説明

繊維混抄マット状成形体及び繊維強化成形体

【課題】ピッチ系炭素繊維の折損を改善することにより力学特性及び熱伝導性に優れた繊維強化成形体と、この繊維強化成形体を成形するための繊維混抄マット状成形体を提供することを目的とする。
【解決手段】ピッチ系炭素繊維の短繊維と熱可塑性樹脂繊維の短繊維からなる繊維混抄マット状成形体において、該炭素繊維は、繊維軸方向の引張弾性率が400GPa以上であり、繊維軸方向の熱伝導率が60W/mK以上のピッチ系炭素繊維であり、重量平均繊維長が3mm以上であることを特徴とする繊維混抄マット状成形体。この繊維混抄マット状成形体を、当該繊維混抄マット状成形体中の熱可塑性樹脂繊維の流動開始温度以上においてプレス成形してなる繊維強化成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピッチ系炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維からなる繊維混抄マット状成形体と、この繊維混抄マット状成形体を熱プレス成形した繊維強化成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチックス(FRP)は単位重量あたりの強度、弾性率に優れた特性を有することから金属代替を中心とした用途展開が急速に進みつつある。特に炭素繊維と樹脂を複合化してなる炭素繊維強化樹脂成形体は、金属材料に匹敵する強度・弾性率を有しながら、金属材料よりも比重が小さいため、部材の軽量化を図ることができ、また発錆の問題もないことから、燃費の低減を目的とした航空機や自動車等の輸送分野を中心とした利用が着実に増加している。
【0003】
なかでもピッチ系炭素繊維を使用した炭素繊維強化樹脂成形体は、ピッチ系炭素繊維に特有の超高弾性、高熱伝導、低熱膨張という利点を活かして、例えば、液晶ディスプレイ製造工程において大型のガラス基板を搬送するロボットハンドや、製紙工程やフィルム製造工程で使用されるシャフトロール等に適用され、部材の長尺化や、軽量化による高速化に寄与している。
【0004】
しかしながら、炭素繊維強化樹脂成形体は、炭素繊維の配向している方向とそれに直交な方向とでは弾性率や、熱伝導性、熱膨張性等の特性が大きく異なる異方性の高い材料であるため、使いこなしが非常に難しく、限られた一部の設計者にしか扱えないことが、その普及を妨げる一因となっている。
【0005】
また、上述したロボットハンドやシャフトロールのような、細長い構造体で長さ方向に高い特性を要求される部材の場合には、その長さ方向に炭素繊維を配向させるように設計・製造することで、炭素繊維の優れた特性を有効に発揮させることができるが、パネルのような面状の部材の場合は、その異方性が不都合である場合が多い。即ち、面状の部材においては、その面内のどの方向でも弾性率や熱伝導率などが同等である、つまりは等方性であることが望まれる。
【0006】
例えば特許文献1には熱可塑性樹脂を繊維束に含浸させたプリプレグテープを並べた後にプレスしてシート化する手法により熱可塑プリプレグシートを作製する内容が記載されている。しかしながら常温での高い剛性を発現には同時にプリプレグシートの状態においても高い剛性を必要とするため、シートは柔軟性に乏しく巻き取りや積層後における曲げ加工、賦形の段階において折れや破損などが生じやすいという問題があった。また、成形体の歪みや反りを防ぐために、厚さ方向の中央面部分に対して厚さ方向で対称となるように積層されるため、例えば、得られた成形体の一方の面の表層の一部を加工研削すると、その対称性が崩れて歪みや反りが発生してしまう。さらには、長繊維または連続繊維が一方向に引き揃えられたものの集合体であるため、複雑な凹凸型形状への追従性が悪く、立体的な曲面形状の成形は難しい。加えて、長繊維や連続繊維をさらに加工して原料シートを製作するために、コストが高くなってしまうという問題もある。
【0007】
特許文献2には、熱硬化性樹脂からなるマトリックス中に長さが10乃至100mmの炭素繊維を2次元的に且つ不規則的に分布させた異形状繊維強化プラスチックが記載されている。このような方法では、このような問題は解消できるものの、繊維長が短く、シート化またはペレット化プロセスで繊維が損傷を受けてさらに繊維長が短くなってしまうことから、十分な補強効果を発揮できず、金属材料並みの特性を発現するまでには至っていない。特に、高弾性・高熱伝導性の炭素繊維ほど、脆さが増して折れやすくなり、その効果を発揮し難いという二律背反の構図があり、その取扱性は困難を極める。
【0008】
特許文献3では、ピッチ繊維を不織布化したのちに不溶化・炭化することにより炭素繊維不織布を作製し、その後に樹脂の含浸を行なっている。上記方法では不織布化を先に行なっているため、樹脂の含浸工程において樹脂は不織布表面部分から含浸させる必要がある。このとき、含浸性は樹脂粘度や不織布厚み(目付け)の影響を受け易く、プレスによって空隙の少ない成形体を作製するためには不織布が薄いことや樹脂粘度が特に低いことなどの制限が生じる。さらに厚い板を成形するためには樹脂含浸速度や加熱温度が重要となり、プレス時の昇圧速度や加熱条件の調整が複雑化する。
【0009】
特許文献4では、開繊した単繊維状の炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維とを用いた成形材料、及びそれを圧縮成形法で成形した繊維強化熱可塑性樹脂成形体が記載されているが、該炭素繊維として、ピッチ系も例示されているものの、PAN系が好ましいとして、実施例にもピッチ系を使用した例も無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平08−041220号公報
【特許文献2】特開平03−106619号公報
【特許文献3】特開2007−84649号公報
【特許文献4】WO2007/097436再公表公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ピッチ系炭素繊維の折損を改善することにより力学特性及び熱伝導性に優れた繊維強化成形体と、この繊維強化成形体を成形するための繊維混抄マット状成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、所定の引張弾性率、熱伝導率及び重量平均繊維長を有したピッチ系炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維を混合することにより得られる繊維混合体が上記課題を解消できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明の繊維混抄マット状成形体は、ピッチ系炭素繊維の短繊維と熱可塑性樹脂繊維の短繊維からなる繊維混抄マット状成形体において、該炭素繊維は、繊維軸方向の引張弾性率が400GPa以上であり、繊維軸方向の熱伝導率が60W/mK以上であり、重量平均繊維長が3mm以上であることを特徴とするものである。
【0014】
この繊維混抄マット成形体は、炭素繊維の含有率が15〜75wt%で、熱可塑性樹脂繊維の含有率が85〜25wt%であることが好ましい。
【0015】
この繊維混抄マット状成形体は、該炭素繊維が、重量平均繊維長±1mm内に50wt%以上の繊維長分布を有することが好ましい。
【0016】
この繊維混抄マット状成形体は、炭素繊維の短繊維及び熱可塑性樹脂の短繊維が二次元ランダム分散状態となっていることが好ましい。
【0017】
この繊維混抄マット状成形体は、乾式法で作製されたものであることが好ましい。
【0018】
この繊維混抄マット状成形体の目付けは250g/m〜1500g/mであること、特に、500g/m〜1200g/mであることが好ましい。
【0019】
本発明の繊維強化成形体は、この繊維混抄マット状成形体を、1枚又は複数枚積層して、当該繊維混抄マット状成形体中の熱可塑性樹脂繊維の流動開始温度以上においてプレス成形してなるものである。
【0020】
この繊維強化成形体の面内方向の熱伝導率は20W/mK以上であることが好ましい。
【0021】
この繊維強化成形体は、厚みが0.2〜10mmであって、JIS K7074によりロードセル100kN、クロスヘッド速度2mm/分の条件で測定した面内方向の曲げ弾性率20GPa以上、曲げ強度100MPa以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、短繊維の折損が少なく樹脂含浸が容易な繊維混抄マット状成形体を得ることができる。また、この繊維混抄マット状成形体を熱プレス成形することにより、力学特性や機能性に優れた繊維強化成形体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の繊維混抄マット状成形体及び繊維強化成形体の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。
【0024】
[ピッチ系炭素繊維]
本発明におけるピッチ系炭素繊維は、単繊維を集束剤により集束したものであり、好ましくは太さ3〜25μmの単繊維を100〜50000本集束して使用される。集束剤は、通常は熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂などを用いるが、本発明においては使用する熱可塑性樹脂繊維に応じて選択する必要があり、一般的にはその熱可塑性樹脂繊維の溶融温度で軟化すると共に、連続繊維中に含浸し易いものにする。そのため、集束剤には、その熱可塑性樹脂繊維と同種の樹脂を主成分とするものを使用することが好ましい。
【0025】
ピッチ系炭素繊維の炭素質原料としては、配向しやすい分子種が形成されており、光学的には異方性の炭素繊維を与えるようなものであれば特に制限はない。例えば、石炭系のコールタール、コールタールピッチ、石炭液化物、石油系の重質油、タール、ピッチ、または、ナフタレンやアントラセンの触媒反応による重合反応生成物等が挙げられる。これらの炭素質原料には、フリーカーボン、未溶解石炭、灰分、窒素分、硫黄分、触媒等の不純物が含まれているが、これらの不純物は、濾過、遠心分離、あるいは溶剤を使用する静置沈降分離等の周知の方法であらかじめ除去しておくことが望ましい。
【0026】
また、前記炭素質原料を、例えば、加熱処理した後、特定溶剤で可溶分を抽出するといった方法、あるいは、水素供与性溶剤、水素ガスの存在下に水添処理するといった方法で予備処理を行っておいても良い。
【0027】
本発明で用いる炭素繊維の繊維径は3〜20μm、特に5〜12μmであることが好ましい。炭素繊維の繊維径が細過ぎると、取り扱い性に劣り、また、一般に極細の炭素繊維は高コストであるため、製品コストを押し上げる原因となる。炭素繊維の繊維径が太過ぎると、繊維強度が低下し、折れ易くなるため、好ましくない。
【0028】
なお、ここで、炭素繊維の繊維径は、炭素繊維の顕微鏡観察またはレーザー計測器により20〜30個の繊維径を測定し、その測定値の平均値で求められる。また、炭素繊維の繊維軸方向の引張弾性率および熱伝導率は、炭素繊維とエポキシ樹脂の一方向材を作製し、その繊維軸方向の引張弾性率および熱伝導率を測定した値を、複合則に則って、炭素繊維の体積含有率で割り返して、繊維単体の物性としたものである。さらに具体的には、引張弾性率については、JIS K7073に準拠し、万能試験機で測定された値からの計算値である。また、熱伝導率は、JIS R1611に準拠し、真空理工(株)製レーザーフラッシュ法熱定数測定装置「TC−3000」で測定された値からの計算値である。後掲の実施例においても同様である。
【0029】
炭素繊維の短繊維の長さは、好ましくは50mm以下特に1〜50mmとりわけ3〜20mmである。繊維の長さが短か過ぎると、繊維同士の絡み合いがなくなって不織布を形成し難くなり、また得られる成形体の曲げ弾性率や熱伝導率を十分に高めることができない恐れがある。一方、原料繊維の長さが長過ぎると繊維同士の絡まりや開繊不良などを生じやすく、熱可塑性樹脂繊維と炭素繊維の混合が不均一になる恐れがある。
【0030】
本発明の繊維混抄マット状成形体においては、製造工程において、作成に使用された炭素繊維が折れることが多いため、使用された炭素繊維長さがそのまま保持されない場合が多い。このため、本発明において、最終的に繊維混抄マット状成形体中で、炭素繊維の重量平均繊維長は重要な要素である。重量平均繊維長は重量としての存在率を示す。同種の繊維の場合は繊維の長さが重さと関係するため、重量平均繊維長は長い繊維が少ない場合、大きく低減する。繊維長さが短いと、例えば熱伝導や電気伝導などのパスの形成に関与する特性に関し、強化効果が低減する。この重量平均繊維長は3mm以上、特に3〜30mmであることが好ましく、重量平均繊維長±1mm内に50wt%以上、好ましくは50〜90wt%の繊維長分布を有するものが好ましい。
【0031】
また、数平均繊維長は1mm以上、特に1〜20mmであるのが好ましい。数平均繊維長は繊維の存在数を示す値であり、この値が小さいことはすなわち短い繊維がより多く存在する、又は一定数の繊維が極端に短いことを示す。一般的に、繊維強化材料において繊維長が力学特性、例えば強度や弾性率に影響を与えることが知られており、極端に短い繊維が多い場合はそれらの繊維は強化効果が低減する。
【0032】
なお、本発明における数平均繊維長及び重量平均繊維長は光学顕微鏡、電子顕微鏡などにより観察された写真より0.1mm以上の繊維のみを抽出して測定を実施した。
【0033】
本発明で用いる炭素繊維の繊維軸方向の引張弾性率は400GPa以上、好ましくは440GPa以上、例えば500〜900GPaで、また、繊維軸方向の熱伝導率は、60W/mK以上、好ましくは110W/mK以上、例えば120〜600W/mKである。
【0034】
このように、それ自体、引張弾性率および熱伝導率の高い炭素繊維を用いることにより、得られる炭素繊維強化樹脂シートおよび炭素繊維強化樹脂成形体の曲げ弾性率および熱伝導率を高くすることができる。
【0035】
炭素繊維は黒鉛化処理することにより、引張弾性率や熱伝導率が向上することが知られており、従って、本発明に係る炭素繊維不織布には黒鉛化炭素繊維を用いてもよく、また、黒鉛化していない低弾性率・低熱伝導率の炭素繊維を不織布とした後に、樹脂と複合化する前の段階で黒鉛化処理して、炭素繊維の繊維軸方向の引張弾性率や熱伝導率を高めるようにしてもよい。
【0036】
[熱可塑性樹脂繊維]
本発明の熱可塑性樹脂繊維としては、通常よく知られている熱可塑性樹脂が挙げられる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ナイロン6、ナイロン66、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶芳香族ポリエステル、ポリイミドなど、およびそれらの共重合体や変性体、そして前記の二種以上のブレンド物などである。ブレンドした繊維としては混合した単一の混合樹脂繊維、芯鞘構造繊維、サイドバイサイド繊維などの複合繊維等、種々の構成の樹脂繊維を用いることが可能である。
【0037】
なかでも、本発明で用いる熱可塑性樹脂繊維は、乾式法で繊維混抄マット状成形体を得る場合、結晶融解温度又は流動開始温度が200℃以下の樹脂成分を含むことが重要となる。これは本発明の要素として熱可塑性樹脂繊維がマトリックス樹脂であることと、通常バインダーを使用しない乾式法において、サーマルボンドにおける熱接着バインダーの機能の長方を果たすためである。本発明では結晶融解温度又は流動開始温度が200℃以下の熱可塑性樹脂成分を有することにより、蒸気式、オイル式のヒーター設備を通過させることによりこの部分が他の樹脂繊維又は炭素繊維と溶融接着し、強固な結合の混抄マット状成形体を形成することが可能となる。また結晶融解温度又は流動開始温度が180℃以下であればサーマルボンドの際の熱量の低減を図ることが可能となり、高速成形の面や省エネルギーの面でも更に好ましい。
【0038】
また、熱可塑性樹脂繊維中には、公知の添加剤、改質剤、充填剤などを添加してもよい。
【0039】
熱可塑性樹脂の溶融粘度は、炭素繊維との樹脂の濡れ性、及び未開繊炭素繊維束への熱可塑性樹脂の含浸性に大きく影響する。熱可塑性樹脂繊維の溶融粘度が高い場合、繊維強化成形体において炭素繊維と樹脂との濡れ性が悪く、また未開繊炭素繊維束への樹脂の含浸が困難となり、炭素繊維とマトリックスとなる熱可塑性樹脂との界面剥離をし易い状態となり、力学特性の不足を生じやすい。また、剥離することなく一体化した複合化シートを得ることが困難となる。一方、溶融粘度が低すぎる場合、基本的に樹脂の分子量が低く、繊維強化成形体における耐衝撃性等の力学特性が低下する恐れが生じる。本発明における熱可塑性樹脂繊維の熱分解開始温度以下における溶融粘度は10〜1000Pa・sであることが好ましく、20Pa・s〜500Pa・sであることが更に好ましい。なお、熱可塑性樹脂繊維の溶融粘度とは、乾燥した熱可塑性樹脂繊維における示差熱重量測定装置などで重量減少が1wt%未満などの分解しない条件での温度領域における最高値と最低値となる溶融粘度を示している。
【0040】
本発明で使用する熱可塑性樹脂繊維の製造方法は、本発明の効果を著しく阻害しない限りにおいては何れの方法でもよく特に制限されないが、公知の方法、例えば単軸押出機、二軸押出機を用いた方法としてマルチフィラメントダイやモノフィラメントダイを用いた溶融紡糸方法、メルトブロー法やフラッシュ紡糸法、ポリマーブレンド法、エレクトロスピニング法、海島複合紡糸法、割繊複合紡糸法などの種々の方法を用いることが可能であり、通常は繊維径0.1μm〜500μm程度である。
【0041】
熱可塑性樹脂短繊維の長さは、好ましくは50mm以下特に1〜50mmとりわけ3〜20mmである。繊維の長さが短か過ぎると、繊維同士の絡み合いが不十分となり、マット状成形体の成形や形状維持が困難となる。一方、原料繊維の長さが長過ぎると繊維同士の絡まりや開繊不良などを生じやすく、熱可塑性樹脂繊維と炭素繊維の混合が不均一になる恐れがある。
【0042】
[繊維混抄マット状成形体の製法]
本発明の繊維混抄マット状成形体は不織布と言われるものであり、前述した熱可塑性樹脂繊維及び炭素繊維を所定の長さに切断して短繊維状とし、それらを面状(2次元)にランダムに分散させてシート状とすることにより製造することができる。なお、以下本明細書において、「繊維混抄マット状成形体」を単に「不織布」ということがある。
【0043】
短繊維から繊維混抄マット状成形体を製造する方法としては様々な方法があり、例えば、乾式法による繊維混抄マット状成形体の作製方法としては、針や凹凸のついたロール間に繊維を通して機械的に叩解・解繊してシート化するカード法、あるいは、繊維を気流中で浮遊・解繊した後にスクリーン上に吸引してシート化するエアレイ法などがある。具体的には、スパンボンド法、ニードルパンチ法、サーマルボンド法、レジンボンド法、ケミカルボンド法、メルトブロー法等が挙げられる。
【0044】
また、湿式法による作成方法としては、繊維を溶媒中に分散させ、製紙工業で使われるビーター、パルパーなどの装置を使用して解繊させた後に網上に抄き上げ、付着した溶媒を乾燥除去してシート化する所謂湿式抄紙法などがある。
【0045】
湿式抄紙法による繊維混抄マット状成形体の製造において、炭素短繊維を均一に分散させるための溶媒としては、好ましくは水を使用する。炭素短繊維は、通常の場合、炭素繊維表面に存在するサイズ剤により分散性が阻害されるため、一般的には繊維素グリコール酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ヒドロキシセルロース等の増粘・分散剤を用いるが、繊維混抄マット状成形体にした際に相溶性や熱安定性の悪い不純物となり物性低下を生じやすい。加えてこの増粘・分散剤は水溶性材料であるため吸湿性に劣り、水分との接触などで再溶解し形状保持が困難な場合がある。また、湿式では、一般に折損が起きやすく、繊維混抄マット状成形体とした際に、強化効果の小さな微細な炭素繊維粉を担持した状態となり、重量増加の一因となる場合がある。
【0046】
一方、乾式製法の場合は増粘剤等の不要な材料を導入する必要がなく、また混合の際にもエアーを用いるため湿式法に比べ繊維長の維持(折損の低減)が容易であり、更に乾燥工程の省略が可能となり、排水処理も不要である。これらのことから、本発明の不織布は乾式法で作製されるのが好ましい。
【0047】
例えば、炭素短繊維と熱可塑性樹脂繊維とを予備的に、例えば袋や容器等の中に両者を収容して軽く上下や左右に1分程度撹拌し、その後ヘンシェルミキサー、二軸式混合撹拌機などにより予備混合した後に、エアレイド装置等、乾式混合機を用いた装置中で、繊維を気流で撹拌した後、回転バーで叩き撹拌する等して更に撹拌混合し、これを気流搬送して金網ベルト上にベルト下部より吸引積層して不織布状とするのが好ましい。
【0048】
本発明の繊維混抄マット状成形体における目付、すなわち単位面積あたりの繊維の重量(Fiber Areal Weight、以下FAWと記すことがある。)は250〜2000g/mが好ましく、500〜1500g/mであることがより好ましい。FAWの小さいものは繊維混抄マット状成形体自体の強度不足により取り扱いが困難となる上、所望の厚さの成形体を得るためには、後述する成形工程で不織布および/または炭素繊維強化樹脂シートの積層枚数を多くする必要があり、製造工程が煩雑となる。逆にFAWの大きすぎるものは成形後の厚みが厚くなり薄物を成形することが困難となりやすく、また厚みブレが大きい。
【0049】
{炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維との含有比}
本発明の繊維混抄マット状成形体において、炭素短繊維と熱可塑性樹脂短繊維との、合計に対する炭素短繊維の割合は85wt%以下、特に15〜75wt%、とりわけ45〜70wt%であることが好ましい。すなわち、繊維混抄マット状成形体中の炭素短繊維の重量をa、熱可塑性短繊維の重量をbとした場合、a/(a+b)は、好ましくは0.85以下、特に0.15〜0.75とりわけ0.45〜0.7であることが望ましい。
【0050】
繊維混抄マット状成形体中の炭素短繊維含有率が過度に低いと、得られる成形体の物性が低下し、所望の熱伝導率および曲げ弾性率を達成し得ないことがある。逆に、炭素短繊維含有率が過度に高いと、成形時の加圧力を大きくする必要が生じ、実用的ではない。
【0051】
[繊維混抄マット状成形体からの繊維強化成形体の製造方法]
上記の繊維混抄マット状成形体を、当該混抄マット状成形体中の熱可塑性樹脂の短繊維の流動開始温度(Tf)以上においてプレス成形することにより繊維強化成形体が製造される。
【0052】
このプレス成形時の温度は、流動開始温度Tfよりも10〜100℃特に20〜50℃程度高い温度であることが好ましい。プレス成形時の圧力は1〜20MPa特に3〜10MPa程度が好適であり、プレス時間は1〜30min特に3〜20min程度が好適である。このプレス成形に際し、繊維混抄マット状成形体を重ねることなく1層だけプレスしてもよく、2枚以上重ねて複層プレス成形してもよい。この複層プレス成形によれば、厚みの大きい繊維強化成形体を製造することができる。
【0053】
この繊維強化樹脂成形体は、好ましくは、厚みが0.2〜10mmである。また、好ましくは嵩密度が1.8g/cm以下であり、JIS K7074によりロードセル100kN、クロスヘッド速度2mm/分の条件で測定した面内方向の曲げ弾性率が20GPa以上であり、曲げ強度が100MPa以上であり、面内方向の熱伝導率が20W/mK以上、面内方向の線膨張係数が3×10−6/℃以下である。
【0054】
なお、成形体の嵩密度は、成形体の寸法及び重量を測定し、測定された寸法から体積を計算したのち、重量の測定値を体積の計算値で除算することにより算出される。成形体の面内方向の曲げ弾性率、熱伝導率、線膨張係数は、いずれも後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
【0055】
本発明の成形体の面内方向の曲げ弾性率が20GPa未満では、本発明で目的とする、金属などの高剛性部材の代替への適用が困難となる。従って、成形体の曲げ弾性率は上述のように20GPa以上が好ましく、より好ましくは30GPa以上、さらに好ましくは40GPa以上である。曲げ弾性率の上限については特に規定しないが、曲げ弾性率向上のためのコスト等を勘案した場合、通常100GPa程度である。
【0056】
本発明の成形体の面内方向の熱伝導率が20W/mK未満では、本発明で目的とする、金属などの高熱伝導部材の代替には不適切である。従って、成形体の熱伝導率は20W/mK以上、好ましくは30W/mK以上である。熱伝導率の上限については特に規定しないが、熱伝導率向上のためのコスト等を勘案した場合、通常100W/mK程度である。
【0057】
本発明の成形体の面内方向の線膨張係数は特に規定するものではないが、金属やセラミック材料で標準的な1×10−5/℃前後を下回れば優れた寸法安定性を有する部材として活用される。本発明の成形体では、上記値と比較して線膨張係数を更に小さくすることも可能であり、絶対値として5×10−6/℃以下、さらには3×10−6/℃以下のものも実現することができる。線膨張係数の下限については特に規定しないが、線膨張係数低減のためのコスト等を勘案した場合、絶対値として1×10−7/℃程度である。
【0058】
本発明の繊維混抄マット状成形体は、成形体の面内方向(この面内方向とは、成形体に含まれる不織布の不織布面方向である。)の特性が等方性である。すなわち、この成形体について、曲げ弾性率、熱伝導率、線膨張係数を測定した場合、面内方向のどの方向で測定しても、その測定値の方向別の平均値の差が15%以内である。この等方性を正確に把握するためには、成形体の面内方向について全方向360°に対して、各特性値を評価する必要があるが、一般的には、面内方向の一方向についての測定値と、この方向に対して直交する方向についての測定値とを比較すれば、おおまかな等方性を評価することができる。
【0059】
本発明の繊維強化樹脂成形体がこのように面内方向の特性が等方性であることは、炭素短繊維と熱可塑性樹脂短繊維が二次元ランダムに分散した本発明の不織布を用いたことによる。
【実施例】
【0060】
以下に実施例及び比較例を説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
まず、実施例及び比較例で採用した繊維長、曲げ特性及び熱伝導率の測定方法について説明する。
【0061】
(1)繊維長測定
炭素繊維の数平均繊維長及び重量平均繊維長は、繊維混抄マット状成形体又はコンパウンドペレット(比較例4の場合)を、溶剤を用いて樹脂部分を溶解させたのちに白色シート上に移し、乾燥させた後に、光学顕微鏡により観察することにより計測した。このとき、残存する樹脂材料は白色シートにより観察されなくなり、結果として炭素繊維からなる黒色繊維のみが観察されるようになる。この炭素繊維をランダムに1000本選択し、繊維長さを測定した後にヒストグラム化することにより同定した。
【0062】
(2)結晶融解温度(Tm)、流動開始温度の測定
パーキンエルマー(株)製Pyris1 DSCを用いて、用いた樹脂繊維10mgをJIS K7121に準じて、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で室温まで降温した時に測定されたサーモグラムから結晶融解温度Tm(℃)を求めた。
また、本発明における樹脂繊維の流動開始温度はフローテスタ(CFT−500C島津製作所製)を用い、ノズルサイズφ1×L2mm、昇温速度3℃/分、荷重40kgfにより測定した。評価方法としては上記の結晶融解温度、流動開始温度の測定結果から下記の通り判断を実施した。
○:結晶融解温度または流動開始温度が200℃以下
×:結晶融解温度または流動開始温度が200℃を超える
【0063】
(3)曲げ特性
本発明における成形体の曲げ強度及び曲げ弾性率は万能材料試験機(UH−10 島津製作所製)を用い、連続繊維の配列方向を長手方向として厚み2mmの板状成形体を作製した後に平面のランダム方向に長さ100mm、幅15mmへ切り出すことにより作製した。測定方法はJIS―K7074によりロードセル100kNによりクロスヘッド速度2mm/分により測定した。
【0064】
(4)熱伝導率
本発明における成形体の熱伝導率測定は厚さ2mm及び3mmの板を4〜5枚貼り合わせて接着することにより厚さ10mmの板を作製し、そこから測定サンプルとして厚さ10mmを直径とした直径10mm×厚み2mm円筒状の試験片を作製して測定を実施した。熱伝導率はJIS R1611に準拠して真空理工製のレーザーフラッシュ法熱定数測定装置(TC3000)を用いて測定した。
【0065】
[実施例1]
ピッチ系炭素繊維(商品名「ダイアリード(登録商標)6371T」、三菱樹脂(株)製、平均繊維径11μm、引張弾性率640GPa、繊維軸方向の熱伝導率140W/mK、6mmカットファイバー)60重量%と、熱可塑性樹脂繊維として芯鞘ポリエステル繊維(商品名「メルティ4080」、ユニチカファイバー製、芯成分流動開始温度250℃、鞘成分結晶融解温度130℃、5mmカットファイバー)40重量%を用いた。これらの繊維を紙袋内部に導入し該紙袋を上下に軽く振って約1分間撹拌することにより予備混合した後に二軸フルフライト型のサイドスクリューフィード装置(ラボテックエンジニアリング製)を用いて100rpmの回転速度で更に混合・開繊させて繊維混合体を得た。その後、繊維混合体を池上機械製マットフォーマーIIを用いて目付け1000g/mの繊維混抄体を得た。この繊維混抄体を電熱式エアヒートスルー装置で180℃で加熱しサーマルボンドすることにより繊維混抄マット状成形体とした。この繊維混抄マット状成形体の評価結果を表1に示した。
【0066】
また、この繊維混抄マット状成形体を2枚積層し、温度270℃、圧力5MPa、加圧保持時間5分で溶融プレス成形することにより、厚み2mmのプレス成形体(繊維強化成形体)を製造した。このプレス成形体の評価結果も併せて表1に記載した。
【0067】
[実施例2]
樹脂繊維として芯鞘ナイロン繊維(商品名「ユニメルトUL80」、ユニチカファイバー製、芯成分流動開始温度254℃、鞘成分結晶融解温度140℃、5mmカットファイバー)を用いたこと以外は実施例1と同様の条件により繊維混抄マット状成形体及びプレス成形体を製造した。この繊維混抄マット状成形体及びプレス成形体の評価結果を表1に示した。
【0068】
[実施例3]
樹脂繊維としてポリカーボネート樹脂(商品名「ユーピロン(登録商標)M7020AD2」 三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、流動開始温度188℃)を溶融紡糸法により紡糸することにより製造した樹脂繊維を用いたこと以外は実施例1と同様の条件により繊維混抄マット状成形体及びプレス成形体を作製した。この繊維混抄マット状成形体及びプレス成形体の評価結果を表1に示した。
【0069】
[実施例4]
樹脂繊維としてポリプロピレン樹脂(商品名「ノバテックPP FY6C」、日本ポリプロ(株)製、流動開始温度168℃)を溶融紡糸法により紡糸することにより製造した樹脂繊維を用いたこと以外は実施例1と同様の条件により繊維混抄マット状成形体及びプレス成形体を作製した。この繊維混抄マット状成形体及びプレス成形体の評価結果を表1に示した。
【0070】
[比較例1]
ピッチ系炭素繊維として実施例1で用いたものと同じ「ダイアリード(登録商標)6371T」、6mmカットファイバー60重量%を用い、熱可塑性樹脂繊維としてポリエステル繊維(商品名「テトロン(登録商標)TA04N」、帝人ファイバー(株)製、流動開始温度254℃、5mmカットファイバー)40重量%を用いた。これらの2種類の繊維を紙袋に導入し実施例1と同様にして予備混合した後に上記と同じ二軸フルフライト型のサイドスクリューフィード装置を用いて100rpmの回転速度で更に混合・開繊させて繊維混合体を得た。その後、繊維混合体を池上機械製マットフォーマーIIを用いて目付け1000g/mの繊維混抄体を得た。この繊維混抄体を電熱式エアヒートスルー装置で180℃で加熱しサーマルボンドを行ったが、樹脂繊維の流動開始温度が高いため、樹脂繊維同士が接着せずにマット状成形体を得ることができなかった。
【0071】
[比較例2]
実施例1と同様の繊維を用い、炭素繊維のみを先に二軸フルフライト型のスクリューフィード装置により100rpmで開繊させた後に樹脂繊維を導入し、更に100rpmで開繊・混合することにより繊維混合体を得た。その後、繊維混合体を池上機械製マットフォーマーIIを用いて目付け1000g/mの混抄マット状成形体とした。この混抄マット状成形体の評価結果を表1に示した。表1の通り、この繊維混抄マット状成形体では重量平均繊維長は2.8mmであり、3mmよりも小さい。
【0072】
また、上記混抄マット状成形体を2枚積層し、温度270℃、圧力5MPa、加圧保持時間5分で溶融プレス成形することにより厚み2mmのプレス成形体を作製した。この成形体の評価結果も併せて表1に記載した。
【0073】
[比較例3]
実施例1と同様の材料を用い、フォードリニア式湿式抄紙装置を用いて混抄しマット状成形体を作製した。またこのマット状成形体を実施例1と同様の条件によりプレス成形体を作製した。このマット状成形体及びプレス成形体の評価結果を表1に示した。表1の通り、この繊維混抄マット状成形体では重量平均繊維長さは0.25mmであり、3mmよりも小さい。
【0074】
[比較例3]
樹脂繊維として実施例3と同じ樹脂繊維を用いたこと以外は比較例1と同様の条件により混抄マット状成形体及びプレス成形体を製造した。このマット状成形体及びプレス成形体の評価結果を表1に示した。
【0075】
[比較例4]
ピッチ系炭素繊維として実施例1で用いたものと同じダイアリード(登録商標)6371T60重量部を用い、樹脂材料としてポリカーボネート樹脂(商品名「ユーピロン S2000」、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、流動開始温度188℃)40重量部を用いた。これらを同方向26mmの二軸混練押出機(ラボテックエンジニアリング製)に供給し、フルフライトスクリューによりシリンダー温度260℃で混練し、コンパウンドペレットを作製した。このコンパウンドペレットを射出成形機を用いて射出成形することにより各種試験片を作製し、評価を実施した。この評価結果を表1に示した。
【0076】
[比較例5]
炭素繊維としてPAN系炭素繊維(商品名「パイロフィル(登録商標)TR50S」、三菱レイヨン(株)製、平均繊維径7μm、引張弾性率230GPa、繊維軸方向の熱伝導率10W/mK、6mmカットファイバー)に変更したこと以外は実施例1と同様の条件により繊維混抄マット状成形体及びプレス成形体を製造した。この繊維混抄マット状成形体及びプレス成形体の評価結果を表1に示した。
【0077】
【表1】

【0078】
表1より、実施例1〜4の繊維混抄マット状成形体は何れも炭素繊維の重量平均繊維長が3mm以上である。この炭素短繊維は、繊維長が3mm±1mmのものを50wt%以上有する。数平均繊維長は1mm以上である。このような繊維混抄マット状成形体を用いた繊維強化成形体は何れも曲げ弾性率20GPa以上、曲げ強度100MPa以上、熱伝導率20W/m・K以上である。一方、比較例1では混抄マット状成形体そのものを得ることができなかった。また、比較例2〜4の混抄マット状成形体では、炭素繊維が本発明の規定する範囲外の重量平均繊維長であり、成形した繊維強化成形体の特性が不十分となった。さらに、PAN系炭素繊維を用いた比較例5でも同様に繊維強化成形体の特性が不十分となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピッチ系炭素繊維の短繊維と熱可塑性樹脂繊維の短繊維からなる繊維混抄マット状成形体において、該炭素繊維は、繊維軸方向の引張弾性率が400GPa以上であり、繊維軸方向の熱伝導率が60W/mK以上であり、重量平均繊維長が3mm以上であることを特徴とする繊維混抄マット状成形体。
【請求項2】
該炭素繊維の数平均繊維長が1mm以上である請求項1に記載の繊維混抄マット状成形体。
【請求項3】
炭素繊維の含有率が15〜75wt%で、熱可塑性樹脂繊維の含有率が85〜25wt%である請求項1又は2に記載の繊維混抄マット成形体。
【請求項4】
該炭素繊維が、重量平均繊維長±1mm内に50wt%以上の繊維長分布を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維混抄マット状成形体。
【請求項5】
炭素繊維の短繊維及び熱可塑性樹脂の短繊維が二次元ランダム分散状態となっている請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維混抄マット状成形体。
【請求項6】
該樹脂繊維が結晶融解温度(Tm)又は流動開始温度が200℃以下の熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の繊維混抄マット状成形体。
【請求項7】
繊維混抄マット状成形体が乾式法で作製されたものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の繊維混抄マット状成形体。
【請求項8】
該樹脂繊維が2種以上の樹脂の複合繊維であって、結晶融解温度(Tm)又は流動開始温度が200℃以下の熱可塑性樹脂が少なくとも樹脂繊維の外側に存在する樹脂繊維を使用することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の繊維混抄マット状成形体。
【請求項9】
繊維混抄マット状成形体の目付けが250g/m〜1500g/mである請求項1〜8のいずれか1項に記載の繊維混抄マット状成形体。
【請求項10】
繊維混抄マット状成形体の目付けが500g/m〜1200g/mである請求項1〜9のいずれか1項に記載の繊維混抄マット状成形体。
【請求項11】
該繊維混抄マット状成形体における樹脂繊維同士または樹脂繊維と炭素繊維が溶融結合されてなる請求項1〜10のいずれか1項に記載の繊維混抄マット状成形体。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の繊維混抄マット状成形体を、当該繊維混抄マット状成形体中の熱可塑性樹脂繊維の流動開始温度以上においてプレス成形してなる繊維強化成形体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の繊維混抄マット状成形体を、複数枚積層してなる積層体を、当該繊維混抄マット状成形体中の熱可塑性樹脂繊維の流動開始温度以上においてプレス成形してなる繊維強化成形体。
【請求項14】
繊維強化成形体の面内方向の熱伝導率が20W/mK以上である請求項12または13に記載の繊維強化成形体。
【請求項15】
繊維強化成形体の厚みが0.2〜10mmであって、JIS K7074によりロードセル100kN、クロスヘッド速度2mm/分の条件で測定した面内方向の曲げ弾性率が20GPa以上であり、曲げ強度が100MPa以上である請求項12〜14のいずれか1項に記載の繊維強化成形体。

【公開番号】特開2011−190549(P2011−190549A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56093(P2010−56093)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】