説明

繊維製型枠

【課題】施工が容易であり、モルタル又はコンクリートを成型した後、上面布地を取り除くことも容易な繊維製型枠を提供すること。
【解決手段】本発明は、複数の上面連結部5を有する上面布地1と、複数の下面連結部8を有する下面布地2と、上面布地1及び下面布地2のそれぞれの縁を連結する側面布地3と、該側面布地3に設けられた流動性モルタル又は流動性コンクリートの注入部11と、を備える直方体状の繊維製型枠10であって、上面連結部5と下面連結部8とが、タッチファスナー紐20で連結されている繊維製型枠10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製の成型用型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
土木、建築工事において、モルタル構造物及びコンクリート構造物が頻繁に用いられる。
かかるモルタル構造物は、型枠にモルタルを流し込み、固めることによって製造されるものであり、コンクリート構造物は、同様に、型枠にコンクリートを流し込み、固めることによって製造されるものである。
【0003】
ところで、型枠の製作には熟練した技術と多くの労力が必要であり、特に、大型のモルタル構造物やコンクリート構造物を製造する際には、型枠に、直接、大きな圧力が加わるので、型枠自体も大きなものとしなければならない。そうすると、型枠の重量も大きくなり、作業性が低下することになる。また、足場が必要な高所での作業は危険である。
【0004】
一方、これに対し、軽量な繊維を使った布製型枠が知られている。
例えば、多重織り組織の織物からなる織物製モルタル及びコンクリート成型用型枠が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
かかる織物製モルタル及びコンクリート成型用型枠は、箱型であり、上面地組織と下面地組織とそれらを結合するトジ糸とより構成されている。
【0005】
そして、織物製モルタル及びコンクリート成型用型枠には、トジ糸が上面地組織と下面地組織と織り込まれて全体が袋織りの一体組織となっているので、例えば、上面地組織と下面地組織とを異なる材料のものにすることはできない。
また、トジ糸を上下方向にジグザグに設け充填部空間の大きさを規定しているので、袋織りの織成時に一義的に厚みが決まってしまう欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−64972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1記載の織物製モルタル及びコンクリート成型用型枠は、トジ糸の代わりに紐等を用い、二枚の布地それぞれに設けた連結部を結び止めているので、結び目の緩みが生じ、その結果、型枠の厚みが凸凹となる問題がある。
また、上記特許文献1記載を含む従来の織物製モルタル及びコンクリート成型用型枠は、仮設材としてモルタル又はコンクリートを充填して構造物とし、一定期間使用した後、必要により撤去する場合もあるが、上記織物製モルタル及びコンクリート成型用型枠は、上面地組織及び下面地組織がトジ糸により連結されているので、モルタル又はコンクリートを成型した後、それから上面地組織を剥離して取り除くのが極めて困難である。このため回収も不可能であり、コンクリートリサイクル材にならず全て産業廃棄物になってしまう。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、少なくとも上面地組織及び下面地組織の自由な選択が可能であり、厚さの変更も可能な繊維製型枠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、上面布地と下面布地とを、上面連結部と下面連結部とで部分的に連結することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、(1)複数の上面連結部を有する上面布地と、複数の下面連結部を有する下面布地と、上面布地及び下面布地のそれぞれの縁を連結する側面布地と、該側面布地に設けられた流動性モルタル又は流動性コンクリートの注入部と、を備える直方体状の繊維製型枠であって、上面連結部と下面連結部とが、タッチファスナー紐で連結されている繊維製型枠に存する。
【0011】
本発明は、(2)上面連結部が、隣合う一対の上面孔からなり、下面連結部が、隣合う一対の下面孔からなり、タッチファスナー紐が、一対の上面孔及び一対の下面孔に挿通され、リング状になっている上記(1)記載の繊維製型枠に存する。
【0012】
本発明は、(3)上面連結部が、上面布地の一部を織成しないことにより形成された上面弛み部からなり、下面連結部が、下面布地の一部を織成しないことにより形成された下面弛み部からなり、
タッチファスナー紐が、上面弛み部及び下面弛み部に挿通され、リング状になっている上記(1)記載の繊維製型枠に存する。
【0013】
本発明は、(4)上面連結部が、上面布地の横方向及び縦方向に対して、それぞれ一定間隔で複数配設されており、下面連結部が、下面布地の横方向及び縦方向に対して、それぞれ一定間隔で複数配設されている上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の繊維製型枠に存する。
【0014】
本発明は、(5)タッチファスナー紐が繊維製である上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の繊維製型枠に存する。
【0015】
本発明は、(6)タッチファスナー紐が、ベルト状の本体片と、該本体片に接続可能な固定片とを有し、上面布地と、下面布地との間で、本体片が固定片によって固定されている上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の繊維製型枠に存する。
【0016】
本発明は、(7)上面布地のうち、タッチファスナー紐を連結させることにより応力がかかる部分の強度が、応力がかからない部分の強度よりも大きくなっており、下面布地のうち、タッチファスナー紐を連結させることにより応力がかかる部分の強度が、応力がかからない部分の強度よりも、大きくなっている上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の繊維製型枠に存する。
【0017】
本発明は、(8)上面布地の透水率が1.0×10−4mm/S以下であり、下面布地の透水率が1.0×10−4〜1.0×10−3mm/Sである上記(1)〜(7)のいずれか一つに記載の繊維製型枠に存する。
【0018】
本発明は、(9)上記(1)〜(8)のいずれか一つに記載の繊維製型枠を用いたモルタルの施工方法であって、注入部から流動性モルタルを注入し、水分を主として下面布地から放出させることにより流動性モルタルを硬化させるモルタルの施工方法に存する。
【0019】
本発明は、(10)上記(9)記載のモルタルの施工方法を遂行した後、タッチファスナー紐を切断して、上面布地を取り除く、モルタルの施工方法に存する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の繊維製型枠においては、上面布地と下面布地とを、上面連結部と下面連結部とをタッチファスナー紐で連結するだけで、組み付けることができるので、上面布地と下面布地とを異なった布地(すなわち、強度、厚さ、布地組織、材質等の異なった布地)とすることができ、上下布地の組み合わせの選択が可能である。また組み付け時に厚みを調整することが可能である。
【0021】
このとき、タッチファスナー紐が、一対の上面孔及び一対の下面孔に挿通され、リング状になっている場合、タッチファスナー紐の布地外側に露出している部分を切断すれば上面布地を剥がして取り除くことができ、また、露出したモルタル(又はコンクリート)を破砕して下面布地も剥がすことができる。したがって、回収が容易で、またリサイクルすることも可能となる。
【0022】
上記繊維製型枠においては、上面連結部を上面弛み部とし、下面連結部を下面弛み部とする場合、容易に上面連結部及び下面連結部を織成できる。
また、孔を設けないため、流動性モルタル又は流動性コンクリートが流出することを抑制できる。
【0023】
上記繊維製型枠は、上面連結部が、上面布地の横方向及び縦方向に対して、それぞれ一定間隔で複数配設されており、下面連結部が、下面布地の横方向及び縦方向に対して、それぞれ一定間隔で複数配設されていると、得られるモルタルの厚みを全体的に略一定とすることができる。
【0024】
上記繊維製型枠においては、タッチファスナー紐が繊維製であると、丈夫であり、且つ切断し易いという利点がある。
【0025】
上記繊維製型枠においては、タッチファスナー紐が、ベルト状の本体片と、該本体片に接続可能な固定片とを有し、上面布地と、下面布地との間で、本体片が固定片によって固定されているものであると、連結長さを自由に変えられるという利点がある。
【0026】
上記繊維製型枠においては、上面布地のうち、タッチファスナー紐を連結させることにより応力がかかる部分の強度が、応力がかからない部分の強度よりも大きくなっており、下面布地のうち、タッチファスナー紐を連結させることにより応力がかかる部分の強度が、応力がかからない部分の強度よりも、大きくなっていると、より破れにくい。
【0027】
上記繊維製型枠は、上面布地の透水率1.0×10−4mm/S以下であり、下面布地の透水率が1.0×10−4〜1.0×10−3mm/Sであると、水分が下面布地から多く放出されることになる。このため、上面布地が汚れなくなるので、施工後の洗浄水が大幅に削減できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、第1実施形態に係る繊維製型枠を概略的に示す図であり、図1(a)は、斜視図であり、図1(b)は、図1(a)のI−I面の断面図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係る繊維製型枠に用いられるタッチファスナー紐を示す正面図である。
【図3】図3の(a)〜図3の(f)は、本発明の繊維製型枠を用いたモルタルの施工方法を概略的に示す断面図である。
【図4】図4は、第2実施形態に係る繊維製型枠を概略的に示す断面図である。
【図5】図5は、本発明に係る繊維製型枠に用いられるタッチファスナー紐の他の実施形態を示す正面図である。
【図6】図6は、本発明に係る繊維製型枠に用いられるタッチファスナー紐の他の実施形態を示す正面図である。
【図7】図7は、本発明に係る繊維製型枠の他の実施形態を示す概略的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0030】
[第1実施形態]
まず、本発明に係る繊維製型枠の第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係る繊維製型枠を概略的に示す図であり、図1(a)は、斜視図であり、図1(b)は、図1(a)のI−I面の断面図である。
図1(a)及び図1(b)に示すように、第1実施形態に係る繊維製型枠10は、複数の上面連結部5を有する上面布地1と、複数の下面連結部8を有する下面布地2と、上面布地1及び下面布地2のそれぞれの縁を連結する側面布地3と、該側面布地3に設けられた流動性モルタル又は流動性コンクリートの注入部11と、を備える。
また、繊維製型枠10は、上面連結部5と下面連結部8とが、タッチファスナー紐20で連結されている。そのため、上面布地1と下面布地2とを異なった布地(すなわち強度、厚さ、布地組織、材質等の異なった布地)とすることができ、自由な布地の選択が可能である。
【0031】
繊維製型枠10は、直方体状となっている。すなわち、矩形状の上面布地1と、上面布地1と同形状の下面布地2とのそれぞれ独立した布片の縁が側面布地3によって連結されている。なお、上面布地1及び側面布地3、並びに、下面布地1及び側面布地3、は縫製により連結されている。
【0032】
繊維製型枠10において、側面布地3には、側面布地3から突出した中空状の注入部11が設けられている。
また、注入部11に設けられた穴15は、上面布地1と下面布地2との間の空間に連通開放している。すなわち、注入部11の穴15から注入された流動性モルタルは、上面布地1と下面布地2との間の空間にまで到達するようになっている。なお、注入部1は、複数個設けても当然よい。
【0033】
上記繊維製型枠10において、上面布地1には、複数の上面連結部5が設けられている。
上面連結部5は、隣合う一対の上面孔6からなり、上面布地1の横方向及び縦方向に対して、それぞれ等間隔で複数配設されている。
一方、下面布地2には、タッチファスナー紐20と連結させるための複数の下面連結部8が設けられている。
下面連結部8は、隣合う一対の下面孔7からなり、下面布地2の横方向及び縦方向に対して、それぞれ等間隔で複数配設されている。
このため、得られるモルタルの厚みが略一定となり、凸凹した形状になることが抑制される。
【0034】
このとき、上面布地1の各上面連結部5と、下面布地2の各下面連結部8とは、それぞれ対応する位置に設けられている。
したがって、対応する位置の上面連結部5(一対の上面孔6)及び下面連結部8(一対の下面孔7)に、後述するタッチファスナー紐20を挿通させて取り付けられることになる。なお、タッチファスナー紐20は、リング状に取り付けられる。
【0035】
繊維製型枠10のサイズは、用途に応じて適宜調整することができる。
施工性の観点から、縦5〜15m、横5〜15m、厚み5〜50cm程度であることが好ましい。なお、厚みが変わる場合、タッチファスナー紐20のリングの大きさを調整すればよい。
【0036】
繊維製型枠10において、一方の上面布地1の透水率は、他方の下面布地2の透水率以下であることが好ましい。
繊維製型枠10においては、例えば、河川護岸に施工する場合、流動性モルタルを繊維製型枠10内に流し込んだ後、水分を自圧により繊維製型枠10外に放出させる。このとき、上面布地1の透水率が、下面布地2の透水率以下であると、濁った水分は、地壁側の下面布地2から上面布地より多く放出されることになる。そうすると、上面布地1が汚れなくなるので、施工後の繊維製型枠10の表面を敢えて洗浄することもない。また洗浄するにしても洗浄水が大幅に削減できるという利点がある。
【0037】
具体的には、上面布地1の透水率は1.0×10−4mm/S以下であり、下面布地2の透水率は1.0×10−4〜1.0×10−3mm/Sであることが好ましい。なお、透水率は、JIS A 1218に準じて測定される。
また、上面布地1が水を通さない遮水性であることがより好ましい。この場合、水分が下面布地2からのみ放出されることになるので、上記効果をより発揮することができる。
【0038】
繊維製型枠10において、上面布地1には、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂等がラミネートされていてもよい。
かかるラミネートにより、透水性を調整できる。また、水分を透過させ、モルタル又はコンクリートの粒子は透過させないように調整することも可能である。
【0039】
繊維製型枠10においては、上面布地1のうち、タッチファスナー紐20を連結させることにより応力がかかる部分の強度が、応力がかからない部分の強度よりも大きくなっており、同様に、下面布地2のうち、タッチファスナー紐20を連結させることにより応力がかかる部分の強度が、応力がかからない部分の強度よりも、大きくなっていることが好ましい。この場合、上面布地1又は下面布地2が、より破れにくくなる。
【0040】
かかる強度を調整する方法としては、例えば、応力がかかる部分の繊維の密度を、応力がかからない部分の繊維の密度の1.5倍以上にして上面布地1又は下面布地2を織成すればよい。
または、応力がかかる部分の繊維の繊度を、応力がかからない部分の繊維の繊度の1.5倍以上にして上面布地1又は下面布地2を織成すればよい。
または、応力がかかる部分にのみ、補強繊維を加えてもよく、或いは添布を施すことも可能である。
【0041】
繊維製型枠10においては、上面布地1の方を下面布地2よりも風合いを硬くすることが好ましい。この場合、施工後の寸法安定性が向上する。
【0042】
繊維製型枠10において、上面布地1、下面布地2及び側面布地3の材質は、特に限定されないが、汎用性及び強度の観点から、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維等の合成繊維であることが好ましい。
これらの中でも、上述した透水率及び風合いの観点から、上面布地1及び下面布地2がポリエステル繊維、ポリアミド繊維であることが好ましい。
【0043】
また、上面布地1、下面布地2及び側面布地3の形態は、編物、組物、織物等の布地が採用されるが、保形性や強度の観点から、織物であることが好ましく、織り方は、平織、綾織、朱子織のいずれであってもよいが、多重織による一体織成であることが好ましい。
【0044】
図2は、第1実施形態に係る繊維製型枠に用いられるタッチファスナー紐を示す正面図である。
図2に示すように、タッチファスナー紐20は、ベルト状の本体片12と、該本体片12に接続可能な固定片13とを有する。
本体片12には、接続部12aが設けられており、固定片13には、被接続部13aが設けられている。すなわち、本体片12の接続部12aに、固定片13の被接続部13aを当接することにより、固定片13が本体片12に固定されるようになっている。かかるタッチファスナー紐20を用いることにより、固定片13を選択でき連結長さが自由に変えられるという利点がある。すなわち、連結長さを変えることは繊維製型枠を変えることとなる。なお、第1実施形態に係る繊維製型枠10において、本体片12(接続部12a)及び固定片13(被接続部13a)は、上面布地1と、下面布地2との間に位置させる。
【0045】
ここで、本体片12は、繊維製であることが好ましい。この場合、軽量で強度に優れると共に、動きの自由度を有するようになる。また、後述するように、上面布地1を取り除く際、簡単に切断できるという利点がある。
かかる繊維としては、強度と柔軟性の観点から、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等が挙げられる。
【0046】
第1実施形態に係る繊維製型枠は、河川護岸、法面保護工、山腹水路の建設等の多くの用途に好適に用いられる。
【0047】
次に、繊維製型枠10を用いたモルタルの施工方法について説明する。
図3の(a)〜(f)は、本発明の繊維製型枠を用いたモルタルの施工方法を概略的に示す断面図である。
図3の(a)に示すように、まず、上面連結部5が設けられた上面布地1と下面連結部8が設けられた下面布地2とを準備し、これらに注入部11を有する側面布地3を縫製して、直方体状とする。なお、このとき、上面連結部5と下面連結部8の位置が対応するようにする。
そして、図3の(b)に示すように、上面連結部5の一対の上面孔6と下面連結部8の一対の下面孔7にタッチファスナー紐20の本体片12を通して、リング状とし、図3の(c)に示すように、上面布地1と下面布地2と間で、本体片12に固定片13を取り付け固定する。
【0048】
上記繊維製型枠10においては、上面連結部5及び下面連結部8が、横方向及び縦方向に対して、それぞれ等間隔で複数配設されているので、上記と同様にして、タッチファスナー紐20を複数取り付ける。
こうして、繊維製型枠10の組み付けが完成する。
【0049】
以上のような繊維製型枠10の組み付けは、前もって、現場以外の場所、例えば工場、で行われ、必要な時に必要な数だけ現場に運ばれる。
【0050】
上記繊維製型枠10は、上面布地1と下面布地2とを、上面連結部5と下面連結部8とをタッチファスナー紐20で単に連結するだけで、簡単に上下面を組み付けることができる。
また、組み付け時にタッチファスナー紐20によって厚みを調整することも容易である。
【0051】
繊維製型枠10が現場に運ばれた後、具体的な施工面に設置されることとなる。
次に、図3の(d)に示すように、繊維製型枠10の注入部11の穴15から流動性モルタルMを注入する(以下、コンクリートの場合も同様な手順で行われる)。
かかる流動性モルタルMは、公知のものが適宜用いられる。
そして、繊維製型枠10内に流動性モルタルMを充填させ、その後、注入部11の穴15(図1参照)を閉じる。
この状態では、モルタル圧によりタッチファスナー紐20の接続部12aと被接続部13aが圧着方向に力を受けるので互いに外れ難い。
【0052】
流動性モルタルに含まれる水分は、自圧により上面布地1又は下面布地2を介して外部に放出され、これにより、流動性モルタルが硬化し、モルタルが形成される。
以上でモルタルの施工方法は完了する。
【0053】
施工が完了し一定期間経過した後、必要によりモルタル施工面を取り除く追加施工が行われる場合は、繊維製型枠10の布地とモルタルとを分離しなければならない。
上面布地1を剥がす場合は、図3の(e)に示すように、上面布地1の外側に露出しているタッチファスナー紐20を切断し、図3の(f)に示すように、上面布地1を引っ張り上げるだけで簡単に剥がすことができる。なお、タッチファスナー紐20の切断は、カッター等の工具を使って行う。
上面布地1を剥がした跡はモルタルが露出した状態となるので、簡単にそれを破砕することができる。破砕と同時に下面布地2も分離するので下面布地2の回収も容易に行える。
【0054】
このように、繊維製型枠10は、タッチファスナー紐20の外側に出ている部分を切断するだけで、上面布地1を取り除くことができるので、モルタル施工面を取り除く際の作業性が優れる。また上面布地1や下面布地2の回収も容易である。
【0055】
また、タッチファスナー紐20で上面連結部5と下面連結部8とを連結することにより、作製されるモルタルは、矩形状に区画されることになる。これにより、得られるモルタルは、厚みが略一定となり、凸凹した形状になることが抑制されることになる。
【0056】
[第2実施形態]
次に、本発明に係る繊維製型枠の第2実施形態について説明する。
図4は、第2実施形態に係る繊維製型枠を概略的に示す断面図である。
図4に示すように、第2実施形態に係る繊維製型枠50は、複数の上面連結部を有する上面布地51と、複数の下面連結部を有する下面布地52と、上面布地51及び下面布地52のそれぞれの縁を連結する側面布地(図示しない)と、該側面布地に設けられた流動性モルタル又は流動性コンクリートの注入部(図示しない)と、を備える。すなわち、第2実施形態に係る繊維製型枠50は、上面連結部及び下面連結部の形状が異なること以外は、第1実施形態に係る繊維製型枠50と同様である。
【0057】
上面連結部は、上面布地51の一部を織成しないことにより繊維糸を内側に弛ませて形成された上面弛み部55からなり、同様に、下面連結部は、下面布地52の一部を織成しないことにより繊維を内側に弛ませて形成された下面弛み部58からなる。
タッチファスナー紐20は、上面弛み部55及び下面弛み部58に挿通され、リング状になっている。
【0058】
第2実施形態に係る繊維製型枠50は、上面連結部を上面弛み部55とし、下面連結部を下面弛み部58とするので、容易に上面連結部及び下面連結部を織成できる。
また、孔を設けないため、流動性モルタル又は流動性コンクリートが流出することを抑制できる。
さらに、外側にタッチファスナー紐20を上面孔や下面孔に通して一旦外に出しまた戻して中に入れるという操作を必要としない。すなわち、タッチファスナー紐20を上面弛み部や下面弛み部に通すだけでよいので、タッチファスナー紐20の取り付けも容易である。また、タッチファスナー紐20が外側に露出しないので、見た目もよい。
【0059】
繊維製型枠50においては、上面弛み部55及び下面弛み部58に応力がかかる。したがって、上面弛み部55及び下面弛み部58(応力がかかる部分)の強度が、その他の部分の強度よりも大きくなっていることが好ましい。すなわち、上面弛み部55及び下面弛み部58を構成する繊維糸は布地組織を構成する他の繊維糸より強度の高いものを使う。
【0060】
かかる強度を調整する方法としては、例えば、上面弛み部55及び下面弛み部58の繊維糸の密度を、その他の部分の繊維糸の密度の1.5倍以上にして上面布地1又は下面布地2を織成すればよい。
または、上面弛み部55及び下面弛み部58の繊維糸の繊度を、その他の部分の繊維糸の繊度の1.5倍以上にして上面布地1又は下面布地2を織成すればよい。
または、上面弛み部55及び下面弛み部58にのみ、補強繊維を加えてもよい。
【0061】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0062】
例えば、第1実施形態に係る繊維製型枠10おいては、上面連結部5及び下面連結部8が、横方向及び縦方向に対して、それぞれ等間隔で複数配設されているが、斜め方向に複数配設されていてもよく、配設される数は限定されない。また、間隔も多少異なってもかまわない。
【0063】
第1実施形態に係る繊維製型枠10を用いたモルタルの施工方法においては、施工面に設置する前段階で流動性モルタルMを充填させ、その後、吊り上げて河川護岸施工面に設置することも可能である。
【0064】
第1実施形態に係る繊維製型枠10において、タッチファスナー紐20は、本体片12と固定片13とからなるものであるが、本体片と固定片とが一体となったものであってもよい。
図5は、本発明に係る繊維製型枠に用いられるタッチファスナー紐の他の実施形態を示す正面図である。
図5に示すように、タッチファスナー紐20aは、ベルト状の本体片22からなり、該本体片22の一端に接続部14aが設けられており、他端に被接続部14bが設けられている。すなわち、本体片22の接続部14aに、被接続部14bを当接することにより、リング状で固定されることになる。
【0065】
また、図5に示すタッチファスナー紐20aの接続部14a及び被接続部14bが、本体片全体に設けられていてもよい。
図6は、本発明に係る繊維製型枠に用いられるタッチファスナー紐の他の実施形態を示す正面図である。
図6に示すように、タッチファスナー紐20bは、ベルト状の本体片23からなり、該本体片23の一面に接続部16aが設けられており、他面に被接続部16bが設けられている。すなわち、本体片23の接続部16aに、被接続部16bを当接することにより、リング状で固定されることになる。
【0066】
第1実施形態に係る繊維製型枠10においては、上面布地1と、下面布地2との間で、本体片12が固定片13によって固定されているが、上面布地1の外側で、本体片が固定片によって固定されていてもよい(図7参照)。この場合、上面布地1の表面に露出した固定片13を取り外すことでタッチファスナー紐20bは簡単に外れる。
【0067】
第1実施形態に係る繊維製型枠10においては、上面布地1及び側面布地3、並びに、下面布地1及び側面布地3、は縫製により連結されているが、上面布地、側面布地、及び、下面布地が、一体の袋として織成させたものであってもよい。この場合、上面布地と下面布地との繊維の密度や繊度を調整すべきである。
また、繊維製型枠10の形も実施形態のような直方体状に限らず、平面視で例えば、台形、平行四辺形等の異なった形も採用可能である。
【0068】
第1実施形態に係る繊維製型枠において、図2に示すタッチファスナー紐20は、本体片12と接続部12aとが別体となっており、固定片13と被接続部13aとが別体となっているが、それぞれ一体となっていてもよい。なお、図5に示すタッチファスナー紐20aも同様に、本体片22と、接続部14aと、被接続部14bとが一体であっても別体であってもよい。また、図6に示すタッチファスナー紐20bも同様に、本体片23と、接続部16aと、被接続部16bとが一体であっても別体であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係る繊維製型枠は、上面地組織及び下面地組織の自由な選択が可能であり、組み付け時に厚さの変更も容易に可能である特徴があり、この点を適用する限りにおいて河川護岸、法面保護工、山腹水路の建設等の広範囲の用途に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0070】
1,51・・・上面布地
2,52・・・下面布地
3・・・側面布地
5・・・上面連結部
6・・・上面孔
7・・・下面孔
8・・・下面連結部
10,50・・・繊維製型枠
11・・・注入部
12,22,23・・・本体片
12a,14a,16a・・・接続部
13・・・固定片
13a,14b,16b・・・被接続部
15・・・穴
20,20a,20b・・・タッチファスナー紐
55・・・上面弛み部
58・・・下面弛み部
M・・・流動性モルタル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の上面連結部を有する上面布地と、
複数の下面連結部を有する下面布地と、
前記上面布地及び前記下面布地のそれぞれの縁を連結する側面布地と、
該側面布地に設けられた流動性モルタル又は流動性コンクリートの注入部と、
を備える直方体状の繊維製型枠であって、
前記上面連結部と前記下面連結部とが、タッチファスナー紐で連結されている繊維製型枠。
【請求項2】
前記上面連結部が、隣合う一対の上面孔からなり、
前記下面連結部が、隣合う一対の下面孔からなり、
前記タッチファスナー紐が、前記一対の上面孔及び前記一対の下面孔に挿通され、リング状になっている請求項1記載の繊維製型枠。
【請求項3】
前記上面連結部が、前記上面布地の一部を織成しないことにより形成された上面弛み部からなり、
前記下面連結部が、前記下面布地の一部を織成しないことにより形成された下面弛み部からなり、
前記タッチファスナー紐が、前記上面弛み部及び前記下面弛み部に挿通され、リング状になっている請求項1記載の繊維製型枠。
【請求項4】
前記上面連結部が、前記上面布地の横方向及び縦方向に対して、それぞれ一定間隔で複数配設されており、前記下面連結部が、前記下面布地の横方向及び縦方向に対して、それぞれ一定間隔で複数配設されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の繊維製型枠。
【請求項5】
前記タッチファスナー紐が繊維製である請求項1〜4のいずれか一項に記載の繊維製型枠。
【請求項6】
前記タッチファスナー紐が、ベルト状の本体片と、該本体片に接続可能な固定片とを有し、
前記上面布地と、前記下面布地との間で、前記本体片が前記固定片によって固定されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の繊維製型枠。
【請求項7】
前記上面布地のうち、前記タッチファスナー紐を連結させることにより応力がかかる部分の強度が、応力がかからない部分の強度よりも大きくなっており、
前記下面布地のうち、前記タッチファスナー紐を連結させることにより応力がかかる部分の強度が、応力がかからない部分の強度よりも、大きくなっている請求項1〜6のいずれか一項に記載の繊維製型枠。
【請求項8】
前記上面布地の透水率が1.0×10−4mm/S以下であり、前記下面布地の透水率が1.0×10−4〜1.0×10−3mm/Sである請求項1〜7のいずれか一項に記載の繊維製型枠。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の繊維製型枠を用いたモルタルの施工方法であって、
前記注入部から流動性モルタルを注入し、
水分を主として前記下面布地から放出させることにより前記流動性モルタルを硬化させるモルタルの施工方法。
【請求項10】
請求項9記載のモルタルの施工方法を遂行した後、タッチファスナー紐を切断して、上面布地を取り除く、モルタルの施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−106096(P2011−106096A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259306(P2009−259306)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000201490)前田工繊株式会社 (118)
【Fターム(参考)】