説明

繊維状有機物の製造方法

【課題】 生体材料、特に、歯や骨の補填材料、カラム等の充填材料、汚染物質の吸着を目的とした環境材料として幅広く利用することができる有機−無機複合多孔体の製造に使用される原料である繊維状有機物を製造する方法を提供すること。
【解決手段】 有機物を溶媒に溶解してなる溶媒溶液と、水溶性高分子及び水溶性高分子凝結剤と、を混合して混合液を得る工程と、前記混合液を撹拌しつつ、前記混合液中の溶媒成分を除去する工程とからなることを特徴とする繊維状有機物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機−無機複合多孔体、繊維状有機物の製造方法及び有機−無機複合多孔体の製造方法に関し、更に詳しくは、生体材料、特に、歯や骨の補填材料、カラム等の充填材料、汚染物質の吸着を目的とした環境材料として幅広く利用することができる有機−無機複合多孔体、繊維状有機物を製造する方法、及び有機−無機複合多孔体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在までに、骨や歯の修復材料として、水酸アパタイト焼結体、リン酸カルシウム水和硬化材、及び生分解性樹脂であるポリ乳酸のスクリュー等が開発され、それらは既に実用化されている。近年では、次世代の生体材料として、細胞等の生体組織が侵入しやすい気孔構造を有し、生体適合性に優れ、生体内で徐々に吸収される材料が、望まれている。このような材料は、細胞と材料とを複合化させた、再生医療を利用した補填材としても期待される。又、カラム等の充填材料、汚染物質の除去等を目的にした環境材料においても、分離する液、又は気体の浸透がスムーズに行われるような連通した気孔構造を有し、吸着能の高いリン酸カルシウムを含んだ材料が、有用である。
【0003】
このような材料としては、生体活性の高いリン酸カルシウム化合物、生体内での分解吸収性を有したポリ乳酸等の生分解性樹脂、及びこれらの複合材料等が挙げられる。このような多孔質の様々の材料が、従来から開発されている。
【0004】
その一つとして、熱分解性樹脂等を気孔形成剤として用いることにより得られるリン酸カルシウム系多孔体が挙げられる。このリン酸カルシウム系多孔体には、気孔が球状となるので、連通気孔間のパス径が小さくなり、パス径を大きくするために必要以上に気孔径を大きくする必要があるといった問題がある。
【0005】
一方、連通気孔性の良い多孔体として、リン酸カルシウムを含有する繊維状の生分解性樹脂を溶着させた有機−無機複合多孔体(特許文献1)が挙げられる。
【0006】
【特許文献1】特開2003−159321号公報
【0007】
この前記特許文献1に記載された多孔体は、多孔体に生体活性等を付与するために添加するリン酸カルシウム系化合物を生分解性樹脂中に予め混合する必要がある。したがって、このような材料表面には、リン酸カルシウム系化合物表面が多く露出しておらず、添加量に対して生体活性等のリン酸カルシウムの特性を十分に付与することができない。つまり、実際には、生体活性に寄与するリン酸カルシウムの大部分が樹脂内部に存在することになり、添加量に対するリン酸カルシウムの露出度が非常に低く、好ましくない。
【0008】
また、一方で、アパタイトウィスカーを利用したリン酸カルシウム多孔体も従来技術としてあげられる(非特許文献1)。
【0009】
アパタイトウィスカーは、そのウィスカーの各結晶面でそれぞれ吸着する物質の性質が異なるため、結晶形態を制御したアパタイトを含有した材料は、生体材料や吸着材料として非常に有用である。例えば、生体材料に関しては、アパタイトの特定の結晶面が生体の細胞等の吸着、及び増殖作用等を促進させることが言われており、このような材料は、生体内に埋入した際に細胞等が増殖しやすく、生体内の欠損部の修復を促進する材料として、又、細胞等を予め材料中に培養し、生体内に補填するような再生医療用材料として期待されている。加えて、前記アパタイトウィスカーは、特定物質の吸着が有利な結晶面を制御することにより、環境材料として、選択性の高い吸着材とすることができる。
【0010】
【非特許文献1】化学工業1993年9月号p710−717
【0011】
しかしながら、この多孔体は、アパタイトウィスカーを焼結させることにより製造されるので、焼結時にアパタイトウィスカーの熱分解が起きてしまうため、多孔体を構成するアパタイトの組成が制限されしまう問題があった。例えば、アパタイトのCa/Pのモル比がアパタイトの化学量論比である1.67より小さい場合には、アパタイトが熱分解され、アパタイト以外のリン酸カルシウムが生成することがある。
【0012】
又、特許文献2のような生分解性樹脂のみの多孔体も既に開発されている。これは、生体活性を有したリン酸カルシウム等の付与が必要のない部位に適用される場合、生体用の生分解性多孔材料としては、連通性が高いので有用であるが、この繊維状生分解性樹脂の製造方法がスプレー吹き付けによる方法であるので、特別な繊維製造用装置を必要とする。又、一般的にも樹脂の繊維を製造するためには、湿式紡糸装置等の特別な装置を必要としている。特許文献1のリン酸カルシウムを含有する繊維状の生分解性樹脂の製造方法も同様である。特に、この特許文献1では、溶媒に溶かした樹脂中にリン酸カルシウムを予め分散させ、スプレー等の紡糸装置により繊維を製造し、それらを溶着させることにより、多孔体を得ているので、樹脂中に含まれるリン酸カルシウム粒子によるスプレーの目詰まりや繊維が短く切れてしまう等の製造上の問題がある。又、従来の紡糸装置等で得られる繊維は、長繊維であるので、一般的にシート状の不繊布のような材料に適しているが、ブロック状の材料の製造に向いていない。特に、スプレー吹きつけ法のような製造方法は、ブロック状材料の製造に向いていないので、材料の形状に制限が生じる。
【0013】
【特許文献2】特開2002−315819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、前記問題点を解決し、連通気孔を有し、且つ、繊維状リン酸カルシウムが気孔表面及び多孔体表面にほぼ露出した状態で、前記繊維状リン酸カルシウムが分散した有機−無機複合多孔体を提供すること、従来技術よりも簡便で特別な装置も必要としない繊維状有機物を製造する方法を提供すること、前記有機−無機複合多孔体を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、
繊維状リン酸カルシウムと繊維状有機物とを含み、繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムの少なくとも一部とが、絡み合っていることを特徴とする有機−無機複合多孔体であり、
請求項2は、
前記繊維状有機物と前記繊維状リン酸カルシウムとの少なくとも一部の絡み合いの少なくとも一部が接合していることを特徴とする請求項1に記載の有機−無機複合多孔体であり、
請求項3は、
気孔率が、少なくとも30%である前記請求項1又は2に記載の有機−無機複合多孔体であり、
請求項4は、
前記繊維状有機物が、生分解性樹脂であることを特徴とする前記請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機−無機複合多孔体であり、
請求項5は、
前記生分解性樹脂が、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、及びポリカプロラクトンより成る群から選択される少なくとも一種の重合体、及び/又は、乳酸、グリコール酸及びカプロラクトンよりなる群から選択される少なくとも一種のモノマーを用いて得られる共重合体を含むことを特徴とする前記請求項4に記載の有機−無機複合多孔体であり、
請求項6は、
前記繊維状リン酸カルシウムがアパタイトウィスカーであることを特徴とする前記請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機−無機複合多孔体であり、
請求項7は、
有機物を溶媒に溶解してなる溶媒溶液と、水溶性高分子及び水溶性高分子凝結剤と、を混合して混合液を得る工程と、前記混合液を撹拌しつつ、前記混合液中の溶媒成分を除去する工程とからなることを特徴とする繊維状有機物の製造方法であり、
請求項8は、
前記水溶性高分子がポリビニルアルコールであることを特徴とする前記請求項7に記載の繊維状有機物の製造方法であり、
請求項9は、
前記有機物が生分解性有機物である前記請求項7又は8に記載の繊維状有機物の製造方法であり、
請求項10は、
前記生分解性有機物が、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、及びポリカプロラクトンより成る群から選択される少なくとも一種の重合体、及び/又は、乳酸、グリコール酸及びカプロラクトンよりなる群から選択される少なくとも一種のモノマーを用いて得られる共重合体を含むことを特徴とする前記請求項9に記載の繊維状有機物の製造方法であり、
請求項11は、
前記水溶性高分子凝結剤が縮合リン酸塩及び/又は硫酸塩を含むことを特徴とする前記請求項7〜10のいずれか一項に記載の繊維状有機物の製造方法であり、
請求項12は、
前記縮合リン酸塩が、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、及びヘキサメタリン酸ナトリウムより成る群から選択される少なくとも一種を含むことを特徴とする前記請求項11に記載の繊維状有機物の製造方法であり、
請求項13は、
前記溶媒が塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、及び、酢酸エチルより成る群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする前記請求項7〜12のいずれか一項に記載の繊維状有機物の製造方法であり
請求項14は、
繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとを混合し、繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムの少なくとも一部とを溶着により接合させることを特徴とする有機−無機複合多孔体の製造方法であり、
請求項15は、
前記溶着が繊維状有機物の融解により達成されてなることを特徴とする前記請求項14に記載の有機―無機複合多孔体の製造方法であり、
請求項16は、
前記繊維状リン酸カルシウムがアパタイトウィスカーであることを特徴とする請求項14又は15に記載の有機−無機複合多孔体の製造方法であり、
請求項17は、
前記繊維状有機物が生分解性樹脂であることを特徴とする請求項14〜16のいずれか一項に記載の有機−無機複合多孔体の製造方法であり、
請求項18は、
前記生分解性有機物が、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、及びポリカプロラクトンより成る群から選択される少なくとも一種の重合体、及び/又は、乳酸、グリコール酸及びカプロラクトンよりなる群から選択される少なくとも一種のモノマーを用いて得られる共重合体を含むことを特徴とする前記請求項17に記載の有機−無機複合多孔体の製造方法であり、
請求項19は、
前記繊維状有機物が前記請求項7〜13のいずれか一項に記載の製造方法で得られた繊維状有機物であることを特徴とする前記請求項14〜18のいずれか一項に記載の有機−無機複合多孔体の製造方法であり、
請求項20は、
前記アパタイトウィスカーが、80〜250℃でオルトリン酸とプロトンとを生成するリン酸カルシウムゲル化合物を、水及び親水性有機溶媒の少なくとも一方を含む溶媒に、分散させて分散液を得る分散工程と、密閉容器内で前記分散液を80〜250℃に加熱する加熱工程とを有し、加熱前の分散液のpHを9以下とし、加熱後の分散液のpHを3.9〜9にすることで得られたアパタイトウィスカーであることを特徴とする前記請求項16〜19のいずれか一項に記載の有機−無機複合多孔体の製造方法であり、
請求項21は、
前記繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとの混合物に可溶性粒子を添加することを特徴とする請求項14〜20のいずれか一項に記載の有機−無機複合多孔体の製造方法であり、
請求項22は、
繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとの少なくとも一部を溶着により接合させた後に、前記可溶性粒子を溶媒により除去することを特徴とする請求項21に記載の有機−無機複合多孔体の製造方法であり、
請求項23は、
前記可溶性粒子が、水溶性多糖類及び/又は水溶性無機塩類であることを特徴とする請求項21または22に記載の有機−無機複合多孔体の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の有機−無機複合体多孔体は、繊維状リン酸カルシウムと繊維状有機物とを含み、繊維状有機物及び繊維状リン酸カルシウムの少なくとも一部とを絡み合わせ、更には、その絡み合いの一部を接合してなるので、気孔の内表面や有機−無機複合多孔体の表面に有機−無機複合多孔体に含有されている殆どの繊維状リン酸カルシウムが高い露出度で露出した状態で存在することになり、したがって、有機−無機複合多孔体に含まれている繊維状リン酸カルシウムの露出度が高く、しかも、気孔率が高く、気孔径が1〜1000μmの範囲内に分布した気孔を含み、かつ連通性に富んだ気孔構造を有する。このような有機−無機複合体多孔体は、優れた生体活性や吸着能を有した繊維状リン酸カルシウムの露出度が高く、連通性の良い多孔体であるので、医療用途や環境材料等に利用することができる。
【0017】
前記繊維状有機物が生分解性樹脂である場合に、この有機−無機複合多孔体を生体内に補填すると、この生分解性樹脂が徐々に分解され、この有機−無機複合多孔体の大部分が生体組織に置換され、生体内の欠損部を修復する。したがって、本発明によると、生体適合性が良好であるが故に医療用途に好適な有機−無機複合多孔体を提供することができる。又、有機−無機複合多孔体は、これを環境材料等の工業材料に用いた場合には、使用後に生分解させることにより処理できるので、環境に優しい材料となる。
【0018】
また、生分解性樹脂が、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、及びポリカプロラクトンより成る群から選択される少なくとも一種の重合体、及び/又は、乳酸、グリコール酸及びカプロラクトンよりなる群から選択される少なくとも一種のモノマーを用いて得られる共重合体を含む場合には、前記重合体及び共重合体の種類を適切に選択することにより、たとえば堅いものからスポンジ状のものまで多様な性状及び性質を有する有機−無機複合多孔体を提供することができる。なお、生分解性樹脂は、これら以外の生分解性樹脂との混合物であっても良い。
【0019】
本発明によると、有機−無機複合多孔体が繊維状リン酸カルシウムを含有するので、繊維状有機物により形成された気孔の連通性を妨げること無く、繊維状リン酸カルシウムを含有させることができる。又、繊維状リン酸カルシウムが繊維状であることにより、繊維状リン酸カルシウム同士、或いは、繊維状有機物との絡み合いが良くなるので、繊維状有機物の量が少なくとも多孔体を形成させることが可能になり、繊維状リン酸カルシウムの含有量を増やすことができる。
【0020】
本発明によると、前記繊維状リン酸カルシウムとしてアパタイトウィスカーを含有する有機−無機複合多孔体を提供することができる。この有機−無機複合多孔体にあっては、アパタイトは、その結晶中のカルシウムイオンサイト、リン酸イオンサイト、又は水酸基サイトに様々なイオンを取り込むことが可能であり、それぞれ置換したイオン量や種類によりアパタイトの性質が変化するため、多孔体の目的にあったアパタイトウィスカーを含有させることができる。例えば、リン酸イオンサイト、或いは、水酸基サイトに炭酸イオンが置換した炭酸アパタイトは水酸アパタイトより生体内での溶解速度が速いために、又、水酸基サイトにフッ素イオンが置換したフッ素アパタイトは、水酸アパタイトと比較して化学的に安定であるので、生体の適用部位に適した溶解速度に制御した無機成分を含む有機−無機複合多孔体を提供することができる。又、これらのウィスカーの形態を制御することによって、選択吸着性を有した環境材料や細胞の付着や増殖に有利な生体材料とすることができる。
【0021】
本発明に係る繊維状有機物の製造方法は、有機物を溶媒に溶解してなる溶媒溶液と、水溶性高分子及び水溶性高分子凝結剤を含む水溶液とを混合して混合液を得る工程と、前記混合液を撹拌しつつ、前記混合液中の溶媒成分を除去する工程とからなることを特徴とするので、従来技術であるスプレー法や湿式紡糸法等のような特別な装置を用いることなく、有機物を容易に繊維状にすることができる。更に言うと、本発明に係る繊維状有機物の製造方法の一好適態様においては、水溶性高分子及び水溶性高分子凝結剤を含む水溶液と有機物を溶媒に溶解してなる溶媒溶液とを混合すると、溶媒溶液と水溶液とが分離した状態になるが、その後、撹拌することにより、水溶液中に溶媒溶液が球状の状態で分散するが、次第に水溶性高分子と水溶性高分子凝結剤との働きにより球状の溶媒溶液が繊維状に分散する。その後に、徐々に溶媒が水溶液中に溶解し、揮発し、除去されることにより、溶媒中に溶解していた有機物がその繊維状の形態を保ちながら析出し、その結果として水溶液中に分散してなる繊維状有機物が得られる。得られた繊維状有機物は、濾過や遠心分離等により有機物と水溶液とを分離し、分離された有機物を乾燥することにより水溶液から取り出すことができる。このように、本発明に係る繊維状有機物の製造方法によると、特別な装置を用いることなく、簡便に繊維状有機物が製造できる。そしてこの繊維状有機物は、多孔体用の原料として使用されるに限らず、その他に一般的な不繊布の原料としても使用されることができる。又、本発明の手法では、平均長さが数mm以下の範囲内、特に数μm〜数mmの範囲内にある短繊維を得ることができるので、ブロック状の材料からシート状の材料まで幅広い形状の材料用に使用することができる。又、複合体を作製する場合において、本発明のような短繊維は、他の材料と均一に混合することができるので、複合体を作するための原料としても優れている。
【0022】
この繊維状有機物の製造方法における水溶性高分子としては、水溶液中に共存する水溶性高分子凝結剤により溶媒と水溶液との界面でその高分子が凝結する限り、特に制限がなく、経済性という観点からポリビニルアルコールが好ましい。ポリビニルアルコールは、安価であり、且つ、繊維状有機物に残留した場合にも生体に対する安全性も比較的高いので添加剤として適している。
【0023】
この繊維状有機物の製造方法において、有機物が生分解性有機物であると、生体中における吸収性の良好な有機−無機複合多孔体を好適に形成することのできる繊維状有機物を製造することができる。本発明の有機−無機複合多孔体についての説明で明らかにしたように、またその説明において明らかにした同様の理由により、生分解性有機物としてポリ乳酸、ポリグリコール酸、及びポリカプロラクトンより成る群から選択される少なくとも一種の重合体、又は乳酸、グリコール酸及びカプロラクトンよりなる群から選択される少なくとも一種のモノマーを用いて得られる共重合体が好ましい。
【0024】
この繊維状有機物の製造方法において、水溶性高分子凝結剤としては、縮合リン酸塩及び/又は硫酸塩を含むのが好ましい。水溶性高分子凝結剤は、水溶液に添加した水溶性高分子を凝結させる働きがあり、水溶性高分子とこの水溶性高分子凝結剤とを添加した水溶液に有機物を溶解させた溶媒溶液を入れ、撹拌した際に、分散した溶媒溶液表面に水溶性高分子の膜を形成させる添加剤である。この水溶液高分子の膜が形成されることにより、その膜の粘性により撹拌されている溶媒溶液の形状が繊維状となり、その形状を保ったまま有機物が水溶液中に析出する。したがって、この水溶性高分子凝結剤は、繊維状有機物の製造方法に、不可欠な添加剤である。このような水溶性高分子凝結剤としては、水溶性高分子が凝結するものであれば、良いが、特に、水溶性高分子としてポリビニルアルコールを使用した場合、縮合リン酸塩及び/又は硫酸塩が、凝結作用が大きいので、好ましく、更には、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、及びヘキサメタリン酸ナトリウムより成る群から選択される少なくとも1種の縮合リン酸塩が好ましい。
【0025】
この繊維状有機物の製造方法において、前記溶媒が塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン及び酢酸エチルよりなる群から選択される少なくとも一種であると、これら溶媒は水に対して難溶性であるが、若干の溶解性を有しており、揮発温度が水よりも低いので、水溶液中に良好な分散状態でもって有機物を繊維状に析出させることができる。
【0026】
更に、本発明に係る有機−無機複合多孔体は、繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとを含み、繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムの少なくとも一部とが、絡み合っていること、更には、その一部を接合してなることを特徴とし、有機−無機複合多孔体と成り得る限り種々の製造方法により製造可能であるが、本発明の方法により有機−無機複合多孔体を製造するのが好ましい。
【0027】
本発明に係る有機−無機複合多孔体の製造方法によると、繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとを混合し、繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムの少なくとも一部とを溶着により接合させることにより、上記の有機−無機複合多孔体を容易に製造することができる。
【0028】
前記溶着としては、前記繊維状有機物を溶解することのできる溶媒中に、絡み合った繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとを浸漬することにより前記繊維状有機物の表面を一部溶解し、繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとの接点において表面が溶解した繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとを溶着する方法、及び繊維状有機物の表面の一部を加熱により溶融することにより繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとを接合させる溶着方法等を挙げることができ、これらの中でも加熱による溶着方法が好ましい。加熱することにより繊維状有機物の表面の一部を溶融することにより繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとを接着する溶着方法(以下において、この方法を加熱溶着方法と称することがある。)は、加熱手段を適宜に選択することにより実現可能であるから、簡易で好適な手法である。
【0029】
本発明に係る有機−無機複合多孔体の製造方法において、繊維状リン酸カルシウムを用いることにより、繊維状リン酸カルシウムと繊維状有機物とが絡み合った混合物を容易に得ることができ、より容易に連通性の高い有機−無機複合多孔体を得ることができる。又、繊維状リン酸カルシウムと繊維状有機物の接点も多くなるため、有機−無機複合多孔体中に繊維状リン酸カルシウムを担持することが容易となり、繊維状リン酸カルシウムの含有量を増加させることができる。
【0030】
更に、繊維状リン酸カルシウムとしてアパタイトウィスカーを選択すると、そのアパタイトウィスカーの結晶内に各種イオンを置換させ、アパタイトの性質を変化させることができるので、その置換イオンの種類や含有量を適切に選択することにより、生体中における吸収速度等を調節した有機−無機複合多孔体等を製造することができる。更に、本製造方法では、繊維状有機物同士、或いは、繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとが溶着する程度の熱処理となるため、従来技術にあるような焼結温度に比べて遙かに低く、繊維状リン酸カルシウムとしてアパタイトを用いた場合にもアパタイトが分解することなく、有機−無機複合多孔体を製造することができる。
特に、前記アパタイトウィスカーが、80〜250℃でオルトリン酸とプロトンとを生成するリン酸カルシウムゲル化合物を、水及び親水性有機溶媒の少なくとも一方を含む溶媒に、分散させて分散液を得る分散工程と、密閉容器内で前記分散液を80〜250℃に加熱する加熱工程とを有し、加熱前の分散液のpHを9以下とし、加熱後の分散液のpHを3.9〜9にすることを内容とする製造方法によると、得られるアパタイトウィスカーは、その平均長さが10μm以上の比較的に大型のウィスカーであり、このような大型のアパタイトウィスカーを採用すると、平均気孔径が小さくても1μmであり、特に1μm〜100μmの範囲内のいずれかにある連通気孔を有する有機−無機複合多孔体を容易に製造することができるといった利点がある。
【0031】
この有機−無機複合多孔体の製造方法において、繊維状有機物が生分解性有機物であると、生体中における吸収性の良好な有機−無機複合多孔体を製造することができる。特に、本発明の有機−無機複合多孔体についての説明で明らかにしたように、またその説明において明らかにした同様の理由により、生分解性有機物としてポリ乳酸、ポリグリコール酸、及びポリカプロラクトンより成る群から選択される少なくとも一種の重合体、又は乳酸、グリコール酸及びカプロラクトンよりなる群から選択される少なくとも一種のモノマーを使用して得られる共重合体が好ましい。
【0032】
又、ここでの繊維状有機物として、上記の繊維状有機物の製造方法を用いることによって、特別な装置を用いることなく簡便に有機−無機複合多孔体を製造することができる。更に、上記製造方法において、発泡剤や可溶性粒子等の気孔形成剤を併用して本発明の「繊維状リン酸カルシウムと繊維状有機物とを含み、繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムの少なくとも一部とが、絡み合っていることを特徴とする、更にはその一部が接合していることを特徴とする有機−無機複合多孔体」を作製することができる。特に、気孔形成剤として可溶性粒子を使用する方法は、簡便に数十μm〜数mmの気孔を形成させることができるので、気孔径及び気孔率等の調整に適している。これは、可溶性粒子と繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとの混合物を熱処理等により繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムの一部とを接合させた後に、実質的に可溶性粒子のみが溶解する溶媒に浸漬して可溶性粒子のみを溶出させることにより気孔を形成させる方法である。このようにして得られた多孔体は、気孔形成剤で形成された気孔間の骨格部に繊維状リン酸カルシウムと繊維状有機物とで形成されたメッシュ構造を有しているので、これらの気孔間の連通性が非常に優れた材料となる。又、それぞれ気孔形成剤で形成された気孔径、及びメッシュ構造の気孔径は、それぞれ制御が可能であるので、用途に応じた気孔径に制御することができる。気孔形成剤で形成された気孔径は、可溶性粒子の粒子径を調整することにより、制御することができる。又、メッシュ構造の気孔径は、繊維状リン酸カルシウムと繊維状有機物との形状や大きさ、更には、多孔体成形時の圧力によって制御することができる。例えば、生体材料としては、細胞等の生体組織等が浸入しやすい数十μm以上の気孔と、材料内部での細胞等の生体組織等の成長を促進するために養分を材料内部に浸透させるための数μm〜数十μmの気孔とを骨格部に持った材料が有用とされており、本発明は、このような気孔を有した材料を提供することができる。又、本発明品は、そのメッシュ構造に繊維状リン酸カルシウムの特性を効率良く活かせるように複合化させることができるので、その骨格部のメッシュ構造の濡れ性が良く、養分の浸透性に優れた材料となり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明を実施するための最良の形態を以下に記述するが、本発明は以下の記述内容によって限定的に解釈されるべきではなく、明示の記載がなくても以下の記述と技術常識とに基づいて容易に想到乃至理解可能な範囲もまた本発明の範囲である。
【0034】
(1)有機−無機複合多孔体
本発明に係る有機−無機複合多孔体は、繊維状リン酸カルシウムと繊維状有機物とを含み、繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムの少なくとも一部とが、絡み合ってなる。更には、絡み合いの一部が接合している。
【0035】
本発明における繊維状有機物は、生体材料、カラム等の充填材料、及び汚染物質の吸着を目的とした環境材料等に使用可能で、繊維状をなす有機材料であればよい。生体材料用の繊維状有機物として例えば生分解性樹脂を挙げることができる。この生分解性樹脂は、これを使用した有機−無機複合多孔体を生体内に埋め込んだ場合、生体により吸収され、また骨等が形成される。
【0036】
生分解性樹脂の好適例としては、特に、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、及びポリカプロラクトンよりなる群から選択される少なくとも1つ以上の重合体、又は乳酸、グリコール酸及びカプロラクトンよりなる群から選択される少なくとも一種のモノマーを使用して得られる共重合体が好ましい。また、本発明においては、繊維状有機物として、前記重合体及び共重合体のいずれか1種を単独で使用することもできるし、また前記重合体及び共重合体のいずれか少なくとも2種を併用することもできる。
【0037】
これらの生分解性樹脂は、それぞれ生分解速度及び強度等が異なるため、使用する目的に応じて選択することができる。又、使用する生分解性樹脂の種類及び平均分子量等によって、硬い有機−無機複合多孔体からスポンジ状の柔らかい有機−無機複合多孔体を作製することができる。
【0038】
前記繊維状有機物の平均繊維長は、通常短くても10μmであり、特に10〜10000μmであるのが、好ましい。この繊維状有機物の平均繊維長は、繊維状有機物を電子顕微鏡や光学顕微鏡を用いて撮影することにより容易に測定することができる。又、繊維状有機物は、球状や不定形状等の有機物と共に使用することもでき、その場合、繊維状有機物とその他の有機物との合計に対して繊維状有機物が50質量%以上、好ましくは80質量%以上含まれていることが望ましい。又、繊維の径は、均一でなくても良く、径が不均一であることにより本発明の効果が無くなるものでない。そのため、本発明における繊維は、一方の端が丸くて太く、他端が細く尖った形状をしていることもあり、このような繊維も繊維状としている。
【0039】
前記生分解性樹脂等である繊維状有機物の有機−無機複合多孔体に対する含有量は、通常10〜99質量%であり、特に20〜99質量%であり、これらの範囲から適宜に含有量が決定される。繊維状有機物の含有量が前記下限値よりも少ないと、この有機−無機複合多孔体の強度が低下し、ハンドリング性を低下させることがある。
【0040】
本発明における繊維状リン酸カルシウムは、水酸アパタイト、炭酸アパタイト、フッ素アパタイト、リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム水和物、α型リン酸三カルシウム、β型リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、第一リン酸カルシウム、第一リン酸カルシウム水和物のいずれか一種以上でも良い。これらのリン酸カルシウムは、各化合物により溶解性が異なるため、例えば、生体材料として用いる場合には、吸収置換速度を調節するために、これらの中から選択し、使用することができる。
【0041】
繊維状リン酸カルシウムの形態は、通常、繊維状である。維状リン酸カルシウムとしては、アパタイトウィスカーが好ましい。
【0042】
アパタイトウィスカーは、その結晶中のカルシウムイオンサイト、リン酸イオンサイト、又は水酸基サイトに様々なイオンを取り込むことが可能であり、それぞれ置換したイオン量や種類によりアパタイトウィスカーの性質が変化する。特に、リン酸イオンサイト、及び/又は、水酸基サイトに炭酸イオンが置換した炭酸アパタイトは水酸アパタイトより生体内での溶解速度が速いために、又、水酸基サイトにフッ素イオンが置換したフッ素アパタイトは、水酸アパタイトと比較して化学的に安定であるので、生体の適用部位に適した溶解速度に制御した無機成分を含む有機−無機複合多孔体を提供することができる。また、アパタイト結晶は、各結晶面においてその吸着特性が異なるために、使用するアパタイトウィスカーの形態を制御することにより各結晶面を選択的に多く露出することができ、有機−無機複合多孔体の特性を制御することが可能になる。つまり、選択吸着性を有した環境材料や細胞の付着や増殖に有利な特性を有した生体材料とすることができる。
【0043】
この繊維状リン酸カルシウム例えばアパタイトウィスカーの長さは、特に限定しないが、有機−無機複合多孔体がより連通性に富んだ気孔構造を有するようにするためには、その平均長軸長さが短くても10μmであるのが好ましく、特に10〜1000μmの範囲内であるのが好ましい。又、この繊維状リン酸カルシウムの平均アスペクト比は、特に限定しないが、1〜1000であることが好ましく、特に5〜500であるのが好ましい。なお、繊維状リン酸カルシウムの平均長軸長及び平均アスペクト比は、電子顕微鏡や光学顕微鏡での観察により容易に測定することができる。
【0044】
このような繊維状リン酸カルシウムは、バインダー等と混合したリン酸カルシウムを押出成形し、焼結させる方法や水熱法等を使用することにより好適に製造されることができるが、これらに限らない。また、水熱法で得られたアパタイトウィスカーに熱処理を行って得られるリン酸三カルシウムファイバーを本発明における繊維状リン酸カルシウムとして好適に使用されることもできる。
好適な繊維状リン酸カルシウム例えばアパタイトウィスカーは、80〜250℃でオルトリン酸とプロトンとを生成するリン酸カルシウムゲル化合物を、水及び親水性有機溶媒の少なくとも一方を含む溶媒に、分散させて分散液を得る分散工程と、密閉容器内で前記分散液を80〜250℃に加熱する加熱工程とを有し、加熱前の分散液のpHを9以下とし、加熱後の分散液のpHを3.9〜9にすることにより製造されることができる。80〜250℃でオルトリン酸とプロトンとを生成するリン酸カルシウムゲル化合物を採用するのは、比較的高効率に平均長軸長さが短くても10μmであり、特に10μm〜100μmの範囲内のいずれかにあるアパタイトウィスカーを簡単に得ることができるためである。前記親水性有機溶媒として、メタノール、及びエタノール等の炭素数が1〜3の低級アルコール、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、及びメチルエチルエーテル等のエーテル類、アセトン等の水溶性ケトン類等を挙げることができる。前記加熱工程において、前記分散液を前記温度範囲に過熱するのは、リン酸カルシウムゲルを分解させ、オルトリン酸とプロトンを生成させるためである。また、加熱前の分散液のpHを9以下にするのは、それ以上高いpHの場合、平均長軸長さが短くても10μmであり、特に10μm〜100μmの範囲内のいずれかにあるアパタイトウィスカーを得ることが出来ないためである。加熱後の分散液のpHを前記範囲にするのは、pHが3.9より低い場合、副生成物としてリン酸水素カルシウムが多量に生成してしまうためであり、又、pHが9より高い場合、平均長軸長さが短くても10μmであり、特に10μm〜100μmの範囲内のいずれかにあるアパタイトウィスカーを得ることが出来なくなるためである。
リン酸カルシウムゲル化合物としては、縮合リン酸カルシウムゲルを用いることが望ましく、80〜250℃で加水分解し、オルトリン酸とプロトンを生成する。特に、縮合リン酸カルシウムゲルとしては、トリポリリン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウムを用いるのが良い。又、カルシウムとリンのモル比を調整するために、過剰なカルシウムイオンや縮合リン酸イオン等がゲルに含まれていても良い。
【0045】
アパタイトウィスカー等の繊維状リン酸カルシウムの有機−無機複合多孔体に対する含有量は、通常1〜90質量%であり、好ましくは1〜80質量%であり、これらの範囲内で特に限定がなく、本発明の有機−無機複合多孔体においては連通気孔を有することにより繊維状リン酸カルシウムの表面が殆ど露出するので、繊維状リン酸カルシウムの含有量が少なくても効果的に生体活性や吸着能を付与することができる。
【0046】
本発明に係る有機−無機複合多孔体は、上記の特徴から連通気孔を有する。連通気孔を有するこの有機−無機複合多孔体の気孔率は30%以上であり、好適には50〜95%であり、特に好適には60〜90%である。またこの有機−無機複合多孔体の気孔径は、通常、1〜1000μmの範囲内に分布している。ここで、前記気孔率は、多孔体の外形寸法と重量から気孔率を算出することができ、前記気孔径は、例えば水銀ポロシメータにより測定することができる。
【0047】
本発明に係る有機−無機複合多孔体を生体材料として使用する場合には、この有機−無機複合多孔体は、その気孔径分布として、その気孔の体積割合で5割以上が10〜1000μmの範囲に分布し、又、気孔率が50%以上であるのが、好ましい。ここで、気孔径分布は、例えば水銀ポロシメータにより測定することができる。
【0048】
本発明に係る有機−無機複合多孔体はその破断面をSEMで観察すると、特にアパタイトウィスカーを用いた場合、繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとが互いに絡み合っており、その一部の接点で接合している。つまり、繊維状有機物が、リン酸カルシウムの少なくとも一部と絡み合い、更には、その一部を接合させてなる多孔体を形成しているので、連通した気孔構造を有し、且つ、気孔内部及び多孔体表面に繊維状リン酸カルシウムが露出している。具体的に言うと、繊維状リン酸カルシウムが気孔内表面及び多孔体表面に露出している部分が多いため、生体親和性に優れている。更には、繊維状リン酸カルシウムが親水性を有するために水に対する濡れ性が良く、且つ、連続した連通気孔を有するので、生体内の細胞や組織が侵入しやすく、生体に馴染みやすい。従って、本発明の多孔体は、生体材料として非常に有用である。又、吸着能が高い繊維状リン酸カルシウムを用いることにより、繊維状リン酸カルシウムの吸着性能を活かした、且つ、吸着物質を含むような液体や気体の浸透性が良い連通気孔を有した材料となるため、環境材料としても有用である。
【0049】
つまり、このような独特の構造を有する有機−無機複合多孔体は、生体材料として、充填材料として、また環境材料として好適である。
【0050】
(2)繊維状有機物の製造方法
繊維状有機物は、本発明に係る繊維状有機物の製造方法に従って、有機物を溶媒に溶解してなる溶媒溶液と、水溶性高分子及び水溶性高分子凝結剤を含む水溶液とを混合して混合液を得、次いで前記混合液を攪拌した後に、混合液中の溶媒成分を除去することにより、製造することができる。このような製造方法によると、従来の公知の製造方法、例えばスプレー法や湿式紡糸法等により製造させる方法よりも簡便で特別な装置を用いることなく製造することができる。
【0051】
このような従来にない簡便な繊維状有機物の製造方法は、多孔体の製造用原料として以外に、シート状にして不繊布の製造用原料として用いることができる。
【0052】
前記有機物としては、特に、生体材料である歯や骨の補填材料、カラム等の充填材料、汚染物質の吸着を目的とした環境材料として利用可能な有機物であればよく、生体材料用としては特に生分解性有機物が好ましい。
【0053】
前記生分解性有機物としては、特に、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、及びポリカプロラクトンよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体、又は、乳酸、グリコール酸及びカプロラクトンよりなる群から選択される少なくとも一種のモノマーを繰り返し単位として含有する共重合体を挙げることができる。これらは既述した理由により好適である。
【0054】
有機物を溶媒に溶解してなる溶媒溶液を調製するのに使用される溶媒としては、水に僅かに溶解する溶媒であり、且つ、水よりも揮発温度が低い溶媒を好適例としてあげることができる。この溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン及び酢酸エチルよりなる群から選択される少なくとも一種を挙げることができる。
【0055】
この溶媒溶液における有機物の濃度としては、通常、飽和濃度以下である。
【0056】
この水溶液は、水溶性高分子を含有することが、必要である。水溶液に水溶性高分子が含有されていると、水溶液に含まれる水溶性高分子凝結剤とこの水溶性高分子の効果により、繊維状の有機物を析出させることができる。
【0057】
水溶性高分子としては、水溶液中に共存する水溶性高分子凝結剤により溶媒と水溶液との界面でその高分子が凝結する限り、特に制限がなく、経済性という観点から特にポリビニルアルコールが好ましい。ポリビニルアルコールは、安価であり、且つ、繊維状有機物に残留した場合にも生体に対する安全性も比較的高いため添加剤として適している。水溶性高分子の水溶液における含有量は、使用する水溶性高分子の種類や分子量により最適量が異なるため、特に制限しないが、通常0.001質量%〜10質量%が好ましい。
【0058】
前記水溶性高分子凝結剤としては、縮合リン酸塩及び/又は硫酸塩を含む物であるのが好ましい。特に、縮合リン酸ナトリウムや硫酸ナトリウムを使用するのが好ましい。水溶性高分子凝結剤の中には、水溶液中のpHにより効果が変わるものがあるので、水溶性高分子凝結剤を添加した水溶液にpH調節剤として、酸やアルカリを加えても良い。例えば、硫酸ナトリウムの場合は、アルカリにすることにより効果が発揮されるため、硫酸ナトリウムとともに水酸化ナトリウム等のアルカリを添加することが好ましい。
【0059】
前記縮合リン酸塩としては、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、及びヘキサメタリン酸ナトリウム等を挙げることができる。水溶液に調製される縮合リン酸塩としては前記縮合リン酸塩の一種であっても、二種以上であっても良い。
【0060】
水溶液における縮合リン酸塩の濃度としては、通常、0.001〜1Mである。濃度が低い場合には、有機物を繊維状にするといった効果が無く、又、濃度が高すぎると縮合リン酸塩の沈殿物が生成することがあって好ましくないことがある。
【0061】
有機物を溶媒に溶解してなる溶媒溶液と水溶性高分子及び水溶性高分子凝結剤を含む水溶液との混合割合として、前記溶媒溶液の容積と前記水溶液の容積との比(容積比)は、通常、1:1〜1:500が好ましい。溶媒や有機物等の種類によって異なるが、このような容積比で前記溶媒溶液と水溶液とを混合すると、水溶液中に有機物が良好な繊維状となって析出させやすくなる。
【0062】
本発明の方法においては、前記溶媒溶液と前記水溶液とを、通常では常温下で混合する。もっとも、必要に応じて加温や冷却しながら前記溶媒溶液と前記水溶液とを混合しても良い。
【0063】
前記溶媒溶液と前記水溶液とを攪拌下に混合しても、また、混合してから攪拌してもよい。いずれにしても前記溶媒溶液と前記水溶液とを混合してから十分に攪拌するのが良い。攪拌すると、水溶液中に有機物の溶解した溶媒が分散され、分散された状態でその溶媒のみが溶媒と水溶液との界面で徐々に溶解し、水よりも揮発温度の低い溶媒が水面から揮発していくことにより、溶媒溶液に溶解していた有機物の濃度が高まり、最終的には有機物が繊維状となって水溶液中に析出する。撹拌中は、常圧下又は減圧下に、加温しながら又は常温下に、行なわれる。撹拌には、スターラー等の撹拌装置を用いることができ、その撹拌速度により得られる繊維状有機物の長さを調節することができる。撹拌速度が速いほど、短い繊維状有機物が得られ、撹拌速度が遅いほど、長い繊維状有機物が得られる。
【0064】
十分に攪拌し、溶媒が揮発した後に、水溶液に分散した繊維状有機物を濾過や遠心分離等により分離し、乾燥機等を用いて乾燥させる。有機物に生分解性樹脂を用いる場合には、加温により分解することがあるので、減圧乾燥を行うのが好ましい。
【0065】
前記繊維状有機物は、化学一般の洗浄手法乃至精製手法に従って精製することもできる。例えば、繊維状有機物を純水で十分に洗浄した後、濡れた繊維状有機物の乾燥を行うことにより、表面に付着した水溶性高分子等が除去された繊維状有機物が得られる。
【0066】
(3)有機−無機複合多孔体の製造方法
本発明の有機−無機複合多孔体の製造方法は、繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとを混合し、繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムの少なくとも一部とを絡み合わせることを特徴とし、またその絡み合わせる状態の一つの態様が接合させる状態であることを特徴とし、容易に本発明の有機−無機複合多孔体を製造することができる。その有機−無機複合多孔体は、繊維状リン酸カルシウムが気孔内表面及び多孔体表面に露出し、高い連通性を有した気孔構造を有する。
【0067】
又、この有機−無機複合多孔体の製造方法においては、繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとを接合させる方法としては、本発明の製造方法のように加圧下、或いは、常圧下で加熱することにより接合させる部位を熔融させて相互に固着させる方法すなわち溶着方法が特に好ましいが、相互に接合させようとする部位を接着剤となる有機物で固着させる方法等も用いることができる。この溶着方法によると、繊維状有機物同士の接合も生じる。
【0068】
上記したような熱での溶着方法以外に、繊維状有機物を溶解可能な溶媒に繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとの混合物を繊維状有機物の表面が溶解する程度に接触させ、次いで乾燥することにより、繊維状リン酸カルシウムと繊維状有機物とを接合させる方法を挙げることができる。この場合においても、繊維状有機物同士の接合が生じる。溶媒により繊維状有機物の表面を溶解させることによる繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとの接合及び繊維状有機物同士の接合を実現するこの方法は、繊維状有機物の表面を溶媒により一部溶解しているので、溶媒を使用する溶着方法であると、言える。なお、溶媒を使用する溶着方法においては、使用する溶媒は繊維状有機物の表面を溶かす程度の量であればよく、繊維状有機物の種類に応じて溶媒の種類及びその使用量を適宜に選択することができる。
【0069】
本発明に係る有機−無機複合多孔体の製造方法によると、繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとを混合し、加熱成形することにより、気孔内の表面、及び有機−無機複合多孔体の表面等に有機−無機複合多孔体に含有されている殆どの繊維状リン酸カルシウムが露出した状態で存在することになり、有機−無機複合多孔体に含まれている繊維状リン酸カルシウムの露出度が高く、しかも、気孔率が高く、気孔径が10〜1000μmの範囲内に分布した気孔を含んで連通性に富んだ気孔構造を有する本発明の有機−無機複合多孔体を製造することができる。
【0070】
前記繊維状有機物と前記繊維状リン酸カルシウムとの混合比率は、前記有機−無機複合多孔体における繊維状有機物の含有割合及び前記有機−無機複合多孔体における繊維状リン酸カルシウムの含有割合が前記した範囲内になるように、この有機−無機複合多孔体の用途に応じて適宜に決定される。
【0071】
前記繊維状有機物と前記繊維状リン酸カルシウムとの混合物は、単離された繊維状有機物と単離された繊維状リン酸カルシウムとを混合することにより得ることができるが、本発明の繊維状有機物の製造方法により製造された繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとを混合して得られる混合物が好ましい。
【0072】
繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとの混合方法は、特に制限しないが、例えば、繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとを純水中に分散させ、得られる分散液を濾過し、濾別された固形分を乾燥させることにより混合物を得ることができる。この時の分散方法としては、スターラー及び超音波処理等を採用することができる。又、繊維状リン酸カルシウムと繊維状有機物との組成比は、繊維状リン酸カルシウムの量が多くなるほど、生体親和性が向上するが、繊維状有機物が繊維状リン酸カルシウム又は他の繊維状有機物と接合する接点が少なくなるため強度が低下する。逆に、繊維状リン酸カルシウムの量が少なくなるほど、有機−無機複合多孔体の強度は高くなるが、生体親和性が低下していく。そのため、使用する生体内の場所に応じて組成比を調整する必要がある。
【0073】
更に、有機−無機複合多孔体作製時に、発泡剤、及び可溶性粒子等の気孔形成剤を用いて、気孔率及び気孔径を制御しても良い。特に、その操作の簡便さから可溶性粒子を使用することが好ましい。水等に可溶な粒子、すなわち可溶性粒子を繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとの混合物に添加し、加熱成形し、その後、水等の溶媒に浸す等の操作を行い、可溶性粒子のみを溶解させ、気孔を形成させる方法が挙げられる。このようにして得られた有機−無機複合多孔体は、気孔形成剤で形成された気孔間の骨格部に繊維状リン酸カルシウムと繊維状有機物で形成されたメッシュ構造を有しているので、これらの気孔間の連通性が非常に優れた材料となる。又、それぞれ気孔形成剤で形成された気孔径、及びメッシュ構造の気孔径は、それぞれ制御が可能であるので、用途に応じた気孔径に制御することができる。気孔形成剤で形成された気孔径は、可溶性粒子の粒子径を調整することにより、又、メッシュ構造の気孔径は、繊維状リン酸カルシウムと繊維状有機物の形状や大きさ、更には、多孔体成形時の圧力によって制御することができる。
【0074】
本発明に使用する溶媒としては、有機-無機複合多孔体を構成する繊維状有機物や繊維状リン酸カルシウムを実質的に溶解せず、且つ可溶性粒子を溶解することのできる溶媒を挙げることができる。溶媒としては、水、エタノール、メタノール等を挙げることができ、中でも水が好ましい。また、好適な可溶性粒子としては、前記溶媒特に水に可溶性の粒子を挙げることができる。前記可溶性粒子としては、例えば、水溶性多糖類及び/又は水溶性無機塩類を好適例としてあげることができる。ここで、水溶性多糖類としては、サッカロース、デキストラン、及びデキストラン硫酸塩等を挙げることができる。水溶性無機塩類としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のハロゲン化アルカリ金属、及び塩化カルシウム等のハロゲン化アルカリ土類金属等を挙げることができる。
【0075】
可溶性粒子の平均粒径は、小さすぎると気孔形成剤としての役割を果たさず、又、大きすぎると均一に気孔を分散させることが困難となるため、平均粒径を10μm〜2mmの範囲内にするのがより好ましい。又、可溶性粒子の添加量は、骨格となるメッシュ構造の気孔率により最適な量に設定する必要があるので特に限定されないが、有機-無機複合多孔体の最終的な気孔率が30%以上になるような量が好ましい。
【0076】
本発明において、繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとの混合物は、次いで加熱成形される。
【0077】
加熱温度は、繊維状有機物の種類によって相違するが、概括的にいうと繊維状有機物の軟化温度以上分解温度以下であり、通常50〜300℃に、特に100〜250℃が好ましい。
【0078】
このような加熱温度範囲で加熱すると繊維状有機物同士、或いは、繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとの接触部において繊維状有機物の熔融により接触部が接合し、容易に連通した気孔構造を有した有機−無機複合多孔体を製造することができる。この点において、本発明の方法は、繊維状リン酸カルシウム等のセラミックスを焼成する温度と比較して、低温で有機−無機複合多孔体を製造することができるので、添加する繊維状リン酸カルシウムの分解を容易に回避することができ、コスト面でも有利である。
【0079】
加熱温度は、その温度が低い場合には、繊維状有機物同士、或いは、繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムが熔融による接合をしないことがあり、したがって有機−無機複合多孔体の強度が極端に低下し、ハンドリング性が悪くなることがあり、又、過度に高い場合には、繊維状有機物全体が溶融してしまうことがあり、気孔を維持することができなくなることがある。したがって、加熱温度は、繊維状有機物の種類や分子量等に応じて決定することができる。又、加熱は、成形と同時に行っても良いし、成形後に行っても良く、成形時には加圧しても良い。
【0080】
成形は、この有機−無機複合多孔体の用途に応じて所望の金型に繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとの混合物を充填し、前記加熱温度に加熱し、場合によっては更に加圧することにより、行われる。
【0081】
また、本発明で使用する繊維状リン酸カルシウムとしては、水酸アパタイト、炭酸アパタイト、フッ素アパタイト、リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム水和物、α型リン酸三カルシウム、β型リン酸カルシウム、リン酸四カルシウム、第一リン酸カルシウム、第一リン酸カルシウム水和物の少なくとも一種を挙げることができる。これらの繊維状リン酸カルシウムは、各化合物により溶解性が異なるため、例えば、生体材料として用いる場合には、吸収置換速度を調節するために、これらの中から選択し、使用することができる。
【0082】
繊維状リン酸カルシウムの形態は、通常、繊維状である。これらの中でも繊維状リン酸カルシウムとして、アパタイトウィスカーが好ましい。繊維状であることによって、繊維状有機物との絡み合いが良好となり、容易に連通気孔を有した有機−無機複合多孔体を製造することができる。又、繊維状リン酸カルシウムと繊維状有機物との接合点も多くなり、又、繊維状リン酸カルシウム同士の絡み合い、繊維状有機物同士の絡み合い、及び繊維状リン酸カルシウムと繊維状有機物との絡み合いにより、有機−無機複合多孔体中に繊維状リン酸カルシウムを担持することが容易となり、繊維状リン酸カルシウムの含有量を増加させることができる。更には、繊維状リン酸カルシウムの含有量を多くすることにより、連通性を妨げられることなく、優れた気孔構造を有した有機−無機複合多孔体とすることができる。
【0083】
本発明の有機−無機複合多孔体及びその製造方法で得られた有機−無機複合多孔体は、骨形成因子等の薬剤を担持させ、ドラッグデリバリーシステム用担体として使用しても良く、又、細胞等を担持や培養した後に使用するような再生医療用担体として使用しても良い。又、本発明の有機−無機複合多孔体は、顆粒状やブロック状等に適用部位に応じた形状で使用することもできる。
【実施例】
【0084】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は実施例の内容に限定するものではない。
【0085】
(実施例1:繊維状有機物の製法)
塩化メチレン15mLに平均分子量16万のポリ乳酸1gを溶解させて溶媒溶液を調製し、この溶媒溶液を、0.1Mの濃度となるトリポリリン酸ナトリウムと0.01質量%の濃度となる平均分子量22000のポリビニルアルコールとを含有してなる水溶液500mLに、添加した。この混合液を24時間撹拌しつつ、混合液中に分散した塩化メチレンを揮発させることで、塩化メチレンを除去し、塩化メチレンに溶解していたポリ乳酸を水溶液中に析出させた。その後に、この水溶液を濾過し、純水で洗浄し、減圧デシケーター中で乾燥させた。得られたポリ乳酸は、長さが約100μm〜2mmの繊維状であった。
【0086】
(実施例2:繊維状有機物の製法)
塩化メチレン15mLに平均分子量16万のポリ乳酸1gを溶解させて溶媒溶液を調製し、この溶媒溶液を、0.1Mの濃度となるトリポリリン酸ナトリウムと0.01質量%の濃度となる平均分子量1500のポリビニルアルコールとを含有してなる水溶液500mLに、添加した。この混合液を24時間撹拌しつつ、混合液中に分散した塩化メチレンを揮発させることで、塩化メチレンを除去し、塩化メチレンに溶解していたポリ乳酸を水溶液中に析出させた。その後に、この水溶液を濾過し、濾別された固形分を純水で洗浄し、洗浄後の固形分を減圧デシケーター中で乾燥させた。かくして得られた繊維状ポリ乳酸は、平均長さが約1mmであった。
【0087】
(実施例3:繊維状有機物の製法)
塩化メチレン15mLに平均分子量16万のポリ乳酸1gを溶解させて溶媒溶液を調製し、この溶媒溶液を、0.2Mの濃度となる硫酸ナトリウムと0.01質量%の濃度となる平均分子量22000のポリビニルアルコールとpH調節剤としての水酸化ナトリウムとを含有してなる水溶液500mLに、添加した。この時の水溶液のpHは9であった。この混合液を24時間撹拌しつつ、混合液中に分散した塩化メチレンを揮発させることで、塩化メチレンを除去し、塩化メチレンに溶解していたポリ乳酸を水溶液中に析出させた。その後に、この水溶液を濾過し、濾別された固形分を純水で洗浄し、洗浄後の固形分を減圧デシケーター中で乾燥させた。かくして得られた繊維状ポリ乳酸は、平均長さが約0.5mmであった。
【0088】
(比較例1)
塩化メチレン15mLに平均分子量16万のポリ乳酸1gを溶解させて溶媒溶液を調製し、この溶媒溶液を、平均分子量22000のポリビニルアルコールを0.01質量%の濃度で含有してなる水溶液500mLに、添加した。この混合液を24時間撹拌しつつ、混合液中に分散した塩化メチレンを揮発させることで、塩化メチレンを除去し、塩化メチレンに溶解していたポリ乳酸を水溶液中に析出させた。その後にこの水溶液を濾過し、濾別された固形分を純水で洗浄し、洗浄後の減圧デシケーター中で乾燥させた。かくして得られたポリ乳酸の形状は、球状や不定形の混合物であり、繊維状のポリ乳酸は得られなかった。その理由は水溶性高分子凝結剤が使用されなかったからである。
【0089】
(比較例2)
塩化メチレン15mLに平均分子量16万のポリ乳酸1gを溶解させて溶媒溶液を調製し、この溶媒溶液を、0.1Mの濃度になるようにトリポリリン酸ナトリウムを含有してなる水溶液500mLに、添加した。この混合液を24時間撹拌しつつ、混合液中に分散した塩化メチレンを揮発させることで、塩化メチレンを除去し、塩化メチレンに溶解していたポリ乳酸を水溶液中に析出させた。その後にこの水溶液を濾過し、濾別された固形分を純水で洗浄し、洗浄後の固形分を減圧デシケーター中で乾燥させた。得られたポリ乳酸の形状は、不定形であり、繊維状のポリ乳酸は得られなかった。その理由は水溶性高分子が使用されなかったからである。
【0090】
(実施例4〜8)
実施例4〜8において、繊維状ポリ乳酸は実施例1で合成したものを使用した。実施例4〜8で使用した水酸アパタイトウィスカーは次のようにして調製された。すなわち、0.025Mのトリポリリン酸ナトリウムと0.125M硝酸カルシウムと30容量%のプロパノールとを含むゲル液に硝酸を添加することにより、pHが2.4である分散液を調製し、この分散液を密閉容器内で140℃24時間処理し、次いでこの分散液を濾過し、濾別された固形分を乾燥した。加熱処理後のpHとして、濾液のpHを測定し、その値は4.1であった。このウィスカーの平均長さは、約60μmであった。これら繊維状ポリ乳酸と水酸アパタイトウィスカーを所定量づつ秤量し、エタノール中で撹拌し、濾過し、濾別された固形分を減圧乾燥し、かくして繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとの混合物を得た。この混合物を、直径6mm及び高さ5mmの型に充填し、170℃〜180℃で加熱処理を行った後、冷却し、有機−無機複合多孔体を得た。
【0091】
(実施例9〜11)
実施例9〜11において、繊維状ポリ乳酸は、実施例1で合成したものを使用した。実施例9〜11において使用した可溶性粒子は、篩い分けにて得られた355〜850μmのサッカロースである。又、実施例9〜11において使用した水酸アパタイトウィスカーは、実施例4〜8と同様の方法で得られたものである。これらを所定量づつ秤量し、エタノールにこれらを投入して得られる分散液を撹拌し、分散液を濾過し、濾別された固形分を減圧乾燥し、かくして繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムと可溶性粒子との混合物を得た。直径6mm及び高さ8mmの内容積を有する型に前記混合物を充填し、100Mpaの圧力で一軸加圧し、170〜180℃で加熱処理を行った後、前記型から取り出された加圧成形体を純水中に浸漬することにより、この加圧成形体中の可溶性粒子を溶解させた。純水から取り出した円柱体を減圧乾燥により乾燥させることにより、直径6mm、高さ8mmの円柱状の有機-無機複合多孔体を得た。
【0092】
表1に水酸アパタイトウィスカーとポリ乳酸との組成比と、得られた有機−無機複合多孔体の気孔率と、水銀ポロシメーターで測定した10μm以上の気孔の体積割合と、水の浸透時間とを示した。水の浸透時間の評価方法は、マイクロピペットで純水一滴(10μL)を有機−無機複合多孔体の表面に滴下し、その水滴が有機−無機複合多孔体の内部に完全に染み込むまでの時間を測定する方法である。
【0093】
又、実施例4〜11の有機−無機複合多孔体の破断面をSEMで観察した結果、実施例4〜11の多孔体は、SEM観察により繊維状のポリ乳酸と水酸アパタイトウィスカーとが互いに絡み合っており、その一部の接点で溶着しており、繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとが絡み合い、その少なくとも一部とが接合してなる有機−無機複合多孔体であることが確認できた。又、細かい水酸アパタイトウィスカーが繊維状ポリ乳酸の表面に溶着した状態にあることも分かった。
なお、実施例5〜8において得られた有機−無機複合多孔体のSEM写真を代表例として図2〜5に示した。又、実施例9〜11において得られた有機-無機複合多孔体の代表例として実施例11において得られた有機-無機複合多孔体の外観写真を図7に示した。可溶性粒子の添加により大きな気孔が形成されていることが分かる。なお、図7に示される有機-無機複合多孔体においては、気孔と有機-無機複合多孔体表面とのコントラストを明確にし、気孔を観察しやすくするために、有機-無機複合多孔体表面にカーボン蒸着を施した。
【0094】
(比較例3)
比較例3に使用した低結晶性アパタイトは、炭酸カルシウムとリン酸水素カルシウムとを湿式でボールミル混合し、得られた混合物を濾過し、濾別された固形分を乾燥し、乾燥物を150μmの篩通しすることにより、得られた。この低結晶性アパタイトをSEMで観察した結果、平均粒径8μmの凝集粒子であることが分かった。この低結晶性アパタイト0.1gを塩化メチレン10mLに平均分子量16万のポリ乳酸1gを溶解したポリ乳酸溶液に添加し、低結晶性アパタイトをポリ乳酸溶液に分散してなる懸濁溶媒液を得た。この懸濁溶媒液を、0.02質量%の濃度となるように平均分子量22000のポリビニルアルコールを含有してなる水溶液500mLに、添加して24時間撹拌して水溶液を得た。この水溶液を濾過し、濾別された固形分を純水で洗浄し、洗浄された固形分を減圧デシケーター中で乾燥させた。この方法により、低結晶性アパタイトを含有した球状ポリ乳酸を得た。得られた球状ポリ乳酸は、平均600μmの直径を有した。この球状ポリ乳酸を直径7mm及び高さ5mmの円板状の内容積を有する金型に充填し、充填した金型を温度170℃の乾燥機に入れ、アパタイトを10質量%含有する有機−無機複合多孔体を作製した。なお、比較例3において得られた有機−無機複合多孔体のSEM写真を代表例として図6に示した。得られた有機−無機複合多孔体は、その水の浸透性を評価した。この評価は、実施例と同様に純水を多孔体表面に滴下し、その水滴が多孔体内に完全に染み込むまでの時間を比較することにより行った。その結果、滴下後30分においても完全に水滴が有機−無機複合多孔体内に染み込まなかった。これは、この比較例3に係る有機−無機複合多孔体がリン酸カルシウムと球状のポリ乳酸とで形成されており、リン酸カルシウムが気孔内の表面に露出している割合が少ないので、滴下後30分においても完全に水滴が有機−無機複合多孔体内に染み込まなかったと推測される。
(比較例4)
比較例4では、比較例3で使用した低結晶性アパタイトを、又、実施例1で合成した繊維状ポリ乳酸を使用した。これら繊維状ポリ乳酸と低結晶性アパタイトを所定量づつ秤量し、エタノール中で撹拌し、濾過し、濾別された固形分を減圧乾燥し、かくして繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとの混合物を得た。この混合物を、直径6mm及び高さ5mmの型に充填し、170℃〜180℃で加熱処理を行った後、冷却し、有機−無機複合多孔体を得た。
【0095】
実施例1〜3、比較例1及び2を比較すると、繊維状有機物を製造するためには、水溶性高分子凝結剤である縮合リン酸塩及び硫酸ナトリウムと水溶性高分子であるポリビニルアルコールとが必要であることが分かり、実施例1〜3の操作により特別な装置を必要とせず、繊維状有機物を容易に製造することのできることが分かった。
【0096】
実施例4〜8によると、繊維状リン酸カルシウムと繊維状有機物とを混合し、加熱成型することにより、繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムが絡み合い、その少なくとも一部とを接合してなる本発明の有機−無機複合多孔体を製造できることが確認できた。又、その形状は、型の形状と同じブロック状とすることが出来たので、型の形状を選択することにより様々な形状の多孔体を製造できることが分かった。
【0097】
実施例9〜11によると、繊維状リン酸カルシウムと、繊維状有機物と、可溶性粒子であるサッカロースとを混合し、加熱成形した後、純水に浸し、乾燥することによっても、繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムが絡み合い、その少なくとも一部とを接合してなり、本発明の有機−無機複合多孔体を製造できることが確認できた。
【0098】
実施例4〜8における有機−無機複合多孔体は、繊維状リン酸カルシウムと繊維状有機物とを含み、繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムであるアパタイトウィスカーの少なくとも一部とを接合してなるので、その気孔構造は、10μm以上の気孔径の体積割合が8割以上を含む構造であり、連通性に富んだ気孔構造であった。一方、比較例4のようにリン酸カルシウムとして凝集粒子である低結晶性アパタイトを添加した場合、10μm以上の気孔径の体積割合が5割以下となることが分かった。この比較例4と同量のアパタイトを添加した場合でも繊維状リン酸カルシウムとしてアパタイトウィスカーを用いることで、実施例5のように10μm以上の気孔径の体積割合を8割以上にすることが出来たことから、連通性に富んだ気孔構造にする場合には、繊維状リン酸カルシウムを利用することが必要であることが分かった。更に、凝集粒子である低結晶性アパタイトを複合化した場合、繊維状ポリ乳酸との絡み合いが無いために、複合多孔体とした時に、アパタイトがとれやすく、軽く多孔体を叩くと、アパタイトが一部落ちてしまう問題があった。しかし、アパタイトウィスカーを用いた場合には、繊維状ポリ乳酸との絡み合いにより複合化しているためにアパタイトウィスカーが落ちにくい。
【0099】
更に、実施例9〜11においても、同様に10μm以上の気孔の体積割合を6割以上とすることができ、且つ、その気孔構造を電子顕微鏡や光学顕微鏡で観察した結果、100μm以上の大きな気孔を有すること、及びその骨格部分がメッシュ構造で形成されていることが分かった。このメッシュ構造からなる気孔の気孔径は、水銀ポロシメーターでの測定結果から1〜数十μmであることが分かり、細胞の増殖及び組織の成長を促す足場となり、且つ、養分の浸透性が良い構造を有していることが分かり、生体材料として有用な材料となり得ることが分かった。
【0100】
又、実施例4〜11における有機−無機複合多孔体は、その気孔率が全て60〜90%であって高気孔率である。したがって、これら実施例の結果から、この発明に係る有機−無機複合多孔体は、医療材料に用いると、生体組織又は細胞が材料内に侵入しやすく、生体に馴染みやすい材料となり、環境材料及び充填材料等に用いると、ガス及び液体の浸透性が良い材料となって、有用である。
【0101】
更に、実施例4〜11の有機−無機複合多孔体の水の浸透性を評価した結果、実施例4〜11の有機−無機複合多孔体は、水滴を落とした瞬間に水は染み込んだので、実施例4〜11の有機−無機複合多孔体の浸透性は非常に良好であることが分かった。この結果は、親水性の繊維状リン酸カルシウムが表面に多く露出していることを示しており、繊維状リン酸カルシウムの特性が有効に発揮されている有機−無機複合多孔体であることを示している。特に、比較例3と実施例4とを比較すると、同じ添加量の水酸アパタイトであるにもかかわらず、その水の浸透時間が大きく異なることから、実施例の有機−無機複合多孔体は、繊維状の有機物を利用し、繊維状リン酸カルシウムとを絡み合わせることにより多孔体を形成しているために、繊維状リン酸カルシウムの特性を有効に活かした有機−無機複合多孔体であると言える。したがって、本発明に係る有機―無機複合多孔体は、医療用材料として用いると、繊維状リン酸カルシウムの生体活性を有効に活かすことができ、環境材料及び充填材料として用いると、繊維状リン酸カルシウム、特にアパタイトの吸着特性を活かすことができ、非常に有用である。
【0102】
【表1】

【0103】
※ HAp:水酸アパタイト(ヒドロキシアパタイト)
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】図1は、実施例6の水銀ポロシメーターで測定した気孔径分布図である。
【図2】図2は、実施例5において得られた有機−無機複合多孔体のSEM写真である。
【図3】図3は、実施例6において得られた有機−無機複合多孔体のSEM写真である。
【図4】図4は、実施例7において得られた有機−無機複合多孔体のSEM写真である。
【図5】図5は、実施例8において得られた有機−無機複合多孔体のSEM写真である。
【図6】図6は、比較例3において得られた有機−無機複合多孔体のSEM写真である。
【図7】図7は、実施例11において得られた有機−無機複合多孔体の外観写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維状リン酸カルシウムと繊維状有機物とを含み、繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムの少なくとも一部とが、絡み合っていることを特徴とする有機−無機複合多孔体。
【請求項2】
前記繊維状有機物と前記繊維状リン酸カルシウムとの少なくとも一部の絡み合いの少なくとも一部が接合していることを特徴とする請求項1に記載の有機−無機複合多孔体。
【請求項3】
気孔率が、少なくとも30%である前記請求項1又は2に記載の有機−無機複合多孔体。
【請求項4】
前記繊維状有機物が、生分解性樹脂であることを特徴とする前記請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機−無機複合多孔体。
【請求項5】
前記生分解性樹脂が、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、及びポリカプロラクトンより成る群から選択される少なくとも一種の重合体、及び/又は、乳酸、グリコール酸及びカプロラクトンよりなる群から選択される少なくとも一種のモノマーを用いて得られる共重合体を含むことを特徴とする前記請求項4に記載の有機−無機複合多孔体。
【請求項6】
前記繊維状リン酸カルシウムがアパタイトウィスカーであることを特徴とする前記請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機−無機複合多孔体。
【請求項7】
有機物を溶媒に溶解してなる溶媒溶液と、水溶性高分子及び水溶性高分子凝結剤と、を混合して混合液を得る工程と、前記混合液を撹拌しつつ、前記混合液中の溶媒成分を除去する工程とからなることを特徴とする繊維状有機物の製造方法。
【請求項8】
前記水溶性高分子がポリビニルアルコールであることを特徴とする前記請求項7に記載の繊維状有機物の製造方法。
【請求項9】
前記有機物が生分解性有機物である前記請求項7又は8に記載の繊維状有機物の製造方法。
【請求項10】
前記生分解性有機物が、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、及びポリカプロラクトンより成る群から選択される少なくとも一種の重合体、及び/又は、乳酸、グリコール酸及びカプロラクトンよりなる群から選択される少なくとも一種のモノマーを用いて得られる共重合体を含むことを特徴とする前記請求項9に記載の繊維状有機物の製造方法。
【請求項11】
前記水溶性高分子凝結剤が縮合リン酸塩及び/又は硫酸塩を含むことを特徴とする前記請求項7〜10のいずれか一項に記載の繊維状有機物の製造方法
【請求項12】
前記縮合リン酸塩が、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、及びヘキサメタリン酸ナトリウムより成る群から選択される少なくとも一種を含むことを特徴とする前記請求項11に記載の繊維状有機物の製造方法。
【請求項13】
前記溶媒が塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、及び、酢酸エチルより成る群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする前記請求項7〜12のいずれか一項に記載の繊維状有機物の製造方法。
【請求項14】
繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとを混合し、繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムの少なくとも一部とを溶着により接合させることを特徴とする有機−無機複合多孔体の製造方法。
【請求項15】
前記溶着が繊維状有機物の融解により達成されてなることを特徴とする前記請求項14に記載の有機―無機複合多孔体の製造方法。
【請求項16】
前記繊維状リン酸カルシウムがアパタイトウィスカーであることを特徴とする請求項14又は15に記載の有機−無機複合多孔体の製造方法。
【請求項17】
前記繊維状有機物が生分解性樹脂であることを特徴とする請求項14〜16のいずれか一項に記載の有機−無機複合多孔体の製造方法。
【請求項18】
前記生分解性有機物が、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、及びポリカプロラクトンより成る群から選択される少なくとも一種の重合体、及び/又は、乳酸、グリコール酸及びカプロラクトンよりなる群から選択される少なくとも一種のモノマーを用いて得られる共重合体を含むことを特徴とする前記請求項17に記載の有機−無機複合多孔体の製造方法。
【請求項19】
前記繊維状有機物が前記請求項7〜13のいずれか一項に記載の製造方法で得られた繊維状有機物であることを特徴とする前記請求項14〜18のいずれか一項に記載の有機−無機複合多孔体の製造方法。
【請求項20】
前記アパタイトウィスカーが、80〜250℃でオルトリン酸とプロトンとを生成するリン酸カルシウムゲル化合物を、水及び親水性有機溶媒の少なくとも一方を含む溶媒に、分散させて分散液を得る分散工程と、密閉容器内で前記分散液を80〜250℃に加熱する加熱工程とを有し、加熱前の分散液のpHを9以下とし、加熱後の分散液のpHを3.9〜9にすることで得られたアパタイトウィスカーであることを特徴とする前記請求項16〜19のいずれか一項に記載の有機−無機複合多孔体の製造方法。
【請求項21】
前記繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとの混合物に可溶性粒子を添加することを特徴とする請求項14〜20のいずれか一項に記載の有機−無機複合多孔体の製造方法。
【請求項22】
繊維状有機物と繊維状リン酸カルシウムとの少なくとも一部を溶着により接合させた後に、前記可溶性粒子を溶媒により除去することを特徴とする請求項21に記載の有機−無機複合多孔体の製造方法。
【請求項23】
前記可溶性粒子が、水溶性多糖類及び/又は水溶性無機塩類であることを特徴とする請求項21または22に記載の有機−無機複合多孔体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−116662(P2010−116662A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288753(P2009−288753)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【分割の表示】特願2005−123482(P2005−123482)の分割
【原出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】