説明

繊維製品用液体洗浄剤組成物

【課題】繊維製品から発生する生乾き臭、特に、繊維製品を乾燥後、湿潤(湿気を帯びること)によって生じる再発性の生乾き臭に対して優れた抑制能を有する衣類用液体洗浄剤組成物、及びこれを用いた効率的な生乾き臭抑制方法の提供。
【解決手段】成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含有する繊維製品用液体洗浄剤組成物。(A)一般式(1)で表される非イオン界面活性剤15〜70質量%。R(CO)pO−[(C24O)q/(AO)r]R'(1)、(B)水混和性有機溶剤1〜40質量%、(C)一般式(2)〜(4)のいずれかで表される1以上のカルボニル化合物0.01〜5質量%、(D)水。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生乾き臭及び再発性の生乾き臭を抑制する繊維製品用液体洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の生活環境への関心の高まりから、身の回りの不快な臭気(本明細書において、「異臭」ともいう)を除去することが以前にも増して望まれている。タオル、寝具、衣料等の繊維製品に付着する臭気には、タバコなどの外的要因のほかに、繊維製品の使用を繰り返すことにより生じる、人体由来の内的要因が挙げられる。
【0003】
下着、タオル及びハンカチを始めとする、ヒトの皮膚と直接接触し皮脂を含んだ汗や角質などを吸収又は付着する可能性のある繊維製品は、洗濯後、洗濯槽内等の湿気の多い場所にしばらく放置した場合や、室内干しした場合、雨や汗で濡れた場合、乾燥が不十分である場合などに、特有の臭いを生ずることがある。この臭いは一般に生乾き臭と呼ばれるものであり、十分な乾燥を行うことで大部分を除去することができる。しかしながら、十分な乾燥を行い、生乾き臭が感じられなくなった繊維製品であっても、汗や雨などで繊維製品が湿気を帯びると、再び雑巾臭様の生乾き臭が生じることがある。このように、繊維製品が生乾き臭を一度発生するようになると、洗濯後の十分な乾燥により一時的には生乾き臭を除去できるが、使用時に雑巾様の生乾き臭が再発し易くなる(以降、この使用時に再発生する雑巾様の生乾き臭を「再発性の生乾き臭」とする)。このような再発性の生乾き臭は、室内干しの場合のみならず、低温乾燥機能を備えた洗濯機又は乾燥機を用いた場合や、室外干し乾燥の場合でさえも、湿気を帯びると生じる場合がある。
【0004】
再発性の生乾き臭の特徴的な点は、洗濯し十分に乾燥した後は発生しない、ないしはほとんど低減するが、その後湿気を帯びるだけで再び発生する点にある。再発性の生乾き臭は、長期間タンスなどに収納した場合に生じ易い。しかしながら、下着、ハンカチ、タオルなど、ヒトの肌との接触機会が多く、洗浄−使用サイクルの期間の短い使用頻度の多い繊維製品は、一度この生乾き臭が発生するようになると使用中に臭いが再発してくることが多い。更には、洗濯回数が増えるほど生乾き臭の臭い強度が高まる傾向がある。
【0005】
ところで、これまでに、生乾き臭の指標物質として4-メチル-3-ヘキセン酸を含む数種類の脂肪酸が提案されている(特許文献1参照)。4-メチル-3-ヘキセン酸は、天然では、柚子の成分として知られているとともに(非特許文献1参照)、テルペンより微生物によって生成することも知られている(特許文献2参照)。また、非特許文献2では生乾き臭が発生した衣類より菌を分離し、分離した各菌株を分離源の衣類片に接種して加湿培養を行い、生乾き臭の発生、及び4-メチル-3-ヘキセン酸の生成量を評価した結果と衣類からの検出頻度とあわせて生乾き臭の主原因菌を特定し、これをMoraxella osloensisと同定している。
【0006】
一方、繊維製品から発生する異臭等の除去方法としては、香料成分を用いたマスキングや、殺菌又は抗菌剤を用いた異臭の原因となる微生物の抗菌や殺菌による消臭が知られている。例えば、特許文献3では特定の香料成分を配合することによって特定の末端封鎖型ノニオン界面活性剤の臭気をマスキングすることが開示されている。特許文献4では水溶性抗菌性化合物を含有し、菌に由来する異臭や悪臭を抑制する効果の高い液体洗浄剤が開示されている。特許文献5では有機溶剤とカチオン界面活性剤を含有する、抗菌力が素早く効果を発揮して室内干しなどの乾燥条件においても悪臭の発生を抑える効果の高い液体洗浄剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-244094号公報
【特許文献2】特開昭56-124387号公報
【特許文献3】特開2000-160192号公報
【特許文献4】特開2001-254099号公報
【特許文献5】特開2009-073915号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】第53回 香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会 学会要旨集(2009)p.4-6
【非特許文献2】日本農芸化学会2011年度大会講演要旨集,第102頁,2C25p03,2011年3月5日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1によって4-メチル-3-ヘキセン酸が生乾き臭に含まれることは判明したが、生乾き臭発生のメカニズムは依然として不明であり、生乾き臭の発生を抑制する手法の開発は重要な課題として残っていた。また、4-メチル-3-ヘキセン酸を含む数種類の脂肪酸と再発性の生乾き臭との関連についても明らかにされていなかった。
【0010】
そして、特許文献3のように、香料によるマスキングで悪臭を抑制する技術では、洗浄剤組成物中に香料を配合しても、すすぎ工程において、香料が水相に移行し、マスキング香料が一部流出する場合があり、また、衣類上に残った香料についても経時的に揮散してしまうため、特に再発性の生乾き臭のように長い時間を置いた後に発生する臭いについては十分な消臭効果が得られない場合があった。
【0011】
本発明は、繊維製品から発生する生乾き臭、特に、繊維製品を乾燥後、湿潤(湿気を帯びること)によって生じる再発性の生乾き臭に対して優れた抑制能を有する衣類用液体洗浄剤組成物、及びこれを用いた効率的な生乾き臭抑制方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは生乾き臭の原因物質、原因菌、及び発生のメカニズムの観点から鋭意検討を行った。その結果、生乾き臭のみならず、再発性の生乾き臭についても4-メチル-3-ヘキセン酸の寄与が高く、主な原因物質であることを見出した。また、Moraxella osloensisに代表されるような、生乾き臭及び再発性の生乾き臭の原因となる微生物が衣類上に多く存在していることを見出した。
【0013】
そこで、殺菌以外の方法で生乾き臭及び再発性の生乾き臭を抑制する技術について鋭意検討を重ねた結果、この細菌の代謝によって生じる生乾き臭及び再発性の生乾き臭を抑制する上で、特定の構造を有するカルボニル化合物が、生乾き臭、特に4-メチル-3-ヘキセン酸の生成抑制に有用であることを見出した。そして、これらのカルボニル化合物を繊維製品用液体洗浄剤に使用した場合、すすぎ工程後であっても抑臭効果を発揮することができ、更に長期間保存後であっても抑臭効果が持続することを見出した。
【0014】
本発明は、以下の成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含有する繊維製品用液体洗浄剤組成物を提供するものである。
【0015】
(A) 一般式(1)で表される非イオン界面活性剤 15〜70質量%
R(CO)pO−[(C24O)q/(AO)r]R' (1)
〔式中、Rは炭素数7〜22の直鎖状炭化水素基を示し、R'は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、AOは炭素数3〜5のアルキレンオキシ基を示す。
pは0又は1の数を示す。
q及びrは平均付加モル数を示し、qは8〜30の数、rは0〜5の数を示し、かつq+rは13以上の数である。
p=0のとき、R'は水素原子であり、qは12以上の数である。
「/」はC24O基及びAO基が、ランダム又はブロックのいずれに結合したものであってもよいことを示す。〕
(B) 水混和性有機溶剤 1〜40質量%
(C) 以下の成分(C1)、(C2)及び(C3)から選ばれる1以上の化合物 0.01〜5質量%
(C1) 一般式(2)で表される、カルボニル基のβ位に分岐を有し、かつ分子中に6員環構造を含む総炭素数10〜16のカルボニル化合物
【0016】
【化1】

【0017】
〔式中、破線は二重結合が形成されてもよいことを示し、nは0又は1の整数を示す。
1は炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜5のアルケニル基を示すか、R4又はR5と共に6員環構造を形成する。
2は炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜5のアルケニル基を示すか、R4と共に6員環構造を形成する。
3は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜5のアルケニル基を示す。ただし、隣接する炭素原子が二重結合を有する場合には存在しない。
4は、単独でフェニル基又はシクロヘキシル基を示すか、R1若しくはR2と共に前述の6員環構造、又はR5と共にエーテル基を含む側鎖若しくはオキソ基を有してもよい5若しくは6員環構造を形成する。
5は、単独で水素原子を示すか、R1及び/又はR4と共に前述の環構造を形成する。
6は、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。ただし、隣接する炭素原子が二重結合を有する場合には存在しない。
前記の環構造は、架橋環構造又は縮合環構造であってもよく、また二重結合及び/又は側鎖を有してもよい。〕
(C2) 一般式(3)で表される、5員環又は6員環を含む総炭素数9〜15のエステル化合物
【0018】
【化2】

【0019】
〔式中、R7は炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜5のアルケニル基を示すか、R8と共に5又は6員環を形成する。
8は炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜5のアルケニル基を示すか、R7及び/又はR10と共に5又は6員環を形成する。
9は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜5のアルケニル基を示す。
10は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、側鎖を有してもよいシクロヘキシル基又はベンジル基を示すか、R8と共に前述の5又は6員環を形成する。
前記の環構造は、架橋環構造又は縮合環構造であってもよく、また二重結合及び/又は側鎖を有してもよい。〕
(C3) 一般式(4)で表される総炭素数8〜17のアンスラニル酸エステル化合物
【0020】
【化3】

【0021】
〔式中、R11は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基を示し、R12及びR13は独立して水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基又は炭素数2〜5のアシル基を示す。〕
(D) 水
【0022】
更に本発明は、上記の繊維製品用液体洗浄剤組成物を用いて繊維製品を洗濯することによる再発性の生乾き臭を抑制する方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の衣類用液体洗浄剤組成物は、洗濯後に繊維製品から発生する生乾き臭、特に乾燥後、湿潤によって生じる再発性の生乾き臭に対し優れた抑制効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔成分(A):非イオン界面活性剤〕
本発明の成分(A)は一般式(1)で表される非イオン界面活性剤である。
再発性の生乾き臭抑臭効果を高めるには、後述する成分(C)を多く含有することが好ましいが、成分(C)を多く配合した場合には、これを液体洗浄剤組成物中に均一かつ安定に分散させることが難しくなる。このため、成分(A)としては成分(C)を可溶化させる能力が高いものが好ましい。
【0025】
上記観点より好ましい非イオン界面活性剤の例として、一般式(1)中のp=0であるものが挙げることができ、なかでも下記一般式(1a)で表されるものを挙げることができる。
【0026】
RO−(C24O)q/(AO)rH (1a)
〔式中、R、AO、q及びrは前記と同じ意味を示す。〕
【0027】
一般式(1a)で表される化合物は、炭素数8〜22の脂肪族アルコールに、エチレンオキシドを付加反応させる、又はエチレンオキシドと炭素数3〜5のアルキレンオキシドとをランダム若しくはブロック的に付加反応させることによって得ることができる。
【0028】
また、一般式(1a)中のqは、エチレンオキシドの平均付加モル数であり、保存安定性、溶解性、及び洗浄性能の点から、好ましくは15以上、より好ましくは16以上であり、好ましくは27以下、より好ましくは24以下である。rは炭素数3〜5のアルキレンオキシドの平均付加モル数である。アルキレンオキシドの付加は無くても良いが、アルキレンオキシドを付加するほうが好ましく、平均付加モル数は洗浄性能の点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、好ましくは5以下、より好ましくは4以下である。
【0029】
一般式(1a)中のアルキレンオキシ基AOは、炭素数3〜5のアルキレンオキシドを付加反応させることによって得られるものであり、付加反応により結合した部分はメチル分岐ないしプロピル分岐した構造を有する。AOとしては、プロピレンオキシドを付加反応させて得られるオキシプロピレン基(以下、POと表記する場合がある)が好ましい。
【0030】
本発明では特に、エチレンオキシドの平均付加モル数qが15〜27、更には16〜24であって、プロピレンオキシドの平均付加モル数rが1〜4、更には2〜4である化合物を用いることが、保存安定性、溶解性、洗浄性能に優れた液体洗浄剤組成物を得る点から最も好ましい。
【0031】
一般式(1a)において「/」は、エチレンオキシ基(以下、EOと表記する場合がある)及びAO基の関係がランダム結合、ブロック結合のいずれでもよく、例えば、以下のいずれであってもよいことを意味している。またr個のAOは、複数のブロック体として分かれていてもよい。
【0032】
RO−(AO)r−(EO)qH (1a-1)
RO−(EO)q−(AO)rH (1a-2)
RO−[(EO)q1・(AO)r]−(EO)q2H (1a-3)
RO−(EO)q1−[(AO)r・(EO)q2]H (1a-4)
RO−(EO)q1−(AO)r−(EO)q2H (1a-5)
〔式中、R、q、r、EO及びAOは前記と同じ意味を示し、q1及びq2は平均付加モル数であって、q=q1+q2である。“・”はランダム結合であることを示す。〕
【0033】
一般式(1a-1)〜(1a-5)で表される化合物は、脂肪族アルコールROHに対するエチレンオキシドを含むアルキレンオキシドの反応割合、並びに反応順序を考慮することで調製することができる。
【0034】
一般式(1a)中のRは直鎖アルキル基であるのが好ましい。また、保存安定性の点から、前記一般式(1a-2)、(1a-4)、(1a-5)のいずれかで表される化合物が好ましく、このなかでも一般式(1a-5)で表される化合物がより好ましい。特に、RO−に結合するオキシアルキレン基がオキシエチレン基である化合物の割合が、成分(A)を構成している化合物中の75モル%以上、更に80モル%以上(上限は100モル%)であることが最も好ましい。このような化合物は、脂肪族アルコールに最初にエチレンオキシドを付加させた後、未反応のアルコールを除去するか、或いは最初にエチレンオキシドを6モル以上、特には8モル以上付加させることで得ることができる。例えば、前記一般式(1a-2)のq、又は前記一般式(1a-4)若しくは一般式(1a-5)のq1で示される平均付加モル数が6モル以上、更には8モル以上の化合物である。
【0035】
安定性をさらに高める上で、一般式(1a)中に末端が−EO−Hの構造を有する化合物が70モル%以上、更に80モル%以上(上限は100モル%)であることが好ましい。この範囲であると、洗浄剤組成物が低温での安定性に優れるようになる。このような化合物は、一般式(1a)で表される化合物を製造する上で、AOの元となる炭素数3〜5のアルキレンオキシド、好ましくはプロピレンオキシドの付加反応工程を終えてから、最後にエチレンオキシドだけを6モル以上、更には8モル以上付加させることで得ることができる。例えば、前記一般式(1a-3)又は一般式(1a-5)のq2で示される平均付加モル数が6モル以上、更には8モル以上の化合物である。
【0036】
本発明では、一般式(1a)において、Rが、酸素原子と結合する第1級炭素原子を有する直鎖のアルキル基であって、前記RO−EO−や−EO−Hのモル%の条件を満たす化合物が最も好ましい。本発明において、RO−EO−や−EO−Hの割合は、C13−NMRを用いた定量測定で求めることができる。
【0037】
一般式(1)中のp=1である化合物としては、下記一般式(1b)で表されるものを挙げることができる。
【0038】
R''CO−O−(A'O)s−R''' (1b)
〔式中、R''は炭素数9〜13の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数9〜13の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基を示し、A'Oは炭素数2〜4のアルキレンオキシ基を示し、R'''は炭素数1〜3のアルキル基を示し、sは5〜30の整数を示す。〕
【0039】
本発明の液体洗浄剤組成物中における成分(A)の含有量は、成分(C)を液体洗浄剤組成物中に均一かつ安定に分散させる観点から、15〜70質量%であり、好ましくは30〜69質量%、より好ましくは40〜59質量%である。
【0040】
〔成分(B):水混和性有機溶剤〕
本発明の液体洗浄剤組成物は、安定性、溶解性を向上させるため、成分(B)の水混和性有機溶剤を1〜40質量%含有する。本発明でいう水混和性有機溶剤とは、25℃のイオン交換水1Lに50g以上溶解するもの、すなわち、溶解の程度が50g/L以上である溶剤を指す。
【0041】
成分(B)の水混和性有機溶剤は、組成物の粘度調整剤、ゲル化抑制剤として有効であり、洗浄性能、安定性、溶解性の点で、水酸基及び/又はエーテル基を有するものが好ましい。成分(B)の水混和性有機溶剤としては、効果的に組成物の粘度調整、ゲル化抑制を達成する観点より、以下の(B1)〜(B6)から選ばれる1種以上を使用することが好ましい。
【0042】
(B1) エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール等のアルカノール
(B2) エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール等の炭素数2〜6のアルキレングリコール、及びグリセリン
(B3) ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、重量平均分子量400〜4000のポリエチレングリコール若しくはポリプロピレングリコール等の炭素数2〜4のアルキレングリコール単位からなるポリアルキレングリコール
(B4) ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール等の炭素数2〜4のアルキレングリコール単位の(ポリ)アルキレングリコールと炭素数1〜5のアルカノールからなる(ポリ)アルキレングリコール(モノ又はジ)アルキルエーテル
(B5) 1-メチルグリセリルエーテル、2-メチルグリセリルエーテル、1,3-ジメチルグリセリルエーテル、1-エチルグリセリルエーテル、1,3-ジエチルグリセリルエーテル、トリエチルグリセリルエーテル、1-ペンチルグリセリルエーテル、2-ペンチルグリセリルエーテル、1-オクチルグリセリルエーテル、2-エチルヘキシルグリセリルエーテル等の炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルグリセリルエーテル
(B6) 2-フェノキシエタノール、モノエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、平均分子量約480のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、2-ベンジルオキシエタノール、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等の炭素数2〜3のアルキレングリコール単位を有する(ポリ)アルキレングリコールの芳香族エーテル
【0043】
成分(B)の水混和性有機溶剤は、効果的に組成物の粘度調整、ゲル化抑制を達成する観点より、上記の(B1)アルカノール、(B2)のうちアルキレングリコール、(B4)(ポリ)アルキレングリコール(モノ又はジ)アルキルエーテル、及び(B6)芳香族エーテル類から選ばれる2群以上を併用することが好ましく、(B2)のうちアルキレングリコール、(B4)(ポリ)アルキレングリコール(モノ又はジ)アルキルエーテル、(B6)芳香族エーテルから選ばれる2群以上、より具体的にはプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、モノ〜トリエチレングリコールモノフェニルエーテルから選ばれる2種以上を併用することが好ましい。
【0044】
本発明の液体洗浄剤組成物中における成分(B)の含有量は、組成物の安定性、溶解性の点から、1〜40質量%であり、5〜35質量%が好ましく、10〜25質量%が特に好ましい。
【0045】
〔成分(C):特定構造を有するカルボニル化合物〕
本発明の液体洗浄剤組成物は成分(C)の特定構造を有するカルボニル化合物を含有する。成分(C)は、モラクセラ等の生乾き臭原因菌の代謝を抑制し、4-メチル-3-ヘキセン酸等の生乾き臭及び再発性の生乾き臭の発生を抑制する。成分(C)のカルボニル化合物は、カルボニル基が結合する原子(炭素原子又は酸素原子)の隣の炭素原子に分岐鎖が存在するという構造的特徴を有している。
【0046】
成分(C)のうち、成分(C1)としては、1-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン(α-ダマスコン)、1-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン(β-ダマスコン)、1-(2,6,6-トリメチル-3-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン(δ-ダマスコン)、1-(2,4,4-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン(イソダマスコン)、1-(2,6,6-トリメチル-1,3-シクロヘキサジエン-1-イル)-2-ブテン-1-オン(ダマセノン)、7-メチル-オクタヒドロ-1,4-メタノナフタレン-6(2H)-オン(プリカトン)、4-(1-エトキシビニル)-3,3,5,5-テトラメチル-シクロヘキサノン(ケファレス)、4-フェニル-4-メチル-2-ペンタノン(べチコン)、4-シクロヘキシル-4-メチル-2-ペンタノン(ベチバール)、6,7-ジヒドロ-1,1,2,3,3-ペンタメチル-4(5H)-インダノン(カシュメラン)、7-アセチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-1,1,6,7-テトラメチルナフタレン(イソイースーパー)、(4R)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-6α-イソプロペニル-4β,4aβ-ジメチルナフタレン-2(3H)-オン(ヌートカトン)、2,2,6-トリメチル-シクロヘキサン-1-カルボン酸エチル(テサロン)、2,6,6-トリメチル-シクロヘキサ-1,3-ジエン-1-カルボン酸エチル(エチルサフラネート)、2-メチル-4-オキソ-6-ペンチル-2-シクロヘキセン-1-カルボン酸エチル(カリクソール)、2-エチル-6,6-ジメチルシクロヘキセ-2-エン-1-カルボン酸エチル(ジベスコン)、2,2-ジメチル-6-メチレン-1-シクロヘキサン-1-カルボン酸メチル(ロマスコン)が挙げられる。このうち、ダマセノン、ダマスコン、プリカトン、ケファレス、テサロン、エチルサフラネートが好ましく、なかでもダマセノン、δ-ダマスコン、テサロンが好ましい。
【0047】
成分(C)のうち、成分(C2)としては、(1,1-ジメチル-2-フェニルエチル)アセテート(ジメチルベンジルカルビニルアセテート:DMBCA)、(1,1-ジメチル-2-フェニルエチル)ブチレート(ジメチルベンジルカルビニルブチレート:DMBCB)、(1,1-ジメチル-2-フェニルエチル)プロピオネート(ジメチルベンジルカルビニルプロピオネート:DMBCP)、(ヘキサヒドロ-4,7-メタノインデン-5(又は6)-イル)アセテート(トリシクロデセニルアセテート:TCDA)、(ヘキサヒドロ-4,7-メタノインデン-5(又は6)-イル)プロピオネート(トリシクロデセニルプロピオネート:TCDP)、2H-1-ベンゾピラン-2-オン(クマリン)、(1-(3,3-ジメチルシクロヘキシル)エチル)アセテート(ロザムスク)、5-ヘプチルテトラヒドロフラン-2-オン(γ-ウンデカラクトン)、5-ヘキシルテトラヒドロフラン-2-オン(γ-デカラクトン)、5-ペンチルテトラヒドロフラン-2-オン(γ-ノナラクトン)が挙げられる。このうち、DMBCA、DMBCB、DMBCP、TCDA、TCDPが好ましい。
【0048】
成分(C)のうち、成分(C3)としては、メチル 2-(メチルアミノ)ベンゾエート(ジメチルアンスラニレート)、メチル 2-アミノベンゾエート(メチルアンスラニレート)、(Z)-3-ヘキセン-1-イル アミノベンゾエート(シス-3-ヘキセニルアンスラニレート)、メチル 2-アセトアミドベンゾエート(アセチルメチルアンスラニレート)、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-イル アミノベンゾエート(リナリルアンスラニレート)が挙げられる。このうち、ジメチルアンスラニレートが好ましい。
【0049】
成分(C)としては、成分(C1)、(C2)及び(C3)のいずれかに該当する化合物1種以上を使用すればよいが、複数種併用することが好ましい。更には成分(C1)、(C2)及び(C3)の各群に該当する化合物をそれぞれ1種以上併用することが好ましい。成分(C)は、すすぎ工程後でも衣類に残留し、細菌の代謝抑制による生乾き臭抑臭効果を発揮する観点から、衣類用洗浄剤組成物中0.01〜5質量%含有するが、0.1〜5質量%、更には0.5〜5質量%含有するのが好ましい。また、成分(C)と成分(A)の質量比は、0.01:70〜2:50が好ましく、0.1:70〜2:30がより好ましく、更には0.5:70〜2:10が好ましい。
【0050】
また、すすぎ工程後でもより多くの量の成分(C)を衣類に残留させ、細菌の代謝抑制による生乾き臭抑臭効果を向上させる観点から、成分(C)は単独で又は後述する成分(G)と共にカプセル化して用いることもできる。ここで、成分(C)をカプセル化する形態としては、
1.成分(C)を含有するコア(芯物質)を高分子のシェル(壁又は殻物質)で被覆するコアシェル型カプセル
2.成分(C)及び/又は成分(C)とそれ以外の油剤をマトリックス材料に浸透させて全体を粒子形状とする粒子型カプセル
が挙げられる。
【0051】
<コアシェル型カプセル>
コアシェル型のカプセルのシェル(壁または殻物質)としては、下記の(1)〜(4)から選ばれる1種及び/又は2種以上を用いるものが挙げられる。
【0052】
(1)アミノプラスト樹脂:メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、メチル化メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ウレタン−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ウレタン−ホルムアルデヒド樹脂
(2)エポキシアクリレート樹脂
(3)ウレタンアクリレート樹脂
(4)アクリル酸・メタクリル酸共重合樹脂
【0053】
コアシェル型カプセル構造体の補強材料として、下記の(5)〜(13)から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。特に、(5)〜(13)の材料の中で4級化アンモニウム基及び/又は4級化アミノ基を有する材料は、カプセルスラリーの分散状態を安定化させる目的で、調製されたカプセルスラリーに添加することもできる。
【0054】
(5)アルギン酸誘導体:アルギン酸、アルギン酸塩、アルギン酸エステル類
(6)硫酸化多糖類:カラギーナン
(7)アラビアガム
(8)蛋白質:ゼラチン、カゼイン
(9)デンプン/変性デンプン:デキストリン、シクロデキストリン、モルトデキストリン、ヒドロキシプロピル化デンプン、カルボキシメチル化デンプン、カチオン化デンプン
(10)セルロース/セルロース誘導体:セルロース、カチオン化セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース
(11)グアーガム誘導体:カチオン化グアーガム、ヒドロキシアルキル化グアーガム、カルボキシメチル化グアーガム
(12)ピロリドン系高分子:ポリビニルピロリドン、ポリビニルポリピロリドン
(13)合成多価アルコール系高分子:ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール
【0055】
コア物質としては、成分(C)と共に、パーム油、パーム核油、綿実油、大豆油、コーン油、ココナッツ油、オリーブ油、ベニハナ油、カスター油、ヒマシ油等の植物油及びこれらの混合物;アジピン酸ジブチル、フタル酸ジブチル、アジピン酸ブチルベンジル、アジピン酸ベンジルオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル及びこれらの混合物;流動パラフィン、ペトロラタム(精製グリース)、カルナバロウ等の融点80℃以上のワックス類、その他、沸点が90℃を超える直鎖又は分岐鎖の炭化水素、及び成分(G)の香料を含むことができる。
【0056】
コアシェル型カプセルのシェルとしては、アミノプラスト樹脂が好ましく、特にメチル化メラミン−ホルムアルデヒド樹脂が好ましい。コアシェル型カプセルの製造方法としては、成分(C)を含有する油滴(エマルション)を形成させ、界面膜をポリマー相分離プロセスでシェルとするか、モノマー物質を界面重合させてシェルを形成する方法が挙げられる。
【0057】
カプセルの製造過程における界面膜をポリマー相分離プロセスの代表例としては、コアセルベーション法が挙げられる。コアセルベーション法としては特にアニオン系高分子乳化剤を用いるコアセルベーション法が好適である。アミノプラスト樹脂を用いてコアシェルカプセルを製造する方法の非限定的な例としては、下記の方法が挙げられる。
【0058】
〔コアシェル型カプセルの製造方法〕
メチル化メラミン−ホルムアルデヒド樹脂のメタノール溶液をブチルアクリレート−アクリレート共重合体を乳化剤として含む水溶性中に添加して攪拌しつつ、有機酸(酢酸、ギ酸など)を添加して、水相のpHを3〜6に調整する。その後、成分(C)を含む油相を温度50℃付近で添加する。安定なエマルション状態となるまで攪拌しつつ、温度を50℃〜100℃付近まで少しずつ上昇させて重合反応を促進させ、メチル化メラミン−ホルムアルデヒド樹脂によるシェルを形成させる。本法では、重合反応の初期段階において、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトアセトアミド、その他のアミン類を追加して膜厚を増加させることもできる。当該方法においてカプセル調製時に混合されるコア物質:シェル物質の質量比は、20:80〜85:15であり、得られるカプセルのシェルの平均厚さは、0.02〜1.0μmである。また、生成するカプセルの平均粒子径は1〜500μmであり、好ましくは5〜100μmであり、より好ましくは10〜80μmである。
【0059】
<粒子型カプセル>
マトリックス材料による粒子型のカプセルの形態としては、シクロデキストリン、変性デンプン等を用いたエクストルージョン法及びスプレードライ法が挙げられる。
エクストルージョン法は、成分(C)を含む芯物質をマトリックス材料となる物質を含む溶液中に投入分散させた後、微粒子状態で吐出させることによって乾燥させて、粒子形状とするものである。
スプレードライ法は、シクロデキストリン、変性デンプン等のマトリックス材料に成分(C)を含む芯物質をスプレーした後、温風をあてるか減圧下で乾燥させつつ造粒するものである。粒子型のカプセルでは、下記(1)〜(9)から選ばれる1種及び/又は2種以上をマトリックス材料として用いることができる。
【0060】
(1)デンプン/変性デンプン:デキストリン、シクロデキストリン、モルトデキストリン、ヒドロキシプロピル化デンプン、カルボキシメチル化デンプン、カチオン化デンプン
(2)セルロース/セルロース誘導体:セルロース、カチオン化セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース
(3)グアーガム誘導体:カチオン化グアーガム、ヒドロキシアルキル化グアーガム、カルボキシメチル化グアーガム
(4)ピロリドン系高分子:ポリビニルピロリドン、ポリビニルポリピロリドン
(5)合成多価アルコール系高分子:ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール
(6)二糖類:スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース
(7)単糖類:グルコース、フルクトース、ガラクトース
(8)無機高分子:シリケート、ゼオライト、ハイドロタルサイト、スメクタイト、塩化カルシウム、塩化亜鉛の多孔質粒状無機塩
(9)ロウ、ワックス類
【0061】
〔成分(D):水〕
本発明の液体洗浄剤組成物は、成分(D)として水を含有するが、組成物の安定性、溶解性を向上させる観点より、水を5〜40質量%、更には10〜30質量%含有することが好ましい。水はイオン交換水などの組成に化学的に影響の少ないものを用いることが好ましい。
【0062】
〔成分(E):カチオン界面活性剤〕
本発明の液体洗浄剤組成物は、抑臭効果向上の観点から、更に成分(E)としてカチオン界面活性剤を含有することが好ましい。カチオン界面活性剤としては、例えば、長鎖アルキル基を有する1級〜3級のアミン(但し後述のアルカノールアミンを除く)であって、好ましくは途中にエーテル結合、エステル結合又はアミド結合を有してもよい炭素数8〜22のアルキル基を1つ又は2つ有し、残りが水素原子又は炭素数4以下のヒドロキシ基を有してもよいアルキル基であるカチオン界面活性剤を挙げることができる。本発明では、炭素数8〜22の長鎖アルキル基を1つ有する第4級アンモニウム型界面活性剤、炭素数8〜22の長鎖アルキル基を1つ有する3級アミンが好ましい。
本発明の液体洗浄剤組成物は、成分(E)を0.1〜10質量%、更には0.3〜8質量%、更には0.8〜6質量%含有することが好ましい。
【0063】
〔成分(F):アルカリ剤〕
本発明の液体洗浄剤組成物には、成分(F)としてアルカリ剤を配合することが好ましい。アルカリ剤としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩等の無機アルカリ剤のほか、液体洗浄剤において一般的に使用される、炭素数2〜4のアルカノール基を1〜3個有するアルカノールアミンを挙げることができる。中でも、アルカノール基がヒドロキシエチル基であるアルカノールアミンが好ましい。アルカノールアミンの窒素原子に結合するアルカノール基以外の基は、水素原子であるが、メチル基であってもアルカリ剤として使用することができる。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、イソプロパノールアミン混合物(モノ、ジ、トリの混合物)等のアルカノールアミン類が挙げられる。本発明ではモノエタノールアミン、トリエタノールアミンが最も好ましい。これら成分(F)は、後述するpH調整剤として用いることができる。
【0064】
本発明の液体洗浄剤組成物は、成分(F)を、0.5〜8質量%、更には1〜7質量%含有することが好ましい。なかでも、成分(F)としてアルカノールアミンを、0.5〜8質量%、更には1〜7質量%含有することが好ましい。
【0065】
〔成分(G):成分(C)以外の香料〕
本発明の液体洗浄剤組成物は、成分(G)として、成分(C)以外の任意の香料を使用することができる。具体的には、『香料と調香の基礎知識』(中島基貴編著,産業図書株式会社,1995年6月21日初版)、『合成香料−化学と商品知識』(印藤元一著、化学工業日報社、2005年3月25日 増補改訂版)、『Perfume and Flavor Chemicals」(ステファン・アークテンダー著、自費出版、1969年)に記載されている香料を使用することができる。
【0066】
特に本発明の液体洗浄剤組成物における香り立ち、及び洗浄基剤の基剤臭のマスキングの観点から、成分(G)は成分(G1)としてリモネン、ジヒドロミルセノール、リナロール、リナリルアセテート、フェニルエチルアルコール、シトラール、ジヒドロジャスモン酸メチルを含有することが好ましい。また、残香性の観点から、成分(G)は成分(G2)としてフェニルヘキサノール、アンバーコア、ヘキシルシンナミックアルデヒド、サリチル酸ヘキシル、γ-ウンデカラクトン、エチレンブラシレート、シクロペンタデカノリドを含有することが好ましい。また、成分(G1)と(G2)を共に含有することが特に好ましい。成分(G1)と(G2)を共に含有することで、香り立ちと残香性のバランスが取れ、嗜好性の高い香りが得られる。
【0067】
また生乾き臭は4-メチル-3-ヘキセン酸由来の雑巾様臭以外にもカビ様の臭気など複数の臭気成分を有する複合臭であるため、成分(C)に加え、成分(G)、特に成分(G1)と(G2)を含有することで、4-メチル-3-ヘキセン酸由来の雑巾様臭以外の悪臭成分も効果的に消臭できる。
【0068】
成分(G)は成分(C)と共に本発明の液体洗浄剤組成物に配合でき、成分(G)と成分(C)の合計量は液体洗浄剤組成物中0.1〜6質量%が好ましい。成分(G1)を配合する場合、成分(G1)の含有量は成分(G)と成分(C)の合計量の10〜70質量%が好ましく、20〜50質量%がより好ましい。成分(G2)を配合する場合、成分(G2)の含有量は成分(G)と成分(C)の合計量の10〜50質量%が好ましく、20〜40質量%がより好ましい。また、香り立ちと残香性のバランスの観点から成分(G1)と成分(G2)の質量比は1:2〜3:1が好ましい。
【0069】
また、成分(C)をカプセル化して本発明の液体洗浄剤組成物に配合する場合、成分(G)は成分(C)と共にカプセルに配合しても良いし、成分(C)とは別のカプセルに配合しても良いし、カプセルに配合せず直接液体洗浄剤組成物に配合しても良い。
【0070】
成分(F)としてアルカノールアミンを配合する場合は、製品の安定性の観点から、アルカノールアミンと反応して着色性の化合物を生成しうる共役カルボニル構造を含む香料化合物の含有量(成分(C)及び成分(G)の合計量として)が、液体洗浄剤組成物中の0.2質量%以下であることが好ましく、含有しないことがより好ましい。このような共役カルボニル構造を有する香料化合物としては、例えばシトラール、バニリン、ヘキシルシンナミックアルデヒド、β-メチルイオノン、アニスアルデヒドが挙げられる。また、組成物のpHの影響を受けにくい香料を用いることが好ましい。
【0071】
〔成分(H):キレート剤〕
本発明の液体洗浄剤組成物は、成分(H)としてキレート剤を含有することができる。キレート剤としては、液体洗浄剤に用いられる公知のものを用いることができ、例えば、ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジエンコル酸等のアミノポリ酢酸又はこれらの塩;ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、オキシジコハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキシメチル酒石酸等の有機酸又はこれらの塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、これらのアルカリ金属塩又は低級アミン塩等が挙げられる。本発明では成分(F)として挙げたアルカノールアミンを塩とすることが好ましく、酸として配合し、系中でアルカリ剤により中和した塩であってもよい。
【0072】
本発明の液体洗浄剤組成物中における成分(H)の含有量は、酸型としての換算量で、0.1〜5質量%が好ましく、更には0.1〜4質量%、更には0.1〜3質量%が好ましい。
【0073】
〔その他の成分〕
更に本発明の液体洗浄剤組成物には、次の(i)〜(xii)に示す成分を、目的に応じて配合することができる。
(i)下記のi-aからi-e群の中から選ばれるアニオン界面活性剤
(i-a)平均炭素数10〜20のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩。
(i-b)平均炭素数10〜20の直鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコール由来のアルキル基又は分岐アルコール由来のアルキル基を有し、オキシアルキレン基の平均付加モル数が1〜5であり、オキシアルキレン基としてオキシエチレン基を含み、平均付加モル数0.2〜2モルの範囲でオキシプロピレン基を含んでいてもよい、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩
(i-c)平均炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル塩
(i-d)平均炭素数8〜20の脂肪酸塩
(i-e)平均炭素数10〜20の直鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコール由来のアルキル基又は分岐アルコール由来のアルキル基を有し、オキシアルキレン基の平均付加モル数が1〜5であり、オキシアルキレン基としてオキシエチレン基を含み、平均付加モル数0.2〜2モルの範囲でオキシプロピレン基を含んでいてもよい、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩
ここで、上記アニオン界面活性剤を構成する塩はナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、アルカノール、アミン塩、及びマグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩などを挙げることができるが、特に安定性の観点からアルカノールアミン塩であることが好ましい。
(ii)ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、カルボキシメチルセルロース、重量平均分子量5000以上のポリエチレングリコール、無水マレイン酸−ジイソブチレン共重合体、無水マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体、無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、及び特開昭59-62614号公報の請求項1〜21(1頁3欄5行〜3頁4欄14行)記載のポリマーなどの再汚染防止剤及び分散剤
(iii)ポリビニルピロリドン等の色移り防止剤
(iv)過酸化水素、過炭酸ナトリウムまたは過硼酸ナトリウム等の漂白剤
(v)テトラアセチルエチレンジアミン、特開平6-316700号公報に記載の一般式(I-2)〜(I-7)で表される漂白活性化剤等の漂白活性化剤
(vi)セルラーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ等の酵素
(vii)ホウ素化合物、カルシウムイオン源(カルシウムイオン供給化合物)、ビヒドロキシ化合物、蟻酸等の酵素安定化剤
(viii)蛍光染料、例えばチノパールCBS(商品名、チバスペシャリティケミカルズ製)やホワイテックスSA(商品名、住友化学社製)として市販されている蛍光染料
(ix)ブチルヒドロキシトルエン、ジスチレン化クレゾール、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の酸化防止剤
(x)パラトルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、メタキシレンスルホン酸、安息香酸塩(防腐剤としての効果もある)等の可溶化剤
(xi)オクタン、デカン、ドデカン、トリデカン等のパラフィン類;デセン、ドデセン等のオレフィン類;塩化メチレン、1,1,1-トリクロロエタンなどのハロゲン化アルキル類;D-リモネン等のテルペン類などの水非混和性有機溶剤
(xii)その他、色素、香料、抗菌防腐剤、シリコーン等の消泡剤
【0074】
以下に本発明の液体洗浄剤組成物中、前記任意成分を配合する場合の指標としての濃度を示すが、本効果を損なわない程度に適宜調整され、配合に適さない場合は除外される。
(i)のアニオン界面活性剤の含有量は、0〜30質量%が好ましく、1〜25質量%がより好ましく、1〜20質量%が更に好ましい。
(ii)の再汚染防止剤及び分散剤は、界面活性剤濃度が高い場合、特に成分(A)としてエチレンオキシドの平均付加モル数qが16以上である化合物を用いる場合には、実質的に含有しないことが好ましい。
(iii)の色移り防止剤の含有量は、0.01〜10質量%が好ましい。
(iv)の漂白剤の含有量は、0.01〜10質量%が好ましい。
(v)の漂白活性化剤の含有量は、0.01〜10質量%が好ましい。
(vi)の酵素の含有量は、0.001〜2質量%が好ましい。
(vii)の酵素安定化剤の含有量は、0.001〜2質量%が好ましい。
(viii)の蛍光染料の含有量は、0.001〜1質量%が好ましい。
(ix)の酸化防止剤の含有量は、0.01〜2質量%が好ましい。
(x)の可溶化剤は、0.1〜2質量%が好ましい。
(xi)の水非混和性有機溶剤は、0.001〜2質量%が好ましい。
(xii)のその他の成分は、例えば公知の濃度で配合することができる。
【0075】
なお、上記任意成分のうち(x)、(xi)は液体洗浄剤組成物の安定性に影響を及ぼすのでその配合には特に注意を要する。
【0076】
〔pH、粘度その他〕
本発明の液体洗浄剤組成物のpHは、優れた洗浄性能を得る観点より、6〜11、更には8〜10(20℃)が好ましい。本発明の液体洗浄剤組成物のpHは、JIS K3362:1998記載の方法により20℃で測定した値とする。
【0077】
本発明の液体洗浄剤組成物の20℃における粘度は、取り扱いの容易さの点で10〜500mPa・sが好ましく、50〜400mPa・sがより好ましく、100〜300mPa・sが更に好ましい。成分(B)や可溶化剤により、このような範囲になるように調整することが好ましい。
【0078】
本発明において粘度はB型粘度計により測定する。ローターは粘度に合ったものを選択する。回転数60r/minで回転し、回転開始から60秒後の粘度を液体洗浄剤組成物の粘度とする。
【0079】
本発明の液体洗浄剤組成物は、衣料、寝具、布帛等の繊維製品用の洗浄剤として好適であり、これら繊維製品を洗濯することにより、生乾き臭、特に再発性の生乾き臭を抑制することができる。
【0080】
本発明の液体洗浄剤組成物を用いた、生乾き臭及び再発性の生乾き臭を抑制するための処理方法は特に限定されないが、以下の工程を含む洗濯方法であることが好ましい。
工程1:本発明の液体洗浄剤組成物を含有する洗浄液中で繊維製品を洗浄する工程
工程2:工程1終了後、繊維製品を洗浄液から分離した後にすすぎを行う工程
【0081】
工程1で用いる洗浄液は、本発明の液体洗浄剤組成物を水で希釈することで得られたものが好ましい。衣類等の繊維製品中に存在する生乾き臭発生原因菌に対し、成分(C)をより有効に適用させる観点から、工程1で用いられる洗浄液における成分(C)の濃度は0.03〜40mg/mLが好ましく、0.3〜40mg/mLがより好ましく、1.5〜20mg/mLがより好ましい。洗浄液中の成分(C)の濃度が上記範囲内になるように、本発明の液体洗浄剤組成物の処方及びその希釈倍率を調整することが好ましい。
【0082】
また、衣類等の繊維製品中に存在する生乾き臭発生原因菌に対し、成分(C)をより有効に適用させる観点から、工程1における浴比は5〜20が好ましく、10〜20がより好ましい。ここで浴比とは、洗浄液の質量を繊維製品の質量で割った値を意味する。工程1で用いられる洗浄液の温度は5〜50℃が好ましく、15〜50℃がより好ましい。また、工程1で繊維製品を洗浄する時間は5〜20分が好ましく、10〜20分がより好ましい。
【0083】
工程2は1回又は2回以上繰り返し行うことができるが、衣類等の繊維製品中に存在する生乾き臭発生原因菌に対し、成分(C)をより有効に適用させる観点から、工程2は1回であることが好ましい。工程2を1回にする場合、工程1で用いた洗浄液が衣類に残留することを防止するため、本願の繊維製品用液体洗浄剤組成物は、アニオン界面活性剤を含有することが好ましく、成分(A)とアニオン界面活性剤の合計量は15〜70質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましく、更には40〜60質量%が好ましい。成分(A)とアニオン界面活性剤の質量比は、50:50〜90:10、更には60:40〜80:20であることが好ましい。
【実施例】
【0084】
試験例1 生乾き臭原因菌の特定
(1)菌株の単離
洗濯乾燥の後に生乾き臭が発生した木綿のタオル又はバスタオルを裁断し、LP希釈液(日本製薬社製)を添加後、攪拌した溶液0.1mLをレシチン・ポリソルベート添加ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト(本明細書においてSCD-LPともいう)寒天培地(日本製薬社製)に塗沫し、35℃、24時間培養後、得られたコロニーから微生物を単離した。単離した細菌株の同定は、16S rDNA遺伝子の上流領域約500bpの塩基配列、酵母株の同定は、LSUのD2領域の約200〜500bp領域の塩基配列を決定し、当該塩基配列と基準株との同一性に基づき行った。塩基配列の同一性は、遺伝子情報処理ソフトウェアClustalWを用いて算出した。なおモラクセラ・エスピーに関してはモラクセラ・オスロエンシスATCC19976の塩基配列を決定し、その塩基配列と比較することで同定した。
各タオル又はバスタオルから単離された菌株を表1に示す。
【0085】
(2)繊維製品での生乾き臭再現試験
(1)で単離された各種菌株を、それぞれ生乾き臭が発生した木綿のタオル、あるいは使用後洗濯して保管していた木綿のタオルを滅菌処理したものに接種し、35℃で24時間加湿条件下(湿度100%)で培養した。その後、生乾き臭の発生の有無を下記基準に基づいて、香料評価の訓練を受けた専門評価者パネラー(N=3)の合意により判定した。その結果を表1に示す。
1:生乾き臭の発生が非常に強い
2:生乾き臭の発生が強い
3:生乾き臭の発生が弱い
4:生乾き臭が全くしない
【0086】
【表1】

【0087】
表1に示すように、すべての生乾き臭発生タオル・バスタオルから、モラクセラ・エスピーが単離された。また、単離されたモラクセラ・エスピーは、その菌数も多かった。さらに、単離したモラクセラ・エスピーを生乾き臭が発生したタオルを滅菌処理したものに接種したところ、非常に強い生乾き臭が発生することが確認された。
したがって、生乾き臭には本菌種などの特定の微生物が関与していることが明らかとなった。
【0088】
試験例2 4-メチル-3-ヘキセン酸(以下、「4M3H」という)生成能を有する微生物の選定
前記試験例1に準じて単離、同定した菌株、環境(土壌、住居内)から定法に従ってソイビーン・カゼイン・ダイジェスト(本明細書においてSCDともいう)寒天培地又はポテト・デキストロース寒天培地(PDA培地)を用いて分離した後に単離し、同定した菌株、及び微生物供託機関から入手した菌株について、それぞれの4M3H生成能を測定した。
なお、微生物供託機関から入手した菌株は下記のとおりである。
【0089】
モラクセラ・オスロエンシスNCIMB10693株(NCIMB(National collection of industrial and marine bacteria)から購入)
モラクセラ・オスロエンシスATCC19976株(ATCC(American Type Culture Collection)から購入)
サイクロバクター・インモビリス(Psychrobacter immobilis)NBRC15733株
サイクロバクター・パシフィセンシス(Psychrobacter pacificensis)NBRC103191株
サイクロバクター・グラシンコラ(Psychrobacter glacincola)NBRC101053株
シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)NBRC13275株
シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)NBRC14164株
スフィンゴモナス・ヤノイクヤエ(Sphingomonas yanoikuyae)NBRC15102株
ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)NBRC3333株
ブレブンディモナス・ディミヌタ(Brevundimonas diminuta)NBRC12697株
ロゼオモナス・エリラタ(Roseomonas aerilata)NBRC106435株
キュープリアビダス・オキサラティカス(Cupriavidus oxalaticus)NBRC13593株
シュードキサントモナス・エスピー(Pseudoxanthomonas sp.)NBRC101033株
セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)NBRC12648株
エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)NBRC3320株
コリネバクテリウム・エフィシエンス(Corynebacterium efficiens)NBRC100395株
エシェリキア・コーライ(Escherichia coli)NBRC3972株
スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)NBRC13276株
サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)NBRC1661株
カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)NBRC1061株
アルガリゲネス・フェカリス(Alcaligenes faecalis)NBRC13111株
ブルクホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)NBRC15124株及びロドトルラ・ムシラギノサ(Rhodotorula mucilaginosa)NBRC0909株(いずれもNBRC(NITE Biological Resource Center)から購入)
バチルス・セレウス(Bacillus cereus)JCM2152株、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)JCM1465株及びラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)JCM1149株(いずれもJCM(Japan Collection of Microorganisms)から購入)
【0090】
さらに、モラクセラ属細菌については、その16S rDNA遺伝子領域の塩基配列と、モラクセラ・エスピー4-1株、モラクセラ・エスピー4-4株及びモラクセラ・オスロエンシスATCC19976株の16S rDNA遺伝子領域の塩基配列との同一性について決定した。塩基配列の同一性は、遺伝子情報処理ソフトウェアClustalW(http://clustalw.ddbj.nig.ac.jp/top-j.html)を用いて算出した。なお、モラクセラ・エスピー4-1株は、2010年10月14日付で、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1-1-1つくばセンター中央第6)に、受領番号FERM AP-22030として寄託された。
その結果を表2に示す。
【0091】
【表2】

【0092】
1.使用済み繊維製品を用いた選抜
入手した菌株をSCD液体培地(日本製薬社製)5mLに一白金耳接種し、35℃で24時間振とう培養(160rpm)を行った。培養後の菌体を遠心(8000×g、10分)して上清を取り除いた後、生理食塩水5mLに懸濁し、再度遠心(8000×g、10分)した後上清を取り除き、生理食塩水を用いてOD600=1.0となるように菌液を調製した。
家庭生活の中で使用と洗濯を繰り返した木綿の中古タオルを5cm×5cmの正方形に切断し滅菌したものに前記各種菌液0.1mLを植菌し、加湿条件下で37℃で24時間静置した。
24時間静置後の前記木綿の中古タオルの生乾き臭の有無を下記基準に基づいて、専門評価者パネラー(N=3)の合意により判定した。その結果を表3に示す。
◎:生乾き臭が強く感じられる試料
○:生乾き臭が感じられる試料
△:生乾き臭が若干感じられる試料
×:生乾き臭が全くない試料
【0093】
【表3】

【0094】
2.皮脂汚れ成分を塗布した繊維製品を用いた選抜
特開2009-149546号公報に準じて、14-メチルヘキサデカン酸を下記の2工程の反応で合成した。
(a)工程
12-ドデカノリド11.9g(60.0mmol)、32質量%臭化水素/酢酸溶液24.3g(96.0mmol、1.6当量)を、テフロン(登録商標)で保護された100mLオートクレーブに入れ、窒素置換した後密閉し、60℃のオイルバスを用いて、16時間マグネチックスターラーで攪拌した。冷却後、水14mLを加え、熱ヘキサン200mLを用い、分液ロートに移送した。イオン交換水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過、n-ヘキサンで晶析することで、12-ブロモドデカン酸14.4g(収率86%)を得た。
【0095】
(b)工程
次に、還流冷却管、50mL滴下ロート、マグネチックスターラー、温度センサーを備えた100mLの4口フラスコに、12-ブロモドデカン酸5.0g(17.9mmol)及びトリフェニルホスフィン(関東化学社製)28.2mg(0.006eq)を入れ、減圧乾燥した。アルゴン雰囲気下、臭化銅(I)(アルドリッチ社製)77.1mg(0.03当量)、無水テトラヒドロフラン10mLを加えた。室温下、2-メチルブチルマグネシウムブロミド39.5mL(3当量、1.36Nテトラヒドロフラン溶液)を、1時間で滴下した。1時間攪拌した後、1N塩酸水溶液50mLを加え、ヘキサン100mLで2回抽出した。イオン交換水50mLで2回洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過、減圧濃縮して、粗生成物3.9gを得た。
ガスクロマトグラフィー(カラム:アジレント社製、商品名:Ultra-2、30m×0.2mm×0.33μm、DET300℃、INJ300℃、カラム温度100℃→300℃、10℃/分)で、内標にオクタデカンを用い、定量した結果、収率79%であった。
このようにして、12-ドデカノリドから14-メチルヘキサデカン酸を全収率68%で得た。また純度は98%であった。
【0096】
16-メチルオクタデカン酸を、上記に示す14-メチルヘキサデカン酸の合成工程の(a)工程において、12-ドデカノリドを15-ペンタドデカノリドに換え、(b)工程にて2-メチルブチルマグネシウムブロミドをsec-ブチルマグネシウムブロミドに換えて同様の操作で合成し、15-ペンタドデカノリドから16-メチルオクタデカン酸を全収率84%で得た。また純度は95%であった。
【0097】
各菌株をSCD液体培地(日本製薬社製)5mLに一白金耳接種し、35℃で24時間振とう培養(160rpm)を行なった。培養後の菌体を遠心(8000×g、10分)して上清を取り除いた後、生理食塩水5mLに懸濁し、再度遠心(8000×g、10分)した後上清を取り除き、生理食塩水を用いてOD600=1.0となるように菌液を調製した。
2cm×2cmの正方形に切断した木綿の平織り布に、皮脂汚れ成分として、前述の方法で合成した14-メチルヘキサデカン酸又は16-メチルオクタデカン酸0.5mgをメタノール0.1mLに溶解した溶液を塗布し、その後メタノールを蒸発させた。
上記木綿の平織り布に、前記各種菌液0.1mLを植菌し、加湿条件下で37℃で24時間静置し、下記の4M3Hの定量及び生乾き臭の官能評価を行った。
【0098】
(1)4M3Hの定量
24時間静置後の前記タオルに、メタノール10mLを添加し、そのうちの1mLとADAM(9-Anthrydiazomethanene、フナコシ社製、0.1w/v%)1mLとを混合し、室温で60分放置し、誘導体化を行った。
その後、10μL溶液について、LC-FL(液体クロマトグラフィー装置:HITACHI ELITE LaChrom(商品名、日立社製)、カラム:Lichrospher 100 RP-8(e)(商品名、アジレント社製、5μm×125mm×4mmφ)、カラム温度:40℃、溶離剤:アセトニトリル/水=7/3(体積比)の混合溶液、流速:1.0mL/min、検出器:励起波長(365nm)、測定波長(412nm))を用いて解析を行うことで、生成した4M3Hの定量を行った。4M3Hの生成量について、生成した4M3Hの量が1μgより多かった試料を◎、0.1μgより多く1μg以下の試料を○、0μgより多く0.1μg以下の試料を△、全く検出されなかった試料を×として評価した。14-メチルヘキサデカン酸を塗布した場合の結果を表4a及び表4bに、16-メチルオクタデカン酸を塗布した場合の結果を表5にそれぞれ示す。
【0099】
(2)生乾き臭の官能評価
専門評価者(N=3)により、24時間静置後の前記木綿平織り布の生乾き臭の有無を判定した。評価基準は、生乾き臭が強く感じられる試料を◎、生乾き臭が感じられる試料を○、生乾き臭が若干感じられる試料を△、生乾き臭が全くない試料を×とした。14-メチルヘキサデカン酸を塗布した場合の結果を表4a及び表4bに、16-メチルオクタデカン酸を塗布した場合の結果を表5にそれぞれ示す。
【0100】
【表4a】

【0101】
【表4b】

【0102】
【表5】

【0103】
表3、4a、4b及び5の結果から、種々の微生物の中でも、モラクセラ属細菌、アシネトバクター属細菌、シュードモナス属細菌、バチルス属細菌、スフィンゴモナス属細菌、キュープリアビダス属細菌、ラルストニア属細菌、サイクロバクター属細菌、セラチア属細菌、エシェリキア属細菌、スタフィロコッカス属細菌、ブルクホルデリア属細菌、サッカロマイセス属酵母、ロドトルラ属酵母等、特定の微生物が4M3H生成能を有することがわかる。さらには、このような4M3H生成能を有する微生物が生乾き臭の発生に関与していることが明らかとなった。
【0104】
実施例1
(1)SCD-LP寒天培地(和光純薬社製)に、モラクセラ・エスピー4-1株を供試細菌として接種し、常温にて1〜2週間培養し、これを前培養プレートとした。前培養プレートからコンラージでコロニー表面を掻き取り、生理食塩水に懸濁し、OD600=1.0(約108CFU/mL)に調整した。
【0105】
滅菌処理し、25℃、40%RHで乾燥して一定状態にした綿メリヤス布(色染社、木綿メリヤス、未シルケット加工)を2cm×2cmの正方形に切断し、皮脂汚れ成分として前述の方法で合成した14-メチルヘキサデカン酸2.0mgをメタノール0.2mLに溶解した溶液を塗布し、室温で2時間乾燥させてメタノールの乾固を行った。この綿メリヤス布に、前記細菌懸濁液0.2mLを塗布し、室温で3時間乾燥させてモデル試験布を作製した。
【0106】
表6に示す液体洗浄剤組成物に表7に示す化合物(アルドリッチ社若しくは東京化成工業社から試薬として、又はジボダン社(Givaudan S.A.)、IFF社(International Flavors and Fragrances, Inc.)、フィルメニッヒ社(Firmenich S.A.)、シムライズ社(Symrise A.G.)、高砂香料工業社、花王社、シグマ-アルドリッチ社、東京化成工業社などから入手)をそれぞれ0.005質量%、0.05質量%、0.1質量%及び0.5質量%となるように配合し、全体が100質量%になるようにイオン交換水を添加してモデル液体洗浄剤組成物を調製した。
【0107】
【表6】

【0108】
(2)このモデル液体洗浄剤組成物30mgを水道水80mLに対して溶解させてモデル洗濯液を調製し、前記のモデル試験布20枚を入れて室温で10分間振盪させた(洗い工程)。振盪後、布を取り出して水道水80mL中で5分間振盪させた後(すすぎ工程)、再び布を取り出して水気を絞って滅菌シャーレに重ならないように並べ(φ90mmのシャーレに試験布4枚)、37℃、相対湿度70%の培養庫において24時間培養を行った。この培養後の段階でモデル試験布は完全に乾燥はしておらず湿気を帯びた状態であり、これを一般家庭の洗濯における衣類の生乾き状態に対応するものとして官能評価に供した。
【0109】
生乾き臭の嗅ぎ分けが可能な専門評価者5名により、モデル試験布の官能評価を行った。評価基準は下記に基づき、専門評価者の合意により決定した。その結果を表7に示す。
【0110】
(評価基準)
0:まったく臭わない
1:かすかに匂いを感じる
2:やや匂いを感じる
3:匂いを感じる
4:はっきりと匂いを感じる
5:非常に強く匂いを感じる
【0111】
(3)前記の生乾き状態のモデル試験布を滅菌シャーレにのせたままシャーレの蓋を開放し、クリーンベンチ内で12時間放置して完全に乾燥させた。この状態を一般家庭の洗濯において衣類が完全に乾いた状態に対応するものとして、同様に官能評価を行った。結果を表7に示す。
【0112】
(4)前記の完全に乾燥したモデル試験布に、水道水0.5mLを均一に広がるように滴下し、37℃、相対湿度70%の培養庫において6時間培養を行った。これを衣類の再使用時の湿潤状態に対応するものとして、同様に官能評価を行った。結果を表7に示す。
【0113】
【表7】

【0114】
表7の結果において、生乾き状態に対応する状態では、いずれの化合物も、配合濃度が0.005質量%の場合には生乾き臭の抑制効果を示さなかったが、化合物の配合濃度が0.05質量%、0.1質量%及び0.5質量%では配合濃度に応じて生乾き臭の抑制効果が確認された。また、完全に乾燥された状態では、どの化合物を配合した系でも臭気強度は低下していたが、再湿潤時において再び発生した生乾き臭は、化合物の配合濃度が0.05質量%、0.1質量%及び0.5質量%の場合では配合濃度に応じて抑制された。
【0115】
実施例2
表7に示した化合物に代えて、表8に示す化合物の組み合わせで表6に示す液体洗剤組成物に溶解させ、全体が100質量%となるようイオン交換水を添加してモデル液体洗剤組成物を調製した。このモデル液体洗剤組成物を用いて、実施例1と同様の実験操作及び官能評価を行った。その結果を表8に示す。
【0116】
【表8】

【0117】
表8の結果において、生乾き状態に対応する状態では、いずれの化合物の組み合わせも生乾き臭の抑制効果が確認された。また、完全に乾燥された状態では、どの化合物を配合した系でも臭気強度は低下していたが、再湿潤時において再び発生した生乾き臭は、対照に比較して抑制された。
【0118】
実施例3
表7に示した化合物に代えて、表9に示す化合物の組み合わせで表6に示す液体洗剤組成物に溶解させ、全体が100質量%となるようイオン交換水を添加してモデル液体洗剤組成物を調製した。このモデル液体洗剤組成物を用いて、実施例1と同様の実験操作を行い、生乾き臭強度の官能評価及び下記に示す方法で生成した4M3H量の分析を行った。それらの結果を表9に示す。
【0119】
(4M3Hの定量)
モデル試験布4枚にメタノール10mLを添加し、超音波洗浄機で5分間処理をして生成した4M3Hの抽出を行った。そのうちの1mLとADAM(9-Anthrydiazomethanene、フナコシ社製、0.1w/v%)1mLとを混合し、室温で60分放置し、誘導体化を行った。その後、10μL溶液について、LC-FL(液体クロマトグラフィー装置:HITACHI ELITE LaChrom(商品名、日立社製)、カラム:Lichrospher 100 RP-8(e)(商品名、アジレント社製、5μm×125mm×4mmφ)、カラム温度:40℃、溶離剤:アセトニトリル/水=7/3(体積比)の混合溶液、流速:1.0mL/min、検出器:励起波長(365nm)、測定波長(412nm))を用いて解析を行うことで、生成した4M3Hの定量を行った。
【0120】
(液体洗浄剤の香り立ち評価)
液体洗浄剤組成物は、構成要素である界面活性剤等に由来する独特の匂い(以下、生地臭という)があるが、香料の配合により生地臭をマスキングすることができ、不快感を低減することができる。
香料を配合した液体洗浄剤組成物50gをサンプル瓶(110mL No.11広口規格ビン)に入れて蓋をして室温で一晩静置後、蓋を開けた時に感じられる生地臭の強さについて、下記基準に従って専門評価者5名にて官能評価を行い、5名の合意により判定した。
×:生地臭がはっきり感じられる
△:生地臭がやや弱く感じられる
○:生地臭は感じられるがわずかである
【0121】
(培養布の香り強さ評価)
6時間培養後の布に残存している香りの強さについて、下記基準に従って専門評価者5名にて官能評価を行い、5名の合意により判定した。
×:香りはほとんど感じられない
△:香りは感じられるがわずかである
○:香りがはっきり感じられる
【0122】
未賦香の液体洗浄剤組成物で発生した4M3Hの量を基準とし、各実施例の液体洗浄剤組成物で4M3Hの生成の抑臭率を算出した。
【0123】
【表9】

【0124】
【表10】

【0125】
【表11】

【0126】
表9の結果において、成分(C)を配合したものは、布が生乾き状態及び再湿潤時において対照と比較して4M3Hの生成量が抑えられており、成分(C)の香りによる官能的なマスキングではなく、実際に生成抑制効果のあることが確認された。
また、調合香料Aでは、布が生乾き状態及び再湿潤時において抑臭効果がみられたが、ジメチルアンスラニレートを添加することで、抑臭効果がさらに高まっていることが確認された。
さらに調合香料Bでは、布が生乾き状態及び再湿潤時において抑臭効果はほとんど得られなかったものの、ジメチルアンスラニレートを添加することで、抑臭効果が高まることが確認された。
【0127】
実施例4
メチル化メラミン−ホルムアルデヒド樹脂(メラミン:ホルムアルデヒド:メタノールのモル比=1:3:2)の65質量%水溶液90gをブチルアクリレート−アクリレート共重合体の20質量%水溶液80gに添加して、攪拌しつつ、水200g、適量の10質量%酢酸水溶液を添加して、水相のpHを3〜6に調整した。その後、成分(C)としてダマセノン200gを温度50℃付近で添加した。安定なエマルションとなるまで攪拌しつつ、温度を上昇させ、重合反応を促進させ、メチル化メラミン−ホルムアルデヒド樹脂をシェルとして、成分(C)がカプセル総質量中の50質量%含まれたコアシェル型カプセルを調製した。得られたカプセルは塩化ナトリウムの10質量%溶液を加えて水層から分離し、フィルター上で500gの蒸留水にて2回洗浄した。これにGafquat HS溶液(ISP社、20質量%水溶液)を蒸留水で10倍に希釈した溶液を加えて均一なカプセル分散体を得た。このカプセル分散体はコアシェル型カプセルを50質量%含有する。このカプセル分散体を表6に示す液体洗浄剤組成物に0.2質量%、0.4質量%及び2.0質量%配合し、全体が100質量%になるようにイオン交換水を添加してモデル液体洗浄剤組成物を調製した。
同様に、ダマセノンの代わりにDMBCAを添加したカプセル及びジメチルアンスラニレートを添加したカプセルを調製し、コアシェル型カプセルを50質量%含有するカプセル分散体を得た後、表6に示す液体洗浄剤組成物に配合した。
またメチル化メラミン−ホルムアルデヒド樹脂をシェルとして、表10に記載した成分(C)を含む調合香料Aがカプセル総重量中の50質量%含まれたコアシェル型カプセルを調製し、分散剤を加えて均一なカプセル分散体を得た。このカプセル分散体はコアシェル型カプセルを50質量%含有する。このカプセル分散体を表6に示す液体洗浄剤組成物に2.0質量%配合し、全体が100質量%になるようにイオン交換水を添加してモデル液体洗浄剤組成物を調製した。
これらのモデル液体洗浄剤組成物30mgを水道水80mLに対して溶解させてモデル洗濯液を調製し、実施例1の(1)と同じ方法で作製したモデル試験布20枚を、このモデル洗濯液に入れて室温で10分間振盪させた(洗い工程)。振盪後、布を取り出して水道水80mL中で5分間振盪させた後(すすぎ工程)、再び布を取り出して水気を絞って滅菌シャーレに重ならないように並べ(φ90mmのシャーレに試験布4枚)、試験布の表面を、カプセル破壊のためガラス棒で30回こすって抑臭剤を試験布上に漏洩させた後、37℃、相対湿度70%の培養庫において24時間培養を行った。この湿気を帯びた状態のモデル試験布は、実施例1の(2)と同様に、一般家庭の洗濯における衣類の生乾き状態に対応するものとし、実施例1の(2)〜(4)の手順に従って、モデル試験布の生乾き状態、完全に乾燥された状態、再度湿潤させて6時間後の状態のそれぞれにおいて、悪臭の官能評価を行った。この結果を表12に示す。また、比較のため、表7及び表9の結果についても表12中に併せて示す。
【0128】
【表12】

【0129】
この結果、カプセルを配合したモデル液体洗浄剤組成物で処理したものは、カプセル分散体中に含まれる成分(C)又は調合香料Aを直接配合したものと比較して、培養直後、乾燥後、再湿潤培養後においてより高い抑臭効果を発揮した。
【0130】
試験例3 4M3Hの生成を抑制する化合物の選定
SCD-LP寒天培地(和光純薬社製)に、モラクセラ・エスピー4-1株を供試細菌として接種し、常温にて1〜2週間培養し、これを前培養プレートとした。前培養プレートからコンラージでコロニー表面を掻き取り、生理食塩水5mLに懸濁し、OD600=1.0(約108CFU/mL)に調整した。
【0131】
滅菌処理し、25℃、40%RHで乾燥して一定状態にした綿メリヤス布(色染社、木綿メリヤス、未シルケット加工)を2cm×2cmの正方形に切断し、皮脂汚れ成分として前述の方法で合成した14-メチルヘキサデカン酸0.5mgをメタノール0.1mLに溶解した溶液を塗布した。その後メタノールを蒸発させて乾固し、モデル試験布を作製した。
【0132】
表13に示す化合物(アルドリッチ社若しくは東京化成工業社から試薬として、又はジボダン社(Givaudan S.A.)、IFF社(International Flavors and Fragrances, Inc.)、フィルメニッヒ社(Firmenich S.A.)、シムライズ社(Symrise A.G.)、高砂香料工業社、花王社、シグマ-アルドリッチ社、東京化成工業社などから入手)のメタノール溶液を調製した。モデル試験布1gに対して表13に示す化合物の塗布量が10μgとなるように、前記メタノール溶液を前記モデル試験布に20℃で塗布し、室温で2時間乾燥してメタノールを蒸発させて乾固した。上記モデル試験布に前記細菌懸濁液0.1mLを塗布し、シャーレ中で37℃、相対湿度70%の培養庫において24時間培養を行い、細菌定着布を調製した。
【0133】
生乾き臭の嗅ぎ分けが可能な専門評価者により、モデル試験布の官能評価を行った。評価基準は、生乾き臭抑制効果のあるものを○、判断が難しいもの又は生乾き臭抑制効果が弱いものを△、生乾き臭抑制効果が全くないものを×とした。また、モデル試験布1gに対して塗布する化合物の塗布量を10μgとしたこと以外は実施例1で作製した細菌定着布について、実施例3と同様に細菌定着布における4M3H量を定量し、化合物を添加しない場合の4M3H生成量に対する比を算出し、4M3H生成抑制率を測定した。その結果を表13に示す。
【0134】
【表13】

【0135】
表13から明らかなように、比較化合物には4M3H生成抑制効果は見られないのに対し、本発明の成分(C)は4M3H生成抑制率が高く、優れた4M3H生成抑制効果を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含有する繊維製品用液体洗浄剤組成物。
(A) 一般式(1)で表される非イオン界面活性剤 15〜70質量%
R(CO)pO−[(C24O)q/(AO)r]R' (1)
〔式中、Rは炭素数7〜22の直鎖状炭化水素基を示し、R'は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、AOは炭素数3〜5のアルキレンオキシ基を示す。
pは0又は1の数を示す。
q及びrは平均付加モル数を示し、qは8〜30の数、rは0〜5の数を示し、かつq+rは13以上の数である。
p=0のとき、R'は水素原子であり、qは12以上の数である。
「/」はC24O基及びAO基が、ランダム又はブロックのいずれに結合したものであってもよいことを示す。〕
(B) 水混和性有機溶剤 1〜40質量%
(C) 以下の成分(C1)、(C2)及び(C3)から選ばれる1以上の化合物 0.01〜5質量%
(C1) 一般式(2)で表される、カルボニル基のβ位に分岐を有し、かつ分子中に6員環構造を含む総炭素数10〜16のカルボニル化合物
【化1】

〔式中、破線は二重結合が形成されてもよいことを示し、nは0又は1の整数を示す。
1は炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜5のアルケニル基を示すか、R4又はR5と共に6員環構造を形成する。
2は炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜5のアルケニル基を示すか、R4と共に6員環構造を形成する。
3は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜5のアルケニル基を示す。ただし、隣接する炭素原子が二重結合を有する場合には存在しない。
4は、単独でフェニル基又はシクロヘキシル基を示すか、R1若しくはR2と共に前述の6員環構造、又はR5と共にエーテル基を含む側鎖若しくはオキソ基を有してもよい5若しくは6員環構造を形成する。
5は、単独で水素原子を示すか、R1及び/又はR4と共に前述の環構造を形成する。
6は、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。ただし、隣接する炭素原子が二重結合を有する場合には存在しない。
前記の環構造は、架橋環構造又は縮合環構造であってもよく、また二重結合及び/又は側鎖を有してもよい。〕
(C2) 一般式(3)で表される、5員環又は6員環を含む総炭素数9〜15のエステル化合物
【化2】

〔式中、R7は炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜5のアルケニル基を示すか、R8と共に5又は6員環を形成する。
8は炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜5のアルケニル基を示すか、R7及び/又はR10と共に5又は6員環を形成する。
9は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜5のアルケニル基を示す。
10は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、側鎖を有してもよいシクロヘキシル基又はベンジル基を示すか、R8と共に前述の5又は6員環を形成する。 前記の環構造は、架橋環構造又は縮合環構造であってもよく、また二重結合及び/又は側鎖を有してもよい。〕
(C3) 一般式(4)で表される総炭素数8〜17のアンスラニル酸エステル化合物
【化3】

〔式中、R11は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基を示し、R12及びR13は独立して水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基又は炭素数2〜5のアシル基を示す。〕
(D) 水
【請求項2】
成分(C)が、成分(C1)、(C2)及び(C3)を含有する請求項1に記載の繊維製品用液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
成分(C)と成分(A)との質量比が0.01:70〜2:50である請求項1又は2に記載の繊維製品用液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
更に成分(E)としてカチオン界面活性剤を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の繊維製品用液体洗浄剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の繊維製品用液体洗浄剤組成物を用いて繊維製品を洗濯することによる再発性の生乾き臭を抑制する方法。

【公開番号】特開2013−18971(P2013−18971A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−133177(P2012−133177)
【出願日】平成24年6月12日(2012.6.12)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】