説明

繊維複合材料、光学フィルム、光学フィルムの製造方法、それを用いた偏光板および液晶表示装置

【課題】優れた特性を有する繊維複合材料を提供することであり、特にフィルム変形による故障が改善された光学フィルム、及びその製造方法を提供すること。更にはリターデーションの変動が抑制された光学フィルムを提供することであり、当該光学フィルムを用いた偏光板、及び当該偏光板を用いた液晶表示装置を提供すること。特に大型の液晶表示装置における位相差フィルムとして使用されることにより、該液晶表示装置が長期間使用されたときに生じる視野角の変動やカラーシフトが改善され、好適に用いられる光学フィルム、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】カルボキシル基およびアシル基を有するセルロースナノファイバーと、樹脂を含有することを特徴とする繊維複合材料。
ただし、該アシル基の炭素数は2〜30であり、該カルボキシル基は金属塩であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維複合材料、光学フィルム、光学フィルムの製造方法、それを用いた偏光板および液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂に各種繊維状強化材を配合することで、その強度、剛性を大幅に向上させた繊維強化複合材料は、電気・電子、機械、自動車、建材等の産業分野で広く用いられている。この繊維強化複合材料に配合される繊維状強化材としては、優れた強度を有するガラス繊維が主に用いられている。しかし、ガラス繊維強化材料では、高剛性化は達成されるが比重が大きくなるため、軽量化に限界があった。又、このガラス繊維強化材料を廃棄する場合、ガラス繊維自体が不燃性であるために、焼却処理する際に燃焼炉を傷める、又、燃焼効率が低くなるといった問題があり、サーマルリサイクル性に適しないという欠点もあった。これに対し、近年、植物繊維を解繊してミクロフィブリル化したセルロース繊維を樹脂に混合した繊維複合材料が提案されている。(例えば特許文献1参照)。このようなミクロフィブリル化したセルロース繊維を樹脂の強化材として用いた場合、機械的強度を向上させるほか、線膨張係数が大幅に低減できることが報告されている。しかし樹脂マトリックス中へ均一に分散することが困難であるため、得られる繊維複合材料の力学的強度が確保できず、その適用範囲は限定されたものであった。
【0003】
一方、繊維複合材料の応用が検討されている分野の一つに液晶表示装置の分野がある。この液晶表示装置の偏光板に用いる光学フィルムへの応用として、セルロースナノファイバー(以下CNFとも記載する)を含有したセルロースエステルを用いた光学フィルムの機械強度を向上させた技術も提案されている(例えば特許文献2〜4参照)。
【0004】
又、アシル基やカルボキシル基で修飾したセルロースナノファイバー含有した繊維複合材料の技術も提案されている(例えば特許文献1、5参照)。
【0005】
液晶表示装置は、低電圧、低消費電力で、IC回路への直結が可能であり、特に薄型化が可能であることから、液晶TVやパーソナルコンピュータ等の表示装置として広く採用されている。この液晶表示装置は、基本的な構成としては、例えば液晶セルの両側に偏光板を設けたものである。この様な液晶表示装置においては、コントラスト等の観点から、従来ツイスト角が90度のツイステッドネマティック(TN)を用いた液晶表示装置、ツイスト角が160度以上のスーパーツイステッドネマティック(STN)を用いた液晶表示装置が開発されてきたが、最近では、例えば特開平2−176625号公報に開示されているバーティカルアライメント(Vertical Alignment、略してVA、以降VAと表示することがある)型液晶表示装置が開発された。
【0006】
VA型液晶表示装置は、いわゆる垂直配向モードの液晶セルを利用して、黒がしっかり黒として表示され、コントラストが高く、TNやSTN型のものに比べて、視野角が広いという特徴を持っている。しかしながら、大型TVのように液晶画面が大きくなるに従って、更に視野角を広げたいという要望が高まっており、これらにおいても視野角拡大の為に位相差フィルムが使用されてきている。従って前記液晶画面の拡大により、位相差フィルムもますます広幅化される方向にある。
【0007】
位相差フィルムには、従来より樹脂フィルム、特にトリアセチルセルロースフィルムの適用が検討されてきたが、通常トリアセチルセルロース(TAC)フィルムは、厚み方向に一定の位相差(以下、リターデーションとも記載する)値(Rt)を有するが面内方向には極めて小さな位相差値(Ro)しか発現せず、例えば前述のVA型液晶表示装置の視野角を改善する目的には必ずしも適切ではなかった。幅手方向に遅相軸を持つ位相差フィルム(兼偏光板保護フィルム)を作製するためには、TAC等のセルロースエステルフィルムを製膜時に幅手方向に延伸し、幅手方向に遅相軸を持つ位相差フィルムとする必要がある。しかしながら、近年要求される大型ディスプレイ用の広幅の位相差フィルムを製造しようとすると、延伸ムラが発生し、位相差値の均一性が失われる傾向にあり、その改善が望まれているのが現状である。
【0008】
又、これらのセルロースエステルフィルムは通常、巻芯に巻かれてフィルム原反となり、保存、輸送されている。このため、製膜されたフィルムを巻芯に巻いたフィルム原反の状態で長期間保存されることがあるが、この時、いわゆる「馬の背」故障や、フィルム原反の巻芯部分には巻芯転写と呼ばれる故障及び巻始めるときにフィルムにシワが発生しやすい問題があることが判明した。馬の背故障とは、馬の背中のようにフィルム原反がU字型に変形し、中央部付近に2〜3cm程度のピッチで帯状の凸部ができる故障で、フィルムに変形が残ってしまうため、偏光板に加工すると画面が歪んで見えてしまうため問題である。今まで、馬の背故障はフィルム面同士の動摩擦係数を低くしたり、フィルムの両サイドにあるナーリング加工(エンボス加工)の高さを調節することによって発生を低減させていた。又、巻芯転写とは、巻芯やフィルムの凹凸よるフィルム変形による故障である。これらの故障は従来はそれほど問題とならなかったが、フィルムの広幅化に伴って、フィルム原反の幅も広く、巻長は長くする傾向にあるため、フィルム原反荷重は増加する傾向にあり、これらの故障がより発生しやすい状況となり、対策が必要になってきた。
【0009】
上記のような課題に対して、従来までに知られている前記ナノファイバー技術を用いたとしても広幅の位相差フィルムを製造した場合、光学性能、位相差値の均一性、フィルム変形抑制を同時に満足するには不十分であった。
【0010】
また、従来のセルロースエステルフィルムを用いた液晶表示素子は、長時間使用すると、視野角が劣化したり、斜めから観察したときの色が変動するという問題があった。これらの問題は単にセルロースエステルフィルムにセルロースナノファイバーを添加したり、アシル基で修飾されたセルロースナノファイバーまたはカルボキシ基を有するセルロースナノファイバーを添加することでは解決されなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−51266号公報
【特許文献2】特開2008−208231号公報
【特許文献3】特開2008−209595号公報
【特許文献4】特開2009−52016号公報
【特許文献5】特開2009−57552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記課題に鑑み成されたものであり、その目的は、優れた特性を有する繊維複合材料を提供することであり、特にフィルム変形による故障が改善された光学フィルム、及びその製造方法を提供することである。更にはリターデーションの変動が抑制された光学フィルムを提供することであり、当該光学フィルムを用いた偏光板、及び当該偏光板を用いた液晶表示装置を提供することである。特に大型の液晶表示装置における位相差フィルムとして使用されることにより、該液晶表示装置が長期間使用されたときに生じる視野角の変動やカラーシフトが改善され、好適に用いられる光学フィルム、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、本発明者らは鋭意検討した結果、繊維複合材料を光学フィルムに応用することを考え、カルボキシル基とアシル基で修飾されたセルロースナノファイバーと樹脂からなる組成物を用いて光学フィルムを製造することで、セルロースナノファイバーの機械強度向上作用と親水性部位と疎水性部位を有する置換基の配向作用により、フィルム変形による故障が改善され、更にはリターデーションを適性範囲に制御させると同時にリターデーションの変動が抑制できる光学フィルム、及びその製造方法を見出したものである。
【0014】
本発明の光学フィルム及びその製造方法を用いれば、光学フィルムの広幅化が可能であり、これを用いた偏光板、その偏光板を用いた液晶表示装置(液晶ディスプレイ)も広幅化が可能となる。
【0015】
本発明の上記課題は以下の構成により達成される。
【0016】
1.カルボキシル基およびアシル基を有するセルロースを含むセルロースナノファイバーと、樹脂を含有することを特徴とする繊維複合材料。
【0017】
ただし、該アシル基の炭素数は2〜30であり、該カルボキシル基は金属塩であってもよい。
【0018】
2.前記1に記載の繊維複合材料を含有することを特徴とする光学フィルム。
【0019】
3.前記2に記載の光学フィルムを溶融流延法で製膜することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【0020】
4.前記2に記載の光学フィルムを溶液流延法で製膜することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【0021】
5.前記2に記載の光学フィルムを少なくとも一方の面に用いたことを特徴とする偏光板。
【0022】
6.前記3または4に記載の光学フィルムの製造方法により製造された光学フィルムを少なくとも一方の面に用いたことを特徴とする偏光板。
【0023】
7.前記5または6に記載の偏光板を用いたことを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、フィルム変形による故障が改善され、更にはリターデーションを適性範囲に制御させると同時にリターデーションの変動が抑制できる光学フィルム、及びその製造方法、当該光学フィルムを用いた偏光板、及び当該偏光板を用いた液晶表示装置を提供することができる。
【0025】
特に大型の液晶表示装置に用いられる位相差フィルムとして好適に用いられる光学フィルム、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る光学フィルムの製造方法を実施する装置の1つの形態を示す概略フロー構成図
【図2】図1の製造装置の要部拡大フロー構成図
【図3】(a)は流延ダイの要部の外観図、(b)は流延ダイの要部の断面図
【図4】挟圧回転体の第1実施形態の断面図
【図5】挟圧回転体の第2実施形態の回転軸に垂直な平面での断面図
【図6】挟圧回転体の第2実施形態の回転軸を含む平面での断面図
【図7】液晶表示装置の構成図の概略を示す分解斜視図
【図8】巻き取った光学フィルム原反試料の保存方法を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
〔用途〕
本発明の繊維複合材料は、家電品の筺体や電子デバイスの基板材料、自動車用部品、住宅内装材料、包装・容器材料等の広範囲な用途に用いることができるが、本発明の繊維複合材料の透明性、分子配向作用、及び機械強度向上作用の優れた点を生かすために、光学フィルムの用途に用いることが特に好ましい。
【0029】
〔光学フィルム〕
本発明において、「光学フィルム」とは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等の各種表示装置に用いられる機能フィルムのことであり、詳しくは液晶表示装置用の偏光板保護フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム、ハードコートフィルム、防眩フィルム、帯電防止フィルム、視野角拡大等の光学補償フィルム等を含む。
【0030】
本発明の光学フィルムは、偏光板保護フィルム(機能性層を付与した偏光板保護フィルムを含む)、及び位相差フィルムに好ましく用いられる。
〔カルボキシル基およびアシル基を有するセルロースナノファイバー〕
前記セルロースナノファイバーは、カルボキシル基およびアシル基を有するセルロースナノファイバー(以下、SCNF又は修飾セルロースナノファイバーとも記載する)であり、セルロース繊維構造中に親水性部位と疎水性部位を有する。その親水性部位と疎水性部位の立体的な配置により特異的な配向作用を作り出し、リターデーションの値を適性範囲に制御することを見出した。又、親水性部位の荷電反発力による分散性向上作用により、リターデーションの変動を抑えることも見出した。更には、セルロースナノファイバーの機械強度向上作用によりリターデーションの変動が抑制でき、同時にフィルム変形による故障が改善されることを見出したものである。
【0031】
前記アシル基は、置換されていてもよい炭素数2〜30のアシル基であり、具体的には、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘキサノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、フロイル基、ニコチノイル基等が挙げられる。好ましくは炭素数が2〜10の基であり、特にアセチル基、プロピオニル基が好ましい。
【0032】
置換されていてもよい置換基としては特に限定されないが、具体的には、例えばアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等)、アルケニル基(アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、エイコセニル基等)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等)、アリール基(フェニル基、ナフチル基等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基(メチルアミノ基等のモノ又はジアルキルアミノ基等)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アシル基(アセチル基、プロピオニル基等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)が挙げられる。これらの置換基を単独で又は2種以上組みあわせて有していてもよい。
【0033】
前記カルボキシル基は金属塩でも良い。該金属塩の金属原子としては、特に限定されないが、具体的には、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等の1価の金属、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛、アルミニウム、錫、鉛等の多価の金属を挙げることができる。
【0034】
前記多価の金属による金属塩とは、1個の金属原子に対し、該金属の価数に相当する複数のアニオンが結合した化合物であり、該アニオンの少なくとも1個が、前記セルロースナノファイバーが有するカルボキシ基である。
【0035】
又、金属原子を選択することによりカルボキシル基の親水性を制御することができ、例えばナトリウム原子よりカルシウム原子のほうが親水性が小さくなることが確認できている。
【0036】
以下にカルボキシル基およびアシル基を有するセルロースナノファイバーの化合物例を挙げるが、Celはセルロースナノファイバーを表し、下記化合物例はセルロースと各置換基が1対1の比率で結合したものに限定されず、セルロースナノファイバーと置換基の組み合わせを例示したものである。
【0037】
【化1】

【0038】
本発明に係わる修飾セルロースファイバーは、ファイバーの表面をカルボキシル化及びアシル化することにより得ることができる。
【0039】
カルボキシル化反応は、特開平10−251302号公報に記載の方法を適用することができ、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル化合物(以下、単に「TEMPO」とも記載する)の存在下、酸化剤を用いてセルロースを酸化する方法が開示されている。前記酸化反応は、水性媒体(特に水中)で行う場合が多く、前記N−オキシル化合物と、臭化物又はヨウ化物との共存下で行うのが有利である。
【0040】
酸化剤としては、目的の酸化反応を推進し得る酸化剤であれば、いずれの酸化剤も使用できる。なお、前記2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンN−オキシル(TEMPO)等のN−オキシル化合物は、オキソ・イオン、オキソ・カチオンやオキソ・ラジカルと称する場合があるが、本明細書では、これらの化合物及び対応するオキソアンモニウム化合物を「N−オキシル化合物」と総称する。
【0041】
このような酸化反応により、セルロースファイバーの1級水酸基を選択的に効率よくカルボキシル基に変換できる。特にセルロースにおいては、繊維表面に存在するグルコース単位の1級水酸基(グルコース残基の6位のヒドロキシメチル基)の一部を効率よく酸化し、ヒドロキシメチル基をカルボキシル基に変換できる。
【0042】
前記N−オキシル化合物の使用量は、酸化反応に対して活性が発現する触媒量であれば特に制限されず、例えばセルロース100質量%に対して、0.01〜15質量%、好ましくは0.1〜10質量%である。セルロースのグルコース単位に対するN−オキシル化合物の使用量は、例えば0.0001〜0.1倍モル、好ましくは0.001〜0.1倍モルである。
【0043】
前記N−オキシル化合物を用いる酸化反応条件等は特に限定されず、臭化物やヨウ化物との共存下で酸化反応を行うと、温和な条件下でも酸化反応を円滑に進行させることができ、カルボキシル基の導入効率を大きく改善できる。
【0044】
臭化物やヨウ化物としては、水溶性であり、水中で解離してイオン化可能な種々の化合物(特に無機塩や金属ハロゲン化物)が使用できる。臭化物やヨウ化物としては、例えばアンモニウム塩(臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム)、臭化又はヨウ化アルカリ金属(臭化リチウム、臭化カリウム、臭化ナトリウム等の臭化物、ヨウ化リチウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム等のヨウ化物)、臭化又はヨウ化アルカリ土類金属(臭化カルシウム、臭化マグネシウム、臭化ストロンチウム等の臭化物、ヨウ化カルシウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化ストロンチウム等のヨウ化物)等が例示できる。これらの臭化物やヨウ化物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0045】
好ましい化合物としては、臭化アルカリ金属(臭化ナトリウム等)又はヨウ化アルカリ金属(ヨウ化ナトリウム等)が挙げられる。
【0046】
臭化物及び/又はヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択でき、例えばセルロース100質量%に対して0.1〜100質量%、好ましくは1〜80質量%である。セルロースのグルコース単位に対する臭化物及び/又はヨウ化物の使用量は、例えば0.1〜2倍モル、好ましくは0.2〜1.5倍モルである。
【0047】
酸化剤としては、ハロゲン(塩素,臭素,ヨウ素等)、ハロゲン含有酸素酸又はその塩[次亜ハロゲン酸又はその塩(次亜塩素酸又はその塩、次亜臭素酸又はその塩、次亜ヨウ素酸又はその塩等)、亜ハロゲン酸又はその塩(亜塩素酸又はその塩、亜臭素酸又はその塩、亜ヨウ素酸又はその塩等)、過ハロゲン酸又はその塩(過塩素酸又はその塩、過臭素酸又はその塩、過ヨウ素酸又はその塩等)等]、ハロゲン酸化物(例えばClO、ClO、Cl、BrO、Br等のハロゲン化酸素)、窒素酸化物(例えばNO,NO、N等)、過酸化物(過酸化水素、過酢酸等)等が含まれる。
【0048】
前記酸化剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい酸化剤には、ハロゲン含有酸素酸又はその塩、特に次亜ハロゲン酸塩(更に好ましくは次亜塩素酸塩)、なかでも次亜塩素酸アルカリ金属塩等が好ましい。
【0049】
酸化剤の使用量は、セルロースに対するカルボキシル基の導入量に応じて選択でき、例えばセルロースのグルコース単位に対して0.001〜10倍モル、好ましくは0.01〜5倍モルの範囲から選択できる。
【0050】
酸化反応は、通常、水を溶媒とする水性の反応系(水性媒体中)で行われる。すなわち、非水溶性セルロースを用いる場合、酸化反応は、繊維が懸濁した不均一反応系で行う場合が多く、必要に応じて撹拌しながら行うことができる。この方法は温和な条件であっても酸化反応を円滑に進行させることができるという特色がある。そのため、反応温度は適当な範囲、例えば0℃〜100℃程度の範囲から適当に選択できる。反応温度は、例えば0℃〜50℃、好ましくは室温(10〜30℃程度)であってもセルロースを効率よく酸化できる。
【0051】
又、反応は加圧下で行ってもよいが、常圧で行うのが反応操作上有利である。なお、反応の進行に伴ってカルボキシル基が生成し、反応液のpH低下が認められる。そのため、酸化反応を効率よく進行させるためには、反応系は、アルカリ性領域、例えばpH9〜12(例えば10〜12)、好ましくは10〜11程度に維持するのが有利である。反応系のpH調整は、アルカリ(水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ金属成分、アンモニア等を含む水溶液等)を反応系に適宜添加することにより行うことができる。
【0052】
代表的な酸化反応は、セルロースファイバーを水に懸濁し、所定量のN−オキシル化合物(TEMPO等)、アルカリ金属臭化物(臭化ナトリウム等)やアルカリ金属ヨウ化物(ヨウ化ナトリウム等)、及び酸化剤(例えば次亜塩素酸ナトリウム等の次亜塩素酸塩等)を添加し、必要に応じて撹拌しながら0℃〜室温(15〜35℃)で行なうことができる。反応終了後、反応混合液に、貧溶媒(例えばメタノール,エタノール等のアルコール類)を添加して反応を停止させ、濾過によって生成物を単離できる。生成物を、洗浄液(水、エタノール/水混合溶媒、アセトン等)で洗浄して取り出す。
【0053】
次のアシル化を行うには、このカルボキシル化されたセルロースファイバーに含まれる水を有機溶媒で置き換え、更に反応溶媒に置き換え、触媒の存在下に、アシル化試薬と反応させることで目的の修飾セルロースファイバーを得ることができる。ここで、水を置き換えるのに用いる有機溶媒としては修飾基導入工程の反応溶媒への置換を円滑に行なうために水及び、反応溶媒と互いに均一に混ざるものが好ましく、特にメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール;アセトン等のケトン;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド;酢酸等のカルボン酸;アセトニトリル等のニトリル類等、その他ピリジン等の芳香族複素環化合物等の水溶性有機溶媒が好ましく、入手の容易さ、取り扱い性等の点において、エタノール、アセトン等が好ましい。これらの有機溶媒は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0054】
アシル化は既に公知の方法が適用でき、触媒の存在下で、カルボン酸又はその無水物、あるいはカルボン酸クロライドとセルロースの未置換の水酸基とのアシル化反応によって得ることができる。アシル化反応に用いるカルボン酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸等が挙げられ、反応には、それらの酸無水物又は酸クロライドが好ましく使用される。又、酸とその無水物を併用することも好ましく、例えばアセチル基を所望する場合、アシル化試薬は酢酸及び/又は無水酢酸であってよい。同様に、アセチル基とプロピオニル基の2種を所望する場合、アシル化試薬は、酢酸及び/又は無水酢酸とプロピオン酸及び/又は無水プロピオン酸との混合物であってよい。
【0055】
アシル化反応に用いるカルボン酸又はその無水物、あるいはカルボン酸クロライドは、出発セルロースファイバーに対して10〜1000質量%の量で使用される。反応温度は通常20〜150℃が好ましく、より好ましくは50〜120℃である。反応時間は通常0.5〜15時間が好ましく、より好ましくは2〜10時間で、所望の特性を有する修飾セルロースファイバーが得られる。
【0056】
アシル化反応に用いる触媒としては、無触媒で反応をすることもできるが、当該技術分野で公知の様々なエステル化触媒を用いることができる。有用な触媒としては、硫酸、過塩素酸、酸化亜鉛、チタンアルコキシド、硫酸塩、スルファミン酸、メタンスルホン酸又はこれらの混合物、又、塩基性触媒でもよく、具体的は、例えば4−N,N−ジメチルアミノピリジン、コリジン、ピリジン及びトリエチルアミン、更にはモノカルボン酸の酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、酪酸ナトリウム及び酪酸カリウム等の塩基性塩が挙げられる。一般にこれらの触媒の用いる量は、処理するセルロースファイバーに対して、0.01〜150質量%、好ましくは0.1〜60質量%である。
【0057】
前記アシル化反応は有機溶媒中で行うことが好ましい。好ましい有機溶媒としては、例えば酢酸、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソ塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、四塩化炭素、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの有機溶媒は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0058】
又、前記アシル化反応は剪断力を付加しながら加熱攪拌が可能なバッチ式ニーダーを用いた反応によるものであってもよいし、一軸或いは二軸のエクストルーダーを用いた反応によるものであってもよい。
【0059】
前記アシル基の割合は、セルロースファイバーを構成するグルコース単位1モルに対して、平均0.3〜2.0モルが好ましい。より好ましくは0.5〜1.5モルである。一方、セルロースには、1グルコース単位の2位、3位、6位に1個ずつ、計3個の水酸基があり、平均して1グルコース単位にいくつの置換基が結合しているかを示す数値として置換度があり、最大の置換度は3.0である。前記アシル基は、グルコース単位の2位、3位、6位に平均的に置換していてもよいし、分布をもって置換していてもよい。なお、セルロースナノファイバー全体に対するアシル基割合を上記割合とすることにより、本発明の光学フィルムの構成成分であるセルロースナノファイバーの親水性部位と疎水性部位のバランスが良好となり、特異的な配向作用を発現する。又、樹脂との相溶性を向上させ、フィルムのヘーズを下げるのに効果が大きい。
【0060】
得られた修飾セルロースファイバーの構造及びアシル基置換度等は、慣用の方法、例えばNMR(H−NMR、13C−NMR等)、IR、伝導度滴定法を用いたカルボキシル含有量測定、イオンクロマト、原子吸光法、又はICP発光分析法による金属イオン分析等によって確認できる。
【0061】
本発明において、修飾セルロースナノファイバーは、直接、又は分散液として樹脂に添加されるが、その含有量は光学フィルムを形成する樹脂の総質量に対し、0.1から50質量%の範囲であることが好ましい。更に好ましくは0.5〜30質量%の割合で混ぜることが好ましい。修飾セルロースナノファイバーの含有量が0.1質量%以上であれば、光学フィルムのリターデーション制御、リターデーションの変動抑制及びフィルム変形による故障を改善する効果が高く、50質量%以下であれば、透明度が高く表面の平坦性が高い。この時、光学フィルムを形成したときのヘーズが1.0以下であれば特に制限はされないが、好ましくはヘーズが0.5以下である。更に好ましくは、光学フィルムを形成したときのヘーズが0.3以下である。
【0062】
本発明において用いられる修飾セルロースナノファイバーは、セルロースファイバーに修飾基を導入したものであるが、修飾基の導入工程は原料パルプ取り出しの工程後でも、ある程度解繊した工程後でも、あるいはナノファイバーまで解繊した工程後のどの段階でもよいが、原料パルプ取り出しの工程後又は平均繊維径が1〜100μmの範囲に収まる程度に解繊後に修飾基の導入工程を行うのが好ましい。そして修飾基導入後に、更に平均繊維径が1μm以下になるまで解繊処理することにより、導入された修飾基の分散性向上作用により、凝集を起こしにくいセルロースナノファイバーが得られるため好ましい。
【0063】
セルロースナノファイバーは、製紙用パルプ等のセルロース繊維に強力な機械的せん断力を与えることにより得られることが知られており、その製造方法も数多く提案されている。例えば特公昭60−19921号公報では、繊維状セルロースの懸濁液を小径のオリフィスを通過させて、その懸濁液に少なくとも20.7MPaの圧力差で高速度を与え、次にこれを衝突させて急速に減速させることにより切断作用を行わせる工程と、この工程を繰返して前記セルロース懸濁液が実質的に安定な懸濁液となるようにする工程とからなる微小繊維状セルロースの製造方法を提案している。
【0064】
特開平4−82907号公報では、乾燥状態で天然セルロース繊維の短繊維を解繊させることによりフィブリル化天然セルロースを製造する方法を提案している。
【0065】
さらに特開平06−10286号公報では、ガラス、アルミナ、ジルコニア、ジルコン、スチール、チタニア等の材質のビーズ又はボールを解繊媒体として用いた振動ミル解繊装置によって、繊維状セルロースの懸濁液に湿式解繊処理を施す微細繊維状セルロースの製造方法が開示されている。
【0066】
セルロースナノファイバーは、前記セルロース系原料を複数の解繊手段を用いて微細化することが好ましい。解繊手段は限定されないが、本発明の目的に合う粒径まで微細に解繊するためには、高圧ホモジナイザーや媒体ミル、砥石回転型解繊機、石臼式グラインダーのような強い剪断力が得られる方式が好ましく用いられる。
【0067】
高圧ホモジナイザーとは、加速された高流速によるせん断力、急激な圧力降下(キャビテーション)及び高流速の粒子同士が微細オリフィス内で対面衝突することによる衝撃力によって磨砕を行う装置であり、市販されている装置としては、ナノマイザー(ナノマイザー株式会社製)、マイクロフルイダイザー(Microfluidics社製)等を用いることができる。高圧ホモジナイザーによるセルロースのフィブリル化と均質化の程度は、高圧ホモジナイザーへ圧送する圧力と高圧ホモジナイザーに通過させる回数(パス回数)に依存する。圧送圧力は、通常、500〜2000kg/cm程度の範囲で行うことが超微細化処理に適するが、生産性を考慮すると1000〜2000kg/cmがより好ましい。パス回数は、例えば5〜50回、好ましくは10〜40回、特に20〜30回程度である。
【0068】
媒体ミルは湿式振動ミル、湿式遊星振動ミル、湿式ボールミル、湿式ロールミル、湿式コボールミル、湿式ビーズミル、湿式ペイントシェーカー等である。これらの中で例えば湿式ビーズミルとは、金属製、セラミック製等の媒体を容器に内蔵し、これを強制撹拌することによって湿式磨砕する装置であるが、例えば市販されている装置としては、アペックスミル(コトブキ技研工業株式会社製)、パールミル(アシザワ株式会社製)、ダイノーミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製)等を用いることができる。
【0069】
砥石回転型解繊機とは、コロイドミル或いは石臼型解繊機の一種であり、例えば粒度が16〜120番の砥粒からなる砥石をすりあわせ、そのすりあわせ部に前述の水分散液を通すことで、解繊処理される装置のことである。必要に応じて、複数回処理を行ってもよい。砥石を適宜変更するのは好ましい実施態様の一つである。砥石回転型解繊機は、「短繊維化」と「微細化」の両作用を有するが、その作用は砥粒の粒度に影響を受ける。短繊維化を目的とする場合は46番以下の砥石が有効であり、微細化を目的とする場合は46番以上の砥石が有効である。46番はいずれの作用も有する。具体的な装置としては、ピュアファインミル(グラインダーミル)(株式会社栗田機械製作所)、セレンディピター、スーパーマスコロイダー、スーパーグラインデル(以上、増幸産業株式会社)等が挙げられる。
【0070】
本発明に係るセルロースナノファイバーとは、繊維として、好ましくは平均繊維径4〜200nmであるセルロース系繊維をいう。この繊維は、単繊維が、引き揃えられることなく、かつ相互間にが入り込むように十分に離隔して存在するものより成ってもよい。この場合、平均繊維径は単繊維の平均径となる。又、本発明に係る繊維は、複数(多数であってもよい)本の単繊維が束状に集合して1本の糸条を構成しているものであってもよく、この場合、平均繊維径は1本の糸条の径の平均値として定義される。本発明において、繊維の平均繊維径が200nm以下であれば、可視光の波長から遠く、セルロースエステルとの界面で可視光の屈折が生じにくく、透明性が高いため、本発明で用いる繊維の平均繊維径の上限は200nmであることが好ましい。平均繊維径4nm以上の繊維は製造が容易であるため、本発明で用いる繊維の平均繊維径の下限は4nmであることが好ましい。本発明で用いる繊維の平均繊維径は、好ましくは4〜100nmであり、より好ましくは4〜60nmである。なお、本発明で用いる繊維は、平均繊維径が4〜200nmの範囲内であれば、繊維中に4〜200nmの範囲外の繊維径のものが含まれていても良いが、その割合は30質量%以下であることが好ましく、望ましくは、すべての繊維の繊維径が200nm以下、特に100nm以下、とりわけ60nm以下であることが望ましい。
【0071】
本発明のセルロースナノファイバーの繊維の長さは、平均長さで0.5μm以上50μm以下が好ましい。繊維の平均長さが0.5μmより短いと、リターデーションの変動抑制効果、及びフィルム変形による故障の改善効果が低くなる。又、繊維の長さが50μm以下であれば分散性が高く、ファイバーの分布が均一であり、繊維複合材料中の組成分布が均一であり、前記、改善効果がいずれも高くなる。更には光学ファイルムとしての透明性が不十分となるおそれがある。なお、繊維中には繊維長さ0.5μm未満のものが含まれていても良いが、その割合は30質量%以下であることが好ましい。繊維長さは、より好ましくは1.0μm以上20μm以下が好ましい。更に好ましくは2.0μm以上10μm以下が好ましい。
【0072】
上記繊維径、繊維長の測定は市販の顕微鏡、電子顕微鏡により測定することができる。例えば走査型電子顕微鏡により2000倍にセルロースナノファイバーを拡大した写真を撮影し、ついでこの写真に基づいて「SCANNING IMAGE ANALYZER」(日本電子社製)を使用して写真画像の解析を行うことにより測定した。この際、100本のセルロースナノファイバーを使用して繊維径、繊維長の平均値を求めることができる。
【0073】
セルロース系繊維とは、植物細胞壁の基本骨格等を構成するセルロースのミクロフィブリル又はこれの構成繊維をいい、通常繊維径4nm程度の単位繊維の集合体である。このセルロース繊維は、結晶構造を40%以上含有するものが、高い強度と低い熱膨張を得る上で好ましい。
【0074】
本発明において、用いるセルロース系繊維は、植物から分離されるものであっても、バクテリアセルロースによって産生されるバクテリアセルロースであっても好適に用いることができるが、植物から分離されるものが好ましい。
【0075】
本発明のセルロースナノファイバーの原料として用いられるパルプは、機械的方法で得られたパルプ(砕木パルプ、リファイナ・グランド・パルプ、サーモメカニカルパルプ、セミケミカルパルプ、ケミグランドパルプ等)、又は化学的方法で得られたパルプ(クラフトパルプ、亜硫酸パルプ等)等が使用できる。パルプとしては、通常、木材パルプやリンターパルプ、古紙パルプ等が使用される。又、セルロースを含有する素材が広く使用できるものであり、例えば竹パルプ、バガスパルプのような脱リグニン処理を施した精製パルプであったり、又はコットン繊維、コットンリンター、麻繊維のようなセルロース系天然繊維であったり、又はそれらに脱リグニン処理を施した精製天然繊維であったり、又はビスコースやレーヨン、テンセル、ポリノジック繊維等の再生セルロース成形物であったり、又は穀物又は果実由来の食物繊維(例えば小麦フスマ、えん麦フスマ、とうもろこし外皮、米ぬか、ビール粕、大豆粕、えんどう豆繊維、おから、リンゴ繊維等)であったり、又は木材や稲ワラに代表されるようなリグノセルロース材料であってもよい。又、非木材繊維である、ケナフ、シオグサ、エスパルト、楮、三椏、雁皮、ラミー等を用いても良く、微生物産生セルロース、バロニアセルロース、ホヤセルロース等でも使用できる。上記の中では木材パルプを主原料とすることが好ましく、必要に応じてポリプロピレン等の合成パルプを加えてもよい。好ましく用いられるのは無機物担持パルプであり、この製造のため用いられるセルロースパルプは、例えば広葉樹材及び針葉樹材から得られるサルファイトパルプ(SP)、アルカリパルプ(AP)、クラフトパルプ(KP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ、セミメカニカルパルプ、機械パルプ等が挙げられる。又、パルプは未漂白パルプ、漂白パルプの区別及び叩解、未叩解の区別なく使用可能である。品質とコストから広葉樹晒クラフトパルプ(以下、LBKPともいう)、或いは針葉樹晒クラフトパルプが最も適している。木材パルプとしてはLBKP,LBSP,NBKP,NBSP,LDP,NDP,LUKP,NUKPのいずれも用いることができるが短繊維分の多いLBKP,NBSP,LBSP,NDP,LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSP及び又はLDPの比率は10質量%以上、70質量%以下が好ましい。本発明に使用するパルプの濾水度はCSFの規定で200〜500mlが好ましく、又、叩解後の繊維長がJIS−P−8207に規定される24メッシュ残分質量%と42メッシュ残分質量%との和が30〜70%がセルロースナノファイバーを作製する上で好ましい。なお、4メッシュ残分質量%は20質量%以下であることが好ましい。又、竹パルプも好ましく用いられるが、特に限定されるものではないが、孟宗竹よりも真竹を用いることの方が繊維直径が小さい(15μm以下)ため、セルロースナノファイバーを作製する上で好ましい。
【0076】
又、セルロース系素材にキサンタンガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、繊維素グリコール酸ナトリウム等の水溶性のガム類、澱粉加水分解物、デキストリン類等の親水性物質等を適宜配合することができる。これらの水溶性のガム類、親水性物質は磨砕後の微細セルロースに添加配合してもよい。
【0077】
本発明では分散助剤を配合することもできる。含有量は1質量部迄とするのが通常であるが、分散助剤として、グルコース、ブドウ糖、庶糖、果糖、乳糖、麦芽糖、セロビオース、セロトリオース、セロテトラオース、マルトトリオース、フラクトース、キシロース、各種オリゴ糖、ソルビット、デキストリン類、デンプン類、ソルボース、ガム分解物、各種ガム類、プルラン、カードラン、寒天、ペクチン、デキストラン、ゼラチン、セルロース誘導体、アルギン酸、ファーセレラン、マルメロ、等の水溶性物質又は水膨潤性物質等が使用できる。
【0078】
又、リン酸塩等による処理を用いることができ、これは植物細胞壁等の表面をリン酸エステル化することにより、セルロース繊維間の結合力を弱め、次いで、リファイナー処理を行うことにより、繊維をバラバラにし、セルロース繊維を得る処理法である。例えばリグニン等を除去した植物細胞壁を50質量%の尿素と32質量%のリン酸を含む溶液に浸漬し、60℃で溶液をセルロース繊維間に十分に染み込ませた後、180℃で加熱してリン酸化を進める。これを水洗した後、3質量%の塩酸水溶液中、60℃で2時間、加水分解処理をして、再度水洗を行う。その後、3質量%の炭酸ナトリウム水溶液中において、室温で20分間程処理することで、リン酸化を完了させる。そして、この処理物をリファイナーで解繊することにより、セルロースナノファイバーが得られる。
【0079】
〔樹脂〕
本発明における樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等、一般的に用いられる樹脂であれば、特に限定されることなく用いることができる。本発明に用いられる樹脂として、好ましくは熱可塑性樹脂であり、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン(日本ゼオン社ゼオノア、JSR社製アートン、ポリプラスチック社製TOPAS、三井化学社製アペル等)、ポリ乳酸、セルロースエステル、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリカプロラクトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリ3ヒドロキシブチレート、ポリアリレート、ナイロン、アラミド、熱可塑性エラストマー、シリコーン等が挙げられる。中でもより好ましいのはセルロースエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィンであり、最も好ましいのはセルロースエステルである。
【0080】
又、熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、等が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えばエポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート等が挙げられる。
【0081】
〔セルロースエステル(CE)〕
本発明の光学フィルムを構成する樹脂として好ましく用いられるセルロースエステル(以下、CEとも記載する)としては、平均置換度が1.5〜3.0のセルロースエステルが好ましく、例えば芳香族カルボン酸エステル等も用いられるが、光学特性等の得られるフィルムの特性を鑑みると、セルロースの低級混合脂肪酸エステルを使用するのが好ましい。低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えばセルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートブチレート、セルロースピバレート、セルロースカプロエート、セルロースアセテートカプロエート等がセルロースの低級脂肪酸エステルの好ましいものとして挙げられる。炭素原子数が7以上の脂肪酸で置換されたセルロースエステルでは、得られるセルロースエステルフィルムの力学特性が低くなる傾向がある。
【0082】
上記セルロースエステルの中でも、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートカプロエートが好ましい。この内、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート又はセルロースアセテートプロピオネートが好ましく、特に好ましくはセルロースジアセテートである。
【0083】
次に、本発明に用いられるセルロースエステルのアシル基の置換度について説明する。
【0084】
セルロースには、1グルコース単位の2位、3位、6位に1個ずつ、計3個の水酸基があり、置換度とは、平均して1グルコース単位にいくつのアシル基が結合しているかを示す数値である。従って、最大の置換度は3.0である。これらアシル基は、グルコース単位の2位、3位、6位に平均的に置換していてもよいし、分布をもって置換していてもよい。好ましい置換度としては、アセチル基の置換度をXとし、他のアシル基の置換度をYとした時、下記式(I)、(II)及び(III)を同時に満たすセルロースエステルである。なお、アセチル基の置換度と他のアシル基の置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法により求めたものである。
【0085】
式(I) 1.5≦X+Y≦3.0
式(II) 1.5≦X≦3.0
式(III) 0≦Y≦1.5
又、アシル基の置換度の異なるセルロースエステルをブレンドして、セルロースエステルフィルム全体として上記範囲に入っていてもよい。上記アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在しているものである。
【0086】
本発明に用いられるセルロースエステルは、50000〜150000の数平均分子量(Mn)を有することが好ましく、55000〜120000の数平均分子量を有することが更に好ましく、60000〜100000の数平均分子量を有することが最も好ましい。
【0087】
更に、本発明に用いられるセルロースエステルは、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比が1.3〜5.5のものが好ましく用いられ、特に好ましくは1.5〜5.0であり、更に好ましくは1.7〜4.0であり、更に好ましくは2.0〜3.5のセルロースエステルが好ましく用いられる。
【0088】
なお、Mn及びMw/Mnは下記の要領で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより算出した。
【0089】
測定条件は以下の通りである。
【0090】
溶媒 :テトヒドロフラン
装置 :HLC−8220(東ソー(株)製)
カラム :TSKgel SuperHM−M(東ソー(株)製)
カラム温度:40℃
試料濃度 :0.1質量%
注入量 :10μl
流量 :0.6ml/min
校正曲線 :標準ポリスチレン:PS−1(Polymer Laboratories社製)
Mw=2,560,000〜580までの9サンプルによる校正曲線を使用した。
【0091】
本発明で用いられるセルロースエステルの原料セルロースは、木材パルプでも綿花リンターでもよく、木材パルプは針葉樹でも広葉樹でもよいが、針葉樹の方がより好ましい。製膜の際の剥離性の点からは綿花リンターが好ましく用いられる。これらから作られたセルロースエステルは適宜混合して、或いは単独で使用することができる。例えば綿花リンター由来セルロースエステル:木材パルプ(針葉樹)由来セルロースエステル:木材パルプ(広葉樹)由来セルロースエステルの比率が100:0:0、90:10:0、85:15:0、50:50:0、20:80:0、10:90:0、0:100:0、0:0:100、80:10:10、85:0:15、40:30:30で用いることができる。
【0092】
セルロースエステルは、例えば原料セルロースの水酸基を無水酢酸、無水プロピオン酸及び/又は無水酪酸を用いて常法によりアセチル基、プロピオニル基及び/又はブチル基を上記の範囲内に置換することで得られる。このようなセルロースエステルの合成方法は、特に限定はないが、例えば特開平10−45804号或いは特表平6−501040号に記載の方法を参考にして合成することができる。
【0093】
本発明に用いられるセルロースエステルのアルカリ土類金属含有量は、1〜50ppmの範囲であることが好ましい。50ppmを超えるとリップ付着汚れが増加或いは熱延伸時や熱延伸後でのスリッティング部で破断しやすくなる。1ppm未満でも破断しやすくなるがその理由はよく分かっていない。1ppm未満にするには洗浄工程の負担が大きくなり過ぎるためその点でも好ましくない。更に1〜30ppmの範囲が好ましい。ここでいうアルカリ土類金属とはCa、Mgの総含有量のことであり、X線光電子分光分析装置(XPS)を用いて測定することができる。
【0094】
本発明に用いられるセルロースエステル中の残留硫酸含有量は、硫黄元素換算で0.1〜45ppmの範囲であることが好ましい。これらは塩の形で含有していると考えられる。残留硫酸含有量が45ppmを超えると熱溶融時のダイリップ部の付着物が増加するため好ましくない。又、熱延伸時や熱延伸後でのスリッティングの際に破断しやすくなるため好ましくない。少ない方が好ましいが、0.1未満とするにはセルロースエステルの洗浄工程の負担が大きくなり過ぎるため好ましくないだけでなく、逆に破断しやすくなることがあり好ましくない。これは洗浄回数が増えることが樹脂に影響を与えているのかもしれないがよく分かっていない。更に1〜30ppmの範囲が好ましい。残留硫酸含有量は、ASTM−D817−96に規定の方法により測定することができる。本発明に用いられるセルロースエステル中の遊離酸含有量は、1〜500ppmであることが好ましい。500ppmを超えるとダイリップ部の付着物が増加し、又、破断しやすくなる。洗浄で1ppm未満にすることは困難である。更に1〜100ppmの範囲であることが好ましく、更に破断しにくくなる。特に1〜70ppmの範囲が好ましい。遊離酸含有量はASTM−D817−96に規定の方法により測定することができる。
【0095】
合成したセルロースエステルの洗浄を、溶液流延法に用いられる場合に比べて、更に十分に行うことによって、残留酸含有量を上記の範囲とすることができ、溶融流延法によってフィルムを製造する際に、リップ部への付着が軽減され、平面性に優れるフィルムが得られ、寸法変化、機械強度、透明性、耐透湿性、後述するRt値、Ro値が良好なフィルムを得ることができる。又、セルロースエステルの洗浄は、水に加えて、メタノール、エタノールのような貧溶媒、或いは結果として貧溶媒であれば貧溶媒と良溶媒の混合溶媒を用いることができ、残留酸以外の無機物、低分子の有機不純物を除去することができる。更に、セルロースエステルの洗浄は、ヒンダードアミン、亜リン酸エステルといった酸化防止剤の存在下で行うことが好ましく、セルロースエステルの耐熱性、製膜安定性が向上する。
【0096】
又、セルロースエステルの耐熱性、機械物性、光学物性等を向上させるため、セルロースエステルの良溶媒に溶解後、貧溶媒中に再沈殿させ、セルロースエステルの低分子量成分、その他不純物を除去することができる。この時、前述のセルロースエステルの洗浄同様に、酸化防止剤の存在下で行うことが好ましい。更に、セルロースエステルの再沈殿処理の後、別のポリマー或いは低分子化合物を添加してもよい。
【0097】
又、本発明で用いられるセルロースエステルはフィルムにした時の輝点異物が少ないものであることが好ましい。輝点異物とは、2枚の偏光板を直交に配置し(クロスニコル)、この間にセルロースエステルフィルムを配置して、一方の面から光源の光を当てて、もう一方の面からセルロースエステルフィルムを観察した時に、光源の光が漏れて見える点のことである。このとき評価に用いる偏光板は輝点異物がない保護フィルムで構成されたものであることが望ましく、偏光子の保護にガラス板を使用したものが好ましく用いられる。輝点異物はセルロースエステルに含まれる未酢化もしくは低酢化度のセルロースがその原因の1つと考えられ、輝点異物の少ないセルロースエステルを用いる(置換度の分散の小さいセルロースエステルを用いる)ことと、溶融したセルロースエステルを濾過すること、或いはセルロースエステルの合成後期の過程や沈殿物を得る過程の少なくともいずれかにおいて、一度溶液状態として同様に濾過工程を経由して輝点異物を除去することもできる。溶融樹脂は粘度が高いため、後者の方法の方が効率がよい。フィルム膜厚が薄くなるほど単位面積当たりの輝点異物数は少なくなり、フィルムに含まれるセルロースエステルの含有量が少なくなるほど輝点異物は少なくなる傾向があるが、輝点異物は、輝点の直径0.01mm以上が200個/cm以下であることが好ましく、100個/cm以下であることがより好ましく、50個/cm以下であることが更に好ましく、30個/cm以下であることがさらにより好ましく、10個/cm以下であることが更に好ましいが、皆無であることが最も好ましい。又、0.005〜0.01mm以下の輝点についても200個/cm以下であることが好ましく、100個/cm以下であることがより好ましく、50個/cm以下であることがさらにより好ましく、30個/cm以下であることが更に好ましく、10個/cm以下であることが更に好ましいが、皆無であることが最も好ましい。
【0098】
輝点異物を溶融濾過によって除去する場合、セルロースエステルを単独で溶融させたものを濾過するよりも可塑剤、劣化防止剤、酸化防止剤等を添加混合したセルロースエステル組成物を濾過することが輝点異物の除去効率が高く好ましい。もちろん、セルロースエステルの合成の際に溶媒に溶解させて濾過により低減させてもよい。紫外線吸収剤、その他の添加物も適宜混合したものを濾過することができる。濾過はセルロースエステルを含む溶融物の粘度が10000Pa・s以下で濾過されることが好ましく、5000Pa・s以下がより好ましく、1000Pa・s以下が更に好ましく、500Pa・s以下であることがさらにより好ましい。濾材としては、ガラス繊維、セルロース繊維、濾紙、四フッ化エチレン樹脂等の弗素樹脂等の従来公知のものが好ましく用いられるが、特にセラミックス、金属等が好ましく用いられる。絶対濾過精度としては50μm以下のものが好ましく用いられ、30μm以下のものがより好ましく、10μm以下のものがさらに好ましく、5μm以下のものが更に好ましく用いられる。これらは適宜組み合わせて使用することもできる。濾材はサーフェースタイプでもデプスタイプでも用いることができるが、デプスタイプの方が比較的目詰まりしにくく好ましく用いられる。
【0099】
別の実施態様では、原料のセルロースエステルは少なくとも一度溶媒に溶解させた後、溶媒を乾燥させたセルロースエステルを用いてもよい。その際には可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、酸化防止剤及びマット剤の少なくとも1つ以上と共に溶媒に溶解させた後、乾燥させたセルロースエステルを用いる。溶媒としては、メチレンクロライド、酢酸メチル、ジオキソラン等の溶液流延法で用いられる良溶媒を用いることができ、同時にメタノール、エタノール、ブタノール等の貧溶媒を用いてもよい。溶解の過程で−20℃以下に冷却したり、80℃以上に加熱したりしてもよい。このようなセルロースエステルを用いると、溶融状態にした時の各添加物を均一にしやすく、光学特性を均一にできることがある。
【0100】
〔添加剤〕
本発明の光学フィルムには、該光学フィルムを用いて作製した偏光板、液晶表示装置の性能を更に向上させる目的で、以下に記載する(1)〜(3)の3種の添加剤のうち少なくとも1種以上を添加することが好ましい。特に好ましくは3種すべて添加することである。
(1)炭素ラジカル捕捉剤
(2)パーオキシラジカルに対する水素ラジカル供与能を有する一次酸化防止剤
(3)パーオキサイドに対する還元作用を有する二次酸化防止剤
(炭素ラジカル捕捉剤)
本発明の光学フィルムは、炭素ラジカル捕捉剤を少なくとも1種以上含有することが好ましい。
【0101】
本発明において「炭素ラジカル捕捉剤」とは、炭素ラジカルが速やかに付加反応しうる基(例えば2重結合、3重結合等の不飽和基)を有し、かつ炭素ラジカル付加後に重合等の後続反応が起こらない安定な生成物を与える化合物を意味する。
【0102】
上記炭素ラジカル捕捉剤としては分子内に速やかに炭素ラジカルと反応する基((メタ)アクリロイル基、アリール基等の不飽和基)及びフェノール系、ラクトン系化合物等のラジカル重合禁止能を有する化合物が有用であり、特に下記一般式(AD−1)又は一般式(AD−2)で表わされる化合物が好ましい。
【0103】
【化2】

【0104】
一般式(AD−1)において、R11は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表し、好ましくは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、特に好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0105】
12及びR13は、それぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基を表し、直鎖でも、分岐構造又は環構造を有してもよい。R12及びR13は、好ましくは4級炭素を含む「*−C(CH−R’」で表される構造(*は芳香環への連結部位を表し、R’は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)である。R12は、より好ましくはtert−ブチル基、tert−アミル基又はtert−オクチル基である。R13は、より好ましくはtert−ブチル基、tert−アミル基である。上記一般式(AD−1)で表される化合物として、市販のものでは「SumilizerGM、SumilizerGS」(共に商品名、住友化学(株)社製)等が挙げられる。
【0106】
以下に上記一般式(AD−1)で表わされる化合物の具体例(I−1〜I−18)を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0107】
【化3】

【0108】
【化4】

【0109】
【化5】

【0110】
【化6】

【0111】
前記一般式(AD−2)において、R22〜R25はおのおの互いに独立して水素原子又は置換基を表し、R22〜R25で表される置換基としては特に制限はないが、例えばアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリフルオロメチル基等)、シクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基等)、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基等)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルケニル基(例えばビニル基、2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、4−ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等)、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等)、アルキニル基(例えばプロパルギル基等)、複素環基(例えばピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基等)、アルキルスルホニル基(例えばメチルスルホニル基、エチルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えばフェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等)、アルキルスルフィニル基(例えばメチルスルフィニル基等)、アリールスルフィニル基(例えばフェニルスルフィニル基等)、ホスホノ基、アシル基(例えばアセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等)、カルバモイル基(例えばアミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、ブチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えばアミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、スルホンアミド基(例えばメタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、シアノ基、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、複素環オキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基(例えばアセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、スルホン酸基、スルホン酸の塩、アミノカルボニルオキシ基、アミノ基(例えばアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基等)、アニリノ基(例えばフェニルアミノ基、クロロフェニルアミノ基、トルイジノ基、アニシジノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、イミド基、ウレイド基(例えばメチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えばメトキシカルボニルアミノ基、フェノキシカルボニルアミノ基等)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基等)、複素環チオ基、チオウレイド基、カルボキシル基、カルボン酸の塩、ヒドロキシル基、メルカプト基、ニトロ基等の各基が挙げられる。これらの置換基は同様の置換基によって更に置換されていてもよい。
【0112】
前記一般式(AD−2)において、R26は水素原子又は置換基を表し、R26で表される置換基は、前記R22〜R25で表される置換基と同様な基を挙げることができる。前記一般式(AD−2)において、nは1又は2を表す。
【0113】
前記一般式(AD−2)において、nが1であるとき、R21は置換基を表し、nが2であるとき、R21は2価の連結基を表す。R21が置換基を表すとき、置換基としては、前記R22〜R25で表される置換基と同様な基を挙げることができる。R21は2価の連結基を表すとき、2価の連結基として例えば置換基を有しても良いアルキレン基、置換基を有しても良いアリーレン基、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、或いはこれらの連結基の組み合わせを挙げることができる。
【0114】
前記一般式(AD−2)において、nは1が好ましい。
【0115】
次に、本発明における前記一般式(AD−2)で表される化合物の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によって限定されるものではない。
【0116】
【化7】

【0117】
【化8】

【0118】
【化9】

【0119】
【化10】

【0120】
上記、炭素ラジカル捕捉剤は、1種或いは2種以上組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、光学フィルムを形成する樹脂の総質量に対し、通常0.001〜10.0質量部添加することが好ましく、更に好ましくは0.01〜5.0質量部、特に好ましくは、0.1〜1.0質量部である。
【0121】
(一次酸化防止剤)
本発明の光学フィルムは、パーオキシラジカルに対する水素ラジカル供与能を有する一次酸化防止剤を少なくとも1種以上含有することが好ましい。
【0122】
本発明において「パーオキシラジカルに対する水素ラジカル供与能を有する一次酸化防止剤」とは、パーオキシラジカルによって速やかに引き抜かれる水素原子を分子内に少なくとも1つ以上有する化合物であり、水酸基あるいは1級又は2級のアミノ基によって置換された芳香族化合物又は立体障害性基を有する複素環化合物であることが好ましく、より好ましくは、オルト位にアルキル基を有するフェノール系化合物あるいはヒンダードアミン系化合物である。
【0123】
(フェノール系化合物)
本発明に好ましく用いられるフェノール化合物は、例えば米国特許第4,839,405号明細書の第12〜14欄に記載されているもの等の、2,6−ジアルキルフェノール誘導体化合物が含まれる。このような化合物には、下記一般式(AD−3)で表される化合物が含まれる。
【0124】
【化11】

【0125】
式中、R31〜R36は水素原子又は置換基を表す。置換基としては、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子等)、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基等)、シクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アラルキル基(例えばベンジル基、2−フェネチル基等)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基等)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基等)、シアノ基、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基等)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基等)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ基等)、スルホニルアミノ基(例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基等)、ウレイド基(例えば3−メチルウレイド基、3,3−ジメチルウレイド基、1,3−ジメチルウレイド基等)、スルファモイルアミノ基(ジメチルスルファモイルアミノ基等)、カルバモイル基(例えばメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基等)、スルファモイル基(例えばエチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基等)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基等)、スルホニル基(例えばメタンスルホニル基、ブタンスルホニル基、フェニルスルホニル基等)、アシル基(例えばアセチル基、プロパノイル基、ブチロイル基等)、アミノ基(メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基等)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトロソ基、アミンオキシド基(例えばピリジン−オキシド基)、イミド基(例えばフタルイミド基等)、ジスルフィド基(例えばベンゼンジスルフィド基、ベンゾチアゾリル−2−ジスルフィド基等)、カルボキシル基、スルホ基、ヘテロ環基(例えばピロール基、ピロリジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、ベンズオキサゾリル基等)等が挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。又、R31は水素原子、R32、R36はt−ブチル基である化合物が好ましい。
【0126】
フェノール系化合物の具体例としては、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−アセテート、n−オクタデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、n−ドデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、ネオ−ドデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ドデシルβ(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ジエチルグリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ステアルアミドN,N−ビス−[エチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、n−ブチルイミノN,N−ビス−[エチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,2−プロピレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ネオペンチルグリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、グリセリン−l−n−オクタデカノエート−2,3−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス−[3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス−{2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、1,1,1−トリメチロールエタン−トリス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ソルビトールヘキサ−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−ヒドロキシエチル7−(3−メチル−5−tブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−ステアロイルオキシエチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,6−n−ヘキサンジオール−ビス[(3′,5′−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)が含まれる。上記タイプのフェノール化合物は、例えばチバ・ジャパン株式会社から、“Irganox1076”及び“Irganox1010”という商品名で市販されている。
【0127】
上記、フェノール化合物は、1種或いは2種以上組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、光学フィルムを形成する樹脂の総質量に対し、通常0.001〜10.0質量部添加することが好ましく、更に好ましくは0.05〜5.0質量部、特に好ましくは、0.1〜2.0質量部である。
(ヒンダードアミン系化合物)
本発明に好ましく用いられるヒンダードアミン系化合物としては、下記一般式(AD−4)で表されるヒンダードアミン系化合物が好ましい。
【0128】
【化12】

【0129】
式中、R41〜R47は置換基を表す。置換基としては前記一般式(AD−3)のR31〜R36で表される置換基と同義である。R44は水素原子、メチル基、R47は水素原子、R42、R43、R45、R46はメチル基が好ましい。
【0130】
ヒンダードアミン系化合物の具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)スクシネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1−アクロイル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)デカンジオエート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−1−[2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロピオンアミド、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等が挙げられる。
【0131】
又、高分子タイプの化合物でもよく、具体例としては、N,N′,N″,N″′−テトラキス−[4,6−ビス−〔ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ〕−トリアジン−2−イル]−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジン−N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、1,6−ヘキサンジアミン−N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)とモルフォリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重縮合物、ポリ[(6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)〔(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕−ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕]等の、ピペリジン環がトリアジン骨格を介して複数結合した高分子量HALS;コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとの混合エステル化物等の、ピペリジン環がエステル結合を介して結合した化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物等で、数平均分子量(Mn)が2,000〜5,000のものが好ましい。上記タイプのヒンダードアミン化合物は、例えばチバ・ジャパン株式会社から、“Tinuvin144”及び“Tinuvin770”、株式会社ADEKAから“アデカスタブ LA−52”という商品名で市販されている。
【0132】
上記、ヒンダードアミン化合物は、1種或いは2種以上組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、光学フィルムを形成する樹脂の総質量に対し、通常0.001〜10.0質量部添加することが好ましく、更に好ましくは0.05〜5.0質量部、特に好ましくは、0.1〜2.0質量部である。
【0133】
(二次酸化防止剤)
本発明の光学フィルムは、パーオキサイドに対する還元作用を有する二次酸化防止剤を少なくとも1種以上含有することが好ましい。
【0134】
本発明において「パーオキサイドに対する還元作用を有する二次酸化防止剤」とは、パーオキサイドを速やかに還元して水酸基に変換する還元剤を意味する。
【0135】
パーオキサイドに対する還元能を有する二次酸化防止剤としてはリン系化合物、又は硫黄系化合物が好ましい。
【0136】
(リン系化合物)
本発明に好ましく用いられるリン系化合物としては、ホスファイト(phosphite)、ホスホナイト(phosphonite)、ホスフィナイト(phosphinite)、又は第3級ホスファン(phosphane)からなる群より選ばれるリン系化合物が好ましく、具体的には下記一般式(AD−5−1)、(AD−5−2)、(AD−5−3)、(AD−5−4)、(AD−5−5)で表される部分構造を分子内に有する化合物が好ましい。
【0137】
【化13】

【0138】
式中、Ph及びPh′は置換基を表す。置換基としては前記一般式(AD−3)のR31〜R36で表される置換基と同義である。より好ましくは、Ph及びPh′はフェニレン基を表し、当該フェニレン基の水素原子はフェニル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基又は炭素数7〜12のアラルキル基で置換されていてもよい。Ph及びPh′は互いに同一でもよく、異なってもよい。Xは硫黄原子、−CHR−基または単結合(PhとPh′との結合)を表す。Rは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を表す。又、これらは前記一般式(AD−3)のR31〜R36で表される置換基と同義の置換基により置換されてもよい。R51は特に限定されない置換基を表す。
【0139】
【化14】

【0140】
式中、Ph及びPh′は置換基を表す。置換基としては前記一般式(AD−3)のR31〜R36で表される置換基と同義である。より好ましくは、Ph及びPh′はフェニル基又はビフェニル基を表し、当該フェニル基又はビフェニル基の水素原子は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基又は炭素数7〜12のアラルキル基で置換されていてもよい。Ph2及びPh′2は互いに同一でもよく、異なってもよい。又、これらは前記一般式(AD−3)のR31〜R36で表される置換基と同義の置換基により置換されてもよい。R52は特に限定されない置換基を表す。
【0141】
【化15】

【0142】
式中、Phは置換基を表す。置換基としては前記一般式(AD−3)のR31〜R36で表される置換基と同義である。より好ましくは、Phはフェニル基又はビフェニル基を表し、当該フェニル基又はビフェニル基の水素原子は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基又は炭素数7〜12のアラルキル基で置換されていてもよい。又、これらは前記一般式(AD−3)のR31〜R36で表される置換基と同義の置換基により置換されてもよい。R53、R54は特に限定されない置換基を表し、両者は互いに連結して環を形成しても良い。
【0143】
【化16】

【0144】
式中、Phは置換基を表す。置換基としては前記一般式(AD−3)のR31〜R36で表される置換基と同義である。より好ましくは、Phは炭素数1〜20のアルキル基又はフェニル基を表し、当該アルキル基又はフェニル基は前記一般式(AD−3)のR31〜R36で表される置換基と同義の置換基により置換されてもよい。R55、R56は特に限定されない置換基を表し、両者は互いに連結して環を形成しても良い。
【0145】
【化17】

【0146】
式中、Ph、Ph′及びPh″は置換基を表す。置換基としては前記一般式(AD−3)のR31〜R36で表される置換基と同義である。より好ましくは、Ph、Ph′及びPh″は炭素数1〜20のアルキル基又はフェニル基を表し、当該アルキル基又はフェニル基は前記一般式(AD−3)のR31〜R36で表される置換基と同義の置換基により置換されてもよい。
【0147】
リン系化合物の具体例としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、トリデシルホスファイト等のモノホスファイト系化合物;4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)等のジホスファイト系化合物;トリフェニルホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4′−ジイルビスホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4′−ジイルビスホスホナイト等のホスホナイト系化合物;トリフェニルホスフィナイト、2,6−ジメチルフェニルジフェニルホスフィナイト等のホスフィナイト系化合物;トリフェニルホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン系化合物;等が挙げられる。上記タイプのリン系化合物は、例えば住友化学株式会社から、“SumilizerGP”、株式会社ADEKAから“アデカスタブ PEP−24G”、“アデカスタブ PEP−36”及び“アデカスタブ 3010”、チバ・ジャパン株式会社から“IRGAFOS P−EPQ”、堺化学工業株式会社から“GSY−P101”という商品名で市販されている。
【0148】
上記、リン系化合物は、1種或いは2種以上組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、光学フィルムを形成する樹脂の総質量に対し、通常0.001〜10.0質量部添加することが好ましく、更に好ましくは0.05〜5.0質量部、特に好ましくは、0.05〜2.0質量部である。
【0149】
(イオウ系化合物)
本発明に好ましく用いられるイオウ系化合物としては、下記一般式(AD−6)で表されるイオウ系化合物が好ましい。
【0150】
一般式(AD−6)
61−S−R62
式中、R61及びR62は置換基を表す。置換基としては前記一般式(AD−3)のR31〜R36で表される置換基と同義である。
【0151】
イオウ系化合物の具体例としては、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。上記タイプのイオウ系化合物は、例えば住友化学株式会社から、“Sumilizer TPL−R”及び“Sumilizer TP−D”という商品名で市販されている。
【0152】
上記、イオウ系化合物は、1種或いは2種以上組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、光学フィルムを形成する樹脂の総質量に対し、通常0.001〜10.0質量部添加することが好ましく、更に好ましくは0.05〜5.0質量部、特に好ましくは、0.05〜2.0質量部である。
【0153】
〔その他の添加剤〕
本発明の光学フィルムにおいては、その他添加剤として酸捕捉剤、紫外線吸収剤、可塑剤、マット剤、光学異方性のコントロール剤、帯電防止剤等の添加剤を併用してもよい。
【0154】
(酸捕捉剤)
溶融製膜が行われるような高温環境下では酸によっても分解が促進されるため、本発明の光学フィルムにおいては安定化剤として酸捕捉剤を含有することが好ましい。本発明において有用な酸捕捉剤としては、酸と反応して酸を不活性化する化合物であれば制限なく用いることができるが、中でも米国特許第4,137,201号明細書に記載されているような、エポキシ基を有する化合物が好ましい。
【0155】
このような酸捕捉剤としてのエポキシ化合物は当該技術分野において既知であり、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシド等の縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテル等、金属エポキシ化合物(例えば塩化ビニルポリマー組成物において、及び塩化ビニルポリマー組成物と共に、従来から利用されているもの)、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(即ち、4,4′−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に2〜22個の炭素原子の脂肪酸の4〜2個程度の炭素原子のアルキルのエステル(例えばブチルエポキシステアレート)等)、及び種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリド等(例えばエポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等)の組成物によって代表され例示され得るエポキシ化植物油及び他の不飽和天然油(これらはときとしてエポキシ化天然グリセリド又は不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している)が含まれる。又、市販のエポキシ基含有エポキシド樹脂化合物として、EPON 815C、及び下記一般式(AD−7)の他のエポキシ化エーテルオリゴマー縮合生成物も好ましく用いることができる。
【0156】
【化18】

【0157】
式中、nは0〜12の整数である。用いることができるその他の酸捕捉剤としては、特開平5−194788号公報の段落87〜105に記載されているものが含まれる。
【0158】
酸捕捉剤は、1種或いは2種以上組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、光学フィルムを形成する樹脂の総質量に対し、通常0.001〜10.0質量部添加することが好ましく、更に好ましくは0.05〜5.0質量部、特に好ましくは、0.05〜2.0質量部である。
【0159】
なお酸捕捉剤は、樹脂に対して酸掃去剤、酸捕獲剤、酸キャッチャー等と称されることもあるが、本発明においてはこれらの呼称による差異なく用いることができる。
【0160】
(紫外線吸収剤)
本発明の光学フィルムにおいては、偏光子や表示装置の紫外線に対する劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ない紫外線吸収剤を含有することが好ましい。本発明に用いられる紫外線吸収剤としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物等を挙げることができるが、ベンゾフェノン系化合物や着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物が好ましい。又、特開平10−182621号、同8−337574号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号、特開2003−113317号公報記載の高分子紫外線吸収剤を用いてもよい。
【0161】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(1−メチル−1−フェニルエチル)−5′−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。又、市販品として、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)900、チヌビン(TINUVIN)928、チヌビン(TINUVIN)360(いずれもチバ・ジャパン社製)、LA31(株式会社ADEKA社製)、RUVA−100(大塚化学製)が挙げられる。
【0162】
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0163】
上記、紫外線吸収剤は、1種或いは2種以上組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、光学フィルムを形成する樹脂の総質量に対し、通常0.1〜5質量部添加することが好ましく、更に好ましくは0.2〜3質量部であり、特に好ましくは0.5〜2質量部である。
【0164】
又、ベンゾトリアゾール構造やトリアジン構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にポリマーへペンダントされていてもよく、可塑剤、酸化防止剤、酸掃去剤等の他の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0165】
従来公知の紫外線吸収性ポリマーとしては、特に限定されないが、例えばRUVA−93(大塚化学製)を単独重合させたポリマー及びRUVA−93と他のモノマーとを共重合させたポリマー等が挙げられる。具体的には、RUVA−93とメチルメタクリレートを3:7の比(質量比)で共重合させたPUVA−30M、5:5の比(質量比)で共重合させたPUVA−50M等が挙げられる。更に、特開2003−113317号公報に記載のポリマー等が挙げられる。
【0166】
(可塑剤)
本発明の光学フィルムにおいては、フィルム中に少なくとも1種の可塑剤を添加してもよい。
【0167】
可塑剤とは、一般的には高分子中に添加することによって脆弱性を改良したり、柔軟性を付与したりする効果のある添加剤であるが、例えば本発明における好ましい態様の樹脂の場合、単独での溶融温度よりも溶融温度を低下させるため、又、同じ加熱温度において樹脂単独よりも可塑剤を含むフィルム構成材料の溶融粘度を低下させるために、可塑剤を添加する。又、セルロースエステルの親水性を改善し、光学フィルムの透湿度改善するためにも添加されるため透湿防止剤としての機能を有する。
【0168】
ここで、フィルム構成材料の溶融温度とは、当該材料が加熱され流動性が発現された状態の温度を意味する。本発明に係る樹脂を溶融流動させるためには、少なくともガラス転移温度よりも高い温度に加熱する必要がある。ガラス転移温度以上においては、熱量の吸収により弾性率或いは粘度が低下し、流動性が発現される。しかし本発明に係る樹脂では高温下では溶融と同時に熱分解によってセルロースエステルの分子量の低下が発生し、得られるフィルムの力学特性等に悪影響を及ぼすことがあるため、なるべく低い温度で樹脂を溶融させる必要がある。フィルム構成材料の溶融温度を低下させるためには、本発明に係る樹脂のガラス転移温度よりも低い融点又はガラス転移温度をもつ可塑剤を添加することで達成することができる。
【0169】
上記、可塑剤は1種或いは2種以上組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、光学フィルムを形成する樹脂の総質量に対し、0.1〜20質量%添加することが好ましく、更に好ましくは0.2〜10質量部である。
【0170】
本発明においては、多価アルコールと1価のカルボン酸からなるエステル系可塑剤、多価カルボン酸と1価のアルコールからなるエステル系可塑剤が好ましい。
【0171】
エステル系可塑剤の原料である多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、キシリトール等を挙げることができる。特にエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンが好ましい。
【0172】
多価アルコールエステル系の一つであるエチレングリコールエステル系の可塑剤としては、具体的には、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジブチレート等のエチレングリコールアルキルエステル系の可塑剤、エチレングリコールジシクロプロピルカルボキシレート、エチレングリコールジシクロヘキルカルボキシレート等のエチレングリコールシクロアルキルエステル系の可塑剤、エチレングリコールジベンゾエート、エチレングリコールジ4−メチルベンゾエート等のエチレングリコールアリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルキレート基、シクロアルキレート基、アリレート基は、同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。又、アルキレート基、シクロアルキレート基、アリレート基のミックスでもよく、又、これら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。更にエチレングリコール部も置換されていてもよく、エチレングリコールエステルの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、又、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0173】
多価アルコールエステル系の一つであるグリセリンエステル系の可塑剤としては、具体的にはトリアセチン、トリブチリン、グリセリンジアセテートカプリレート、グリセリンオレートプロピオネート等のグリセリンアルキルエステル、グリセリントリシクロプロピルカルボキシレート、グリセリントリシクロヘキシルカルボキシレート等のグリセリンシクロアルキルエステル、グリセリントリベンゾエート、グリセリン4−メチルベンゾエート等のグリセリンアリールエステル、ジグリセリンテトラアセチレート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンアセテートトリカプリレート、ジグリセリンテトララウレート、等のジグリセリンアルキルエステル、ジグリセリンテトラシクロブチルカルボキシレート、ジグリセリンテトラシクロペンチルカルボキシレート等のジグリセリンシクロアルキルエステル、ジグリセリンテトラベンゾエート、ジグリセリン3−メチルベンゾエート等のジグリセリンアリールエステル等が挙げられる。これらアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基は同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。又、アルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基のミックスでもよく、又、これら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。更にグリセリン、ジグリセリン部も置換されていてもよく、グリセリンエステル、ジグリセリンエステルの部分構造がポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、又、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0174】
その他の多価アルコールエステル系の可塑剤としては、具体的には特開2003−12823号公報の段落30〜33記載の多価アルコールエステル系可塑剤、特開2006−188663号公報の段落64〜74記載の多価アルコールエステル系可塑剤が挙げられる。
【0175】
これらアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基は、同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。又、アルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基のミックスでもよく、又、これら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。更に多価アルコール部も置換されていてもよく、多価アルコールの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、又、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0176】
上記多価アルコールと1価のカルボン酸からなるエステル系可塑剤の中では、アルキル多価アルコールアリールエステルが好ましく、具体的には上記のエチレングリコールジベンゾエート、グリセリントリベンゾエート、ジグリセリンテトラベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、特開2003−12823号公報の段落31記載例示化合物16、特開2006−188663号公報の段落71記載例示化合物48が挙げられる。
【0177】
多価カルボン酸エステル系の一つであるジカルボン酸エステル系の可塑剤としては、具体的には、ジドデシルマロネート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート等のアルキルジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロペンチルサクシネート、ジシクロヘキシルアジーペート等のアルキルジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニルサクシネート、ジ4−メチルフェニルグルタレート等のアルキルジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤、ジヘキシル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート、ジデシルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロヘキシル−1,2−シクロブタンジカルボキシレート、ジシクロプロピル−1,2−シクロヘキシルジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニル−1,1−シクロプロピルジカルボキシレート、ジ2−ナフチル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等のアリールジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロプロピルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等のアリールジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニルフタレート、ジ4−メチルフェニルフタレート等のアリールジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルコキシ基、シクロアルコキシ基は、同一でもあっても異なっていてもよく、又、一置換でもよく、これらの置換基は更に置換されていてもよい。アルキル基、シクロアルキル基はミックスでもよく、又、これら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。更にフタル酸の芳香環も置換されていてよく、ダイマー、トリマー、テトラマー等の多量体でもよい。
【0178】
又、フタル酸エステルの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にポリマーへペンダントされていてもよく、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0179】
その他の多価カルボン酸エステル系の可塑剤としては、具体的にはトリドデシルトリカルバレート、トリブチル−meso−ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、トリシクロヘキシルトリカルバレート、トリシクロプロピル−2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、トリフェニル2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボキシレート、テトラ3−メチルフェニルテトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤、テトラヘキシル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレート、テトラブチル−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、テトラシクロプロピル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレート、トリシクロヘキシル−1,3,5−シクロヘキシルトリカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、トリフェニル−1,3,5−シクロヘキシルトリカルボキシレート、ヘキサ4−メチルフェニル−1,2,3,4,5,6−シクロヘキシルヘキサカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤、トリドデシルベンゼン−1,2,4−トリカルボキシレート、テトラオクチルベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、トリシクロペンチルベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、テトラシクロヘキシルベンゼン−1,2,3,5−テトラカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤トリフェニルベンゼン−1,3,5−テトラカルボキシレート、ヘキサ4−メチルフェニルベンゼン−1,2,3,4,5,6−ヘキサカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルコキシ基、シクロアルコキシ基は、同一でもあっても異なっていてもよく、又、1置換でもよく、これらの置換基は更に置換されていてもよい。アルキル基、シクロアルキル基はミックスでもよく、又、これら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。更にフタル酸の芳香環も置換されていてよく、ダイマー、トリマー、テトラマー等の多量体でもよい。又、フタル酸エステルの部分構造がポリマーの一部、或いは規則的にポリマーへペンダントされていてもよく、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0180】
上記多価カルボン酸と1価のアルコールからなるエステル系可塑剤の中では、アルキルジカルボン酸アルキルエステルが好ましく、具体的には上記のジオクチルアジペートが挙げられる。
【0181】
本発明に用いられるその他の可塑剤としては、燐酸エステル系可塑剤、炭水化物エステル系可塑剤、ポリマー可塑剤等が挙げられる。
【0182】
燐酸エステル系の可塑剤としては、具体的には、トリアセチルホスフェート、トリブチルホスフェート等の燐酸アルキルエステル、トリシクロベンチルホスフェート、シクロヘキシルホスフェート等の燐酸シクロアルキルエステル、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリナフチルホスフェート、トリキシリルオスフェート、トリスオルト−ビフェニルホスフェート等の燐酸アリールエステルが挙げられる。これらの置換基は同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。又、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでもよく、又、置換基同志が共有結合で結合していてもよい。
【0183】
又、エチレンビス(ジメチルホスフェート)、ブチレンビス(ジエチルホスフェート)等のアルキレンビス(ジアルキルホスフェート)、エチレンビス(ジフェニルホスフェート)、プロピレンビス(ジナフチルホスフェート)等のアルキレンビス(ジアリールホスフェート)、フェニレンビス(ジブチルホスフェート)、ビフェニレンビス(ジオクチルホスフェート)等のアリーレンビス(ジアルキルホスフェート)、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、ナフチレンビス(ジトルイルホスフェート)等のアリーレンビス(ジアリールホスフェート)等の燐酸エステルが挙げられる。これらの置換基は同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。又、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでもよく、又、置換基同志が共有結合で結合していてもよい。
【0184】
更に燐酸エステルの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、又、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。上記化合物の中では、燐酸アリールエステル、アリーレンビス(ジアリールホスフェート)が好ましく、具体的にはトリフェニルホスフェート、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)が好ましい。
【0185】
次に、炭水化物エステル系可塑剤について説明する。炭水化物とは、糖類がピラノース又はフラノース(6員環又は5員環)の形態で存在する単糖類、二糖類又は三糖類を意味する。炭水化物の非限定的例としては、グルコース、サッカロース、ラクトース、セロビオース、マンノース、キシロース、リボース、ガラクトース、アラビノース、フルクトース、ソルボース、セロトリオース及びラフィノース等が挙げられる。炭水化物エステルとは、炭水化物の水酸基とカルボン酸が脱水縮合してエステル化合物を形成したものを指し、詳しくは、炭水化物の脂肪族カルボン酸エステル、或いは芳香族カルボン酸エステルを意味する。脂肪族カルボン酸として、例えば酢酸、プロピオン酸等を挙げることができ、芳香族カルボン酸として、例えば安息香酸、トルイル酸、アニス酸等を挙げることができる。炭水化物は、その種類に応じた水酸基の数を有するが、水酸基の一部とカルボン酸が反応してエステル化合物を形成しても、水酸基の全部とカルボン酸が反応してエステル化合物を形成してもよい。本発明においては、水酸基の全部とカルボン酸が反応してエステル化合物を形成するのが好ましい。
【0186】
炭水化物エステル系可塑剤として、具体的には、グルコースペンタアセテート、グルコースペンタプロピオネート、グルコースペンタブチレート、サッカロースオクタアセテート、サッカロースオクタベンゾエート等を好ましく挙げることができ、この内、サッカロースオクタアセテート、サッカロースオクタベンゾエートがより好ましく、サッカロースオクタベンゾエートが特に好ましい。
【0187】
これらの化合物の一例を下記に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0188】
モノペットSB:第一工業製薬社製
モノペットSOA:第一工業製薬社製
ポリマー可塑剤としては、具体的には、脂肪族炭化水素系ポリマー、脂環式炭化水素系ポリマー、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルとの共重合体(例えば共重合比1:99〜99:1の間の任意の比率)等のアクリル系ポリマー、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリN−ビニルピロリドン等のビニル系ポリマー、ポリスチレン、ポリ4−ヒドロキシスチレン等のスチレン系ポリマー、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア等が挙げられる。数平均分子量は1000〜500000程度が好ましく、特に好ましくは、5000〜200000である。1000以下では揮発性に問題が生じ、500000を超えると可塑化能力が低下し、光学フィルムの機械的性質に悪影響を及ぼす。これらポリマー可塑剤は1種の繰り返し単位からなる単独重合体でも、複数の繰り返し構造体を有する共重合体でもよい。又、上記ポリマーを2種以上併用して用いてもよい。
【0189】
(マット剤)
本発明に係る光学フィルムは、滑り性や光学的、機械的機能を付与するためにマット剤を添加することができる。マット剤としては、無機化合物の微粒子又は有機化合物の微粒子が挙げられる。
【0190】
マット剤の形状は、球状、棒状、針状、層状、平板状等の形状のものが好ましく用いられる。マット剤としては、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の金属の酸化物、リン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を挙げることができる。中でも、二酸化ケイ素がフィルムのヘーズを低くできるので好ましい。これらの微粒子は有機物により表面処理されていることが、フィルムのヘーズを低下できるため好ましい。
【0191】
表面処理は、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサン等で行うことが好ましい。微粒子の平均粒径が大きい方が滑り性効果は大きく、反対に平均粒径の小さい方は透明性に優れる。又、微粒子の一次粒子の平均粒径は0.01〜1.0μmの範囲である。好ましい微粒子の一次粒子の平均粒径は5〜50nmが好ましく、更に好ましくは、7〜14nmである。これらの微粒子は、光学フィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を生成させるために好ましく用いられる。
【0192】
二酸化ケイ素の微粒子としては、日本アエロジル(株)製のアエロジル(AEROSIL)200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、OX50、TT600、NAX50等、日本触媒(株)製のKE−P10、KE−P30、KE−P100、KE−P150等を挙げることができ、好ましくはアエロジル200V、R972V、NAX50、KE−P30、KE−P100である。これらの微粒子は2種以上併用してもよい。
【0193】
2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することができる。平均粒径や材質の異なる微粒子、例えばアエロジル200VとR972Vを質量比で0.1:99.9〜99.9:0.1の範囲で使用できる。
【0194】
これらのマット剤の添加方法は混練する等によって行うことが好ましい。又、別の形態として予め溶媒に分散したマット剤と樹脂及び/又は可塑剤及び/又は酸化防止剤及び/又は紫外線吸収剤を混合分散させた後、溶媒を揮発又は沈殿させた固形物を得て、これを樹脂溶融物の製造過程で用いることが、マット剤が樹脂中で均一に分散できる観点から好ましい。
【0195】
上記マット剤は、フィルムの機械的、電気的、光学的特性改善のために添加することもできる。
【0196】
なお、これらの微粒子を添加するほど、得られるフィルムの滑り性は向上するが、添加するほどヘーズが上昇するため、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、光学フィルムを形成する樹脂の総質量に対し、0.001〜5質量部添加することが好ましく、より好ましくは0.005〜1質量部であり、更に好ましくは0.01〜0.5質量部である。
【0197】
(光学異方性のコントロール剤)
光学異方性をコントロールするためのリターデーション上昇剤が、場合により添加される。これらは、光学フィルムのリターデーションを調整するため、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物をリターデーション上昇剤として使用することが好ましい。芳香族化合物は、光学フィルムを形成する樹脂の総質量に対し、0.01乃至20質量部の範囲で使用する。そして、0.05乃至15質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1乃至10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。芳香族性ヘテロ環は、一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は、一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環及び1,3,5−トリアジン環が含まれる。これらについては、特開2004−109410号、特開2003−344655号、特開2000−275434号、特開2000−111914号、特開平12−275434号公報等に詳細が記載されている。
【0198】
〔光学フィルムの製造方法〕
本発明の光学フィルムの製造方法の例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0199】
本発明の光学フィルムの製膜方法としては、インフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルジョン法、ホットプレス法等の製造法が使用でき、着色抑制、異物欠点の抑制、ダイライン等の光学欠点の抑制等の観点からは流延法による溶液製膜が好ましい。但し、溶液流延法は、フィルム内部に残存する溶媒を除去しなければならないため、乾燥ラインの設備投資等の製造コストが高いという短所を有する。
【0200】
その点、溶剤を使わない溶融流延法は製造コストを低く抑えることができるが、従来の技術では平面性や熱劣化の問題を有していた。しかし、本発明においては、このような問題が解決され、溶融流延法が好ましく用いられる。
【0201】
(溶液キャスト法)
光学フィルムの溶液キャスト法による製造は、セルロースエステル及びセルロースナノファイバー、上記各種添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープをベルト状もしくはドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸又は幅保持する工程、さらに乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻取る工程により行われる。
【0202】
ドープを調製する工程について述べる。ドープ中のセルロースエステルの濃度は、濃度が高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースエステルの濃度が高過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、さらに好ましくは、15〜25質量%である。
【0203】
ドープで用いられる溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよいが、前記セルロースエステルの良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤が多い方がセルロースエステルの溶解性の点で好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%である。良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するか又は溶解しないものを貧溶剤と定義している。そのため、セルロースエステルのアシル基置換度によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いる時には、セルロースの酢酸エステル(アセチル基置換度2.4)、セルロースアセテートプロピオネートでは良溶剤になり、セルロースの酢酸エステル(アセチル基置換度2.8)では貧溶剤となる。
【0204】
本発明に用いられる良溶剤は特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライド又は酢酸メチルが挙げられる。又、本発明に用いられる貧溶剤は特に限定されないが、例えばメタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。又、ドープ中には水が0.01〜2質量%含有していることが好ましい。
【0205】
上記記載のドープを調製する時の、セルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱できる。溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。又、セルロースエステルを貧溶剤と混合して湿潤又は膨潤させた後、さらに良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
【0206】
溶剤を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースエステルの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃がさらに好ましい。又、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。又は冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチル等の溶媒にセルロースエステルを溶解させることができる。
【0207】
本発明では、セルロースナノファイバーをセルロースエステル溶液に添加する方法に特に制限はないが、予めセルロースナノファイバーを分散した分散液として添加することが好ましい。前記セルロースナノファイバーを含有する分散液を調製する方法は特に制限はないが、セルロースナノファイバーと親和性がある溶媒、又はバインダー中にセルロースナノファイバーを添加し、公知の分散機、方法によって分散することができる。
【0208】
溶媒としては、水、メチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセト酢酸メチル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、蟻酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることができるが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、アセト酢酸メチル等が好ましい。又、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0209】
バインダーとしては、分散中に水溶性ポリマーが存在することによって分散性は向上して、ヘイズを低下させることができる。ここでいう水溶性ポリマーとはデンプン類、マンナン類、ガラクタンやアルギン酸ナトリウム等の海藻類、トラガントゴムやアラビアゴムやデキストラン等の植物粘質物、ゼラチンやカゼイン等のタンパク質、メチルセルロースやヒドロキシセルロースやカルボキシメチルセルロース等のセルロース類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等の合成ポリマー等が含まれる。これらの水溶性ポリマーの分子量は小さ過ぎると分散性向上に効果が認められないため、分子量は1万以上であることが好ましく、より好ましくは3万から20万のものである。分子量の測定は、粘度法、拡散法、光散乱法、ゲル濾過法、高速液体クロマト法等があるが、特にゲル濾過法や高速液体クロマト法が好ましく適用される。
【0210】
上記の水溶性ポリマーは分散するセルロースナノファイバーに対し、質量比で0.05から30倍の範囲で添加するのが好ましく、水溶液としては1質量%から20質量%の範囲にあるのが好ましい。
【0211】
又、分散に際し、種々の界面活性剤を用いることも有用な方法である。界面活性剤としてはアニオン性、カチオン性、両性、非イオン性等何れを用いることも可能であるが、アニオン性及び非イオン性界面活性剤が好ましく、特にアニオン性界面活性剤が好ましい。又、pHを調整する際は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸、クエン酸、リン酸、硫酸等の一般的な酸アルカリの水溶液、好ましくは緩衝液が用いられる。
【0212】
本発明に用いられる分散機としては、例えば遠心方式分散機(フロージェットミキサー、ファインフローミル等)、メディア型分散機(ボールミル、サンドミル等)、超音波分散機、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等が挙げられるが、中でも、遠心方式分散機やメディア型分散機が好ましい。
【0213】
次に、上記セルロースナノファイバーを添加したセルロースエステル溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生しやすいという問題がある。このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材がさらに好ましい。
【0214】
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過により、原料のセルロースエステルに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
【0215】
ドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、溶剤の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることがさらに好ましい。濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることがさらに好ましい。
【0216】
ここで、ドープの流延について説明する。
【0217】
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルトもしくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤が沸騰して発泡しない温度以下に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃がさらに好ましい。又は、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。特に流延から剥離するまでの間で支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
【0218】
本発明では前記セルロースエステルの溶液を2回以上に分割してキャストすることも好ましい。このようにキャストを分割することで、セルロースナノファイバーのフィルム膜内の分布状態を容易に制御することが可能となり、フィルムの引裂き強度、弾性率や、フィルム寸法変化の度合いを要求に従って制御することができる。
【0219】
光学フィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、さらに好ましくは20〜40質量%又は60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%又は70〜120質量%である。
【0220】
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
【0221】
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
なお、Mはウェブ又はフィルムを製造中又は製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
【0222】
又、光学フィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、さらに乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、さらに好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
【0223】
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールをウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
【0224】
本発明の光学フィルムは、金属支持体より剥離した直後のウェブの残留溶剤量の多いところで搬送方向に延伸し、さらにウェブの両端をクリップ等で把持するテンター方式で幅方向に延伸を行うことが好ましい。
【0225】
剥離直後に縦方向に延伸するために、剥離張力及びその後の搬送張力によって延伸することが好ましい。例えば剥離張力を210N/m以上で剥離することが好ましく、特に好ましくは220〜300N/mである。
【0226】
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で熱風で行うことが好ましい。
【0227】
ウェブの乾燥工程における乾燥温度は30〜200℃で段階的に高くしていくことが好ましく、50〜180℃の範囲で段階的に高くすることが寸法安定性をよくするためさらに好ましい。
【0228】
光学フィルムの膜厚は、特に限定はされないが10〜200μmが好ましく用いられる。特に膜厚は10〜80μmであることが特に好ましい。さらに好ましくは20〜80μmである。又、共流延法によって多層構成とした光学フィルムも好ましく用いることができる。
【0229】
本発明の光学フィルムは、幅1m以上であり、幅1.4〜4mのものが好ましく用いられる。特に好ましくは1.4〜3mである。4mを超えると搬送が困難となる。又、光学フィルム表面の中心線平均粗さ(Ra)は0.001〜1μmの範囲であることが好ましい。
【0230】
本発明の光学フィルムは、偏光板保護フィルムとして有用であり、所望の位相差を有する視野角拡大に供される位相差フィルムとして好ましく用いることができる。
【0231】
本発明の光学フィルムを位相差フィルム、更に偏光板保護フィルムの機能を複合させた位相差フィルムとして製造する場合、屈折率制御を行う必要が生じるが、その屈折率制御は、セルロースエステルの種類、アシル基置換度、セルロースナノファイバーの種類と含有量、添加剤の種類と含有量、フィルム膜厚、延伸操作等により制御できるが、好ましくは延伸操作により行うことが好ましい。
【0232】
(溶融流延法)
本発明の光学フィルムは、前述のように製造コストの観点から、溶融流延によって製造することも好ましい。溶液流延法において用いられる溶媒(例えば塩化メチレン等)を用いずに、加熱溶融する溶融流延による成形法は、更に詳細には、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法等に分類できる。これらの中で、機械的強度及び表面精度等に優れる光学フィルムを得るためには、溶融押し出し法が優れている。
【0233】
以下、溶融押し出し法を例にとり、本発明の光学フィルムの製造方法について説明する。
【0234】
図1は、本発明に係る光学フィルムの製造方法を実施する装置の全体構成を示す概略フローシートであり、図2は、流延ダイから冷却ロール部分の拡大図である。
【0235】
図1と図2において、本発明による光学フィルムの製造方法は、フィルム材料を混合した後、押出し機1を用いて、流延ダイ4から第1冷却ロール5上に溶融押し出し、第1冷却ロール5に外接させるとともに、更に、第2冷却ロール7、第3冷却ロール8の合計3本の冷却ロールに順に外接させて、冷却固化してフィルム10とする。次いで、剥離ロール9によって剥離したフィルム10を、次いで延伸装置12によりフィルムの両端部を把持して幅方向に延伸した後、巻取り装置16により巻き取る。又、平面性を矯正するために溶融フィルムを第1冷却ロール5表面に挟圧するタッチロール6が設けられている。このタッチロール6は表面が弾性を有し、第1冷却ロール5との間でニップを形成している。タッチロール6についての詳細は後述する。
【0236】
本発明による光学フィルムの製造方法において、溶融押し出しの条件は、他のポリエステル等の樹脂に用いられる条件と同様にして行うことができる。材料は予め乾燥させておくことが好ましい。真空又は減圧乾燥機や除湿熱風乾燥機等で水分を1000ppm以下、好ましくは200ppm以下に乾燥させることが望ましい。
【0237】
例えば熱風や真空又は減圧下で乾燥した樹脂を押出し機1を用いて、押し出し温度200〜300℃程度で溶融し、リーフディスクタイプのフィルター2等で濾過し、異物を除去する。
【0238】
供給ホッパー(図示略)から押出し機1へ導入する際は、真空下又は減圧下や不活性ガス雰囲気下にして、酸化分解等を防止することが好ましい。
【0239】
可塑剤等の添加剤を予め混合しない場合は、それらを押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサー3等の混合装置を用いることが好ましい。
【0240】
本発明において、樹脂と、その他必要により添加される添加剤は、溶融する前に混合しておくことが好ましく、樹脂と添加剤を加熱前に混合することが更に好ましい。混合は、混合機等により行ってもよく、又、前記したように樹脂調製過程において混合してもよい。混合機を使用する場合は、V型混合機、円錐スクリュー型混合機、水平円筒型混合機等、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー一般的な混合機を用いることができる。
【0241】
上記のようにフィルム構成材料を混合した後に、その混合物を押出し機1を用いて直接溶融して製膜するようにしてもよいが、一旦、フィルム構成材料をペレット化した後、当該ペレットを押出し機1で溶融して製膜するようにしてもよい。又、フィルム構成材料が、融点の異なる複数の材料を含む場合には、融点の低い材料のみが溶融する温度で一旦、いわゆるおこし状の半溶融物を作製し、半溶融物を押出し機1に投入して製膜することも可能である。フィルム構成材料に熱分解しやすい材料が含まれる場合には、溶融回数を減らす目的で、ペレットを作製せずに直接製膜する方法や、上記のようなおこし状の半溶融物を作ってから製膜する方法が好ましい。
【0242】
押出し機1は、市場で入手可能な種々の押出し機を使用可能であるが、溶融混練押出し機が好ましく、単軸押出し機でも2軸押出し機でもよい。フィルム構成材料からペレットを作製せずに、直接製膜を行う場合、適当な混練度が必要であるため2軸押出し機を用いることが好ましいが、単軸押出し機でも、スクリューの形状をマドック型、ユニメルト型、ダルメージ等の混練型のスクリューに変更することにより、適度の混練が得られるので、使用可能である。フィルム構成材料として、一旦、ペレットやおこし状の半溶融物を使用する場合は、単軸押出し機でも2軸押出し機でも使用可能である。
【0243】
押出し機1内及び押し出した後の冷却工程は、窒素ガス等の不活性ガスで置換するか、或いは減圧することにより、酸素の濃度を下げることが好ましい。
【0244】
押出し機1内のフィルム構成材料の溶融温度は、フィルム構成材料の粘度や吐出量、製造するシートの厚さ等によって好ましい条件が異なるが、一般的には、フィルムのガラス転移温度Tgに対して、Tg以上、Tg+100℃以下、好ましくはTg+10℃以上、Tg+90℃以下である。押し出し時の溶融粘度は、1〜10000Pa・s、好ましくは10〜1000Pa・sである。又、押出し機1内でのフィルム構成材料の滞留時間は短い方が好ましく、5分以内、好ましくは3分以内、より好ましくは2分以内である。
【0245】
滞留時間は、押出し機1の種類、押し出す条件にも左右されるが、材料の供給量やL/D、スクリュー回転数、スクリューの溝の深さ等を調整することにより短縮することが可能である。
【0246】
押出し機1のスクリューの形状や回転数等は、フィルム構成材料の粘度や吐出量等により適宜選択される。本発明において押出し機1でのせん断速度は、1/秒〜10000/秒、好ましくは5/秒〜1000/秒、より好ましくは10/秒〜100/秒である。
【0247】
本発明に使用できる押出し機1としては、一般的にプラスチック成形機として入手可能である。
【0248】
押出し機1から押し出されたフィルム構成材料は、流延ダイ4に送られ、流延ダイ4のスリットからフィルム状に押し出される。流延ダイ4はシートやフィルムを製造するために用いられるものであれば特に限定はされない。流延ダイ4の材質としては、ハードクロム、炭化クロム、窒化クロム、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化チタン、超鋼、セラミック(タングステンカーバイド、酸化アルミ、酸化クロム)等を溶射もしくはメッキし、表面加工としてバフ、#1000番手以降の砥石を用いるラッピング、#1000番手以上のダイヤモンド砥石を用いる平面切削(切削方向は樹脂の流れ方向に垂直な方向)、電解研磨、電解複合研磨等の加工を施したもの等が挙げられる。流延ダイ4のリップ部の好ましい材質は、流延ダイ4と同様である。又、リップ部の表面精度は0.5S以下が好ましく、0.2S以下がより好ましい。
【0249】
この流延ダイ4のスリットは、そのギャップが調整可能なように構成されている。これを図3に示す。流延ダイ4のスリット32を形成する一対のリップのうち、一方は剛性の低い変形しやすいフレキシブルリップ33であり、他方は固定リップ34である。そして、多数のヒートボルト35が流延ダイ4の幅方向すなわちスリット32の長さ方向に一定ピッチで配列されている。各ヒートボルト5には、埋め込み電気ヒータ37と冷却媒体通路とを具えたブロック36が設けられ、各ヒートボルト35が各ブロック36を縦に貫通している。ヒートボルト35の基部はダイ本体31に固定され、先端はフレキシブルリップ33の外面に当接している。そしてブロック36を常時空冷しながら、埋め込み電気ヒータ37の入力を増減してブロック36の温度を上下させ、これによりヒートボルト35を熱伸縮させて、フレキシブルリップ33を変位させてフィルムの厚さを調整する。ダイ後流の所要箇所に厚さ計を設け、これによって検出されたウェブ厚さ情報を制御装置にフィードバックし、この厚さ情報を制御装置で設定厚さ情報と比較し、同装置から来る補正制御量の信号によってヒートボルトの発熱体の電力又はオン率を制御するようにすることもできる。ヒートボルトは、好ましくは、長さ20〜40cm、直径7〜14mmを有し、複数、例えば数十本のヒートボルトが、好ましくはピッチ20〜40mmで配列されている。ヒートボルトの代わりに、手動で軸方向に前後動させることによりスリットギャップを調節するボルトを主体とするギャップ調節部材を設けてもよい。ギャップ調節部材によって調節されたスリットギャップは、通常200〜1000μm、好ましくは300〜800μm、より好ましくは400〜600μmである。
【0250】
第1〜第3冷却ロールは、肉厚が20〜30mm程度のシームレスな鋼管製で、表面が鏡面に仕上げられている。その内部には、冷却液を流す配管が配置されており、配管を流れる冷却液によってロール上のフィルムから熱を吸収できるように構成されている。この第1乃至第3冷却ロールの内、第1冷却ロール5が本発明に係る回転支持体に相当する。
【0251】
一方、第1冷却ロール5に当接するタッチロール6は、表面が弾性を有し、第1冷却ロール5への押圧力によって第1冷却ロール5の表面に沿って変形し、第1ロール5との間にニップを形成する。タッチロール6は挟圧回転体ともいう。タッチロール6としては、登録特許3194904号、登録特許3422798号、特開2002−36332、特開2002−36333等で開示されているタッチロールを好ましく用いることができる。これらは市販されているものを用いることもできる。以下にこれらについて、さらに詳細に説明する。
【0252】
図4は挟圧回転体の一例を示す断面図である。(タッチロール6の第1の例(以下、タッチロールA)の概略断面)を示す。図に示すように、タッチロールAは、可撓性の金属スリーブ41の内部に弾性ローラ42を配したものである。
【0253】
金属スリーブ41は厚さ0.3mmのステンレス製であり、可撓性を有する。金属スリーブ41が薄過ぎると強度が不足し、逆に厚過ぎると弾性が不足する。これらのことから、金属スリーブ41の厚さとしては、0.1〜1.5mmが好ましい。弾性ローラ42は、軸受を介して回転自在な金属製の内筒43の表面にゴム44を設けてロール状としたものである。そして、タッチロールAが第1冷却ロール5に向けて押圧されると、弾性ローラ42が金属スリーブ41を第1冷却ロール5に押しつけ、金属スリープ41及び弾性ローラ42は第1冷却ロール5の形状になじんだ形状に対応しつつ変形し、第1冷却ロールとの間にニップを形成する。金属スリーブ41の内部で弾性ローラ42との間に形成される空間には、冷却水45が流される。
【0254】
図5は挟圧回転体の第2の例(以下、タッチロールB)を示す回転軸に垂直な平面での断面図である。
【0255】
図6は挟圧回転体の第2の例(タッチロールB)の回転軸を含む平面の一例を示す断面図である。
【0256】
図5、図6は挟圧回転体の別の実施形態であるタッチロールBを示している。タッチロールBは、可撓性を有する、シームレスなステンレス鋼管製(厚さ4mm)の外筒51と、この外筒51の内側に同一軸心状に配置された高剛性の金属内筒52とから概略構成されている。外筒51と内筒52との間の空間53には、冷却液54が流される。詳しくは、タッチロールBは、両端の回転軸55a、55bに外筒支持フランジ56a、56bが取付けられ、これら両外筒支持フランジ56a、56bの外周部間に薄肉金属外筒51が取付けられている。又、一方の回転軸55aの軸心部に形成されて流体戻り通路57を形成する流体排出孔58内に、流体供給管59が同一軸心状に配設され、この流体供給管59が薄肉金属外筒51内の軸心部に配置された流体軸筒60に接続固定されている。この流体軸筒60の両端部に内筒支持フランジ61a、61bがそれぞれ取り付けられ、これら内筒支持フランジ61a、61bの外周部間から他端側外筒支持フランジ56bにわたって約15〜20mm程度の肉厚を有する金属内筒52が取付けられている。そしてこの金属内筒52と薄肉金属外筒51との間に、例えば10mm程度の冷却液の流送空間53が形成され、又、金属内筒52に両端部近傍には、流送空間53と内筒支持フランジ61a、61b外側の中間通路62a、62bとを連通する流出口52a及び流入口52bがそれぞれ形成されている。
【0257】
又、外筒51は、ゴム弾性に近い柔軟性と可撓性、復元性をもたせるために、弾性力学の薄肉円筒理論が適用できる範囲内で薄肉化が図られている。この薄肉円筒理論で評価される可撓性は、肉厚t/ロール半径rで表されており、t/rが小さいほど可撓性が高まる。このタッチロールBではt/r≦0.03の場合に可撓性が最適の条件となる。通常、一般的に使用されているタッチロールは、ロール径R=200〜500mm(ロール半径r=R/2)、ロール有効幅L=500〜1600mmで、r/L<1で横長の形状である。そして図6に示すように、例えばロール径R=300mm、ロール有効幅L=1200mmの場合、肉厚tの適正範囲は150×0.03=4.5mm以下であるが、溶融シート幅を1300mmに対して平均線圧を98N/cmで挟圧する場合、同一形状のゴムロールと比較して、外筒51の肉厚を3mmとすることで相当ばね定数も等しく、外筒51と冷却ロールとのニップのロール回転方向のニップ幅kも約9mmで、このゴムロールのニップ幅約12mmとほぼ近い値を示し、同じような条件下で挟圧できることが分かる。なお、このニップ幅kにおけるたわみ量は0.05〜0.1mm程度である。
【0258】
ここで、t/r≦0.03としたが、一般的なロール径R=200〜500mmの場合では、特に2mm≦t≦5mmの範囲とすると、可撓性も十分に得られ、又、機械加工による薄肉化も容易に実施でき、極めて実用的な範囲となる。肉厚が2mm以下では加工時の弾性変形で高精度な加工ができない。
【0259】
この2mm≦t≦5mmの換算値は、一般的なロール径に対して0.008≦t/r≦0.05となるが、実用にあたってはt/r≒0.03の条件下でロール径に比例して肉厚も大きくするとよい。例えばロール径:R=200ではt=2〜3mm、ロール径:R=500ではt=4〜5mmの範囲で選択する。
【0260】
このタッチロールA、Bは不図示の付勢手段により第1冷却ロールに向けて付勢される。その付勢手段の付勢力をF、ニップにおけるフィルムの、第1冷却ロール5の回転軸に沿った方向の幅Wを除した値F/W(線圧)は、9.8〜147N/cmに設定される。
【0261】
本実施の形態によれば、タッチロールA、Bと第1冷却ロール5との間にニップが形成され、当該ニップをフィルムが通過する間に平面性を矯正すればよい。従って、タッチロールが剛体で構成され、第1冷却ロールとの間にニップが形成されない場合と比べて、小さい線圧で長時間かけてフィルムを挟圧するので、平面性をより確実に矯正することができる。すなわち、線圧が9.8N/cmよりも小さいと、ダイラインを十分に解消することができなくなる。逆に、線圧が147N/cmよりも大きいと、フィルムがニップを通過しにくくなり、フィルムの厚さにかえってムラができてしまう。
【0262】
又、タッチロールA、Bの表面を金属で構成することにより、タッチロールの表面がゴムである場合よりもタッチロールA、Bの表面を平滑にすることができるので、平滑性の高いフィルムを得ることができる。なお、弾性ローラ42の弾性体44の材質としては、エチレンプロピレンゴム、ネオプレンゴム、シリコンゴム等を用いることができる。
【0263】
さて、タッチロール6によってダイラインを良好に解消するためには、タッチロール6がフィルムを挟圧するときのフィルムの粘度が適切な範囲であることが重要となる。又、セルロースエステルは温度による粘度の変化が比較的大きいことが知られている。従って、タッチロール6が光学フィルムを挟圧するときの粘度を適切な範囲に設定するためには、タッチロール6がフィルムを挟圧するときのフィルムの温度を適切な範囲に設定することが重要となる。光学フィルムのガラス転移温度をTgとしたとき、フィルムがタッチロール6に挟圧される直前のフィルムの温度Tを、Tg<T<Tg+110℃を満たすように設定することが好ましい。フィルム温度TがTgよりも低いとフィルムの粘度が高過ぎて、ダイラインを矯正できなくなる。逆に、フィルムの温度TがTg+110℃よりも高いと、フィルム表面とロールが均一に接着せず、やはりダイラインを矯正することができない。好ましくはTg+10℃<T2<Tg+90℃、更に好ましくはTg+20℃<T2<Tg+70℃である。タッチロール6が光学フィルムを挟圧するときのフィルムの温度を適切な範囲に設定するには、流延ダイ4から押し出された溶融物が第1冷却ロール5に接触する位置P1から第1冷却ロール5とタッチロール6とのニップの、第1冷却ロール5の回転方向に沿った長さLを調整すればよい。
【0264】
本発明において、第1ロール5、第2ロール6に好ましい材質は、炭素鋼、ステンレス鋼、樹脂、等が挙げられる。又、表面精度は高くすることが好ましく表面粗さとして0.3S以下、より好ましくは0.01S以下とする。本発明においては、流延ダイ4の開口部(リップ)から第1ロール5までの部分を70kPa以下に減圧させることにより、上記、ダイラインの矯正効果がより大きく発現することを発見した。好ましくは減圧は50〜70kPaである。流延ダイ4の開口部(リップ)から第1ロール5までの部分の圧力を70kPa以下に保つ方法としては、特に制限はないが、流延ダイ4からロール周辺を耐圧部材で覆い、減圧する等の方法がある。このとき、吸引装置は、装置自体が昇華物の付着場所にならないようヒーターで加熱する等の処置を施すことが好ましい。本発明では、吸引圧が小さ過ぎると昇華物を効果的に吸引できないため、適当な吸引圧とする必要がある。
【0265】
本発明において、Tダイ4から溶融状態のフィルム状の樹脂を、第1ロール(第1冷却ロール)5、第2冷却ロール7、及び第3冷却ロール8に順次密着させて搬送しながら冷却固化させ、未延伸の樹脂フィルム10を得る。
【0266】
図1に示す本発明の実施形態では、第3冷却ロール8から剥離ロール9によって剥離した冷却固化された未延伸のフィルム10は、ダンサーロール(フィルム張力調整ロール)11を経て延伸機12に導き、そこでフィルム10を横方向(幅方向)に延伸する。この延伸により、フィルム中の分子が配向される。
【0267】
フィルムを幅方向に延伸する方法は、公知のテンター等を好ましく用いることができる。特に延伸方向を幅方向とすることで、偏光フィルムとの積層がロール形態で実施できるので好ましい。幅方向に延伸することで、光学フィルムの遅相軸は幅方向になる。
【0268】
一方、偏光フィルムの透過軸も、通常、幅方向である。偏光フィルムの透過軸と光学フィルムの遅相軸とが平行になるように積層した偏光板を液晶表示装置に組み込むことで、液晶表示装置の表示コントラストを高くすることができるとともに、良好な視野角が得られるのである。
【0269】
フィルム構成材料のガラス転移温度Tgはフィルムを構成する材料種及び構成する材料の比率を異ならせることにより制御できる。光学フィルムとして位相差フィルムを作製する場合、Tgは120℃以上、好ましくは135℃以上とすることが好ましい。液晶表示装置においては、画像の表示状態において、装置自身の温度上昇、例えば光源由来の温度上昇によってフィルムの温度環境が変化する。このときフィルムの使用環境温度よりもフィルムのTgが低いと、延伸によってフィルム内部に固定された分子の配向状態に由来するリターデーション値及びフィルムとしての寸法形状に大きな変化を与えることとなる。
【0270】
フィルムのTgが高過ぎると、フィルム構成材料をフィルム化するとき温度が高くなるために加熱するエネルギー消費が高くなり、又、フィルム化するときの材料自身の分解、それによる着色が生じることがあり、従って、Tgは250℃以下が好ましい。
【0271】
又、延伸工程には公知の熱固定条件、冷却、緩和処理を行ってもよく、目的とする光学フィルムに要求される特性を有するように適宜調整すればよい。
【0272】
(延伸工程)
位相差フィルムの物性と液晶表示装置の視野角拡大のための位相差フィルムの機能性付与を行うために、延伸工程、熱固定処理は適宜選択して行われている。このような延伸工程、熱固定処理を含む場合、加熱加圧工程は、それらの延伸工程、熱固定処理の前に行うようにする。
【0273】
本発明の光学フィルムを位相差フィルム、更に偏光板保護フィルムの機能を複合させた位相差フィルムとして製造する場合、屈折率制御を行う必要が生じるが、その屈折率制御は延伸操作により行うことが好ましい。以下、その延伸方法について説明する。
【0274】
位相差フィルムの延伸工程において、フィルムの1方向に1.0〜6.0倍及びフィルム面内にそれと直交する方向に1.01〜6.0倍延伸することで、必要とされるリターデーションRo及びRtを制御することができる。ここで、Roとは面内リターデーションを示し、Rtとは厚さ方向リターデーションを示す。
【0275】
リターデーションRo、Rtは下記式により求められる。
【0276】
式(i) Ro=(nx−ny)×d
式(ii) Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
(式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚さ方向の屈折率(屈折率は23℃、55%RHの環境下、波長590nmで測定)、dはフィルムの厚さ(nm)を表す。)
光学フィルムの屈折率は、アッベ屈折率計(4T)を用いて、フィルムの厚さは市販のマイクロメーターを用いて、リターデーション値は、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)等を用いて、各々測定することができる。
【0277】
延伸は、例えばフィルムの長手方向及びそれとフィルム面内で直交する方向、即ち幅方向に対して、逐次又は同時に行うことができる。このとき少なくとも1方向に対しての延伸倍率が小さ過ぎると十分な位相差が得られず、大き過ぎると延伸が困難となりフィルム破断が発生してしまう場合がある。
【0278】
例えば溶融流延方向(長手方向)に延伸した場合、幅方向の収縮が大き過ぎると、nzの値が大きくなり過ぎてしまう。この場合、フィルムの幅収縮を抑制、或いは幅方向にも延伸することで改善できる。幅方向に延伸する場合、幅方向で屈折率に分布が生じることがある。この分布は、テンター法を用いた場合に現れることがあり、フィルムを幅方向に延伸したことで、フィルム中央部に収縮力が発生し、端部は固定されていることにより生じる現象で、いわゆるボーイング現象と呼ばれるものと考えられる。この場合でも、流延方向に延伸することで、ボーイング現象を抑制でき、幅方向の位相差の分布を少なくできる。
【0279】
互いに直行する2軸方向に延伸することにより、得られるフィルムの膜厚変動が減少できる。位相差フィルムの膜厚変動が大き過ぎると位相差のムラとなり、液晶ディスプレイに用いたとき着色等のムラが問題となることがある。
【0280】
光学フィルムの膜厚変動は、±3%、更に±1%の範囲とすることが好ましい。以上のような目的において、互いに直交する2軸方向に延伸する方法は有効であり、互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的には流延方向に1.01〜4.0倍、幅方向に1.01〜4.0倍の範囲とすることが好ましく、流延方向に1.1〜3.0倍、幅方向に1.2〜3.0倍に範囲で行うことが必要とされるリターデーション値を得るためにより好ましい。
【0281】
長手方向に偏光子の吸収軸が存在する場合、幅方向に偏光子の透過軸が一致することになる。長尺状の偏光板をロール トゥ ロールの貼合で得るためには、位相差フィルムは、幅方向に遅相軸を得るように延伸することが好ましい。
【0282】
応力に対して、例えば正の複屈折性を得るセルロースエステルを用いる場合、上述の構成から、幅方向に延伸することで、位相差フィルムの遅相軸が幅方向に付与することができる。
【0283】
この場合、表示品質の向上のためには、位相差フィルムの遅相軸が、幅方向にあるほうが好ましく、目的とするリターデーション値を得るためには、
式、(幅方向の延伸倍率)>(流延方向の延伸倍率)
の条件を満たすことが必要である。
【0284】
延伸後、フィルムの端部をスリッター13により製品となる幅にスリットして裁ち落とした後、エンボスリング14及びバックロール15よりなるナール加工装置によりナール加工(エンボッシング加工)をフィルム両端部に施し、巻取り機16によって巻き取ることにより、光学フィルム(元巻き)F中の貼り付きや、すり傷の発生を防止する。ナール加工の方法は、凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、変形しており、フィルム製品として使用できないので、切除されて、原料として再利用される。
【0285】
次に、フィルムの巻取り工程は、円筒形巻きフィルムの外周面とこれの直前の移動式搬送ロールの外周面との間の最短距離を一定に保持しながらフィルムを巻取りロールに巻き取るものである。かつ巻取りロールの手前には、フィルムの表面電位を除去又は低減する除電ブロア等の手段が設けられている。
【0286】
本発明に係る光学フィルムの製造に係わる巻き取り機は一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等の巻き取り方法で巻き取ることができる。なお、偏光板保護フィルムの巻取り時の初期巻取り張力が90.2〜300.8N/mであるのが好ましい。
【0287】
本発明に係る方法におけるフィルムの巻き取り工程では、温度20〜30℃、湿度20〜60%RHの環境条件にて、フィルムを巻き取ることが好ましい。このように、フィルムの巻き取り工程での温度及び湿度を規定することにより、厚さ方向リターデーション(Rt)の湿度変化の耐性が向上する。
【0288】
巻き取り工程における温度が20℃未満であれば、シワが発生し、フィルム巻品質劣化のため実用に耐えないので、好ましくない。フィルムの巻き取り工程における温度が30℃を超えると、やはりシワが発生し、フィルム巻品質劣化のため実用に耐えないので、好ましくない。
【0289】
又、フィルムの巻き取り工程における湿度が20%RH未満であれば、帯電しやすく、フィルム巻品質劣化のため実用に耐えないので、好ましくない。フィルムの巻き取り工程における湿度が60%RHを超えると、巻品質、貼り付き故障、搬送性が劣化するので、好ましくない。
【0290】
偏光板保護フィルムをロール状に巻き取る際の、巻きコアとしては、円筒上のコアであれは、どのような材質のものであってもよいが、好ましくは中空プラスチックコアであり、プラスチック材料としては加熱処理温度にも耐える耐熱性プラスチックであればどのようなものであってもよく、フェノール樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。又、ガラス繊維等の充填材により強化した熱硬化性樹脂が好ましい。例えば中空プラスチックコア:FRP製の外径6インチ(以下、インチは2.54cmを表す。)、内径5インチの巻きコアが用いられる。
【0291】
これらの巻きコアへの巻き数は、100巻き以上であることが好ましく、500巻き以上であることが更に好ましく、巻き厚は5cm以上であることが好ましく、フィルム基材の幅は80cm以上であることが好ましく、1m以上であることが特に好ましい。
【0292】
本発明に係る光学フィルムの膜厚は、使用目的によって異なるが、仕上がりフィルムとして、10〜500μmが好ましい。特に下限は20μm以上、好ましくは35μm以上である。上限は150μm以下、好ましくは120μm以下である。特に好ましい範囲は25〜90μmである。位相差フィルムが偏光板保護フィルムを兼ねる場合、フィルムが厚いと、偏光板加工後の偏光板が厚くなり過ぎ、ノート型パソコンやモバイル型電子機器に用いる液晶表示においては、特に薄型軽量の目的に適さない。一方、フィルムが薄いと、位相差フィルムとしてのリターデーションの発現が困難となり、加えてフィルムの透湿性が高くなり、偏光子を湿度から保護する能力が低下してしまうために好ましくない。
【0293】
位相差フィルムの遅相軸又は進相軸はフィルム面内に存在し、製膜方向とのなす角度をθ1とすると、θ1は−1〜+1°、好ましくは−0.5〜+0.5°となるようにする。
【0294】
このθ1は配向角として定義でき、θ1の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器社製)を用いて行うことができる。
【0295】
θ1が各々上記関係を満たすことは、表示画像において高い輝度を得ること、光漏れを抑制又は防止することに寄与し、カラー液晶表示装置においては忠実な色再現に寄与する。
【0296】
位相差フィルムがマルチドメイン化されたVAモードに用いられるとき、位相差フィルムの配置は、位相差フィルムの進相軸がθ1として上記領域に配置することで、表示画質の向上に寄与し、偏光板及び液晶表示装置としてMVAモードとしたとき、例えば図7に示す構成をとることができる。
【0297】
図7において、21a、21bは保護フィルム、22a、22bは位相差フィルム、25a、25bは偏光子、23a、23bはフィルムの遅相軸方向、24a、24bは偏光子の透過軸方向、26a、26bは偏光板、27は液晶セル、29は液晶表示装置を示している。
【0298】
光学フィルムの面内方向のリターデーションRo分布は、5%以下に調整することが好ましく、より好ましくは2%以下であり、特に好ましくは、1.5%以下である。又、フィルムの厚さ方向のリターデーションRt分布を10%以下に調整することが好ましいが、更に好ましくは、2%以下であり、特に好ましくは、1.5%以下である。
【0299】
位相差フィルムにおいて、リターデーション値の分布変動が小さい方が好ましく、液晶表示装置に位相差フィルムを含む偏光板を用いるとき、当該リターデーション分布変動が小さいことが色ムラ等を防止する観点で好ましい。
【0300】
位相差フィルムを、VAモード又はTNモードの液晶セルの表示品質の向上に適したリターデーション値を有するように調整し、特にVAモードとして上記のマルチドメインに分割してMVAモードに好ましく用いられるようにするには、面内リターデーションRoを20nm以上、200nm以下に、かつ厚さ方向リターデーションRtを70nm以上、400nm以下の値に調整することが求められる。
【0301】
上記の面内リターデーションRoは、2枚の偏光板がクロスニコルに配置され、偏光板の間に液晶セルが配置された例えば図7に示す構成であるとき、表示面の法線から斜めに観察したときの偏光板のクロスニコル状態からのずれによる光漏れを主に補償する。厚さ方向のリターデーションRtは、上記TNモードやVAモード、特にMVAモードにおいて液晶セルが黒表示状態であるときに、同様に斜めから見たときに認められる液晶セルの複屈折を主に補償するために寄与する。
【0302】
図7に示すように、液晶表示装置において、液晶セルの上下に偏光板が二枚配置された構成である場合、図中の22a及び22bは、厚さ方向リターデーションRtの配分を選択することができ、上記範囲を満たしかつ厚さ方向リターデーションRtの両者の合計値が140nmよりも大きくかつ500nm以下にすることが好ましい。このとき22a及び22bの面内リターデーションRo、厚さ方向リターデーションRtが両者同じであることが、工業的な偏光板の生産性向上において好ましい。特に好ましくは面内リターデーションRoが35nm以上かつ95nm以下であり、かつ厚さ方向リターデーションRtが90nm以上180nm以下で、図7の構成でMVAモードの液晶セルに適用することである。
【0303】
液晶表示装置において、一方の偏光板に例えば市販の偏光板保護フィルムとして面内リターデーションRo=0〜4nm及び厚さ方向リターデーションRt=20〜50nmで厚さ35〜85μmのTACフィルムが、例えば図7の22bの位置で使用されている場合は、他方の偏光板に配置される偏光フィルム、例えば図7の22aに配置する位相差フィルムは、面内リターデーションRoが20nm以上300nm以下であり、かつ厚さ方向リターデーションRtが70nm以上400nm以下であるものを使用するようにすると、表示品質が向上し、かつフィルムの生産面からも好ましい。
【0304】
本発明により得られる製造的効果は、特に100m以上の長尺の巻物においてより顕著となり、1500m、2500m、5000mとより長尺化する程、偏光板製造の製造的効果を得る。
【0305】
例えば偏光板保護フィルム製造において、ロール長さは、生産性と運搬性を考慮すると、10〜5000m、好ましくは50〜4500mであり、このときのフィルムの幅は、偏光子の幅や製造ラインに適した幅を選択することができる。0.5〜4.0m、好ましくは0.6〜3.0mの幅でフィルムを製造してロール状に巻き取り、偏光板加工に供してもよく、又、目的の倍幅以上のフィルムを製造してロールに巻き取った後、断裁して目的の幅のロールを得て、このようなロールを偏光板加工に用いるようにしてもよい。
【0306】
偏光板保護フィルム製造に際し、延伸の前及び/又は後で帯電防止層、ハードコート層、易滑性層、接着層、防眩層、バリアー層等の機能性層を塗設してもよい。この際、コロナ放電処理、プラズマ処理、薬液処理等の各種表面処理を必要に応じて施すことができる。具体例としては特開2008−209595号公報の段落225〜349に記載の方法が挙げられる。
【0307】
製膜工程において、カットされたフィルム両端のクリップ把持部分は、前述のように解繊処理された後、或いは必要に応じて造粒処理を行った後、同じ品種のフィルム用原料として又は異なる品種のフィルム用原料として再利用することができる。
【0308】
又、前述の可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加物濃度が異なる組成物を共押し出しして、積層構造の光学フィルムを作製することもできる。
【0309】
例えばスキン層/コア層/スキン層といった構成の光学フィルムを作ることができる。例えばマット剤は、スキン層に多く、又はスキン層のみに入れることができる。可塑剤、紫外線吸収剤はスキン層よりもコア層に多く入れることができ、コア層のみに入れてもよい。又、コア層とスキン層で可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えばスキン層に低揮発性の可塑剤及び/又は紫外線吸収剤を含ませ、コア層に可塑性に優れた可塑剤、或いは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。
【0310】
スキン層とコア層のガラス転移温度が異なっていてもよく、スキン層のガラス転移温度よりコア層のガラス転移温度が低いことが好ましい。このとき、スキンとコアの両者のガラス転移温度を測定し、これらの体積分率より算出した平均値を上記ガラス転移温度Tgと定義して同様に扱うこともできる。又、溶融流延時の溶融物の粘度もスキン層とコア層で異なっていてもよく、スキン層の粘度>コア層の粘度でも、コア層の粘度≧スキン層の粘度でもよい。
【0311】
本発明に係る光学フィルムは、寸度安定性が、23℃、55%RHに24時間放置したフィルムの寸法を基準としたとき、80℃、90%RHにおける寸法の変動値が±2.0%未満であり、好ましくは1.0%未満であり、更に好ましくは0.5%未満である。
【0312】
本発明に係る光学フィルムを位相差フィルムとして偏光板保護フィルムに用いる際に、位相差フィルム自身が上記の範囲内の変動であると、偏光板としてのリターデーションの絶対値と配向角が当初の設定からずれないために、表示品質の劣化を引き起こすことがないため好ましい。
【0313】
〔偏光板〕
本発明の偏光板について述べる。
【0314】
偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明の光学フィルムの裏面側をアルカリ鹸化処理し、処理した光学フィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面に本発明の光学フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。本発明の光学フィルムに対して、もう一方の面に用いられる偏光板保護フィルムは市販のセルロースエステルフィルムを用いることができる。例えば市販のセルロースエステルフィルムとして、KC8UX2M、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4(以上、コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。或いは更にディスコチック液晶、棒状液晶、コレステリック液晶等の液晶化合物を配向させて形成した光学異方層を有している光学補償フィルムを兼ねる偏光板保護フィルムを用いることも好ましい。例えば特開2003−98348号公報記載の方法で光学異方性層を形成することができる。本発明の光学フィルムと組み合わせて使用することによって、平面性に優れ、安定した視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができる。
【0315】
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。該偏光膜の面上に、本発明の光学フィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
【0316】
上記アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号公報、特開平6−118232号公報に記載されているような易接着加工を施して偏光板加工を行ってもよい。
【0317】
偏光膜は一軸方向(通常は長手方向)に延伸されているため、偏光板を高温高湿の環境下に置くと延伸方向(通常は長手方向)は縮み、延伸と垂直方向(通常は幅方向)には伸びる。偏光板保護フィルムの膜厚が薄くなるほど偏光板の伸縮率は大きくなり、特に偏光膜の延伸方向の収縮量が大きい。通常、偏光膜の延伸方向は偏光板保護フィルムの長手方向(MD方向)と貼り合わせるため、偏光板保護フィルムを薄膜化する場合は、特に長手方向の伸縮率を抑えることが重要である。本発明の光学フィルムは極めて寸法安定に優れる為、このような偏光板保護フィルムとして好適に使用される。
【0318】
即ち60℃、90%RHの条件での耐久性試験によっても波打ち状のむらが増加することはなく、裏面側に光学補償フィルムを有する偏光板であっても、耐久性試験後に視野角特性が変動することなく良好な視認性を提供することができる。
【0319】
偏光板は、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成することができる。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶セルへ貼合する面側に用いられる。
【0320】
本発明の偏光板において、偏光子からみて位相差フィルムとは反対側の面には、セルロース誘導体の偏光板保護フィルムが用いられ、汎用のTACフィルム等を用いることができる。液晶セルから遠い側に位置する偏光板保護フィルムは、表示装置の品質を向上する上で、他の機能性層を配置することも可能である。
【0321】
例えば反射防止、防眩、耐キズ、ゴミ付着防止、輝度向上のためにディスプレイとしての公知の機能層を構成物として含むフィルムや、又は本発明の偏光板表面に貼付してもよいがこれらに限定されるものではない。
【0322】
一般に位相差フィルムでは、上述のリターデーション値としてRo又はRthの変動が少ないことが安定した光学特性を得るために求められている。特に複屈折モードの液晶表示装置は、これらの変動が画像のムラを引き起こす原因となることがある。
【0323】
本発明に従い溶融流延製膜法により製造される長尺状光学フィルム、又は長尺状位相差フィルムは、セルロース樹脂を主体として構成されるため、セルロース樹脂固有のケン化を活用してアルカリ処理工程を活用できる利点がある。これは、偏光子を構成する樹脂がポリビニルアルコールであるとき、従来の偏光板保護フィルムと同様に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて前記長尺状フィルムと貼合することができる。このために本発明は、従来の偏光板加工方法がそのまま適用できる点で優れており、特に長尺状であるロール偏光板が得られる点で優れている。
【0324】
本発明により得られる製造的効果は、特に100m以上の長尺の巻物においてより顕著となり、1500m、2500m、5000mとより長尺化する程、偏光板製造の製造的効果を得る。
【0325】
例えば位相差フィルム製造において、ロール長さは、生産性と運搬性を考慮すると、10m以上5000m以下、好ましくは50m以上4500m以下であり、このときのフィルムの幅は、偏光子の幅や製造ラインに適した幅を選択することができる。0.5m以上4.0m以下、好ましくは0.6m以上3.0m以下の幅でフィルムを製造してロール状に巻き取り、偏光板加工に供してもよく、又、目的の倍幅以上のフィルムを製造してロールに巻き取った後、断裁して目的の幅のロールを得て、このようなロールを偏光板加工に用いるようにしてもよい。
【0326】
製膜工程において、カットされたフィルム両端のクリップ把持部分は、粉砕処理された後、或いは必要に応じて造粒処理を行った後、同じ品種のフィルム用原料として又は異なる品種のフィルム用原料として再利用してもよい。
【0327】
前述の可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加物濃度が異なるセルロース樹脂を含む組成物を共押出しして、積層構造の光学フィルムを作製することもできる。例えばスキン層/コア層/スキン層といった構成の光学フィルムを作ることができる。例えばマット剤は、スキン層に多く、又はスキン層のみに入れることができる。可塑剤、紫外線吸収剤はスキン層よりもコア層に多く入れることができ、コア層のみに入れてもよい。又、コア層とスキン層で可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えばスキン層に低揮発性の可塑剤及び/又は紫外線吸収剤を含ませ、コア層に可塑性に優れた可塑剤、或いは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。スキン層とコア層のガラス転移温度が異なっていても良く、スキン層のガラス転移温度よりコア層のガラス転移温度が低いことが好ましい。このとき、スキンとコアの両者のガラス転移温度を測定し、これらの体積分率より算出した平均値を上記ガラス転移温度Tgと定義して同様に扱うこともできる。又、溶融流延時のセルロースエステルを含む溶融物の粘度もスキン層とコア層で異なっていても良く、スキン層の粘度>コア層の粘度でも、コア層の粘度≧スキン層の粘度でもよい。
【0328】
〔液晶表示装置〕
本発明の光学フィルムを含む偏光板は、通常の偏光板と比較して高い表示品質を発現させることができる。
【0329】
本発明の偏光板は、MVA(Multi−domein Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、CPA(Continuous Pinwheel Alignment)モード、OCB(Optical Compensated Bend)モード、IPS(In−Plane Switching)モード等に用いることができる。
【0330】
液晶表示装置はカラー化及び動画表示用の装置としても応用されつつあり、本発明により表示品質が改良され、コントラストの改善や偏光板の耐性が向上したことにより、疲れにくく忠実な動画像表示が可能となる。
【0331】
本発明の光学フィルムを貼合した偏光板を液晶表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた液晶表示装置を作製することが出来るが、特に大型の液晶表示装置やデジタルサイネージ等の屋外用途の液晶表示装置に好ましく用いられる。
【0332】
位相差フィルムを含む偏光板を少なくとも含む液晶表示装置においては、位相差フィルムを含む偏光板を、液晶セルに対して、一枚配置するか、或いは液晶セルの両側に二枚配置する。このとき偏光板に含まれる位相差フィルム側が液晶表示装置の液晶セルに面するように用いることで表示品質の向上に寄与できる。図7においては22a及び22bのフィルムが液晶表示装置の液晶セルに面することになる。
【0333】
このような構成において、前記位相差フィルムは、液晶セルを光学的に補償することができる。本発明の偏光板を液晶表示装置に用いる場合は、液晶表示装置の偏光板の内の少なくとも一つの偏光板を、本発明の偏光板とすればよい。本発明の偏光板を用いることで、表示品質が向上し、視野角特性に優れた液晶表示装置が提供できる。
【実施例】
【0334】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において、「部」及び「%」は、特に断りのない限り「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0335】
実施例1
〔本発明に係るセルロースナノファイバーの製造〕
(合成例1 修飾セルロースナノファイバー(SCNF−1)の製造)
日本製紙ケミカル(株)社製の粉末セルロースNPファイバーW−10MG2(平均粒子径10μm)20gを、TEMPO 0.33gと臭化ナトリウム3.3gを含むイオン交換水1000mlに懸濁し、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を用いて系のpHを10.5に調整した。これに12.0質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いて、系のpHを約10.5に維持しながら、20℃で2時間反応を行った。エタノールを系中に加えて反応を停止した後、生成物を濾過によって回収し、イオン交換水、及びエタノールで洗浄後、乾燥して、綿状のカルボキシル化修飾セルロースファイバーを得た。この修飾ファイバーを反応器に入れ、トルエン200g、酢酸30g、無水酢酸38gを加えて撹拌して均一に分散させた。この反応液に60%過塩素酸水溶液2.0gを添加して、2時間反応させた。エタノールを系中に加えて反応を停止した後、生成物を濾過によって回収し、エタノールで洗浄後、乾燥して、綿状のカルボキシル化及びアセチル化修飾セルロースファイバーを得た。
【0336】
この修飾セルロースファイバーを水に分散させ、グラインダー(栗田機械製作所製「KM1−10」)にて、この水懸濁液を、ほぼ接触させた状態の1200rpmで回転するディスク間を、中央から外に向かって通過させる操作を10回(10pass)行った。さらに平均粒径2μmのジルコニアビーズを用いたビーズ分散機で分散処理した。ジルコニアビーズを遠心分離とろ過により除去したあと乾燥し、綿状の修飾セルロースナノファイバー(SCNF−1)を得た。
【0337】
乾燥前の縣濁液の一部を取り出し、水を蒸発させた後、100本のセルロースナノファイバーを電子顕微鏡観察し、平均繊維径55nm、平均繊維長0.9μmと測定された。
【0338】
そして、NMR、IRにより得られた修飾セルロースナノファイバーの一次構造を分析した。その結果、カルボキシル基とアセチル基が修飾されていることが確認され、アセチル基の平均置換度は1.6であった。
【0339】
(合成例2 修飾セルロースナノファイバー(SCNF−2)の製造)
反応器に、日本製紙ケミカル(株)の針葉樹クラフトパルプNDP−Tを機械的に粗解繊して取り出した20gを、TEMPO 0.33gと臭化ナトリウム3.3gを含むイオン交換水1000mlに懸濁し、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を用いて系のpHを10.5に調整した。これに12.0質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いて、系のpHを約10.5に維持しながら、20℃で2時間反応を行った。エタノールを系中に加えて反応を停止した後、生成物を濾過によって回収し、イオン交換水、及びエタノールで洗浄後、乾燥して、綿状のカルボキシル化修飾セルロースファイバーを得た。この修飾ファイバーを反応器に入れ、トルエン200g、酢酸30g、無水酢酸38gを加えて撹拌して均一に分散させた。この反応液に60%過塩素酸水溶液2.0gを添加して、2時間反応させた。エタノールを系中に加えて反応を停止した後、生成物を濾過によって回収し、エタノールで洗浄後、乾燥して、綿状のカルボキシル化及びアセチル化修飾セルロースファイバーを得た。
【0340】
この修飾セルロースファイバーを水に分散させ、グラインダー(栗田機械製作所製「KM1−10」)にて、この水懸濁液を、ほぼ接触させた状態の1200rpmで回転するディスク間を、中央から外に向かって通過させる操作を10回(10pass)行った。さらに平均粒径2μmのジルコニアビーズを用いたビーズ分散機で分散処理した。ジルコニアビーズを遠心分離とろ過により除去したあと乾燥し、綿状の修飾セルロースナノファイバー(SCNF−2)を得た。
【0341】
乾燥前の縣濁液の一部を取り出し、水を蒸発させた後、100本のセルロースナノファイバーを電子顕微鏡観察し、平均繊維径70nm、平均繊維長12μmと測定された。
【0342】
そして、NMR、IRにより得られた修飾セルロースナノファイバーの一次構造を分析した。その結果、カルボキシル基とアセチル基が修飾されていることが確認され、アセチル基の平均置換度は0.4であった。
【0343】
(合成例3 修飾セルロースナノファイバー(SCNF−3)の製造)
反応器に、ダイセル化学工業(株)社製の微小繊維状セルロースセリッシュKY−100G(固形分10%)から凍結乾燥して取り出した粉体20gを、TEMPO 0.33gと臭化ナトリウム3.3gを含むイオン交換水1000mlに懸濁し、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を用いて系のpHを10.5に調整した。これに12.0質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いて、系のpHを約10.5に維持しながら、20℃で2時間反応を行った。エタノールを系中に加えて反応を停止した後、生成物を濾過によって回収し、イオン交換水、及びエタノールで洗浄後、乾燥して、綿状のカルボキシル化修飾セルロースファイバーを得た。この修飾ファイバーを反応器に入れ、トルエン200g、酢酸30g、無水酢酸38gを加えて撹拌して均一に分散させた。この反応液に60%過塩素酸水溶液2.0gを添加して、2時間反応させた。エタノールを系中に加えて反応を停止した後、生成物を濾過によって回収し、エタノールで洗浄後、乾燥して、綿状のカルボキシル化及びアセチル化修飾セルロースファイバーを得た。
【0344】
この修飾セルロースファイバーを水に分散させ、グラインダー(栗田機械製作所製「KM1−10」)にて、この水懸濁液を、ほぼ接触させた状態の1200rpmで回転するディスク間を、中央から外に向かって通過させる操作を10回(10pass)行った。さらに平均粒径2μmのジルコニアビーズを用いたビーズ分散機で分散処理した。ジルコニアビーズを遠心分離とろ過により除去したあと乾燥し、綿状の修飾セルロースナノファイバー(SCNF−3)を得た。
【0345】
乾燥前の縣濁液の一部を取り出し、水を蒸発させた後、100本のセルロースナノファイバーを電子顕微鏡観察し、平均繊維径45nm、平均繊維長2.1μmと測定された。
【0346】
そして、NMR、IRにより得られた修飾セルロースナノファイバーの一次構造を分析した。その結果、カルボキシル基とアセチル基が修飾されていることが確認され、アセチル基の平均置換度は1.4であった。
【0347】
(合成例4 修飾セルロースナノファイバー(SCNF−4)の製造)
反応器に、ダイセル化学工業(株)社製の微小繊維状セルロースセリッシュKY−100G(固形分10%)から凍結乾燥して取り出した粉体20gを、TEMPO 0.33gと臭化ナトリウム3.3gを含むイオン交換水1000mlに懸濁し、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を用いて系のpHを10.5に調整した。これに12.0質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いて、系のpHを約10.5に維持しながら、20℃で2時間反応を行った。エタノールを系中に加えて反応を停止した後、生成物を濾過によって回収し、イオン交換水、及びエタノールで洗浄後、乾燥して、綿状のカルボキシル化修飾セルロースファイバーを得た。この修飾ファイバーを反応器に入れ、トルエン200g、酢酸30g、無水プロピオン酸48gを加えて撹拌して均一に分散させた。この反応液に60%過塩素酸水溶液2.0gを添加して、2時間反応させた。エタノールを系中に加えて反応を停止した後、生成物を濾過によって回収し、エタノールで洗浄後、乾燥して、綿状のカルボキシル化及びプロピオニル化修飾セルロースファイバーを得た。
【0348】
この修飾セルロースファイバーを水に分散させ、グラインダー(栗田機械製作所製「KM1−10」)にて、この水懸濁液を、ほぼ接触させた状態の1200rpmで回転するディスク間を、中央から外に向かって通過させる操作を10回(10pass)行った。さらに平均粒径2μmのジルコニアビーズを用いたビーズ分散機で分散処理した。ジルコニアビーズを遠心分離とろ過により除去したあと乾燥し、綿状の修飾セルロースナノファイバー(SCNF−4)を得た。
【0349】
乾燥前の縣濁液の一部を取り出し、水を蒸発させた後、100本のセルロースナノファイバーを電子顕微鏡観察し、平均繊維径45nm、平均繊維長2.0μmと測定された。
【0350】
そして、NMR、IRにより得られた修飾セルロースナノファイバーの一次構造を分析した。その結果、カルボキシル基とプロピオニル基が修飾されていることが確認され、プロピオニル基の平均置換度は1.1であった。
【0351】
(合成例5 修飾セルロースナノファイバー(SCNF−5)の製造)
反応器に、ダイセル化学工業(株)社製の微小繊維状セルロースセリッシュKY−100G(固形分10%)から凍結乾燥して取り出した粉体20gを、TEMPO 0.33gと臭化ナトリウム3.3gを含むイオン交換水1000mlに懸濁し、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を用いて系のpHを10.5に調整した。これに12.0質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いて、系のpHを約10.5に維持しながら、20℃で2時間反応を行った。エタノールを系中に加えて反応を停止した後、生成物を濾過によって回収し、イオン交換水、及びエタノールで洗浄後、乾燥して、綿状のカルボキシル化修飾セルロースファイバーを得た。この修飾ファイバーを反応器に入れ、トルエン200g、ピリジン15g、ベンゾイルクロライド26gを加えて撹拌して均一に分散させた。この反応液を50℃で、2時間反応させた。エタノールを系中に加えて反応を停止した後、生成物を濾過によって回収し、エタノールで洗浄後、乾燥して、綿状のカルボキシル化及びベンゾイル化修飾セルロースファイバーを得た。
【0352】
この修飾セルロースファイバーを水に分散させ、グラインダー(栗田機械製作所製「KM1−10」)にて、この水懸濁液を、ほぼ接触させた状態の1200rpmで回転するディスク間を、中央から外に向かって通過させる操作を10回(10pass)行った。さらに平均粒径2μmのジルコニアビーズを用いたビーズ分散機で分散処理した。ジルコニアビーズを遠心分離とろ過により除去したあと乾燥し、綿状の修飾セルロースナノファイバー(SCNF−5)を得た。
【0353】
乾燥前の縣濁液の一部を取り出し、水を蒸発させた後、100本のセルロースナノファイバーを電子顕微鏡観察し、平均繊維径45nm、平均繊維長2.2μmと測定された。
【0354】
そして、NMR、IRにより得られた修飾セルロースナノファイバーの一次構造を分析した。その結果、カルボキシル基とベンゾイル基が修飾されていることが確認され、ベンゾイル基の平均置換度は1.0であった。
【0355】
(合成例6 修飾セルロースナノファイバー(SCNF−6)の製造)
反応器に、ダイセル化学工業(株)社製の微小繊維状セルロースセリッシュKY−100G(固形分10%)から凍結乾燥して取り出した粉体20gを、TEMPO 0.33gと臭化ナトリウム3.3gを含むイオン交換水1000mlに懸濁し、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を用いて系のpHを10.5に調整した。これに12.0質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いて、系のpHを約10.5に維持しながら、20℃で2時間反応を行った。エタノールを系中に加えて反応を停止した後、生成物を濾過によって回収し、イオン交換水、及びエタノールで洗浄後、乾燥して、綿状のカルボキシル化修飾セルロースファイバーを得た。この修飾ファイバーを反応器に入れ、トルエン200g、酢酸30g、無水酢酸25gを加えて撹拌して均一に分散させた。この反応液に60%過塩素酸水溶液1.0gを添加して、2時間反応させた。エタノールを系中に加えて反応を停止した後、生成物を濾過によって回収し、エタノールで洗浄後、乾燥して、綿状のカルボキシル化及びアセチル化修飾セルロースファイバーを得た。
【0356】
この修飾セルロースファイバーを水に分散させ、グラインダー(栗田機械製作所製「KM1−10」)にて、この水懸濁液を、ほぼ接触させた状態の1200rpmで回転するディスク間を、中央から外に向かって通過させる操作を10回(10pass)行った。さらに平均粒径2μmのジルコニアビーズを用いたビーズ分散機で分散処理した。ジルコニアビーズを遠心分離とろ過により除去したあと乾燥し、綿状の修飾セルロースナノファイバー(SCNF−6)を得た。
【0357】
乾燥前の縣濁液の一部を取り出し、水を蒸発させた後、100本のセルロースナノファイバーを電子顕微鏡観察し、平均繊維径45nm、平均繊維長2.1μmと測定された。
【0358】
そして、NMR、IRにより得られた修飾セルロースナノファイバーの一次構造を分析した。その結果、カルボキシル基とアセチル基が修飾されていることが確認され、アセチル基の平均置換度は0.5であった。
【0359】
(合成例7 修飾セルロースナノファイバー(SCNF−7)の製造)
反応器に、ダイセル化学工業(株)社製の微小繊維状セルロースセリッシュKY−100G(固形分10%)から凍結乾燥して取り出した粉体20gを、TEMPO 0.33gと臭化ナトリウム3.3gを含むイオン交換水1000mlに懸濁し、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を用いて系のpHを10.5に調整した。これに12.0質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いて、系のpHを約10.5に維持しながら、20℃で2時間反応を行った。エタノールを系中に加えて反応を停止した後、生成物を濾過によって回収し、イオン交換水、及びエタノールで洗浄後、乾燥して、綿状のカルボキシル化修飾セルロースファイバーを得た。この修飾ファイバーを反応器に入れ、トルエン200g、酢酸30g、無水酢酸20gを加えて撹拌して均一に分散させた。この反応液に60%過塩素酸水溶液1.0gを添加して、2時間反応させた。エタノールを系中に加えて反応を停止した後、生成物を濾過によって回収し、エタノールで洗浄後、乾燥して、綿状のカルボキシル化及びアセチル化修飾セルロースファイバーを得た。
【0360】
この修飾セルロースファイバーを水に分散させ、グラインダー(栗田機械製作所製「KM1−10」)にて、この水懸濁液を、ほぼ接触させた状態の1200rpmで回転するディスク間を、中央から外に向かって通過させる操作を10回(10pass)行った。さらに平均粒径2μmのジルコニアビーズを用いたビーズ分散機で分散処理した。ジルコニアビーズを遠心分離とろ過により除去したあと乾燥し、綿状の修飾セルロースナノファイバー(SCNF−7)を得た。
【0361】
乾燥前の縣濁液の一部を取り出し、水を蒸発させた後、100本のセルロースナノファイバーを電子顕微鏡観察し、平均繊維径45nm、平均繊維長2.2μmと測定された。
【0362】
そして、NMR、IRにより得られた修飾セルロースナノファイバーの一次構造を分析した。その結果、カルボキシル基とアセチル基が修飾されていることが確認され、アセチル基の平均置換度は0.2であった。
【0363】
(合成例8 修飾セルロースナノファイバー(SCNF−8)の製造)
反応器に、ダイセル化学工業(株)社製の微小繊維状セルロースセリッシュKY−100G(固形分10%)から凍結乾燥して取り出した粉体20gを、TEMPO 0.33gと臭化ナトリウム3.3gを含むイオン交換水1000mlに懸濁し、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を用いて系のpHを10.5に調整した。これに12.0質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いて、系のpHを約10.5に維持しながら、20℃で2時間反応を行った。エタノールを系中に加えて反応を停止した後、生成物を濾過によって回収し、イオン交換水、及びエタノールで洗浄後、乾燥して、綿状のカルボキシル化修飾セルロースファイバーを得た。この修飾ファイバーを反応器に入れ、トルエン200g、酢酸30g、無水酢酸50gを加えて撹拌して均一に分散させた。この反応液に60%過塩素酸水溶液4.0gを添加して、2時間反応させた。エタノールを系中に加えて反応を停止した後、生成物を濾過によって回収し、エタノールで洗浄後、乾燥して、綿状のカルボキシル化及びアセチル化修飾セルロースファイバーを得た。
【0364】
この修飾セルロースファイバーを水に分散させ、グラインダー(栗田機械製作所製「KM1−10」)にて、この水懸濁液を、ほぼ接触させた状態の1200rpmで回転するディスク間を、中央から外に向かって通過させる操作を10回(10pass)行った。さらに平均粒径2μmのジルコニアビーズを用いたビーズ分散機で分散処理した。ジルコニアビーズを遠心分離とろ過により除去したあと乾燥し、綿状の修飾セルロースナノファイバー(SCNF−8)を得た。
【0365】
乾燥前の縣濁液の一部を取り出し、水を蒸発させた後、100本のセルロースナノファイバーを電子顕微鏡観察し、平均繊維径45nm、平均繊維長2.2μmと測定された。
【0366】
そして、NMR、IRにより得られた修飾セルロースナノファイバーの一次構造を分析した。その結果、カルボキシル基とアセチル基が修飾されていることが確認され、アセチル基の平均置換度は2.1であった。
【0367】
比較として下記材料を製造した。
【0368】
(未修飾セルロースナノファイバー(UNCNF−1)の製造)
日本製紙ケミカル(株)の針葉樹クラフトパルプNDP−Tを水に分散させ、グラインダー(栗田機械製作所製「KM1−10」)にて、この水懸濁液を、ほぼ接触させた状態の1200rpmで回転するディスク間を、中央から外に向かって通過させる操作を30回(30pass)行った。さらに平均粒径2μmのジルコニアビーズを用いたビーズ分散機で分散処理した。ジルコニアビーズを遠心分離とろ過により除去したあと乾燥し、綿状の未修飾セルロースナノファイバー(UNCNF−1)を得た。
【0369】
乾燥前の縣濁液の一部を取り出し、水を蒸発させた後、100本のセルロースナノファイバーを電子顕微鏡観察し、平均繊維径50nm、平均繊維長2.1μmと測定された。
【0370】
(ブチリル化セルロース結晶(W13)の製造)
特開2009−52016号公報の製造例19に記載の方法にて、ブチリル化セルロース結晶(W13)を製造した。乾燥前の縣濁液の一部を取り出し、水を蒸発させた後、100個のセルロース結晶を電子顕微鏡観察したところ、セルロース結晶の大きさは、平均短軸長10nm、平均長軸長162nmであった。
【0371】
(カルボキシル基修飾セルロースナノファイバー(CACNF−1)の製造)
反応器に、ダイセル化学工業(株)社製の微小繊維状セルロースセリッシュKY−100G(固形分10%)から凍結乾燥して取り出した粉体20gを、TEMPO 0.33gと臭化ナトリウム3.3gを含むイオン交換水1000mlに懸濁し、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を用いて系のpHを10.5に調整した。これに12.0質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いて、系のpHを約10.5に維持しながら、20℃で2時間反応を行った。エタノールを系中に加えて反応を停止した後、生成物を濾過によって回収し、イオン交換水、及びエタノールで洗浄後、乾燥して、綿状のカルボキシル化修飾セルロースファイバーを得た。
【0372】
この修飾セルロースファイバーを水に分散させ、グラインダー(栗田機械製作所製「KM1−10」)にて、この水懸濁液を、ほぼ接触させた状態の1200rpmで回転するディスク間を、中央から外に向かって通過させる操作を10回(10pass)行った。さらに平均粒径2μmのジルコニアビーズを用いたビーズ分散機で分散処理した。ジルコニアビーズを遠心分離とろ過により除去したあと乾燥し、綿状の修飾セルロースナノファイバー(CACNF−1)を得た。
【0373】
乾燥前の縣濁液の一部を取り出し、水を蒸発させた後、100本のセルロースナノファイバーを電子顕微鏡観察し、平均繊維径65nm、平均繊維長2.5μmと測定された。
【0374】
そして、NMR、IRにより得られた修飾セルロースナノファイバーの一次構造を分析した。その結果、カルボキシル基が修飾されていることが確認された。
【0375】
実施例2
〔樹脂の準備〕
以下のセルロースエステルCE−1〜CE−3を公知の方法によって調製した。
【0376】
CE−1:セルロースアセテートプロピオネート(アシル基総置換度2.6、アセチル基置換度1.9、プロピオニル基置換度0.7、分子量Mw=200000)
CE−2:セルロースアセテートプロピオネート(アシル基総置換度2.8、アセチル基置換度0.1、プロピオニル基置換度2.7、分子量Mw=200000)
CE−3:セルロースアセテートプロピオネート(アシル基総置換度2.5、アセチル基置換度1.3、プロピオニル基置換度1.2、分子量Mw=200000)
その他、CE−4、CE−5およびCOP−1は以下の市販品を用いた。
【0377】
CE−4:セルロースジアセテート L−20(ダイセル化学工業(株)製、アセチル基置換度2.41)
CE−5:セルローストリアセテート LT−35(ダイセル化学工業(株)製、アセチル基置換度2.87)
COP−1:ポリシクロオレフィン 「ゼオノア#1600」(日本ゼオン(株)製)
〔光学フィルムの製造〕
(光学フィルム(F−1)の製造(溶液流延法))
(添加液Aの調製)
下記の化合物を下記の混合比で使用した。
【0378】
樹脂 CE−4 5質量部
メチレンクロライド 80質量部
上記素材を密閉容器に投入し、加熱、撹拌しながら、完全に溶解、濾過した。これに15質量部のセルロースナノファイバー(SCNF−1)を撹拌しながら加えて、さらに30分間撹拌した後、超音波分散処理を行い、添加液Aを調製した。
【0379】
(ドープAの調製)
トリフェニルフォスフェート 20質量部
メチレンクロライド 640質量部
エタノール 120質量部
樹脂 CE−4 220質量部
上記素材を順に、攪拌しながら密閉容器に投入し、加熱、撹拌しながら、完全に溶解、混合した。このドープ液にフィルム中のセルロースナノファイバーが5質量%になるように添加量を決めて添加液Aを添加し、完全に混合し、流延する温度まで下げて一晩静置し、脱泡操作を施した後、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過しドープAを得た。
【0380】
上記調製したドープAを用いて下記のようにして光学フィルムを作製した。
【0381】
ドープAを濾過した後、ベルト流延装置を用い、ドープ温度35℃で30℃のステンレスベルト支持体上に均一に流延した。その後、剥離可能な範囲まで乾燥させた後、ステンレスベルト支持体上からウェブを剥離した。このときのウェブの残留溶媒量は80%であった。
【0382】
ステンレスベルト支持体から剥離した後、85℃の乾燥ゾーンをロール搬送しながら乾燥させた後、残留溶媒量が35質量%未満となったところで、2軸延伸テンターでTD方向(幅手方向)及びMD方向(製膜方向)に延伸しながら90℃で乾燥させ、さらにロール搬送しながら125℃の乾燥ゾーンで乾燥を終了させた。フィルムのMD方向の延伸倍率は1.2、TD方向の延伸倍率は1.3、膜厚は80μmであった。巻き取り時の残留溶媒量は0.1質量%未満であった。仕上がりのフィルム幅は、1430mm幅になるようにスリットし、巻き取った。巻芯の大きさは、内径152mm、外径165〜180mm、長さ1550mmであった。この巻芯母材として、エポキシ樹脂をガラス繊維、カーボン繊維に含浸させたプリプレグ樹脂を用いた。巻芯表面にはエポキシ導電性樹脂をコーティングし、表面を研磨して、表面粗さRaは0.3μmに仕上げた。なお、巻長は2500mとした。この本発明のフィルム原反試料を光学フィルム(F−1)とする。
【0383】
(光学フィルム(F−2〜18)の製造(溶液流延法))
光学フィルム1の製造において、樹脂の種類、セルロースナノファイバーの種類と濃度、延伸条件を表1のように変更した以外は、前記光学フィルム(F−1)の製造方法と同様にして、光学フィルム(F−2〜18)を製造した。
【0384】
(光学フィルム(F−19)の製造(溶融流延法))
下記材料を用いて溶融流延法により光学フィルム(F−19)を作製した。
【0385】
樹脂 CE−4 75質量部
ジエチルフタレート 20質量部
セルロースナノファイバー SCNF−1 5質量部
樹脂、セルロースナノファイバーを70℃、3時間減圧下で乾燥を行い室温まで冷却した後、ジエチルフタレートを混合した。以上の混合物を2軸式押出し機を用いて220℃で溶融混合しペレット化した。
【0386】
このペレットを用いて窒素雰囲気下、245℃にて溶融して流延ダイ4から第1冷却ロール5上に押し出し、第1冷却ロール5とタッチロール6との間にフィルムを挟圧して成形した。
【0387】
流延ダイ4のギャップの幅がフィルムの幅方向端部から30mm以内では0.5mm、その他の場所では1mmとなるようにヒートボルトを調整した。タッチロールとしては、タッチロールAを使用し、その内部に冷却水として80℃の水を流した。
【0388】
流延ダイ4から押し出された樹脂が第1冷却ロール5に接触する位置P1から第1冷却ロール5とタッチロール6とのニップの第1冷却ロール5回転方向上流端の位置P2までの、第1冷却ローラ5の周面に沿った長さLを20mmに設定した。その後、タッチロール6を第1冷却ロール5から離間させ、第1冷却ロール5とタッチロール6とのニップに挟圧される直前の溶融部の温度Tを測定した。本実施例において、第1冷却ロール5とタッチロール6とのニップに挟圧される直前の溶融部の温度Tは、ニップ上流端P2よりも更に1mm上流側の位置で、温度計(安立計器株式会社製HA−200E)により測定した。本実施例では測定の結果、温度Tは141℃であった。タッチロール6の第1冷却ロール5に対する線圧は14.7N/cmとした。更に、2軸延伸テンターに導入し、160℃でMD方向(製膜方向)に1.3倍、及びTD方向(幅手方向)に1.5倍延伸した後、幅方向に3%緩和しながら30℃まで冷却し、その後クリップから開放し、クリップ把持部を裁ち落とし、フィルム両端に幅10mm、高さ5μmのナーリング加工を施し、巻き取り張力220N/m、テーパー40%で巻芯に巻き取った。なお、フィルムは、厚さが80μmとなるように、押し出し量及び引き取り速度を調整し、仕上がりのフィルム幅は、1430mm幅になるようにスリットし、巻き取った。巻芯の大きさは、内径152mm、外径165〜180mm、長さ1550mmであった。
【0389】
この巻芯母材として、エポキシ樹脂をガラス繊維、カーボン繊維に含浸させたプリプレグ樹脂を用いた。巻芯表面にはエポキシ導電性樹脂をコーティングし、表面を研磨して、表面粗さRaは0.3μmに仕上げた。なお、巻長は2500mとした。この本発明のフィルム原反試料を光学フィルム(F−19)とする。
【0390】
(光学フィルム(F−20〜34)の製造(溶融流延法))
光学フィルム(F−19)の製造において、樹脂及びセルロースナノファイバーの種類と濃度、及び延伸条件を表1のように変更した以外は前記光学フィルム(F−19)の製造方法と同様にして、光学フィルム(F−20〜34)を製造した。
【0391】
【表1】

【0392】
〔評価方法〕
得られた光学フィルムについて、以下の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0393】
(リターデーション及びリターデーション分布の評価)
リターデーション分布は以下で示される変動係数(CV)を求め、指標とした。
【0394】
作製したセルロースエステルフィルム試料について、幅手方向に1cm間隔で3次元方向の屈折率を測定した。下記式より得られた面内リターデーション平均値(Ro)、厚み方向のリターデーション平均値(Rt)及び変動係数(CV)を求めた。
【0395】
測定は、自動複屈折計KOBURA・21ADH(王子計測器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で波長が590nmにおいて、行われ、得られた測定値を下式(a)、(b)に代入して、面内リターデーションRo、厚み方向リターデーションRtを求めた。
【0396】
式(a)面内リターデーションRo=(nx−ny)×d
式(b)厚み方向リターデーションRt=((nx+ny)/2−nz)×d
ここに、dはフィルムの厚み(nm)、nxはフィルムの面内の最大の屈折率、遅相軸方向の屈折率ともいう、nyはフィルム面内で遅相軸に直角な方向の屈折率、nzは厚み方向におけるフィルムの屈折率である。得られた厚み方向のリターデーションをそれぞれ(n−1)法による標準偏差を求めた。厚み方向のリターデーションの変動係数(CV)は下記式から求めた。nとしては130〜140に設定した。
リターデーション(厚み方向)の変動係数(CV)=リターデーションRtの標準偏差/リターデーションRtの平均値
得られた厚み方向のリターデーション(Rt)の変動係数(CV)からリターデーション分布を次の評価基準で評価した。
【0397】
7:(CV)が1.5%未満、実用上非常に優れたレベルである
6:(CV)が1.5%以上2.0%未満、実用上優れたレベルである
5:(CV)が2.0%以上5.0%未満、実用上問題のないレベルである
4:(CV)が5.0%以上6.0%未満、実用上の最低許容範囲である
3:(CV)が6.0%以上8.0%未満、実用上問題が発生する可能性のあるレベルである
2:(CV)が8.0%以上、10%未満、実用上問題が発生する可能性のあるレベルである
1:(CV)が10%以上、実用上問題が発生するレベルである
(馬の背故障、巻芯転写)
巻き取ったセルロースエステルフィルム原反試料をポリエチレンシートで2重に包み、図8(a)、(b)、(c)に示すような保存方法で、25℃、50%の条件下で30日間保存した。その後、箱から取り出し、ポリエチレンシートを開け、フィルム原反試料表面に点灯している蛍光灯の管を反射させて映し、その歪み或いは細かい乱れを観察し、馬の背故障を下記レベルにランク分けした。
【0398】
A:蛍光灯が真っすぐに見える
B:蛍光灯が部分的に曲がって見える
C:蛍光灯がまだらに映って見える
又、保存後のフィルム原反試料を巻き返して、50μm以上の点状の変形、又は幅手方向の帯状の変形がはっきり見える巻芯転写が、巻芯部分より何mまで発生しているかを測定し、巻芯転写を下記レベルにランク分けした。
【0399】
A:巻芯部分より15m未満
B:巻芯部分より15〜30m未満
C:巻芯部分より30〜50m未満
D:巻芯部分より50m以上
(巻始めシワ)
巻芯に原反フィルムを巻き取る作業を行い、巻始めでシワが発生して不良となった場合は巻芯から原反フィルムを取り外して、再度巻き取る作業を行った。この時の不良回数をカウントした。この作業を10回行い平均値を求め、下記レベルにランク分けを行った。
【0400】
A:0回以上1回未満
B:1回以上3回未満
C:3回以上5回未満
D:5回以上
〔液晶表示装置としての特性評価〕
得られた光学フィルムから以下の方法で液晶表示装置を作製し、以下の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0401】
(偏光板の作製)
各光学フィルムを用いた偏光板を、以下のようにして作製した。
【0402】
厚さ120μmの長尺ロールポリビニルアルコールフイルムを、沃素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で5倍に搬送方向に延伸して偏光膜を作製した。
【0403】
次に、この偏光膜の片面にアルカリケン化処理した本発明の光学フィルム(F−1)を、ポリビニルアルコール水溶液を接着剤として用いて貼合した。更に偏光膜のもう一方の面にアルカリケン化処理した偏光板保護フィルムであるコニカミノルタオプト社製KC8UX2Mを貼り合わせ、乾燥して偏光板(P−1)を作製した。同様にして光学フィルム(F−2〜34)を用いて偏光板(P−2〜34)を作製した。
【0404】
本発明の光学フィルムを用いた偏光板は比較の光学フィルムを用いた偏光板に比べて、フィルムカッティング性に優れ、加工がし易かった。
【0405】
(液晶表示装置の作製)
上記作製した各偏光板を使用して、光学フィルムの表示特性評価を行った。
【0406】
シャープ(株)製32型テレビAQ−32AD5の予め貼合されていた両面の偏光板を剥がして、上記作製した偏光板(P−1〜34)をそれぞれ光学フィルム(F−1〜34)が液晶セルのガラス面側になるように、かつ、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように貼合し、液晶表示装置(D−1〜34)を各々作製した。
【0407】
また、上記作製した偏光板(P−1〜34)を60℃、90%RHで1000時間処理した偏光板を用いて、液晶表示装置(D−1〜34)と同様に液晶表示装置(E−1〜34)を作製した。
【0408】
(視野角変動評価)
以上のようにして作製した液晶表示装置(D−1〜34およびE−1〜34)を用いて下記の評価を行った。
【0409】
23℃、55%RHの環境で、ELDIM社製EZ−Contrast160Dを用いて液晶表示装置の視野角測定を行った。
【0410】
D−1〜34およびE−1〜34を比較して、偏光板を60℃、90%RHで1000時間処理したことによる視野角変動を下記基準で4段階評価した。
【0411】
A:視野角変動が全くない
B:視野角変動が僅かに認められる
C:視野角変動が認められる
D:視野角変動が大きい
(カラーシフト評価)
上記作製した液晶表示装置(D−1〜34およびE−1〜34)に関して、23℃、55%RHの環境でディスプレイを黒表示にし、斜め45°の角度から観察した。
【0412】
D−1〜34およびE−1〜34を比較して、偏光板を60℃、90%RHで1000時間処理したことによる色変化を下記基準で4段階評価した。
【0413】
A:色変化が全くない
B:色変化が僅かに認められる
C:色変化が認められる
D:色変化が大きい
【0414】
【表2】

【0415】
上記表2からわかるように、本発明の製造方法によれば、リターデーションを適性範囲に制御させ、リターデーション変動の発生を抑制すると同時にフィルム変形による故障を改善することができた。又、本発明の製造方法で製造された光学フィルムを用いて作製した偏光板、液晶表示装置は、視野角変動やカラーシフトに優れた特性を示した。
【0416】
実施例3
前記光学フィルム(F−19)において、紫外線吸収剤および添加剤を表3、4に示した種類と量で添加し、セルロースエステル及び修飾セルロースナノファイバーの種類と濃度、延伸条件、ジエチルフタレートに代えた可塑剤の種類と添加量を表3、4のように変更した以外は前記光学フィルム(F−19)の製造方法と同様にして、光学フィルム(F−35〜42)を製造した。
【0417】
添加剤としては以下を用いた。
【0418】
(AD−1)−A:SumilizerGS(住友化学(株)製)(炭素ラジカル補足剤)
(AD−1)−B:SumilizerGM(住友化学(株)製)(炭素ラジカル補足剤)
(AD−3)−A:IRGANOX1010(チバ・ジャパン(株)製)(一次酸化防止剤)
(AD−3)−B:IRGANOX1076(チバ・ジャパン(株)製)(一次酸化防止剤)
(AD−4)−A:アデカスタブLA−52(ADEKA(株)製)(一次酸化防止剤)
(AD−5)−A:アデカスタブPEP−36(ADEKA(株)製))(二次酸化防止剤)
(AD−5)−B:GSY−P101(堺化学工業(株)製)(二次酸化防止剤)
可塑剤としては以下を用いた。
【0419】
KA−1:下記構造式の化合物
【0420】
【化19】

【0421】
(特開2006−188663号公報の段落207の合成例11に従って合成した。)
又、紫外線吸収剤として以下のものも用いた。
【0422】
UV−1:TINUVIN928(チバ・ジャパン(株)製)
UV−2:アデカスタブLA−31(ADEKA(株)製)
【0423】
【表3】

【0424】
【表4】

【0425】
更に光学フィルム(F−35〜42)を用いて、実施例2と同様に偏光板(P−35〜41)、液晶表示装置(D−35〜42およびE−35〜42)を作製し、実施例2と同様に評価を行った。結果を表5に示す。
【0426】
【表5】

【0427】
上記表5からわかるように、本発明の製造方法によれば、添加剤を含有しても、リターデーションを適性範囲に制御させ、リターデーション変動の発生を抑制すると同時にフィルム変形による故障を改善することができた。又、本発明の製造方法で製造された光学フィルムを用いて作製した偏光板、液晶表示装置は、視野角変動やカラーシフトが改善された。
【符号の説明】
【0428】
1 押出し機
2 フィルター
3 スタチックミキサー
4 流延ダイ
5 回転支持体(第1冷却ロール)
6 挟圧回転体(タッチロール)
7 回転支持体(第2冷却ロール)
8 回転支持体(第3冷却ロール)
9、11、13、14、15 搬送ロール
10 セルロースエステルフィルム
12 延伸機
16 巻取り装置
21a、21b 保護フィルム
22a、22b 位相差フィルム
23a、23b フィルムの遅相軸方向
24a、24b 偏光子の透過軸方向
25a、25b 偏光子
26a、26b 偏光板
27 液晶セル
29 液晶表示装置
31 ダイ本体
32 スリット
41 金属スリーブ
42 弾性ローラ
43 金属製の内筒
44 ゴム
45 冷却水
51 外筒
52 内筒
53 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基およびアシル基を有するセルロースを含むセルロースナノファイバーと、樹脂を含有することを特徴とする繊維複合材料。
ただし、該アシル基の炭素数は2〜30であり、該カルボキシル基は金属塩であってもよい。
【請求項2】
請求項1に記載の繊維複合材料を含有することを特徴とする光学フィルム。
【請求項3】
請求項2に記載の光学フィルムを溶融流延法で製膜することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載の光学フィルムを溶液流延法で製膜することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項2に記載の光学フィルムを少なくとも一方の面に用いたことを特徴とする偏光板。
【請求項6】
請求項3または4に記載の光学フィルムの製造方法により製造された光学フィルムを少なくとも一方の面に用いたことを特徴とする偏光板。
【請求項7】
請求項5または6に記載の偏光板を用いたことを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−148914(P2011−148914A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11658(P2010−11658)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】