説明

繊維製品用の害虫忌避剤および害虫忌避方法

【課題】繊維製品に適用することで肌に対する優れた害虫忌避効果を発揮する害虫忌避剤および該害虫忌避剤を用いた害虫忌避方法の提供。
【解決手段】(A)メンタン骨格を有する忌避成分0.01〜20質量%と、(B)3級アミン、その中和物、4級アンモニウム基を有する化合物から選ばれる少なくとも1種0.01〜20質量%と、(C)水混和性溶剤0.01〜35質量%と、(D)水と、を含有することを特徴とする繊維製品用の害虫忌避剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品に適用して用いられる害虫忌避剤および該害虫忌避剤を用いた害虫忌避方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液状の忌避剤を肌に適用することで、蚊を忌避することが行われている。人体用の忌避剤としては、ディート(ジエチルトルアミド)を有効成分として含有するものが用いられている。しかしこのような忌避剤は、肌に塗布することに制限や抵抗がある使用者がある。たとえば厚生労働省からは、ディートを含有する医薬品および医薬部外品の安全対策について、小児(12歳未満)に使用させる場合には、保護者の指揮監督の下で使用させ、さらに6ヶ月未満の乳児には使用しないこと、6ヶ月以上2歳未満は1日1回、2歳以上12歳未満は1日1〜3回というような使用回数の制限について注意表記をするよう指導している。
そこで、近年では、天然由来の害虫忌避成分についての研究、開発が行われている。たとえば特許文献1〜3には、p−メンタン−3,8−ジオール等のメンタン骨格を有する化合物を有効成分として含有する害虫忌避剤が開示されている。また、特許文献4には、ネロリドールおよび/またはメチルウンデシルケトンを有効成分として含有する害虫忌避剤が開示されている。
【0003】
しかし、上記のような忌避剤は、肌に直接塗布した部分には高い忌避効果があるものの、塗布むらがあった場合には充分な忌避効果を得ることができない。また、汗をかいたりプールに入った場合には、有効成分が流れてしまい、再度肌に塗り直す必要がある。また、ディートはもちろん、他の有効成分であっても、肌に塗布することに抵抗がある使用者は多い。
近年では、設置型の空間忌避剤もあるが、設置した場所では忌避効果があるものの、場所が限定される。また、ファン式の移動可能な製品も市販されているが、人体に取り付ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−199804号公報
【特許文献2】特開平9−2910号公報
【特許文献3】特開平10−36201号公報
【特許文献4】特開2009−132653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のことから、肌に直接適用せず、適用に手間がかからず、高い害虫忌避効果が得られる害虫忌避技術が求められる。
上記のような忌避剤を、着用する衣類、カーテン、寝具等の繊維製品に適用することで肌に対する忌避効果が得られれば、塗布むらや塗り直しの問題を低減できる。特に衣類の場合、着用するだけでよく、効果が得られる場所も限定されない。しかし、従来肌に適用しているディート等の忌避剤を繊維製品に適用した場合、繊維製品と接していない部分(たとえば衣類から露出している部分の肌)に対する忌避効果は得られない。
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、繊維製品に適用することで肌に対する高い害虫忌避効果を発揮する害虫忌避剤および該害虫忌避剤を用いた害虫忌避方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、水および水混和性溶剤の存在下、特定の忌避成分と特定のカチオン性化合物を共存させた組成物を繊維製品に適用することで、高い害虫忌避効果が得られ、しかも忌避効果が長時間持続することを見出した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、以下の態様を有する。
[1](A)メンタン骨格を有する忌避剤0.01〜20質量%と、(B)3級アミン、その中和物、4級アンモニウム基を有する化合物から選ばれる少なくとも1種0.01〜20質量%と、(C)水混和性溶剤0.01〜35質量%と、(D)水と、を含有することを特徴とする繊維製品用の害虫忌避剤。
[2]前記(B)成分が4級アンモニウム基を有する化合物を含有する、[1]に記載の害虫忌避剤。
[3]前記(A)成分がp−メンタン−3,8−ジオールである、[1]または[2]に記載の害虫忌避剤。
[4]前記(B)成分に対する前記(A)成分の質量比(A/B)が0.01〜20である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の害虫忌避剤。
[5]さらに、(E)α−ピネン、ゲラニオール、シトロネラール、カンファー、リナロールから選ばれる少なくとも1種を含有する、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の害虫忌避剤。
[6]さらに、(F)紫外線吸収剤を含有する[1]〜[5]のいずれか一項に記載の害虫忌避剤。
[7][1]〜[6]のいずれか一項に記載の害虫忌避剤を繊維製品に付着させることを特徴とする害虫忌避方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、繊維製品に適用することで肌に対する優れた害虫忌避効果を発揮する害虫忌避剤および該害虫忌避剤を用いた害虫忌避方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の繊維製品用の害虫忌避剤(以下、本発明の忌避剤という。)は、下記(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)水を含有する。
【0009】
[(A)成分]
(A)成分は、メンタン骨格を有する忌避成分である。
メンタン骨格とは、メンタン(シクロヘキサン環の2つの炭素原子にそれぞれメチル基およびイソプロピル基が1つずつ結合した飽和炭化水素)の炭素骨格を示し、下記構造式(a1)で表されるo−メンタン骨格、構造式(a2)で表されるm−メンタン骨格、構造式(a3)で表されるp−メンタン骨格がある。メンタン骨格中、炭素−炭素結合の一部が二重結合となっていてもよい。
(A)成分としては、p−メンタン骨格を有するものが好ましい。
【0010】
【化1】

【0011】
(A)成分は、メンタン骨格を構成する炭素原子に水素原子が結合した炭化水素であってもよく、該炭化水素の水素原子が置換基で置換されたものであってもよい。該置換基としては、たとえば、水酸基、エーテル性酸素原子(−O−)、アミノ基、アルキル基、カルボン酸基、アシル基、エステル基、アミド基等が挙げられる。これらの中でも、置換基として水酸基を有するものが好ましい。
(A)成分としては、害虫忌避作用を有し且つメンタン骨格を有する化合物として公知のもののなかから、忌避対象の害虫に応じて適宜選択できる。害虫としては、蚊、ハエ類、アブ類、イガ類等の飛翔害虫等が挙げられる。蚊としては、例えばアカイエカ、チカイエカ等のイエカ類、ヒトスジシマカ等のヤブカ類、ユスリカ類等が挙げられる。本発明の忌避剤は、特に、蚊忌避用として有用である。
(A)成分の具体例として、p−メンタン、p−メンタン−3,8−ジオール、l−メントール、ユーカリプトール、L−カルボン、イソメントン、d−リモネン、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール等が挙げられる。
(A)成分としては、衣類等の繊維製品に使用することから、無臭、無色であるものが好ましい。無臭、無色であり、忌避効果が高く、容易に入手できることから、上記の中でも、p−メンタン−3,8−ジオールが好ましい。p−メンタン−3,8−ジオールは、高砂香料株式会社から入手できる。
【0012】
本発明の忌避剤中に含まれる(A)成分は1種でも2種以上でもよい。
本発明の忌避剤中、(A)成分の含有量は、忌避剤の総質量に対し、0.01〜20質量%である。0.01質量%以上であると忌避効果に優れる。20質量%を超えて配合しても効果は大きくは変わらない。該含有量は、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。また、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0013】
[(B)成分]
(B)成分は、3級アミン、その中和物、4級アンモニウム基を有する化合物から選ばれる少なくとも1種である。これらの化合物は、水中で正に帯電する陽イオン性を有する基(塩を形成していてもよい3級アミノ基または4級アンモニウム基)を分子内に含む点で共通している。
(B)成分を含有することで、(A)成分による忌避効果の持続性が向上する。これは、(B)成分が、(A)成分を繊維から徐々に揮発させるためと考えられる。
特に、4級アンモニウム基を有する化合物を用いることで、上記の持続性向上効果に加えてさらに、(A)成分の忌避効果をより高められる。
【0014】
(B)成分としては、たとえば、3級アミノ基を分子内に1つ有する3級アミン、その中和物、その4級化物から選ばれる化合物(B1)、塩を形成していてもよい3級アミノ基を分子内に複数有する高分子化合物、4級アンモニウム基を分子内に複数有する高分子化合物から選ばれる高分子化合物(B2)等が挙げられる。
化合物(B1)における3級アミンとしては、アミド基、エステル基およびエーテル基から選ばれる少なくとも1種の連結基で分断されていてもよい炭素数1〜24の炭化水素基を分子内に少なくとも1つ有する3級アミンが好ましい。該炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよく、鎖状であることが好ましい。
該3級アミンとしては、たとえば、下記一般式(b1)で表される化合物が挙げられ、より具体的には、下記一般式(b1−1)〜(b1−8)で表される化合物等が挙げられる。
【0015】
【化2】

[式中、R〜Rはそれぞれ独立に、アミド基、エステル基およびエーテル基から選ばれる少なくとも1種の連結基で分断されていてもよい炭素数1〜24の炭化水素基または炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示し、R〜Rのうち少なくとも1つは前記炭化水素基である。]
【0016】
【化3】

[式中、R11およびR12はそれぞれ独立に炭素数1〜24の炭化水素基である。R13〜R24はそれぞれ独立に炭素数10〜20の脂肪酸からカルボキシル基を除いた残基である。]
【0017】
一般式(b1−1)で表される化合物は、一般に、脂肪酸またはそのメチルエステルを出発原料として、それをアンモニアでニトリル化して得られるニトリルを、更に水素添加後、ホルムアルデヒドと水素を反応させてメチル化して得られる。
一般式(b1−2)または(b1−3)で表される化合物は、炭素数10〜20の脂肪酸またはそのメチルエステルとメチルジエタノールアミンとの縮合反応により合成することができる。
一般式(b1−4)、(b1−5)または(b1−6)で表される化合物は、炭素数10〜20の脂肪酸またはそのメチルエステルとトリエタノールアミンとの縮合反応により合成することができる。
一般式(b1−7)または(b1−8)で表される化合物は、炭素数10〜20の脂肪酸とN−メチルエタノールアミンとアクリロニトリルの付加物より、「J.Org.Chem.,26,3409(1960)」に記載の公知の方法で合成したN−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチル−1,3−プロピレンジアミンとの縮合反応により合成することができる。
炭素数10〜20の脂肪酸としては、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよい。また該脂肪酸は、直鎖脂肪酸でも分岐脂肪酸でもよい。該脂肪酸として具体的には、たとえば、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、エライジン酸、部分水添パーム油脂肪酸、部分水添牛脂脂肪酸などが挙げられる。
【0018】
化合物(B1)における中和物は、上記3級アミンを酸で中和することにより得られる。
3級アミンの中和に用いる酸としては、有機酸でも無機酸でもよく、塩酸、硫酸、メチル硫酸が挙げられる。
中和は、水の存在下で3級アミンと酸とを接触させることにより実施できる。たとえば予め混合した3級アミンと酸を水に分散してもよいし、酸水溶液中に3級アミンを液状又は固体状で投入してもよく、3級アミンと酸を同時に水中に投入してもよい。
化合物(B1)における4級化物は、上記3級アミンまたはその中和物を、4級化剤と反応させることにより得られるもので、4級アンモニウム基を有する。
4級化剤は、3級アミンの3級窒素原子にメチル基等の炭化水素基を導入して4級化するもので、たとえば塩化メチル、ジメチル硫酸等が挙げられる。
【0019】
化合物(B1)としては、上記の中でも、4級アンモニウム基を有するもの、つまり3級アミンの4級化物が好ましい。該4級化物としては、アルキル基の炭素数が8〜18のモノアルキルトリメチルアンモニウム塩、各アルキル基の炭素数が4〜10のジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキル基の炭素数が8〜18のアルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキル基の炭素数が8〜18のアルキルピリジニウム塩等が好ましく、アルキル基の炭素数が8〜18のモノアルキルトリメチルアンモニウム塩、各アルキル基の炭素数が4〜10のジアルキルジメチルアンモニウム塩がより好ましく、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド及びジデシルジメチルアンモニウムクロライドが特に好ましい。
化合物(B1)は、いずれか1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0020】
高分子化合物(B2)は、塩を形成していてもよい3級アミノ基を分子内に複数有する高分子化合物、4級アンモニウム基を分子内に複数有する高分子化合物から選ばれるものである。
高分子化合物(B2)における「高分子」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量が1,000〜6,000,000であることを意味する。高分子化合物(B2)の重量平均分子量は、好ましくは3,000〜5,000,000であり、より好ましくは5,000〜4,000,000である。
高分子化合物(B2)として具体的には、レオガードKGP(ライオン)等のカチオン化セルロース、ダイドールEC−004、ダイドールHEC、ダイドールEC(大同化成工業)、MERQUAT100(Nalco社)、アデカカチオエースPD−50(旭電化工業)等の塩化ジメチルジアリルアンモニウムの重合体、MERQUAT550(Nalco社)等の塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、MERQUAT280(Nalco社)等の塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体、LUVIQUAT−FC905(BASF)等の塩化イミダゾリニウム・ビニルピロリドン共重体、LUGALVAN−G15000(BASF)等のポリエチレンイミン、ポバールCM318(クラレ)等のカチオン化ポリビニルアルコール、キトサン等のアミノ基を有する天然系の高分子誘導体、ジエチルアミノメタクリレートとエチレンオキシド等が付加された親水基を有するビニルモノマーとの共重合体等が挙げられる。
これらの中でも、カチオン化セルロース、塩化ジメチルジアリルアンモニウムの単独重合体、塩化ジメチルジアリルアンモニウムと他の単量体との共重合体が好ましい。
高分子化合物(B2)は、いずれか1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0021】
本発明の忌避剤中に含まれる(B)成分は1種でも2種以上でもよい。
忌避効果の持続性向上効果の観点からは、(B)成分が、少なくとも化合物(B1)を含有することが好ましく、化合物(B1)からなることが好ましい。
本発明の忌避剤中、(B)成分の含有量は、忌避剤の総質量に対し、0.01〜20質量%である。0.01質量%以上であると忌避効果の持続性効果に優れる。20質量%を超えて配合しても効果は大きくは変わらない。該含有量は、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。また、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
本発明においては、(B)成分に対する(A)成分の質量比(A/B)が0.01〜20であることが好ましい。A/Bがこの範囲にあると忌避効果およびその持続効果がともに優れる。A/Bは、10以下がより好ましく、5以下がさらに好ましい。また、A/Bは、0.1以上がより好ましく、1以上がさらに好ましい。
【0022】
[(C)成分]
(C)成分は、水混和性溶剤である。
「水混和性溶剤」とは、水と混合した際に均一な溶液となる有機溶剤を意味する。
(C)成分としては、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、および下記一般式(c1)で表わされる化合物から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
−O−(CO)−(CO)−H …(c1)
[式中、Rは炭素数1〜8(好ましくは2〜6)のアルキル基またはアルケニル基であり、yおよびzはそれぞれ平均付加モル数であり、yは0〜20(好ましくは0〜10)、zは0〜5(好ましくは0〜3)を示す。]
中でも、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルカルビトール(ジエチレングリコールモノブチルエーテルともいう。)、ジエチレングリコールモノプロピレングリコールモノブチルエーテルが好ましく、安定性、揮発性、臭気の観点からエタノールがより好ましい。
本発明の忌避剤中に含まれる(C)成分は1種でも2種以上でもよい。
本発明の忌避剤中、(C)成分の含有量は、忌避剤の総質量に対し、0.01〜35質量%である。0.01質量%以上であると乾燥性に優れる。35質量%以下であると、臭気に優れる。該含有量は、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。また、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。
【0023】
[(D)水]
水としては、蒸留水、イオン交換水、水道水が挙げられる。
水を配合することで、忌避効果の持続性が高まる傾向にある。
本発明の忌避剤中、水の含有量は、上記(A)〜(C)成分とのバランスにより設定され、特に限定されないが、忌避剤の総質量に対し、50質量%以上であることが好ましい。50質量%以上であると、忌避効果の持続性向上効果が充分に得られる。
【0024】
[(E)成分]
本発明の忌避剤は、さらに、(E)α−ピネン、ゲラニオール、シトロネラール、カンファー、リナロールから選ばれる少なくとも1種(以下、(E)成分)を含有することができる。
これらの(E)成分は、害虫忌避作用を有する忌避成分であり、(A)成分と併用することで忌避効果がさらに向上する。
本発明の忌避剤中に含まれる(E)成分は1種でも2種以上でもよい。
本発明の忌避剤中、(E)成分の含有量は、忌避効果を考慮すると、忌避剤の総質量に対し、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、配合量を多くしても効果が大きくは変わらない点、臭気の点などから、忌避剤の総質量に対し、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。
【0025】
[(F)成分]
本発明の忌避剤は、(A)〜(C)成分および(D)水に加えて、または(A)〜(C)、(E)成分および(D)水に加えて、(F)紫外線吸収剤(以下、(F)成分)を含有することが好ましい。本発明の忌避剤の、蚊等の害虫に対する忌避効果は、特に屋外で発揮されることが望まれる。(F)成分を併用することで、屋外での忌避効果を高めることができる。また、(F)成分を併用することにより、(F)成分本来の効果である、衣類等の繊維製品を透過して肌に作用する紫外線の量を大きく低減することもできる。
(F)成分により屋外での忌避効果が高まる作用機構については、明らかになっていないが、本発明の(A)成分は繊維表面から徐々に揮発することで忌避効果を発現するが、屋外に出て繊維製品への紫外線量が増えたときに、(F)成分の作用により(A)成分の揮発性が高まることなどが考えられる。
【0026】
(F)成分としては、無機紫外線吸収剤、有機紫外線吸収剤等の公知の紫外線吸収剤を用いることができる。
無機紫外線吸収剤としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛などの無機粉体が挙げられる。
有機紫外線吸収剤としては、例えば、スチルベン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ポリアミド−2誘導体、シリコーン誘導体等が挙げられる。
【0027】
有機紫外線吸収剤として用いられるスチルベン誘導体としては、例えば、下記一般式(I)で表される化合物、下記一般式(II)で表される化合物等が挙げられる。
【0028】
【化4】

(式中、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウムイオン又はアミンから形成された陽イオンであり、R1aは置換されたアリール基であり、R1bは水素原子、置換基を有していてもよいアリール基、モルホリノ基、アルキルアミノ基又はヒドロキシ基であり、n及びnはそれぞれ独立的に0又は1である。)
【0029】
【化5】

(式中、R2a、R2b、R2c、R2dはそれぞれ独立に、−NR2e2fで示される基である。R2e、R2fはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基もしくは置換基を有していてもよいアリール基であるか、又はR2eとR2fとがヘテロ原子を介して結合して複素環を形成しており、Mは前記と同じである。)
【0030】
式(II)で表される化合物としては、特に、下記一般式(III)又は(IV)で表される化合物が好ましい。
【0031】
【化6】

(式中、R3aは水素原子又はヒドロキシ基であり、Xは−NH−R3b、−O−R3b又はモルホリノ基であり、R3bはフェニル基又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Yは−C(=O)−NR3c3d、−SO−NR3c3d、−C(=O)−NHR3b又は−C(=O)−OMであり、R3c及びR3dはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Mは前記と同じである。)
【0032】
【化7】

(式中、R4aは下記一般式(4a)で表される基であり、R4bは−NH又は−N(CHCHOH)であり、Mは前記と同じである。)
【0033】
【化8】

(式中、R4cは−NR4d4eであり、R4d及びR4eはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基である。)
【0034】
これらのスチルベン誘導体として具体的には、特開平10−87638号公報、特開平10−81672号公報、特開平9−3052号公報等の実施例中に記載の化合物が挙げられる。
スチルベン誘導体は、市販のものを用いることができ、例えばチバスペシャリティケミカルズ社製のTinosorb FD、チバスペシャリティケミカルズ社製のTinosorb FR等が挙げられる。
【0035】
有機紫外線吸収剤として用いられるベンゾフェノン誘導体としては、例えば、下記一般式(V)で表される化合物、下記一般式(VI)で表される重合性ビニルモノマーの単独重合体又は共重合体などが挙げられる。該共重合体は、式(VI)で表される重合性ビニルモノマーを2種以上重合させた共重合体であってもよく、式(VI)で表される重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、該重合性ビニルモノマーと共重合可能な他の重合性ビニルモノマーとの共重合体であってもよい。
【0036】
【化9】

(式中、R5a〜R5jはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシル基、−OR’、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、硫酸基、スルホン酸基又はアミノ基であり、R’はアルキル基又はアルケニル基である。)
【0037】
【化10】

(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Lは−O−、−OCHCHO−又は−OCHCHCHO−である。)
【0038】
ベンゾフェノン誘導体は、市販のものを用いることができ、例えばシプロ化成株式会社社製のSEESORB101S(構造式V)、住化ケムテックス株式会社社製のSumisorb 130(構造式V)、一方社油脂工業株式会社社製のULS−700(構造式VI)等が挙げられる。
【0039】
有機紫外線吸収剤として用いられるベンゾトリアゾール誘導体としては、例えば、下記一般式(VII)で表される重合性ビニルモノマーの単独重合体又は共重合体などが挙げられる。該共重合体は、式(VII)で表される重合性ビニルモノマーを2種以上重合させた共重合体であってもよく、式(VII)で表される重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、該重合性ビニルモノマーと共重合可能な他の重合性ビニルモノマーとの共重合体であってもよい。
【0040】
【化11】

(式中、Zは水素原子、ハロゲン原子又はメチル基であり、R7aは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、R7bは炭素数1〜6の直鎖又は分岐状のアルキレン基であり、R7cは水素原子又はメチル基である。)
【0041】
ベンゾトリアゾール誘導体は、市販のものを用いることができ、例えば一方社油脂工業株式会社製のULS−1700、株式会社ニッコー化学研究所製のNCI−905−20EM等が挙げられる。
【0042】
有機紫外線吸収剤として用いられるポリアミド−2誘導体としては、例えばNALCO社製のSolamer GR8等が挙げられる。
有機紫外線吸収剤として用いられるシリコーン誘導体としては、DSM社製のPARSOL SLX等が挙げられる。
【0043】
(F)成分としては、上記の中でも、屋外での忌避効果の向上効果に優れることから、有機紫外線吸収剤が好ましく、スチルベン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ベンゾフェノン誘導体が特に好ましい。
【0044】
また、(F)成分は、屋外での忌避効果の向上効果に優れることから、水分散性又は水溶性であることが好ましい。特に(A)成分に対して均一に作用させるために水溶性であることが好ましい。
上記で挙げた(F)成分のうち、0.5%以上水に可溶な水溶性の(F)成分としては、シプロ化成株式会社製のSEESORB101S、SEESORB100等が挙げられる。中でも水溶性の高いSEESORB101Sが好ましい。
【0045】
本発明の忌避剤中に含まれる(F)成分は1種でも2種以上でもよい。
本発明の忌避剤中、(F)成分の含有量は、忌避剤の総質量に対し、0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましく、0.1〜5質量%がさらに好ましい。0.001質量%以上であると(F)成分を配合することによる効果が充分に得られる。10質量%を超えて配合しても効果は大きくは変わらないため、経済性の観点から10質量%以下とすることが好ましい。
【0046】
本発明の忌避剤は、さらに、忌避効果を向上させる目的で、(A)成分および(E)成分以外の他の忌避成分を含有することができる。
該他の忌避成分としては、害虫忌避作用を有するものであれば特に限定されず、天然に存在する成分を用いても合成品を用いてもよいが、天然に存在する成分が好ましい。
該他の忌避成分としては、たとえば、以下のものが例示される。
ジャスモン、ジヒドロジャスモン、ジャスモン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、メチルオイゲノール、イソオイゲノール、サリチル酸アミル、サリチル酸イソアミル、サリチル酸ヘキシル、サリチル酸シス−3−ヘキセニル、サリチル酸ベンジル、ベンズアルデヒド、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、2−フェノキシエタノール、α−アミルケイ皮アルデヒド、桂皮アルコール、桂皮アルデヒド、桂皮酸エチル、桂皮酸プロピル、桂皮酸イソプロピル、酢酸シンナミル、安息香酸アミル、安息香酸イソアミル、安息香酸ヘキシル、安息香酸シス−3−ヘキセニル、安息香酸ヘプチル、安息香酸オクチル、ファルネソール、ネロリドール、フェトール、テトラハイドロリナロール、ボルニルアセテート、ミルセニルアセテート、セドリルアセテート、ラベンダリーアセテート、シトロネリルイソブチレート、テルピニルプロピオネート、リナリルホルメート、シトロネリルチグレート、ノピルアセテート、ベチベリルアセテート、リラール、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、2,6,10−トリメチル−9−ウンデカナール、ヨノン、ダマスコン、ヌートカトン、セドリルメチルエーテル、シトロネロール、シトラール、β−ピネン、酢酸シトロネリル、シンナミックアルデヒド、ノニルアルコール、チモール、オイゲノール、ベンジルホーメイト、ベンジルアセテート、ベンジルプロピオネート、ベンジルブチレート、ベンジルバレレート、ベンジルカプロエート、リナロール、α−ヘキシルケイ皮アルデヒド、レモングラス油、ラベンダー油、オレンジ油、ベチバー油、パチョウリ油、カナンガ油、クローブ油、カジェプット油、シトロネラ油、ナツメグ油、ペッパ−油、サンダルウッド油、バルク油、ガージン油、ジンジャー油、カンポー油、キュウベブュ油、コ−ンミント油、アニス油、ラング油、シナモン油、メース油、パロマロ−サ油、フェンネル油、カラムス油、タイムス油、ニ−ム油、シナモンリーフ油、ジャスミン油、ネロリ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ゼラニウム油、プチグレン油、レモン油、ユーカリ油、タイム油等。
なお、上記のうち、油(オイル)には成分(A)を含有するものもある。このような油を配合する場合、該油の含有量は、成分(A)を除いた量とし、該油に由来する成分(A)の量は成分(A)の含有量に含めるものとする。
【0047】
[その他の任意成分]
本発明の忌避剤は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の他の成分を含有してもよい。該他の成分としては、害虫忌避剤や繊維製品処理剤に通常用いられる成分を配合することができ、たとえば、非イオン性界面活性剤、香料組成物、シリコーン化合物、キレート剤、再汚染防止剤、高分子、防腐剤、抗菌剤、忌避剤、天然物などのエキス、分散剤、色素、酸化防止剤、増粘剤、減粘剤、pH調整剤などが挙げられる。非イオン性界面活性剤、香料組成物としては、それぞれ、以下に示すものが挙げられる。
これらの任意成分の配合量は、忌避剤の総質量に対し、5質量以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
【0048】
(非イオン性界面活性剤)
非イオン性界面活性剤としては、公知のものが利用でき、たとえばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルキルエステルや、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルポリグルコシド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられる。中でも、炭素数10〜22のアルキル基又はアルケニル基を有し、オキシエチレン基の平均付加モル数が10〜100モルであるポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルキル(C1〜3)エステルや、オキシエチレン基の平均付加モル数が10〜100モルであるポリオキシエチレンアルキルアミン、炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキルポリグルコシド、オキシエチレン基の平均付加モル数が20〜100モルである硬化ヒマシ油が好ましく、特に炭素数10〜14のアルキル基を有し、オキシエチレン基の平均付加モル数が5〜20モルのポリオキシエチレンアルキルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数が30〜50モルである硬化ヒマシ油が好ましい。
【0049】
(香料)
香料としては公知のものが利用でき特に限定されず、様々な文献、例えば「Perfume and Flavor Chemicals 」,Vol.Iand II,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)および「合成香料 化学と商品知識」、印藤元一著、化学工業日報社(1996)および「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin 」,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994 )および「香りの百科」、日本香料協会編、朝倉書店(1989)および「Perfumery Material Performance V.3.3」,Boelens Aroma Chemical Information Service(1996)および「Flower oils and Floral Compounds In Perfumery」,Danute Lajaujis Anonis,Allured Pub.Co.(1993)等に記載されている香料原料のリストから適宜選択できる。
【0050】
本発明の忌避剤は、25℃におけるpHが3〜8であることが好ましい。該pHがこの範囲内であれば、本発明の忌避剤を衣類等の繊維製品に適用したときの繊維製品のダメージが少ない。
本発明の忌避剤は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)水、ならびに必要に応じてその他の成分を、混合することにより調製できる。
【0051】
本発明の忌避剤は、害虫忌避のために繊維製品に適用される。
本発明の忌避剤を繊維製品に付着させることで、当該繊維製品と接する部分だけでなく、その近傍においても害虫忌避効果が発揮されるとともに、その効果が長時間持続する。
たとえば本発明の忌避剤で処理した衣類を着用したり、本発明の忌避剤で処理した布類で肌の一部を覆うと、覆われた部分だけでなく、その近傍の露出した部分の肌に対しても、害虫忌避効果が発揮される。
これらの効果は、繊維製品に付着した(A)成分が揮発することによって忌避効果を発揮するとともに、(B)成分によって(A)成分の急激な揮発が抑制されてその持続性が向上することによると考えられる。
【0052】
本発明の忌避剤の使用量は、忌避効果の点では、繊維製品100cmあたりの(A)成分の量が0.01mg以上となる量が好ましく、0.1mg以上となる量がより好ましい。
上限は特に限定されないが、繊維製品100cmあたりの(A)成分の量が40mg以下となる量が好ましく、30mg以下となる量がより好ましく、20mg以下となる量が好ましい。配合量を40mgよりも多くしても効果は大きく変わらない。また、衣類にシミが発生するおそれがある。
【0053】
本発明の忌避剤を繊維製品に付着させる方法としては、特に限定されない。たとえば、繊維製品を本発明の忌避剤中に浸漬した後風乾する方法、本発明の忌避剤を洗濯の仕上げ工程で適用する方法、本発明の忌避剤をスプレー容器に収納し、繊維製品に対して噴霧した後風乾する方法、等が挙げられる。
特に、家庭においても手軽に実施できる簡便性や、使用したい繊維製品にのみ適用できるという経済性の点から、本発明の忌避剤をスプレー容器に収納し、繊維製品に噴霧した後風乾する方法が好ましい。
【0054】
スプレー容器としては、エアゾールスプレー容器、トリガースプレー容器(直圧型あるいは蓄圧型)、ディスペンサースプレー容器等が挙げられる。
エアゾールスプレー容器の例としては、特開平9−3441号公報、特開平9−58765号公報等に記載されているものが挙げられる。また、エアゾールスプレー容器に用いる噴射剤としてはLPG(液化プロパンガス)、DME(ジメチルエーテル)、炭酸ガス、窒素ガス等が挙げられ、これらは単独で使用しても良く、2種以上を混合して使用しても良い。
トリガースプレー容器の例としては、特開平9−268473号公報、特開平9−256272号公報、特開平10−76196号公報等に記載のものが挙げられる。
ディスペンサースプレー容器の例としては、特開平9−256272号公報等に記載のものが挙げられる。
【0055】
本発明の忌避剤をスプレー容器に収納し、対象となる繊維製品に噴霧して使用する場合の噴霧量は、特に限定はされないが、忌避効果の点では、繊維製品の質量に対して1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、経済性を考慮すると、繊維製品の質量に対して100質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。
【0056】
本発明の忌避剤は、プラスチック製容器に収納することができる。該プラスチック製容器としては、ボトル容器、詰替え用のスタンディングパウチ等が挙げられる。
スタンディングパウチとしては、例えば、特開2000−72181号公報に記載のものが挙げられる。内層に100〜250μmの線状低密度ポリエチレン、外層に15〜30μmの延伸ナイロンの二層構造又は15μmの延伸ナイロンを中間層、15μmの延伸ナイロンを外層にした三層構造のスタンディングパウチが保存安定性の点から好ましい。
【0057】
本発明の忌避剤を適用する対象の繊維製品としては、特に限定されないが、例えば、Yシャツ、Tシャツ、ポロシャツ、ブラウス、チノパン、スーツ、スラックス、スカート、帽子、靴下、靴等の衣類、テーブルクロス、ランチョンマット、カーテン、寝具、ベビーカー、等が挙げられる。
対象とする繊維製品の素材は、特に限定されないが、例えば、綿、ウール、麻等の天然繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン、テンセル、ポリノジック等の再生繊維及びこれら各種繊維の混紡品、混織品、混編品等が挙げられる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
各例で使用した原料を以下に示す。
〔使用原料〕
[(A)成分]
p−メンタン−3,8−ジオール:高砂香料製。
[(B)成分]
塩化ジデシルジメチルアンモニウム:ライオンアクゾ株式会社製「アーカード210」。
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム:ライオンアクゾ株式会社製「アーカードT−800」。
塩化トリオクチルアンモニウム:東京化成工業株式会社製。
ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド:東邦化学株式会社製「カチナールMPAS−R」。
マーコート100:NALCO社製「マーコート100」(塩化ジメチルジアリルアンモニウム重合体)。
[(C)成分]
95%エタノール:日本合成アルコール社製。
[(E)成分]
シトロネラール:東京化成工業株式会社製。
[(F)成分]
ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルフォン酸:シプロ化成株式会社製「SEESORB101S」。
【0059】
[その他]
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40EO):青木油脂工業株式会社製「ブラウノンRCW−40」、オキシエチレン基の平均付加モル数40。
ラウリル硫酸ナトリウム:東京化成工業株式会社製。
モノエタノールアミン:株式会社日本触媒製。
硫酸:株式会社森化学工業所製。
ディート:日本精化株式会社製。
【0060】
<実施例1〜12、比較例1〜7>
表1〜2に示す組成となるように各成分を混合して忌避剤を調製した。
表1〜2中、配合量の単位は質量%であり、精製水の「バランス」は忌避剤の全量が100質量%となる量である。硫酸の「微量」は、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドの中和に用いた硫酸に由来する。水酸化ナトリウムの「微量」は、忌避剤の25℃におけるpHが5となる量であり、実施例12と実施例5のpHをほぼ同じとするために添加した。
得られた忌避剤について、以下の評価を行った。結果を表1〜2に併記した。
【0061】
<1.忌避効果>
[1−1.評価用綿布の前処理]
綿メリヤス(谷頭商店)を、市販洗剤「トップ」(ライオン社製)により、二槽式洗濯機(三菱電機製CW−C30A1−H)を用い、下記の条件で3回処理することにより前処理を行った。
前処理条件:洗剤(標準使用量)20g/30L水、浴比30倍、45℃の水道水、洗浄10分→注水すすぎ10分を2回。
【0062】
[1−2.評価サンプルの準備]
6cm×12cmの穴を開けたサポーターに、前処理した綿メリヤス(6cm×6cm)を縫い付け、評価サンプルとした。該評価サンプルを腕に装着し、手には軍手をつけ、サポーターの穴があいた部分(露出部分)以外は露出部がない状態とした。
忌避剤の評価をする場合は、サポーターに縫い付けた綿メリヤスに、忌避剤をディスペンサーポンプスプレー(スタイルガード、ライオン社製)を用いて、0.2gスプレーした。
【0063】
[1−3.忌避効果の評価]
屋内(夏期:室温28℃)にて、ブランクとして、30cm×30cm×30cmの籠にヒトスジシマカ雌10頭を入れ、その籠の中に、忌避剤で処理していない評価サンプルを巻き付けた腕を挿入し、30秒の間に露出部分に係留するヒトスジシマカの数(A)をカウントとした。
続いて、綿メリヤスに忌避剤をスプレーした評価サンプルを、忌避剤をスプレーした直後またはスプレーしてから3時間経過後に腕に巻き付け、ブランクと同様にヒトスジシマカ雌10頭が入った籠に腕を挿入し、30秒の間に露出部分に係留するヒトスジシマカの数(B)をカウントした。
上記AおよびBの値から、忌避剤をスプレーした直後(直後)、スプレーしてから3時間経過後(3hr)それぞれの評価サンプルを用いた場合の忌避率(%)を下記式により算出した。
忌避率(%)=(B−A)/A×100
【0064】
[1−4.屋外での忌避効果の評価]
実施例5及び12の忌避剤について、上記忌避効果の評価と同様の評価を、晴天時の屋外(夏期:外気温32℃)にて行った。
【0065】
<2.製造直後外観>
忌避剤の製造直後の外観を目視で、下記の基準で評価した。
○:透明である。
×:濁りがある(溶解せず)。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
上記結果に示すように、実施例1〜12の忌避剤は、3時間後においても50%以上の忌避率が得られており、忌避効果、その持続性ともに優れていた。
(F)成分を含有する実施例12は、屋内における忌避効果は実施例5と同じであったが、屋外における忌避効果は、実施例5よりも高かった。
一方、(B)成分を含まない比較例1は、直後の忌避率は100%と高いものの、3時間後の忌避率が40%と低く、持続性が悪かった。
(A)成分を含まない比較例2は、直後の時点で忌避率が低かった。
(B)成分の代わりにポリオキシエチレン硬化ヒマシ油やラウリル硫酸ナトリウムを配合した比較例3、4、および(C)成分の配合量が35質量%を超えた比較例5は、直後の忌避率は100%と高いものの、3時間後の基比率が40%と低く、持続性が悪かった。
(B)成分の代わりにモノエタノールアミンを配合した比較例6は、直後の時点で忌避率が低く、製造直後の外観も悪かった。
(A)成分の代わりにディートを配合した比較例7は、直後の時点で忌避率が低かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)メンタン骨格を有する忌避剤0.01〜20質量%と、(B)3級アミン、その中和物、4級アンモニウム基を有する化合物から選ばれる少なくとも1種0.01〜20質量%と、(C)水混和性溶剤0.01〜35質量%と、(D)水と、を含有することを特徴とする繊維製品用の害虫忌避剤。
【請求項2】
前記(B)成分が4級アンモニウム基を有する化合物を含有する、請求項1に記載の害虫忌避剤。
【請求項3】
前記(A)成分がp−メンタン−3,8−ジオールである、請求項1または2に記載の害虫忌避剤。
【請求項4】
前記(B)成分に対する前記(A)成分の質量比(A/B)が0.01〜20である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の害虫忌避剤。
【請求項5】
さらに、(E)α−ピネン、ゲラニオール、シトロネラール、カンファー、リナロールから選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の害虫忌避剤。
【請求項6】
さらに、(F)紫外線吸収剤を含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の害虫忌避剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の害虫忌避剤を繊維製品に付着させることを特徴とする害虫忌避方法。

【公開番号】特開2013−6823(P2013−6823A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−89318(P2012−89318)
【出願日】平成24年4月10日(2012.4.10)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】