説明

繊維製品処理剤

【課題】セルロース系繊維を含む繊維製品に対しても、簡便に且つ優れた形態安定性を付与できる繊維製品処理剤を提供する。
【解決手段】(a)少なくとも3つのカルボキシル基を有する多価カルボン酸及び/又はその塩、(b)特定の酸塩、(c)下記一般式(1)で表される化合物を、それぞれ、特定範囲で含有する繊維製品処理剤。
Ar−(R1m−(OR2n−OH (1)
〔式中、Arは総炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、R1は炭素数1〜2のアルキレン基、R2は炭素数2〜5のアルキレン基、mは0又は1、nは0より大きく10以下の数を示す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイシャツやスラックス等のアイロンがけは手間のかかる作業の一つであり、その作業を軽減させるべくホルマリンガス或いはホルマリン放出体や液体アンモニア等を用いた形態安定化処理が施された衣料が市販されている。しかしながら、これらの方法は工業用途又は専門のクリーニング店向けの技術であり、家庭で容易に形態安定性を付与する技術は見出されていなかった。
【0003】
一方、特許文献1には、カルボキシル基を有する水溶性ポリマーを用い、かつpHが3.5〜7.5であるスプレー用糊剤組成物が開示されているが、このような糊剤組成物は通常の洗濯によって容易に洗い流されてしまい、アイロンがけによって整えられた形態が消失してしまい、形態安定性を付与するものではない。また、特許文献2には、特定の重合体と特定の水難溶性物質と水とを含有する、スプレー容器に充填して使用し得る繊維製品処理剤が開示されており、かかる処理剤は更に特定の酸塩や低分子型多価カルボン酸を含有できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−241973号公報
【特許文献2】特開2001−316978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
木綿、麻などのセルロース系繊維は、吸水性が良いなどの長所がある反面、洗濯等の処理によりシワになりやすい。本発明の課題は、セルロース系繊維を含む繊維製品に対しても、簡便に且つ優れた形態安定性を付与できる繊維製品処理剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記(a)成分を0.1〜20重量%、(b)成分を0.001〜10重量%、(c)成分を0.1〜10重量%含有する繊維製品処理剤に関する。
(a)成分:少なくとも3つのカルボキシル基を有する多価カルボン酸及び/又はその塩
(b)成分:以下の(b1)〜(b3)の群から選ばれる酸塩の1種以上
(b1)亜リン酸、次亜リン酸、リン酸、リン酸水素、リン酸二水素、ポリリン酸、メタリン酸、ピロリン酸及びオルトリン酸から選ばれる化合物の塩
(b2)スルホン酸基含有化合物の塩
(b3)ホウ酸、メタホウ酸及び水素化ホウ酸から選ばれる化合物の塩
(c)成分:下記一般式(1)で表される化合物
Ar−(R1m−(OR2n−OH (1)
〔式中、Arは総炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、R1は炭素数1〜2のアルキレン基、R2は炭素数2〜5のアルキレン基、mは0又は1、nは0より大きく10以下の数を示す。〕
【0007】
また、本発明は、上記本発明の繊維製品処理剤を、手動式スプレーヤーを備えた容器に充填してなる繊維製品処理剤物品に関する。
【0008】
また、本発明は、上記本発明の繊維製品処理剤を繊維製品に適用した後、当該繊維製品を加圧下で加熱処理する、繊維製品の処理方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、セルロース系繊維を含む繊維製品に対しても、簡便に且つ優れた形態安定性を付与できる繊維製品処理剤が提供される。本発明の繊維製品処理剤により処理された繊維製品は、洗濯後、自然乾燥した場合でも、シワの生成が極めて少ない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<(a)成分>
(a)成分は、(a1)分子量が100以上1000未満の低分子型多価カルボン酸及び/又はその塩〔以下、(a1)成分という〕、及び(a2)重量平均分子量1000以上100万以下のポリカルボン酸系ポリマー及び/又はその塩〔以下、(a2)成分という〕から選ばれる化合物が挙げられる。なお、(a)成分についての分子量もしくは重量平均分子量は、特記しない限り、いずれも酸の構造として換算したときの分子量もしくは重量平均分子量である。
【0011】
(a1)成分の分子量は、150〜500が好ましく、更に150〜250が好ましい。(a1)成分としては、クエン酸、アコニット酸、トリメリット酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸等が挙げられる。(a1)成分としては、クエン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸が好ましい。
【0012】
また、(a2)成分の重量平均分子量は、1万〜10万が好ましく、更に3万〜7万が好ましい。この重量平均分子量は、ゲル浸透式液体クロマトグラフィー法(GPC法)にてポリエチレングリコール比較で測定されたものである。(a2)成分としては、ポリマレイン酸、アクリル酸/マレイン酸コポリマー、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリイタコン酸、ポリクロトン酸、ポリフマル酸等が挙げられる。(a2)成分としては、ポリマレイン酸、アクリル酸/マレイン酸コポリマー、及びこれらの塩が形態安定性を向上させる点で好ましい。
【0013】
(a)成分の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン類塩が挙げられる。アルカリ金属はナトリウム、カリウム、リチウムが好ましく、アルカリ土類金属はマグネシウム、カルシウムが好ましく、アミン類はアンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが好ましい。
【0014】
本発明の処理剤は、(a)成分を、酸の構造として換算したときの重量で0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは1〜15重量%、更に好ましくは2〜10重量%含有する。(a1)成分の場合は、1〜10重量%、更に3.5〜8重量%が好ましい。また、(a2)成分の場合は、2〜10重量%、更に5〜8重量%が好ましい。より少ない配合量で高い形態安定性を向上させる点で、(a1)成分がより好ましい。
【0015】
<(b)成分>
(b)成分としては、以下の(b1)〜(b3)の群から選ばれる酸塩の1種以上である。
(b1)亜リン酸、次亜リン酸、リン酸、リン酸水素、リン酸二水素、ポリリン酸、メタリン酸、ピロリン酸及びオルトリン酸から選ばれる化合物の塩
(b2)スルホン酸基含有化合物の塩(例えば、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸が挙げられる。)
(b3)ホウ酸、メタホウ酸及び水素化ホウ酸から選ばれる化合物の塩
【0016】
(b)成分の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン類塩が挙げられる。アルカリ金属はナトリウム、カリウム、リチウムが好ましく、アルカリ土類金属はマグネシウム、カルシウムが好ましく、アミン類はアンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが好ましい。
【0017】
(b)成分としては、(b1)成分が好ましく、なかでも亜リン酸、次亜リン酸、リン酸、リン酸水素、リン酸二水素、ポリリン酸のナトリウム塩、カリウム塩が形態安定性向上の点で好ましい。
【0018】
本発明の処理剤は、(b)成分を、0.001〜10重量%、好ましくは0.1〜7重量%、より好ましくは0.5〜5重量%、更に好ましくは1〜3重量%含有する。
【0019】
また、(a)成分と(b)成分の重量比は、形態安定性向上の観点から、好ましくは(a)/(b)=1/50〜50/1、より好ましくは1/5〜10/1、更に好ましくは1/1〜6/1である。この重量比において、(a)成分の重量は、酸の構造として換算したときの重量である。
【0020】
<(c)成分>
(c)成分は上記一般式(1)で表される化合物であり、Arはフェニル基が好ましい。また、R1はメチレン基が好ましい。また、R2はエチレン基が好ましい。mは0又は1が好ましい。nは1〜8が好ましい。
【0021】
(c)成分としては、ポリエチレングリコールモノフェニルエーテル〔一般式(1)中のnは1〜5が好ましい。〕、ポリエチレングリコールモノベンジルエーテル〔一般式(1)中のnは1〜5が好ましい。〕等が挙げられる。
【0022】
本発明の繊維製品処理剤は、(a)成分、(b)成分、(c)成分及びその他成分以外に水を含有する水性組成物である。本発明の繊維製品処理剤の20℃におけるpHは、好ましくは1.5〜7、より好ましくは1.5〜5、更に好ましくは2〜4である。この範囲において繊維の強度劣化が起こらず、また形態安定性が良好となる。pHは、繊維処理剤等に公知に使用されている酸やアルカリ剤により調整してもよく、また(b)成分の酸塩により調整してもよい。なお、水の含有量は、好ましくは80〜95重量%である。
【0023】
本発明の繊維製品処理剤には、(d)成分としてシリコーン化合物を用いることが、滑り性の点から好ましい。
【0024】
シリコーン化合物としては、具体的には、ジメチルポリシロキサンオイル、側鎖の一部或いは末端にヒドロキシ基を有するジメチルポリシロキサンオイル、ジメチルポリシロキサンオイル又はヒドロキシ基含有ジメチルポリシロキサンオイルに、水への溶解度が0.1g/水100gを越えないように有機基を1種以上導入した変性シリコーンオイルが挙げられる。ジメチルポリシロキサンオイル及びヒドロキシ基含有ジメチルポリシロキサンオイルは、25℃における粘度が1,000〜5,000万mm2/s、好ましくは1万〜3,000万mm2/s、更に好ましくは10万〜2,000万mm2/sである。この範囲であれば、好ましいスプレーミストの均一性が得られ、また、シリコーンオイルの製造上の困難さも生じない。変性シリコーンオイルを得るために導入される有機基としては、アミノ基、アミド基、ポリエーテル基、エポキシ基、カルボキシ基、アルキル基、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)鎖等が挙げられる。なかでもアミノ基、アミド基、ポリエーテル基が好ましい。
【0025】
上記シリコーン化合物は、乳化剤により乳化しても使用できる。乳化剤には、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれか1種以上を任意に組み合わせて使用するのが好ましい。
【0026】
また、乳化剤を用いないでシリコーンオイルにポリエーテル基等の親水性の変性基を導入して自己乳化させて用いても構わない。
【0027】
以上のようなシリコーン化合物は、シリコーン化合物自体、又は乳化された態様のシリコーン製剤として入手可能である。例えば、ジメチルポリシロキサンエマルションとしては東レ・ダウコーニング(株)からBY22−029やCF2238等が入手可能であり、ヒドロキシ基含有ジメチルポリシロキサンオイルにアミノ基が導入されたものとしては東レ・ダウコーニング(株)からSM8704Cが入手可能であり、ジメチルポリシロキサンオイルにアミノ基とポリエーテル基が導入されたものとしては信越化学工業(株)からX−61−689が入手可能である。
【0028】
本発明の処理剤は、(d)成分である上記のようなシリコーン化合物をシリコーン純分として0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜2.5重量%、より好ましくは0.1〜1.5重量%含有する。これらのシリコーン化合物によってスプレーミストを均一化させる効果とともにアイロン滑り性を向上させる効果を付与させることもできる。
【0029】
また、本発明では、更に(e)成分として香料成分を含むことが好ましい。ここでいう香料成分とは、「香料の化学」(赤星亮一著、大日本図書、昭和58年、第1刷発行)に記載されている化合物を指す。例として、ベンジルアセテート、3,7−ジメチルオクタノール、4−t−ブチルシクロヘキシルアセテート、2−t−ブチルシクロヘキシルアセテート、2−メチル−3−(p−イソプロピルフェニル)プロピオンアルデヒド、p−t−ブチル−α−メチルハイドロシンナミックアルデヒド、オクチルアルデヒド、1−ノナノール、p−メチル−イソ−プロピルベンゼン、5−メチル−2−イソプロピルシクロヘキサノール、1,3,4,6,7,8−ヘキサハイドロ−4,6,6,7,8,8−ヘキサメチルシクロペンタ−γ−2−ベンゾピラン、7−アセチル−1,1,3,4,4,6−ヘキサメチルテトラハイドロナフタレン、エチレンウンデカンジカルボキシレート、2,6−ジニトロ−3,5−ジメチル−4−アセチル−t−ブチルベンゼン、セドロール、2,6−ジメチルオクタン−1−オール、フェニルエチルフェニルアセテート、ベンジルベンゼンカルボキシレート、1,7,7−トリメチルビシクロ−(2,2,1)−2−ヘプタノン、1,7,7−トリメチルビシクロ−1,2,2−ヘプタノール、2−メチル−サリシレート、ジフェニルエーテル、2−メチルウンデカナール、メチルフェニルアセテート、メチル−2−アミノベンゾエート、シクロペンタデカノリド、ヘキシルシンナミックアルデヒド、ベンゾピロール、2−メトキシ−4−アリルフェノール、3,7−ジメチル−6−オクテン−1−イルアセテート、1−メチル−4−イソプロピル−シクロヘキセン−8−オール、9−デセン−1−オール、4−(4−メチル−4−ヒドロキシアミル)−3−シクロヘキセンカルボキシアルデヒド、α−イソメチルイオノン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエニル−3−アセテート、アミルサリシレート、ベンジルサリシレート、メチル−(3−オキソ−2−ペンチルシクロペンチル)−アセテート、1−(2−t−ブチルシクロヘキシルオキシ)−2−ブタノール、p−メンタ−1,8−ジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン−3−オール等が挙げられる。
【0030】
本発明の処理剤には、上記香料成分を1種以上組み合わせて香料組成物として使用できる。
【0031】
本発明の処理剤には必要に応じて、アイロン滑り性を向上させるためのワックス或いはその乳化物を含有することができ、また保存安定性を向上させるための抗菌・殺菌・防黴剤やアルコール、ポリオール等のような衣料用スプレー糊剤として公知に使用されている成分を併用して配合してもよい。
【0032】
本発明の繊維製品処理剤は、繊維製品、好ましくは木綿等、セルロース系繊維を含む繊維製品に、噴霧、浸漬、塗布等の方法で適用した後、加圧下で加熱処理する方法に好適に用いられる。好ましくは、後述のように手動式スプレーヤーを用いて噴霧することである。加熱温度は、120℃以上、更に150℃以上、更に160℃以上、また、220℃以下、更に200℃以下が好ましく、より更に160〜200℃が好ましい。このような処理により、セルロース系繊維中のセルロース分子と(a)成分との間にエーテル結合を生成することで、防シワ効果が発現すると考えられる。更に、本発明では、処理剤を繊維製品に適用した際に、(c)成分が(a)成分及び(b)成分を木綿繊維中の単繊維内部深くまで浸透させることにより、上記のような(a)成分の効果がより効率よく発現し、その結果、優れた防シワ効果が発現するものと推定される。木綿衣類は、脱水時の遠心力などにより外力を受け、シワを形成する。シワ形成は水分を含むことで促進され、洗濯時の脱水ジワは、家庭洗濯での大きな課題である。しかし、本発明の処理剤を例えば上記のような方法で用いることにより、洗濯、乾燥後の木綿衣類に生じるシワを著しく低減することができる。
【0033】
繊維製品のアイロン処理においては水分を繊維に含ませながらシワを除去しやすくする方法が一般に行われている。水分がシワ除去を促進するため、通常は、水分を付与した直後にアイロンをかけてシワ伸ばしを行う。本発明の処理剤も、繊維製品に適用した後、すぐにアイロン処理、プレス処理等の加圧下での加熱処理を行うことが、シワ除去した平滑な状態を維持するために有効である。(c)成分は、短時間で繊維内部まで(a)成分、(b)成分を浸透させるために有効であると考えられる。
【0034】
本発明の処理剤の使用形態は、処理剤を繊維製品にスプレー処理をして含浸させ、アイロン処理やプレス処理により加熱することで形態安定性を付与するのが好ましい。より簡便に行うにはスプレー処理とアイロン処理等を連続して行い、その間に乾燥工程を行わないのが好ましい。スプレー手段としては手動式トリガー又は手動式ポンプ等の手動式スプレーヤーが好ましく、特に手動式トリガーが好ましい。本発明では、本発明の繊維製品処理剤を、手動式スプレーヤーを備えた容器に充填してなる繊維製品処理剤物品として使用することが最も好ましい。なおスプレーヤーは、1回の噴霧で0.1〜1.5g、好ましくは0.2〜1.0g、特に好ましくは0.25〜0.8gの処理剤が噴出するものが良好である。更に繊維製品から15cm離れた場所から噴霧したとき、1回の噴霧で繊維製品に該処理剤が付着する面積は50〜800cm2、好ましくは100〜600cm2になる容器が好ましい。更に実開平4−37554号公報や特開平9−122547号公報に開示されているような蓄圧式トリガーを用いるとスプレーミストの液だれ・ボタ落ちの無さの点で更に良好である。
【0035】
本発明では、上記のようなスプレー処理によって繊維製品100gに対して(a)成分を純分で平均0.1〜20g、好ましくは0.5〜15g、特に好ましくは0.5〜10gを均一に付着させるのが形態安定性の点で好ましい。
【0036】
本発明では、以上のように本発明の繊維製品処理剤を繊維製品にスプレー処理等で適用した後、60〜300℃の加熱処理を行うことにより形態安定性が得られる。加熱処理は一般に普及しているアイロンやズボンプレッサーや温風乾燥機等を用いて行えるが、加熱処理とシワの除去や折り目つけなどの整形処理を同時に行えるアイロンとズボンプレッサーが好ましく、特にアイロンが簡便であり好ましい。アイロンの設定温度は繊維素材に適した温度で行うが、好ましくは120〜220℃、特に好ましくは140〜200℃である。またアイロンがけ時間は、好ましくは繊維製品100cm2あたり1〜90秒間、特に好ましくは2〜60秒間である。
【実施例】
【0037】
表1に示す繊維製品処理剤を繊維製品に適用後、プレス処理したものを洗濯、乾燥させた場合のシワの抑制効果を、下記の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0038】
(1)評価用処理布の調製
木綿布(平織り金巾♯2003)を、粉末衣料用洗剤(花王(株)製アタック高活性バイオEX)にて全自動洗濯機を用いて洗浄9分、ためすすぎ2回、脱水6分の工程を5サイクル繰り返した後、家庭用2槽式洗濯機で流水すすぎ15分、脱水5分を行い、自然乾燥した後、25cm×15cmに裁断したものを試験布とする。試験布に、表1の繊維製品処理剤をスプレーバイアルにより噴霧する。噴霧量は100%o.w.f.とした。噴霧後、プレス機(株式会社イツミ製万能プレス SPCE−5E)によりプレス(180℃、2分)処理を行い、評価用処理布とした。1つの処理剤につき3枚の処理を同様に行い、評価用処理布として供する。
【0039】
(2)洗濯方法
評価用処理布を下記条件で洗濯し、広げた状態で平干しにて、屋内において自然乾燥(25℃、15時間)させた。
<洗濯条件>
・使用洗濯機;全自動洗濯機HITACHI NW−6CY(W)、標準コース、洗浄9分、ためすすぎ2回、脱水6分
・使用洗剤及び濃度:粉末衣料用洗剤(花王(株)製、アタック高活性バイオEX)20g/30L
・使用水;水道水(室温)、30L
【0040】
(3)評価方法
乾燥後の評価用処理布の外観(シワ、布の傷み等)を観察し、AATCC(American Association of Textile Chemists and Colorists;米国繊維化学技術・染色技術協会) Test Method 124に従って、シワ基準布と比較してシワ抑制効果を評価した。この評価では、「3」点以上であればシワ抑制効果に優れていると判断できる。
【0041】
【表1】

【0042】
*1;重量平均分子量(PEG換算)が7万のアクリル酸/マレイン酸コポリマーであり、アクリル酸/マレイン酸の比率がモル比で7/3である。
*2;フェニルグリコール30、日本乳化剤(株)製〔一般式(1)中のArがフェニル基、R2がエチレン基、mが0、nが3の化合物〕
*3;ベンジルグリコール20、日本乳化剤(株)製〔一般式(1)中のArがフェニル基、R1がメチレン基、R2がエチレン基、mが1、nが2の化合物〕
*4;一般式(1)中のArがノニルフェニル基、R2がエチレン基、mが0、nが3の化合物〔(a)成分に該当しない化合物〕
*5;ジメチルポリシロキサンエマルション、東レ・ダウコーニング(株)製、固形分約40重量%
*6;1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン水分散液、アビシア(株)製
*7;水酸化ナトリウム又は硫酸により調整した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分を0.1〜20重量%、(b)成分を0.001〜10重量%、(c)成分を0.1〜10重量%含有する繊維製品処理剤。
(a)成分:少なくとも3つのカルボキシル基を有する多価カルボン酸及び/又はその塩
(b)成分:以下の(b1)〜(b3)の群から選ばれる酸塩の1種以上
(b1)亜リン酸、次亜リン酸、リン酸、リン酸水素、リン酸二水素、ポリリン酸、メタリン酸、ピロリン酸及びオルトリン酸から選ばれる化合物の塩
(b2)スルホン酸基含有化合物の塩
(b3)ホウ酸、メタホウ酸及び水素化ホウ酸から選ばれる化合物の塩
(c)成分:下記一般式(1)で表される化合物
Ar−(R1m−(OR2n−OH (1)
〔式中、Arは総炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、R1は炭素数1〜2のアルキレン基、R2は炭素数2〜5のアルキレン基、mは0又は1、nは0より大きく10以下の数を示す。〕
【請求項2】
(a)成分が、(a1)分子量が100以上1000未満の低分子型多価カルボン酸及び/又はその塩、並びに(a2)重量平均分子量1000以上100万以下のポリカルボン酸系ポリマー及び/又はその塩から選ばれる化合物である請求項1記載の繊維製品処理剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の繊維製品処理剤を、手動式スプレーヤーを備えた容器に充填してなる繊維製品処理剤物品。
【請求項4】
請求項1又は2記載の繊維製品処理剤を繊維製品に適用した後、当該繊維製品を加圧下で加熱処理する、繊維製品の処理方法。

【公開番号】特開2011−132630(P2011−132630A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292114(P2009−292114)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】