に配置されているので、電気的なコンポーネントを備えたエンクロージャエレメントには、冷却空気流が通される。
【0019】
フィルタに押し通された空気が取付けエレメントからエンクロージャエレメント内に流入し得るようにするために、取付けエレメントとエンクロージャエレメントとは、それぞれ互いに対応する開口を有する。
【0020】
さらに、本発明は、エンクロージャエレメントの側壁に組み付けるための取付けエレメントに関する。本発明の取付けエレメントの構成では、1つの円筒状のアッセンブリの外周面として形成されているフィルタスクリーン(フィルタ篩)と、円筒状のアッセンブリの上面の範囲に配置されている通風機とを備え、該通風機は、該通風機が円筒状のアッセンブリの内部から前記フィルタスクリーンを通じて空気を外部に向かって押し出すように構成されており、取付けエレメントの1つの側が開口を有し、取付けエレメントの、該開口を有する側が、エンクロージャエレメントの1つの側壁に組付け可能である。
【0021】
その場合、エンクロージャエレメントは、取付けエレメントに設けられた前記開口に対応する1つの開口を有する。こうして、取付けエレメントとエンクロージャエレメントとの間での空気交換を確保することができる。
【0022】
取付けエレメントの円筒状のアッセンブリの底面は、少なくとも部分的に開いていると好ましい。円筒状のアッセンブリの、少なくとも部分的に開いている前記底面に、フライを収容する室が隣接していると有利である。
【0023】
フライを収容するために取付けエレメントに設けられた前記室からフライを除去することができるようにするために、前記室は1つの閉鎖可能な開口を有する。
【0024】
取付けエレメントの円筒状のアッセンブリの軸線は、取付けエレメントの、エンクロージャエレメントの側壁に組付け可能である側に対して平行に位置決めされていると有利である。こうして、取付けエレメントの組付け後に、円筒状のアッセンブリの軸線が垂直方向に延びることが達成される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明によるエンクロージャを示す斜視図である。
【図2】本発明による取付けエレメントを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明を実施するための形態を図面につき詳しく説明する。
【0027】
図1には、本発明によるエンクロージャ1の可能な1実施形態が図示されている。エンクロージャ1はエンクロージャエレメント13と取付けエレメント12とを有する。エンクロージャエレメント13内には、電気的なコンポーネント(図示しない)が配置されている。エンクロージャエレメント13には、取付けエレメント12が組み付けられている。取付けエレメント12は、組み付けられていない状態で図2に図示されている。この場合、図2には、取付けエレメント12を、エンクロージャエレメント13に組み付けられる側から見た図が図示されている。
【0028】
エンクロージャエレメント13内の電気的なコンポーネントを冷却するためには、取付けエレメント12に設けられた開口2を通じて、通風機4によって空気が吸い込まれる。吸い込まれた供給空気は、通風機4によってフィルタスクリーン5に押し通され濾過される。空気は取付けエレメント12とエンクロージャエレメント13との間の開口14を通じてエンクロージャエレメント13内に流入する。電気的なコンポーネントの排熱によって加熱された空気は、エンクロージャエレメント13の上側の範囲に設けられた複数の開口3を通じて逃出することができる。
【0029】
取付けエレメント12に設けられた開口2とフィルタスクリーン5と底面8とによって、1つの円筒状のアッセンブリ6が形成される。フィルタスクリーン5はこの場合、円筒体の外周面を形成し、開口2は上面を形成する。通風機4の運動によって、空気は円筒状のアッセンブリ6内で回転させられる。フィルタスクリーン5が円筒体の外周面として形成されていることに基づき、回転する空気はフィルタスクリーン5に直角に衝突するのではなく、接線方向で衝突する。これにより、空気中に存在するフライはフィルタスクリーン5に押し付けられて、ひいてはフィルタスクリーン5に引っ掛かったままになるのではなく、引き続き空気によって連行されて、通風機4から離れる方向に運動させられる。
【0030】
図示の実施形態では、底面8が開口として形成されている。円筒状のアッセンブリ6の底面8には、室9が続いている。この室9内には、供給空気を損なうことなしにフライが捕集される。円筒状のアッセンブリ6の軸線7は、図示の実施形態ではエンクロージャ1の起立設置位置において、地面に対して直角に位置しているので、前記室9は円筒状のアッセンブリ6および底面8により形成された開口の下方に配置されている。室9は閉鎖可能な開口10を有する。すなわち、繊維機械が運転状態にあって、通風機4が空気を圧送している場合には、室9が閉鎖され得ることが確保されている。他方において、所定の時間毎にフライを除去するためには、室9を開放することができる。
【0031】
図2からは、取付けエレメント12の2つの範囲が良く判る。このことは、第1に円筒状のフィルタスクリーン5を備えた範囲である。この範囲は開口11を有する。取付けエレメント12はこの開口11によってエンクロージャエレメント13の側壁に組み付けられる。開口11は、この開口11がエンクロージャエレメント13に設けられた複数の開口14に覆い被さるように位置決めされる。開口14によって取付けエレメント12とエンクロージャエレメント13との間での空気交換が達成される。室9はエンクロージャエレメント13の側壁に向かって同じく開いている。この開口は組立て時にエンクロージャエレメント13の側壁によって閉じられる。
【符号の説明】
【0032】
1 エンクロージャ
2 開口
3 開口
4 通風機
5 フィルタスクリーン
6 円筒状のアッセンブリ
7 軸線
8 底面
9 室
10 開口
11 開口
12 取付けエレメント
13 エンクロージャエレメント
14 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給空気用の開口(2)と、
排空気用の開口(3)と、
前記供給空気用の開口(2)を通じてエンクロージャ(1)内に供給空気を強制圧送するための通風機(4)と、
供給空気を清浄化するためのフィルタスクリーン(5)とを有する、
電気的なコンポーネントを収容する繊維機械用のエンクロージャ(1)であって、
前記フィルタスクリーン(5)は、1つの円筒状のアッセンブリ(6)の外周面として形成されており、
前記供給空気用の開口(2)は、前記円筒状のアッセンブリ(6)の上面の範囲に配置されており、
前記通風機(4)は、前記供給空気用の開口(2)の範囲に、前記通風機(4)が前記フィルタスクリーン(5)を通じてエンクロージャ(1)内へ空気を押し込むように配置されかつ構成されている、
ことを特徴とする、電気的なコンポーネントを収容する繊維機械用のエンクロージャ。
【請求項2】
前記フィルタスクリーン(5)はエンクロージャ(1)内に、前記円筒状のアッセンブリ(6)の軸線(7)がエンクロージャ(1)の運転位置において垂直に延びかつ前記通風機(4)が前記円筒状のアッセンブリ(6)の上端部に位置決めされるように配置されている、請求項1記載のエンクロージャ。
【請求項3】
前記円筒状のアッセンブリ(6)の底面(8)が、少なくとも部分的に開いている、請求項1または2記載のエンクロージャ。
【請求項4】
前記円筒状のアッセンブリ(6)の、少なくとも部分的に開いた前記底面(8)に、フライを収容する室(9)が隣接している、請求項3記載のエンクロージャ。
【請求項5】
前記室(9)は閉鎖可能な開口(10)を有する、請求項4記載のエンクロージャ。
【請求項6】
エンクロージャ(1)は、電気的なコンポーネントを収容するエンクロージャエレメント(13)と、該エンクロージャエレメント(13)の側壁に組み付けられている取付けエレメント(12)とを有し、該取付けエレメント(12)内に前記フィルタスクリーン(5)と前記通風機(4)とが配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のエンクロージャ。
【請求項7】
前記排空気用の開口(3)は前記エンクロージャエレメント(13)の範囲に配置されている、請求項6記載のエンクロージャ。
【請求項8】
前記取付けエレメント(12)と前記エンクロージャエレメント(13)とは、それぞれ互いに対応する開口(11,14)を有し、該開口(11,14)を通じて、前記フィルタスクリーン(5)に押し通された空気が前記エンクロージャエレメント(13)内に流入するようになっている、請求項7記載のエンクロージャ。
【請求項9】
エンクロージャエレメント(13)の側壁に組み付けるための取付けエレメント(12)であって、1つの円筒状のアッセンブリ(6)の外周面として形成されているフィルタスクリーン(5)と、前記円筒状のアッセンブリ(6)の上面(2)の範囲に配置されている通風機(4)とを備え、該通風機(4)は、該通風機(4)が前記円筒状のアッセンブリ(6)の内部から前記フィルタスクリーン(5)を通じて空気を外部に向かって押し出すように構成されており、前記取付けエレメント(12)の1つの側が開口(11)を有し、前記取付けエレメント(12)の、該開口(11)を有する側が、エンクロージャエレメント(13)の1つの側壁に組付け可能であることを特徴とする取付けエレメント。
【請求項10】
前記円筒状のアッセンブリ(6)の底面(8)が、少なくとも部分的に開いている、請求項9記載の取付けエレメント。
【請求項11】
前記円筒状のアッセンブリ(6)の、少なくとも部分的に開いている前記底面(8)に、フライを収容する室(9)が隣接している、請求項10記載の取付けエレメント。
【請求項12】
前記室(9)は閉鎖可能な開口(10)を有する、請求項11記載の取付けエレメント。
【請求項13】
前記円筒状のアッセンブリ(6)の軸線(7)は、前記取付けエレメント(12)の、エンクロージャエレメント(13)の側壁に組付け可能である側に対して平行に位置決めされている、請求項9から12までのいずれか1項記載の取付けエレメント。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−108206(P2013−108206A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−252914(P2012−252914)
【出願日】平成24年11月19日(2012.11.19)
【出願人】(307031976)エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (105)
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D−42897 Remscheid, Germany
【Fターム(参考)】