説明

繊維用加工剤ならびに該加工剤を用いた繊維製品

【課題】
夏場の太陽熱、あるいは溶鉱炉のような熱遮蔽を必要とする衣料、ユニホームなどの繊維製品において、熱を効率的に遮蔽および/または吸収すると人体から発するムレ感が吸放湿されることにより、衣服内の環境の快適性を目的とした加工剤の提供、ならびに該加工剤での繊維製品加工。
【解決手段】
内包剤に融点40〜115℃のパラフィン・ワックス、マイクロクリスタリンワックスまたは合成ワックスを外包剤がメラミン樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリカ系化合物の少なくとも1種であるマイクロカプセルが太陽熱を遮蔽および/または吸収する効果を有する。該マイクロカプセルと吸放湿性の高い樹脂バインダーを組み合わせた加工剤で繊維製品に強固に付着固着させることにより、夏場の着用快適性を向上させる。その際に、さらに溶解吸熱性を有する化合物ならびに抗菌剤を併用することにより着用快適性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスポーツ衣料、シャツ、ブラウス、サマースーツ、パンツ、帽子、肌着、ソックスなどの衣料、消防服や溶鉱炉などの特殊ウエア、および布団、シーツなどの寝装繊維製品、さらにはカーペット、マット、カーテンなどのインテリア繊維製品、テント、シェルター、幌などの太陽熱を嫌う産業資材用途などを対象に、熱遮蔽性効果、清涼効果などの優れた機能性を有する繊維加工剤ならびに該加工剤で加工された繊維製品を提供しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、繊維製品の清涼加工は重要な課題であり、業界でも該課題をクリアすべく様々な方向から技術検討がなされている。具体的には、以下の報告がある。ソルビトール、エリストロール、キシリトールなどの糖アルコール化合物の溶解吸熱(水和熱:負)を利用した加工(特許文献1〜5)、各種紫外線吸収剤(カット剤)を活用した加工(特許文献6〜8)、熱遮蔽性化合物を利用した加工(特許文献9〜12)、吸放湿加工、吸放湿ポリマーによる加工(特許文献13〜16)などがある。しかし、いずれも満足できるものではなく、業界では更なる性能の向上が望まれている。
【0003】
【特許文献1】特開平05−279938号公報
【特許文献2】特開平08−158186号公報
【特許文献3】特開平09−095864号広報
【特許文献4】特開2000−34679号公報
【特許文献5】特開2004−115964号公報
【特許文献6】特開平05−117508号公報
【特許文献7】特開平10−226518号公報
【特許文献8】特開2001−139926号公報
【特許文献9】特開平05−247723号公報
【特許文献10】特開平08−092842号公報
【特許文献11】特開2005−325481号公報
【特許文献12】特表2005−538016号公報
【特許文献13】特開平09−241925号公報
【特許文献14】特開平11−279842号公報
【特許文献15】特開2000−226766号公報
【特許文献16】特開2002−371470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
衣料などの繊維製品を着用した際、夏場の高温多湿条件下では、ムレなどにより非常に不快感を覚える。この主な要因には、夏場の太陽熱や高温状態での人体温の上昇、人体からの発汗(不感蒸泄)などが挙げられる。これらの不快要因が重なり、人間は非常に不快感を覚え、この状況の改善を強く要望するものである。本発明では、かかる不快な状態を回避した着用時に快適な衣料状況にすべく、清涼加工剤の開発ならびに、該加工剤で繊維製品を加工することにより着用時の快適性を向上させることを課題とする。また、衣料以外のインテリアや寝具類、カーシート類、シェルターなどの産業資材類などにおいても、衣料と同様に快適な環境状況の創造が課題である。
【0005】
本発明では、かかる課題をクリアするために、次のような手段をとるものである。すなわち、内包剤(A)のパラフィン・ワックス、マイクロクリスタリンワックスまたは合成ワックスが、外包剤(B)のメラミン樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリカ系化合物のうち少なくとも1種で包接されたマイクロカプセルおよび該マイクロカプセルを繊維表面に強固に付着・固着させるための樹脂バインダーなどの化合物からなる加工剤を繊維に加工する。その際、樹脂バインダー的な化合物に吸放湿性のある有機、無機化合物を用いるとさらに本発明の目的を達成しやすくなる。また、キシリトール、エリスリトール、ソルビトールなどの糖アルコール類を前記に包接させると、単独使用に比べて相乗効果を発揮すると共に、洗濯耐久性も向上する傾向にある。さらには、銀ナノコロイド、ナノ粒子径の酸化亜鉛、銀ゼオライト、キトサン、ジンクピリチオンなどの抗菌剤の少なくとも一種を併用すると特に衣料などの場合に着用時における人体汗に基づく抗菌防臭性能が付加される結果、より着用快適性を高めることになりこの点も本発明のポイントの一つである。
【発明の効果】
【0006】
前述の解決手段を採用することにより、夏場の太陽熱の遮蔽効果、人体からの発汗に基づく不感蒸泄(ムレ感の主原因)の処理、さらには人体温の上昇を抑えるため、溶解吸熱(負の水和熱)性を有する化合物の併用・包接、ナノ微粒子径の抗菌防臭剤の併用することにより、衣料の場合には着用快適性の向上を、インテリアや寝具、産業資材類の場合は、快適な環境状況作りに寄与するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の効果を最大限に発揮させるための具体的な内容について説明する。本発明におけるマイクロカプセルの内包剤(A)に用いるパラフィン・ワックス、マイクロクリスタリンワックスまたは合成ワックスには、融点40〜115℃のノルマルパラフィン、イソパラフィン、シクロパラフィンが挙げられる。パラフィン・ワックスとは、減圧蒸留抽出液から分離される融点40〜70℃の固形のワックスであり、マイクロクリスタリンワックスとは、減圧蒸留ボトムまたは重質留出油から分離される融点70〜100℃の固形のワックスである。またここでいう合成ワックスとは、フィッシャー・トロプシュワックスと呼ばれる種の炭化水素系の合成ワックスであり、ノルマリティが高く、融点100℃115℃の非常に不純物の少ないパラフィン・ワックスである。内包剤(A)には特に融点の50〜70℃付近が、本発明の目的、課題をより達成するために好ましい。内包剤(A)の融点が40〜115℃が望ましいのは、以下の理由のためである。融点が40℃以下の場合では、本発明の効果が得られず、一方115℃以上の場合では、マイクロカプセルの製造が極めて難しいためである。
【0008】
次に、前記の内包剤を包接する外包剤(B)について説明する。外包剤(B)には、メラミン樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリカ系化合物などが挙げられる。本発明の目的を達成するためには、メラミン樹脂もしくは、シリカ/エポキシ系樹脂を用いることが最良である。その理由として、メラミン樹脂は、他の樹脂と比べて樹脂強度が高いためである。この場合、メラミンの残留が危惧されるが、本発明においては脱ホルムアルデヒド処理をすることにより該問題を解消することが出来る。また、多孔質のシリカ系樹脂でマイクロカプセルかした後、エポキシ樹脂でコートをする方法ではメラミン樹脂と同様に強固な皮膜強度が得られ好ましいが、パラフィン・ワックスの内包量がメラミン樹脂によるカプセルよりも低くなる傾向にある。
【0009】
該内包剤・外包剤でマイクロカプセルを製造することにより良好な太陽熱などの熱遮蔽効果を得ることが出来る。該内包剤の単独使用では、熱により昇華が起こること、また耐洗濯性がないなど実用性に乏しいものである。しかし、マイクロカプセルにすることにより、該問題が回避でき本発明の目的を達成することが出来る。具体的には、該マイクロカプセルの使用量を3〜20%の範囲内で用いることがよく、その中でも5〜15%の範囲内が本発明の目的を達成するためにより好ましい範囲である。この際、該マイクロカプセルの使用量を20%以上にすると繊維において実用性のない粗悪な風合になり、一方3%以下では、目的の効果を得ることが出来ない。
【0010】
ところで、従来からの熱遮蔽化合物を利用した技術では、熱遮蔽効果の測定方法に紫外線透過率などを用いており、熱遮蔽の明確な効果の確認ができない。本発明では、該マイクロカプセルを用いることにより未加工品対比−3〜−5℃の熱遮蔽効果を得ることができる。
【0011】
該マイクロカプセルを加工する繊維製品には、以下のものが挙げられる。スポーツ衣料、シャツ、ブラウス、サマースーツ、パンツ、帽子、肌着、ソックスなどの衣料、消防服や溶鉱炉などの特殊ウエア、および布団、シーツなどの寝装繊維製品、さらにはカーペット、マット、カーテンなどのインテリア繊維製品、テント、シェルター、幌などの太陽熱を嫌う産業資材用途などである。
【0012】
本発明でいう繊維製品とは、木綿、ウール、シルクなどの天然繊維、レーヨン、リヨセルなどの半合成繊維、さらにはポリエステル、アクリルなどの合成繊維などからなる繊維・布帛全般を意味する。
【0013】
該マイクロカプセルで繊維・布帛に付加する場合、バインダーとしてシリコン樹脂、シリコン・アクリル共重合物、エポキシシリコン樹脂、エポキシシリコン・ウレタン併用化合物もしくは、共重合物、アクリル・ウレタン併用化合物もしくは、共重合物が挙げられるが、特にシリコン樹脂、アクリル・シリコン共重合物が本発明の目的を達成するために好ましい。
【0014】
また前述の樹脂バインダー的な化合物とは異なり、吸放湿性のある有機化合物、無機化合物の使用がより効果的である。具体的には、有機化合物としては、ポリエチレンオキサイドあるいは、ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドの共重合物、あるいはそれ以外の親水性基、例えば水酸基、カルボキシル基などを有する化合物を通常よりも多く反応させることにより吸放湿性能を付与したポリウレタン樹脂、またはウレタンプレポリマー樹脂、さらには吸放湿性を有するアクリル酸、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸(AMPA)などの吸放湿性能を有するモノマー単独、あるいはそれらにアクリルアミド、ヒドロキシエチレンアクリレート、ポリエチレングリコールを付加した各種ビニルモノマーなどを共重合した吸放湿性ポリマーが挙げられる。一方、吸放湿性のある無機化合物としては、シリカ化合物が挙げられるが、この場合は、前述の樹脂バインダーあるいは、吸放湿性能を有する有機化合物との併用使用が好ましい。
【0015】
本発明では、前述のマイクロカプセル分散液、バインダー溶液を併用使用するが、その際の配合割合として、マイクロカプセル分散液:バインダーが5:95〜95:5の範囲内が良く、その中でも50:50〜80:20の範囲が本発明の目的を達成するためにより好ましい範囲といえる。この配合範囲において、この範囲よりもマイクロカプセルの配合割合が下回ると太陽熱などの熱遮蔽効果が乏しくなり、一方この範囲よりも配合割合が上回ると、特に衣料などに加工した場合、衣料の風合が著しく粗硬な風合になるとともに本発明の言う効果の洗濯耐久性が著しくて低下してしまい、実用性の乏しいものになる。
【0016】
次に、本発明においてより清涼性を高めるために化合物を併用使用するが、この化合物は水に溶解した際に吸熱反応(負の水和熱)を示す化合物を意味し、具体的には、キシリトール、エリスリトール、ソルビット化合物などを言う。これらの化合物は水溶性のため、油溶性のオイル物質で包んだエマルジョンにて用いた方が性能の洗濯耐久性が向上するので好ましい。この化合物の配合割合としては、バインダー使用量の10〜60%が好ましい。
【0017】
次に、本発明において抗菌防臭性を有する化合物を併用する。具体的には、銀ナノコロイド、ナノ微粒子径の酸化亜鉛、銀ゼオライト、キトサン、ジンクピリチオンなどがある。これらの化合物を併用する意味は、前述したように、衣料などに着用した際に、人体からの発汗にした分泌物が衣料に付着して、一般常在菌により分解され、アンモニア臭、酢酸臭、イソ吉草酸臭などの不快な臭気発生の元になり、着用快適性を損なうことになるが、前述の該抗菌防臭剤を併用することにより、それを予め防ぐことが可能である。なお、その際の併用量としては、バインダー使用量の3〜50%の範囲が好ましい。
【0018】
本発明において、加工剤を繊維布帛類に付与する手段としては、特に限定されるものでなく、通常のパッド−キュア法、パッド−スプレー法、浸漬法−キュア法、コーティング法などいずれの方法でも良い。
【0019】
なお、本発明において、熱遮蔽データは次の方法で測定した。
試験する繊維布帛類を切り取り温度センサーに巻き付けたのち、レフランプを照射させてその温度変化を測定する。測定は、常に未加工品と同時に行い、未加工品の温度上昇が45℃以上の時点での、未加工品対比の最大の温度差と最小の温度差を測定する。
サンプルサイズ:3cm×4cm
測定条件:レフランプ照射状態で未加工布の温度上昇が45℃以上を示す。
測定時間:60分間
【0020】
本発明における清涼感(接触冷感)はQmax値の測定で行った。
測定装置:精密迅速物理性測定装置 KES−F7サーモラボ2型
測定条件:20℃、65%RH
【0021】
本発明における洗濯耐久性のデータ取りは、JIS L−0217 103法に基づいて行った。
以下、実施例で持って、さらに本発明について説明する。
【実施例1】
【0022】
(マイクロカプセルの製作方法)
メラミン粉末5gに37%ホルムアルデヒド水溶液6.5gと水10gを加えて、pHを8に調整した後、約70℃まで加熱してメラミン−ホルマリン初期縮合物水溶液を得た。pHを4.5に調整した5%スチレン−無水マレイン酸共重合体のナトリウム塩水溶液100g中に、融点60℃のパラフィン・ワックス80gを激しく攪拌しながら添加し粒子径が約1〜10μmになるまで乳化を行った。この乳化液に上記メラミン−ホルムアルデヒド初期縮合水溶液全量を添加して70℃で2時間攪拌した後、pHを9に調整してカプセル化を終了した。得られた該マイクロカプセルの内包率は80%である。このマイクロカプセル分散液を水で希釈し、固形分濃度20%に調整した。
(繊維処理)
上記の固形分濃度20%に調整したマイクロカプセル分散液を5部、ならびにシリコン・アクリル樹脂バインダー(パラゾールGH−S(固形分:40%):大原パラヂウム化学(株)社製)3部を水92部に均一に混合して加工液とした。この時のマイクロカプセル分散液とバインダーの配合割合は、63:37である。次に、木綿100%平織物をこの加工液に浸漬させ、マングルで絞り100%にてパディング処理後、100℃で3分間乾燥、160℃で1分間熱処理を行った。この加工布の熱遮蔽効果は、未加工布対比−4.5℃〜−4.0℃であった。
(比較例1)
実施例1の内包剤が融点60℃のパラフィン・ワックスの代わりに、融点32℃のパラフィン・ワックスを内包剤に用いて実施例1と同じ加工剤を調整し、同様の条件にて繊維処理を行った。この加工布での熱遮蔽効果は、得られなかった。
(比較例2)
実施例1の内包剤が融点60℃のパラフィン・ワックスの代わりに、融点115℃の合成ワックスを内包剤に用いてマイクロカプセル化を試みたが、マイクロカプセルは得られなかった。
(比較例3)
マイクロカプセル分散液(固形分濃度20%)を5部、ならびにシリコン・アクリル樹脂バインダー(パラゾールGH−S(固形分:40%):大原パラヂウム化学(株)社製)1部を水94部に均一に混合して加工液とした。この時のマイクロカプセル分散液とバインダーの配合割合は、83:17である。次に、木綿100%平織物をこの加工液に浸漬させ、マングルで絞り100%にてパディング処理後、100℃で3分間乾燥、160℃で1分間熱処理を行った。この加工布での熱遮蔽初期効果は未加工布対比−4.5℃〜−4.0℃、洗濯10回後では−1.5℃〜−1.0℃であった。実施例1での洗濯10回後での熱遮蔽効果は未加工布対比−3.5℃〜−3.0℃であるため、比較例3では洗濯耐久性が劣っている。
(比較例4)
マイクロカプセル分散液(固形分濃度20%)を5部、ならびにシリコン・アクリル樹脂バインダー(パラゾールGH−S(固形分:40%):大原パラヂウム化学(株)社製)10部を水85部に均一に混合して加工液とした。この時のマイクロカプセル分散液とバインダーの配合割合は、33:67である。次に、木綿100%平織物をこの加工液に浸漬させ、マングルで絞り100%にてパディング処理後、100℃で3分間乾燥、160℃で1分間熱処理を行った。この加工布では、熱遮蔽効果は未加工布対比−4.5℃〜−4.0℃と実施例1と同様であったが、風合が粗硬であった。
【実施例2】
【0023】
(繊維処理)
実施例1と同様のマイクロカプセル分散液(固形分濃度20%)を5部、ならびにシリコン樹脂バインダー(パラレヂンPS−200(固形分:20%):大原パラヂウム化学(株)社製)3部を水92部に均一に混合して加工液とした。この時のマイクロカプセル分散液とバインダーの配合割合は、63:37である。木綿100%平織物をこの加工液に浸漬させ、マングルで絞り100%にてパディング処理後、100℃で3分間乾燥、160℃で1分間熱処理を行った。この加工布の熱遮蔽効果は、未加工布対比−4.5℃〜−4.0℃であり、実施例1のバインダーにシリコン・アクリル樹脂を用いた場合と同様の効果が得られた。
【実施例3】
【0024】
(繊維処理)
実施例1と同様のマイクロカプセルを5部と吸放湿性を有するポリウレタン樹脂加工剤(パラレヂンU−416(固形分:40%):大原パラヂウム化学(株)社製)3部、キシリトールの40%水溶液3部を水89部に均一に混合して加工液とした。この時のバインダーとキシリトールの40%水溶液の配合割合は、50:50である。ポリエステル系合成繊維100%平織物をこの加工液に浸漬させ、マングルで絞り100%にてパディング処理後、100℃で3分間乾燥、160℃で1分間熱処理を行った。この加工布の熱遮蔽効果は、未加工布対比−4.5℃〜−4.0℃であった。また、この効果の接触冷感(Qmax値)は、0.648と大きく、清涼効果の高いものとなった。
(比較例5)
実施例3に用いたのと同様のポリエステル系合成繊維100%平織物を一切加工することなく、その状態で接触冷感(Qmax値)を測定すると0.440と本実施例に比べて低く、清涼感は無かった。
【実施例4】
【0025】
(繊維処理)
実施例1と同様のマイクロカプセルを5部と吸放湿性を有するポリウレタン樹脂加工剤(固形分:40%)3部、ナノ粒子径酸化亜鉛加工剤(パラファインZO(固形分:14%):大原パラヂウム化学(株)社製)4部を水88部に均一に混合して加工液とした。この時のバインダーとナノ粒子径酸化亜鉛加工剤の配合割合は、43:57である。ポリエステル系合成繊維100%平織物をこの加工液に浸漬させ、マングルで絞り100%にてパディング処理後、100℃で3分間乾燥、160℃で1分間熱処理を行った。この加工布の熱遮蔽効果は、未加工布対比−4.5℃〜−4.0℃であった。また、この加工布での抗菌性は、加工初期、洗濯10回後ともに静菌活性値が2.2以上であり抗菌効果があった。
【実施例5】
【0026】
(マイクロカプセルの製作方法)
シリカ系樹脂からなる粒径が10μmの多孔質セル(鈴木油脂(株)社製)50gに、融点が60℃のパラフィン・ワックス60gを添加し、65℃で30分間、激しく撹拌後、パラフィン・ワックスを内包したマイクロカプセルを得た。該マイクロカプセルに水100部を加えてスラリーにし、エポキシ系樹脂エマルジョン(共栄社油脂(株)社製)を20部添加し、さらに30分間撹拌を行い、シリカ系樹脂からなる多孔質セルにエポキシ系樹脂をコートした後、水を添加して、融点が60℃のパラフィン・ワックスを50%包接した固形分が40%の皮膜強度の高いマイクロカプセルを得た。
(繊維処理)
上記の固形分濃度40%に調整したマイクロカプセル分散液を4部、ならびにシリコン・アクリル樹脂バインダー(パラゾールGH−S(固形分:40%):大原パラヂウム化学(株)社製)3部を水92部に均一に混合して加工液とした。この時のマイクロカプセル分散液とバインダーの配合割合は、60:40である。次に、木綿100%平織物をこの加工液に浸漬させ、マングルで絞り100%にてパディング処理後、100℃で3分間乾燥、160℃で1分間熱処理を行った。この加工布の熱遮蔽効果は、未加工布対比−4.5℃〜−4.0℃であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内包剤(A)の融点が40〜115℃のパラフィン・ワックス、マイクロクリスタリンワックスまたは合成ワックスをメラミン樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリカ系化合物のうち少なくとも1種で包接した太陽熱などの熱遮蔽および/または熱吸収効果を有するマイクロカプセル加工剤での加工方法、および該加工剤ならびに樹脂バインダーで加工処理された繊維製品。

【公開番号】特開2008−297636(P2008−297636A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141498(P2007−141498)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(391034938)大原パラヂウム化学株式会社 (19)
【Fターム(参考)】